2025年1月19日日曜日
DAVID PATON:『Communication』
2022年11月5日土曜日
Don Cooperについて
近頃フォーキーな音楽が耳に留まることが多くて、前回はDon Crawfordについて書いたけれど、もう1人気になっていたのが70年代前半頃に活動していたカンザス州出身のDon Cooperというシンガーソングライター。フォーク、ジャズ、ソウル、ブルース、ソフトロックなど様々な要素が入り混じりながらも、それらが不自然なく楽曲に心地よく溶けこんでいて、とても味わい深く感じる。
彼は幼い頃にウクレレを弾き始め、そのうちにカントリー音楽に興味をもつようになる。高校生の頃は、James Brown、Buddy Holly、The Beach Boysなどをカントリースタイルで演奏していたらしい。その後、Bob Dylanの1963年のアルバム『The Freewheelin' Bob Dylan』から人生の転機になるほど大きな影響を受けたそうだ。
4枚のアルバムがニューヨークのRouletteレーベルからリリースされている。
1969年 『Don Cooper』(Roulette – SR-42025)
1970年 『Bless The Children』(Roulette – SR-42046)
1971年 『The Ballad of C.P. Jones』(Roulette – SR-42056)
1973年 『What You Feel Is How You Grow』(Roulette – SR-3009)
Don Cooperの音楽はRouletteレーベルでのリリースは適切ではなかったとも言われていて、当時商業的にはそれほど成功しなかったそうだ。
有名ではなかったものの、代表作の2ndアルバム『Bless The Children』は90年代のフリーソウルのシーンで人気が高まった作品らしい。オリジナル曲の他、James Taylorのカバー「Something In The Way She Moves」などが含まれる。タイトル曲の「Bless The Children」は、哀愁に満ちたアルバムの中でグルーヴィさが際立つ曲。
2022年9月30日金曜日
The Courettes:『DAYDREAM / デイドリーム』(なりすレコード/TARGET EARTH RECORDS / NRSP-7103)
同アルバムのサウンドは、それまでのハードなガレージ・ロック路線から、ポップな曲調でリヴァーブを効かせたウォール・オブ・サウンドにモディファイした曲を主体にしたことで、日本のオールディーズや60'sポップス・ファンの心を掴んだだろう。この転換期にキーマンとなったのは、同アルバムの先行シングル「Want You! Like A Cigarette」(2020年)から彼らの共同プロデューサーとなったセーレン・クリステンセン(Soren Oakes Christensen)の存在で、彼はデンマークのブルース・ロックバンド“The Blue Van”のキーボーディストとして2003年から活動していた。セーレンがソングライター兼プレイヤーとして加わったことで、現在のコーレッツ・サウンドが形成されたのは間違いない。
2019年7月21日日曜日
名手達のベストプレイ第4回~チャック・レイニー
サブスクリプションの試聴プレイリストを聴きながら読んで欲しい。
◎Tim Bucklyがソウルに歩み寄ったアルバム。60’sのロックバンドの残り香も強く感じさせる質感に加えられた独自のファンクネスはDr.Feelgood同様にパンクの出現を予言している感じもするが、Chuck Raineyまでもがそれに応じたフィーリングに溶け込んでいる。
Get on topの遺伝子はGang of fourなどによって受け継がれ現代まで生き続ける。
●Street Walking Woman / Marlena Shaw
(『Who Is This Bitch, Anyway?』/ 74年)
◎『Who Is This Bitch, Anyway?』を初めて聴く方へ。 冒頭よく分からない会話が続いて曲をスキップしたくなると思うが、3分だけ待とう。
唐突な曲入り、高速ファンクからスウィングビートへのリズム変化、随所に施されたギミックの数々に圧倒される筈。プログレッシブなだけでなくプレイヤーの個性が溢れ出ていて有機的なサウンドに仕上がっているのもこの楽曲の魅力。
●He is the One / Peggy Lee
(『Let's Love』/ 74年)
◎当時のシンガーソングライター的な叙情性冴える70’sらしいゴスペル曲。 アルバムタイトル曲はThe歌心ベーシスト・ポールマッカートニーだが今回は控え目。代わりとばかりにこの曲でチャックが低音からハイフレットまでベースという楽器を知り尽くした滑らかな歌心を聴かせてくれる。
●PEG / Steely Dan
(『Aja』/ 77年)
◎スクウェアなボーカルに対し主役級におしゃべりなベース。小節前半のギターとキーボードのユニゾンバッキングに呼応するように小節後半を台詞で埋める。Rick Marottaの裏打ちアクセントハイハット等、隙間なく敷き詰められたリズムの骨子の中で軽快に喋り歌うことが出来るのは正に匠の技。
●I Don't Know / Syreeta
(『One To One』/ 77年)
◎後半に行くにつれボルテージがブチ上がる演奏陣の妙技を堪能出来る楽曲。本アルバムではSyreetaの2番目の夫でベーシストのCurtis Robertson Jr.もベーシストとしてクレジットされているので正確なプレイヤーは定かではないが、Leon WareとSyreeta共作のこの楽曲のソウルマナーはチャックの手によるものと推測。
●Woman's Blues / Laura Nyro
(『Eli and the Thirteenth Confessio』/ 68年)
◎Laura Nyroの高い音楽性を表現するのにChuck Raineyも必要だったと改めて 認識させられた曲。
●A Ray of Hope / The Rascals
(『Freedom Suite』/ 69年)
◎ベースのグルーヴがこの曲のブルーアイドソウル感を出す一翼を担ってますよね。
●Lansana's Priestess / Donald Byrd
(『Street Lady』/ 73年)
◎Sky High Productionでもいい仕事しています。 ループでず~っと聴いていても飽きません。
●Green Earrings / Steely Dan
(『The Royal Scam』 / 76年)
◎Steely Danの曲の中で個人的にベスト5に入る曲。派手な動きは特にないけど、一番影響受けたベースラインかも。
●It's So Obvious That I Love You / Sergio Mendes & Brasil '77
(『Home Cooking』 / 76年)
◎ポップスの中でもChuck Raineyのベースは生き生きしていて、最高のグルーヴを聴かせてくれます。
【小園兼一郎(small garden)】
サックス吹きでもありベーシストでもあります。 https://twitter.com/sgs_kozonohttps://smallgardenstudio.jimdo.com/
●You've Got a Friend / Roberta Flack
(『Roberta Flack & Donny Hathaway』 / 72年)
◎音数の少ないレイドバック気味の前半から後半の16分アプローチの変化が とても自然で心地良く、盛り上げ過ぎない好演です。
チャック参加の全ての曲に言えますが音価の調節に関して右に出るものは いないと思います。
●The Fez / Steely Dan
(『The Royal Scam』 / 76年)
◎ほぼ固定フレーズの繰り返しであるが「レイドバッカー」としてのチャックの ジャストの演奏が聴けるのはSteely Danだけ(でも絶対に前には出ない)。曲は前半と後半でドラム、ベースの位置がなぜか違うという変わったミックスです。
●Shine Like You Should / Melissa Manchester
(『Don't Cry Out Loud』 / 78年)
◎ジャストビートとシャッフルの中間、絶妙なハネ具合のオブリが満載。 バスドラと合わせる基本形の演奏ながら玄人好みのビート。 チャックのミュート術。
●Green Flower Street / Donald Fagen
(『The Nightfly』/ 82年)
◎チャックである必要があるのかというビートの曲だが天然のもたり具合を 最大限にソリッドに持っていった曲として有りだと思っています。 オブリやハンマリングは健在なのですがドラムが打ち込みのせいもあって 冷たい印象のチャックということでそれも有りです。
●君がいない / SMAP
(『SMAP 007 ~ Gold Singer』 / 95年)
◎バーナード・パーディとJ-popへのアプローチ。音の歯切れ具合は最高です。 要所のフレーズを聴く限り、かなり自由に演奏していると思われるので チャックの魅力が生かされた名演に入れて良いと思います。
【TOMMY (VIVIAN BOYS)】
オフィシャルサイト: https://twitter.com/VIVIAN_BOYS
●Spanish Twist / The Isley Brothers
(7”『Twist And Shout』B面/ 62年)
◎Phil Spectorによる「Twist And Shout」初出版を嫌った作者版、のオケ流用。スペクターのスパニッシュ嗜好との因果な曲名。演奏は、後年メロウグルーヴを多産するKing Curtis組やTrade Martinら。
●God Only Knows / Gary McFarland & Co.
(『Does The Sun Really Shine On The Moon?』/ 68年)
◎早逝の作・編曲家/ヴィブラフォン奏者のリーダー作、冒頭のThe Beach Boysの屈指曲。自身のSkye Recordsより。収録のチャック作「Three Years Ago」にも注目。
●Most Of All / The Arbors
(『Featuring: I Can't Quit Her - The Letter』/ 69年)
◎「Mas Que Nada」で人気だが、チャック参加の本作にもハーモニー・ソフト・サイケの名曲が。1分43秒〜のベースが導く怒涛の昇天ハーモニー。Moonglowsのドゥーワップ曲(55年)が、新たな美しさで再誕。
●Little Girl / Donny Hathaway
(『Donny Hathaway』/ 71年)
◎拍最後尾を狙う打点、悠久の白玉、曲想を担うダブルストップ。ダニー絡みならPhil Upchurch『Darkness,Darkness』(Tommy LiPuma、Nick De Caro参加)の「What We Call The Blues」も名演。
●Eloise(First Love)/ The Chuck Rainey Coalition
(『The Chuck Rainey Coalition』/ 72年)
◎上述Skye Recordsでのリーダー作より。チャック作曲。69年録音、ニューソウルを遥かに先取る。P-Vine版CDには自ら歌うSteely Dan「Josie」のカヴァー(82年録音)も。
【hajimepop】
https://www.hajimepop.com/
●Away Away / The Rascals
(『See』/ 69年)
◎チャックのワン・フィンガー奏法での細かいフレーズは、ラスカルズの作品でも随所で堪能できる。他のセッションより硬質でロック的な音(しかもこの曲はサイケ!)が実に新鮮。
●Until You Come Back to Me /Aretha Franklin
(『Let Me In Your Life』/ 74年)
◎作曲者のスティーヴィー・ワンダー版も素晴らしいけれど、個人的には胸キュンなアレサ版の方が好き。チャックの"語るベース" の不在が大きいのだ。
●I Got Love for You, Ruby / Frankie Valli
(『Closeup』/ 75年)
◎最近ではあまり聞かれない、美しいメロディをどこまでも展開していくポップスの名曲。歌ものベースのお手本のような素晴らしい演奏だ。
●Wouldn't Matter Where You Are / Minnie Riperton
(『Stay In Love』/ 77年)
◎国内外で盛り上がりを見せる、シティポップの雛形のようなサウンド。チャックをはじめ、各々のパートの圧倒的な演奏で、音楽の魔法が真空パックされたようなトラックだ。
●Bad Weather / Melissa Manchester
(『Don't Cry Out Loud』78年)
◎大部分のベースをチャックが弾いている、メリサの大傑作から。これはスティーヴィー節全開のシュープリームスのカヴァーだが、管楽器やコーラスなど、本作の特徴であるゴージャスな編曲が堪らない。
【洞澤徹(The Bookmarcs)】
https://silentvillage.wixsite.com/horasawa
●Where is the Love / Roberta Flac & Donny Hathaway
(『Roberta Flack & Donny Hathaway』 / 72年)
◎軽やかなのに重心がある感じ。2人のソフトな歌い方に寄り添うようなベースのフレー ジングと音色。
●Summer in the City / Quincy Jones
(『You've Got It Bad Girl』 / 73 年)
◎柔らかな音色で朗々と歌い上げるベース。完全に楽曲の中で主役。
●Stick Together / Minnie Riperton
(『Stay in Love』/ 77年)
◎Chuck Rainey の中ではゴリゴリ感が強い。らしい独特なラインがクセになるダンスナ ンバー。
●Dream On / Bill LaBounty
(『Bill LaBounty』/ 82年)
◎このテンポ、切ないコード感とマッチして数あるAORの良曲の中でもすこぶる気持ち良 いタイム感。Jeff PorcaroとChuck Raineyのコンビネーションが、何を上にのっけても 気持ちよくなるくらいに素晴らしいからだろう。
●I Want You / Chuck Rainey/David T. Walker Band
(『Chuck Rainey / David T. Walker Band』/ 94年)
◎Chuck Raineyのベースに呼応するかのようなDavid.Tのギターのオブリガードがいちい ちグッとくる。このベースがなかったら生まれないであろうフレーズの数々。
【松木MAKKIN俊郎(Makkin & the new music stuff / 流線形 etc)】
http://blog.livedoor.jp/soulbass77/
● Think About It / Len Novy
(『No Explanations』/1969年)
◎まず自分内ルールでソウル/ジャズ系を選外としたことをお断りしておきます。これは一発目のボン!という重たい響きから、全体をコード弾きで彩った浮遊感ある演奏へ。 60年代フォークシンガーの作品とは思えない先進性に舌を巻く。
●Djinji / Hirth Martinez
(『Hirth From Earth』/1975年)
◎ミュートの効いた音色にワンフィンガーピッキングのニュアンス。3度へのアプローチや繊細なヴィブラート。ソウルベースの何たるかを語り尽くす。
● You Make Me Feel Like Dancing / Leo Sayer
(『Endless Flight』/1976年)
◎ここにチャックを連れてきた人選の妙。シンプルだが、まさに踊るかのような演奏。楽曲を表現した演奏というより、まるでチャック・レイニー讃歌のようにも聴こえる。堂々の全米No.1ヒット。
●Yes I Do / Laura Allan
(『 Laura Allan 』/1978年)
◎シンプルな楽曲と編成だからこそ、メロディやビートに対するチャックのアプローチの基本形がしっかりと残されているという、実は貴重なテイク。教科書のように完璧なラインだが、そのサウンドは決して真似できない。
●Marina Del Rey / Marc Jordan
(『Mannequin』/1978年)
◎ツボを心得た演奏…と言うとありきたり過ぎるが、まさにツボと言うツボをひたすら押してくるような演奏。歌うようなラインに、音の切り方、ゴーストノート。スチールパンの音色と相俟って夢心地に誘う。
【ウチタカヒデ(WebVANDA管理人)】
●See / The Rascals
(『See』/ 69年)
◎ヤング・ラスカルズ時代からセッションマンとしてレコーディングに参加していたが、この曲はフェリックス・キャヴァリエのワンマン・バンド化した末期アルバムのサイケデリック・ソウルな先行シングルだ。手数が多いながらもハーモニーを邪魔しないチャックらしいプレイが聴ける。
●Now Is The Time / The Free Design
(『Heaven/Earth』/ 69年)
◎高度で複雑なコーラス・ワークでソフトロック・ファンには特別な存在である、クリス率いるデドリック兄弟のグループのサード・アルバムを代表する1曲。東海岸の技巧派ジャズ・プレイヤーが多く参加した中で、チャックの有機的なベース・プレイはサウンドの中で素晴らしく機能している。
●Kid Charlemagne / Steely Dan
(『The Royal Scam』/ 76年)
◎チャックの名を上げた説明不要な名演中の一曲。グルーヴのトリガーはバーナード・パーディのラテンファンク・スタイルのドラミングだが、トニック~5度~トニックを繰り返すチャックのベースラインが、えも言えぬ快感を生んでいる。このアルバムでのパーディとのリズム隊はいずれも国宝級の名演だ。
●Sweet Sadie The Savior / Patti Austin
(『End Of A Rainbow』/ 76年)
◎スティーヴ・ガッド、エリック・ゲイル、リチャード・ティーというスタッフのメンバー達にチャックが加わったリズム・セクションの名演。特に3分08秒からの所謂スタッフ・スイングするパートからは、ゴードン・エドワーズには出せない緻密なグルーヴの核となっている。
●Some People Can Do What They Like / Robert Palmer
(『Some People Can Do What They Like』/ 76年)
◎ミーターズやリトル・フィートにバッキングをオファーし独自のファンク・サウンドを追求した英国ブルーアイドソウル・シンガーの3作目のタイトル曲。ハイハット・ワークからジェフ・ポーカロだろうか?それに呼応し激しくシンコペートするチャックのプレイがとにかく白眉である。
2017年1月29日日曜日
☆実川俊晴:『TOSHIHARU JITSUKAWA POP SONGS 1979-2016』(クリンク/CRCD5137-38)
2016年12月4日日曜日
Diane Renay:『Navy Blue』 (Universal Music / UICY-15577)
因みにこのアルバム『Navy Blue』は、98年に米Collectables RecordsからCD化されていたが、現在は中古市場で高騰しているのでやや入手困難であり、昨年自主レーベルのオールデイズ・レコードから紙ジャケでリイシューされたので既に手にしたコレクターもいると思うが、高音質やミックス違いに拘りたいポップス・マニアには本盤をお勧めしたい。
ダイアン・リネイのプロフィールについては付属の解説に詳しいので少し省略するが、45年ペンシルバニア州南フィラデルフィア生まれ。62年にアトコ・レコード(アトランティック・レコード系列)のプロデューサー兼ソングライターのピート・デ・アンジェリスに認められ、シングル「Little White Lies」でデビューするがチャート的には振るわなかった。翌63年セカンド・シングル「Tender」をボブ・クルーが手掛けたことが転機となり、同年20世紀フォックスへ移籍する。
そして再びクルーの元、シンガーソングライターのエディ・ランボーにバド・レハークを加えた3名の共作とチャーリー・カレロのアレンジで制作されたのが、本アルバムのタイトル曲となるシングル「Navy Blue」なのである。
この曲は64年の全米チャートで6位の大ヒットとなり、続く「Kiss Me, Sailor」も同29位のスマッシュ・ヒットを記録する。このダブル・ヒットの経緯から本アルバムが誕生するわけだ。
かの大滝詠一氏もフェイバリット・アルバムの1枚に挙げていただけに、多くのフォロワーやポップス・マニアは聴かない訳にはいかないと思う。
おりしも05年の初演後ロングラン・ヒットしたミュージカル『ジャージー・ボーイズ』は、14年に名匠クリント・イーストウッド監督の手で映画化され、一気にフォー・シーズンズが再注目される。 またその年の初頭には御大フランキー・ヴァリが初来日公演を果たす。蛇足だが筆者は日比谷公会堂で湯川れい子先生や亀昭信氏のほぼ後列という良席で素晴らしいステージを堪能した。
思えば日本においてフォー・シーズンズ・サウンドは、大滝氏や山下達郎氏の楽曲やラジオ・プログラムを通じて、多くのポップス・ファンの心に植え付けられたと感じる。
『Navy Blue』はそんなポップス・ファンにとって打って付けのアルバムなのだ。 このような名盤ゆえ、僭越ではあるが筆者なりに主な収録曲を解説していきたい。
冒頭の「Kiss Me, Sailor」は前出の通り、64年に全米29位となったエディ・ランボウとバド・リハックのソングライティングによる作品だ。ノンクレジットながらボブ・クルー・プロダクションではお馴染みのミュージシャンが参加していると思われるが、バディー・サルツマンのプレイらしきスネアからタムを連打するフィルのアクセントが印象的だ。
また熱心なナイアガラーにはよく知られているが、イントロから繋がるサビ(この曲はヴァースより先にサビから始まる)のパートは、松田聖子の「風立ちぬ」(81年・作詞:松本隆/作曲:大瀧詠一)でオマージュされているのがよく分かる。
当然ながらモノ・ミックスは定位の関係で、ヴォーカルに対してホーンとコーラスの音量レベルを高く感じるが、リネイのパンチの効いた歌声の醍醐味はモノに軍配が上がる。
ハンドクラップとシェイカーが8分で刻まれる「Please Forget Me」は、典型的なフォー・シーズンズ・サウンドであるが、サビからの展開がベン・E・キングの「Stand By Me」(61年)にも通じる普遍性を感じさせる。ステレオ・ミックスの左チャンネルでイントロから聴ける印象的なエレキ・ギターはヴィニー・ベルだろう。
唯一カレロがアレンジにタッチしていない「Hello Heartaches」は、クルーとシド・ベースの共作でベースがアレンジも手掛けている典型的なハチロクのガール・ポップである。
そしてタイトル曲で全米6位の先行シングル曲「Navy Blue」だが、この曲もフォー・シーズンズ・サウンドの流れを感じさせる。余談だが歌詞には海軍の水兵である彼氏から東京消印の手紙とお土産が届いたと出てくる。そのお土産はしゃべるチャイナドールということで、中華街を経由して東京へアクセスすることが可能な横須賀基地に勤務という設定なのかも知れない。
オブリガートや間奏で聴けるクラヴィオライン(後にビートルズの「Baby, You're A Rich Man」(67年)でも聞ける初期アナログ・シンセ)は、フォー・シーズンズの「Little Angel」(65年)でも似たトーンを耳にすることが出来るが、ボブ・クルー・プロダクション・セッションの常連キーボーディストで後にHot Butterにも参加するスタン・フリーのプレイだろうか。
日本ではダニー飯田とパラダイス・キング(フューチャリング九重佑三子)や伊東ゆかり、浅田美代子までがカバーしており、パラキンと浅田ヴァージョンの訳詞は漣健児、伊東ヴァージョンは安井かずみがそれぞれ担当している。
アルバム後半には、ザ・シュレルズが61年にリリースして翌62年に全米1位となった「Soldier Boy」のカバーをしている。原曲はカントリー風味のスローなドゥーワップだが、ここでのアレンジは「Dawn (Go Away)」(64年)を思わせるドラマティックな展開で原曲より魅力あるサウンドに仕上げている。さすがチャーリー・カレロのいい仕事というしかない。リネイの表現力も素晴らしいの一言に尽きる。
その「Dawn (Go Away)」や「Let's Hang On!」等多くのフォー・シーズンズ・ナンバーを手掛け、デニー・ランデルとのコンビで知られるサンディー・リンザーとクルーの共作による「He Promised Me Forevermore」はアレンジ的にも面白い。
古いディズニー映画のサントラを思わせる仕掛けがちりばめられていて飽きさせず、カレロの音楽的引き出しを垣間見られて興味深い。
ボーナス・トラックは『Navy Blue』後にリリースされたシングル「Growin' Up Too Fast」(64年)、「Waitin' For Joey」(64年、「Growin' Up Too Fast」のB面)、「It's In Your Hands」(64年)の3曲を収録している。 「Growin' Up Too Fast」はフォー・シーズンズの音楽的リーダーであるボブ・ゴーディオとクルーの共作で、アレンジ的にもチューブラーベルでメンデルスゾーンの「結婚行進曲」を引用してカレロのセンスを感じさせるがヒットに結びつかなかった。
続く「It's In Your Hands」もマーケットを意識したカントリー風味のロッカバラードだがヒットせず、リネイのよさも引き出されていないようで残念だ。
ともあれアルバム『Navy Blue』が、半世紀以上過ぎた今でも聴き継がれるべきガール・ポップのクラシックであることを心より信じている。興味を持ったWebVANDA読者やポップス・ファンは是非入手して聴いて欲しいと願うばかりだ。


























