1998年5月21日木曜日

☆スプリングス: Marvelous Springs (Universal Victor/24004)


前号で紹介し、ソフト・ロック・ファンから大きな支持を受けたスプリングスだが、初代ヴォーカルのCindyとのデュオ時代の全音源のミニ・アルバム「Springs」と、コンピに収録されていたあの "The Drifter" のカバーと未発表の4曲をプラスしたのがこのアルバムだ。
「Springs」収録の "Journey To My Love" はこれぞソフト・ロックというメロディ・ラインとポジティブな上昇感が気持ち良い。巧みな転調が聴かせどころのボサ・ナンバー "Monday" も素晴らしい。
そして唯一のカバーが、ニール・セダカの "Workin' On A Groovy Thing" なんて泣けるではないか。未発表の4曲もそれぞれクオリティが高く、楽しめる。オリジナルの6曲を作曲した渡辺博之の卓抜した作曲センスには改めて脱帽、またCindyのヴォーカルと英語のうまさも特筆しておきたい。
(佐野)

1998年5月5日火曜日

☆Various : Here Come The Girls Vol.9-Slow Fizz The Jerry Ross Girl Groups(Sequel/590)


この人気シリーズの内容のいいものは、先の第8集のPye編のようにレーベルで括るものだったのだが、この第9集では遂にジェリー・ロスのプロデュース作品で固めてきた。
日本では本誌と「ソフト・ロックA to Z(音楽之友社刊)でジェリー・ロスを強力にプッシュしてきたので、ここに来てジェリー・ロスという名前を聞いただけで購入する人が急増したが、このSequelはデュプリーズ、ビッグ・ディール&ザ・ロンデルス、モブ、ジェリー・ロス・シンポジウム、チェリー・ピープルなどロス関係の CD をずっと出して来た "老舗" で、スパンキー&アワ・ギャング、キース、ジェイ&ザ・テクニクス、ボビー・ヘブといったマーキュリー音源のメイン・ストリームのロス作品がまだ満足に CD 化されてない中、その "外堀" をしっかりと埋めてくれた素晴らしいレーベルなのでロス・ファンは注目して欲しい。さて本作はロスが63~70(中心は66年まで)にプロデュースしたガール・グループの作品ばかり集めたマニアックなものだが、そのクオリティの高さはSequelのロス CD の中でも文句なしのトップ。スワンズ、サファイヤーズ、キャンディ&キスズ、ヤムヤムズ、ラブノートズなどの作品はどれも素晴らしく、作曲はロス&ケニー・ギャンブルを中心にアンダース&ポンシア、マン&ウェイルなど、アレンジャーはジョー・レンゼッティ、ジミー・ウィズナーの黄金の2枚看板で固めていた。フィル・スペクターやモータウンに強く影響されたものもあるが、 "The 81"  "Gonna Be A Big Thing" など軽妙ながら華やかな我々のよく知っているロスそのものの作品も多数あり、十分にロスの世界を堪能できる。特にイントロのセンスは抜群で、いきなり頭から引き込んでしまうのはさすがとしか言いようがない。(佐野)
商品の詳細
 


☆「Mike Love,Bruce Johnston And David Marks Of The Beach Boys Salute Nascar」

 ビーチ・ボーイズ・ファン究極のコレクターズ・アイテムがこの CD 。というのはカールが病気 (現在は死去)、アルがリタイア、さらにブライアンも不在のビーチ・ボーイズを運営するためにマイクとブルースは、なんと63年にビーチ・ボーイズを脱退したデビッド・マークスを35年ぶりに復帰させライブを運営していたが、この CD ではタイトルのとおりデビッドをビーチ・ボーイズのメンバーとして正式に認めた。
さて、この CD 、レーベル名がないのはなぜとお思いだろうが、それはこの CD はアメリカの有名なカー・レースNascar50周年記念に作った記念盤だからで、Nascarの公式スポンサーでアメリカの有力なガソリン・スタンド・チェーン「76」でガソリンを入れた人に1人1枚だけ販売した限定盤なのだ。このキャンペーン、今年のいつから始まったのかは分からないが、4月にはキャンペーンが終わってもう入手できなくなってしまっている。クレームがついたからという説もある。PSには "Special Collectors Edition" と最初からうたっているのだからまいった。さて内容だが、この3人にディーン・トーレンスが加わった4人がメンバーだが、プロデュース・アレンジを担当するアドリアン・ベイカーを加えた5人で録音したものと見るのが正しい。ファルセットはアドリアンが担当しているに違いない。 "I Get Around"  "Little Deuce Coupe"  "Little Old Lady From Pasadena"  "409"  "Shut Down"  "Little GTO"  "Ballad Of Ole' Betsy"  "Little Honda"  "Fun Fun Fun"  "Don't Worry Baby" の全10曲を、基本的に原曲に忠実に再現している。この中での聴きものは "Ballad Of Ole' Betsy" で、原曲のソウルフルなブライアンのリード・ヴォーカルがないのでマイクがリードを取ったが、その弱くなったヴォーカルを素晴らしいコーラス・ワークで補ったため、美しいバラードに仕上がった。クレジットはないが、 CD の冒頭では "Good Vibrations" のインストをバックにマイクとブルースが挨拶をしている。(佐野/Special Thanks To Forever藤本、伊藤博道)