昔YouTubeを観ていたら、キンクスのレイ・デイヴィスが弾き語る「Nobody's Fool」のデモ音源が流れてきた。すごく惹かれて何度も聴いていたのだけれど、キンクスのオリジナルアルバムの曲でもなさそうだったので、この曲はなんだろうと思っていた。(現在は2013年再発盤のキンクス『マスウェル・ヒルビリー +13 デラックス・エディション Sanctuary UICY75872-73』のボーナストラックなどで収録されている)
他にコールドターキーというグループのバージョンも存在することは分かったものの、このコールドターキーが何者なのか疑問に思いつつもそのままにしていたので、今回もう少し詳しく調べてみた。
「Nobody's Fool」は70年代初頭に放映されたアダムフェイス主演、英ITVのテレビドラマ『バッジー』第2シリーズのテーマ曲だそうだ。レイ・デイヴィス作曲、ジミー・ホロウィッツプロデュースで、1972年にパイ・レコードから、コールドターキーのクレジットでシングルリリースされた。B面は、子供向け合唱団ザ・ストリート・キッズが歌う別のテレビシリーズ『セサミストリート』のテーマ曲で、プロデュースは同じくジミー・ホロウィッツ。もともとこちらがA面になる予定だったそうだけれど、「Nobody's Fool」がヒットした為曲順を変更したらしい。イントロはキンクスの「アニマルファーム」(1968年『ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ』Pye Records NPL18233 収録曲)に似せた作りになっている。
コールドターキーというグループはこの音源のみでその後何もリリースしておらず、彼らが誰だったかは議論の的になっている。キンクスの別名義の可能性が高いとも言われているけれど、スウェーデンのRock’n’Roll Magazineのインタビューでレイ・デイヴィスが答えた通りなら、コールドターキーはキンクスに似せたサウンドを作ろうとしていたけれど、キンクスではないとされる。別の推測では、アンディ・ボーン(ベース)、バリー・デ・スーザ(ドラム)、ボブ・コーエン(ギター)、クリス・スペディング(ギター)、ジミー・ホロウィッツがピアノを弾いているという話、ボーカルはストーリーテラーというグループに所属していたロジャー・ムーンではないかという説などがあるよう。コールドターキーの「Nobody's Fool」は、『キンクト!~キンクス・ソング&セッションズ 1964~1971(Ace/CDCHD1463)』などで聴くことができる。この編集アルバムにはレイ・デイヴィス作の楽曲を他アーティストがカバーしたものなどが収録されていて、一部キンクスが演奏に参加しているものや、弟のデイヴ・デイヴィス作の楽曲も含まれる。
コールドターキーのリリースより前、1971年にマンフレッドマンのメンバーで、作曲家のマイク・ヴィッカーズも「Nobody's Fool」を録音していたようなのだけれど、リリースされているのかどうか、その音源は見あたらなかった。
2019年には、カルト映画やテレビ番組のテーマ曲を集めたコンピレーション 『Cult Themes Forever(Future Legend Records – FLEG.37CD)』に、グレンダ・コリンズによるカバーが収録された。また、同じ年、BBCラジオ4でポール・ウェラーとサッグス(グラハム・マクファーソン)もデュエットでカバーしている。
おそらくこれとは別バージョンだろうか、今月25日にリリースされるポール・ウェラー のカバーアルバム『ファインド・エル・ドラド(Parlophone 2173.274893)』にも、「Nobody's Fool」が収録されるようだ。
キンクスやキンクスの関連曲には、当初未発表だったり、あまり知られていない中にも本当にいい曲が多いなと思う。
参考・参照サイト:
https://popdiggers.com/kinda-ray-davies/
https://onlyrockandroll.london/2021/04/09/the-great-lost-kinks-single/
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