1999年2月22日月曜日

☆Rascals: The Island Of Real(Sundazed/6132)

ラスカルズのアトランティック時代の全音源は日本のみのボックス・セット「Atlantic Years」(East West/2821~7)で聴けるようになり、その後のコロンビア時代も「Peaceful World」がソニーから CD 化されていたが、最後の「The Island Of Real」だけが未 CD 化のまま残されていた。そしてこの度やっとSundazedよりCDでリイシューされ、ラスカルズの全音源が CD 化が実現した。さてこのアルバムだが、個人的には後期ラスカルズでこのアルバムが一番好きだ。フェリックス・キャバリエとディノ・ダネリしかオリジナル・メンバーは残っていないが、キャバリエのソウルへの強い憧憬が,このアルバムでは自然体と言えるほど昇華されていて、味わい深い仕上がりになっている。ジャズへのアプローチも感じられ、後期ラスカルズの集大成と言っていいだろう。“Brother Tree”の落ち着いた美しさ、バジー・フェイトンの素晴らしいギター・ワークが堪能できるファンク・ナンバーの“Jungle Walk”など、見事な出来で、聴きどころは多い。そして特筆すべきはボーナス・トラックで付けられた2曲の未発表ナンバー。キャバリエの書いたファンキーな“Prove It”と“Love Is A Woman”は、どちらも十分なレベルの曲で楽しめる。Sundazed からは同じく「Peaceful World」もリリースされたが、ボーナスはなく、ソニーの CD と同内容。(佐野)
Island of Real

1999年2月21日日曜日

☆Association:「Goodbye Columbus」(Wea/10195)☆Association:「The Association」(Wea/10196)☆Association:「Live」(Wea/10197)☆Association:「Stop Your Motor」(Wea/10198)☆Association:「Greatest Hits」(Wea/10199)




5 枚目から 9 枚目のオリジナル・アルバムに当時のベスト盤が CD 化され、これでアソシエイションのワーナーの全アルバムのリイシューが実現した。まず「Goodbye Columbus」はサントラで、アソシエイションは 4 曲しかプレイしていないものの、軽快なソフト・ロック・ナンバー“Goodbye Columbus”に加え、美しいバラード“So Kind Of Me”が聴きもの。「The Association」は、カート・ベッチャーが基礎を作ったアシッドなフィーリングの初期、ボーンズ・ハウ=ボブ・アルシヴァーによって洗練されたソフト・ロック・サウンドに発展し音楽的頂点を迎えた中期とはまた違い、カントリーなどのフレイバーを加えてロック・バンドへの転身を図ったものになっている。全体的にキャッチーなものが少なく地味な仕上がりになったが、ゴージャスなコーラス・ワークは健在で、ここが並のバンドとはまったく違う。「Live」は、ライブでの演奏力、コーラス・ワークの確かさを見せつけてくれるアルバムで、ライブ・バンドとしての力を十分に伝えてくれる。「Stop Your Motor」は「The Association」の延長上にあるロック・アルバムで、これも地味だが、コーラスの上手さには舌をまくばかり。「Greatest Hits」には、“Enter The Young”の、イントロだけでも違いが分かる 68 年の再録音ヴァージョンが収められているのでこれも聴きもらせない。ライブとベスト以外の 3 枚にはそれぞれシングル A 面のシングル・ヴァージョンが付けられたが、残念ながらカート・ベッチャーが CBS からミレニウムのバックトラックを持ち出してプロデュースしたアルバム未収録の“Just About The Same”のスタジオ・ヴァージョンだけが収録されなかった。「Live」でのライブ・ヴァージョンも出来がいいが、雷鳴のようなパーカッションや笑い声までフィーチャーしたスタジオ・ヴァージョンはさらにいい出来なのに残念だ。残るオリジナル・アルバムはコロンビアの「Waterbeds In Trinidad」のみ。(佐野)

商品の詳細商品の詳細商品の詳細商品の詳細商品の詳細



☆Magicians:「The Best Of The Magicians」(Sundazed/6133)




タートルズの“Happy Together”や、“Girls In Love”“Me About You”“Small Talk”“Kitty Doyle”など数多くの名曲を書いたアラン・ゴードン=ゲイリー・ボナーのソングライティング・チーム。彼らはマジシャンズ出身とプロフィールで書かれていたものの、その音源は聴いたことがなかった。それもそのはず、ヒットはなく、65~7 年の 3 年間にたった 4 枚のシングルしか残さなかったバンドだからだ。このCDはそのシングル4枚に未発表の 5 曲を加えた、アメリカのポップ・ミュージックを研究する人間にとって、貴重この上ない内容になっている。まだマジシャンズではボナー=ゴードンのコンビははっきりと組まれてなく、6 曲のグループのオリジナル・ナンバーの内、2 曲しかこのコンビで作られていない。マジシャンズはゴードンの“An Invitation To Cry”のような R&B 色の濃いバラードやビートの効いたロック・ナンバーあると思えば、同じくゴードンが“I'll Tell The World About You”のようなメロディアスな曲を書いたり、メンバーのアラン・ヤコブが見事なソフト・ロック・ナンバー“Angel On The Corner”を作ったりと、幅広い音楽性を持ったバンドということが分かる。ボナー=ゴードン作では、後にゲイリー・ルイス&ザ・プレイボーイズが取り上げたポップな“Double Good Feeling”があり、今後の活躍がこの 1 曲だけでも十分に感じさせてくれる。(佐野)

1999年2月7日日曜日

☆Brian Wilson:Andy Paley Sessions 1996 (Crux/2024)

  内容はタイトルのとおり、ブライアン・ウィルソンとアンディ・パレイが1996年にセッションした時のデモだが、そのクオリティは十分に高い。



まず1曲目の "Gettin' In Over My Head" が素晴らしい。ピアノのバッキングだけのシンプルなデモかなと思っていると、ブリッジで心引かれるメロディと演奏、コーラスが一気に現れ引き込まれてしまう。サビには得意のパーカッションも。2曲目の "You're Still A Mystery" と4曲目の "Soul Searchin'" はバッキングがなんとビーチ・ボーイズで、マイク・ラヴのバス・ヴォイスなどの効果でコーラスに幅が出ている。前者はコーラスのからみと、サビの一瞬のメロディの冴えが聴きもの。後者はオールディーズ・タイプのロッカ・バラードだが、これはコーラス・ワークなど完全にビーチ・ボーイズだ。そしてリード・ヴォーカルもカールだろう。意表をつく歌い出しから心地良い広がりを見せる "Must Be A Miracle" 、明るく軽快な "Marketplace" と "Mary Anne" の3曲はポジティヴなブライアンが感じられていい。そのポジティヴさが最も出たのが "I Get Around" や "Be My Baby" のフレーズを一瞬織り込んだ "Slightly American Music" で、なかなかの力作だったが "Smart Girls" に次いで、この手の過去を振り返る曲は連続して没になってしまった。 オモチャ箱を引っ繰り返したような得意のサウンドの曲は "Saturday Morning In The City" 。いかにも没曲なのがブライアンがしばしば書く凡庸なR&Bタイプの "Chain Reaction Of Love" と、 "I'm Broke" 。あと "It's Not Easy Bein' Me" もメロディに冴えがなかった。その他ではホット・ロッド・スタイルのシンプルなインストの "Desert Drive" があるが、何に使うつもりだったのだろうか不明だ。さらにこのセッション時の録音の "This Song Wants To Sleep With You Tonight" と "In My Moondreams" も収められていた。そして "Proud Mary" が3テイク、順に完成していく模様が分かるが、この曲は実は94年頃に知人からカセットに録音してもらっていたので、これはアンディ・パレイ・セッションのものではないはずだ。嬉しいのはボーナス扱いの「The Wilsons」の目玉だった "Everything I Need" の親子のデモ。 CD とは違い主にブライアンが歌い、娘達がブリッジを担当、聴いていてとても幸せな気分になれた。最後は美しいフックを持つピアノの "This Isn't Love" のデモで終わる。
(佐野/Special thanks to 萩原健太)

☆Hollies:For Certain Because(EMI/4-98952-2)

 EMIのホリーズ紙ジャケ再発は遂にここまで進んだ。68年リリースのこのアルバムはホリーズのサウンドが成熟していく過渡期にあるアルバムなので、目立った曲は少ないが、R&Bスタイルの曲が1曲だけになるなど、アルバム全体にホリーズらしいポップ色が出た好盤に仕上がっている。キースが歌ってヒットしたエキゾチックな“Tell Me To My Face”や、マイク・ヴィッカースがアレンジした映画の主題歌のようなアダルトな“Crusader”のような異色作がおもしろいが、アメリカで28位まで上がった“Pay You Back With Interest”が、その様々に変化する凝ったサウンドとリズムで、アルバムのベスト・ナンバーと言えるだろう。もちろんループする不思議なメロディとエコーをかけたバンジョーで、独特の雰囲気を醸し出した“Stop!Stop!Stop!”もベストの1曲。この曲は全英で2位、全米で7位と大ヒットになっている。もちろんCDはモノとステレオの2ヴァージョン入ったコレクター泣かせの仕様。次はいよいよ「Evolution」だ(佐野)
For Certain Because...

1999年2月1日月曜日

☆Brian Wilson : Imagination (ビデオ Warner-Reprise Video/38508)

 ブライアンの健康面・精神面でのポテンシャルは今が最高だろう。再婚直後再び太った体型も引き締まって初めての本格的なソロ・ツアーを実施中であり、テレビにもしばしば登場し、昨年末にもアメリカのテレビ・ショーで数曲を歌うブライアンを見た。そして昨年の「Imagination」と同タイトルのビデオ・ソフトまで発売された。内容的にはライブで7曲を歌い、間はブライアン、ブルース・ジョンストン、グレン・キャンベル、スティヴィー・ワンダー、エリック・クラプトン、エルヴィス・コステロなどのインタビューで綴ったものだ。グレン・キャンベルが "Dance Dance Dance" のセッションに参加していた時にギター・リフを間違えて弾いたところ、それがいいとブライアンにその場で採用されたエピソードなど面白い。肝心な歌だが見事にブライアンは回復している。音程が不確かだったり、ぶっきらぼうに歌うような様は微塵もなく、正確に、そして表情豊かに歌う。登場するナンバーは "California Girls" "In My Room" "South American" "She Says That She Needs Me" "Lay Down Burden" "Don't Worry Baby" 。バッキングには嬉しいことにブルース・ジョンストンがコーラスで入り、クリストファー・クロス、ティモシー・シュミット、ジミー・バフェットに 10 数人編成のオーケストラまで加わり、アルバムと何の遜色もない厚いサウンドを聴かせてくれた。今は亡き二人の弟の映像を交えた "Lay DownBurden" は感動的だ。ラジオ局にゲストで出演した時に DJ から、最近リリースされたばかりのロニー・スペクターの "Don't Worry Baby" を突然聴かされたブライアンの嬉しそうな様子などブライアン・ファンなら「おいしい」見所は十分。価格も 2800 円程度と安いので是非お薦めしたい。(佐野/Special thank to 伊藤博道)