2023年12月25日月曜日

WebVANDA管理人選★2023年の邦楽ベストソング



 WebVANDA管理人が選ぶ年間ベストソングも6年目を迎えた。幣サイトの母体であるVANDA誌のカラーや趣向から外れているカテゴリーの楽曲も選出してきたが、分け隔てなく音楽の多様性を許容することが管理人の信条であるので、どうか理解して読んで頂きたい。 
 選出した楽曲は今年2023年にリリースされ、弊サイトで取り上げた作品を中心に最もリピートした収録曲であり、アルバムを象徴する曲である。主に非メジャー・レーベルのミュージシャンの作品が多いが、そんな彼らを後押して応援する意味で今後も続けていきたいと思う。 この記事で初めて知って興味を持った各アルバムはこれからでも遅くないので、記事文末のリンク先から入手して是非聴いて欲しい。
 選出趣旨からコンピレーション・アルバム、セルフ・カバーを除く他者のカバー作品は除外とした。例年同様、順位不同のリリース順で紹介する。

※サブスクに登録されたベストソング・プレイリスト


☆Another October / Snow Sheep
(『WHITE ALBUM』収録・レビュー記事はクリック  
男女3人組ポップ・バンドの結成23年にして初のフル・アルバムより。オリジナル・ヴァージョンからBPMをかなり落とし尺も延長して、ネオアコ系ギターポップから渋いロッカ・バラードに生まれ変わった。このリアレンジにより原石が磨かれて理想的サウンドになったと確信。筆者が十代半ばの頃大好きだった英国のペイル・ファウンテンズにも通じる。


☆ローマでチャオ / Wink Music Service
(同名7インチ及び配信シングル)
本年度最も完成度の高い現代ソフトロックサリー久保田高浪慶太郎のユニットに美形女子高生ヴォーカリストのアンジーひよりを迎えており、アレンジャー岡田ユミの仕事も光っている。イタリアの巨匠エンニオ・モリコーネのサウンドがベースにあるも、フランシス・レイやホーランド=ドジャー=ホーランドなどの要素がモザイクに構築され、めくるめく転調を多用して聴き飽きさせない。


☆Hit & Run / WACK WACK RHYTHM BAND
(『at the Friday Club』収録・レビュー記事はクリック  
オリジナルよりBPMを上げて疾走感があるセルフ・カバーで、魅惑的なコード進行のイントロに導かれて始まる、永遠のパーティー・バンドの愛すべきファンク・チューンだ。リード・ヴォーカルに元メンバーのToshieとLemonが参加しているのも嬉しい。アルバム全体的な選曲やジャケット・デザインなどトータル的センスも秀でており、誰もが憧れる理想の大所帯バンドである。


☆むかしの魔法 / 生活の設計
(『季節のつかまえ方』収録・レビュー記事はクリック) 
20年前筆者が絶賛したゲントウキの「素敵な、あの人。」にも通じる、ブリル・ビルディング時代から脈々と受け継がれているポップスの煌めきが宿る屈指の名曲である。ソングライターでヴォーカル兼ギターとドラムの兄弟を中心としたスリーピース・バンドのファースト・アルバムのリード曲で、東京の若手バンドの中でも正統派感があり、今後の成長が非常に楽しみである。


☆Tableaux / cero(『e o』収録)
“理解するな、感じろ”と言わんばかりの楽曲に毎作ごと魅了されてしまう、鬼才3人組による5thアルバムから。2021年の先行配信シングル「Nemesis」も同様だが、聖書の一節のような哲学的で難解な語彙を持つ歌詞が、音数少ない空間を生かしたサウンドに天使のごとく舞っている。幾度も聴き続けたくなるサムシングとしか形容できない稀有な存在なのだ。


☆マガジン・キラー / Nagakumo
(『JUNE e.p.』収録・レビュー記事はクリック) 
音楽通から注目される大阪の4人組ネオネオアコ・バンドのサードEPより。Cymbalsの最高傑作「Highway Star, Speed Star」に通じる、得も言われぬ疾走感と甘酸っぱいメロディの融合、ディストーションが効いたギターリフ、ドライヴしまくるリズム・セクションに刹那的なヴォーカルが乗る3分弱の多幸感。まるでスリリングなショート・ムーヴィーを観たような爽快感が残る。


☆彼女の時計 / Lamp
(『一夜のペーソス』収録・レビュー記事はクリック) 
デジタル配信のみでリリースされた9作目より。2018年の8作目『彼女の時計』と同タイトルのこの曲は前作のサウンドを踏襲しながら、シカゴ・ソウルやブラジリアン・フュージョンのエッセンスをより消化してバンドとしての成熟度も著しく増した。またサブスクリプション時代において、彼らの独自性とジャパネスク感覚に世界レベルでファン達が魅了され増加している面目躍如とも言える。


☆Never Can Say Goodbye / 青野りえ
アルバム制作のきっかけとなった2021年の初コラボレーション曲で、唐突なドラムフィルのイントロから「Never can say goodbye(さよならなんて、言えないわ)」のサビのコーラスというドラマチックなスタートに初見でノックアウトしてしまった。ブルーアイドソウルやシティポップを愛する音楽通も許容するであろうクール・サウンドで、是非7インチ化して欲しい。


☆Longtime Woman / Ellie
(『90s Baby』収録・レビュー記事はクリック) 
ラヴ・タンバリンズ時代の傑作「Midnight Parade」を彷彿とさせる、ミッドテンポのブルース・ファンクで、レニー・クラヴィッツの『Are You Gonna Go My Way』を愛聴していた筆者には直撃であった。ハードなリード・ギターを相手にEllieのシャウトが炸裂し、ホーン・アレンジのヴォイシングのセンスなど含めサウンド全体が一級品であり、ライヴで聴きたい曲の最有力候補である。


☆Don't Ask Me Why / 吉田哲人
WHY@DOLL提供曲のセルフ・カバーで、先行短冊CDのシングル・ヴァージョンと異なり、イントロからヴァースへのギター・アルペジオがなく、ヴォーカルをより強調したミックスが新鮮である。不毛の恋愛を綴った歌詞と四つ打ちキックが効いたエレクトロ・ダンス・サウンドとのコントラスが世界観を広げ、間奏の一人多重コーラスが原曲の価値を高めている。
※サブスク登録は無いため、プレイリストには管理人が好きだったWHY@DOLLのオリジナルVerを収録。













    amazon    amazon
  amazon

  amazon 
   

2023年12月17日日曜日

わたくしのオフコース -2-/吉田哲人

 WebVANDAをご覧の皆さん、ご機嫌いかがでしょうか。吉田哲人です。 
 2023年11月22日に発売になりました、僕の48歳にして初のアルバム『The Summing Up』とアーカイブ集『The World Won’t Listen』は聞いていただけましたでしょうか。2枚同時購入者に付いてくる(初回ブレス分のみ)特典CD『Another of The World Won’t Listen』も楽しんでいただけていますでしょうか。 まだ買ってないよ~!って方、詳しくはこちらのWebVANDAさんに濃密なインタビュー(前編後編)が掲載されてますので、そちらを御一読いただき御購入のほど、よろしくお願い致します。 

 オフコースの話の前に 

 オフコースといえば、我らがなりすコンパクト・ディスクから12月13日に発売された『なんちゃらアイドル / Sentimental Jukebox』(HYCA-8062)に「オフ・コース / のがすなチャンスを」のカヴァーが収録されてます。
 『オフコース / LIVE(ETP-60380/1)』収録ヴァージョンに寄せたアレンジだったので、ライブで盛り上がりそうですね。最高。 

 さて、この連載はオフコースのレコードを収集してる中で培った知識や疑問に思ったことを投げかけ、皆さんと情報共有/情報交換して所謂’集合知’として後々まとめられればと考えているものです。 
 前提として(シングルかLPかを問わず)レコード盤にあるマトリクスの「1S」が初回盤であろう、という予想の上で話を進めている訳ですが、この前、ふとした拍子に家に何枚かある(DJでよく使うので)「チューリップ / 虹とスニーカーの頃」のマトリクスを見たところ、なんと「1SM」というマトリクスがあるのを見つけてしまい困惑してしまいました。 どなたかどういう意味が込められたマトリクスなのか教えてください。 マトリクスの世界、一寸先は闇ですね…。



 そんな中お届けする第二回は… 


 『この道をゆけば / オフ・コース・ラウンド2』です。



 先ほど紹介しました「のがすなチャンスを」のオリジナル・ヴァージョンが収録されています(なんちゃらアイドルはこの時期の表記を尊重して”オフ・コース”としていると思う)。その後、オフコースのライヴにおいてアレンジが変わってゆき、ハードロック調のアレンジにまで育ってゆきます。 

家にあるものは… 

1.ETP-8293 1S/1S 裏ジャケット東芝EMI株式会社 ¥2,000表記

2.ETP-72141 1S2/1S 裏ジャケット東芝EMI株式会社 値段表記なし 

 このアルバムは、前回の『オフ・コース1 / 僕の贈りもの』に見られた社名変更による表記や価格改定もなく、再発時に価格改定とオビのデザインが一新されたくらいのものだと現状は考えております。ETP-8293の方はもう一枚持っているのですが、経年劣化は差し引くとして、これといった違いがないので特筆すべきことは特にありません。
 また、マトリクスの違いからくるレコード溝の視覚上における大きな違いはなく、聴感上もほぼ違いを感じられませんでした。多少違っていても誤差の範疇かと思います。 

 写真にある再発盤(ETP-72141)の方に鈴木康博さんのサインが書いてありますが、これは僕がとあるアレンジ仕事の際にゲスト・ミュージシャンとしていらっしゃった鈴木康博さんにその時に書いていただいたものです。実は、前回の『僕の贈りもの』の写真の中にもサインを書いていただいたレコードがあります。


今回はあっさりしているので、もう一枚。

『秋ゆく街で / オフ・コース・ライヴ・イン・コンサート』
 

ETP-72024 1S/1S 裏ジャケット東芝EMI株式会社 値段表記なし

 カタログ番号や価格の変更もなく、試しに何枚か手に入れてみたものの大きな違いが見つけられず、これといって特筆すべきことがないのですが、強いていえば後期プレス分と思われるものは、帯の色なのか紙の薄さなのかは分かりませんが、ジャケットが若干透けて見えます。こればかりは実際手に入れて見比べていただかないと伝わらないかと思います。


今回の2枚、自分が把握している情報では、前回とは異なりヴァリエーションの違いはそれほど見つけられませんでした。
もしも「全然勉強が足らないし、分かってないなあ。」という方がいらっしゃいましたら、ぜひ御教示ください。 
本当に御連絡お待ちしております。

以上、吉田哲人でした。また次回。


吉田哲人プロフィール
作編曲家。 代表作『チームしゃちほこ/いいくらし』『WHY@DOLL / 菫アイオライト 』『Sputrip / 光の惑星』『WAY WAVE / SUMMER BREEZE』 等。シンガーソングライターとしてアナログ盤シングル『ひとめぐり』『光の惑星』、短冊CD 『ムーンライト・Tokyo』と、ソロアルバムCD『The Summing Up』『The World Won’t Listen』を発売中。

(テキスト及び画像提供:吉田哲人/編集:ウチタカヒデ








2023年12月10日日曜日

なんちゃらアイドル:『Sentimental Jukebox』


 御茶海(みさみ)マミと、あおはるによる2人組アイドル・グループ、なんちゃらアイドルが初のカバー・アルバム『Sentimental Jukebox』(NARISU COMPACT DISC/HAYABUSA LANDINGS / HYCA-8062)を12月13日にリリースする。
 
 個性派が多い地下アイドル界にあって、彼女たちはデビュー当初から「曲と性格は良いアイドル」をモットーにしており、彼女達を支えるスタッフも音楽通の人材がバックアップしている。その裏付けとしてシングルやステージではカーネーションやムーンライダーズなど、一般のアイドルは取り上げることは無いであろう往年の拘り派バンドの曲をカバーしているのだ。
 また幣サイトで評価しているRYUTistへの楽曲提供で知られる鬼才シンガー・ソングライターの柴田聡子の作品も取り上げていることから、アイドル業界の中でも唯一無二の存在と言えるだろう。
 
左からあおはる、御茶海マミ
(撮影:畔柳純子)

 なんちゃらアイドルは、2014年もにライブハウス新宿JAMの定期開催されていたアンダーグラウンド・イベント“なんちゃらキカク”をきっかけにして結成された。メンバーの卒業などを経て、現在は御茶海マミとあおはるの2人組として活動している。これまでに11枚のシングルCDと2枚の7インチ・シングル、そして2020年にファースト・アルバム『さよならOdyssey』、2022年にはセカンドの『Life Goes On』をリリースしており、現在もヒットし続けているのだという。
 また2021年には唯一のアルバム『MOTION PICTURE』(81年)を鈴木慶一氏がプロデュースし、松尾清憲や鈴木さえ子も所属した伝説のバンド、ブリティッシュ系バンドの”シネマ”の一色進と松田信男とのコラボレーション・アルバム『M.A.M.I.』(なんちゃらアイドルloves一色進&松田信男の名義)も話題となった。更に今年の10月18日には、伝説のメロコア・ロックバンド”SUPER STUPID”の中心メンバー兼ギタリストの大高ジャッキーとのコラボレーション・アルバム『Silver METAL Love Song, Baby』をリリースしたばかりで、その縦横矛盾なフットワークの軽さには脱帽させられるばかりだ。またメンバーの御茶海マミも1stシングル『芸術偶像mode』をリリースしてソロでも活動の幅を広げている。

(撮影:畔柳純子)

 さて本作『Sentimental Jukebox』だが、古今の邦楽ポップス、ロック曲13曲を収録したカバー・アルバムで、先ずその選曲のセンスや突飛な折衷感覚に唸ってしまった。カバーの原曲絡みのスペシャル・ゲストとして、シンガー・ソングライターの鈴木祥子とムーンライダーズの鈴木博文が参加している。サウンド・プロデューサーは『Life Goes On』でメイン・ソングライターだった、ロックバンドのスキップカウズの遠藤肇が手掛けており、エレキ・ギターやエレキ・ベースの演奏、プログラミングのバックトラック制作からエンジニアリングまで、全曲ほぼ彼のワンマン・レコーディングでおこなわれた。マスタリングは幣サイトで紹介した作品ではお馴染みのマイクロスター佐藤清喜が担当している。
 なお本作からは11月29日に先行として、PUFFYの31枚目のヒット・シングル「SWEET DROPS」(2011年)を8cmCD(短冊CD)でなんちゃらアイドル loves 鈴木祥子名義でリリースしている。この原曲のソングライティングを手掛けたのは鈴木だが、カップリングにもその鈴木の「恋のショットガン(懲りないふたり)」を取り上げるという温故知新なオマージュ振りが嬉しい。しかも鈴木本人が両曲にドラムとコーラスで全面参加しているというから、双方のファンにとっては、少し早いクリスマス・プレゼントになったのではないだろうか。

『SWEET DROPS』/なんちゃらアイドル loves 鈴木祥子

『SentimentalJukebox』アルバムトレーラー 

 ここからは先行シングル2曲をはじめ、筆者が気になる幣サイト読者にお薦めの収録曲を解説していく。 
 冒頭の「運命の人」は、スピッツの1997年17thシングルとして発表され、翌年リリースされた8thアルバム『フェイクファー』にはキーを下げてリレコした別ヴァージョンが収録された。オリジナルはアコースティックギターの刻みに複数のエレキ・ギターがダビングされ、アレンジと演奏に参加した当時カーネーションの棚谷祐一によるキーボードやサンプラーのドラム・ループが活躍する、ブリット・ポップからミクスチャー・ロックに移行していく時期のサウンドだった。ここではテンポアップしたアコースティック・スイングとモータウン(H=D=H)の三連ビートが融合した小気味いいリズムがシンプルな編成で演奏され、原曲が持つ美しいメロディーラインがビビッドに浮き上がる風通しの良いサウンドになっている。若々しい彼女達の歌声も相まって青春ポップスとして評価したい。

 前出の鈴木祥子作の「SWEET DROPS」は、PUFFYのオリジナルからロック好きには知られたオマージュが施されており、ヴァース(Aメロ)はThe Clashの「I Fought the Law」(1979年/オリジナルはクリケッツの1959年作)、ブリッジ(Bメロ)ではCaptain And Tennilleの「Love Will Keep Us Together(愛ある限り)」(1975年/オリジナルはニール・セダカの1973年作)、そしてサビはBay City Rollersの「Saturday Night」(1974年)のそれと、凝った構成が素晴らしかった。鈴木本人も参加した本作のカバーでは、更にイントロにThe Knack の「My Sharona」(1979年)のギター・リフを引用しており、PUFFYのオリジナルを超えるメタ・オマージュ・ポップになった。この曲のカバーから彼女達も地下アイドル界のPUFFYと呼ばれる存在になるかも知れない。

左からあおはる、 鈴木祥子、御茶海マミ
(撮影:畔柳純子)

 続く「恋のショットガン(懲りないふたり)」も鈴木作で彼女の8thアルバム『Candy Apple Red』(1997年)に収録されており、なぜシングルカットされなかったのか?と思えるほど原曲から詞曲共に完成度が高いラヴソングだった。
 26年の時を超えてここでは、10㏄の「The Things We Do For Love(愛ゆえに)」(1976年)に通じるイントロ、オブリで入るビートルズ風のコーラスやメロトロン系のキーボードなど、更に磨きをかけた仕上がりになっている。
 “ピンクのセルロイドでできた 色水入りのshotgun”というサビのパンチラインの世界観をうまく救い上げた遠藤肇のいい仕事であろう。ビートルズ、キンクスから10cc、パイロットのファンは聴くべき曲であり、筆者もファースト・インプレッションでベストトラックとして挙げたい。

 そして触れなければならない曲として、ムーンライダーズの「ボクハナク」のカバーも解説する。80年代ライダーズを愛聴していた筆者が最高作として挙げる『Don't Trust Over Thirty』(1986年)のB面にひっそり収録されたこの曲は、ソングライティングとリード・ヴォーカルを担当した鈴木博文の美学が詰まった、とっておきの曲ではないだろうか。ファンによるライダーズ・ベストテンでランクインすることはないが、この選曲センスには驚喜してしまった。
 本作のカバーでは、「川のむこうに今 燃えつきた空がおちる」の歌詞からイメージさせる、フィールド・レコーディングで録った二人のアカペラから始まる。八刻みのシンセサイザー・ベースとシンプルなドラムのプログラミングされたオケに、間奏でのハードなリード・ギターやラウドなドラムのインタープレイ、エンディングのリヴァース・コーラス、ホーミーを模したトークボックスなど、オリジナルのアレンジを現代的に解釈したサウンドに、作者である博文氏のヴォーカルやコーラスもダビングされるという贅沢なカバー・ヴァージョンとなっている。なんちゃらの二人による淡々とした歌唱も、このオタクのための失恋ソングの世界観を助長して半泣きしてしまうだろう。 

 最後に本作の総評として、ジャケット・ショットのカラオケ・シーンで安易なカバー集と誤解を受ける音楽ファンもいるかも知れないが、そんな先入観は捨てて欲しい。筆者が解説でピックアップした曲を筆頭に、オリジナルに対する溢れる愛と比類なき拘りがないと、このようなカバー・アルバムは生まれないからだ。
 興味を持った読者は是非入手して聴いて欲しい。

(テキスト:ウチタカヒデ

2023年12月2日土曜日

Shino(西本明、江澤宏明)ライブ・レポート/大泉洋子

 この度幣サイトに新たな投稿者を迎えました。
 第二弾はフリーのライター・編集者の大泉洋子(おおいずみ ようこ)氏です。
 どうぞ今後ともよろしくお願い致します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

WebVANDAに投稿してみませんか――。
そうご連絡をいただいたのは、WebVANDAにて、『音楽ライター下村誠アンソロジー永遠の無垢』のレビューが公開された日でした。

大泉洋子(編著):
『音楽(ビート)ライター下村誠アンソロジー 永遠の無垢』(虹色社)

はじめまして。下村誠アンソロジー編著の大泉洋子です。
この本には、2006年12月に火事で突然にこの世を去った音楽ライター下村誠が生前、主に1980年代~90年代に書いた音楽雑誌の記事を転載しています。その中に紙媒体の頃の『Vanda』の記事もあり、制作の過程で、転載してもよいかどうかのご相談のために本サイトの管理人ウチタカヒデさんに連絡をとったことがWebVANDAと私の出会い。

『Vanda』からの転載記事は3本。
1つは、vol.10(1993年)から「ニール・ヤング 憧れのトパンガ・キャニオン」。
2つめは、vol.12(1993年)から「連載エッセイ Rock’n’Roll UNIVERSE③ ロックの宇宙に未来を探して③」(一部中略)。
3つめは、vol.18(1995年)から「10万人のホームレス――アイタルミーティング 兵庫・阪神ツアー」。


下村さんが書いた『Vanda』の記事は10数本あり、もっと載せられれば良かったのですが、ページの都合上、上記3本に絞らせていただきました。全体を通してみると、いわゆる既存の出版社が出す音楽雑誌に書くよりも、だいぶ自由に、のびのびと書いているなぁという印象。選んだ3本は下村誠の人柄がにじみ出ていると思います。『Vanda』の創刊者であり編集長だった佐野邦彦さんとの関係性がうかがえるような。

そんなことがありまして、ウチさんから、冒頭のようにご提案いただいて、下村さんがつないでくれた縁だなぁ……と、お引き受けすることにしました。ライター歴は長いのですが、音楽ライターではありません。でも、幼いころ、幼児番組よりもモンキーズのテレビ番組が好きで(「ザ・モンキーズ・ショー」1967年10月~1969年1月までTBS系列で放送)、テレビから流れる曲を子どもながらに耳コピして、「ヘイ、ヘイ、ウィザモンキーズ!」なんて歌い出して以来の音楽好き。今にいたるまで、音楽がいつも身近にありましたし、これまでの仕事の経験も活かしつつ、ちょっと視点のちがう音楽話を書けたらいいなぁ、と思っています。どうぞよろしくお願いいたします!

さて、では1回目の今回は、『音楽ライター下村誠アンソロジー永遠の無垢』の「下村誠」と縁が深く、この本の中でロングインタビューもとらせていただいた西本明さんと、高校の同級生である江澤宏明さん、ピアニストとベーシストによるデュオ「Shino」のライブレポートと音楽づくりのお話を。

『音楽ライター下村誠アンソロジー永遠の無垢』から西本明ロングインタビューの冒頭ページ。西本さんと江澤さんは高校の同級生で、その頃、千葉県内の楽器屋さんかライブハウスで3歳年上の下村誠と出会う。
「下村君の生き方にかなり影響されたと思う。この人に出会っていなかったら、いま、何してるかわからないですよ」(西本さん)、
「下村さんは僕らの音楽人生のはじめに、すごい影響を与えた人です。ルーツっていうか――」(江澤さん)


写真向かって左が江澤宏明さん、右が西本明さん。ふたりは高校の同級生。
このふたりが高校で出会った偶然もすごいが、
年齢を重ねて再び一緒にバンドを組む流れも素敵だ。
レコーディングの合い間に自撮りしたという写真は、なんだか、とてもいい感じ。

江澤宏明(えざわひろあき)
1957年生まれ。1970年代の終わり頃からベーシストとして活動をはじめ、1980年より浜田省吾のバックバンド「THE FUSE」にベーシストとして参加。そのほか、尾崎豊、村下孝蔵、久宝瑠璃子らのツアーやレコーディングでベーシストとして活躍した。その後、音楽業界から離れ、農業の道へ。自然農法を学び、からだによい野菜を中心に生産し、消費者に届ける仕事を続けている。現在は音楽活動も再開し、西本との「Shino」、Shinoに板倉雅一(key./vo.)も加えた「千葉トリオ」などで活動中。

西本明(にしもとあきら)
1957年生まれ。1970年代の終わり頃からキーボードプレイヤーとして甲斐バンドや浜田省吾のツアー、スタジオセッションなどに参加。その後、「佐野元春with THE HEARTLAND」、「and The Hobo King BAND」のメンバーとしてレコーディングやツアーにも参加。尾崎豊の初期のアルバム3枚にアレンジャーとして携わったほか、稲垣潤一、白井貴子、渡辺美里、柿島伸次など数多くのミュージシャンの楽曲のアレンジやプロデュースを手掛けている。若い頃からの音楽仲間と結成したバンド「Shino」「千葉トリオ」「TOP STONE」などでも活動中。

Shino
ふたりは同じ高校の同級生。それぞれが「自分は音楽が好きだし、人よりちょっと得意かな(笑)」と思っていたのに、「あれ? すごいヤツがいる!」「こんなことできるやつがいたー!」と。気が合って、一緒にバンドをやるようになったという。このときのバンド名が「しの」。高校卒業後はそれぞれがプロの道へ。1999年、西本さんが、若いころ一緒にバンドなどをやっていた人と偶然再会したことがきっかけとなって、音楽から遠ざかっていた江澤さんは再びベースを手にし、音楽の場に戻ってくることに(詳しくはぜひ、『下村誠アンソロジー永遠の無垢』をお読みください。軽く宣伝(笑))。その後、高校時代のバンドを復活させたのが「Shino」。2020年、ファーストアルバム『cover』リリース。タイトルが示すとおり、収録曲5曲はすべてカバー曲で、これが「Shino」というバンドの特色となっていく。
私は、Shinoを知ることで、カバーの概念ががらりと変わり、カバー曲の奥深さ、楽しさを再認識することになる――。


西本明の和音

定期的にライブを行っているShino。ふたりが出会った高校がある千葉県内で開催することが多い。今回のライブは、2023年10月29日(日)JAZZ&BAR Clipperで開催されたもの。4枚目となるアルバム『HARD&GENTLE』の発売記念も兼ねてのライブだった。

1曲目は、「New Country Age Player」。西本さんのソロアルバム『WISH』に収められているインストゥルメンタル・ナンバーだ。広がりのある曲調、疾走感のある展開。屋外のライブで聴いたら気持ちがよさそうな雰囲気の曲。
……なんて書いているが、実は、ライブでの演奏中、これが西本さんの曲だと思い出せずにいた。アルバムは持っていて、購入した頃に車でよく聴いていたのだが、ここしばらく聴いていなかった……。でも聞き覚えはあった。「この曲、なんだっけ……」。西本さんはライブで、海外アーティストの曲のカバーを歌うこともあるので、海外アーティストの曲だったかな?と記憶を探る。聴いているうちに、ある時期のパット・メセニーの曲に似ているなぁと思い始めた。
その一番のポイントは、「和音」の音色だ。
ふっとニュアンスある、クセのあるコードが出てくる。これまた、いいところで、差し色のように入る感じ。
私は楽器ができないので、なんのコードで、どの音が重なっているか、聴いただけではわからない。でも、印象に残るし、私が好きな音色。聴いていて、「ん? あぁ、いい音がきたなぁ」と嬉しくなる。あくまでも聴いた感覚でしかないのだが。

ライブはすすみ、このインスト曲に続いて、「まちぶせ」(作詞作曲:荒井由実)、「海への風」(作詞作曲:下村誠)、「オリビアを聴きながら」(作詞作曲:尾崎亜美)と続いた。5曲目は西本さんが好きで、ライブでよく歌う「Cry Like A Rainstorm」(作詞作曲・歌:エリック・ジャスティン・カズ。リンダ・ロンシュタットによるカバーも有名)。そのあとは、「シルエット・ロマンス」(作詞:来生えつこ/作曲:来生たかお)、「上を向いて歩こう」(作詞:永六輔/作曲:中村八大)と続いていく。

どの曲を聴いても、やっぱり、Shinoの音がする。

それはなぜなのだろうと、あれこれ考えてみた。いくつか考えが浮かんだが、その中でも大きなものは、西本さんの「和音」なのだと思った。もちろん、江澤さんと西本さんのふたりで生み出している音の重なりなので、どれか1つだけが特別ということはないが、Shinoの音楽性において、主に舵をとっているのは、「西本明の和音」ではないだろうか。

ライブ後にお話を伺った際、興味深い話が出てきた。

江澤「特にShinoの世界にしようと思って演ってないよね」
西本「原曲をよく聴いて、コピーしているわけではなくて……」
江「そう、コピーしているわけじゃない」
西「その骨組みを理解して、自分たちに吸い取っている感じですよ。自分たちなりに構築していきますね」
西「僕は和音で生きている人間だから、自分なりに、ここはこうじゃなきゃいやだなぁみたいなのがあって(笑)。これは、僕だったらこうするよなぁ、みたいなね」
江「明さんはね、譜面は地図みたいなもんなんです。ぼくが言うのも変ですけど……」

西本さんにとって譜面は地図。
江澤さんが言ったこの言葉。抽象的だけれど、言いたいことはすごく伝わってくる。

西本さんは、「この歌とこのコードは切り離せないよね、みたいなアレンジがあったら、そのままやるしかない。変えたら、この曲じゃなくなっちゃうっていうのは、そのまま」とも言っていた。
今回のライブで演奏された、たとえば、「オリビアを聴きながら」や「夢で逢えたら」はそうしたことが当てはまる曲だと思う。
でも、やっぱり、Shinoの曲だ。というか、西本さんのピアノだなぁ、と感じる。やれ、コードだ何だ、じゃないんだよね。流れるような、やさしい音符のつながり。


江澤宏明の歌声

どれを聴いてもShinoの曲だなぁと思う、もう1つのポイントが、ふたりの歌声だろう。特に、メインで歌う江澤さんの声。
江澤さんの歌声は、クセになる。何度も聴いているうちに、気がついたらすっかり惹き込まれていた。そんな魅力がある。
男性にしては少し高めの音域。やさしい歌声だが、甘くはない。少しハスキー。芯がしっかりとあって、背筋が伸びている真面目な声。でもやさしさが、その真面目さを包んでいて、やわらかい印象。やさしい説得力がある、というか。

対して、西本さんの声も男性にしては少し高めの音域で、やさしい歌声。やさしい歌声と言っても、江澤さんとは違うやさしさ。甘いやさしさ、かな。まろやかで、声の輪郭が丸い印象。

「西本明の和音」「江澤宏明の歌声」が合わさることで、カバー曲がShinoの音楽になっていく。もしかしたら、もともとボーカリストではなく、楽器を演奏するふたりがつくる音楽だから、いいのかもしれない。

江澤さんのベースの話をちっともしていなかった。すみません! 次から江澤さんのベースももっと聴いてみよう。これまではどうも、江澤さんの歌と西本さんのピアノに耳を澄ませることが多くて……。
そういえば、新譜『HARD&GENTLE』に収録されている「青春のリグレット」をライブで演奏する際、ピックを使ってベースを弾いていて、西本さんから「ピックで弾くって、珍しいよね」と言われていた。次は、江澤さんにベースの話も聞いてみたい。


カバー曲から教えられることがある

そういえば、なぜ、Shinoではカバーだったのだろう。ライブ終了後、それを聞いてみた。
「ぼくはある日、彼に言ったんですよ。自分でやりたいことがあったら、絶対やるべきだ。やりたいことがあるなら、やろうよって」(西本さん)
1999年、コンサートなどの舞台の名監督として知られる名鏡雅宏さんと西本さんが偶然、再会したことで、若い頃のように、音楽やろう、バンドやろうという話になった。名鏡さんがボーカル、西本さんがピアノ、江澤さんがベース(現在このバンドは休止中)。
「基本的にそういう感じでやっていたんですけど、要するに、自分で歌いたくなった(笑)。そうしたら、歌いたい曲がいっぱいあった。こんなにあったー!って(笑)」(江澤さん)
「そうそう、昔は歌ってたしね」と西本さん。高校時代はピアニストとベーシストではなく、ふたりでフォークデュオをやっていたそうだ。

そしてShinoの活動を始め、カバー曲をアレンジして自分たちで演奏してみると、「教えられることが多い」ことに気がついたという。

たとえば、「上を向いて歩こう」。
「ああいう昔の曲をやると、イコール分析することになるんです。ぼくが、アレンジャーやプレイヤーという目で見ると、よくできてるよなぁ、変わってるよな、この時代に……みたいなことがいっぱいあって。いわゆる常識的な構成じゃないわけです、曲のつくりが」(西本さん)

普通だったら、Aメロがあって、Bメロ(サビ)があって、2番終わったら間奏があって、またAに戻って……といったお決まりのパターンがあるが、「まったくそういうものから解き放たれている曲がある。いい曲というのは、そういうことと関係ないんだなということを教えてくれる」と、ふたりが口をそろえる。

ライブ中にも、今回の新譜『HARD&GENTLE』に収録されている「彼と彼女のソネット」や「HARD&GENTLE」を演奏する際に、「フランスの曲だけど、やってみたら、おもしろかった」「つくりが変わってるよね」とか、「同じようなことを繰り返しているんだけど、なんかいいんですよ」といったことを言っていた。

(「彼と彼女のソネット」は、フランスの映画『悲しみのヴァイオリン』(1986)の主題歌として作られた曲。原田知世さんがこの曲を気に入り、歌いたいということで、大貫妙子さんが日本語の詩をつけたもの。「HARD&GENTLE」は、1977年にリリースされたビージーズのシングル曲で、ジョン・パダム監督の映画『サタデー・ナイト・フィーバー』の挿入歌。邦題は「愛はきらめきの中に」)

自分たちでやってみたら、「常識的な構成から解き放たれて」いて、「こうしたら、びっくりするかな、みたいなことがないんだよね」という。
「だから、自分で曲をつくるときも、前は、構成があって、それに当てはめた曲をつくろうとしていたんだけど、ああいうのを見ると、そういうことを考えないで、本能にまかせてつくっていいんだなと思う。たとえばBがなかったりしても……」(江澤さん)
「いい曲って、感心するよね」と西本さん。


歌い継ぐ下村誠のうた

「いい曲」という言葉が出てきたところで、江澤さんがこんな話をしてくれた。
「下村さんは、いい曲っていうのはないって言ってましたね。俺、ずっと、それが頭の中にあった。いい曲っていうのはないよ。好きな曲か、そうじゃない曲か、ふたつしかないって」

いい曲ってなんだろう。
実は、下村誠の本をつくっている間に何度も思ったことだった。
13回忌のころ、下村さんの音楽仲間の人が「下村誠SONG LIVE Bound For Glory」という13回忌ライブ、追悼ライブを開催した。それは縁あって、その後も続いているが、そこには「下村さんの曲には、いい曲が多い。歌い継いでいきたい」という思いがある。

うん、確かに、下村さんの曲にはいい曲が多い。私もそう思う。
でも、売れたかと言われればそんなことはない。
いい曲って、なんなんだろうね。

下村誠の本をつくっているなかで、2022年11月、ベルウッドレコードの50周年の記念コンサートがあって、足を運んだ。
制作において、記事の転載をミュージシャンの事務所に相談するのだが、中には、ちゃんと聴いたことのないミュージシャンもいて、その多くがベルウッドレコードに関係する人だった。音楽をちゃんと聴いていないのに連絡するのも気が引けて、YouTubeで検索して聴いてもいたが、実際に聴ける機会があるのなら、と思ってのことだった。

コンサートを観ていて思ったのが、いい曲とは歌い継がれる曲だ、ということだった。

ベルウッドに縁のあるミュージシャンのうち、何人かが既にこの世を去っていた。高田渡さん、大滝詠一さん……。
コンサートでは、自分の歌のほかに、このふたりの曲も歌う人が何人もいた。その気持ちの根底には、50周年という記念のコンサートに、このふたりの歌が歌われないなんて、という強い願いがあったからだと思う。

誰かが歌い継いでいけば、その歌が消えることはない。
歌い継ぎたいと思う曲、好きな曲、いい曲。

西本さんと江澤さんにとっては、Shinoは、「いい曲だな、歌いたいな」と思う曲に、素直に向き合うことのできる大切な場所なのだろうと思う。
ふたりは、下村誠の曲も歌っている。
誰かに言われて、ではなく、歌い継いでいかなくちゃ、という使命感でもなく、ふたりにとって自然な流れなのだそうだ。

いい曲はないよ、と下村誠が言っていたようだけど、私はもう少し、それを探っていってみたい。WebVANDAではそれを探してみようか――。


セットリスト
〈前半〉
1.New Country Age Player(曲:西本明)
2.まちぶせ(作詞作曲:荒井由実)
3.海への風(作詞作曲:下村誠)
4.オリビアを聴きながら(作詞作曲:尾崎亜美)
5.Cry Like A Rainstorm(作詞作曲:エリック・ジャスティン・カズ)
6.シルエット・ロマンス(作詞:来生えつこ/作曲:来生たかお)
7.上を向いて歩こう(作詞:永六輔/作曲:中村八大)
8.River’s Story(作詞作曲:下村誠)

〈後半〉
9.across(曲:西本明)
10.スマイル(作詞:板倉雅一/作曲:チャールズ・チャップリン)
11.ウルダジンナ・グッドナイト(作詞作曲:下村誠)
(*ここから新譜から4曲)
12.彼と彼女のソネット
(作詞:C.coper・R.wargnier/作曲:R.Musumarra/日本詩:大貫妙子)
13.たそがれの街(作詞作曲:下村誠)
14.青春のリグレット(作詞作曲:松任谷由実)
15.HARD&GENTLE 
原曲名:How Deep Your Love
(作詞作曲:Barry Gibb, Robin Gibb, Maurice Gibb/日本詩:板倉雅一) 

〈アンコール〉
16.夢で逢えたら(作詞作曲:大瀧詠一)


※Shinoのアルバムは、公式サイトから購入できます。
サイトには、各アルバムのトレーラー映像もあるので、ぜひご覧ください。


(取材、テキスト、編集:大泉洋子/編集協力:ウチタカヒデ

◎大泉洋子プロフィール
フリーのライター・編集者。OLを経て1991年からフリーランス。下北沢や世田谷区のタウン誌、雑誌『アニメージュ』のライター、『特命リサーチ200X』『知ってるつもり?!』などテレビ番組のリサーチャーとして活動後、いったん休業し、2014年からライター・編集。ライター業では『よくわかる多肉植物』『美しすぎるネコ科図鑑』など図鑑系を中心に執筆。主な編集書に『「昭和」のかたりべ 日本再建に励んだ「ものづくり」産業史』『今日、不可能でも 明日可能になる。』などがある。

※西本明ソロアルバム「WISH」 





2023年11月24日金曜日

吉田哲人:『The Summing Up』『The World Won’t Listen』リリース・インタビュー後編


ー リリース・インタビュー後編 ー 
(インタビュー前編はこちら

『The World Won’t Listen』収録曲の大半を俯瞰で見た(聞いた)とき、
どこかで結局、自分は(楽曲構造上は)ポップスの人なんだなあと 

●コラムでも触れられていましたが、VANDA誌との出会いを詳しく聞かせて下さい。また当時影響を受けて聴き込んでいた楽曲を挙げて、その魅力を語って下さいますか。

◎吉田:1995年頃に大学時代の友人から『VANDA 18号 Soft Rock AtoZ大辞典』を借りたのが出会いでした。それ以来、手に入るバックナンバーは全て買い揃え(その年に、地元である徳島に帰省した際、今は無き「アダムと島書房」で18号を手に入れる事ができた)読み耽り、若い頃に多大な影響を受けました。
その頃は、ソフトロックばかりでなく、モンド/イージー・リスニングも、新譜の12inchをよく買っていたテクノ/ハウスやD’n’Bやビッグ・ビーツやガバも、当時はダサいとされていてほとんど見向きもされていなかったテクノポップ/テクノ歌謡も、和洋問わず60’sも70’sもソウルも、クラシックも現代音楽も、当時のUKロックもと、当然限度はありますが、訳隔たりなく聴いていた(J-POPは好んでいなかった)様に思っていて、当時の聴いていたものの記憶といえば音楽それ自体よりも、それぞれのジャンル毎に話せる友達はいても、全てに話が通じる友達がいないという悩みを抱えていた事がパッと頭をよぎります。

脱線してしまいましたがVANDAの話に戻すとやはり、「赤い鳥 / LOVE HIM」「INSTANT CYTRON / Adventure monsters」になります。
「赤い鳥 / LOVE HIM」はVANDAの出会いとほぼ同時に出会っていまして、僕のコラムでも紹介したテープに入っているのですが、LOVE HIM含むアルバム『赤い鳥 / WHAT A BEAUTIFUL WORLD』は「え?こんな内容が良くて音も良いレコードが評価されずに500円コーナーで売られているの?」と本当にショックを受けて、何度も聞いたし何度も買ってプレゼントしたものです。音楽的な面以外にもレコードの買い方に多大な影響を受けたと思います。
「INSTANT CYTRON / Adventure monsters」は本当に大好きで未だにDJでも使うし、自分がDJでかけた中でも1番使っている曲です。真似するという意味ではなくですが、こんな曲を一生に一度でも書いてみたい、と思っている曲で、端的にいえば聴いた人は全員が好きになる曲だと僕は信じて疑わないので言葉にならないです。言葉はいらない、というか。選曲したプレイリストを聴いて貰えばわかりやすいと思うのですが、音はちゃんと(当時の)新譜の音なのに旧譜と混ぜても違和感がない、でもやっぱり新譜の音という。曲やアレンジの素晴らしさもさることながら、僕が理想とするミックス(音像)を当時から既にやられているという、全方向に魅力のある曲です。この辺りは僕が作編曲家での仕事の際、指針にしているくらい、多大な影響を受けています。
インスタント・シトロンといえば名曲「STILL BE SHINE」がありますが、現在カノサレ(旧ユニット名・彼女のサーブ&レシーブ)が歌い継いでいます。そして、カノサレといえば名曲「Cheerio!」はDJで僕は必ずと言っていいほど使いますし、シトロン結成初期に制作されていた楽曲です。
こういう音楽の世界観を持ったアイドルもいるので、WebVANDA読者さんでアイドル聞かず嫌いな方がいらっしゃいましたら、それは勿体無いので、よかったらアイドル楽曲にも触れてみて下さい。

『VANDA 18号Soft Rock AtoZ大辞典』 吉田哲人 プレイリスト

●熱心なVANDA誌の読者だったようですね。現在の音楽活動に少なからず影響を与えていれば、弊誌創刊者の佐野邦彦氏や当時の関係者も喜んでいると思います。
それで赤い鳥ですが、確かにその高い音楽性とは裏腹に過小評価されていますね。シングル『竹田の子守唄/翼をください』(1971年)はミリオン・ヒットとなり、「翼をください」は後世に残る名曲になった訳ですが、同曲作曲者でプロデューサーの村井邦彦氏は、彼らを和製フィフス・ディメンションにしたかったんでしょう。それが70年初頭の日本では広く受け入れられる土壌がなく、早過ぎたと言えます。 
様々な考え方があると思うけど、所謂ソフトロックというのは、60年代中頃から70年代前半の当時の欧米産ポップスの一つのモードなんですね。複雑なコーラスと豊かなオーケストレーションを施したサウンドは、先進国で社会経済状態が高く、文化的水準も成熟しないと受け入れられない。だから当時日本では一部でしか認知されなかった。高度成長期からオイルショックを挟んで社会の経済状態が平均化していった70年後半になってやっと、赤い鳥解散後に5名の内3名で結成されたHi-Fi Setや、村井氏のアルファレコード絡みではサーカスといった、洗練されたサウンドを持つコーラス・グループがヒットしていくんです。
その後80年代後半から90年代初頭の音楽フィジカルの変革期、アナログからCDに移行した時期に多くの過去アーカイブが再発見されます。
再評価された中に赤い鳥の『WHAT A BEAUTIFUL WORLD』も含まれていたんだろうと思います。推されている「Love Him」は、ほぼ無名の英国人シンガー・ソングライターのピーター・ランサムのソングライティングですが、バカラックの「Do You Know the Way to San Jose」に通じるボサノヴァのリズムを基調とするジョン・フィディによるアレンジが効いていると思います。主にロンドンのエア・スタジオでレコーディングされたこのアルバムは、村井氏と知己のあるプロデューサーのジャック・ウィンズレーのコネクションでしょうね。

INSTANT CYTRONのメンバーは、世代的に音楽フィジカルの変革期に青春時代を送って、かなりのマニアになった方々ですよね。渋谷系のメインストリームには属していませんが、ソフトロック・リバイバルに貢献したと思います。推されている「Adventure monsters」(『CHEERFUL MONSTERS』収録/1997年)は、曲の骨格は東海岸と西海岸ポップスがよくブレンドされていて、The Brady Bunchなどチルドレン・ソフトロック系コーラスが被さっている隠れた名曲です。
初期メンバーの松尾宗能氏と片岡知子さんがカノサレに提供した「Cheerio!」は私も好きで、以前SNSでも指摘しましたがローラ・ニーロのソングライティングの影響下にある名曲ですね。

プレイリストの洋楽では2曲挙げたサークルやカーニバルから、フルーティストでマルチプレイヤーのJeff Afdemが率いたSpringfield Rifleやアラン・コープランド・コンスピレイシーというマニックなグループの曲まで選んでいますね。またブラジリアン・コーラス・グループのトリオ・テルヌーラも気になります。これらの曲への思い入れも語って下さい。

◎吉田:サークルの2曲は僕が影響を受けている曲です。「Turn-Down Day」はサビのベースライン、特に「デレレレデレレレ(DFAFDFAF)」というフレーズは僕のテンポが早い曲によく登場します。
「It Doesn’t Matter Anymore」は、Capsule中田君から『contemode V.A.2』への参加を打診されたときに、どんな曲作ろうかと考えながらプリプロ・スタジオにあったアップライト・ピアノで何となくこの曲のコードを弾いていたらメロディが浮かんできて、それが「キーファー・サザーランドみたいな奴」となりました。コード進行とピアノの左手の方に影響が残っています。『On The Frip Side』が初出ですが、やはりサークルの方が最初に聴いた(手に入りやすかった)のもありますし、影響大です。
「Hope / The Carnival」はイントロから心掴まれますが、サビのオルガンのグリッサンドが特に最高!DJの時はエア・オルガンしているくらいです。皆さんもエア・オルガンをやる際はグリッサンドしている箇所としてない箇所をきちんと覚えてやってみて下さいね(笑)。アルバムには「Love So Fine」も収録されていて、割とみんなはそっちを選ぶけれども、僕は断然Hope!
「That’s All I Really Need / Springfield Rifle」はソフトロックが好きになったあと東京に遊びに行ったときに、当時、ファイヤー通りに面した建物の2階にあったHi-Fi Record Storeに初めて行った時に教えてもらって買ったレコードの内の一枚です。その時はソフトロックの他にもAORを教えてもらって、それまで聞かず嫌いだったAORはこんなにも魅力ある(ビジュアル除く)ジャンルだったのか!と視野が広がりました。この曲は配った僕のミックスCDにも入れた記憶があります。
「Frenesi / The Alan Copeland Conspiracy」も、よくDJでかけました。この曲は僕がアルバイトで働いたことがある、かつて大阪心斎橋アメリカ村にあり、現在はネット店舗になっている中古レコード屋Siesta Recordで買いました。Siesta Recordは大好きなお店でして、通い始めた頃は雑居ビルのワンフロアをいくつかに区切った(他の店は中古レコード店ではない)中にあって、小さいながらに良いレコードだらけという夢のようなお店でした。
この曲が収録されているアルバムはHi-Fi Record Store監修の『フィンガー・スナッピン・ミュージック』シリーズで世界初CD化されました。そのCDの解説を僕が書いているとかいないとか…(小声)。

『SOFT ROCK The Ultimate!』

僕とVANDAといえば、そう、トリオ・テヌルーラだね。って事情を知らない人からしたら何のこっちゃ分からないと思いますが、2000年頃にキップソーンの中塚武君が、『SOFT ROCK The Ultimate!』(Soft Rock A to Zシリーズ/2002年)でのウチさんのインタビューに答えて紹介していた、『Trio Ternura / same』は、僕がDJでかけていたのを中塚君が聴いて気に入ったようで、見かけたら買っておいてとその場で頼まれました。その後、僕はもう一枚を見つけ、彼に譲ったものが紹介された、という逸話があるレコードです。インタビュー中に僕の名前も出ていましたね。「Sempre Exite Alguem」がそのときにDJでかけていた曲です


●幣サイトのカラーとは異なりますが、アシッド/テクノ系サイドのアルバム『The World Won’t Listen』についてお聞かせください。 
レディメイド時代も含めポップスをマニアックに聴かれていたと思いますが、その対極になるミニマルなテクノ・ミュージックを好むようになって、自ら制作された理由はなんでしょうか? 


『The World Won’t Listen』
 
The World Won’t Listen』トレーラー

◎吉田:高校2年生の頃に曲を作り始めたのですが、その頃は電気グルーヴの影響もあり、作るものはテクノ志向でした。ですので、どちらかといえば原点回帰の方向性がテクノ、といえます。また、マニピュレーター時代はサンプリングを使用することも多かったのですが、その制作法は今後通用しなくなるだろうと当時から常々感じていたので、辞めた後はコードなり楽器の演奏なりを一から自分で構築する制作スタイルにするために最も馴染みのあるテクノで、となりました。あと、マニピュ仕事やアレンジ仕事などの派手な、いわゆる業界仕事に嫌気がさしていたのでポップスから離れ、独りで完結させるストイックなアーティストになりたかったのも当時ありました。

●こちらのアルバムの曲作りやアレンジ、レコーディング中の特筆すべきエピソードを聞かせて下さい。

◎吉田:このアルバムの楽曲の1番新しい曲でも10年以上経っている曲なので、ぼんやりとしている部分もあるのですが、マニピュ時代はレコードに頼っていたところがあり、どこか罪悪感というか、自分は借り物だ、偽物だという思いが消えず、現状をなんとか打破せねばと思っていたのですが、マニピュをやっている限りは時間も取れず、そういった中で派手にコード展開や装飾が施されるポップスの世界での挫折感もあったため、最後の方はすっかり自信がなくなっていました。辞めた後は、まずは基礎からやり直しと思い、1小節だけをきちんと作っていき少ない素材でいかに展開していくかを再学習し、それが2小節になり4になりと、曲の世界を広げていければポップスもまた作れる様になる。最低限、16小節良いのが出来ればCM仕事にも繋がるだろう、と思っていたのを覚えています。まあその考えが、後に一度引退を決める2012年のクリスマス・イヴを招いてしまう訳ですが。
『The Summing Up』収録の「昔も今も」(これもサマセット・モームのタイトルより引用)、実は『The World Won’t Listen』収録楽曲が作られていた頃の曲ですが、アンビエントな元のデータを活かしつつリアレンジした曲で、CD収録バージョンは人によって、The High Llamasぽく感じたりTanzmuzikっぽく感じたりするかもしれないのですが、思い返してみると当時、真剣にテクノな曲を作ってはいたものの『The World Won’t Listen』収録曲の大半を俯瞰で見た(聞いた)とき、どこかで結局、自分は(楽曲構造上は)ポップスの人なんだなあと、テクノを作っているつもりでもここはイントロ、ここはAみたいな構成を意識してしまっている自分に気がつき、半諦めの様なものを抱えながら「昔も今も」を作ったように記憶しています。
また、アルバム全体的に見ると声が入っている楽曲が割りと多く、そのことからも割と最初から心の底では意外とポップスを作りたかったのかな、と、今となっては思います。 『The World Won’t Listen』は元々仮タイトル『Deep Purple』としたアルバム収録曲を中心に構成されている(詳しくはCDのライナーノーツ参照のこと)のですが、そのアルバムは発売中止(放棄)を二度も喰らいました。発売中止は当然心に傷を受けてしまうのですが、制作中にポップスの人だと意識したことで自分が出来ることと出来ないことは少し見えたので、その点だけは経験として良かったように思います。
そして、ポップスの人だと気づいたとき、テクノ・テイストのアルバムを出した後に所謂テクノポップな作風という訳でなく、レディメイド時代のような古いレコードが好きな人が作るポップスのアルバムも作り、その両方の作風が作れるアーティスト路線という考えも芽生えましたが、2000年代はジャンルの壁がまだ高かったのか、ポップスとテクノを融合させずに別々に、同時にその両方をやる人、また、それをする事を理解してくれる人(レーベル)は周りにはいませんでした。別々のジャンルを別々のまま同一人物がやるのではなく、それらを融合させようとするのがアーティストの姿勢として当然だ、みたいな時代の空気があったんでしょうか…。今の若い人はいろんなジャンルをやる事も普通ですが、当時、僕のように両方をやろうとするのは、ストイックになれずに、どちらも選べない中途半端な人のように思われていた節があります。時代と合ってなかったんですね。駄目な僕、I Just Wasn’t Made For These Timesって感じ。。。

現在、僕の作品がリリースされる時によく使われる「アシッドからソフトロックまで」というフレーズは、僕が楽曲提供した「竹達彩奈/マシュマロ」「チームしゃちほこ/いいくらし」(発売時期は違うが制作開始はほぼ同時期)を並べて称してくれた、ある友人の言葉から頂いているのですが、僕自身が自己の作品では2012年末に完全に諦めた(この辺りもCDのライナー参照のこと)構想的なものを、翌年(2013年)にアイドルに楽曲提供という形で実現できた事は嬉しくもあり、また、色々な意味で運命的なものを感じたりもしました。
あまりDisc2について話をしておりませんが、自分にはこれらの曲があるから商業音楽の世界を目指せた、と思っているくらい思い入れがあります。特に「Cosmic Soul」という曲は作った19歳のときに「これを超える曲は出来ないや。」とある種の到達点と感じた曲です。そこから違う音楽性を求めて現在に至ったんだな、と。
そういえばDisc2収録楽曲の制作時は相方がいた時期があったのですが、ある日、僕が「こういうのを作りたいんだよ。」と言って『The Beach Boys / Smile』の海賊盤を聴かせたところ「全然わからない。これの何を指して、何を言いたいのかやりたいのかもわからない。」って言われてガッカリしたのを思い出しました…。

●かなり本音を語られていますが、業界仕事としてポップスに深くかかわったことに嫌気がさして、そこから離れてテクノ系楽曲を制作している過程で、“ポップスの人”だと気づいてしまったという下りが、吉田さんの音楽職人としての人生を象徴していて、実にドラマティックでした。極端に表現すると『猿の惑星』(1968年)のエンディングで、核戦争で朽ち果てた自由の女神像を目にして愕然とするテイラー大佐というか(笑)。避けていた人類の愚かさにより荒廃した故郷に、図らずも回帰していたという。 まあ音楽クリエイターをしていて、大いに悩んだ時期があったというのは、ブライアン・ウィルソン・シンドロームなのかも知れませんね?


◎吉田:本音を話す機会、特に僕のプロフィールにみられる制作物の空白期間(2008〜2012年)の話をする機会は今までなかったのでガンガン話しちゃっていますね(笑)。確かにブライアン・ウィルソン・シンドロームと言えると思いますし、また僕の場合、一般的な作曲家の方の半生と少し違っていて、音楽業界でのキャリアは、選曲解説を担当したコンピ・テクノ歌謡シリーズ(P-Vine / 1999年)が最初で、その後マニピュレーター、編曲家、 CM/TVのBGM的な作曲家を経て、2013年からようやく一般的な作編曲家として名乗っていい成果が出始めるので、該当するブライアン・ウィルソン・シンドローム期は、人生で初めて自身のアーティスト性とはどういうものなのか、と突き詰めていた時期だったゆえ、だったのかなと感じています。

●では最後に本作『The Summing Up』と『The World Won’t Listen』のアピールをお願いします。

◎吉田:書き散らかした楽曲を集めて自ら歌った『The Summing Up』で自分がどういう人間なのか、歌声もふくめ初めて俯瞰で見られた気がします。ただ、ポップス面だけがクローズ・アップされるとそれはそれで、なんか違う!と悩んでいたのですが、それは『The World Won’t Listen』収録曲を作っているときも同様で「これでテクノ・アーティストとしてだけ見られてしまったら、これからの人生、果たしていいのだろうか…?」と感じていました。この2枚(同時購入特典の『Another of The World Won’t Listen』を含めると3枚)を同時に発売することで、自分はこういう人間だ、と初めて対外的に見てもらえるようになりました。
また、僕がやっていることはNEO NEW MUSICなのだ、と他の人が言われて「ひとめぐり」「光の惑星」「ムーンライト・Tokyo」が並んでいるのをみたとき、それらのシングルはパロディジャケットというのもあり、ニュー・ミュージックの現代版がやりたいのかな?シティ・ポップの言い換えかな?みたいに思われていたかも知れないですが、今回のアルバム(特典CD含む)3枚で、NEO NEW MUSICとはなんぞや、というのをビジュアル面と音楽面で伝えられる作品になっていると自負しております。単にニュー・ミュージックの焼き直しではない、という。その為に3種類同時に出す意味がありました。48歳とずいぶん遅咲きですが、この歳まで粘って良かったと思います。成熟と初々しさが同居する不思議なアルバムとなっていますので、出来ればどちらも購入して頂きたいのですが、各々の音楽的嗜好があると思いますから、どちらかでも構いませんので良かったら手に取って頂けると嬉しいです。
どちらのアルバムもサブスク配信はしばらくございませんので。


【吉田哲人ライブ情報】

11/26に、中野heavysick ZEROにて
『ROMANTIC TECHNOLOGY 96 ~10th Anniversary Party~』。
こちらはテクノのライブ・イベントです。

ROMANTIC TECHNOLOGY 96 
10th Anniversary Party 
2023.11.26(日) 
中野heavysick ZERO
OPEN&START 16:0
ご予約¥3500(1ドリンク別) 
当日券¥3800(1ドリンク別) 

-LIVE- 
おわりからはじまり
吉田哲人
Sigh Society、Cherryboy Function、アシッド田宮三四郎
Mitaka Sound、サトウトモミ、inko、CrazyRomantic

 -DJ- 
サカエ コーヘイ、FQTQ、本間本願寺、
Kamaida Negami、Cyte、mukuro-jima

−VJ−
PORTASOUNDS、4DK

-FOOD-
ラブエイジア四ツ谷



そしてリリース・ライブ・イベントが12/3に、神保町試聴室にて 
『吉田哲人”The Summing Up”発売記念ライブ』です。
ゲストにインスタント・シトロンの長瀬五郎さん、カノサレ、Hau.、
ユメトコスメという豪華キャストをお招きして開催いたします。

吉田哲人「The Summing Up」発売記念ライブ
2023.12.3(日) 
神保町試聴室
 OPEN 16:00 / START 16:30 
予約 3500円 / 当日 4000円
(1ドリンク, スナック込)

出演:
吉田哲人
カノサレ、長瀬五郎(INSTANT CYTRON)、
Hau.、ユメトコスメ



12/8にはファロ大學 芸術学部 講座『ラフからフィニッシュまで』
というイベント講座で、「曲、そしてアルバムづくり編」と題し、
アルバムのあれこれをトーク致します。

ファロ大學 芸術学部 講座『ラフからフィニッシュまで』
「曲、そしてアルバムづくり編」
珈琲 FALO
2023.12.8(日) START 19:00
聴講料:2,500円

講師:吉田哲人/作編曲家



(インタビュー設問作成、本編テキスト:ウチタカヒデ