2025年11月1日土曜日

小林しの:『Winter Letters』

 昨年2月発表のセカンド・アルバム『The Wind Carries Scents Of Flowers』(*blue-very label*/ Blvd-043)が好評のシンガー・ソングライターの小林しのが、4曲入りの7インチのクリスマス・シングル(EP)『Winter Letters』(Blvd-055)を11月1日”レコードの日”にリリースした。
 丁度1年前に『The Wind・・・』に参加した、Small Gardenの小園兼一郎とのコラボレーションで、7インチEP『Mijn Nijntje(“私のナインチェ”)』(blvd-051)を発表しており、この季節の風物詩となっていて、彼女のファンには嬉しいリリースとなった。
小林しの

 まずは小林のプロフィールに触れるが、1999年に彼女を中心にHarmony Hatchを結成し、空気公団やMaybelleを輩出したCoa Recordsから2000年にデビューする。同バンドが2002年に解散後、ソロのシンガー·ソングライターとして、ファーストアルバム『Looking for a key』と前出のセカンド『The Wind Carries Scents Of Flowers』の2枚のアルバム、アナログ7インチ·シングルは『Havfruen nat』、コラボレーションでは彼女が所属するphilia recordsを主宰するthe Sweet Onionsの近藤健太郎、高口大輔との3人組ユニット”Snow Sheep(スノー·シープ)”で『WHITE ALBUM』、前出の『Mijn Nijntje』をそれぞれ発表し、都内を中心に定期的なライヴ活動、様々なバンドのコーラス·サポート等精力的に活動している。

 本作『Winter Letters』について解説しよう。ジャケットなどアートワーク全般とファンシーなイラストレーションは、リリース元レーベルではお馴染みのFumika Arasawaが担当している。またマスタリングを担当したのは、先月後半弊サイトで紹介したばかりの無果汁団『ナサリー』を手掛けたmicrostarの佐藤清喜で、マスタリング・エンジニアとしてジャンルレスに多くのアーティストから信頼されている。 
 続いて肝心の収録曲について解説しょう。 
 A面冒頭のリード曲「blue mint Christmas」は小林がソングライティングして、『The Wind・・・』では2曲に参加した、北海道在住でワンマン·ユニットのalvysinger(アルビーシンガー)を主宰する小野剛志がアレンジを手掛けている。同アルバム収録で小野が手掛けた「風は花の香りを運ぶ」に通じる爽やかなソフトロック~ギターポップ系サウンドは、小林のメルヘンチックな歌詞とその歌唱を引き立てる。この曲では元Johnny Deeや101 Dalmatiansなど伝説のバンドに所属し、現在Thee Windless Gatesで活動するギタリストの下田剛も参加し、特徴的なリッケンバッカーの響きを聴かせてくれる。
 続く「トナカイの夜」は、FMまつもとのラジオ番組『Hikory Sound Excursion』のクリスマス企画で結成され、小林も参加したユニット”タンタンルドルフ”のオリジナルで、番組ナビゲーターの久納ヒサシのソングライティングとアレンジによる、バラード系のクリスマス・ソングだ。同番組では2023、24年のクリスマス特集でオンエアされており、今回が初音源化となる。バックトラックの演奏とプログラミングは久納が担当し、小林とデザイナーのArasawaによるダブル・ボーカルで歌われ、インディーレーベル”chocolate & lemonade”主宰のBobbyがジングルベルでゲスト参加している。

   
小林しの (Shino Kobayashi) "Winter Letters" teaser 

 B面冒頭の「午後にはシュトーレン」は、小林の作詞に近藤健太郎が曲をつけるという、Snow Sheep組のコラボレーションで、アレンジは近藤と今年3月にリリースされた、彼のソロアルバム『Strange Village』で共同プロデュースを務めた及川雅仁と2人で担当している。曲調は近藤の「She Is Mine」に通じる風通しの良いソフトロックで、クリスマス・シーズンの午後のティーパーティーの風景を綴った歌詞と愛らしい小林の歌唱が印象に残る。近藤はアコースティックギターとピアノ、鍵盤類、及川はエレキべースやエレキギターからグロッケン、メロディカ、ボンゴやウインド・チャイムなどパーカッション類までプレイして貢献している。
 続く本作ラストの「wheat ana rice」は、小林のソングライティングに及川がアレンジを担当した2分弱のスロー・ワルツで、全ての演奏とプログラミングを及川が手掛けている。タイトルは小林が飼っていた(実家で?)2頭の愛犬の名前らしく、その想い出を綴った歌詞と無垢な歌唱が美しく、心に響く。コーダで響く及川によるパイプオルガンの演出も効果的だ。

 なお本作も数量限定(200枚)の7インチEPなので、筆者の詳細レビューを読んで興味を持った音楽ファンは、リリース元レーベルのオンラインショップ等で入手しよう。

*blue-very label* オンラインショップ :http://blue-very.com/?pid=187645587


(テキスト:ウチタカヒデ