2019年8月24日土曜日

名手達のベストプレイ第5回~ジェフ・ポーカロ


多くのミュージシャン達に愛されたドラムの神童ことジェフ・ポーカロは、1954年4月1日にコネチカット州ハートフォードで生まれた。
父親がジャズ・ドラマーでパーカッション奏者としても著名なジョー・ポーカロということもあり、7歳から本格的にドラムを習い始める。
17歳になった71年にはジャズ作編曲のジャック・ドーハティの『The Class Of Nineteen Hundred And Seventy One』にレコーディングに参加し、プロドラマーとしてデビューする。翌72年にはソニー&シェールのツアー専属ドラマーとなり、更にシールズ&クロフツの『Diamond Girl』(73年)からシングル・カットされたタイトル曲に参加するなど、プロドラマーとしての活動基盤を築いていくのだ。

また後のプレイ・スタイルに大きな影響を与えたとされるスティーリー・ダンの準メンバーとして参加するのもこの時期で、当時同バンドのギタリストだったデニー・ダイアスの紹介でスタジオに招かれた時、まだ19歳だったというから驚かされる。スティーリーのツアーとレコーディングでのプレイは評判となり、多くのセッションにオファーされるようになる。 
76年には幼馴染みのデビッド・ペイチ(ジェフと同様に父親はジャズ・ミュージシャンで、ピアニスト兼アレンジャーのマーティー・ペイチ)、スティーヴ・ルカサー、それに弟のスティーヴ等とTOTOを結成し、82年の4thアルバム『TOTO IV』はグラミー賞で6冠に輝き成功を得たのは読者もご存じだろう。
その後もTOTOのリーダーとして、また一流のセッション・ドラマーとして活動を続けたが、92年8月5日に悲劇は起こる。ロサンゼルスの自宅のバラ園に農薬を散布後アレルギーで心臓発作を起こし、38歳という若さで急死してしまう。
彼の葬儀にはその人望の厚さを証明するかのように多くのミュージシャンが参列し、棺側葬送者はスティーリーのプロデューサーだったゲイリー・カッツが務め、ドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーからの弔電も読み上げたという。

ここではそんなジェフ・ポーカロ氏を心より敬愛するミュージシャン達と、彼のベストプレイを挙げてその偉業を振り返ってみたい。今回は参加者の内5名がドラマー(経験者含め)であり、その巧みなプレイを詳しく解説してくれた。特にこのシリーズでは初の女性ミュージシャンでドラマーの北山ゆう子氏は、掲載前の最終編集中に急遽ベストプレイを提出してくれた。
全9名分のサブスクリプションの試聴プレイリスト(2時間45分!)を聴きながら読んで欲しい。 
 

   

【ジェフ・ポーカロのベストプレイ5】
●曲目 / ミュージシャン名
(収録アルバムまたはシングル / リリース年度)
◎選出曲についてのコメント


足立浩(アダチ ヒロシ)】
 Drums & Percussion 奏者/じゃむずKOBO 代表/S.A.D.ドラムスクール 講師
◆HP URL:https://adhiroshi.amebaownd.com
 

●Better Make It Through Today / 大村憲司 
(『Kenji Shock』/ 1978年)
◎アルバム唯一ボーカル曲の幕開けはジェフのビートから。
このテンポでこの強固なグルーヴにまずは驚嘆。
そしてキメへ向かう”タカタドン”(0:51)。最高に気持ち良い。
その後、ギターソロに呼応するように入るタム回し(2:07)と手足コンビネーション(2:14)も聴き所である。
ソロ後には、1拍目にスネア(3:15)を入れることでより場面転換を印象付け、さらにクローズリムショットとスネアの交互打ちで新鮮な空気を呼び込む。
前出のベースのフレーズに乗っかりに行ったような、引っ掛けたスネアに魅力を感じる。(3:29) 

●Sweetest Music / 竹内まりや
(『Miss M』/ 1980年)
◎アルバムの1曲目。カウントが全てと改めて実感させられる。ダンサブルな曲調の中、重心が低くメリハリの効いたドラムでバンドサウンドを鼓舞し牽引する。随所に散りばめられたフィルイン”タカドン”のスピード感。これこそが楽曲の推進力をさらに高めている。シンプルなフレーズだが、ドラムを知れば知るほどジェフの凄さには感嘆するばかり。
唐突なエンディングからのM2「Every Night」への導入がまた何とも心地良い。

●If You Want Me / 河合奈保子
(『Daydream Coast』/ 1984年)
◎イントロの6連フィルから痛快!そのままこれぞ!というサウンドへなだれ込む。シモンズのタムとの融合がもたらす楽曲への影響は絶大。
フィルインはもちろん、リズムパターンへも組み込み、自身のプレイへと昇華させている。マイケル・ランドウの饒舌なギターも必聴だ。

●Love Everlasting / オフ・コース
(『As Close As Possible』/ 1988年)
◎打ち込みのビートと生ドラムの対比が楽しめる1曲。
サビの1小節前から華々しく入り、素晴らしいサウンドで曲にエネルギーを生み出す。打ち込みとの共存にとどまらず相乗効果をもたらしている。素晴らしいアレンジだ。
ジェフは全体を通して大きなグルーヴを作り、1音の大切さをこれでもかと教えてくれるプレイ。説得力しかない! 
エンディングに登場する4拍目のスネア(4:05) 、これには思わず背筋がピンとなる。

●Tema Purissima / 大貫妙子
(『PURISSIMA』/ 1988年)
◎オーケストラアレンジの華やかで壮大な世界観の中、絶妙に溶け込みながら心地良いビートを刻む。 パワフルでタイトに全体を牽引するプレイも素晴らしいが、音楽に寄り添うリラックスした温かいビートもジェフの魅力。改めてドラムアプローチの深さを感じさせてくれる名演だ。
 実父ジョー・ポーカロがパーカッションを担当しており、親子共演も聴き所の一つである。

Sweetest Music / 竹内まりや


【北山ゆう子(lake、キセル、王舟、流線形THE LAKE MATTHEWS etc)】
 

●Keepinʼ It To Myself / Jaye P. Morgan
(『Jaye P. Morgan』/ 76年)
◎元曲AWB版よりもテンポアップして軽快なディスコナンバーに。
でもハイパー過ぎなくって好みのタイプです。

●Hard Times / Boz Scaggs
(『Down Two Then Left』/ 77年) 
◎バックはほぼTOTO。前作よりリズムがたっている印象。 重心が低いのに軽やかなビートは名人芸。

●Come As You Are / Laura Allan
(『Laura Allan』/ 78年)
◎うたに寄り添うコントロールされた演奏。

●All Right / Christopher Cross 
(『Another Page』/ 83年)
◎アルバム中シングル・カットされたこの曲だけ(ジェフ)ポーカロの演奏でした。 シンプルでムダがないですね。
わたしが語ることなんて何もないや。

●The Girl Is Mine / Michael Jackson
 (『Thriller』/ 83年)
◎もう、曲が好き。自然と歌に耳がいってしまう演奏って理想だ。
 

The Girl Is Mine / Michael Jackson 


【小園兼一郎(small garden)】
サックス吹きでもありベーシストでもあります。 https://twitter.com/sgs_kozonohttps://smallgardenstudio.jimdo.com/ 
 

●Black Friday / Steely Dan
 (『Katy Lied』 / 75年)
◎6/8系の小気味良いシャッフルビートが心地良い楽曲だ。開き過ぎない品のあるハイハットがシャープな印象を与えている。ジェフの細かいロールの正確さ、乱れのない打点は非常に気持ちのよい音で、ドラムセットを「叩いている」というよりも「奏でている」と言った方がしっくりくるだろう。当時は20歳くらいだろうか、この若さでの才能の開花はまさに天性のものだ。

●Point it up / Larry Carlton 
(『Larry Carlton』 / 78年) 
◎カールトンのサードアルバムからアップテンポでスリリングな楽曲。 ある意味で音色に特徴のない「耳障りでない」完璧すぎるドラミングこそがジェフ・ポーカロ、その人を指すといっても過言ではないと思う。これほどスリリングな曲でも自分の存在をアピールせずにメインアーティストのサポートに徹するプレイが業界において高評価を得ていることは間違いない。まさに職人ワザの極みではないだろうか。

●Breakin’ Away / Al Jarreau 
(『Breakin’ Away』 / 81年) 
◎要所で細かいアウフタクトが多い曲だがソツなくこなしてしまうジェフには脱帽だ。 ミドルテンポの16thシャッフルビートでの一糸乱れぬ演奏にはドラムロボットのような質感が伴いやすいがその背景には非常に細かい揺らぎが隠れており、それが機械たらし めない「ジェフ・ポーカロのヒューマニズム」が常に存在しているのである。

●蒼夜曲 セレナーデ / 尾崎亜美
(『Hot Baby』 / 81年)
◎尾崎亜美のアルバムよりダイナミックなバラード風楽曲。 恐らく数テイクもかからずに録音を終えているのではないだろうか。楽曲を身につけているという解釈より譜面を初見で間違いなくこなすようなプレイが目立つジェフの演奏は注目さえしなければメインアーティストを引き立てる最良のプレイだとも言える。 しかし、そのソツのない演奏は「絶対で間違いのない演奏」として重宝がられていたことはその圧倒的レコーディング数からも証明出来るのではないだろうか。

●Dear John / Elton John
(『Jump Up!』 / 82年)
◎ストレート8ビートの正統派ロックポップス、そんな副題にピッタリのジェフのプレイは泥臭さが無いところが、エルトン・ジョンのロックテイストをいわゆるアメリカの「ビッグビートロック」ではなく「ブリティッシュロック」に落とし込めている要因の一つになっているはずである。
 
  Breakin’ Away / Al Jarreau 


 【ショック太郎(無果汁団)】
アレンジャー。只今ファースト・アルバムを製作中。学生の頃はドラムもやっていました。
https://twitter.com/shocktarou 
 

●Doctor Wu / Steely Dan
(『Katy Lied』/ 75年)
◎フィル・ウッズのサックスソロの素晴らしさはもちろん、フェードアウト間近の歌心溢れるジェフのドラムソロも印象的。この曲のサックスとドラムの関係性は、後の「Aja」のウェイン・ショーターとスティーヴ・ガッドを彷彿させます。

●Livin’s Easy / Sanford & Townsend 
(『Duo Glide』/ 77年)
◎Aメロのスネアのパラディドル部分が、なんとなくポール・サイモンの「恋人と別れる50の方法」のガッドのプレイに影響された感も。その曲の8分裏のタンバリンはフット・ハイハットで対応し、これがまた絶妙なカントリーテイストに。

●Goodbye Elenore / TOTO 
(『Turn Back』/ 81年)
◎10代の頃に買った「ジェフ・ポーカロ/ドラム奏法」にも載っていた超難曲。バーナード・パーディーのハーフタイム・シャッフルをストレートなロックサウンドに見事に応用。
コピーは無理でも譜面だけは見て繰り返し聴いていた筆者の思い出の1曲。

●One Step Ahead Of The Bad News / Randy Goodrum
(『Fool’s Paradise』/ 82年)
◎ランディ・グッドラムの名盤ですがジェフのプレイも名演ぞろい。
この曲はソウルフルなミディアム16ビートのノリを残しながらも32ビートの細かい刻みをひたすらキープしていて圧巻。
それでいて、この大らかなグルーヴ感。さすがです。

●Send Love To Me ~愛をとどけて~ / 飯島真理 
(『My Heart In Red』/ 89年)
◎ジェフ得意の「ロザーナ」系ビートで、時代が時代だけにスネアの音がデカいですが、この強弱を使い分けながら絶妙にグルーヴするハイハットワークに耳を傾けるべし。デュエットしている男性ボーカルは、何とジョセフ・ウィリアムス本人!
 
Send Love To Me ~愛をとどけて~ / 飯島真理 
 


【西浦謙助(集団行動 / mezcolanza etc)】
集団行動HP https://www.syudan.com/ 
ツイッターアカウント @tikanakangana 
 

●Brother Love's Traveling Salvation Show / Sonny & Cher
(『Mama Was A Rock And Roll Singer Papa Used To Write All Her Songs』/ 73年)
◎発売年からするとレコーディング時はまだ10代ですか。恐ろしい。こんな一面もあったのね…という感じで荒々しく叩きまくっている若き日のジェフを楽しめます。

●Lowdown / Boz Scaggs
 (『Silk Degrees』/ 76年) 
◎この曲のリズム隊の息を呑むクールさよ!2つのドラムトラックが効果的なこちら、イントロのフィル、流れるような16のハットとキック、陶然でございます。

●Thank You For Being A Friend / Andrew Gold
(『All This And Heaven Too』/ 78年) 
◎ピアノポップの名曲。ドラム的には手数も多くなく地味かも知れませんが、歌モノのドラムかくあるべし!という教科書のようなジェフのドラムが流石です。サビのハイハットのオープンクローズとキックのダブルの入れ方が素晴らしいです。

●Lost In Love With You / Leon Ware
(『Leon Ware』/ 82年) 
◎匂い立つ80年代AOR臭のアダルト具合に赤面してしまいそうになるこの曲ですが、恥ずかしがりながら聴き耐えていると02:10〜からの怒涛のキメフレーズでヤッホーイ!とテンションが上がり楽しいです。
「キメフレーズでも過剰なエモさがなく小気味良い」これぞジェフの真骨頂。

●Rosanna / TOTO 
(『TOTO IV』/ 82年) 
◎臆面もなくこちらをチョイス。「簡単そうで実は超えげつない」ドラムでおなじみのこちら、語り尽くされているハーフタイム・シャッフルについてはググって頂くとして、個人的にはサビ前のキメのフィルが超かっこよくて最高です。

Rosanna / TOTO


【洞澤徹(The Bookmarcs)】
https://silentvillage.wixsite.com/horasawa 
 

●Look Who's Lonely / Bill LaBounty 
(『Bill LaBounty』82年)
◎イントロのスネアのフィルから心掴まれます。Bill LaBountyとの相性の良いハネ具 合も気持ちよい。

●That’s Why / Michael McDonald
(『If That’s What It Takes』82年)
◎ポーカロらしい躍動するドラミング。
ハットとバスドラのタイミングが最高に好み。

●Jamaica / Bobby Caldwell 
(『Carry On』82年)
◎TOTOでも聴いたことあるアフロっぽいリズムパターンがとってもポーカロっぽい。

●Stay The Night / Chicago
(『17』84年)
◎加工された、まさに80’のドラムサウンドだけどその迫力がかっこいい。中学生の頃 リピートしまくっていた。

●Running With The Night / Lionel Richie
 (『Can’t Slow Down』84年)
◎ポーカロのドラムの音色と16ビートがライオネル・リッチーの声ととっても相性が良い と思える1曲。
 

Jamaica / Bobby Caldwell


増村和彦(GONNO × MASUMURA etc)】
http://www.ele-king.net/writters/masumura_kazuhiko/
 

●Keepin' It To Myself / Jaye P.Morgan
(『Jaye P.Morgan』 / 76年)
◎デイヴィッド・フォスター初期プロデュースの自主盤中のキラーチューン。
サビで飛び出すスネアと同時に叩くフロアからやって来る推進力が渋い。

●The Devil In You / Ned Doheny 
(『Prone』 / 79年) 
◎何故か当時日本だけでリリースされたらしい3rd。このポーカロのプレイは全部の音に配慮が行き届きすぎていてちょっとこわい…。

●Nice Girl / Eye To Eye
(『Eye To Eye』 / 82年)
◎Julian MarshallとDeborah Bergのユニット。プレイヤーはスティーリー・ダンでお馴染みのメンバー。タイト!

●Take A Good Look Around You / Timothy B.Schmit
(『Timothy B.Schmit』/ 87年)
◎ポコ、イーグルスと渡り歩いたティモシー・シュミットのソロ2枚目。イントロの2拍目のバスドラム、ハイハット、リムショットが、シンプルながら一人三役やっているような印象を与えて気持ちよい。

●Krougnegne / Mory Kanté
(『Touma』/ 90年)
◎ギニアのシンガー。ジェフ自らプログラミングしたというビートは、やはりジェフらしく端正で、クラブ・ミュージックにも通じそうだ。1:38〜間奏のコラはフランスのfolamourみたいだ。
 

Keepin' It To Myself / Jaye P.Morgan


【松木MAKKIN俊郎(Makkin & the new music stuff / 流線形 etc)】 http://blog.livedoor.jp/soulbass77/ 
 

 ●Directions And Connections / Tom Jans 
(『The Eyes of an Only Child』/ 1975年)
いくつか残されているジム・ケルトナーとのツインドラム。圧倒的な個性のケルトナー、その影響下にあるポーカロも個性が確立され、素晴らしいアンサンブルに。

●It's So Real / Originals
(『Communique』/ 1976年) 
◎御大ジェイムス・ジェマーソンとの貴重なコンビネーションでシンプルなソウルミュージックを。ハイハットの引っ掻け方、後半のキメに対するアプローチなど、しっかりと斬新で最高。

●Slowdown / Paul Anka
(『The Music Man』/ 1977年) 
◎クロスオーバー~フュージョン風にウネるパターンを、1音の淀みも無く太い音色で。マシーンのようにジャストなビートは、ハードロックまでカバーするポーカロの面目躍如。

●Whatcha Gonna Tell Your Man / Boz Scaggs
(『Down Two Then Left』/ 1977年) 
◎歌い出し直前のサァァァというスネアだけでもう痺れる。フィリーソウルの黄金パターンをポーカロ流に仕上げた1曲。その熱量故に珍しく荒いが、それも含めて完璧なソウルミュージック。

●What I My Doing Wrong / Waters
 (『The Waters』/ 1977年)
◎個人的に思うポーカロの最高傑作がこれ。BPM84、沈むようなフロアに、軽く舞うようなスネア。スロウでも強靭なグルーヴと深い音色は変わらない。マイケル・オマーティアンも流石のセンス。
 
Slowdown / Paul Anka 


 【ウチタカヒデ(WebVANDA管理人)】 
●Your Gold Teeth II / Steely Dan
(『Katy Lied』/ 75年)
◎前作『Pretzel Logic』(74年)から更にスタジオ・ラボ化が進んだ4作目の収録曲。ジェフの神童振りが発揮されたハチロクのビパップ・ビートを基調に3/8、9/8の変拍子パートを加えたジャズ・ロック。
2000年のリユニオン以前の中期スティーリー・ダンのイメージはこの曲に代表される独自性が大きいと思う。

●Let's Get Together / Jaye P Morgan
(『Jaye P. Morgan』/ 76年)
◎Dフォスター最初期プロデュースの自主製作盤だがレアグルーヴ・ブームによって後年リイシューされたことでも知られる。DハンゲイトとSルカサーも参加したこの曲でのプレイはTOTO結成前夜の名演の一つに数えられるだろう。
繊細な16分のハイハットとタイトなスネアのコントラスト、ロータムのバックビートのタメの利いたグルーヴも最高だ。

●Zorro Rides Again / Les Dudek
(『Say No More』/ 77年)
◎ジェフといえばボズ・スキャッグス作品での名演が多いが、バンド・ギタリストだったレス・デューデックのセカンドからこのインスト大作を。新主流派以降のジャズ界きっての名ドラマー、トニー・ウィリアムスとのツインドラムは同時録音らしく、刺激を受けて徐々に白熱していくジェフのプレイは聴き応えがある。
トニーは右ch、ジェフは左chなので各名手のプレイを聴き比べることをお勧めする。

●Room To Grow / Brian Elliot
『Brian Elliot』/ 78年)
◎知る人ぞ知るシンガーソングライターの隠れた名盤より。素早いタムのフィルから始まるジェフのプレイはDハンゲイトのベースとのコンビネーションで良質なミッドテンポ・グルーヴを醸し出している。ハンゲイトのスラップとダブル・ストップ、ギターのJグレイドンの例のチョーキングなどが乱舞するアクセントに呼応するジェフの多彩なプレイも聴きものだ。

●Arthur's Theme (Best That You Can Do) / Christopher Cross
(7”『Arthur's Theme (Best That You Can Do)』/ 81年)
◎アカデミー歌曲賞を受賞した映画『Arthur(ミスター・アーサー)』のタイトル・テーマ曲。シンガーソングライターのクリストファー・クロスの他BバカラックとCBセイガー、Pアレンの共作でマイケル・オマーティアンのアレンジによるミディアム・テンポのバラード。
ドラムキットでピアニシモからフォルテシモを演出する歌伴の理想型がここにある。
 
Arthur's Theme (Best That You Can Do) / Christopher Cross 


(企画 / 編集:ウチタカヒデ)

2019年8月9日金曜日

Minuano:『蝶になる夢を見た』(Botanical House / BHRD-012)☆尾方伯郎インタビュー


パーカッショニスト尾方伯郎のソロ・ユニットMinuano(ミヌアノ)が、2010年のセカンド・アルバム『ある春の恋人』以来9年振りに、サード・アルバム『蝶になる夢を見た』を8月11日にリリースする。
ファーストの『Love logic』(09年)と『ある春の恋人』の2枚のアルバムでは、70~80年代のブラジリアン・ミュージックやジャズのエッセンスをちりばめつつポップスとして昇華していたが、本作では尾方のパーソナリティとイマジネーションをより活かした、一種コンセプチュアルなトータル感に耳を奪われた。
昨年8thアルバム『彼女の時計』をリリースしたLampのヴォーカリスト、榊原香保里をフューチャーしていることで彼等の熱心なファンも本作を待ちわびていたことだろう。
ブラジリアン・ミュージックをはじめジャンルレスなスタンスでポップ・ミュージックをクリエイトしていく姿勢は、 先月全国流通されたがレビューのタイミングを逃してしまったGUIROの 『A MEZZANINE』にも通じており、そのサウンドを構成する数々の音楽的エレメントに興味が尽きないのだ。
ここでは前作から実に9年振りにおこなった、尾方氏へのインタビューをお送りしよう。

●先ずはサード・アルバム『蝶になる夢を見た』のリリースおめでとうございます。 前作『ある春の恋人』から9年が経ちましたが、この期間はどのような活動をされていましたか?
また本作の曲作りやプリプロはいつ頃から始めましたか?

尾方伯郎(以下尾方):ありがとうございます。プリプロですが、セカンド発表後の2011年頃から始めています。ただ、思うように作れなかったり、作っても納得できなかったりで半分ほどボツにしたので、一部を除いたほとんどの収録曲は2015年以降に作ったものかと思います。
この間、Lampのライブやツアーがあったり、別の企画に没頭していたりした時期もありましたが、実感としては9年間、寝ても覚めても本作のことを考えていたという歪んだ記憶しかありません。とにかく時間の流れが早過ぎました。

●ご自分で納得がいかない曲をボツにされるのは理解出来ますが、それが半分ほどになるというとのころに尾方さんの強い拘りを感じました。
収録中11年のプリプロ時に作った曲はどの曲でしょうか?ソフトロック系の「流星綺譚」は前作までのテイストが残っていますよね。
またアルバムの軸となるリード・トラックの「終わりのない季節」はいつ頃作られた曲ですか?

尾方:2011年当時、曲として基本的な形ができていたのは「蜃気楼」、「真夜中のラウンジ」、「夏の幻影」の3曲。また、「機械仕掛けのハートのための不完全な戯曲」は、原型となる曲を2013年頃に作っているので、これら数曲が比較的早い時期の楽曲ということになります。
「終わりのない季節」が出来たのは確か2016〜17年頃、「流星綺譚」はその少し前くらいだったかと思います。

【アルバム・ダイジェスト】  

●音源を聴いたファースト・インプレッションは、前二作に比べて非常にコンセプチュアルで、複雑な展開とアレンジが施されているなと感じました。組曲のように構成されていて、アルバム全体で一つの作品になっていうような印象を受けました。
この様なアルバム・コンセプトは当初からプランしていて、曲作りをしていったのでしょうか?  

尾方:つまらない返しで申し訳ないのですが、一曲一曲を完成させるだけで精一杯でした。その繰り返しと積み重ねの結果としてこの形になったというのが実情で、何らかのコンセプトを狙うような余裕はなかったです。狙って作ってこれだったらもう少し格好もついたのですが、壁に向かって無作為にペンキをぶちまけたら偶然にも自画像になりましたと、それくらい強烈な意外性を私自身も感じています。

強いていえば、曲の並びには工夫を凝らしたと言っていいのかもしれませんが、この曲はこの配置しかありえないという場所に収まるべくして収まった感も強いので、あれこれ腐心した末の成果だと自分の口で言うのもちょっと違う気がします。この辺の感覚は言葉にするのが難しいです。

●成る程、アクション・ペインティング的な偶然性から生まれたトータル感なんでしょうね。でもそれは後で考えると必然だったのかも知れませんよ。曲順に関してはジグソーパズルのピースの当てはめていくような作業だったように感じますが、実はそれもアルバム作りでは非常で大事でもあり、悩みながら楽しめる作業ではないかと思うのですがいかがですか?  

尾方:悩みながら楽しんだという言い方も出来ますし、時間をかけて自然にそうなっていったという意味では、逆にほとんど悩んでいないとも言えます。ただ、普通に考えればこの曲がオープナーだろう、といったような定石からは外れたオーダーになったので、果たしてこれがベストか?という迷いは最後の最後までありました。それでも最終的には、常識的な判断より事の成り行きを優先して現状の配置に落ち着いた次第です。

●このユニットは尾方さんがサポート・メンバーとして参加されているLampの榊原香保里さんをヴォーカリストとしてフューチャーリングして、レコーディングにもサポート・ミュージシャンの方がこれまで同様に参加しています。
ソングライターとアレンジャーが異なるとはいえ、Lampサウンドと区別をつけるためのポイントはなんでしょうか?

尾方:違いを打ちだそう、区別をつけよう、そういった感覚はまったくなくて、彼らのスピリッツに少しでも肉薄したいという思いがむしろ強かったくらいです。録音物を聴くだけでは掴めなかったLampの真髄を、ライブやツアーで実際に演奏する度に体感しているわけですから。
しかし、そういった一種の精神論は脇に置いて純粋に技術的な部分で言えば、誰が何を作ったとしても、その人自身のフィルターを通した独自の作品にしかなり得ないので、そこは人為的にコントロールのできない部分ではないかと思います。

いずれにしても、Lampのサポートで演奏機会のある人間は現時点で世界に数人しかいないので、たまたまその一人として刺激を享受できる立場にいるのは、とても恵まれたことです。双方の共通点も相違点も呑み込んで今回やっと実った果実、それが甘いか渋いかは聴く人それぞれでしょうけれど、その実りの萌芽は、やはり自分の置かれている立場、つまりごく当たり前のようにインスピレーションを得られるこの稀有なポジションに、深く根差していると思っています。

『Love logic』     『ある春の恋人』

●『ある春の恋人』から本作『蝶になる夢を見た』までの間にLampは、『八月の詩情』(10年)、『東京ユウトピア通信』(11年)、『ゆめ』(14年)、『彼女の時計』(18年)と4作品をリリースしていますが、尾方さんが受けたインスピレーションのポイントを強いて挙げたらなんでしょうか?

尾方:挙げて頂いたアルバム個別の影響というよりも、あくまでも全体的な傾向の話になりますが、どの作品も当たり前に「ポップス」なわけです。
聴き手をときめかせるポップさを兼ね備えながら自由で複雑な表現を存分に盛り込んで、でも難解とは感じさせない。そういった印象は、時系列でみれば一定の変遷を辿りつつも、巨視的には初期から現在に至るまで一貫しています。表現の濃密さとポップさをいかに両立させるかというこのテーマは、この9年間に限らず終始、私の中で通奏低音のように鳴り続けていた。そういう言い方が一番しっくり来るように思います。

●尾方さんは90年初頭のクラブ・シーンでSpiritual Vibes(スピリチュアル・バイブス)のメンバーとして、近未来を見据えたかのようにラテン・ジャズやブラジリアン・ミュージックとポップスの融合をされていた訳ですが、昨今のネオ・シティポップ・ムーブメントからジャンルレスで多様な音楽性を持ったバンドが活動している昨今のミュージック・シーンをどう見られていますか?  

尾方:Spiritual Vibesは演奏面での参加のみで、制作プロセスの核心に直接タッチしたわけではないのですが、クラブ文脈で多少デフォルメされているとはいえ、ジャズやブラジル音楽がある種のポリュラリティを得た。そういう時代や現場に立ち会えたのは貴重な体験でしたし、この時に得られた感覚が今の自分の出発点にもなっています。ただ、その流れが後のシーンにどう繋がったかという大局的な視点は持ち合わせておらず、あくまでも私的な経験として非常に重要だったと、そういう話でしかありません。

それくらいの個人的なスタンスで音楽に接しているので、現在のシーンについても、自分が直に体験すること以外はまったく把握できていないのが実状です。勉強不足とは思いますが、世間の動きやシーンの動向よりも、置かれた環境で自分がいま何を感じているかという、そこにしか関心がないのかもしれません。
その対象は、昨日観た映画でも今日の車窓風景でも、あるいは過去への悔恨でも未来への不安でも何でもいいのであって、つまり必ずしも音楽でなくても構わないわけです。

そういう意味では、ミュージックシーンも含めた社会全般と一定の心理的距離があり、自分の中で勝手に作られた並行宇宙でただ一人暮らしているようなものです。一般的にはあまり好ましい状況として映らないかもしれませんが、そういうプライベートな架空世界から今回の作品が生まれてきているという側面は、少なからずあると思います。



●レコーディング中のエピソードをお聞かせ下さい。 

尾方:優等生っぽい答になりますが、参加ミュージシャンやエンジニアの方々との触れ合いは楽しかったです。とはいっても、レコーディング当日は時間の縛りもあって何かと慌ただしく、ゆっくり話をするような余裕はないのですが、そこは音楽関係者同士ですから、こちらの問いかけに音で答えてもらう非言語コミュニケーション中心で。

奏者さんの中にはちょくちょく顔をあわせる人もいれば、お久しぶりの人もいる。昔から知っているのにこれまでお願いする機会のなかった人もいれば、紹介を受けて初めてご一緒した方もいる。皆さん例外なく優秀なので、放っておいても勝手に良いパフォーマンスをして曲を膨らませてくれるし、こちらの至らないところはこっそり補ってくれたりもします。いやミュージシャンやエンジニアって本当にすごいなと、他人事のように実感しました。

特にクラシック系の楽器奏者さんは、いわゆるバンドマンとは異なる文脈で音を出す機会も多いはずで毎回軽く緊張するのですが、皆さん申し合わせたかのように親身で解釈も的確、もちろん演奏も全力投球です。こういった異ジャンル間の接近遭遇は、私の場合レコーディング以外では滅多に起こらないので、振り返ってみれば豊かな時間だったと、懐かしむというと大袈裟ですが、そんな気持ちが今も残っています。

●本作制作中に聴いていた楽曲を10曲挙げて下さい。

尾方:なにしろ長期に渡ったので、聴く音楽も次々に入れ替わりました。取りあえず、この9年間のある時期に繰り返し聴いていた曲、印象に残っている曲を挙げてみます。 ポップス以外のジャンルが多く、今回の新作に直接の影響は見出せないかもしれません。尚、制作期間以前から継続的に親しんでいる定番曲は外しました。

1. Fred Hersch 「At The Close Of The Day」
  『In Amsterdam: Live At The Bimhuis』 (2006) より
 (spotify試聴プレイリストでは別ver)

2. Dani Gurgel 「Depois」
  『Agora - Dani Gurgel E Novos Compositores』 (2009) より

3. Fabian Almazan & Rhizome 「Alcanza Suite: I. Vida Absurda y Bella」
 『Alcanza』 (2017) より

4. Jon Hopkins 「Candles」
 『Monsters (Original Motion Picture Soundtrack)』 (2010) より

5. Michael Franks 「When The Cookie Jar Is Empty」
 『Burchfield Nines』 (1978) より

6. Francis Hime 「Atrás Da Porta」
 『Francis Hime』 (1973) より
 (spotify試聴プレイリストでは別ver)

7. Kurt Rosenwinkel 「Gamma Band」
 『Star of Jupiter』 (2012) より

8. Brian Eno & Harold Budd 「First Light」
 『Ambient 2 The Plateaux Of Mirror』 (1980) より

9. Allan Holdsworth 「Tokyo Dream」 
 『Road Games』 (1983) より 

10. Jóhann Jóhannsson 「Heptapod B」
 『Arrival (Original Motion Picture Soundtrack)』(2016) より





●最後に本作『蝶になる夢を見た』の魅力を挙げてアピールして下さい。  

尾方:アルバム全体にコンセプチュアルな印象があるというお話を頂きました。それは偶然の産物という話もしましたが、成り行きはどうあれ、アルバムトータルで聴いた時にこそ何かが伝わる作品になったという思いは確かにあります。

アルバム単位で聴く習慣が薄れている昨今の時代性とは相反しますが、今回のアルバムをまるまる通して聴いて頂ければ、一周回って逆に新しい体験になるのではないか。
そういうところに、この音楽の持ち味があるのではないか。そんな気がします。本作は化学反応の主体ではなくあくまでも触媒であり、聴いてくださる方それぞれが主人公になって、無自覚に胸に秘めた何かを感じ取る。そんな風景や物語を、私は漠然と思い描いています。 

(インタビュー設問作成/文:ウチタカヒデ)


2019年8月4日日曜日

◎PIPER:2019summer live(Piper、村田和人、Honey & B-Boysレコ発ライブ!) 2019.07.14.(Sun)@目黒ブルースアレイ・ジャパン

 山下達郎さんが体調不良で7月12、13日の中野サンプラザ公演を中止された翌日となる7月14日、東京目黒ブルースアレイ・ジャパンではPIPERのライヴが予定通り開催された。
 

 このライヴには私の後輩であり、古くからの友人音楽評論家近藤正義氏が前座で出演するとあって、この告知を6月5日に投稿させていただいた。その後、レコードコレクターズ誌でもコンサート情報を掲載、また口コミでもこのライヴが伝わり、この会場にはあふれんばかりのファンが駆けつけ、超満員となり大盛況となった。


 では、遅ればせにはなるが、当日の詳細を会場のスナップも含め紹介しておく。まずオープニング・アクトで登場したのは、村田和人さんとPIPERのコアなファンを自認する音楽評論家近藤正義氏率いる“村田和人トリビュート・バンド/Ready September”。前回の投稿でも紹介したが、このバンドは彼が村田さんにそっくりな声を持つヴォーカリストとの出会いから結成された。なお当日はこれまでの編成をパワー・アップさせたツイン・ドラムという布陣でのステージだった。また村田ファンには、このバンド名を見ただけで、ニヤリとする気の利いたネーミングだということがおわかりいただけるだろう。

  では彼らのセット・リストを紹介しておく。なお( )は収録アルバムになっている。

①Ready September 
 ~近藤正義(Gt.) 、井原正史(Gt.,Vo.)、 山田繁毅(B.)、志間貴志(Kyd.)、池田幸範(Per., Cho.)、小倉睦子(Kyd.)、館野順子(Vo.,Cho.)、堀江誠巳 (Ds.) 

1. 134号ストーリー(1989年7作『太陽の季節』) 
2. Lady September(1982年1作 『また明日』) 
3. Summer Vacation(1984年3作『My Crew』) 
4. April shadow(1985年二名敦子2作『“WINDY”ISLAND』) 
5. Love Has Just Begun(1983年2作『ひとかけらの夏』) 
6. リアルは夏の中(1989年7作『太陽の季節』) 
7. マリンブルーの恋人たち(1986年児島未知瑠2作『MICHILLE』)with児島未散 
8. Lady Typhoon(1993年 9作『HELLO AGAIN』)
9. Travrlin’ Band(1983年2作『ひとかけらの夏』) 


 という他者への提供曲も含め9曲を披露した。そして7.の<マリンブルーの恋人たち>には、オリジナル・シンガーである児島未散(こじまみちる)さんがサプライズで登場している。この曲は彼女が児島未知瑠名義でリリースした1986年セカンド・アルバム『MICHILLE』への村田さん提供曲で、村田さんは2013年に発表した16作となるセルフ・カヴァー・アルバム『Treasures in the Box』に収録されている。



 なお、彼女のライヴ出演は数日前に決まったものだったらしいが、未散さんにあわせ彼女のヴァージョンで演奏され気持ちの良いジョイントとなった。近藤氏もこの出来にかなり満足されていたようで、次回からこの曲は村田さんヴァージョンから、未散さんヴァージョンに変更する予定だと伺った。この曲はかなりコアな村田ファンであっても、彼女の生歌を聴くのは初めてだったのではなかっただろうか。この映像は既に動画でもアップされているので、ファンは要チェック!また当日参加できなかった方には彼女が開催する10月12日に中目黒の「THE楽屋」でのソロ・コンサートをお忘れなく。補足ながら、彼女は俳優宝田明さんのお嬢さんで、あの人気ドラマ『3年B組金八先生』にも出演歴のある女優というプロフィールを加えておく。 


 このようにオープニングから大喝采の中、いよいよ当日の主役である山本佳右さん率いるPIPERが登場。サポートには村田バンドの小板橋博司さんをはじめとする強者が整揃い。そのステージは、<Ⅰ部><Ⅱ部>に加え<Encor>も含め、既発アルバム(1981年ファースト『I'm Not In Love』除く)からまんべんなく16曲を聴かせてくれた。

②PIPER  
~山本佳右(Gt.,Vo.)、山本耕右(B.)、志間貴志(Kyd.)   
 With 小板橋博司(Per., Cho.)、樋口達也(Gt.)、今瀬真朗太(Ds.) 

<Ⅰ部> 
1. Angel Smile(1983年2作『Summer Breeze』) 
2. Starlight Ballet(1985年 5作『LOVERS LOGIC』) 
3. 僕のLove Song(1984年4作『Sunshine Kids』) 
4. 夏はどこかへ(1984年4作『Sunshine Kids』) 
5. Photograph(1985年 5作『LOVERS LOGIC』) 
6. New York, Paris, London, Tokyo(1983年3作『Gentle Breeze』) 
7. Ride On Seaside(1983年3作『Gentle Breeze』) 

<Ⅱ部> 
1. 酒とバラ(1987年Honey & B-Boys『Back To Frisco』) 
2. ふいうちのまなざし(1984年4作『Sunshine Kids』) 
3. ACT3(1985年 5作『LOVERS LOGIC』) 
4. Trade Wind(1985年 5作『LOVERS LOGIC』) 
5. New York Review(1985年 5作『LOVERS LOGIC』) 
6. Time & Tide(1983年3作『Gentle Breeze』) 
7. Ride On Seaside(1983年3作『Gentle Breeze』) 

<Encor> 
1. デイドリーム ビリーヴァー(1984年4作『Sunshine Kids』) 
2. Breezing(1983年3作『Gentle Breeze』) 

 そしてこのライヴのトリとなる<More Encor>では、Ready Septemberに山本佳右さん小板橋博司さんが加わり、村田和人ナンバーを3曲披露している。 


 

③Ready September With 山本佳右、小板橋博司 
<More Encor> 
1. Brand New Day Brand New Song(2014年17作『ピーカン』) 
2. 一本の音楽(1983年村田和人2作『ひとかけらの夏』) 
3. We Love You(1984年村田和人3作『My Crew』) 



 このラスト・ステージでは2016年に村田和人さんが亡くなられた際に、彼の師匠山下達郎さんがこの年のツアーのアンコールで、ギター1本で歌い上げた追悼曲<一本の音楽>がファンの間で評判となった。この曲を本家である山本佳右さんと、彼をこよなく愛する近藤正義氏がツイン・ギター・ソロを響かせ、会場のファンにはたまらないプレゼントとなった。ただこの瞬間を一番楽しみにしていたのは、近藤氏だったのは言うまでもない。 

 また、オーラスとなった<We Love You>は、発表当時「オロナミンC」のCMソングとして一般にもヘビロテ状態のナンバーであり、この共演に最もふさわしい締めくくりのナンバーだった。 この共演は当日会場に詰めかけた多くのファンを楽しませていたが、何よりも永年のPIPERファンだった近藤正義氏には永年の夢が叶った瞬間として一生忘れられないステージになったことと思う。「近藤君、お疲れ様でした。そして共演おめでとう!」長年の友人として、遠方より祝辞を送らせていただく。また今回は近藤正義氏が企画・選曲・キャッチコピーまで全てに関わったコンピ『村田和人/エヴァーグリーン・ワークス~永遠に続く輝く~』の発売にも拍手を送りたい。



 なおこのライヴのリポートは、「レコードコレクターズ」9月発売号に掲載予定で、8月発売号には近藤正義氏によるPIPER特集記事等がかなりの枠で掲載される予定だ。 僭越ながら、私も後方支援としてFMおおつ「音楽の館~Music Note」の6月号ラストで、概要告知をさせていただいた。



 そして、7月27日に放送された7月号では「村田和人さん」と「PIPER」の特集を放送している。当日のプログラムは、村田さんのナンバーも佳右さんのギターにこだわって選曲した。以下はその放送でオンエアされたリストだ。 


1. Morning Selection /Honey & B-Boys (1987.『Back to Frisco』) 
2. 部屋とYシャツと私 /平松愛理(1992.Single;1990.3rd『My Dear』) 
3. 電話しても/村田和人(1983. Single;1st『また明日』) 
4. ファーラ・ウェイ/ PIPER(1982. Single;1st『I’m Not In Love』) 
5. 高気圧ガール/山下達郎(1983.Single;8th『Merodies』) 
6. So Long Mrs. /村田和人(1984. 2nd『ひとかけらの夏』) 
7. Summer Vacation /村田和人(1985. 3rd『My Crew』) 
8. Shine On/ PIPER(1984.2nd『Summer Breeze』) 
9. Ride On Seaside/ PIPER(1984.3rd『Gentle Breeze』) 
10. Sunshine Kiz/ PIPER(1985. Single;4th『Sunshine Kiz』) 
11. We Love You/村田和人(1985. 3rd『My Crew』) 
12. Gimme Rain/村田和人(1985. 3rd『My Crew』) 
13. Boy’ s Life/村田和人(1987. 5th『Boy’s Life』) 
14. 電話しなくても/村田和人(1990. 8th『空を泳ぐ日』) 
15.Imaginaly Lover/村田和人(1993. 9th『Hell Again』) 
16. 太陽の恋人/村田和人(1995. 11th『Sweet Vibration』) 
17. マリンブルーの恋人たち/村田和人(2013. 15th『Treasures In The BOX』) 
18. STARLIGHT BALLET/ PIPER(1985.4th『Lovers Logic』) 
19. 一本の音楽/村田和人(1984. Single;2nd『ひとかけらの夏』) 
20. 夏を忘れた瞳に/村田和人(1994. 10th『evergreen』) 

 このなかで最もメジャーな曲といえば、ブルースアレイ・ジャパンのライブ・レヴューでもふれた<11. We Love You>になるだろう。それはこの曲が1984~5年にかけて読売ジャイアンツの人気選手が登場する大塚製薬「オロナミンC」CMに起用されていたからだ。    

 その映像に出演していたメンバーが全員思い出せなかったので、大塚製薬のカスタマーサービスに問い合わせをしてみた。さすがに即答とはいかなかったが、同世代と思われる担当者に調査していただき、以下の6名が判明した。 まず当時、江川卓(えがわすぐる)投手と並び巨人軍投手三本柱として活躍した定岡正二(さだおかしょうじ)投手と西本聖(にしもとたかし)投手。そして「絶好調!」の連発でお馴染み、数年前までDeNAベイスターズの監督だった中畑清(なかはたきよし)選手。さらに「意外性男」山倉和博(やまくらかずひろ)捕手、河埜和正(こうのかずまさ)内野手、松本匡史(まつもとただし)内野手だった。補足になるが、このCMには「5月編」「ファンレターA・B」「クリケット」の4パターンがあったようだが、さすがの私もそこまで詳しく記憶してはいなかった。


 

 そして最後にFMおおつの告知となるが、「音楽の館~Music Note」8月号のプログラムは、2001年に映画化されその後テレビ・ドラマ化もされた「ウォーターボーイズ」の演技シーンに使用された音源の特集をお届けする予定だ。このシリーズは4作あるが、微妙に選曲を変えており、すべて把握している方はよほどのマニアだけのはずだ。 選曲はかなりベタなナンバーばかりにはなるものの、私の肩書である「レトロカルチャー」に相応しい内容を盛り込んだプログラムでお届けするのでこちらもご期待いただきたい。放送は第4土曜日15:30~、再放送は翌日曜8:00~。 

【FMおおつ公式アプリ】https://fmplapla.com/fmotsu/ 

(鈴木英之)

2019年8月1日木曜日

シンリズム:『赤いタワーまで / Moon River Lady』(production dessinee / PDSP-022)


若干22歳のシンガー・ソングライターのシンリズムが7インチ・シングル『赤いタワーまで / Moon River Lady』を8月7日にリリースする。 
出身地の神戸で高校在学中の15年にシングル「心理の森」とアルバム『NEW RHYTHM』でデビューした彼は、続くセカンド・アルバム『HAVE FUN』(17年)でも高い評価を得てきた。
音楽大学進学後は活動拠点を東京に移し、ソングライター&アレンジャーとして今年4月にガール・グループRYUTistのシングル『センシティブサイン』のタイトル曲を手掛けるなどその才能を広いフィールドで発揮している。



ソロ作品として2年程のブランクを経て発表する本作は、ソングライティングとアレンジは勿論のこと全てリズム・セクションを自ら演奏しており、そのマルチな才能には敬服するばかりだ。では収録曲を解説していこう。
 「赤いタワーまで」はダブルトラックのフルート・リフから導かれるメロウなシティポップ・ナンバーで、フェンダー・ローズ系のエレピを中心に構築されたサウンドである。 かつて松任谷由実の「タワー・サイド・メモリー」(『昨晩お会いしましょう』収録 81年)でも歌われた“神戸ポートタワー”をモチーフにした歌詞には、故郷に思いを馳せる彼の心象風景が滲み出ている。またコーラスでゲスト参加した“月の満ちかけ”の熊谷あすみの無垢な歌声とブレンドされたハーモニーが美しい。 

Official Teaser

カップリングの「Moon River Lady」は、イントロにはRah Bandの「Clouds Across The Moon」(85年)の匂いがして心憎い演出だが、アコースティック・ピアノ中心にしたシンプルな編成のファースト&セカンド・バースからサビに入ると、2拍子のカリプソ~中南米系リズムにシフトしてバックビートで3管のホーンが入ってくるという。 一聴して音楽的引き出しが多い彼の才能が伺える曲である。 

なお本シングルはリリース元の『プロダクション・デシネ』製のカンパニースリーブ付属で、初回300枚プレス(非限定)らしいので興味を持った読者は、下記URLから早期に入手して欲しい。
dessinee shop (デシネ・ショップ): http://www.dessineeshop.com/shopdetail/000000023764/ct11/page1/order/
(ウチタカヒデ)