2018年2月12日月曜日

shinowa:『Flowerdelic』 (LITTLE EYES IN A MEADOW/LEIM-002CD)


 昨年6月に16年ぶりの新作シングル『Snow, Moon, Flowers』で、その活動を本格的に復活させていたshinowa(シノワ)が、2月5日に満を持してフル・アルバム『Flowerdelic』をリリースした。
 shinowaはリーダー兼リードヴォーカル、ギタリストの山内かおりとギタリスト兼プログラミングの平田徳(ヒラタハジメ)を中心に結成され、60年代中後期のサイケデリック・ロック、80年代後期~90年代初期のシューゲイザー/オルタナティヴ・ロックに通じるそのサウンドは、海外のミュージシャンや音楽関係者にも評価が高く、耳の肥えたVANDA読者なら興味を持つ筈だ。 

 前回のレビューと重複するが改めて最新のプロフィールを紹介しておこう。
 彼らは96年に大阪で結成されたサイケデリック・ギター・ロックバンドで、GYUUNE CASSETTE 傘下の Childish Soupより『bloom~光の世界』を01年にリリースし数度のメンバーチェンジのあと、野有玄佑(ベース&ドラム)が加入して現在の男女3人組となっている。 11年には米サイケデリック・ポップバンド、MGMT(エム・ジー・エム・ティー)より直々にオファーを受け、彼等の来日公演のオープニングアクトを務めた。
 また昨年リリースした『Snow, Moon, Flowers』は、全米で数年前からカセット・ブームを牽引しているカリフォルニアのBURGER RECORDSのコンピ・カセット『BURGER WORLD JAPAN』(17年9月) に収録され、その後英レビュー・サイト  VINYL FACTORY でレビューが掲載された。
 この状況を知れば、現在も彼らが国境を超えて高く評価されていることを理解出来るだろう。
 なお本作は『Snow, Moon, Flowers』と同様にHammer Label主催で、シンセサイザー・プログラマーやエンジニアとして、ムーンライダーズや渋谷系のクルーエル・レコーズから歌謡曲フィールドまで幅広く活躍していた森達彦氏がプロデュースとミックスを手掛けており、その手腕が随所で発揮されている。

   
 では本作で筆者が気になった主な曲を解説しよう。 
 冒頭の「One」は山内のソングライティングにエダナマイが英歌詞をつけた、80年代後期~90年代初期のクリエイション・レコーズのサウンドに通じるギター・ポップで、ディストーション・ギターやノイジーなシーケンス音をループして空間系エフェクトで処理したトラックと、山内のスウィートなヴォーカルとのギャプが実に素晴らしい。リズム的には8と16ビートにサンバ系のブラジリアン・ビートのエッセンスを持ち独特の浮遊感を醸し出している。本作のリード・トラックとしてそのクオリティは高い。
 「Sit with the Guru」はVANDA読者ならご存じの通り、Strawberry Alarm Clockのカバーでセカンド・アルバム『Wake Up...It's Tomorrow』(68年)に収録された、「Tomorrow」(67年)に続く先行シングル曲である。ここでのヴァージョンは彼ららしさと言うべきサウンド・エフェクトが目映いサイケデリック・ポップに仕上がっており、Strawberry Alarm Clockのオリジナル・メンバーで作曲者の一人であるマーク・ワイツも絶賛している。
 ワイツからのコメントはshinowaオフィシャル・サイトで読んでみて欲しい。 因みに彼らはバンド結成当初からこの曲をレパートリーとしており、本作には最新ヴァージョンをレコーディングしたということだ。

   

 昨年初頭、shinowaの音源を初めて聴かせてもらった時から筆者のフェイヴァリットだったのが、「Silent Dawn」である。ギター・ポップとシューゲイザーにそのルーツの一つというべき60年代サイケデリック・ロックのエッセンスが程よくブレンドされたブリリアントな曲で、単独でソングライティングした山内のヴォーカルに施されたモジュレーション・ディレイ系のエフェクト処理も相まってドリーミングである。
 続く「Unisol」も山内単独のソングライティング曲であるが、シューゲイザー的サウンドは影を潜めたプリティーなギター・ポップと思いきや、後半にはしっかりファズ・ギターとフリーキーなオルガンのフレーズがちりばめられていて侮れない。この曲には長崎を中心に活動するアコーディオン(fisarmonica)奏者のLOCOがマリアッチなプレイで参加している。
ラストの「Red Flower」は『Snow, Moon, Flowers』カップリングの「Almost Certain」(原曲:「たしからしいということ」)と同様に、『bloom~光の世界』収録の「赤い花」を英歌詞化しリアレンジした曲である。プログレッシブ・ロックの要素もある変拍子のこの曲も山内のソングライティングあり、彼女の才能の奥深さを思い知らされる。
 なお本作はCDとアナログ・アルバム、またカセット・テープの3媒体でリリースされており、CD以外は限定生産のため興味を持った読者は早期に入手すべきである。

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