「We Are The World」がリリースされたのは、1985年3月28日。アメリカの音楽界、そして多くのスーパースターが燦然と輝いていた時代だ。
私はこの「We Are The World」のシングル盤を持っている。このシングルが発売された頃は、ベストヒットUSAなどで盛んにMVが流れていた。大好きだったミュージシャンが何十人も一堂に会して、顔をつきあわせて歌っているその姿に目をみはり、かっこよくて、テレビで流れるたびに夢中になって見ていた。ちょうどその頃、兄がアメリカに出張に行くという話を聞き、
「買ってきて~!」と頼んだのだった。
Netflixで、「We Are The World」のドキュメンタリー映画『The Greatest Night in Pop』を見ていたら、シングル盤が発売され、レコードショップに並べられて、多くの人が手に取っている場面があった。兄もアメリカのどこかのレコードショップで、こんなふうに買ってくれたのだなぁと、その様子を想像して、ふふっと笑顔になった。
今日、久しぶりにシングル盤で聴いている。WebVANDAをご覧の皆さまにはこちらをどうぞ。
今回取り上げるドキュメンタリー映画『The Greatest Night in Pop』は、2024年1月19日、サンダンス映画祭の特別上映の一環としてワールドプレミアが行われ、同月29日からNetflixにて公開された。
……にしても、なぜ今、なのだろう。「We Are The World」のメイキングなら、発売された当時に制作され、ビデオになり全世界で発売された。
また、豪華スターが共演する「エイド」が盛んに行われるようになったきっかけは、1984年、イギリスのミュージシャンたちによる「Do They Know It’s Christmas?」であって、「We Are
The World」ではない。ここまで大きなプロジェクトでなくても、1985年のライブ・エイドのためにデヴィッド・ボウイとミック・ジャガーが発表した「Dancing In The Street」もあるし、米国エイズ研究財団のためのチャリティーシングルとして発売された、ディオンヌ・ワーウィック&フレンズによる「That's What Friends Are For」が発売されたのも1985年11月で、これらも大きな売り上げをあげている。
マイケルは楽器が弾けないため、ハミングでメロディをつくるのだという。その様子を見たライオネルは「神がかって見えた」と語るが、ふたりで知恵をしぼってもなかなか曲ができない。時間は過ぎていき、あのサビ部分「We are the world~ We are the children~」が生まれたのが1月18日で、全体の歌詞とメロディが完成して、クインシーに音源を送ったのは1月20日。スタジオで仮歌をレコーディングして(仮歌を歌ったのは、ライオネル・リッチーとマイケル・ジャクソン、スティーヴィー・ワンダー)、必要分のデモ・テープをつくり、依頼書、楽譜の発送が行われたのが1月24日だった。なんと、本番のレコーディングの4日前である。
「We Are The World」のMVを見ると、マイケル・ジャクソンが誰もいないスタジオでひとりでソロを歌っている場面がある。ダイアナ・ロスとのデュエット部分は、みんながいるスタジオで歌っているが、このひとりで歌っている場面はなんだろう?と不思議だった。ドキュメンタリーを見て、これは、AMAに出席していなかったマイケル・ジャクソンが、他の人より先にスタジオに入って歌った映像だということがわかった。マイケルはひとりで集中して、自分を歌にシンクロさせようとしていたのだという。
このとき、2カ所の歌詞が変わる。
1つは、「We are the world, we are the children.
We are the ones who make a brighter day~」のところ。はじめにマイケルが作詞したときの歌詞は「~who make a better day~」(より良い日に)だったが、メイキング映像でマイケルは、「より明るく(brighter)って歌っちゃったよ」と言っている。「ぼくは魂をこめて、歌ったよ」と。この部分は、このあと全員で合唱する際にも話題に上り、「brighter」への変更で決定した。
また、「It’s true we’ll make a better day, just
you and me」のところでは、「you and me」と歌うのが良いか、「You and I」と歌うのが良いか、どっちがいい?とクインシーにたずね、クインシーが、「you and me だな。より魂がこもる」と答える場面も。
この作品のなかではライオネル・リッチーは、「(家とは)自分にとっては、この部屋(「We Are The World」を録音したA&Mスタジオ)のことだ。この部屋は俺の家だ」と語っている。自分の原点の1つ、ということだと思う。音楽仲間と夢中になって成し遂げたプロジェクトは、ライオネルに大切な場所と仲間との絆という「家」を残したのだ。
それを考えたとき、『The Greatest Night in Pop』というドキュメンタリー映画には、ただ単に「We Are The World」の舞台裏に迫る、ポップスが最高に輝いた夜、あるいは、音楽のチカラという意味のほかにも、なにか大事なメッセージが隠されていたのではないだろうか。私はそれを「No War」への願いだと感じたが、それとはちがうメッセージを受け取る人もいると思うし、そうあるべきだと思う。いい作品だった。
ローリング・ストーンズは大規模ツアーの前に、小規模な会場で密かにウォームアップギグを開催してきたが(古くは1977年の『Love You Live』のエル・モガンボが皮切り)、2015年の北米ツアーの前の2015年5月20日に、席数が1200人というごく小規模のフォンダシアターでこのライブが行われた。今までのスモール・ギグとは全く違うのは、今回は名盤『Sticky Fingers』を全曲披露するというコンセプトライブで、全16曲という曲数も絞り込んだものであること、そしてこのギグを4Kで撮影して初めてその全貌が我々ストーズファンに届けられたことにある。解説は寺田正典さんが主で、知りたいことが全て分かる。例えばストーンズのアルバムで全曲がライブで披露されたものは何枚あったのかなと思ったら『Let It Bleed』『Sticky Fingers』『Black And Blue』『Some Girls』の4枚だけだそうで『Exile On Main St.』も強く望まれたが、チャーリーいわく「今、あんな叩き方はできないよ」と。さすが名盤が並ぶ。ミックはコンサートの冒頭付近で「今度は『Their Satanic Majesties Request』を全曲やるかな」と言っていたが、もちろんこれは冗談、先日、キースは『Their Satanic Majesties Request』を最低のクズと言っていたので、100%やるわけがなく、ミックのブラックジョークだ。コンセプトのあるギグなので、アルバム10曲とその他6曲の計16曲という短いコンサートだ。まず全体的に言えるのはやはりこういう取り組みはストーンズも楽しいようで、始終笑顔のキースが忘れられない。Blu-rayとCDは曲順が違い、正しいのはCDだが、『Sticky Fingers』の曲をプレイすると何度もメンバーの想い出のインタビューが挿入され、そこが面白いので、その内容を交えながら紹介していきたい。冒頭は「Start Me Up」だ。「Jumpin’ Jack Flash」と並ぶストーンズのオープニング・アクトの定番から始まる。やはりいくら『Sticky Fingers』といえども、頭に「Brown Sugar」を持ってきては、「ライブでアルバムを楽しませる」ことには直結しないので「Sway」からスタートする。この粘っこいR&Bナンバーを、かなりテンポアップしてプレイする。キースも通常のギターなのでなんとなく歯切れがいい。そして「Dead Flowers」だ。シンプルなC&Wナンバーだが、人気がある。そしてキースがミックとの自慢の共作だと誇らしくインタビューで語る「Wild Horses」。キースはアコギではなくエレキを弾き、若干テンポアップしてウェットな感じにはしていない。そしてミックが本作はドラッグの隠語満載と言い、キースはインタビューでバレたかと笑う本アルバムの中でも最問題作「Sister Morphine」。久しぶりにプレイしたら不気味で70年代にタイムスリップしたよ、我に返ったら胡麻塩頭の頭の自分がいた(笑)と語る笑顔のキースはそれでも嬉しそう。冒頭は確かに不気味な滑り出しだが、中間以降のロンのボトルネックギターの迫力は素晴らしく、ロンの名演だ。そして1970年当時にこのアルバムを買った時には、なぜこんなメチャクチャシンプルで酔っぱらいのざれ歌のようにも聞こえたアルバム唯一のカバー曲、フレッド・マクダニエル作の「You Gotta Move」の登場だ。カッコいい事にキースのアコギのブルースギターに乗せてミックら全員で歌う。単純なブルースの繰り返しだが、会場全員で「You Gotta Move」を全力で歌うようになるのは感動的。発売当時は分からなかったが、今はこの曲の魅力にハマるなあ。そしてアルバムの中でもハイライト級に人気がある「Bitch」の登場だ。ボビー・キーズ、ジム・プライスのホーンが最高のこの曲、キースは2014年に急死してしまったボビーが最高だと忘れられず、いつも右横にはボビーがいる気がすると、全幅の信頼を置いていたことが伝わってくる。ライブではあのリフをロンにまかせ、キースがリード・ギターを自在に弾いている。ホーンが弱く聴こえるのが残念だ。そしてアルバムの中である意味、一番斬新な「Can’t Hear Me Knocking」。ザックリとしたギターのリフに乗せたロックナンバーが途中からのコンガからラテン・ジャズに変わって演奏が続いていくフリーキーな曲でカッコいい。ボビー・キーズの後釜のカール・デンソンがサックスで頑張っている。ミックもその当時、プレイしていてストーンズの新しい面が見られてやっていて楽しかったそうだ。そしてメンバーがストーンズで最もスローなナンバーと口を揃える「I Got A Blues」。最もスローといいながらミックの熱唱によるスロー・バラードで、テンポは特に遅いわけではない。そして『Sticky Fingers』の最後はオリエンタルな「Moonlight Mile」。聴いていて何か違和感があると思っていたら、見事寺田さんの解説でミックのオリジナルはGだが、ライブでは5度上のDで歌っていて色々と歌い方も違っているのだそうだ。そして最後はいよいよお待ちかね、「Brown Sugar」。ミックは無人島へ持っていく1曲なら「Brown Sugar」と断言していて、傑作を書いたという自信に満ちていた。さらにキースもレコーディングは感動的だった、究極のロックンロールを仕上げた気分だった、そして何よりも熱があったんだと語る。キースのリフも当時のレコードと同じ跳ね上がらない弾き方でこういう小さいところも嬉しい。そしてアンコールはB.B.キングのカバーの「Rock Me Baby」。徐々に盛り上がりエンディングでロンのギターソロ、キースのギターソロ、ミックのブルースハーブで終わるところが最高だ。そしてオオトリは「Jumpin’ Jack Flash」。昔から自分が力説しているようにこの史上最強のロックナンバーをここでは一切崩さず、But it’s alright nowの部分もレコードと同じハーモニー、ミックの歌い方もレコードと同じで崩さず、こういうライブ・ヴァージョンが一番好きだ。この会場の人はこういう部分も幸せだな。ボーナストラックは実は「Start Me Up」の後に続いて演奏された「All Down The Line」と「When The Whip Comes Down」で、なかなか熱いライブだ。そして3曲目の「I Can’t Turn You Loose」は、実際には「Jumpin’ Jack
Flash」の続いての本当のラストナンバーだった。オーティス・レディングで知られるこのナンバーだが、最も親しまれているのはブルース・ブラザースがデビュー・アルバムのオープニングに使われていたからで、このこの繰り返すホーンのフレーズを聴いたことがない人間などいないだろう。みんなが明るく笑顔で終わる最高のエンディングだ。このライブ、なんとたったの$29.5だったそうで、なんと幸せなファンなのだろうか。ただ会場にいたオーディエンスにはそうそうたる有名人が並び、一般人じゃとても入り込むすきなどなさそう。(佐野邦彦)
このライブは2004年6月12日、イギリスのワイト島で3日間にわたって行われたフェスティバルの中日のメインにフーが登場した時の映像DVDに音源CDを付けたものだ。同じ2004年では『ロック・オデッセイ』のメイン・アクトとして、フーが待望の初来日を果たした。CSで放送があったので映像は今でも宝物だが、私は横浜競技場にフーの登場時間に合わせて行って、次のエアロスミスは見ないで帰った。友人に一緒に行こうと誘われたがそれも断り、ただただ初めてこの目で見るフーに集中したいので、それ以外の要素は全て遮断するほど真剣だった。そのためこのライブは曲目が完全に重複しているので見ながらあの感動を追体験できた。ただし日本では披露しなかった「Bargain」「The Punk And The Godfather」「Eminent Front」「Drowned」「Naked Eye」「You Better You Bet」「Magic Bus」も見られるので、さらに楽しめるだろう。その2004年の横浜での初ライブの映像と見比べたかったが、ベッド上で動けない体では指図などできず、そしてこれから名前があがる映像DVDなど探してもらうのは大変過ぎるのでその前との違いは見比べていないのであしからず。このソフトの前のライブ映像化は急増している。『The Vegas Job』(1999年)、『Live At Royal Albert Hall』(2000年)、『Live In Boston』(2002年)があるが、これも個人的には1996年にサポートのドラムがザック・スターキーになってフーのサウンドが安定し、フーらしいライブが出来るようになった証だと思う。フーは1984年にいったん解散、その後はイベントでの単発再結成が続き、1989年に25周年ツアーがあったものの、ザックがドラムで入った1996年のプリンス・トラストから本格的にフーはライブに戻る。しかしその中2002年にはキース・ムーンと並び称されるロック界最高のベーシストのジョン・エントウィッスルも亡くしてしまうが、代役のピノ・バラディーノが実に巧みなジョンと同じグルーヴのベースが弾けたので、フーのリズム隊は維持された。自分は。フーは完璧なキース・ムーン派で、ケニー・ジョーンズのドラムがフーのダイナミズムを削いでしまったと思っている。ケニーは上手なドラマーだがフーには合わない。ピート・タウンゼンドがケニー時代にソロ活動に軸を移していたのも、それが遠因のような気がしてならない。25周年時のサイモン・フィリップスもダメだ。ザックが来るまでは満足できるドラマーは存在せず、ザックが入ってからはCDでもまず通販のみの1999年の『The
Blues To The Bush』、そしてコンサート毎に全公演を通販した『Encore Series
2002』『Encore Series 2004』『Encore
Series 2006』『Encore Series 2007』という驚異的な大量のCDがリリースされ、あの感動の2004年7月24日・25日の初来日の横浜と大阪がCDで聴けるようになったのだ。ワイト島は日本での一か月前のコンサートなのでロジャーのシャツとジーンズは同じ、ピートは上にジャケットを羽織っているが黒の上下で統一している。バンドはさらに1985年からのサポートのキーボードのジョン・バンドリック、そしてピートの弟のサイモン・タウンゼンドがサポート・ギターで入り、この安定した布陣で、フーの往年の名曲を存分に楽しめる。この頃には、ピートがエレキ・ギターに復帰しているのも極めて大きい。難聴を防ぐためにしばらくアコギ中心だった時代のライブはやはりダイナミズムが無かった。こうしてリズム隊が安定すると、ピートのギタープレイは冴え、ロジャーも安定して歌える。そしてライブは実に巧みに計算された選曲で盛り上げてくれる。「I Can’t Explain」からまず初期の3曲、「Who Are You」を挟んで『Who’s Next』から3曲、『Quadrophenia』から3曲と名曲が続いていく。そこでジャジーなピートがソロで歌う「Eminence Front」を入れアコギの2曲が続いてインターミッション。その後は同年にリリースしたばかりのベスト盤『Then And Now』で発表した久々の新曲2曲を入れながら、「My Generation」「Won’t Get Fooled Again」というライブで最も乗りあがるロック・ナンバーで盛り上がり、最後は「Pinball Wizard」から始まる『Tommy』メドレー4曲、ラストは「See Me Feel Me」で、もうファンなら昇天だ(古い表現だがこれが一番しっくりくる)。ちなみに日本公演は「See Me Feel Me」をアンコールのラストにしていて、初来日ということもあってか、ピートはイギリスでは見せなかったギターを叩きつけるパフォーマンスを見せてくれ大いに盛り上がった。このコンサートでは本編がここで終わりでアンコールは「Magic Bus」。ピートは上着を脱いで日本公演と同じになった。エンディングは大ロックンロールになりピートの風車弾きも炸裂、最高潮のエンディングとなった。なおBlu-ray版も出ているが、入荷が遅そうなので早く聴くためにDVD版を注文した。DVDも十分キレイ。(佐野邦彦)
You Tubeでポールとリンゴがジョイントしたライブの「With A Little Help From My Friends」をご覧になった事がある方も多いと思う。本Blu-rayはそのライブが行われた2009年のチャリティ・コンサートの抜粋版。ポール単独6曲、ポールとリンゴの共演3曲、リンゴ単独3曲と12曲もあるので十分楽しめる。その他ドノヴァンやシェリル・クロウなど6曲あるがここはパス。またこのコンサートはあのデビッド・リンチ監督が瞑想(TM)の財団を作ってその普及に尽力していてその活動に賛同した人が集まったライブであり、ポールとリンゴは故ジョージを通じたマハリシつながり。リンチが2人にTMも少しからめたインタビューしていたが興味がないのでこれもパス。映像ではまずリンゴが出てきて、ドラムは叩かず1971年の米英4位の大ヒット「It
Don’t Come Easy」を歌う。今、聴くと音程の幅の少ないリンゴらしい曲だ。当時はリンゴの単独クレジットだったが、曲が終わった後にMCで、この曲は収拾がつかなくなってジョージに頼んだ…なんて裏話をリンゴらしく楽しく話していた。自分はビートルズ解散をアルタイムで見てきたので、その後に4人がどう活躍するのかも最大の関心事だった。真っ先に飛び出したのがジョージで『All
Things Must Pass』のクオリティの高さ、そして「My Sweet Lord」も1位になって、多くのビートルズ・ファンは隠れていたジョージの才能に驚愕していた。2人目のナンバー1は誰かと思っていたらなんと最初の2枚のアルバムはでは想像もできなかったこの軽快なオリジナル・シングルで、当時、「ミュージック・ライフ」がキャッシュボックスのチャートを載せていたのでそちらでは1位だったのだ。「ジョンとポールを差し置いてジョージ、リンゴが先に1位をリリースするとは…」と、中2の自分はショックを受けていた。ただ数カ月後の同じ1971年内にはジョンは『Imagine』、ポールは『Ram』をリリースし、すぐに持てる実力を発揮していくのだが。話がそれたので映像に戻るが、次はリンゴがドラムを叩きながら「Boys」を歌うが、ここでお馴染みの光景に成り盛り上がる。最後はマイクを持って立ちながら「Yellow Submarine」。誰にでも愛されるこの曲、リンゴの人柄もあって会場のみんなが笑顔で一緒に歌っていた。この曲でリンゴは後半、かなりメロディを崩して歌うが、こういう歌い方は嫌い。歌が上手い人に多いが「メロディを崩して歌う」「わざと遅らせて歌う」、この2つは大嫌いだ。その点、これから登場するポールは常に正確に歌おうとするから大好きである。リンゴまでは「オールディーズ」の雰囲気だったが、ポールが登場するとバンドは一気に引き締まりロックバンドに変貌する。トップは最高のロックナンバー「Drive My Car」。何百回聴いたか分からないヘヴィローテーション・ナンバーだが、こんなカッコいいリフとドライヴ感、絶妙なハモリを持ったナンバーは無く、いつ聴いてもワクワクする。続いて「Jet」。このナンバーの重量感、ドライヴ感はビートルズ時代と匹敵するから凄い。そして「Got
To Get You Into My Life」へと続く。迫力溢れるこの3曲のパワフルなナンバーはただただ圧巻だ。そしてポールはピアノに座り「Let It Be」を歌う。1969年当時の声と比べるとかすれているが、この曲は常にスピリチュアルで心が洗われる。ロック評論家などのジョン至上主義に見られるポールの「Let It Be」などのメロディアスな曲を「ポップ」とこバカにするのがいるが、この曲を聴いて心が揺さぶられない人間なんて耳が腐っている奴だと、相手にしないことにしている。音楽雑誌をほとんど買わないのは、こういうタイプの連中のコメントが不愉快で読みたくないことも大きい。BSの音楽番組は司会はいいがゲストがダメで見られない。また話が逸れてしまったので映像に戻るが、ここでポールはアコギを持ち、僕の一方的なジョンへの思いだと言って「Here Today」を歌う。この物悲しいメロディの曲でポールの感情が一杯になって涙ぐんだように歌が揺れ、感動的だ。そしてポールはすぐに雰囲気を立ち直すために「Band On The Run」を歌うが、はじめは流麗で、そしてロックへ移っていくこのナンバーですぐに会場は盛り上がる。そしていよいよハイライト。ポールは「特別なゲストが来ています。みんなが知っているビリー・シアーズ!」とリンゴを呼び寄せ、「SGT」の最後の最後の部分のフレーズを入れて「With A Little Help
From My Friends」の冒頭のリフからリンゴが歌い始める。2人が並び、カールヘフナーのベースを持ったポールがカウンターコーラスを歌うところは感動的。会場の雰囲気が最高潮のここで、いったん引けアンコールへ。ポールは「どうせ出てくるって分かっていたでしょ?」と笑わせながら、ポールはアコギ、リンゴもドラムに坐り、「Cosmically Conscious」を歌う。この曲はポールがインドでマハリシに会った後のホワイト・アルバム時代に書かれていて、1993年のアルバム『Off The Ground』の最後にシークレット・トラックとして収められていた。そして完全版は『Off The Ground-Complete Works』に収録されていたマニアックな曲。覚えやすいメロディなので最後は会場の多くが覚えて歌っていた。ポールのこのチャリティへの最大の配慮だ。そして最後は全員で「I Saw Her Standing There」。リンゴももちろんドラムを叩いているが、今までもツインドラムがトリプルドラムになっている。この軽快なロックンロールでクライマックス、大いに盛り上がって終わるが、さすがポール、見事な選曲だった。(佐野邦彦)
ただ自分にとって肝心なのは別テイクが集まったここからだでまずDISC2から。冒頭は「Strawberry Fields Forever」。今までの公式のデモは『Anthology2』の3テイクで、そこのジョンのギター1本のデモ「Demo Sequence」はない。このBOXでソロは必要ない。「Take1」はどちらもあるがBOXの方にイントロとジョンとカウントがあり5秒長い。「Take4」は初登場で前半部のアレンジは大分完成していてジョンのヴォーカルはシングルトラック。「Take7」は両方にありBOXはジョンの声のイントロが加わりジョンのヴォーカルはダブル、そして最後の演奏がフェイドアウトになっていくように崩して演奏する部分で終わるが、『Anthology2』は「Take7 & Edit Piece」のタイトルの通り崩して歌う部分の最後にレコードで最後の逆回転のドラム部分のセッションの模様を無理やりつないであるので総尺は1分ちょっと長い。非常にピッチの早い原型のオーケストラヴァージョンの「Take26」はBoxで初登場。「When I’m Sixty-Four」のアウトテイクは初。初登場の「Take2」はまだカウンターのコーラスのないシンプルなテイク。ポールがきちんと歌っているので聴ける。「Penny Lane(Take6-Inst)」は初登場でこの時からサウンドがクリアだ。ポーンがないので新鮮なインストになり色々な消されてしまった遊びが聴けて面白い。逆に「Vocal Overdubs/Speech」は曲を聴きながら(わずかに聴こえる)手拍子をしながら会話をし、イントロの部分にコーラスを小さく歌っているがレコードで使っていない。『Anthology2』で登場したポールのヴォーカルがシングルトラックで聴かせどころの中間部のピッコロトランペットのないテイクはこのBOXにはない。これにはエンディングにもピッコロトランペットが登場、そのままプロモシングルのみのメロディも吹いてくれるがガチャガチャ終わる。DISC4の「Capitol Records Mono US Promo Mix」は盤おこしと思われ音質は良くないが初のモノで最後がプロモのみのピッコロトランペットエンディング。『Rarities』のはステレオに継ぎ足したものだった。「A Day In The
Life」の「Take1」はポールのパートにつなぐ24節が出来上がっていなのでピアノと声のカウント入り。ポールの部分も歌はないがジョンのパートに戻る部分の演奏は出来ている。そしてジョンの歌で最後の上昇部もまだできていないピアノとカウントのみ。「Take2」は普通のジョンの1234のカウントから始まり構成は「Take1」と同じだが、ポールのパートのアコギが切れ切れのカッティング、マルのカウントのエコーが大きい上にピアノの弾き方も違い、最後に本番で使用されなかったメンバーによるエンディングコードのハミングが入っている。「Orch Overdub」はオーケストラのみの上昇部の練習。「Hummed Last
Chord Tks 8,9,10,11」はレコードではピアノの連弾のコードになってしまったが、Take2で聴けるメンバーのラストのコードのハーモニー練習。「The Last Chord」はそのピアノのラストコードの練習でピタリと合うとのレコード雷鳴のような音になる。DISC4の「First Mono Mix」はポールパートのつなぎはマルの24までのエコーたっぷりのカウントで、ポールのパートが歌は入るがまだ歌い方が一部違う。ジョンのパートは完成されているがエンディングはオーケストラなしでさらにピアノの弾き方が違い下降するベースも入るが最後のコード音なし。『Anthology2』のものは最初は「Take1」とあるがポールのパートは「First Mono Mix」のものに差替えたもの。そしてエンディングはオーケストラをもの持ってきてエンディングのコードは入れなかった「継ぎはぎテイク」だった。「SGT.Peppers Lonely Hearts Club Band」の「Take 1
- Inst」は4人だけのザックリした演奏でこれはこれで魅かれる。最後は次につなぐと決めてあったので適当に終わる。「Take 9 / Speech」はリードギターが完成していないがポールもジョンもきちんと歌っていてコーラスも決まり、4人の演奏だけなので迫力があっていい。最後のつなぐ部分はジョンが適当に歌っていて面白い。「Good Morning Good Morning」の「Take 1 - Inst,
BD」はシンプルな演奏だけのインスト。「Take8」はジョンの歌のみがシングルで入り、4人の演奏だけなのでロックンロール色が強くてなかなかいい。『Anthology2』のものはジョンのヴォーカルがダブルでクリアにミックスされており、最後のリンゴのドラムもサウンドがクリアなので手数が多く聴こえるが内容は同じ。
続いてDISC3。「Fixing A
Hole」の「Take1」はハープシコードのバッキングでポールがシングルで歌っているが完成度は高い。あの印象的なリードギターとコーラスはまだない。最後のアドリブヴォーカルもいい。「Speech And Take 3」は1分くらいの話し声などがあってから演奏が始まる。リードギター、コーラスがない上に歌はさらにアドリブメロディが多く、あとで元に戻したことが分かる。「Being For The Benefit Of Mr.Kite!」の「Speech
From Before Take 1; Take 4 And Speech At The End)」はジョンがシングルで歌っていて、間奏部分にラララと歌ったりカウントを入れたりアドリブを入れている。『Anthology2』の「Take1 Take2」のTake2は歌いだしてすぐ終わってしまうがこれのみ。SEなどが入っていない「Take7」は『Anthology2』の「Take7」より歌いだし前のジョンのアドリブの歌が10秒ぐらい長い。ここでもジョンは前半間奏で歌を当てている。そして『Anthology2』の「Take7」の後半はSE入りにつないでフェイドアウトしているのでこれまた「継ぎはぎもの」だ。「Lovely
Rita」のアウトテイクは初登場。「Speech And Take 9」は明るくポールがシングルで歌い、コーラスやSEなどは入っていない。後半の構成は出来ているが、ポールのアドリブのメロディがまだ多い。最後はジョンのヴォーカルが聞こえる。「Lucy In The Sky With Diamonds」の「Take 1 And
Speech At The End」は出だしのメロディが同じ音の繰り返しでレコードと違っていて、中間とエンディングのコーラスは歌が入っていない。「Speech, False Start And Take 5」もまだ出だしの歌い方がレコードと違っている。ピアノなど前のテイクより完成しているがこれも中間とエンディングのコーラス部の歌は無い。『Anthology2』のものは出だしのメロディは同じく違っているが、中間とエンディングに歌とコーラスが入りより完成されたテイクだがBOXには入っていない。DISC4の「Original
Mono Mix - No. 1」は通常のモノミックスだが冒頭にスタジオチャットや最初のハープシコードの1音の15秒がイントロに加わっている。「Getting Better」のアウトテイクは初で、「Take 1 -- Instrumental And Speech At The End」はジョンの声から始まりピアノからスタートしている。演奏としてはしっかりしていて、気合が感じられる。あのハイライトともいえるポールのベースは、Blu-rayの映像でポールが語っているようにベーシックトラックが出来上がってから入れるそうだが、「Take12」ではポールのベースランニングが披露され、完成に近づいていることが分かる。大好きな曲なので歌入りのものを是非入れてもらいたかった。残念!「Within You Without You」の「Take 1 -- Indian
Instruments」は文字通り歌ナシのインストで、『Anthology2』の「Instrumental」と同じものだと思うがBOXの方のミックスがいい。「George Coaching The Musicians」はジョージが主に西洋楽器のバイオリンやチェロに微妙な節回しを口で歌って教えている。「She’s Leaving Home」のアウトテイクも意外な事に初登場、「Take 1
-- Instrumental」はマイク・リーンダーの指揮のもののオーケストラオケ。ジョージ・マーティンがシラ・ブラックのレコーディングで手が離せないというのでポールが急遽スコアを依頼した。「Take 6 -- Instrumental」も同じだが演奏がややスムーズ。どちらもオフィシャルでカットされた2番のリフレインの後、3番の歌が入る前の短く下降するメロディのチェロが入っている。ただまったく同じのが並んで歌もないのじゃあ…。DISC4の「First Mono Mix」はモノ盤のみのピッチの早いテイクだが、前述のチェロのカット前なので、2番の「…many years」のコーラスが入る2分33秒の後に下降するチェロが入って「Friday
morning…」になるので初登場。「With A Little Help From My Friends」はアウトテイクが初めて。「Take 1 -- False Start And Take 2 -- Instrumental」だがシンプルな曲なのでバッキングもシンプル。しかしここに後からポールの絶妙なベースランニングと、対位法のコーラスが加わると、あんなにカッコ良く変身するから凄い。「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (Reprise)」の「Speech And Take 8」はラフにポールのみが歌ったテイク。『Anthology2』の方のテイクはTake5、ポールのみがラフに歌うテイクだが、中間部の歌い方が明らかに違う。ディスク4はモノ盤と前述の補遺トラックで構成されている。
オマケのBlu-rayとDVDは、内容は同じでアルバムのそれぞれのオーディオ・ヴァージョンがあるが、見たいのはビジュアルコンテンツで、1992年に作られた「The Making Of SGT.Pepper」が目玉。もうジョンはいないので、ポール、ジョージ、リンゴとジョージ・マーティンがこのアルバムが作る過程、作っていく過程が詳細に語られる。ジョージ・マーティンがミキサーをいじってどう音が作られていったかを聴かせてくれるのが多いが、ポールはこのアルバムをビーチ・ボーイズの『Pet Sounds』の影響だとはっきり語っているし、サウンド作りなど大いに参考にしたと語る。またジョンの家にいつも車で行っては一緒に曲を作っていた…などのエピソードは聴いていて嬉しい。ジョージがインドへ行っても静かにしてもらえなかったとか、リンゴのドラムのテクニックをフィル・コリンズが絶賛し、でもリンゴは「他の3人がドラムに興味が無くて良かったよ」と笑ってかわすセンスがいかにもリンゴでいい。その他は「A Day In The Life」「Strawberry Fields Forever」「Penny Lane」のPVで『+1』で発表済み。しかしビジュアルコンテンツを探すのが冒頭の真っ赤な画面の黄色の線を右に変えないと出てこないというまあ不親切なもので、散々探してしまった。(佐野邦彦)
ポール・マッカートニーの1980年代の最高傑作と評価の高い1989年リリースの『Flowers In The Dirt』が毎年恒例のDeluxe Edition(今までのSuper Deluxe Edition。外盤と表記を合わせた)でリリースされた。またも『Wild Life』と『Red Rose Speedway』が飛ばされて残念だが、ポールとエルヴィス・コステロの共作が4曲収録された事で知られるこのアルバム、ポールがこのBoxにコステロと2人で曲を作った時のOriginal Demoと、それらの曲を1988年にバンドで録音したデモの1988 Demoを9曲ずつ(内5曲は未発表曲)それぞれ分けてCDに入れ、計CD3枚、プラスコステロとのデモ作りなどが目玉のDVD1枚の4枚組でBoxを構成した。アルバム関連のB面曲などを日本のみで1990年に2枚組のSpecial Packageでリリースされていたが、その他のこの当時のアルバム未収録曲がダウンロードのみに回され、それも全てではなく中途半端でこのBoxの価値は大きく下がった。このコステロとのデモは2枚足しても65分しかなく1枚に圧縮できるので、膨大なアルバム未収録曲を2枚に分け、つまりあと1枚CDをプラスするだけでコンプリートだったのに、大きく期待を裏切った。そしてダウンロードにはアルバム未収録トラックが13曲入ったのだが、ダウンロードなのになぜか多くの曲が落としている。未だに海外のリリースが無くこの日本のみSpecial Packageでしか聴けない「P.S.Love Me Do(Studio
Version)」が入らなかったのは、外国人は特に残念だろう。さらにSpecial Packageに収録されていた「Figure Of Eight(Single VersionだがEdit)」の5インチCDシングルなどに入っていたソロになって『Give My Regards To Broad Street』に次ぐ2回目の新録音「The Long And Winding Road(Studio Version)」、「Figure
Of Eight(Single Version )」の3インチCDシングルには「Rough Ride」のツアーメンバーによるリハーサル・ヴァージョン、そしてこの2曲は『Flowers In The Dirt』セッション時の録音ではないが「Put It There」の5インチCDシングル収録の「Same Time Next Year」(『Back To The Egg』時の録音)と「Mamas Little Girl」(『Red Rose Speedway』時の録音。現行の『Wild Life』CDボーナストラック入り)が落ち、さらに「This One」の5インチCDシングル収録の「I Wanna Cry」も落ちたまま。13曲のダウンロードの内10曲は未CD化など全て廃盤、合計すると19曲もCDにしないというのは大失策で、後述の配信のみのコステロとのカセットデモ3曲も加え22曲をCDとして形にしなかったという点で個人的には不満一杯のDeluxe Editionだった。なお、今までのCD2枚だけの簡易版Deluxe EditionはSpecial Editionに表記を変えた。
まずベストナンバー「My Brave Face」だが、オリジナルデモはアコギのバックで、2人で快調にハモるがこの曲のキャッチーさはこのラフなデモでも十分際立っている。1988デモはバンドなのでベースが弾け、演奏は完成版よりシンプルだがハーモニーは厚く完璧だ。2分49秒くらいで一瞬ギターを3拍子で弾くのでドラムも一瞬止まり、いかにもリハーサルらしい。ロッカバラード風の「You Want Her Too」のオリジナルデモは、かけあいのコーラスなど、ギターだけのデモでも雰囲気は十分。1988デモはイントロ、エンディングの独特のフレーズは出来上がっているがデモなのでヴォーカルがシングルだったり、サビのキーボードがないなどシンプル。もちろん最後のジャズの演奏もない。ア・カペラで歌いだし、42秒からのサビからブライアン・ウィルソン風のサウンドが挟まるのが面白い「Don't
Be Careless Love」だが、オリジナルデモではその部分は普通のハモリで自然な流れだが、1988デモではレコードと同じバスヴォイスのコーラスになるので雰囲気が出てくる。ただバッキングがシンプルでキーボードなどがプラスにならないのでブライアン・ウィルソン風にはならない。徐々に盛り上がっていく重量感のあるバラード「That Day Is Done」も、オリジナルデモからアコギに加えピアノも入り雰囲気が出ていて、1988デモはコーラスも入りさらにポールの振り絞るバラードになっている。ここからは未発表のコステロとのデモだ。「The Lovers That Never Were」のアコギ+ピアノのバックで、ポールはさらに振り絞ってシャウトして歌うので、「Wild Life」の時代を思い起こされる。1988デモだとバンドサウンドになり、振り絞るがシャウトが弱い。「Tommy's Coming Home」のオリジナルデモは、アコギに2人のハモリが爽やかでビートルズ風。ただ1988デモは重めのドラムが加わりSEが加わるなどオリジナルデモのような爽やかさが失われている。「Twenty Fine Fingers」のオリジナルデモは、アコギ+ドラムで、ロカビリーのよう歌いだしからメロディアスなメロディが入るロックンロール。1988デモだとバンドになってよりギターのリフなどメリハリがついてカッコよくなっている。シングルB面などにはピッタリだった。「So Like Candy」のオリジナルデモは哀調を帯びた「Bluebird」路線の洒落た曲で、アコギのオリジナルデモは下降するベースラインなど雰囲気が出ているが、その後の曲の展開が「Bluebird」のように心に響かない。1988デモのバンドになると哀調パートから変化するとドラムがアップテンポになり、その響かない部分がより目立つ。もっと練ればアルバム収録曲になったかもしれないのに惜しい1曲。「Playboy To A Man」のオリジナルデモは7分ちょっとあるがこのピアノとアコギのロックンロールのデモは3分もなく残り4分は「The Lovers That Never Were」のより完成されたデモで、なぜ切り離してこちらを単独で使わなかったのは謎だが、ポールはこのBoxを出すにあたって最初のデモの粗削りな歌声を残しかたったのだろう。なおこのプラス分はHidden
Trackという事らしい。1988デモは「Playboy To
A Man」のみでバンドサウンドになったら一気にビートがタイトになりデモよりはるかにカッコ良くなっている。ポールのベースも最高で、何かに使って欲しかった。
先に少し書いたがこのBoxは専用サイトからアルバム曲以上の曲数のナンバーがダウンロードできる。その1は『Flowers In The Dirt(2017 Remaster)』。リマスターをダウンロードに回したのは正解で、例えば「My Brave Face」はオリジナルのポールの中央に大きく鳴るベースが小さくなっていて他のギターなどは聴きやすいが、曲の良さを損なっている。その2とその3は前述したオリジナルデモと1988デモの24Bit版。これはある意味、CDと同じとも言える。その4はこのボックスの最大の欠点、アルバムに伴ってリリースされたCDシングルや12インチのみの曲を不完全に集めたもので、どこがダメなのかは冒頭の文を参照して欲しい。そのため配信の目玉はその5の3曲のエルヴィス・コステロとのカセットデモ。「I Don‘t Want To Confess」はアコギだけのバックの粗削りな曲で、いい曲だがまとまりがなく光るものがない。ボツで当然か。「Mistress and Maid」はカセットの保存状態が悪く音が歪んでいる。この曲も悪くはないが、曲として統一感はあるものの光るものがない。「Shallow Grave」もマイナー調の曲で、このカセットデモは全てマイナー調。サビのハモりに少しビートルズを感じる。
さて最後はDVDだ。まずは『Music
Video』で10曲のPVが収められている。「My Brave Face」はまず日本人が日本語で自分はポールのコレクターで人生を懸けていると熱く語る当時、見たことがあるPV。最後のこの日本人はポールのベースを最高の逸品と披露すると日本の警察官2人に連れていかれるシーンがインサートされていて、ポールの歌と演奏よりこちらの方が印象に残るという事で演奏シーンとスタジオシーンのVersion2を作った。「This One(Version1)」はシングルジャケットのヒンズーの神様のようなイラストから始まり、ポールも瞑想していて後半はインド人がいっぱい登場する。つぶった目の上大きな目を書いたベタなギャグのような後半が薄気味悪い。Version2はカメラがストップモーションを多用していて見づらい。後半メンバーは古いイギリス人の軍服を着ている。「Figure Of Eight」はライブ仕立てで別撮りのようだが観客も映る。「Party
Party」はアニメーション。「Ou Est Le Soleil」はポールが横スクロールのゲームを見ているPVで面白い。「Put It There」はモノクロのPVで、白人と黒人の2組の父子を微笑ましく描き感動的。「Distractions」はポールの弾き語りの部分がモノクロで、どちらも曲が素晴らしいのでしっとりとしたPVだ。「We Got Married」もライブ仕立てで、こちらはツアーでの観客をインサートし、日本のツアーのシーンも見える。
次の『Creating Flowers In The Dirt』は3部作で最初の「Paul And Elvis」が目玉。ポールがバイオリンで遊ぶシーンからスタート、「My Brave Face」をコステロのみが歌ってバンドが演奏するデモでここでしか聴けない最も粗削りでロックンロールな演奏が楽しめる。ポールはずっとキーボードを弾いているのみ。「Twenty Fine Fingers」はポールとコステロがアコギを持ってバンドも入れ2人で歌うデモ。こちらはポールがリードだ。途中からドラムにアレンジを加えて全く別のアレンジに変わるのが楽しい。「Tommy's Coming Home」は2人の短いア・カペラ。そして再び「My Brave Face」だがコステロがアコギでポールはベース、ここでも歌はコステロのみのアップテンポのバンドデモ。笑ってしまって終わってしまう。そして演奏のテープを聴きながらやっとポールとコステロがユニゾンで歌い、コーラスパートは3人でハモる。歌だけの録音だがカチッと決まっている。『Bud In The Studio』はスタジオでのポールのリラックスしたレコーデング風景のクリップ。「Put It There」でポールがズボンをめくって生足で足を叩いてビートを付けるなどリラックスしている。他でもピアノを弾きながら狂ったようにシャウトするのも楽しい。「Motor Of Love」「Put It There」「This One」「How Many People」「Don't Be Careless Love」のデモが披露され、最後はポールが「Hello
Goodbye」のエンディングを歌って終わる。1987~88年にHog Hill Mill Studiosで録画されたものだ。『The Making
Of This One』はディーン・チャンバレンが「This One(Version2)」のPVの監督しているクリップ。ラストは既にソフトとして販売された事があるツアーメンバーの演奏のリハーサルを集めた映画『Put It There』なので詳しくは紹介しないが、『Flowers In The
Dirt』の曲だけでなく「C.Moon」「The Long
And Winding Road」「Ain’t That A Shame」「Let It Be」などの曲が入るので楽しい。冒頭のポールの「ジョンレノン以上の相棒はいない。どうしようもない真実なんだ。彼は怪物だから。彼以上の仕事相手はいない。バンドの一員でいることはロールスロイスを所有するよりぜいたくだね。」の独白には泣けた。(佐野邦彦)
ちょうど1年前に八重山諸島と宮古諸島のBlu-rayとDVDのソフトを八重山10枚、宮古6枚を紹介したが、この1年、Blu-rayも4Kの時代になり4Kソフトを3枚購入したので紹介したい。画質は本当に素晴らしいが、結局は監督のセンスしだい。いいものもあり、最低のものもあり、高額商品なので参考にしてほしい。その3枚の詳細はディクスごと、下記の冒頭3枚で紹介しているのでここではさわりだけ書くが、まずはビコムの宮古島4K.。これはドローン空撮を使ったこと、池間大橋下のビーチを入れたこと、そして完成して1年ちょっとの伊良部大橋のそそり立つようなアーチの橋を車からのカメラ映像がプラスポイント。ただ4番目に掲載した同社の宮古のBlu-rayとセットにしないと漏れが多いので「対」にすべき。こちらには4Kではまったくカットされた下地島空港沖の海が、まだJAL・ANAが訓練飛行していた時代なのであの最高のタッチ&ゴーが見られるし、伊良部島への廃止されたフェリーの旅が映っていて歴史的資料も大。ただこの2枚でも宮古島のベストビーチの吉野海岸がないので、それがまがいなりにも映っていて池間島のロープで下りていく秘密のビーチなども初登場したSharataの宮古の4K(5番目に紹介)も入れて3つでセットにしよう。ただ、このビコムは2枚組で、通常のBlu-rayプレイヤーでは再生できないUltra HD Blu-rayディスクが強制的にセットされ価格はamazonで23%引きでも9102円はあまりに高すぎる。誰が買うんだ?Sharataの八重山諸島の黒島4K。1年前に書いた時は「黒島がほとんど取り上げられない」と嘆いていたので、単独でそれも4Kで出すのは大変な英断だ。このSharataのは固定1カメで自然音のみで数分も映すというBVGともいっていい映像なのでセレクトを間違えたら最悪になる、幸いこの黒島は一番美しい西の浜を全体の2/5近く使って映していて、海の色の翡翠色も良く出ていて素晴らしい。他も黒島灯台以外はセレクトされ、また知らないビーチもあり、何よりも牧場の島という部分も感じられるカットがあって良かった。反面最低だったのはSharataの波照間島4K。波照間島には日本で最も美しいビーチの第1位に選ばれたニシハマがあり、この海の美しさを称してみな「ハテルマブルー」と呼んでいたのだが、ソフトのタイトルがその「波照間ブルー」、これでは多くの波照間島ファンは飛びついて買ってしまう。ところが2度に分けて20数分もあるニシハマが、なんと波打ち際にカメラを置いたままでかつ干潮時に撮影しているのであの濃い翡翠色と群青色が織りなすハテルマブルーが薄い青で終わってしまった。ニシハマを撮影する時は誰でも波打ち際から少し離れて白浜の後ろの方からベストの色合いを探るのに、監督はバカなのか?特にニシハマが美しいのは高いところから見下ろす場所からであり、ニシハマに降りる坂の上か、坂の途中で色の発色のいい場所を選んで撮るのにそのカットはひとつもなし。波照間島でニシハマがダメならそれで終わりだ。この4Kは金を払う価値ゼロの最低の代物になってしまった。だいたいメニューでニシハマを「西浜」と映像でもジャケットでも表記しているが、「北浜」でありそれだけでモグりと分かる。こんな初心者に監督させるとこうなるという悪い見本だ。このSharataでは先に褒めた黒島でもジャケットは伊古桟橋がドーンと真ん中に写る冴えないジャケットでこの会社はセンスがない。amazonで2割割引があっても4403円と高いのでこのシリーズの石垣島と西表島は既に出ている他社のBlu-rayにほとんどダブって入っていたのでパス、そしてこともあろうにはいむるぶしとユニマット&星野リゾートが島のいい部分をみんな買い占めた小浜島も4Kで発売したのは、この島の海は八重山の中では大したことがないといことを知らないから。この手の高級リゾートは自分達の買い占めたビーチに利用料を払わせる上にたいして美しくないのだから最低。小浜島は行く人が多いが、多くはこれらの高級リゾートに泊まりにきた金持ちか、「ちゅらさん」の舞台なので八重山の事をよく知らない初心者がミニツアーでセットされたビギナーで、我々八重山リピーターの中では小浜島の人気はビリ、一度行ったら二度と行かない島なのだ。だから当然買う訳がない。