2020年8月23日日曜日

名手達のベストプレイ第8回~デイヴィッド・T・ウォーカー



出典 :http://blues.gr/

 伝説のギタリスト、デイヴィッド・T・ウォーカー(本名:David Tyrone Walker)は、1941年6月25日オクラホマ州東部に位置する第二の都市タルサで生まれた。同州はアメリカ先住民が強制移住させられた歴史を持ち、インディアンの保留地が多いことで知られている。その様な背景から彼の父親はアフリカ・アメリカンだが、母親はチェロキー族の血を引いている。
 家族はデイヴィッドが2歳になった頃にカリフォルニア州ロサンゼルスの海岸地区サンペドロに移住し、5年後に中央カリフォルニアに移り住んだ。更に7年後にロサンゼルスのワッツ地区に戻った頃、教会音楽からギターに興味を持ちそれを手にしたのは彼が15歳になった頃だという。  

 高校在学中にはThe Kinfolksというバンドを結成し、卒業後は早くもニューヨークでプロ・ミュージシャンとしての活動を開始している。その後The Kinfolksはモータウン・レコードと契約し、マーサ&ザ・ヴァンデラスの専属バンドとなる。デイヴィッドはギタリストとして頭角を現し、マーヴィン・ゲイ、ジェリー・バトラー、ジャクソン5のセッションにも参加して、その名は知れ渡るようになる。
 同時期Universal City Records傘下のレーベルRevueから初のソロアルバム『The Sidewalk』(68年)、続いて『Going Up!』(69年)とソウル・ジャズ系の2作、マイナー・レーベルのZea Recordsからの『Plum Happy』(70年)ではスライ&ザ・ファミリー・ストーンの影響下にあるサイケデリック・ファンク色の強いサウンドを打ち出し、ギター・インストゥルメンツという新たなジャンルで自らの表現場所を開拓していく。 

 70年代に入るとスティーヴィー・ワンダー、ダイアナ・ロス、マイケル・ジャクソンのソロといったモータウンの名だたる看板アーティスト達のセッションもこなしていくが、ポップス・ファンにとっては忘れられないのは、キャロル・キングの『Rhymes & Reasons』(72年)、『Fantasy』(73年)への参加だろう。従来の歌伴を超えたデイヴィッドのプレイは、志高いセッション・ミュージシャンのアイデンティティを確立したと言って過言ではない。また当時彼女が所属していたODEレコードではソロ契約もして、『David T. Walker』(73年)、『Press On』(73年)、『On Love』(76年)の3作をリリースし、ニューソウルの匂いを残しつつジーン・ペイジなどのアレンジャーによるオーケストレーションを導入するという新たな試みをしている。
 
彼が参加したアルバムは、1963年の『The 1963 Sound Of Hank Ballard And The Midnighters』から2017年のVulfpeckの『Mr. Finish Line』まで2500作以上とされており、時代を超えてそのギタープレイが愛されている。正にミュージシャンズ・ミュージシャンという肩書きが相応しい存在なのだ。 
 さてここでは、そんなデイヴィッド・T・ウォーカー氏を心より敬愛するミュージシャン達と、彼のベストプレイを挙げてその偉業を振り返ってみたい。今回は参加者9名の内ギタリストが6名もいるのでテクニカル面でも解説してくれた。
 サブスクリプションの試聴プレイリストを聴きながら読んで欲しい。




 【デイヴィッド・T・ウォーカーのベストプレイ5】 
●曲目 / ミュージシャン名
 (収録アルバムまたはシングル / リリース年度)
◎選出曲についてのコメント
※管理人以外は投稿順により掲載。


足立浩(アダチ ヒロシ)
Drums & Percussion 奏者/じゃむずKOBO 代表/S.A.D.ドラムスクール 講師 
◆HP URL:https://adhiroshi.amebaownd.com 



●You’ve Been Around Too Long / Carole King(『Fantasy』/ 1973年)
◎綺麗な曲繋ぎのこのアルバム。 
 ハーヴィー・メイソンのドラムと絡みながらリズムを立体的に仕上げています。
 個人的に好きな2:58のココ(是非聴いてください笑) そして良い曲だったなぁと油断しているとラストでやられます。 

●傘がない-イントロダクション- / 井上陽水(『二色の独楽』/ 1974年)
◎アルバムのイントロダクション。とても美しい響きで一気に世界観を作ってしまうのは流石。
 「流れるように、歌うように」見事に体現されたプレイ。
 その後の「夕立」のギターリフとのコントラストが素晴らしい。

●Come on Back to Me Lover / Margie Joseph
 (『Feeling My Way』/ 1978年)
◎最初から最後までこんなにも色彩豊かに表情をつけていく、、、凄すぎませんか?2:07からギターソロへ移行しますが、何とも流れが綺麗。
 楽器で歌うってこうゆう事なんですね。はぁ素敵。

●In All My Wildest Dreams / Joe Sample
 (『Rainbow Seeker』/ 1978年)
◎ジョー・サンプルとのコンビネーションが素晴らしいこの曲。
 会話が聴こえてくるこの感じが大好きです。
  2:49の抜き具合が何ともセクシー!

●Honest I Do/ JOE SAMPLE - DAVID T.WALKER
 (『SWING STREET CAFE』/ 1981年)
◎全編ご機嫌なブルースサウンドを堪能できるアルバム。
 その中でも終始リラックスしたプレイを楽しめる1曲。
 2:26のデイヴィッドのギターに対してお茶目に返すジョー・サンプルに笑顔が溢れます。



You’ve Been Around Too Long / Carole King 



渡瀬賢吾(ギタリスト)
roppen、bjons、Spoonful of Lovin'、クララズ、ソフテロなど。



●Doo Doo / David T. Walker(『PLUM HAPPY』/ 70年)
◎ソロ3作目。後のOde時代とはまた違う、荒削りなファンクはこの時期ならではの魅力。Afriqueのアルバム同様、ワウやファズで遊んだこの音作りなら、正直デイヴィッド・Tでなくてもいいのでは?とも思いはしますが、芯にあるのはあくまで彼の歌心なので、他の人のギターではダメなのです。

●Directions / Carole King(『Fantasy』/ 1973年) 
◎全編デイヴィッド・Tのギターが素晴らしいアルバム、この曲も例に漏れず個性が爆発しています。ホーンやストリングスを配したアレンジの中にあっても、シグネチャー的なトリルやハンマリング/プリングオフの音がどうしても耳に残ります。 

●Evergreen / BOOKER T(『Evergreen』/ 1974年)
◎イントロから淡々と続くカッティングが、ブッカー・Tのオルガンとともに徐々に熱を帯び、何とも言えない高揚感をもたらす、その様相はさながらミニマルファンク。曲間とアウトロでわずかにフィーチャーされるギターパートだけでハッとさせるのは流石です。

●Street Walkin’ Woman / Marlena Shaw
(『Who Is This Bitch, Anyway?』/ 1975年) 
◎楽曲、リズム、歌とどれも最高のこのアルバム、デヴィット・Tは名手ラリー・カールトンとのツインギター。「Feel Like Makin’ Love」はじめどの曲でもいいのですが、ダイアログのあと突如鳴り響くこの2曲目を。 高速ビートからスイングへと移り変わるリズムを、シンコぺの効いたオブリとバッキングで乗りこなす様は圧巻。

●Do It To My Mind / Johnny Bristol
 (『Bristol's Creme』/ 1976年)
◎フリー・ソウル〜AORの流れを感じるこのアルバム、この1曲目に先導されるようにメロウでファンキーな良い曲ばかり。 ダブルストップを多用したデイヴィッド・Tのギターは洗練の極みで、パーカッションや分厚いコーラスと絡むオブリも気持ち良いです。


Do It To My Mind / Johnny Bristol



 【TOMMY (VIVIAN BOYS) 】
オフィシャルサイト : https://twitter.com/VIVIAN_BOYS



●Long Distance / Garnell Cooper & The Kinfolks 
(7"『Green Monkey』B面/ 63年) 
◎リーバー&ストーラー制作。ホットロッド曲「Mustang」と共に『Las Vegas Grind 6』に収録の猥雑キラー。デイヴィッドT元素全開。ベースの初期相棒トレイシー・ライトらとマーサ&ザ・ヴァンデラス専属バンドに(68年2月初来日)。

●Nuki Suki / Little Richard(『The Second Coming』/ 72年) 
◎黄金期組(バンプス・ブラックウェル、リー・アレン)、レッキング・クルー(マイク・ディージー、ジム・ホーン)、架け橋アール・パーマー、次世代チャック・レイニー。デイヴィッドTのワウは、それらとリチャードの叫び&クラヴィコードを繋ぐグルーヴの核。

●Spanish Harlem / The Crusaders(『Hollywood』/ 72年) 
◎モータウン傘下レーベル作。スペクター作曲関与のベン・E.キング曲。チャック・レイニーと共に客演。デイヴィッドTの対旋律、ワウを絡めたリズムパターンの無限の引き出しを支える、アーサー・アダムスとの二人羽織は『イタリアン・グラフィティ』等でも。 

●On Broadway / David T. Walker(『David T. Walker』/ 73年) 
◎シンガー、キャロル・キングの仕掛人、ルー・アドラーのOdeより。ザ・クリスタルズ版経由でスペクターがギターソロ参加の、ザ・ドリフターズ版が雛形。ウィルトン・フェドラー、ビリー・プレストン、何よりボビー・ホールが生む、マーヴィン・ゲイ諸作感。

●Only With You / Nick DeCaro (『Love Storm』/ 90年) 
◎山下達郎『Big Wave』収録曲。ブルース・ジョンストンと似たデカロの舌足らずな歌と、デイヴィッドTのオブリは、原案のブルース&テリー「Don't Run Away」をより想起。
 「アンダー・ザ・ジャマイカン・ムーン」同様、聴き処はFO前。




Long Distance / Garnell Cooper & The Kinfolks




 【小川タカシ(カンバス)
ソロユニット、カンバスのボーカル、ギター、作詞作曲として活動中。
また、楽曲提供やコーラス、ギターなどのサポート・レコーディングも行う。
オフィシャルサイト : https://canvasweb.net/ 



●Hot Fun In The Summertime / David T.Walker
 (『David T.Walker』/ 1971年)
◎Sly & The Family Stoneが1969年にリリースした曲のカバーです。原曲も最高ですが、このバージョンは最初の1音が最高にソウルフルだなと思いました。珍しくワウペダルを踏んでいるのも好き。

●Our Lives Are Shaped By What We Love / Odyssey
 (『Odyssey』/ 1972年)
◎定番曲「Battened Ships」が有名なOdysseyの1stに収録されている曲。昔から好んで聴いていたのですが、このギターがDavid T.Walkerだということに最近気づきました。ピアノのようであり、ホーンのようであり、フルートのような(もちろん”ハープ”も)、ギター1本でいろんな役割をこなしているのが凄いです。 

●If I Lose This Heaven / Quincy Jones(『Body Heat』/ 1974年)
◎ソウル/ジャズの名盤、Quincy Jonesのアルバムから。振られた女性の悲しい歌らしいのですが、幸せだった頃に思いを馳せるような、サビの多幸感&切なさにグッときます。
 独特なグルーヴのカッティングはデヴィTならではですね。

●Body Heat / Leon Ware(『Musical Massage』/ 1976年)
◎先に挙げた曲の作曲者でもあるLeon Wareの2ndから。これくらいのBPMの曲が、David T.Walkerのギターが一番映えるなと思います。
 サビの、高音部分で弾くダブルストップが気持ちよすぎますね。

●Running Away (feat. Joey Dosik, David T. Walker & James Gadson) / Vulfpeck 
 (『Mr. Finish Line』/ 2018年)
◎最近お気に入りのファンクバンド、VulfpeckがJoey Dosik、David T. Walker、James Gadsonとコラボレーションした曲。70年代との違いは、ギターがGibsonのByrdlandじゃないという点。
 ギターのサウンドは当時とは違いますが、ギターのタッチは紛れもなくデヴィTですね。
 ちなみに、今回選んだ5曲はBPM100以下、自分が一番気持ち良いと感じるテンポの曲ばかり選ばせていただきました。



Our Lives Are Shaped By What We Love / Odyssey 



角谷博栄(ウワノソラ/ウワノソラ'67)
マキシシングル『くらげ』8月15日リリース。
オフィシャルサイト : https://uwanosora-official.themedia.jp/ 



●Angie Girl / Nick DeCaro (『Italian Graffiti』 / 1974年)
◎大学時代、ギターの師匠とデヴィTの話題になった。こんなギタープレイは本当にドエロな人ではないと無理だろうね、という結論に至った。
 今でもそんな気がする。色っぽくて男のロマンと哀愁を背負ったギタリスト。

●I Wish You Love / David T. Walker (『On Love』/ 1976年) 
◎デヴィTのライブを初めて観たのは高三の秋。友人といった東京ブルーノートだった。 目まぐるしい(指が早く動くなど)サーカスのような演奏をすごいと思ってしまうような青年だった僕を更新させてくれた。
 そういったプレイヤーとは対極にある人だと思う。間や味、心地よさ、そういったものが僕にとっては本当に好きな演奏の技術なのだと感じた。 その時に物販で購入したアルバムの中からの一曲。

●Your Love-So Good I Can Taste It / Barry White
 (『Is This Whatcha Wont?』/ 1976年) 
◎Barry White、Love Unlimited Orchestra(ジーン・ペイジ)、デヴィT、僕にとってこの人達のサウンドに共通する物は、男性という生き物の繊細さと弱さ、脆さ。
 それが本当に心地よいアンサンブルとなって夢の世界へ誘ってくれる所。尺は長いが本当に大大大好きな曲。

●You Need A Change / Syreeta & G.C. Cameron
 (『Rich Love, Poor Love』/ 1977年)
◎デヴィTはほぼアンプ直差し。弦を弾いた音がそのまま耳へ。 参加作品は膨大。彼が参加している曲はクレジットを見なくても彼だと分かる。

●What's Going On (Live) / Bernard Purdie, Chuck Rainey, David T. Walker etc
 (『Coolin' 'N Groovin' (A Night At On-Air)』/ 93年)
◎マーヴィン・ゲイのカバーのライブ映像。YOUTUBEでも観られます。ライブではクドい程ソロギターを演奏しますが、それもデヴィT印。  キラキラと小指でのプリングが始まると、絶賛ソロタイムの合図。



What's Going On (Live) / 
Bernard Purdie, Chuck Rainey, David T. Walker 



the Sweet Onions:近藤健太郎(The Bookmarcs)&高口大輔
オフィシャルサイト : http://philiarecords.com 



●Never Can Say Goodbye / Jackson 5
 (『Maybe Tomorrow』/ 1971年)
◎キュートでソウルフル、何度でも聴きたい永遠の名曲。 切ないメロディと真っ直ぐな歌声に寄り添う、David T.Walkerのメロウで小粋なバッキング、随所に散りばめられたさりげないフレーズがとにかく心地よいのです。(近藤)

 ●New York City / Alphonse Mouzon
(『The Man Incognito』/ 1976年)
◎かっこいいドラムのブレイクから始まるファンクナンバーにおける聴きどころは、David T.Walkerによるギターソロ。チョーキングを使いながらのブルージーな前半部、コードチェンジしてからのホーンセクションとの絡み、両方が楽しめます。(高口)

● 心を全部くれるまで / 古内東子(『Hourglass』/ 1996年)
◎コードバッキングや弾きまくりのソロというよりは、主役の横に控えながら、自由に隙間を縫って高音部の軽やかな単音、または2音のフレーズで曲を彩るのが本当に上手いギタリストだなと思います。この曲ではオクターブ奏法も交えながら曲にあたたかみを加えています。(高口)

●Who Will The Next Fool Be? / Diane Schuur
 (『Blues For Schuur』/ 1997年)
◎ジャズピアノ・シンガー、Diane Schuurによるブルースアルバム。 アルバムほぼ全編に渡ってDavid T.Walkerがギターで参加。
 この曲もイントロからブルース全開なソロで始まり、滑らかなフレージング、ライブ感満載の貫禄のプレイが堪りません。(近藤)

●Just A Love Child / Bobbi Humphrey
 (『Black And Blues』/ 1999年)
◎曲中左チャンネルで何度も奏でられる彼定番のオブリが印象に残る一曲です。
 左手小指で弦をはじいて弾くDavid T.Walkerが得意とするこのオブリは、彼の参加したセッションで度々聴くことができます。(高口)



Never Can Say Goodbye / Jackson 5 



洞澤徹(The Bookmarcs)
Official HP: https://silentvillage.wixsite.com/horasawa 
2020 New Song - 「When I Was Young」トレーラー:
https://www.youtube.com/watch?v=g28eznv9a0c&feature=youtu.be


 ●Look of Love / David T. Walker (『The Sidewalk』 / 1968年)
◎バカラックのカバー。少しウェスモンゴメリのビートルズ・カバーを匂わせるジャジーなアプローチがとても好きです。

●No Dough / The Mamas & The Papas
  (『People Like Us』/ 1971年)
◎ソフトロックなテイストに滑らかに溶け込む右チャンネルのDavid Tのギター。 決して派手なプレイでないのに過不足ないプレイは存在感あります。

●With A Little Help From My Friends / David T. Walker
 (『Press On』/ 1973年)
◎名盤からのビートルズ・カバー。
 前半のメロウなフレージングからうってかわっての後半の熱いバッキングがグッときます。

●Gotta Get It On / The Crusaders
 (『The 2nd Crusade』/ 1973年)
◎Davd Tは右チャンネルのカッティング。ソウルのお手本バッキング的パターンプレイ。
 左チャンネルのファンキーなプレイとの絡みも抜群です。

●Midnight call / 飯島真理 (『Miss Lemon』/ 1988年)
◎ソフトな飯島真理の歌に寄り添いながらも、目立つわけではないのにはっきりとDavid T 節を決めてくるあたりはさすがです。
 意外にも彼女の歌との相性はバッチリに感じました。


With A Little Help From My Friends / David T. Walker



 【平田 徳(shinowa)
オフィシャルサイト : http://www.shinowaweb.com 



 ●Sweet Soul Shakin’/ Young Hearts
 (『Sweet Soul Shakin』/1968年) 
◎David T.Walker の持ち味のひとつには、歪まない官能的なクリーントーン・ギターワークがあると思いますが、その黎明期にあたるすばらしいギターワーク。ギタリストとして憧れるプレイ!そもそもこの曲が込み上げ系ノーザンソウルとして最高。 

●B Minor / Clydie King(『Direct Me』/ 1971年) 
◎著名なセッションシンガーClydie Kingのソロアルバムからの一曲。
 このギターソロも官能的すぎる。

●Visions / Stevie Wonder(『Innervisions』/ 1973年)
◎叙情的な曲に官能クリーントーンが最高に絡んでいます。

●Share My Love / Gloria Jones(『Share My Love』/ 1973年)
◎官能クリーントーンソロにワウが加わりました的な最高なやつですけど、曲のVERSEで盛りあがるとこではソロではなく、ワウでチャカポコやりはじめる、もうニクいアレンジ。

●Dondi / Ed Motta(『AOR』/ 2013年)
◎エヂ・モッタの2013年のアルバムにも参加しています。
 まずはしっかりエヂ・モッタをサポートし、油断させた隙に官能シーンをチラ見せする熟練ぶりです。


Sweet Soul Shakin’/ Young Hearts



ウチタカヒデ(WebVANDA管理人)

●Love's So Far Away / Donald Byrd(『Black Byrd』/ 1973年)
◎ジャズ・トランペッターのドナルド・バードがスカイハイ・プロダクションと組んでファンク化する最初期盤から疾走感ある1曲。ハーヴィー・メイソンとチャック・レイニーの鉄壁なリズム隊をバックにデイヴィッドのプレイは左チャンネルで聴ける。
 素早いカッティングからダブルストップのパッセージが次々に繰り出されるからたまらない。

●Feel Like Makin' Love / Marlena Shaw 
 (『Who Is This Bitch, Anyway?』/ 1975年)
◎説明不要の一期一会セッションの名盤から。ここでもハーヴィーとチャックのリズム隊で、右チャンのデイヴィッドに比べ左チャンのラリー・カールトンのプレイはやや控えめだが、2コーラス目のサビから双方のプレイの対比が面白くなる。
 デイヴィッドは独特なアックのオブリからローポジションでダブルストップを連発、トレモロ・ピッキングでのスライドと職人技のオンパレードだ。
(※サブスクでは左右のチェンネルが逆になっているので要注意!)

●雲のゆくえに / 吉田美奈子
 (『愛は思うまま (Let's Do It)』/ 1978年)
◎村井邦彦がビリー及びジーンのペイジ兄弟にプロデュースをオファーした海外録音盤の1曲。山下達郎によるカーティス・メイフィールド風の曲調で後に彼もセルフ・カバーする。デイヴィッドは左チャンネルでこの曲に不可欠なフレーズのリフレインを弾き、吉田のボーカルに呼応する。

●Almost Everything / Melissa Manchester
 (『Don't Cry Out Loud』/ 1978年)
◎リオン・ウェアのプロデュースによるメリッサの出世作からメロウ・バラードを。艶のあるイントロのフレーズからジェームス・ギャドソンとチャックのリズム隊によるグルーヴにデイヴィッドの小気味いいカッティングが乗れば言うことは無い。女性シンガーの歌伴として理想的なプレイが聴ける。

●If You Think You're Lonely Now / Bobby Womack 
 (『The Poet』/ 1981年)
◎盟友ボビー・ウーマックのポエット3部作の1作目から感動的なブルースを。デイヴィッドが左チャンネルで繰り返すリフはジョー・サンプルの「In All My Wildest Dreams」でのプレイを発展させたパターンのようだ。土臭さを残しつつも古くならないのは、このデイヴィッドのプレイによるモダン感覚なのだ。


Feel Like Makin' Love / Marlena Shaw 

 (企画 / 編集:ウチタカヒデ

2020年8月19日水曜日

Saigenji 『Music Eater』配信開始



 今年5月のライヴ・アルバム『Live “Compass for the Future”』が記憶に新しい、シンガー・ソングライター兼ギタリストのSaigenji(以降サイゲンジ)が、2006年7月に東芝EMIからリリースし、廃盤状態が続いていた5THアルバム『Music Eater』を8月19日にデジタル配信する。 
 ここでは当時筆者が執筆したレビューを加筆して弊サイトで再掲し、今回追加されたボーナス・トラックについても触れておく。 

 『ACALANTO』から1年足らずという短いインターバルで届いた本作は、カエターノ・ヴェローゾの息子モレーノとのユニット"モレーノ+2"のメンバー、カマル・カシンが手掛けた前作での試みが、サイゲンジの創作意欲を刺激したと思わせる、充実した多くのオリジナル曲がアルバムに収録されている。
 リードトラック「SUNRISE」のプリプロから発展した形で共同プロデューサーとして名を連ねているのは、元beret(ベレイ)で現在GIRA MUNDO名義で活動している奥原貢だ。サウンド的には前作の様な音響派的実験性は影を潜めているが、優れたパフォーマーとしての姿を自然にアルバムに溶け込ませたという点で、彼のスタイルを理解して的確なサジェスチョンを与えたとして、奥原は適任者だったと思わせる。

  
 本作のレコーディング・メンバーはサード・アルバム『Innocencia』(04年)からとなる、ドラムの斉藤良、ベースの小泉“P”克人、パーカッションの福和誠司を軸に曲毎にゲストが参加している。 
 では筆者が気になった主要曲を紹介していこう。
 冒頭のリードトラック「SUNRISE」はサイゲンジが得意とするトニーニョ・オルタ・スタイルのギターワークと、サンバとサルソウルを融合させたリズムがダンサンブルに高揚感を高める。
 元々ジャズ・フィールドで活動する斉藤と小泉によるリズム隊のコンビネーションも抜群で、福和がプレイするパンデイロやスルド、タンボリンなど多数のブラジリアン・パーカッションが乱舞するのだ。

  SUNRISE / Saigenji  

 常日頃から様々なジャンルのアルバムを聴き漁って音楽を浴びている、サイゲンジそのものを現した「Music Junkie」は、既にライヴでも演奏されており、サイゲンジのギターとフルート以外のサウンドは奥原が担当している。
 アコースティックなヒップホップというジャンルレスな感覚は非常に新鮮で、なによりサイゲンジのヴォイス・パフォーマンスは圧巻だ。コーラスには奥原の他、彼が主宰するGIRA MUNDO DISCOS所属の日野良一など6名が参加して盛り上げる。

  Music Junkie / Saigenji
(2014.1.2 @ Motion Blue Yokohama)

 「海の刹那」はイントロのサイゲンジ自身によるホーミーのインパクトが強い幻想的な曲で、チェリスト・作編曲家として知られる徳澤青弦がチェロとストリングス・アレンジで参加している。彼とサイゲンジはバスタンチというブラジリアン・バンドを組んでいたこともあり、この曲でもポルタメントの効いたプレイで曲を演出している。
 一転してハートウォームな歌声に惹きつけられる「日溜まりのダンス」は、トラディショナルなサンバに近いテンポで演奏される隠れた名曲で、福和による複数のブラジリアン・パーカッションが活躍する。ジャズ・トロンボーン奏者の中路英明のプレイも秀逸で、このサウンドの雰囲気にぴったりだ。
 ギターリフから発展させたメャー・ブルース進行の「Nature Girl」は、「光が差したら」(『la puerta』収録 / 03年)や「テレスコープ」(『Innocencia』収録 / 04年)の流れを汲む、サイゲンジ流シンガー・ソングライター・サウンドだ。シンプルな3人編成の同時一発録音ながら味わい深さはケニー・ランキンなどに通じ、小泉のウッドベースがサウンドの肝になっている。  

 オリジナル・フォルクローレの「シルビオとハビエル(Silvio y Rabiel)」は、サイゲンジが20歳の時に作ったとは思えない完成度で、沖縄在住のアルゼンチン音楽家シルビオ・モレノ、スペイン人フラメンコ・ギタリストのハビエル・コンデの二人に捧げられている。彼はこの二人に南米音楽の手ほどきを受けたという。恩人への感謝という崇高な思いが創作に繋がったという、実に理想的な音楽のカタチではないだろうか。 
 スタジオ・レコーディング曲ではラストとなる「EL SUR(南へ)」はソロで演奏されるバラードで、詩情溢れる歌詞も相まってアルバム随一の美しさだ。
 アルバムラストにアンコール的に位置する「ECHOES」は、06年6月Motion Blue Yokohamaでの演奏を収録したライヴ・レパートリーとしてお馴染みのブラジリアン・フュージョンだ。サイゲンジのスキャット、ゲストのトランペッター島祐介(RICO、ego-wrappin'他)とキーボーディスト丈青(じょうせい、SOIL & "PIMP" SESSIONS所属)、斉藤と福和の各インタープレイが続く圧巻の演奏は聴きものである。 
 本作は収録曲毎に複数のエンジニアが手掛けたミックスと、マスタリング・エンジニア業界の重鎮である田中三一の仕事も際立つアルバムとなっている。 


 なお今回の配信では過去にコンピレーションにのみ収録されていた3曲が、ボーナス・トラックとして含まれるので補足紹介する。
 アントニオ・カルロス・ジョビン作としてあまりにも有名で、無数のカバーが存在する「Samba de Uma Nota Só」=「One note samba」(『TOKYO BOSSA NOVA~Flores~』収録/06年)はライヴ・ヴァージョンで、サイゲンジ流に換骨奪胎した解釈が新鮮で素晴らしい。
 「砂の町」(『TOKYO BOSSA NOVA~outono~』収録/04年)は、『Innocencia』のレコーディング時期と重なるので同作のアウトテイクかも知れない。サウンド的にはサイゲンジ自身によるギターとフルート、斉藤と小泉によるリズム隊に丈青と思われるエレピの編成である。「テレスコープ」のマイナーキー・ヴァージョンといった感じでブルージーなムードは悪くない。
 ボーナス・トラック中で最も目玉なのが、サイゲンジがFilo Machado(フィロー・マシャード)と共演した「Common Pulse~Welcome To My Home~」(作曲:サイゲンジ『TOKYO BOSSA NOVA ~madeira~』収録/05年)である。
 フィローは1951年サンパウロ生まれ、キャリア50年を超えるシンガー・ソングライター兼ギタリストで、ソロ活動の他ジャヴァンの『Seduzir』(81年)やマーシャ・マリアの『Colo De Rio』(85年)にソングライティングで参加するなど一流ミュージシャンである。筆者も06年に今は無き高田馬場コルコバードでライヴを堪能したが、パフォーマーとしても超一流であった。
 この曲はスタイルが近いミュージシャン同士の丁丁発止の一発録りセッションとして、サイゲンジとフィローによるヴォイス・パフォーマンス、ギター・プレイのバトルが圧巻である。当時コンピレーション限定収録曲としては勿体ないと感じていただけに嬉しいボーナスといえる。
 以上本作に興味を持った音楽ファンは下記リンクから入手して聴いて欲しい。

配信リンク
Apple Music
Spotify

(ウチタカヒデ)


2020年8月16日日曜日

WebVANDA管理人のラジオ出演について



 弊サイト管理人のウチタカヒデが、長年交流のあるThe Bookmarcs(ザ・ブックマークス)のFM番組『The Bookmarcs Radio Marine Café』に出演します。
 この番組は昨年8月に開局した神奈川県横浜市中区に所在する横浜マリンエフエム(愛称:マリンFM)で毎週火曜日20時から放送されています。
 メンバーの洞澤徹氏と近藤健太郎氏のセンスのいい選曲と、”誰デモ”サウンド・クリエイターのコーナーなど他では聴けない内容が好評で、放送エリアを超え広く聴かれている人気番組です。

 管理人は8月25日と9月1日の二週に渡り、「夏の終わりのハーモニーポップ」というテーマで、過去に執筆参加した『ソフトロックA to Z』シリーズ的視点で選曲しています。現在世間はコロナ渦のため、7月のはじめにオファーをいただいて自宅録音した曲紹介の音声を提供しての出演となります。
 弊サイトや『ソフトロックA to Z』読者は是非聴いて下さい。
 なお曲解説しているバックでは、弊サイトでお馴染みのザ・ペンフレンドクラブウワノソラのレアなインスト曲をオンエアするので各ファンの方も要チェックです。


 この番組はパソコンやスマートフォンの無料アプリケーション”Listen Radio (リスラジ)”により全国で聴けますので、下記のリンク先からDLしてからお聴き下さい。
コチラからDL http://listenradio.jp


●番組情報
◎マリンFM 86.1Mhz
 http://www.marine-fm.com

◎「The Bookmarcs Radio Marine Café」
 パーソナリティー:The Bookmarcs (近藤健太郎・洞澤徹)
 放送エリア:横浜市中区及び西区、南区、磯子区の一部
 放送日時:毎週火曜日 20:00~20:30
 再放送 :毎週日曜日   7:30~8:00
 Listen Radio(リスラジ)アプリから全国で聴けます。
 

 The Bookmarcsは、昨年11月の「君の気配」に続いて、今年4月に『雲の柱 - Spring Jazz Mix -』を配信リリースしている。
 同曲は18年のセカンド・アルバム『BOOKMARC MELODY』収録曲で、同年管理人が選ぶ邦楽ベストソングで選出した「雲の柱」がオリジナルであり、今回ジャズピアノをフィーチャーしてリアレンジしたリミックス・ヴァーションだ。
 これから夏のドライブのお供としてピッタリなので聴いて欲しい。


配信リンク(amazonは下記画像からリンク)
Apple Music 
Spotify 

(ウチタカヒデ)


2020年8月10日月曜日

ウワノソラ:『くらげ』(UWAN-005)


 昨年6月のサード・アルバム『夜霧(よぎり)』リリース後、初の東京ライブを成功させたウワノソラが、未発表曲とライブ音源を収録したマキシシングル『くらげ』を8月15日にオフィシャルサイトのオンラインストア限定でリリースする。

 ギターとソングライティング、プロデューサーの角谷博栄とヴォーカリストのいえもとめぐみの2人組となってから3年となる彼らは、ネオ・シティポップ・シーンから飛び抜けた存在であり、好事家や拘り派の音楽ファンのとっておきのバンドとなってきた。
 『夜霧』リリース時に弊サイトに掲載したインタビューをご覧の通り、これはひとえに角谷の人並み外れた拘りに裏打ちされた曲作りとアレンジング・センスが大きいだろう。またヴォーカリストとして、いえもとの巧みな表現力はウワノソラの存在意義を高めており、欠かせない存在となっている。 

 最新トピックとしては、以前弊サイトで評価したガール・グループNegicco(ネギッコ)のメンバー、Kaede(カエデ)のセカンド・ミニアルバム『秋の惑星、ハートはナイトブルー。』をLampのリーダー染谷大陽と角谷が共同プロデュースしている。角谷は2曲のソングライティングと4曲のアレンジを手掛けており、レコーディングにはLampのメンバーと共にいえもともコーラスで参加し、各バンドのセッション・メンバー達も多くプレイしているので両バンドのファンは必聴だろう。
 リリースは9月8日で、筆者は既に音源を聴いているので弊サイトでレビューを予定している。



 本作の話題に戻るが、このマキシシングルを構成している楽曲の経緯を説明しておく。昨年の『夜霧』の収録から外れ、『夜霧1.5』なるタイトルでリリースしようとしていた2曲と、「Umbrella Walking」から「隕石のラブソング」まで計4曲のMVを監督している菅野圭亮が所属する映像会社からのオファーにより書き下ろした新曲2曲(制作されたMVは1曲のみ)。 
 また女性シンガー・ソングライターNeoとの共作のセルフカバー、そして昨年の『ウワノソラ 7Years Live』から2曲の計7曲が収録されている。
 筆者は先月送られてきた音源を一聴して高く評価し、「オンラインストア限定だけでなく、なぜ流通させないのか?」と聞いたほどだ。

 ではこの貴重な音源が収録された本作『くらげ』の収録曲を解説していこう。 冒頭の「ハートの手鏡」は昨年冬に制作された新曲で、80年代の機材を駆使したニューミュージック~シティポップ系サウンドだ。
 ちょうど昨年夏に筆者が愛聴していた、サカナクションの13thシングル「忘れられないの」に通じるオメガトライブ感がたまらない。八分刻みのシンセベースにスラップのアクセント、FM音源系シンセ(ヤマハDX7)のプリセット音やエレピのサウンドがそれを想起させるのだろう。それでもコード・プログレッションには強い拘りがあり、セカンド・ヴァースはプリファブ・スプラウトの「The World Awake」(『Protest Songs』収録/89年)、ブリッジのジャジーな進行はドナルド・フェイゲンの匂いがして好きにならずにいられない。いえもとの特徴的なヴォーカルもこの新境地サウンドに溶け込んでいる。
 歌詞にも触れると、80年代中期にヒットした、漫画家わたせせいぞうの「ハートカクテル」(モーニング誌に連載/83~89年)に影響を受けているという。混沌としたバブル期において一服の清涼剤ともいえる同作品のリアルタイムの後に生まれた角谷にとっては新鮮に映ったのだろう。


無重力のフォトグラファー / ウワノソラ

 続く「無重力のフォトグラファー」も昨年秋に制作された新曲で、こちらは菅野圭亮が監督してMVが制作された。歌詞にはSF要素のある青春模様が描かれていて本作タイトルのくらげがモチーフとなっている。またサビの歌詞にはドゥービー・ブラザーズの「What a Fool Believes」(『Minute by Minute』収録/78年)が顔を出すが、その直前のパートで同曲風のピアノとシンセ・パッドのフレーズが聴けるのも心憎い。前曲よりリラックスしたいえもとのヴォーカルに絡む本人と深町仰によるコーラスの美しさも際立っている。
 この曲の全体的なサウンドには80年頃のユーミン・サウンド(基はデイヴィッド・フォスター~エアプレイ)からの影響を感じるが、ヴァースのリズム・アプローチやオーバー・ドライブ系で歪ませたジェイ・グレイドン~松原正樹系のギターリフ、ナチュラル・トーンのギターソロ、前出のコーラス・パターンなどそのエレメントが多い。「5cmの向う岸」(『時のないホテル』収録/80年)や「まぶしい草野球」(『SURF&SNOW』収録/80年)などが好きな熱心なユーミン・ファンにお勧めしたい。

 一転してハードなラテン・ファンクのパートを持つ「ろまん」は、リード・ヴォーカルに冗談伯爵の前園直樹が迎えられている。2017年の「遅梅雨のパレード」(『陽だまり』収録)に参加したカンバス小川タカシ以来となる外部ヴォーカリストの参加は新鮮だ。
 この曲と「私のモラトリアム」は『夜霧1.5』の収録候補曲で、サウンド的には終始響くクイッカとティンバレスのアクセント、クラビネットの刻みが特徴的なヴァースと、甘美なメロディを持つサビのパートの対比が素晴らしい。難波大介のプレイによるギターソロはこの曲のハイライトと言えるだろう。
 「私のモラトリアム」は、2014年12月に配信のみでリリースされたコンピレーション・アルバム『Light Wave '14 Vol.3』に提供された曲で、今回リマスタリングのみしている。曲作りは彼らのファースト・アルバム以前ということだが、『夜霧』収録の「ロキシーについて」にも通じる、いえもとのブルージーな歌声の表現力が曲の世界観を決定している。サウンド的にはストリング・カルテットのアレンジと、ベテラン奏者の横山貴生によるテナー・ソロがコーダで続くパートが聴きものだ。
 続く「星屑のマーメイド」もレア音源であり、現在は大阪を中心に活動するジャズ、ネオソウル系女性シンガー・ソングライターのNeoが作曲し、角谷が作詞と編曲を担当して彼女のミニアルバム『Neo naninuneo』(16年)に収録された曲のセルフカバーである。ここではオリジナルのトラックをリミックスしているが、Neoによる4声のコーラスを残して、いえもとのヴォーカルに差し替えている。この個性の異なる二人のシンガーのコントラストは聴きどころだ。
 プレスキットを入手後執筆準備中に気付いて驚いたのだが、Neoは2001年に山下達郎氏の「あまく危険な香り」のカバー(『Red Incognito』収録)をリリースしている。当時山下氏のサンデーソングブックTOKYO FM系 全国38局ネット / 毎週日曜日14:00~14:55)でもオンエアされて、その素晴らしい解釈に魅了された筆者は直ぐに入手して相当聴き込んでいた。ここで再び巡り会えるとは不思議な縁である。



 ファン待望のライブ音源は、いずれもファースト・アルバム収録の「摩天楼」と「さよなら麦わら帽子」の2曲を収録しており、昨年8月3日に青山の“月見ル君想フ”で開催された『ウワノソラ 7Years Live』の演奏をPAアウトしたマルチ音源をライブ当日パーカションで参加した玉田和平がミックスしている。 
 サポート・メンバーの多くは角谷といえもと同様に芸大で音楽を専攻していたので演奏力には定評があり、これが2回目のライブとは思えないアンサンブルを誇っている。生でライブを体験した筆者も当日の熱演を思い出しながら聴いている。 
 ライブ・パフォーマンスならではのプレイとして挙げたいのが、「摩天楼」では杉野幹起のアルト・ソロ、杉山悟史のオルガン、宮脇翔平のエレピの各インタープレイが目立った。リズム・チェンジの展開が多い「さよなら麦わら帽子」ではバンド全体のアンサンブルが実に素晴らしく、ブレイクでのいえもとに深町と宮原翔平、やおいまりなの3名が加わったコーラス・ワークの見事さもハイライトとして挙げたい。

 最後に本作制作中にイメージ作りで聴いていた5曲をメンバー2人に特別に選んでもらったので、サブスクのプレイリスト(登録曲のみ)で試聴しながら、彼らのオンラインストアで本作を予約して8月15日のリリースを待とう。 

〇角谷博栄
1. ふたりの夏物語NEVER ENDING SUMMER / 杉山清貴&オメガドライブ (『ANOTHER SUMMER』/ 1985年)

2. Dear Brian / Chris Rainbow
(『Looking Over My Shoulder …』/ 1978年) 

3. Philly / Rupert Holmes (『Rupert Holmes』 / 1980年) 

4. ボンボヤージ波止場/ 小坂忠 (『HORO』 / 1975年) 

5. It’s Been So Long / Jaye P. Morgan
 (『Jaye P. Morgan』 / 1976年) 

〇いえもとめぐみ 
1. Johnny & Mary / Robert Palmer
  (『7インチ Johnny And Mary / Style Kills』 / 1980年)

2. I Belong to You / Twila Paris
 (『Keepin' My Eyes On You』 / 1982年) 

3. Gimme The Goods / Boz Scaggs 
 (『Down Two Then Left』 / 1977年) 

4. Shoes And Booze / Roos Jonker (『Mmmmm』 / 2010年) 

5. 2人のストリート / 松任谷由実 (『Da・Di・Da』 / 1985年) 





ウワノソラ・オンラインストア・リンク 
『くらげ』予約受付中


(ウチタカヒデ)



2020年8月4日火曜日

1970年代アイドルのライヴ・アルバム(沢田研二・ソロ編 1980年代)


 このアイドル・ライヴのコラムは1970年代に限定だが、ことジュリーに関しては1980年代も絶対に必要だと思っている。それは個人的に彼がExoticsを率いた時代があまりにも衝撃だったからだ。

  そもそも私自身のジュリー遍歴は、高校時代の親友にザ・タイガースの『ヒューマン・ルネッサンス』の洗礼を受けてからだった。それ以降、ソロもきっちりチェックしていたが、ライヴを見てみたいというまでのファンではなかった。



 それが一転してのめり込むようになったのは、宇崎竜童司会の『ファイティング80’s』(注1)1981年8月14日に放映された「Julie & Exotics」のパフォーマンスを見てからだった。 オープニングはヒット中の<ストリッパー>だったが、続く<Bye Bye Handy Love>で「佐野元春」というクレジットを見て、「お!」となった。当時の私にとって佐野元春はかなり気になる存在の一人で、この曲は彼が6月にリリースした<Someday>のカップリングだった。続く3連符のロッカバラード<そばにいたい>と<Darty Work>は、当時松田聖子のソングライターとして注目されていた小田裕一郎。さらに<Under My Thumb>風のイントロで始まった4曲目<The Vanity Factory>(注2)も佐野元春の曲。続くギターが<(I Can’t Get No)Satisfaction>風の5曲目は名コンビ加瀬邦彦作のロック・ナンバー<Noise>、この曲のシャウトがStonesの<Get Off of My Cloud>風でやたらカッコイイ!アンコールはお馴染み<気になるお前>だったが、そこでのギターがClashやJamを連想させるようなパンキッシュなカッティング。わずか30分番組ながら完全にはまりまくり、ここから私のジュリー遍歴が本格的にスタートした。

  1980年代は1980年早々に井上バンドと決別(解散)、同年にはAlwaysを率いた活動をはじめている。その1980年のスタートとなったのは1月1日リリースの29作目シングル<TOKIO>だった。しかし、この曲は前年11月25日に発表した『TOKIO』の収録曲で、井上バンドを率いた7月28-29日の渋谷公会堂の公演ではアルバムに先がけ披露されている。



  このように<TOKIO>は70年代の曲だが、80年代ジュリーを語る上で絶対に外せない。とはいえ、この曲は彼の最大ヒットでも1位に輝いたナンバーでもない。それはシングルに合わせた電飾を施した赤スーツのコスチュームと白のパラシュートを背負っての歌唱があまりにも衝撃的だったからだ。このパフォーマンスがジュリーの存在をより多くの聴衆に焼き付けることになった。 

 その過激なパフォーマンスは、同年4月にリリースした<恋のバッド・チューニング>(13位:17.2万枚)でも貫くことになる。ここでは両眼にカラー・コンタクトをはめ、未来的なデザインの衣装に、光る蛍光管を内蔵したスケルトンのギターを持って歌い、まるで未来系パンクを連想させた。なおこの曲でソロ・シングルのトータル売上が1,000万枚を突破(グループとの通算は1977年達成)し、記憶・実績共に残る絶対的な存在となった。



 そして5月24日の横浜スタジアムでのコンサート『JULIE Present’80 BAD TUNING』のバックはALWAYSが務めている。その後7月21日にリリースした第14作『BAD TUNING』では前作以上に過激なジャケット、またサウンドはテクノ化が加速化しており、半分以上の楽曲にAlwaysが参加していた。 

 これに続き、年末には再びALWAYSを従え「80年代型グループ・サウンズ」をコンセプトにした15作目のオリジナル・アルバム『G.S.I Love You』を発表している。このアルバムでは新たに佐野元春が作家陣に参加、アレンジャーには伊藤銀次を迎えて“80年代ジュリー”が構築されている。それはスピードあふれるパンキーな<彼女はデリケート>(注3)や、前出の<The Vanity Factory>によく表れている。またロカビリー仕上げのシングル<おまえがパラダイス>(16位:13.9万枚)では、ギターの柴山和彦の髪をかしむしる印象的なパフォーマンスでロッカーらしいエネルギーが満ち溢れていた。補足になるが、このアルバム初回盤には沢田からのメッセージとザ・タイガースの<君だけに愛を>を収録したソノシートが封入されていた。 

 そんなこの当時はGSブーム再燃時期であり、1981年1月に「さよなら日劇ウエスタン・カーニヴァル」には・タイガースの」メンバーとして参加。そんな往年の名グループが勢揃いする中、そのステージにはAlwaysを率いて現在のナンバーも演奏している。 



 このタイガース帯同前の1981年5月にはAlwaysを再編したExoticsを率い<渚のラブレター>(8位:23.9/この曲のみ“渚のラブレター・バンド”名義)をリリース。6月には「Julie & Exotics」(注4)とクレジットされた『S/T/R/I/P/P/E/R』が発表された。このアルバムではジュリーもExoticsのメンバーというスタンスで、伊藤銀次のアレンジにより正統派ロッカーに仕上がっている。それは佐野元春の<Bye Bye Handy Love>、ムッシュの<想い出のアニー・ローリー>、加瀬邦彦の<バイバイジェラシー><テーブル4の女>など粒揃いのナンバーにしっかり刻まれていた。ここでのキラーチューンはジュリー作<ストリッパー>(6位:36.4万枚)できまりだ。なおこのアルバムは「倫敦録音」で、RockpileのBilly Bremner、AceやSueezeで活躍(現Eric Clapton Band)したPaul Carrackも参加している。 

 タイガース帯同を終えた1982年6月には1年ぶりにExoticsと組んだ『A WONDERFUL TIME』をリリース。このアルバムも前作に引き続きロック色の強いものだが、それはデビュー前の大澤誉志幸を大きく取り上げたことも影響している。それは先行シングルとなった<“お前にチェックイン”>(6位:36.4万枚)や<STOP WEDDING BELL>に集約されている。またNobody作<PAPER DREAM>、佐野元春作<WHY OH WHY>、佐藤健作<A WONDERFUL TIME>といったポップなテイストのロック・ナンバーも多く、Exoticsと組んだアルバムでは親しみ易さは一番だ。


 そしてこの年々末には全曲井上陽水書下ろしによる第18作『MIS CAST』発表する。この組み合わせは当時としても大変話題を呼び、テレビでこのアルバムの特別番組が放送されるほどだった。バックはExoticsだが、メイン・アレンジャーが白井良明とあって、当時アヴァンギャルドな路線を突っ走っていたムーンライダース風(注5)のデカダンス的な仕上がりになっている。それは当時発売されたライヴ・ビデオにもしっかり刻まれている。
  
 セールス的には振るわなかったものの完成度は高く、同コンセプトの<6番目のユ・ウ・ウ・ツ>(6位:25.6万枚)とともに奥行きの深いジュリー・ワールドが表現された。元々「陽水とキーが同じ」ということで始まったプロジェクトだが、期待以上の成果が得られず陽水自ら「沢田さんごめんなさい」とコメントしている。肝心の陽水は当時低迷状態だったが、このセッションを通じて傑作『LION & PELICAN』を誕生させる布石となっている。 


 
 その翌1983年のジュリーは「源氏物語」をコンセプトにした第20作『女たちよ』、同時にExoticsは単独で『Library』(プロデュースはジュリー) を発表。1984年にはストレートなバンド・サウンドに回帰した第21作『NON POLICY』をリリースするも、9月にExoticsは解散となり黄金のコンビは解消された。とはいえ、メンバーの吉田建と柴山和彦は後にジュリーと再合流(Jazz Master)している。 

  Exotics解散後にスタンダード<AMAPOLA>を置き土産にレコード会社を移籍。その翌1985年に個人事務所「CO-CóLO Corporation」を設立し、久々に大野克夫が全アレンジを手がけた第22作『架空のオペラ』をリリース。 

  そして翌1986年には、「2年間一緒にやっていく」という沢田の意思によってチト河内(ex.ハプニングス・フォー)や石間秀樹(ex.Frower Travelin’ Band)など強者を集めてCO-CóLOを結成して第23作『CO-CóLO 1 〜夜のみだらな鳥達〜』をリリース。当時、このメンツを見た私は洋楽にもひけをとらないようなロック・サウンドを期待した。ところが中身はほぼAORで肩透かしを喰ってしまった。

 とはいえこの時期のジュリーの入れ込み具合の本気度は高く、1986年12月にはアナログ4枚組ライヴ・アルバム『架空の歌劇’86』をリリースした。この後半の「Ⅲ・Ⅳ」は結成間もないCO-CóLOを率いたものだった。個人的には“ジュリーAOR”は、彼の甘いヴォーカルにはフィットしていると思う。ただ「このメンバーで何故AOR?」というのが本音だった。

 そんなジュリーにとってCO-CóLOはExotics同様にバックバンドではなくジュリーと一体感を築くもので、『告白-CONFESSION-』(1987年)『TRUE BLUE』(1988年)と円滑に活動を続けた。 とはいえこのCO-CóLOとの活動は、一般が期待する「ジュリー像」にほど遠いサウンドであったと言わざる得なかった。そして2年が経過して当初の計画通り、CO-CóLOは解散した。その後のバックは一時的にだがKris Kringlが務めている。



 そして、年号が「平成」に変わった1989年10月には吉田建を招聘し、より本格的ロック・サウンドを再現した26作『彼は眠れない』をリリース。このアルバムは早川タケジのジャケット・ワークが全てを象徴する、まさに“ジュリー復活”を印象付ける作品集だった。  
 NOBODY作のタイトル曲、忌野清志郎作で彼とのデュエット<Ki・Ma・Gu・Re>、大羽義光作<むくわれない水曜日>といったロック・ナンバーの冴えは抜群で、久々参加の大澤誉志幸はポップ・ナンバー<Tell Me...Blue>を、さらにユーミン作<静かなまぼろし>や徳永英明作<ルナ>など静寂な曲も美しく響いていた。「もっと早くこの路線を極めればよかったのに」と辛口評論家たちからは呟かれたが、改めてジュリーの存在感を示す傑作となったのは間違いなかった。 

 なおこのセッションから吉田建を中心に、村上`ポンタ’ 秀一をはじめ精鋭ミュージシャンが集結したJazz Masterが結成した。その彼らを率いたお披露目はアルバム発売翌々日10月13日に東京ベイNKホールに始まるツアーだった。このNKのライヴはNHK BS2で生中継されており、ジュリーを知らない世代にも大きな反響を呼んだ。このバンドのクオリティは歴代のいずれにもひけをとらないもので、1990年代中頃までサポートしている。 

 またこの年大晦日の平成初の「第40回NHK紅白歌合戦」においてジュリーは、ソロとザ・タイガースという同一回で2回登場するという番組史上初の快挙を遂げている。さらに1991年にはデビュー25周年にちなみ、NHK BS2で「美しき時代の偶像」と題されたジュリー特集番組が5日連続トータル25時間放送され、改めて「国民歌手」を印象付けることになった。 

(Outro) 
 その後、東芝EMI在籍時はそこそこチェックしていた程度で、当時印象に残ったものは、1996年9月からスタートした5代目トヨタ・クレスタのCMに玉置浩二、高橋幸宏と3人で出演し、お得意の<Time Is On My Side>を歌っていたことくらいだった。 

 21世紀の2000年代になってからのジュリーは、インディーズ制作ながらもJULIE LABELをスタートさせ、新作は特殊ジャケット仕様でファンを楽しませている。その第1弾となった通算39作『忘却の天才』は「ブック型」でシングルは「紅茶缶」だった。ここからは<つづくシアワセ>がネスカフェのCMに起用され、しばらくジュリーの歌声がテレビで流れている。余談ながら、この時期には『つづく幸せプレゼント』なるフェアがあり、運よく「季節の花宅急便」に当選している。 

 そんな私がまたジュリーを真剣に聴くようになったのは、種無しスイカの切り身パッケージの第45作『ROCK’N ROLL MARCH』がリリースされた2008年だった。この年還暦を迎えたジュリーは初の二大ドーム・コンサート「沢田研二 還暦記念コンサート 人間60年ジュリー祭り」を発表しており、このニュースを聞いた私は当時ゲスト出演していた清水のコミュニティFMで、2週間連続で約3時間に及ぶ特集番組を発案している。

 そのプログラムを制作中に、運よく私など足元にも及ばないほど熱い「ジュリー愛」を感じさせるH.P.運営者とコンタクトを持つことができ、納得のいく内容にまとめられた。またその協力者から「東京ドーム公演」のチケットまでも手に入れていただいた。 

 なお、このドーム公演に合わせてジュリーはまる1日NHK FMで告知番組を放送するという気合の入れようだった。そんな記念すべきジュリー初東京ドーム公演は12月3日に敢行している。このような記念公演であれば、通例ゲストが登場したりしてセレモニー的な色合いがつきものだったが、午後3時からスタートしたライヴはコーラス隊が4曲加わった以外はバンドの演奏のみだった。しかも全80曲6時間半にも及ぶ驚愕ライヴは、途中で休憩時間を20分ほど挟んだだけで、ほぼノン・ストップというすさまじいものだった。それは改めてジュリーと彼を支えるバンドのパワーを見せつけられた。 

注1)テレビ神奈川(TVK)で1980年4月4日から1983年3月27日まで(全156回)放送された、ロック系ミュージシャンの公開ライヴ録画放送。MC担当は宇崎竜童、収録場所は東京・蒲田の専門学校・日本工学院の音楽ホール。

 注2)1980年沢田の第15作『G.S.I LOVE YOU』収録曲。1981年1月25日「さよなら日劇ウェスタン・カーニヴァル」でもAlwaysを率いて歌唱。佐野元春も1982年第3作『SOMEDAY』でセルフ・カヴァーしたが、沢田がコーラスで参加した。

 注3)佐野元春が参加した1982年3月21日リリースの『NIAGARA TRIANGLE Vol.2』でセルフ・カヴァーし、同時にシングルにもなっている。 

注4)メンバーは、吉田建(B.)柴山和彦、安田尚哉(Gt.)上原“ユカリ”裕(Dr.)西平彰(Key.)。この名義でのシングルは34作目の<ス・ト・リ・ッ・パ・ー>から、1974年4月25日リリースの42作目<渡り鳥はぐれ鳥>までの11枚。アルバムとしては第16作『S/T/R/I/P/P/E/R』から1984年6月5日リリースの 『NON POLICY』までの6作。 

注5)ムーンライダースは1980年の『カメラ=万年筆』でThe Pop GroupやDevo等アヴァンギャルドなスタイルに邁進している。1981年にはその路線をさらにエスカレートさせた『マニア・マニエラ』を制作するも、レコード会社はレコード発売を見送り、当時普及率の低かったCD限定での発売とされた。そのサウンドの中核を担ったのは白井良明だった。



 『JULIE Present `80 BAD TUNING』
(VHS & β) 1980年7月21日 /  Polydor / VX1001  FX1001
 ①TOKIO、②お前は魔法使い、③アンドロメダ、④Lover Lover Lover、⑤お月さん万才!、⑥どうして朝、⑦MC 、⑧恋のバッド・チューニング、⑨ミュータント、⑩MC、⑪勝手にしやがれ~カサブランカ・ダンディ、⑫マダムX、⑬世紀末ブルース、⑭夢の続き、⑮(Encor)恋のバッド・チューニング  

 このライヴでのジュリーは、未来型ロボットやミュータントを連想させるようないで立ちでステージに登場。まさに<TOKIO>の世界を過激に世襲したようなステージを展開している。そのパフォーマンスはまさに1980年型ジュリー・ロックの幕開けの宣言といえる。なおバックのAlwaysは結成してわずかにもかかわらずジュリーとのコンビネーションは抜群でキレのいい演奏を聴かせている。 


『さよなら日劇ウェスタン・カーニバル Vol.3(with Always)』 
(カセットテープのみ、後にCD化) 1981年3月21日 /  Apolon APCA-157 

⑩THE VANITY FACTORY、⑪おまえがパラダイス、⑫NOISE、⑬G.S.I LOVE YOU 

 1981年1月25日 の日劇ウェスタン・カーニバルのライヴから。同日にザ・タイガースとしてステージに上がるも、後半ではAlwaysを率いて現役宣言とばかりに最新曲を聴かせている。 


『JULIE CONCERT TOUR `83 MIS CAST』
(VHS & β) 1983年3月10日 /  Polydor / 98H-1103    

①MIS CAST、②デモンストレーション Air Line、③Darling、④次のデイト、⑤Mon Amour Je Viens Du Bout Du Monde(巴里にひとり)、⑥渚のラブレター、⑦勝手にしやがれ、⑧Band Introducing、⑨背中まで45分、⑩6番目のユ・ウ・ウ・ツ、⑪How Many“Good Bye”、⑫ジャスト・フィット、(Encor)⑬STOP WEDDING BELL、⑭MIS CAST  

 井上陽水と組んだ『MIS CAST 』の世界観を呈したステージ。オープニングでは白のスーツに身を包んだダンディズムでの幕開け。フランス語で歌い上げる⑤もこのライヴにはよくお似合い、また⑥はハワイアン、⑦はフラメンコ調のアレンジで、ライヴのバランスを整えている。ジュリーのライヴでは異色中のものだろうが、完成度はかなり高い。 


 『架空の歌劇86』 1986年12月25日 /  東芝EMI   CA37-1345~8  

Disc-1 ①悲しみのアダージョ、②恋のアランフェス、③朝日の当たる家、④絹の部屋 、⑤砂漠のバレリーナ 、⑥白夜のエトランゼ、⑦吟遊詩人、⑧はるかに遠い夢、⑨影-ルーマニアン・ナイト 
Disc-2 ⑩ス・ト・リ・ッ・パ・ー、⑪晴れのちBLUE BOY、⑫気になるお前、⑬許されない愛、⑭灰とダイヤモンド、⑮魅せられた夜、⑯あなたに今夜はワインをふりかけ、⑰夢を語れる相手がいれば 
Disc-3 ⑱闇舞踏、⑲無宿、⑳THE VANTY FACTORY、㉑アルフ・ライラ・ウィ・ライラ~千夜一夜物語~、㉒お前がパラダイス、㉓White Room、㉔Stand By Me、㉕Volare 
Disc-4 ㉖愛の嵐~スカンジナビア幻想~、㉗流されて、㉘サムライ、㉙ジャスト・フィット、㉚彼女はデリケート、㉛“B”サイドガール、㉜夜のみだらな鳥たち  

 驚異の4枚組というヴォリュームでリリースされた芸能生活25周年記念盤。 1・2が1986年1月16-18日 NHKホールと、1月21-28日の大阪フェスティヴァル・ホール公演(バックはKris Kringl?)。3・4がCO-CóLOを率いた10月8-9日新宿厚生年金会館と10月10日の大阪フェスティヴァル・ホール公演。 過去のライヴに比べるとややおとなしめ、それゆえ㉕のようなスタンダード・ナンバーの出来が光っている。 

Special Thanks 三浦久美子(from 「ジュリーが最高!」

(鈴木英之)