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2026年6月13日土曜日

Johnny Kidd & The Piratesについて

  

 Johnny Kidd & The Piratesといえば、"元祖パブロック"や、"ビートルズ登場以前のロックンロール" と言われ、Guess Who? やThe Whoなどにもカバーされた「Shakin' All Over」のヒットがとても有名だ。海賊ルックでカットラスを振り回すライブパフォーマンスは圧巻だったという。映像がほぼ残っていないのは残念に思う。シングル音源、未発表音源が集められたベスト盤を聴いてみると、メンバーの交代が多かったこともあってか、まさにパブロックの元祖というような曲もあればマージービートの影響が強い曲、オーケストラを加えた曲など様々。パブロックの他、ロカビリー、パンク、ガレージ周辺への影響は今でも大きいように見える。

Shakin' All Over Johnny Kidd & The Pirates

 1950年代後半、ジョニー・キッド(本名: フレデリック・アルバート・ヒース)は、The Five Nuttersなどいくつかのスキッフルバンドに所属し、ペンキ職人をしながら作曲活動も行っていたそうだ。The Five Nutters時代の未発表デモ「Shake, Rattle & Roll」「She’s My Blood Red Beauty」も2015年にリリースされている。(Moochin' About – MOOCHIN12)

 ジョニー・キッドと、マネージャーだったガイ・ロビンソン作の「Please Don't Touch」はJohnny Kidd & The Piratesのデビュー曲になるのだけれど、それ以前にこの曲はThe Bachelors(アイルランド出身の同名バンドとは異なる)に提供され、EMIのパーロフォン・レーベルからリリースされていたようだ。ジョニー・キッドは、その提供をきっかけに知り合ったEMIのHMVレーベルのマネージャー、ウォルター・J・リドリーからレコーディングテストを受けるように勧められて合格したことでHMVレーベルと契約する。そして1959年に自分達の「Please Don't Touch」をレコーディング、リリースした。この時、レコーディング名としてJohnny Kidd & The Piratesと名付けられた。オリジナルメンバーはリードボーカルのジョニー・キッド、リードギターのアラン・キャディ、リズムギターのトニー・ドハーティ、ベースのジョニー・(フルーツ)ゴードン、ドラムのケン・マッケイ。そしてマイク・ウエストとトム・ブラウンがバックコーラスとなる。実際にはHMVと契約していたのはジョニー・キッドのみで、他メンバーはセッションミュージシャンとしての起用だったよう。その後の活動期間中、把握しきれないほどメンバーの交代や追加のセッションミュージシャンの起用がある。

 3枚のシングルをリリースした後、The Piratesはアラン・キャディを残して再編成されクレム・カッティーニ(ドラム)、ブライアン・グレッグ(ベース)が加わった。4枚目のシングルは最大のヒットとなった「Shakin' All Over」で、もともとはB面収録を予定して作られた曲だった。スキッフル歌手のチャス・マクデヴィットの店Frieght Train Coffee Barの地下で、コーラの木箱に座って6分程で完成させたそうだ。バンドでファーストテイクを録った翌日、ゲスト参加したジョー・モレッティ(Vince Taylor and His Playboysの「Brand New Cadillac」への参加でも知られる)がリードギターと、ライターを弦に当てて鳴らした音をオーバーダビングした2テイク目で完成した。想像以上の出来栄えだったためA面に変更され、1960年にリリースされるとイギリスチャート1位のヒットとなった。

 ここからさらに3枚のシングルをリリースするもヒットは難しく、The Piratesの3人はバンドを離れてColin Hicks & The Cabin Boysに加入、後には「テルスター」のヒットで有名なThe Tornadosとして成功した。ジョニー・キッドはバックバンドを失い落胆していたけれど、新たにもともとThe Redcapsというバンドにいたジョニー・パットー(ギター)、ジョニー・スペンス(ベース)、フランク・ファーリー(ドラム)が加わり活動は継続した。

 1962年のこの頃、ジョニー・キッドはソロ名義でのシングルをリリースしている。クライヴ・ウェストレイク作で、マイク・サムズ・シンガーズのコーラスとオーケストラをフィーチャーした「Hurry On Back To Love」は、彼らの経歴の中で注目されることは少ないけれど、これはこれでとても魅力的だと思う。

Hurry On Back To Love / Johnny Kidd

 The Piratesは新体制となったものの、ジョニー・パットーが体調不良で脱退したため、ジョニー・スペンスとフランク・ファーリーは旧友のミック・グリーンを誘った。このミック・グリーンを加えたラインナップはJohnny Kidd & The Piratesの黄金時代と言われることも多く、Dr. FeelgoodやThe Who、The Rolling Stonesなど後世に大きな影響を与えている。このラインナップでリリースされた最初のシングルは1962年、アーサー・アレキサンダーのカバー、「A Shot Of Rhythm & Blues」だ。B面はボ・ディドリーのカバー「I Can Tell」。

I Can Tell / Johnny Kidd & The Pirates

 1963年になると、マージービートブームの影響を強く受け、この時のマネージャー、ゴードン・ミルズが作曲した「I'll Never Get Over You」をリリースした。これはイギリス4位のヒットとなった。B面は、ジョニー・キッドとミック・グリーン作の「Then I Got Everything」。

 同年、ゴードン・ミルズ作の「Hungry For Love」、B面はベン・E・キングのカバー「Ecstasy」のシングルをリリース。これらと同日に録音していたリトル・ウォルターのカバー「My Babe」と、エドウィン & アルヴィン・ジョンソン作の「Castin' My Spell」はThe Piratesのソロシングルとして1964年にリリースされた。

 次のシングルは、ナポリ民謡の「サンタ・ルチア」に英詞をつけてアレンジした「Always and Ever」だった。そしてB面曲の「Dr. Feelgood」は、70年代の代表的なパブロックバンドDr. Feelgoodの名前の由来にもなった、傑作のひとつとして語られる曲だ。

 しかしこの頃からは、以前のキャバーン・クラブなどでのライブと異なり、ブラックプールで犬の出し物の後にライブをさせられるなど、退屈なショーが続きミック・グリーンはうんざりしていたそう。1964年の「Jealous Girl」のリリースを最後に彼は脱退し、Billy J. Kramer With The Dakotasに加入した。ジョニー・スペンスとフランク・ファーリーはバンドに残り、ギタリストが何人か加入脱退を繰り返すも失敗続きだった。

 1965年、カナダのバンドGuess Who? が「Shakin' All Over」をカバーし、大ヒットする。カナダで1位、アメリカで20位を記録した。Guess Who? はもともとChad Allan And The Expressionsというバンドだったのだけれど、当時カナダのバンドは興味を持たれにくかったため、レコード会社はこのシングルをGuess Who? の名義で偽装し、ブリティッシュ・インヴェイジョンに紛れたバンドであるかのように見せかけてプロモーションした。「Shakin' All Over」が大ヒットしたことで、その後もこの名前が定着してしまったそうだ。後にクエスチョンマークをとり、The Guess Whoとなった。この年、本家のJohnny Kidd & The Piratesも「Shakin' All Over」の新バージョンをリリースしているのだけれど、注目されることはなかったようだ。

 ミック・グリーン脱退後に4枚のシングルがリリースされ、その最後はジョニー・キッドのソロ名義で1966年にリリースされた「It's Got To Be You」だった。バックにジョニー・ハリス編曲のオーケストラ、バックボーカルにはThe Marionettesが参加し、ヒットを見込んでいたもののチャートインしなかった。

 この後バンドは解散し、落ち込んだ生活を送っていたジョニー・キッドが音楽活動そのものを辞めることも考えていた時、ジョニー・キッドに雇われていたオルガン奏者レイ・ソーパーが、ジョニー・キッドのファンだったベーシスト、ニック・シンパー(後にDeep Purpleに加入)に連絡をとる。ニック・シンパーは同じくJohnny Kidd & The Piratesファンのロジャー・トゥルース(ドラム)とミック・スチュワート(ギター)に連絡し、新しいThe Piratesとしてジョニー・キッドを誘った。彼らの演奏が素晴らしく、元気をとり戻したジョニー・キッドは再びツアーを開始する。もともとはソロに転向する予定で、黄金期のメンバー、ミック・グリーン、ジョニー・スペンス、フランク・ファーリーにThe Piratesを名乗る権利を許可していたため、(このThe Piratesの活動は2000年代まで続いた)ジョニーキッドの新しいバンドはJohnny Kidd & The (New)Piratesと呼ばれた。再び観客からの期待も高まり始めた最中だった。1966年10月、移動中のジョニー・キッドとニック・シンパーが乗っていた車が衝突事故を起こす。2人は病院に搬送され、ニック・シンパーは一命をとりとめる。しかしジョニー・キッドは病院到着時に死亡が確認された。最後のシングルになった「Send For That Girl」はジョニー・キッドの死後にリリースされた。


参考・参照サイト:

http://www.adiebarrett.co.uk/johnnykidd/index.htm

https://www.allmusic.com/artist/johnny-kidd-the-pirates-mn0000239961#biography

http://forgottenbands.blogspot.com/2009/10/red-e-lewis-redcaps-then-red-cats.html?m=1


執筆者・西岡利恵
60年代中期ウエストコーストロックバンドThe Pen Friend Clubにてベースを担当。



【リリース】

■ 2026年3月18日発売
2枚組 NEWアルバム
『Songularity - ソンギュラリティ』

   【全曲試聴トレーラー】
       
【LIVE】

■2026年6月20日(土)
名古屋・鶴舞KDハポン
【Songularity Tour 2026 in NAGOYA】

■2026年9月26日(土)
渋谷LOFT HEAVEN
【Add Some Music To Your Day】

チケット予約











2026年3月15日日曜日

The Pen Friend Club:『Songularity』リリース★インタビュー後編

The Pen Friend Club『Songularity』

リリース★インタビュー後編
(インタビュー前編はこちら

前列左よりリカ(A,Gt,Cho)、そい(Key,Cho)、西岡利恵(Ba,Cho)
後列左より平川雄一(Gt,Cho)、祥雲貴行(Dr)、中川ユミ(Glo)、Niina(Vo)
大谷英紗子(Sax)は現在海外在住で休団中

“「自分一人では辿り着けない場所に行ける」
という面白さのほうが大きいです。“

●本作『Songularity』の曲作りとレコーディング期間を教えて下さい。また各ソングライターの方を含めて、その期間のエピソードをお聞きしたいです。

◎平川:曲作り自体は2023年頃から断続的に始まっていて、本格的に「アルバムとしてまとめよう」と動き出したのは2024年の後半でした。
ソングライターそれぞれが持ち寄った曲を、何度もアレンジし直し、歌詞を書き換えながら、レコーディングも含めてかなり長い期間じっくり向き合うことになりました。
多くの楽曲では、前々作に続いてミュージシャンのYouth Yamadaに作詞を担当してもらっています。一方で、Niinaの単独曲や彼女がメインで手がけた楽曲は彼女自身が作詞し、リカの曲でも作詞で共作しました。そして前述したように今回、そいも初めてペンクラに楽曲を提供しています。
結果的に、合計5名のソングライターを擁するバンドになりました。『Songularity』の制作を始めてからは、まるで曲が溢れるように次々と生まれていった感覚があります。
あるライブの打ち上げで「曲が増えすぎてどうしようもない」と悲鳴を上げていたところ、音楽家のカンケさんから「じゃあ二枚組にしてしまえばいい」と言われて(笑)。あの一言も、今振り返ると印象深い、この作品の転機となった出来事だと思います。
個人的に特筆すべき点としては、僕と西岡利恵との作曲共作が増えたことです。
 「コード進行とAメロ、サビまではあるけど、Bメロだけ思いつかない」といった場面で西岡利恵に助けを求め、そこから一緒に曲を完成させてもらうことが何度もありました。

◎西岡利恵:『Songularity』 の制作がどんな風に始まったのか記憶があいまいになるくらい長かった気がしてますが、作り始めて曲が増えていく中で20曲2枚組にしようって話になって、いいねー!て盛り上がったものの録り始めるとやっぱり多くて、なかなか進まなくて焦りつつもなんとか録り終えたという感じでした。
曲作りに関しては、今回自作曲の他に平川と4曲、Niinaと2曲共作もさせてもらってます。曲の一部だけを作ったり、もともとあるコード進行に合わせて一部メロディを考えたりとかが多いんですが、自分には思いつけないものがまず基準にあって作っていくというパターンだからこそ思いつくものがあって、これが楽しいんです。

●業界では大先輩のカンケさんからのアドバイスは大きいですね。また作曲面で平川さんは西岡さんとの共作曲が増えたとのことで、初期のレノン=マッカートニーのようですが、パート毎に繋げて1曲に仕上げていくコツはどういったことでしょうか?各々にソングライティングのスタイルがあるので、自然に1曲として仕上げていくのは大変だと思いますね。

◎平川雄一:レノン=マッカートニーのように、というのは光栄ですが(笑)、実際はもっと実務的です。
僕の場合はコードや構造の骨組みを先に作ることが多いのですが、展開部分で行き詰まることがある。そういう時に西岡に渡すと、自分では選ばないメロディの跳躍やリズムの処理が返ってくる。それで一気に曲が立体的に跳ねるんです。
大変さよりも、「自分一人では辿り着けない場所に行ける」という面白さのほうが大きいです。
最終的には、どちらがどこを書いたかよりも、“The Pen Friend Clubの曲として自然かどうか”が基準です。そこさえ揃っていれば、スタイルの違いもむしろ「良さ」になると思っています。

◎西岡利恵:平川との共作の場合、平川が作ったコード進行がまずあることが多いんです。そのコードの雰囲気である程度方向性が示されるのと、たぶんもともと聴いてきた音楽のジャンルや年代に重なる部分もあるので、世界観が大きくズレたりは起こりにくかった気がしてます。


後列左より4人目がリカ(A,Gt,Cho)

◎リカ:今回のアルバムの製作期間の中で私が1番心に残っているのが、前作のレコーディングの為にメンバーのお家に集まった時にNiinaとリーダーがセッションしながら曲を作ったことです。(のちに「Grow」になる曲です。)
残念ながらその場に全員が集まっていたわけではないのですが、メンバーの家族も一緒に呑んだり食べたりしながら温かいカジュアルな空気の中で音楽を作る場に居られたことが、自分の中で知らずに抱いていた憧れや夢見ていたことが思いがけず現実となって目の前に現れたような感覚でとても幸せな時間でした。これまでのバンド活動の中でも、自分の人生の中でも忘れられない時間だと思います。
その日の夜にお風呂の中で"Lily's Smile"というサビのフレーズが頭の中に流れ出して、次の日には私も曲作りを始めていたのがボイスメモに残っていました。その日に感じた気持ちや感覚が消えないように、すぐにでも曲に落とし込みたかったのをよく覚えています。


 
Lily’s Smile (Official MV)

●楽しいレコーディング風景が目に浮かびます。またそんな出来事が自身のソングライティングにも影響されたということですね。リカさんはペンクラに加入されたことがきっかけで、シンガー・ソングライターとして成長できたことは何でしょうか?

◎リカ:自身で曲を作ることも、自分の声や演奏が録音され作品として残ることも、ステージに立つことも、このバンドに加入してから初めて経験する事ばかりなので、自分自身がシンガー・ソングライターという自覚はあまり無いんですが全てにおいて成長させてもらっているのではないかなと思います。
ペンフレンドクラブは私にとっての音楽活動のスタート地点であり、今もなお大切な場所です。

Niina(Vo)

◎Niina:一年以上前のある日、何人かで集まって曲の最初のコードを作り始めた時から、こんなにも早く時間が過ぎたなんて、いまだに信じられません。
あの週末、あの集まりこそが、今こうして胸を張って「完成した」と言える、唯一無二のペンクラ・アルバムへと向かう旅の始まりでした。そしてそれは、私たちバンドメンバー一人ひとりが前へ進むための、確かな原動力でもありました。

もちろん、その道のりは決して平坦ではありませんでした。意見がぶつかり、苛立ち、言い合いになったこともあります。確か、何人かは泣いたはずです。(私もその一人です!)

それでも、そんな混沌の中には、いつもたくさんの笑いがありました。頭の中でクリエイティブな火花が散り、互いのアイデアがぶつかり合うことで、次々と新しい発想が生まれていく。解決策を見つけ、笑える瞬間を見つけ、前に進むためのモチベーションを見つけながら、バンドとしての絆を保ち続ける——それは本当に多くの章からなる旅で、私はそのすべてを心から楽しんでいました。

ひとつ、当時とても辛かった出来事をシェアさせてください。

私は自分で掲げた目標と、それを達成することへのメンバーからの期待に、強いプレッシャーを感じていました。気持ちが追い込まれ、ストレスからやる気を失い、作業を先延ばしにしてしまっていた時期がありました。締め切りが迫る中、スケジュールを守ることで精一杯だったバンドリーダーの平川さんを、限界まで追い込んでしまったと思います。彼も、きっと私と同じか、それ以上に大きなストレスを抱えていたはずです。

私は彼を怒らせてしまい、私自身も感情的になってしまいました。それは、メンバーとの間で経験した中で、最も大きな衝突でした。

それでも私は、その日のうちに立ち直ることができました。
メンバーに囲まれ、支えられていたからこそ、その日、私は自分の役割を最後までやり遂げることができたのです。あの瞬間はとても緊張感があり、繊細でしたが、同時にバンドやメンバー、そしてこの音楽を聴いてくれる人たちへの愛を、強く実感しました。
多くのことを学び、そしてあの出来事があったからこそ、私たちは以前よりもさらに強く結ばれたのだと、今ははっきりと感じています。

●Niinaさんは日本に帰国して6年、ペンクラに加入されてから3年になりますが、幼い頃から15年の長い期間イギリスで生活されていたので、日本に生まれ育って暮らしてきた他のメンバー達とは考え方や感覚的なズレはある筈です。お話を聞いて、そんなカルチャーの違いや期待に対するプレッシャーから立ち直ることができたのも、音楽を通して平川さんをはじめメンバー達と理解し合えたからだと考えだと思います。
本作のレコーディングやこれまでのライブ活動を経て、これからもこのバンドで長く活動していける自信がついたのではないですか?

◎Niina:そうですね、正直、バンド活動以外のところからくるストレスで、続けられるのかと不安になった時期は一時的にありました。でも、そこで一度状況や自分の気持ちを落ち着かせてみると、こんな仲間は一生見つからないなと思ったんです。
ただの音楽好き同士が、たまに集まってバンドをやるという関係ではなくて、これはもしかしたら私だけがそう思っているのかもしれませんが、死ぬまでの友達だと思っている人たちです。
これまで頑張ってきたアルバムや、積み重ねてきたライブの経験も含めて、今のところ、私が東京に住んでいる限りは、みんなと楽しく音楽を演奏して、歌って、作り続けていきたいという気持ちが強いです。

前列左がそい(Key,Cho)

◎そい:今回は1曲、「Merry-Go-Around」を作曲させていただきました。実は大元のメロディ自体はかなり前にできていて、数年前に「The Pen Friend Clubにこんな曲があったらいいな」とイメージして作ったものなんです。平川さんにも一度聴いてもらったのですが、当時制作していたアルバムの方向性とは少し合わず、いったんお蔵入りになっていました。
そこから時間を経て、メンバーの意見も取り入れながら構成を再構築し、今回あらためて形にすることができました。平川さんのアレンジによって世界観がより立体的になり、Niinaの歌が入ったことで、想像以上にドラマティックな楽曲になったと感じています。

●そいさんが作曲された「Merry-Go-Around」が、アレンジによってペンクラ・サウンドに生まれ変わったようですね。以前からご自身はソロのシンガー・ソングライターとして活動されていますが、ペンクラに加入して7年近くになります。ソロ作品にフィードバックされて得られたものはなんでしょうか?

◎そい:ペンクラに加入してから、コーラスワークの魅力を強く感じるようになり、自分のソロ楽曲にも積極的に取り入れるようになりました。
そして、これまでしっとりとした楽曲が中心だったソロ活動にも、ペンクラから学んだノリよく盛り上がれる曲など新しい方向性が加わり、表現の幅が広がったと感じています。



“『Songularity』は、
今のThe Pen Friend Clubがどこに立っていて、
どこへ行こうとしているのかを、
そのまま音にしたアルバム”

●では各メンバーの方からお聞きしたエピソードの中で、完成してから振り返って、本作にとって重要だったと感じたものを教えて下さい。

◎平川:『Songularity』は、今のThe Pen Friend Clubがどこに立っていて、どこへ行こうとしているのかを、そのまま音にしたアルバムです。
全20曲、頭から最後まで通して聴いてもらいたいです。今の時代とは逆行してるとは思いますが、それでもアルバムという形を信じたいと思っています。


◎西岡利恵:曲数が多いことそのものも『Songularity』の重要な色になってる気がしてるんですが、さらに今回5人のメンバーが作曲していることもあって、たくさんの曲の中でも色んな世界観に切り替わっていく感じがおもしろいなと思っています。


◎リカ:じっくりと製作に時間をかけたこと、そして今まで以上に楽曲に対する自分たちの考えや意見をみんなで伝え合えたような気がするので、そのことは作品全体の仕上がりにとても大きく影響しているのではないかなと思います。
時間をかける事に私はメリットもデメリットも感じましたが、少しずつ濃さを重ねながら、時間に余白も生まれ、その間に新しい視点やアイデアも多く生まれたような気もします。


◎Niina:アルバム制作の過程で私たち全員が経験した、あの"感情ジェットコースター"のような日々が、いくつかの曲を完成させるまでの道のりを形作っていったのだと、私は強く感じています。

個人的には、「無理に強がらなくてもいい」ということに気づきました。
できるだけ多くの曲を一人で、誰の力も借りずに作り上げたいという自分のプライドよりも、グループとして一つになり、それぞれの強みやアイデアを持ち寄って素晴らしい曲を生み出すことの方が絶対大切だと気づきました。
お互いのベストを引き出すためのチームワーク、つながり、そして支え合い。
それこそが、私にとってこのアルバム制作において欠かせない、とても大切な要素でした。


◎そい:これまでは、どちらかというと平川さんの色が強いバンドという印象があったかもしれません。でも今回は、メンバーそれぞれの個性を活かしながら楽曲を制作し、意見を交わし合ってアルバムを完成させることができました。それはバンドにとって大きな変化だったと思います。
私は作詞には関わっていませんが、メンバーそれぞれが“自分たちが歌う言葉”に真剣に向き合っていたのも印象的でした。時間をかけて丁寧に作ったからこそ、聴くほどに味わいが深まる作品になったのではないかと感じています。


左より平川雄一(Gt,Cho)、祥雲貴行(Dr)、西岡利恵(Ba,Cho)、
リカ(A,Gt,Cho)、大谷英紗子(Sax)、Niina(Vo)、中川ユミ(Glo)

●本作の曲作りやアレンジ、レコーディングのイメージ作りで聴いていた楽曲を
メンバー全員で合計20曲程を選曲下さい。

『Songularity』着想曲プレイリスト

Back In The U.S.S.R./The Beatles(『The Beatles』1968年)

Now And Then/The Beatles(『Now And Then - Single』2023年)

A Day In The Life/The Beatles
(『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』1967年)

Surf’s Up/The Beach Boys(『Surf’s Up』1971年)

That Same Song/The Beach Boys(『15 Big Ones』1976年)

Summer Means New Love/The Beach Boys
(『Summer Days (And Summer Nights!!)』1965年)

Isn’t She Lovely/Stevie Wonder
(『Songs in the Key of Life』1976年)

You Are the Sunshine of My Life - Single Version With Horns
/ Stevie Wonder (『Original Musiquarium』 1982年)

Eden Rock/The Fifth Avenue Band
(『The Fifth Avenue Band』1969年)

Eyes Of The World/Grateful Dead(『Wake of the Flood』1973年)

Paradise/Norah Jones (『Visions』 2024年)

Underdressed at the Symphony
/Faye Webster(『Underdressed at the Symphony』2024年)

Feeling Sad Tonight/Carole King (『Rhymes & Reasons』 1972年)

A Summer Song/Chad & Jeremy(『Yesterday’s Gone』1964年)

Let No Man Steal Your Thyme/Pentangle(『Pentangle』1968年)

Grand Hotel/Procol Harum(『Grand Hotel』1973年)

Lost Stars/Keira Knightley
(『Begin Again (Music From and Inspired
By the Original Motion Picture)』2014年)

SANDY/Ronny & The Daytonas(『SANDY』1964年)

Band On The Run/Paul McCartney & Wings
(『Band On The Run』1973年)

Do It Again/The Beach Boys(『20/20』1969年)



●リリースに合わせたライブの予定が判明していればお知らせ下さい。

◎平川:リリース後は、4月から6月にかけてレコ発ツアーを予定しています。

・4月25日(土)
  東京・渋谷LOFT HEAVEN
・5月2日(土)
  大阪・天満橋RAW TRACKS
・6月20日(土)
  名古屋・鶴舞KDハポン

【詳細・予約】
アルバムの楽曲を中心に、今のバンドの形をそのままライブで伝えられたらと思っています。


●最後にメンバー皆さんから本作『Songularity』のアピールをお願いします。

◎平川:現メンバーのうち5名が作曲を担当しており、演奏面でも以前とは違う一面も覗かせる、メンバーそれぞれの個性がはっきりと表れた、非常にバラエティに富んだ曲が揃っています。初めてThe Pen Friend Clubを聴く方にも、今のバンドの幅や奥行きを自然に感じてもらえる作品だと思います。


◎西岡利恵:メンバーそれぞれの持ち味とか、バンドとしての変化がこれまで以上に感じられるアルバムなってると思います。最後まで聴いてみてもらえたら嬉しいです。


◎リカ:ボリュームたっぷりなので聴き終わると満足感もたっぷりですが、不思議とまた最初からリピートしてみようかなとも思える中毒性もあるアルバムだな、なんて思います。
聴いていると色々な国や星々を旅しているような気持ちに私はなります。
みなさんにも「Songularity」の世界をゆったりと何度でも楽しんでもらえたらいいなと思います。


◎Niina:今までのペンクラとはまったく違う、作曲したメンバーそれぞれの個性がはっきりと表れた、最高にクセになるアルバムだと思います!
一聴して「この曲めっちゃいい!」という曲もあり、何度も聴いて、しっかり聴いて、、気づいたらすごく好きになっている曲もある。
そのどちらも、このアルバムならではの楽しみ方だと思っています!


◎そい:個人的な話になりますが、アルバム制作期間中に第一子を授かりました。お腹に命が芽生えたなかでの制作でしたが、メンバーに支えられながら無事にレコーディングを終えることができました。そんな背景もあって、私にとっては特別な思い入れのある作品になっています。ぜひたくさん聴いて、それぞれの楽しみ方で味わっていただけたら嬉しいです。


◎祥雲貴行:
2枚組のアルバムというと、自分が高校生くらいのときには今よりも聴くことが多かった記憶があります。
まず曲がたくさん入っててうれしい~という無邪気な感想があって、キャッチーな1枚目と渋めな2枚目というのがありがちで、最初は1枚目の方が好きだけど聴き込んでいくと2枚目の方が好きになっていくパターン。
「Songularity」への印象もそれに似ていて、MDプレーヤーでJ-POPをヘビロテしてた当時の、今思うと自分の原点のような気持ちを思い出しました。

「Songularity」はそれぞれの曲に作曲者の個性がよく出ていながら自然な全体の調和もあるので、通しで聴くとより深い満足感があると思います。
メンバーたちの少しずつ異なる好みや生い立ちが互いにインスピレーションを与えていて、そういうところから生まれる意外性がアルバム全体の奥行きにつながっているのかなと思いました。
またそんな意外性から、ドラムのアレンジを考えレコーディングを進める過程では予想外に苦労したり楽しめたりする瞬間が多く得られました。

ときどき思わぬ角度から不意打ちをくらうような新鮮さ、バンドの中心部にある古典へのリスペクト、意欲、未来への期待。
アルバムを聴く時間を通じてそういったもの(あるいはまったく別のもの)を感じてもらえたら幸いです。


◎中川ユミ:今回の新しいアルバムは2枚組で20曲あります。毎回再生する度に(ちょっと多いな…)と思うのですが、いつの間にか2週目3週目といつまでも聴いていたりします。本当に飽きがこないので、ぜひいろいろな方に手に取ってもらいたいと思います。


◎大谷英紗子:メンバーの想いが今まで以上に詰まったアルバムになっているのではと思います。全曲オリジナル、本当にすごいアルバムです。私はレコーディングしながら、いちファンとして楽しんだ感覚でした。是非お気に入りの曲を見つけて色んな場面で聴いていただけたら嬉しいです。


(設問作成編集、本編テキスト:ウチタカヒデ


2026年3月14日土曜日

The Pen Friend Club:『Songularity』リリース★インタビュー前編

 ~WebVANDA管理人推奨・今年聴くべきアルバム~

 
 The Pen Friend Club(ザ・ペンフレンドクラブ)が、『Back In The Pen Friend Club』から約2年振りとなる待望のニューアルバム『Songularity』(Penpal Records/PPRD-0011)を3月18日にリリースする。 
 本作は全収録曲が20曲で2枚組という、そのボリュームばかりか、2022年9月の『The Pen Friend Club』以来となる、全曲がメンバーによる作曲のオリジナル作品(全て英語歌詞)ということで、熱心なファンにとって喜ばしい内容となっている。 
 
前列左よりリカ(A,Gt,Cho)、そい(Key,Cho)、西岡利恵(Ba,Cho)
後列左より平川雄一(Gt,Cho)、祥雲貴行(Dr)、中川ユミ(Glo)、Niina(Vo)
大谷英紗子(Sax)は現在海外在住で休団中

 まずは彼らザ・ペンフレンドクラブ(以下ペンクラ)のプロフィールに改めて触れよう。2012年にリーダーでギタリスト兼メイン・ソングライターの平川雄一により結成された。ビーチ・ボーイズやフィル・スペクター周辺の60年代中期のウェストコースト・ロックをベースとした音楽性を持ち、60'sマニアである平川のセンスを基に活動している男女8人組のバンドである。これまでに幾度かのメンバー・チェンジがあり、特にボーカリストは現在のNiinaで5人目になるが、こうしてバンド活動を14年も継続しているのは稀有なことで、バンドとして強固なアイデンティティが確立されているからに他ならない。
 現在までに9枚のアルバムをリリースしており、内カバー曲を中心としたクリスマス・アルバム1枚、ライブ・アルバム1枚、全曲カバー・ナンバーを収録したアルバム1枚をリリースしており、2枚組となる本作が加わることで、彼らのリリース・カタログも多彩になってきた。  なお本作のレコーディングには、米国の温故知新系ロックバンドWondermintsの主要メンバーで、ブライアン・ウィルソン・バンドにも長年参加して参謀格だった、ダリアン・サハナヤ(Darian Sahanaja)がハンドクラップで参加しているのは注目に値する。これはブライアン信奉者同志で親交のある平川のために友情参加しただけではなく、本作のクオリティを素直に認めたからだろう。2004年に幻の未完成アルバム『Smile』(Rec:1966~1967年)をリレコーディングし『Brian Wilson Presents Smile』として蘇らせた、最大の功労者として知られる一流クリエイターのダリアンが、世界的には無名である日本人インディーズ・バンドのレコーディングに参加すること自体が稀なのだ。

 ここでは筆者による収録曲全ての詳細解説と、平川を中心としたメンバー達へのインタビューの前編と後編の2回に分けて紹介する。また曲作りやレコーディング中イメージ作りでメンバー達が聴いていたプレイリストを後編でお送りする。 

Harbinger (Official MV)

 DISC-1冒頭の「Harbinger」は平川が全コード進行、ベースの西岡利恵が全メロディという共作になっている。また平川や西岡が手掛けた曲を中心に英語歌詞を多く手掛けるのはニューヨーク在住の日本人音楽家Youth Yamadaだ。この曲は昨年9月にドラムレスのラフミックスを聴かせてもらったヴァージョンからブリリアントな導入部であると感じて、このアルバムは傑作になるだろうと確信した曲である。イントロのギター各種のアルペジオ、複雑に転回しながら心に響くコーラス・パート、ビートリー(ポール・マッカートニー)なギター・ソロ、ドラムの祥雲貴行がプレイする多彩なフィル、そして「Let’s see the beginning of you that's to come・・・」で締める歌詞も非常に良い。
 続く「Got To Be Rock And Roll」は先行シングル第二弾で2月27日に配信開始された、平川作曲、Yamada作詞によるシンプルなロックンロールで、コーラス・アレンジはビーチ・ボーイズからの影響が強い。イギリス育ちでネイティブな発声のNiinaのボーカルは、こういったスタイルの曲でも強い説得力があり、堂々とした歌唱で聴き惚れてしまう。

 
Got To Be Rock And Roll (Official Short MV) 

 チェンバロ(ハープシコード)の刻みとシャッフル・ビートの「Never Let You Go」は平川=Yamada作のソフトサイケ・ナンバーで、弊サイト読者に強くアピールするだろう。中期ビートルズ風の複雑なコーラス・パートや変拍子とワルツ・パートが挿入されたり、深いリヴァーブを効かせたブレイクがあったりとアレンジも非常に凝っており、カート・ベッチャーがプロデュースしたEternity's Childrenの諸作からヴァン・ダイク・パークスの『Song Cycle』(1967年)まで許容する音楽マニアは聴くべきだ。
 インタビュー後編でリカ(アコースティック・ギター&コーラス)が触れる「Lily’s Smile」は先行シングル第4弾で、リカが作曲と歌詞のモチーフを作り、そこからNiinaが娘に捧げた歌詞を書いたラヴソングになっている。ペンクラとしては珍しいヒスパニックなリズムとスイング感を持ったサンシャイン・ポップだ。後半のパートで現在海外在住である大谷英紗子が帰国のタイミングでダビングした複数のサックス・プレイを聴ける。またコーダでは娘Lilyの笑い声もオーバー・ダビングしており、スティーヴィー・ワンダーの「Isn't She Lovely」(『Songs in the Key of Life』収録 1976年)を彷彿とさせて微笑ましい。
 「Begin Tomorrow」も昨年9月のラフミックス段階から注目していた深い音像を持つ平川=西岡=Yamada作の曲で、ブライアン・ウィルソンにアンダース&ポンシアのセンスが加わったソングライティングとアレンジに感心したが、全コード進行とヴァース1は平川、ヴァース2を西岡が手掛けている。その西岡がプレイする耳に残るベースラインとそいがプレイするオルガンの響き、また平川のバリトンギターとユニゾンする中川ユミによるグロッケンのオブリガードも重要だ。
 このオブリのラインだが、ペンクラの1st『Sound Of The Pen Friend Club』(2014年)に収録されたブルース&テリーの「Don't Run Away」(1966年)をカバーした際に遡る。嘗て同曲をこよなく愛する山下達郎氏が「Only With You」(『BIG WAVE』収録/1984年)としてオマージュした自作曲があり、同じようにグロッケンのオブリガードを入れているのだが、こちらは山下氏のオリジナルである。ペンクラの「Don't Run Away」カバーではこの「Only With You」のオブリのラインを引用するという二重構造のオマージュをしており、当時筆者しか指摘しなかったと平川から聞いたが、非常にマニア心をくすぐった。今回この「Begin Tomorrow」で、再びこのオブリのラインを登場させているのが嬉しい。

 渋谷系から入ったソフトロック・ファン読者のために、平川=Yamada作の「The National Bird」にも触れるべきだろう。同曲はRoger Nichols & The Small Circle Of FriendsやThe Carnivalに通じる、疾走感あるボッサのリズムを持つソフトロック・ナンバーで、Niinaの表現力あるボーカルも相まって完成度が高い。アレンジ的にこのタイプの曲では高域にトランペットに配置させてオブリをプレイさせるのが定石だが、ここでは大谷のサックスとゲストのMiyu Ohashiによるフルートのユニゾンにしているのがペンクラらしく独自性を感じる。是非7インチでシングルカットして欲しいナンバーである。
 Niinaのソングライティングによる「Really Feel」、そい作曲による「Merry-Go-Around」(作詞はYamada)はそれぞれ彼女達のカラーが出ており、前者は現代的でコンテンポラリーな曲調であるが、平川をはじめメンバー達によるアレンジによってペンクラ・サウンドに仕上げているのが見事だ。左チャンネルのギターやハモンドオルガン系の音色やビーチ・ボーイズ風のコーラス・パートが肝になっている。後者はフィル・スペクターのフィレス・サウンドをオマージュしたことでより原曲が活きている。
 平川以外では唯一のペンクラ・オリジナルメンバーで、弊サイトのガレージバンドの連載コラムでもお馴染みの西岡単独作曲の「Thelma」と「Die Alone」は、異なるタイプの曲を器用に書き分けている。いずれもYamadaによる英語の歌詞で、前者はテルマというミュージカル女優に歌を懇願するシーンを描いており、80年代英国ギター・ポップの匂いがするが、平川がプレイするバンジョー・ソロが始まるとアメリカン・カントリー・ポップになるという展開が面白い。後者ではタイトル通り、一転してシリアスなサイケデリック・ブルース・ロック風で、この作風は前々作『The Pen Friend Club』で西岡が披露していたスタイルである。ここでは平川のスライドギターのソロ、祥雲のドラミングが一級のプレイで何度も聴きたくなる。


 
Grow (Official Short MV) 

 DISC-2は先行シングル第三弾の「Grow」から始まり、この曲が誕生したきっかけはインタビュー後編でも触れられるが、歌詞も手掛けたNiinaがヴァース1とサビを作曲し平川は全体のコード進行を作った原曲に、西岡がヴァース2を足して完成させている。Niinaによる歌詞は一人称で自らを描いたようで、様々な葛藤に打ち勝っていこうとする姿に感動してしまう。サビへの導き方も自然でアレンジ的にも完成度が高く、パート毎に3人それぞれが作ったとは思えない不思議な統一感があり、バンドメンバーの絆を強く感じさせた。
 続く「You’re The One 1965」は平川=Yamada作で、歌詞の世界観とややファースト・テンポのシャッフル・ビートから典型的なソフトロックである。優和なヴァースからサビでビターなマイナーに転調する感じなど、Spiral Starecaseの「More Today Than Yesterday」(1968年)、マニアックなところではThe Golden Gateの「Lucky」(『Year One』収録 1969年)あたりに通じて好きにならずにいられない。
 「In Your Light」はリカの単独のソングライティングで、英語詞はNiinaと共作している。この曲は70年代初期シンガー・ソングライター系の曲調とアレンジで、恐らく彼女が敬愛しているであろうキャロル・キングの匂いを強く感じさせる。こういった従来のペンクラとは毛色の異なるサウンドを許容している点が新鮮である。 
 一転して初期ビーチ・ボーイズ風の「Breakin’Up」は平川=西岡=Yamada作で、ほぼ全体を平川が作曲しヴァース1を西岡が修正したようだ。とにかくボーカルのNiinaがシャウトしまくる、ライブで映えする曲である。ペンクラの魅力はこういったタイプの曲に象徴される、一般音楽リスナーが初見で楽しめる親近性を持ちながら、DISC-1に収録された「Never Let You Go」や「Begin Tomorrow」など、筆者のようなコアなマニアック層にもアピールする深い音楽性を内包させている点なのだ。

 主にNiinaのソングライティングした原曲に西岡がサビを追加した「Little Life」は、マイナーからサビでメジャーに転調するブルース進行のバラードだ。ひと際シリアスな歌詞であるが、Niina自身と平川やリカらによる美しいコーラスが効果的に機能して曲の完成度を高めている。
  西岡=Yamada作の「For It's Worthwhile」は、ワルツに一部変拍子が入る独特なリズムに複雑なコーラス・アレンジが絡む美しいラヴソングだ。Yamadaによる歌詞は奥ゆかしく恋の手ほどきをしており、基本リズムを刻むバンジョーは平川、後半パートで入る間奏のサックス・ソロは大谷がそれぞれプレイしている。
 そして本作の先行シングル第一弾として2月20日にいち早く発表された「California Again」は、DISC-2の後半に収録されており、平川=西岡=Yamada作で、ヴァース1は西岡、ヴァース1の一部とヴァース2の作曲は平川がそれぞれ手掛けている。いきなりビーチ・ボーイズの「Do It Again」(1968年)を意識したアレンジなのはペンクラらしいのだが、こういったノベルティ感覚に近い曲もNiinaのボーカリストとしての力量で聴かせてしまうのはさすがである。

 
California Again (Official Short MV) 

 多感な時期をイギリスで育ったNiinaのソングライティングによる「Promise」は、実にオーセンティックなカントリーソングで驚かされる。英国人によるアメリカン・ルーツミュージックへの憧憬という感覚に近いのかもしれないが、嘗て英国のザ・バンドとされたブリンズリー・シュウォーツのニック・ロウやその弟子筋で、日本でも信奉者(筆者もだ)が多いエルヴィス・コステロなど良質のカントリーソングを残した先人も多いのだ。ここでは平川によるスティールギターを模した味わい深いスライドギターやバンジョーのプレイが楽しめる。
 一転して続くタイトル曲「Songularity」は平川作のギター・インスト曲で、アップビートなサーフィン&ホット・ロッドとは異なる、6/8拍子の静かで美しいバラードだ。骨格はビーチ・ボーイズの「Summer Means New Love」(『Summer Days (And Summer Nights!!)』収録 1965年)だろうが単純にそれだけではなく、『Pet Sounds』(1966年)収録の「Let's Go Away for Awhile」で多用されたティンパニやバリトン・サックスなど楽器編成であり、同アルバムの歌物で展開されたコーラス・アレンジを投入しているのは平川のセンスであり、まったく聴き飽きない。

 ラストの「Be Here With You」は平川=Yamada作で、こちらは完全にビートルズとポール・マッカートニーへの愛情のこもったオマージュであり、骨格はWingsの「Band on the Run」(1974年)だが、モザイク的に複数曲のエッセンスを付加している。この「Band on the Run」自体ビートルズ時代の『Abbey Road』(1969年)B面の「You Never Give Me Your Money」から「The End」のメドレーの内、ポール単独曲を1曲に凝縮させた感がある。この曲でも僅か2分58秒の尺にドラマティックな展開を凝縮させており、特にテンポアップするブリッジのパートのバックには、「A Day In The Life」(『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』収録 1967年)で、ジョン・レノンとポールがそれぞれソングライティングしたパートを繋ぐ24小節のため、プロデューサーのジョージ・マーティンがアレンジしたオーケストラの「無調クレッシェンド」までオマージュさせているのだ。このアイデアを実現させるのはなかなか困難なので、正に脱帽してしまった。

 アルバム全編を通してこれまでのペンクラ史上、最高傑作であることは間違いないので、筆者の詳細解説と彼らへのインタビューを読んで興味を持った音楽ファンは、速やかに予約し入手して聴いて欲しい。いや聴くべきだ。


The Pen Friend Club『Songularity』
リリース★インタビュー前編
“今回はより開かれた状態で、
今のバンドの姿をそのまま封じ込めた作品”

●前作『Back In The Pen Friend Club』(フル・カバーアルバム)から約2年振り、全てオリジナル曲のアルバムとしては、2022年9月の『The Pen Friend Club』以来になります。 しかも今回は2枚組で全20曲というボリュームですが、こういったコンセプトでリリースすることは、以前より計画していたんでしょうか? 

◎平川雄一:前作が新体制での「挨拶がわりのカバーアルバム」だったこともあり、次はオリジナル曲だけでアルバムを作る意識は早い段階からありました。 前々作の8thアルバム『The Pen Friend Club』(2022年)に始まった【オリジナル曲のみでのアルバム制作】を継続したかった、という気持ちです。

メンバーと制作を進める中で曲数が自然と増えていき、今のThe Pen Friend Clubの状態を削らずに残すなら、この形が一番正直だと感じ、2枚組20曲という構成になりました。 個人的にはバンドの歴史の中で2枚組の大作を一つは作っておきたい、という願望もずっと持っていました。

●フル・オリジナルアルバムとして、その『The Pen Friend Club』と本作の違いは、2枚組20曲を収録というボリューム、またボーカリストがNiinaさんに変わったことで、前々作(『The Pen・・・』)とアプローチをどの様に変えるよう心掛けたでしょうか? 
Niinaさんのキャラクターや声域のブライト・ポイントというのか、メジャーキーの曲の比率が増えたと感じました。

◎平川雄一:メジャーキーの曲が増えたのは、単純に曲数が増えたから、ということだと思います。僕自身がもともとあまりマイナーキーの曲を書かないので、数が増えれば自然とそうなる、という感じですね。 

今回大きく違うのは、ソングライターの人数です。
前々作『The Pen Friend Club』(2022年)は、コロナ禍での制作でした。オリジナル曲のみでアルバムを作る、という強い意志のもとで、「自分たちの手で希望を見つける」ような感覚があったと思います。
ただ、その時代の空気もあって、どこか鬱屈としたトーンがアルバムに滲んでいるのも事実です。
そして前々作は、僕、西岡利恵、リカの3人による作曲でしたが、今回『Songularity』ではそこにNiinaとそいが加わり、5人のソングライターでの体制になりました。
人数が増えれば、メロディ、コードの発想も変わります。今回はそうした複数の書き手の個性が、そのままアルバムの広がりになっています。
前々作が「限られた状況の中で希望を探す作品」だったとすれば、今回はより開かれた状態で、今のバンドの姿をそのまま封じ込めた作品だと思っています。

●前作からクラウドファンディングを利用してアルバム制作のバジェット(予算)を確保されていますが、この切っ掛けや苦労点などあれば聞かせて下さい。 

◎平川:クラウドファンディングを使い始めた一番の理由は、制作のスピードと自由度を保ちたかったためです。 
正直、これが無かったら厳しかったと思います。
制作費の目処が立つことで、より妥協せずに進められる。一方で、支援してくれる方々に対する責任、緊張感が、結果的に作品の完成度を押し上げてくれたと思っています。
「レコーディング見学」や「ハンドクラップでの録音参加」などの返礼品もあり、ファンの方々と一緒に制作している感覚があり非常に楽しかったです。

●本作制作において、クラウドファンディングの成果が大いに出ていることで良かったです。今後もこの手法を導入してコンスタントに新作をリリースしていきたいですか?

◎平川雄一:そうですね、特にコンスタントに作品を作っていく僕らのようなバンドにとってクラウドファンディングは、有効な仕組みだと感じています。
続けるかどうかはその時々の状況次第ですが、少なくとも今は、僕らも楽しみながら取り組めています。(レア音源をファン向けに出せるのが嬉しかったりします。) 


インタビュー後編に続く>こちら


(設問作成及び編集、本編テキスト:ウチタカヒデ






2026年2月4日水曜日

生活の設計 『長いカーブを曲がるために』

”大塚兄弟主演、フェリスはある朝突然に” 

 ロックバンド“生活の設計”が、セカンド・アルバム『長いカーブを曲がるために』を2月11日にアナログLPでリリースする。今月7日には本リリースを記念したワンマンライブを開催するので参加する読者もいるだろう。

 本作『長いカーブを曲がるために』は、昨年10月15日に配信で先行リリースしたアルバムなので、既に愛聴している読者も多いと思うが、そんな配信音源より再生周波数の帯域が格段に広く、高音質で聴けるばかりか、所有感を味わえるなどアナログLPのメリットは多々あるので、拘りを持つ音楽ファンは是非入手して頂きたい。

左から大塚薫平、大塚真太朗
 
 彼ら生活の設計のプロフィールは、先月のワンマンライブの記事で触れたばかりだが、リーダーでボーカル兼ギター、ソングライターの大塚真太朗と、実弟でドラム兼コーラスの大塚薫平による2人組のロックバンドである。前身バンド“恋する円盤” や“Bluems (ブルームス)”時代を含め、9年以上の活動経歴を持っており、2023年4月にファースト・フルアルバム『季節のつかまえ方』、同年11月に7インチ・シングル『キャロライン』をリリースしている。なお本作『長いカーブを曲がるために』に収録された内2曲は、GREAT3(1994年~)の片寄明人がプロデュースを手掛けており注目なのだ。
 またバンドのデビュー当時から、元ピチカート・ファイヴで著名クリエイターの小西康陽氏から高評価を得ており、ファッション・カルチャー雑誌『POPEYE』では対談記事が掲載され、その存在は音楽マニアから一般層にも広がっている。特筆すべきことに今年1月11日には、テレビ朝日の人気音楽番組『EIGHT-JAM』の【プロが選ぶ年間マイベスト2025】にて、元SUPERCARのギタリストで現在作詞家兼音楽プロデューサーとして活躍する、いしわたり淳治氏に、本作収録曲「小東京(リトル・トーキョー)」を選出されるという快挙もあり、今後彼らの活動もより一層注目されるだろう。


 ここでは筆者による収録曲の詳細解説と、メンバー2人が本作の曲作りやレコーディング中、イメージ作りで聴いていたプレイリストをお送りするので聴きながら読んで欲しい。
 冒頭の「街とダンサー」は、大塚(真)作らしい青春ブルーアイドソウルと呼べる、ポジティブながら散文詩的歌詞と躍動的なグルーヴが眩しい。サビの「しかめつらでもいいよ 帰り道はでかい音で音楽を聴くよ・・・」というライン、右チャンネルやセンターで聴ける、ゲスト・ギタリストの元Seukolの廣松直人によるブルージーなリフが強く耳に残り、曲の重要なエレメントとなっている。歌詞と曲の完成度が高く、冒頭のリード曲として相応しい。
 続く「稀代のホリデイメイカー」は昨年9月17日に先行配信リリースされたシングルで前出の通り、片寄明人がプロデュースをした2曲の内の1曲で、レコーディングにはGREAT3のサポート・キーボディストで数多くのセッションで知られる堀江博久と、セッションマンとしてメジャー・ワークも多い井上真也が参加している。
 アップテンポなシェイクビートに、Pico(樋口康雄)の「I LOVE YOU」(1972年)を彷彿とさせる和製ノーザン・ソウル風コード進行とスキャットのイントロでまずは耳を奪われるが、「とにかく外へ出て、旅に出て、さまざまなものを体験しよう」というテーマを持つ歌詞と大塚(真)の溌溂したボーカルが、メロディアスでポップなロック・ミュージックの心地良さを思い起こさせるナンバーに仕上がっている。大塚(薫)のやや前乗りのドラミングに、井上のバックビートにアクセントを持つべース・ラインが独特なグルーヴを形成し、堀江によるオルガンもメインのコード・ワークの他、グリッサンドのアクセント、スタッカートを活かせたオブリガード的リフなど多彩なプレイを繰り広げている。曲が持つべき方向性に的確に導いていくという、片寄のプロデュース力(りょく)を垣間見れる。

片寄明人

 3曲目の「いちょう並木の枯れるまで」は、弊サイト読者にも強くアピールする東海岸シャッフルのリズムを持つソフトロックで、アルバム・リリース前のライブでも披露されており、筆者も生で聴いて直ぐに気になった曲である。弊サイト前進のVANDA監修書籍『ソフトロックA to Z』で発掘された、ジェリー・ロス(Jerry Ross)のプロデュースでジョー・レンゼッティ(Joe Renzetti)がアレンジした、Keithの「Ain't Gonna Lie(嘘はつかない)」をオマージュしており、ソフトロック・マニアは唸る筈だ。
 A面ラストの「いさかいないせかい」は、片寄がプロデュースしたもう1曲で、フィラデルフィア・ソウル風のギター・リフ、Stax Records~Hi Recordsでドラマー兼プロデューサーとして活躍したアル・ジャクソン(Al Jackson Jr.)が編み出したリズム・パターン、ノーザン・ソウル風のフレーズ(「Am I The Same Girl」(「Soulful Strut」でも知られる))がモザイクでオマージュされたポップスだ。歌詞のテーマがユニークで、日常の情景から反戦イズムに繋がっていくというのが、作者である大塚(真)の世界観なのだろう。サウンド的にも大塚(薫)と井上によるリズム隊のグルーヴ、堀江のアープ系アナログ・シンセの温かみのあるソロなど聴きどころは多い。


 B面冒頭の「タイニー・シャイニー」は昨年12月6日にアナログ・7インチでシングルカットされていて、ポール・ウェラーがフロントマンだったThe Jam(1972年~1982年)に通じる、パンキッシュなネオモッズ感覚のサウンドが特徴だ。大塚(真)による退屈な日々から逃避行したクラビングのワンシーンを切り取った歌詞が瑞々しく、彼のボーカルもこのようなアップビート・ナンバーでは一層映える。ゲスト参加したHedigan's(ヘディガンズ)のギタリスト、栗田将治がプレイするリード・ギターの存在感は極めて大きく、双方にとって意義のあるコラボレーションとなった。また大塚(薫)の激しいドラミングとコンビネーションするのは、ゲスト参加したLIGHTERSのべーシスト清水直哉だ。
 同曲7インチのカップリングだった「君に起こりますように」は、レギュラー・サポートメンバーであるベーシストの大橋哲朗とキーボーディストの眞﨑康尚が参加し、大塚(真)のジェントルな歌詞とボーカル、眞崎による印象的なピアノが耳に残るラヴソングだ。ミドルテンポでメロディックなソフトロック調のサウンドで、米東海岸シャッフルのブリッジを挟んでいてアレンジ的にも凝っており、弊サイト読者にもアピールした好ナンバーに仕上がっている。

 続く「ポモドーロ」は、眞﨑のウーリッツァー系エレピがメインコードを刻む、変拍子パートを持つ2分15秒の小曲だ。大塚(薫)と大橋のリズム隊も特殊なテンポ・チェンジを巧みにプレイしている。タイトルのポモドーロはイタリアンのトマトソース・パスタ名で、歌詞のモチーフの一つで、ガールフレンドとのローマ旅行がテーマになったラヴソングに仕上がっている。
 B面ラストの「小東京(リトル・トーキョー)」は、前出の通り、『EIGHT-JAM』の【プロが選ぶ年間マイベスト2025】でいしわたり淳治氏に取上げられたばかりでなく、日本テレビ系ニュース番組の天気コーナーで一時タイアップされていた軽快なポップスだ。レギュラー・サポートメンバーであるパーカッショニストの關街によるコンガに絡むクランチ気味な廣松のエレキギター、大塚(薫)のビートも乗って展開していく。
 この曲も歌詞の世界観がユニークで、ラヴソングの要素もあるが、高倍率ズームレンズでその視点が瞬時に移動していくのが興味深く、大塚(真)の高い作詞能力を感じさせる。その他のゲスト・ミュージシャンは、キーボーディストの眞﨑、べーシストの清水が参加している。
 

生活の設計『長いカーブを曲がるために』
プレイリスト  
 
大塚真太朗
 アルバムを聴いてもらった人でソフトロックやソウルミュージックを愛好しているリスナーだったらすぐ分かる、というかこのWebVandaの読者の方々にはすぐわかってしまう曲ばかりを元ネタにしているので、列挙するのも野暮かもしれませんが、、

でも曲名やアーティスト名をこうして書いてみるだけで心がウキウキする大好きな曲ばかりです。
  「タイニー・シャイニー」に多大なる影響を与えた「恋はヒートウェーヴ 」はもちろん原曲も大好きですがあえてTHE COLLECTORS版で。ザ・リボンズというバンドの『君に届かない歌を大いに歌う』という作品に興奮した体験も曲に入れています。

 何卒『長いカーブを曲がるために』をよろしくお願いいたします。

■A Week Away / Spearmint(『A Week Away』1999年)
■Ain't Gonna Lie / Keith(『98.6 / Ain't Gonna Lie』1967年)
■I’ll Be Around / The Spinners(『Spinners』1973年)
■恋はヒートウェーヴ / THE COLLECTORS(『愛ある世界』1992年)
■Too Young To Be One / The Turtles(『Happy Together』1967年) 


大塚薫平
 友達のミュージシャンや日頃支えてくれているサポートミュージシャンとの共作を通じて身近なバンドの音楽に触れる機会が増えた。それと同時に、ソリッドでいて勢いのある60、70年代のロックのドラムやそこのリファレンスを受けた音楽を意識して制作にあたっていました。
 「稀代の〜」のリハでKey堀江さんに「(そのような)勢いあるドラムは年取ると出来なくなるよ」と言われました。なるべくずっとやれるよう筋トレしてます。

■In The Modern World / Fontaines D.C.(『Romance』2024年)
■マンション / Hedigan‘s(『Chance』2025年)
■It’s Not True / The Who(『My Generation』1965年)
■It’s Ok To Cry / Phoebe Katis(『It’s Ok To Cry』2020年)
■Deadstick / King Gizzard And The Lizard Wizard 
(『Phantom Island』2025年)



 なお本作はプレス枚数限定のアナログLPで、インナースリーヴの歌詞とクレジットの裏面にメンバーの大塚兄弟とプロデューサーの片寄明人への“ここでしか読めないインタビュー”が掲載された特別仕様となっている。
 筆者の収録曲の詳細レビューを読んで興味を持った音楽ファンは、早期にリンク先のショップで予約して入手しよう。

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(テキスト:ウチタカヒデ





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2025年12月26日金曜日

WebVANDA管理人選★2025年のベストソング


 今年も恒例のWebVANDA管理人が選ぶ年間ベストソングを発表したい。
 幣サイト母体のVANDA誌が指向するソフトロック系ではないカテゴリーの楽曲も一部選出しているが、これまで同様に分け隔てなく音楽の多様性を許容することが管理人の信条であるので、どうか理解して頂きたい。選出した楽曲は、今年2025年にリリースされ、弊サイトで取り上げた作品を中心に、管理人が執筆前に幾度もリピートした収録曲であり、アルバムを象徴する曲である。
 今回もインディーズ・レーベルからリリースされたミュージシャンの作品が多く、プロモーションがメジャーに比べて限定的な彼らを応援する意味で今後も続けていきたいと思う。毎年の繰り返しであるが、この記事で改めて知った各アルバムは、これからでも遅くないので、リンク先から是非入手して聴いて欲しい。
 今年も選出趣旨からコンピレーション、セルフカバーを除く他者のカバー作品は除外とした。昨年同様、順位不同のリリース順で紹介する。
    ※サブスク登録ベストソング・プレイリスト 


 ☆She Is Mine / 近藤健太郎 
(『Strange Village』収録・レビュー記事はクリック 
シャッフル・ビートで始まる、とっておきのソフトロックであるこの曲は、レジェンド・シンガー・ソングライター杉真理がコーラスで参加し、その美声でこの曲を格調高くしている。アレンジ的にもよく練られていて、共同プロデューサー及川雅仁がプレイするヴィブラフォンの旋律を聴いて切なくなるビーチボーイズ・ファンもいるだろう。詞曲共に完成度が高く、ファースト・ソロアルバム『Strange Village』を代表する曲である 。


 ☆子午線 / 北園みなみ
(『Meridian』収録・旧作レビュー記事はクリック
 Lampの2014年の『ゆめ』でその手腕を発揮していた鬼才クリエイターの10年振りの新作であり記念すべきファースト・ソロアルバムの冒頭曲である。転調とテンポチェンジを繰り返す、音楽を深く考える人のためのジャズファンクだ。ストリングス・セクションは、今も戦禍の中にあるウクライナはキーウのスタジオ”Kaska Records”にて、同スタジオの主でプロデューサーのアナトリー・シュマルグンの下でレコーディングされ、これ以上ない緊張感をこの曲に与えている。 


 ☆贅沢な週末を / Nagakumo
(同名配信シングル・旧作レビュー記事はクリック) 
2023年にも年間ベストに選出し、今も音楽通から熱く注目されている大阪の4人組ネオネオアコ・バンドの今年春の配信シングル曲。得も言われぬ疾走感と極上で甘酸っぱいサビのメロディ、表現力豊かで透明感のある紅一点コモノサヤのボーカルなど、そのスタイルはデビュー当時からであるが、メイン・ソングライターのオオニシレイジのソングライティング・テクニックも更に向上したように思える。来年にはニューアルバムを期待できるだろう。 


 ☆お星さま採集~白鳥倶楽部のテーマ~ / スワンスワンズ
(同名シングル・レビュー記事はクリック
偶然出会ったセルフ・プロデュース・アイドル・デュオのシングルで、3分弱の尺なのだがパート毎に転調を繰り返してメロディも複雑で、歌詞の世界にインスパイアされたこのサウンドは、サイケデリック・プログレッシブロック・マニアでないと作れない。特にサビのメロディはクラシック音楽の素養がないと編み出せないし、ブリッジのペンタトニック・スケールのメロでクールダウンさせるテクニックも巧みだ。そのセンスも含め令和のシド・バレットかロイ・ウッドと呼べる。 


 ☆Night In Soho / Wink Music Service
(同名7インチ・レビュー記事はクリック
拘りのポップ・グループWMSの7インチ・シリーズの第5弾。ロンドンのウエスト・エンドの一角にあったソーホー地区への憧憬の歌詞を持ち、曲調やサウンドも歌詞の世界そのままに60年代へのオマージュに満ちている。ジミー・ウェッブ作「Up, Up And Away」のリフが引用され、イントロやコーラスを含めたサウンド全般は、ソフトロックのエッセンスを濃縮して1989年に制作された英国のSwing Out Sisterの「You On My Mind」をオマージュしている。


☆いちょう並木の枯れるまで / 生活の設計
(『長いカーブを曲がるために』収録・関連作レビューはクリック) 
今月初頭7インチでリリースされたばかりの「タイニー・シャイニー」や、片寄明人がプロデュースした先行配信シングル「稀代のホリデイメイカー」も悪くないが、このサイトに相応しいベストソングとしてはこの曲を選ぶ。アルバム・リリース前のライブでも披露されていた、シャッフルのサンシャイン・ポップ然としたソフトロックで、弊団体監修書籍『ソフトロックA to Z』でピックアップしたKeithの「Ain't Gonna Lie(嘘はつかない)」をオマージュしている。


 ☆ナサリー / 無果汁団
(『ナサリー』収録・レビュー記事はクリック
普遍的バラードでサビの8小節目で解決させるテンション・コードが入る瞬間は鳥肌が立つ。新主流派以降のジャズ・ミュージシャン(ドナルド・フェイゲン含む)やスティーヴィー・ワンダーとそのフォロワー達しか自在に使いこなせない高度なコード進行というか、こういった無垢なバラードに、そんなサムシングなスパイスを付けられるのが、彼らの音楽理論の教養の高さやセンスを強く感じさせる。本曲収録の4thアルバムは彼らの最高傑作となった。


 ☆A White Heron/白い鷺 / Cambelle
(『Magic Moments』収録・レビュー記事はクリック) 
ローラ・二ーロ風コード進行のイントロのピアノから耳に残り、歌詞と曲が高次元で溶け合った、その世界観にはノスタルジーを超えたサムシングが潜んでおり、熊谷慶知のソングライターとしての能力や歌詞の世界を表現するソフトなボーカルには感心するばかりだ。アナログシンセ・ソロやエレキギターのリフ、歌詞に呼応するドラミングも曲を構築する重要なエレメントとなってこの曲の完成度を高めている。初期オフコースの匂いもする。 


 ☆NOVA ERA / Saigenji
(同名配信シングル・関連作レビュー記事はクリック) 
バークリー音楽大学でアジア人初の助教授となったYUKI KANESAKAとのコラボレーション第2弾で、ライヴパフォーマーとしての彼を如実に現している。ミナス・サウンド系のコード進行とポルトガル語の歌詞に、激しいビートが映えており、YUKI の新主流派風ピアノ・ソロ、Saigenji 自身によるフルート・ソロも繰り出され、正にブラジリアン・エクスペリメンタル・ダンスナンバーとなった。来年はこのコラボレーションがアルバムとして結晶することを願っている。


 ☆街のレヴュー / The Bookmarcs
(『BLOOM』収録・レビュー記事はクリック
男性2人組ユニットのフォース・アルバムの重要曲で、イントロからAzymuthの「Fly over the Horizon」に通じるアナログ・シンセのポルタメントが効いたフレーズから引き込まれる。横浜関内にあるレンガ作りのカフェ”馬車道十番館”を舞台にしたと思しきラブソングで、近辺のロケーションが織り込まれており完成度も高い。サウンド的には前出のアナログ・シンセやエレキベースのアクセント、シンセタムのフィルによって、横浜のナイト・シーンが目に浮かぶ演出で脱帽してしまう。



音楽活動再開☆特別枠

☆除霊しないで / フレネシ
(同名配信シングル・関連作レビュー記事はクリック) 
音楽活動再開後初の配信シングルで、11年もの長いブランクを感じさせないクオリティである。テーマから極めて独自過ぎるが、サビでキャッチーなリフレインにしてしまうという言葉選びをした歌詞、音数をそぎ落としたレトロフューチャーなエレクトロポップ・サウンドは健在で、唯一無二なフレネシ・ワールドが炸裂している。来年にはニューアルバムも期待できそうなので、更に不可思議な楽曲を期待している。


(選曲及びテキスト:ウチタカヒデ