2023年10月31日火曜日

生活の設計:『キャロライン / むかしの魔法』(DesignforLiving Records / SKSK002)

 
 今年4月にファースト・フルアルバム『季節のつかまえ方』をリリースし、ポップス・ファンや音楽通の間でも評判になっている生活の設計が、新曲「キャロライン」を7インチシングルで11月3日にリリースする。カップリングには小西康陽氏が7インチ化を強く熱望していた「むかしの魔法」を収録ということで、これは入手しない訳にはいかないだろう。


 彼らのプロフィールは『季節のつかまえ方』のレビュー時に紹介したが、東京で活動するスリーピース・バンドで、前身バンド “恋する円盤” と“Bluems (ブルームス)”を経て今年2月にバンド名を 現在の“生活の設計” に改名した。メンバーはリーダーでボーカル兼ギターの大塚真太朗、ベース兼コーラスの辻本秀太郎、ドラム兼コーラスの大塚薫平の3名だが、11月4日の京都KBS HALLで開催されるボロフェスタへの出演をもって、ベースの辻本が脱退することがアナウンスされている。
 非常に残念であるが、バンドはサポート・メンバーを加えて継続していくとのことなので、 ファンは引き続き応援して欲しい。 

   
「キャロライン / むかしの魔法」CM

生活の設計 - キャロライン(Lyric Video)

 ここからは本作のレビューをお送りする。 新曲の「キャロライン」は、ギターポップ・ファンにはハウスマーティンズ(The Housemartins)などを彷彿とさせて、一聴するとBPMが高く勢いのあるキャッチーなサウンドであるが、分数コードを多用して凝ったソングライティングを施しているのが大塚らしい。また複数のギターの重ね方やリバプールサウンド風の間奏、後半のパパパ・コーラスなどアレンジ的にも工夫されていて聴き飽きさせない。
 歌詞は二人称で描かれていて、散文詩のように情景が目まぐるしくカットアップされていき、映像的でユニークである。

 
生活の設計 - むかしの魔法 (Music Video) 

 カップリングの「むかしの魔法」は『季節のつかまえ方』収録音源から7インチ用にミックスを変えてボトムを強調したヴァージョンとなっている。前回のレビューから繰り返しになるが、小西康陽氏も高評価している楽曲であり、筆者も同アルバムのベストトラックと考えている。 嘗てのゲントウキ「素敵な、あの人。」(シングル 2003年)にも通じる良質なポップスなのでCDで愛聴していた読者も7インチで入手して、同ヴァージョンで是非聴いてほしい。

◎ディスクユニオン予約リンク:https://diskunion.net/jp/ct/detail/1008714963 


生活の設計★ライヴ情報
2023年11月4日(土)
ボロフェスタ2023

開場/開演 11:30/11:55
京都KBSホール
※出演時間は「街の底STAGE」にて12:40〜

詳しくはこちら:https://borofesta.jp/
チケットはこちら:https://eplus.jp/sf/word/44386

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11/19(日)
「パンと音楽とアンティーク 2023」

開場/閉演 10:00〜18:00
東京オーヴァル京王閣
(京王線「京王多摩川」駅徒歩1分)
※2人編成によるアコースティックセットとなります

詳細とチケット:https://pan-ongaku-antique.com/2023/

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2024年1月13日(土)
Seukol × sitaq presents「ふゆのなべ」

開場/開演 17:30/18:00
下北沢mona records
共演:Seukol / sitaq

もしくは(生活の設計・窓口): seikatsu.no.sekkei@gmail.com


 (テキスト:ウチタカヒデ

2023年10月21日土曜日

Let's Have A Luau!

Luauの数々(Candix-X-Ariola 筆者蔵)


 Hawii州Maui島を先日山火事が襲った、現在も復興中であり1日も早い復興を祈念する。Maui島には偶然Kokomoという地名があるが、The Beach Boysのヒット曲で脚光を浴びた当地はカリブ海に比定されている。Hawaii繋がりで言えば、The Beach Boysの記念すべきデビュー盤(1961年Candix 331)のB面「Luau」がある。後年「Pet Sounds」製作時にメンバーがあしげく通ったレストランもThe Luauだ、インスト曲「Pet Sounds」の南国風味はこれらの影響か?



 Luauとは何か?Hawaii旅行の経験があればLuau showなどの名前で催されるディナーショーなどでLuauの名を耳にしているだろう。現代のLuauは、Hawaiiの観光業において重要な位置を占めており、観光客にとってHawaii文化を体験する素晴らしい機会となっている。

Luauはそもそも、Hawaii文化における重要な伝統的な祝祭の一つであって、彼の地の歴史や文化を祝うために何世紀にもわたりさまざまな目的で開催された。出生、結婚、戦勝などの重要な生活の出来事を記念するためと同時に、宗教的な儀式や酋長や高位の人物を称えるためにも使用された。

 数百年前に遡る伝統で、古代のLuauは「ʻahaʻaina」とも呼ばれた。"aha" は「集まり」を意味し、「aina」は「食事」を意味する。一般的に、通常のLuauよりも各式のあるもので、伝統と儀礼に焦点を絞ったイベントであった。この名称は、タロイモの葉とココナッツミルクで調理された伝統的な地元の料理にちなんで名付けられた。Luauは広範な準備を必要とした、準備には数日から数週間かかることがあり、参加者は食べ物を集め、料理を用意し、儀式のための建造物を建て、装飾を楽しんだ。Luauはしばしば宗教儀礼で始まり、神々への食物の捧げ物やチャントや祈りで客人をもてなした。古代のLuauは単なる食事だけでなく、コミュニティが一堂に会してその機会の喜びを共有した、それは「ohana」(家族)と「hō'ike」(共有)の感覚を強化することとなる。

 近世Hawaii王家は従来の閉鎖的な慣習から無礼講を趣とする開明的なものへと転換した。従来の慣習では女性や社会の下位階級の人々は男性と一緒に食事をしてはならず、祭りで供される特定の食べ物、通常はバナナ、豚肉、モイなどの一部のリーフフィッシュは食べてはいけないとされていた、一般的な料理、たとえばポイ、サツマイモ、他の種類の魚のみ許可された。しかし、1819年、Kamehameha2世王が女性を食事に招待し、「Luau」として知られるようになった。Kamehameha3世の1847年のLuauでは、4,000本以上のタロイモの植物、271匹の豚、482個のポイ(タロイモのすりつぶし)、2,245個のココナッツ、および5,000匹の魚を注文し、出席者に贅沢な祝宴でもてなした。同様に、自身を「陽気な君主」と称するKalakaua王も、1883年に彼の50歳の誕生日のLuauを開催し、1,500人以上のゲストを3回に分けてもてなした。

 Kamehameha3世の1847年のLuauとKalakaua王の1883年のLuauは、壮麗さと豪華さを垣間見せてくれる。これらのLuauは、Hawaiiの歴史の一部として根付いてきた豊かな文化的伝統とおもてなしの重要性を示しており、Hawaii文化における食べ物、エンターテインメント、共同体の精神が重要な役割を果たしてきたことを反映している。Kamehameha3世とKalakaua王は、Hawaiiの歴史を形作る上で重要な役割を果たし、彼らのLuauはその系譜と伝統を象徴している。


 Hawaiiがアメリカ合衆国の一部となった後もLuauは文化的な慣習として維持され、後に観光業に取り入れられ、Hawaii音楽やフラダンスのパフォーマンス、伝統的な衣装を披露している。

 一方でThe Beach Boysによる楽曲の「Luau」からはあまりHawaiiの風土が与えてくれる大きなおもてなし感がない、ややトロピカルなムードはあるものの、surfin’ musicらしささえも遠く感じる。本盤の前年1960年のヒットAnnette Funicelloによる「Pinapple Princess」のB面に「Luau Cha Cha」がある。

 曲調はラテン+ハワイアンという雰囲気の内容で「Luau」には何がしかの影響を与えたものと思われる。「Pinapple Princess」と比べればThe Beach Boysの歌詞自体「南の島だと思って一緒に楽しもう!」というテーマ故にどこかローカル感が漂う趣となっている。
 「Luau」はBrianによる「Surfin'」とともにMorgan家主導でレコーディングが行われたことは明らかだ。それ以前にAlとその学友、Brianと学友、またはWilson兄弟中心のグループが数度にわたってMorgan家を訪問し、ヒット曲のカバーを披露したことが判明している。彼らのデビューの試みは結実せず、結果的にWilson兄弟達へMorgan家からは「オリジナル曲を披露する」という宿題が与えられた。その後の展開は歴史の教える通りであるが、デビュー曲のレコーディングと同時にMorgan家からは楽曲「Luau」が提供された。Morgan家の幾多の訪問の際(時には実父Murryもいただろう)surfin’は社会現象である旨Dennisは吹聴していた。それを面白がったMorgan家のDorinda Morganはsurfin’文化についてDennisから取材し、多くのスラングや流行語を楽曲に取り入れようとしたとのことである。「Luau」の作曲クレジットはMorgan家の子息Bruce Morganであるが、実際はその母Dorindaであった。Bruceはどちらかといえば、家業の録音スタジオのマスタリング等のエンジニアリングを得意とした。Dorindaは有能なソングライターとして全米ヒットを数曲提供している。


「Luau」は「Let's Have A Luau」として登記されていた、日時はWilson兄弟がレコーディンしていた頃と一致する。なぜか翌年更新されている?




Kay Starr「The Man Upstairs」(1954年最高7位)

B面の「If You Love Me (Really Love Me)」は、もともとフランスで「Hymne à l'amour」としてMarguerite Monnot作曲、Édith Piafによって歌詞がつけられた曲が本国でヒットし、Geoffrey Parsonsによって英語の歌詞が付けられ米国でもKay Starr盤が大ヒットした。日本でも岩谷時子の歌詞で越路吹雪が歌う「愛の賛歌」として有名だ。


Bruce名義だがDorinda作?ここでもBMIとなっている

Sonny Knight「Confidential」(1956年最高8位)

 LAのR&Bシンガーでピアニストのスマッシュヒットで、B面は例によって息子のBruce名義だ、おそらくDorindaの手によるものだろう。DorindaはASCAPへの預託が多く、Bruce名義ではBMIが多い、本盤も同じ仕様となっており裏には何かがあるのだろうか?

 Morgan家は楽曲の原盤制作から楽曲の管理そしてマスタリング、レーベル運営を手広く手がけて全米ヒット曲も生み出すコングロマリットだった。経営状態が末期症状を迎えていたCandixに跳梁跋扈しロイヤルティを奪い合った幾多の業界人と、Morgan家が関連づけられて一部の評伝類で音楽業界に巣食う山師の仲間の一味にされているのは残念である。Morgan家の目からすれば、むしろWilson家の方が山師に映ったことであろう。

 「Confidential」はなんとBob Dylanによって1967年に「The Basement Tapes」セッション時カバーされている。後にBrianとBob両雄は初顔合わせしている場所はなんと、Malibuの救急処置室だった!




 「Luau」のカバーは数曲あり、南加Laguna Beach出身のDave Myers and The Surftonesがタイトルを「Laguna Limbo Luau」(Northridge Records NM101 1963年)に変えたバージョンは秀逸だ、”limbo”がついているとおり往時のHawii王家の飲めや歌えに踊らんかなのエキゾチックなインストナンバーとなっている。





 加州北西部はAtascadero出身のThe Surf Teensによる「Luan」(SSU 339 1963年)はラテン風味かつsurf色濃厚のインストナンバーだ。Los Angeles Countyの西に接するSan Bernardino County一帯は驚くべきことに、ロサンゼルスのKFWBとKRLAのチャートに登場する以前から、多くのsurf musicがKMENやKFXMはじめとするSan Bernardino County地場ラジオ局でチャート上位を占めていた。このことから、やや薄口ではあるがラテン風味の「Luau」を加えた理由としては北西部のhispanic系リスナーを意識していたのだろう。

 「Surfin'」は南西部のリスナー(surf music扱いされるには時間がかかったが)を考慮し、両者をターゲットにしたマーケティングをMorgan家が抱いていたことをうかがわせる。


(text by Akihiko Matsumoto-a.k.a MaskedFlopper)

2023年10月10日火曜日

Kippington Lodgeについて


 Kippington LodgeはNick Lowe、Brinsley Schwarz、Bob Andrewsらが若い頃に在籍していたとして知られるバンド。と言ってもあまり有名ではなく、彼らのファン向けのコレクターズアイテム的な位置付けになっているよう。私は以前何かのきっかけでKippington Lodgeの方を先に知ったのだけれど、サイケデリックな要素がありながら難解に感じないポップなサウンドが心地よくて好きだった。

 1967年から1969年の間に5枚シングルをリリースしたのみのバンドで、もともとは1964年にサフォーク州ウッドブリッジの学校でNick Lowe (ベース)、Brinsley Schwarz (ギター)、Barry Landerman (キーボード)、Phil Hall (ギター)が結成した学生バンドのSounds 4+1から発展したらしい。この時ドラムがなかったのでBarry Landermanが周りにある物を叩いたり、Nick Loweはティーチェストベースを手作りしていたそう。しばらく学校のイベントやドイツ空軍基地で演奏していたようだけれど、Nick Loweがサフォーク州を離れ、Brinsley Schwarzもケント州タンブリッジ・ウェルズの故郷へ戻ったことでサウンズ 4+1としては活動が停止。その後1966年にBrinsley SchwarzはThree’s A CrowdというバンドをPete Whale (ドラム)、Dave Cottam (ベース)と結成する。

 グループのマネージャーだったMalcolm GlazierがEMIのプロデューサーMark Wirtzに彼らを売り込み契約。最初に録音された「Lady on a Bicycle」と「Land of Sea」は、Mark Wirtzの意向でデビューシングルA面には使用されず、「Lady on a Bicycle」はB面に、「Land of Sea」はお蔵入りとなる。Three’s A Crowd はKippington Lodgeに改名され、1967年にEMI傘下のParlophone レコードから「Shy Boy」(Parlophone-R 5645)という曲でデビューした。

   Shy Boy / Kippington Lodge

 「Shy Boy」は英サイケ・ポップの重要人物Keith West(作曲のクレジットはKeith Hopkins)と彼の作曲パートナーKen Burgessの作で、後にKeith WestのバンドTomorrowのバージョンも『Tomorrow Featuring Keith West』(Parlophone-PCS7042, PMC7042)に収録されリリースされている。この曲はMark Wirtz がポップオペラをコンセプトとして構想していた『Teenage Opera』 というプロジェクトのために書かれたものだったそうだけれど、プロジェクトの方は当時未完のまま中断された。(英RPMが残された音源を基にプロジェクトを復活させ、映画のサウンドトラックとして1996年にリリース(RPM Records-RPM165))

 Kippington Lodgeのデビュー作となった「Shy Boy」は、Brinsley Schwarzのボーカル以外はセッションミュージシャンが演奏していたらしく、オルガンを使っていた為メンバーにキーボード奏者が必要になり、Barry Landermanに声をかけ加入することになったそうだ。

 ベースのDave Cottamが脱退しイギリスに戻ったNick Loweが加入、2作目のシングル「Rumours」(Parlophone-R 5677)がリリースされた。この曲と、B面の「And She Cried」も演奏はセッションミュージシャンだそう。制作を続けつつも、売れ行きが芳しくなかったKippington LodgeはBillie Davisのバックや、マーキークラブでサポートバンドをするなどで収入不足を補いながら活動していたらしい。

 Mark WirtzがEMIを去り、3作目のシングル「Tell Me A Story」(Parlophone-R5717)はMike Collierプロデュースで録音された。B面は「Understand A Woman」で、これがKippington Lodge本人達が両面演奏した最初のシングルだったようだ。

 4作目の「Tomorrow Today」(Parlophone-R5750)は、The Fortunesの「You've Got Your Troubles」やWhite Plains の「My Baby Loves Lovin」などで知られるヒットメーカーチームRoger CookとRoger Greenawayによって書かれた曲。しかしこの曲も商業的な成功は得られなかった。B面はBarry Landerman作の「Turn Out The Light」だった。この後、Barry LandermanはVanity Fareに参加するため脱退することになり、Bob Andrewsに交代。

Tomorrow Today / Kippington Lodge

 最後のシングルに収録されたのはThe Beatlesのカバー「In My Life」(Parlophone-R 5776)と、B面はKippington LodgeでのNick Loweの唯一作 になる「I Can See Her Face」。

 約2年の活動は成功には至らず、当時のイギリスでもKippington Lodgeの知名度は低かったらしい。その後Pete Whaleが脱退し、アメリカ人のドラマーBill Rankinに交代、リズムギターのIan Gommが加わる。サイケ・ポップなKippington Lodgeはやがてパブロックの代表格と言われるバンドBrinsley Schwarzへと変化した。

 Kippington Lodgeの再発は、1998年にNick Lowe初期の音源を紹介するBrinsley Schwarz編集盤としてリリースされた『Hen's Teeth』(Edsel Records-EDCD 546)にシングル全10曲が収録された他、2011年にKippington Lodge 名義で 『Shy Boy: The Complete Recordings 1967-1969』 がリリースされた。これには、シングル全10曲にボーナストラックとして未発表曲、別テイク2曲、BBC公演2曲が収録されている。(RPM Records-Retro 899)


参考・参照サイト

https://theseconddisc.com/2011/07/08/nick-lowe-welcomes-you-to-kippington-lodge/

https://onlygoodsong.blogspot.com/2021/05/kippington-lodge-shy-boy-complete.html?fbclid=IwAR0113trS1QKjbGrKa77z4MMnwWxPT3wbUfotO4P8a1ZFWRfplyIv7PGLHg

https://www.45cat.com/biography/kippington-lodge

http://sideonetrackone.com/2014/07/raised-eyebrows-short-history-brinsley-schwarz-randy/


【文:西岡利恵



執筆者・西岡利恵
60年代中期ウエストコーストロックバンドThe Pen Friend Clubにてベースを担当。



【リリース】
8thアルバム『The Pen Friend Club』をCD、アナログLP、配信にて発売中。
■ザ・ペンフレンドクラブ10周年企画『2023 Mix』随時配信リリース

【ライブ】
■11/5(日・昼) ​西永福JAM『ADD SOME MUSIC TO YOUR DAY』
■12/16(土) 岩下の新生姜ミュージアム
『“Add Some Music To Your Christmas” In 岩下の新生姜ミュージアム』
■12/23(土・昼) ​荻窪・TOP BEAT CLUB
『CHRISTMAS SHOWS AT THE TOP BEAT CLUB』



2023年10月1日日曜日

Lamp 9thアルバム『一夜のペーソス』をデジタル配信でリリース


 Lampが9作目のオリジナル・アルバムとなる『一夜のペーソス』を10月10日にデジタル配信のみでリリースする。
 アナログ盤やCDなどフィジカルでのリリースは時期未定で、しばらく先になるらしい。

 振り返ってみると、2021年7月にリーダーの染谷大陽の旧Twitterのツイートで、
 
「次の作品はかつてない曲数となる予定。
 その数は19曲。約75分。 
 2022年は期待できます。気長に待っていてください。」 

 とコメントがあり、このツイートの収録曲数から筆者も愛すべき英国バンド、プリファブ・スプラウトの『Jordan: The Comeback』(1990年8月)に通じる組曲構成になるのではないか?と当時は推測したが、今はそんな先入観は持たず、ただただリリース日を待つとしたい。

 本作は前作『彼女の時計』(2018年5月)から5年振りとなるが、その間に7thアルバム『ゆめ』(2014年2月)と同時期のセッションと思われる『旅人/夢の国』と、米国サンフランシスコのインディー・バンドThe Bilinda Butchers(ザ・ビリンダ・ブッチャーズ)の楽曲をカップリングしたスプリット・シングル『ブルー/Girlfriend』を同年8月3日にそれぞれ7インチでリリースしている。翌2019年4月には、2枚組ライブ・アルバム『"A Distant Shore" Asia Tour 2018』(2018年9月のアジア・ツアーの実況録音盤/現在廃盤)をオフィシャルサイト・ストア限定で発売していた。
 また近年は世界規模のソーシャル・ネットワーキング・サービスとストリーミング・サービスを背景として、海外におけるLampへの注目が高まっているいのも非常に興味深い。欧米や韓国のDJ達によって、ブルーアイドソウル~AORのガラパゴス的進化系として発見された嘗てのシティポップへの再熱とは異なって、ジャケットのアートワークも含めた独自性を持つジャパネスク(Japanesque)感に、海外のファン達は魅了されているのである。特に『恋人へ』(2004年2月)が注目されているは、季節外れの海辺に佇むメンバーの永井祐介と榊原香保里のジャケット・フォト(撮影:染谷)に潜む、日本的な「侘び寂び」と言うべき強烈なイメージではないだろうか。
 ごく最近でもLampのアルバムや曲をフェイバリットに挙げる若いバンドが現れており、今年幣サイトで紹介した、生活の設計の大塚真太朗Nagakumoのオオニシレイジなどメイン・ソングライター達に好まれている。やはりミュージシャンズ・ミュージシャンとして同業者を刺激するソングライティング・センスがLampの大きな強みなのだろう。

 今回ここでは9thアルバム『一夜のペーソス』を事前試聴していないため、収録曲の解説は出来ないが、前作『彼女の時計』からファーストアルバム『そよ風アパートメント201』(2003年4月)の各リリース当時の記事再掲と、アルバムデビュー前から彼らと交流がある筆者が選ぶ、アルバムやシングル毎のベストソングのサブスク・プレイリストを紹介する。
 これを聴きながら、各過去記事を読み直して復習し待望の最新作を待とう。

WebVANDA管理人選★Lampベストソング

◎『彼女の時計』(2018年5月)リリース・インタビュー前編:https://www.webvanda.com/2018/05/lampbotanical-housebhrd-008.html 
◎『彼女の時計』リリース・インタビュー後編:https://www.webvanda.com/2018/05/lampbotanical-housebhrd-008_13.html



◎『ゆめ』(2014年2月)レビュー:



◎『東京ユウトピア通信』(2011年2月)レビュー:



◎『八月の詩情』(2010年8月)レビュー:



◎『ランプ幻想』(2008年12月)レビュー:



◎『木洩陽通りにて』(2005年5月)クノシンジ対談レビュー:



◎『恋人へ』(2004年2月)ミサワマサノリ対談レビュー:



◎『そよ風アパートメント201』(2003年4月)インタビュー:



関連記事 
◎Kaede『秋の惑星、ハートはナイトブルー。』(2020年9月)レビュー:


(テキスト:ウチタカヒデ