2004年12月28日火曜日

☆Brian Wilson:「Good Vibrations/In Blue Hawaii (Instrumental)」(Nonesuch/NS001CD)


Smile」から初の CD シングルがこれだ。(先の "Wonderful" はアナログ限定シングル)
まず "Good Vibrations" は少し手が加えられていて、イントロに短い "Our Prayer" が入り、最後のキーがそのまま "Good Vibrations" のイントロになるという洒落た編集がされていた。
"In Blue Hawaii(Instrumental)" はカラオケ。
冒頭のアカペラ状態の "Water" のパートは同じキーのバッキングが鳴り続けていてちょっと不思議な感じ、続いて "I Love To Say Da Da" になると、もうビーチ・ボーイズ版でもお馴染みだったリードメロディのないヴァージョンになる。
「Smile」のハイライトの1曲なので、これは嬉しい収録、カラオケは都合6曲となった。
(佐野)
  

                                  

2004年12月27日月曜日

☆Brian Wilson:「On A Holiday/Roll Plymouth Rock (Instrumental)」(Endless Summer Quarterly)


数あるビーチ・ボーイズのファンジンの中でも最高のクオリティを誇る Endless Summer Quarterly200411月号(月刊ではない) "Special Smile Issue" ということで、ブライアン・ウィルソン、ヴァン・ダイク・パークスへのインタビューが掲載されていた。
 ブライアンの全曲コメントなど興味深いが、一番のポイントは付属の2曲入り CD である。
どちらも「Smile」からのカットで、1曲目の "On A Hiliday" は同じものだが2曲目の "Roll Plymouth Rock(Instrumental)" はタイトルのとおりカラオケ・ヴァージョン。
 これは先に紹介した LP にも収録されなかった初登場のテイクでこれは貴重だ。オケだけで聴くとまさにブートで聴きまくったビーチ・ボーイズの「Smile」で、逆に新鮮に聴こえてしまった。
 ジャケットもイメージを統一していてさすがである。このジャケットもそうだが、何枚も満面の笑みをたたえたブライアンの写真が何枚もあり、少し前のひき つった笑いしか見られなかったブライアンの順調な回復が感じられて、嬉しい気持ちになってしまった。
 購入は$35を国際郵便為替で Endless Summer Quarterly:P.O.Box 470315,Charlotte,NC 28247 USAまで。これで3号分送られてくる。(佐野)

2004年12月25日土曜日

Radio VANDA 第 57 回選曲リスト(2005/01/06)

Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。
Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 毎月第一木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。



特集Pete Townshend

1. Day Of Silence ('70)
2. Begin The Beguine ('70)
3. Sleeping Dog ('76)
4. My Baby Gives It Away ('77)
5. Rough Boys ('80)
6. Let My Love Open The Door ('80)
7. Classified ('73)
8. Uniform ('82)
9. Pinball Wizard ('78) ...
The Second Movement』収録
10. Ascension Two ('82) ...
The Best Of Music And Rhythm』収録
11. I Believe My Own Eyes ('93) ...
ミュージカル『Tommy』用書き下ろし
12. Was There Life ('89)

 

2004年12月16日木曜日

☆Simon & Garfunkel:『Old Friends Live On Stage (Deluxe Edition)』 (Warner Bros./48967-2) DVD/2CD

2003年12月のサイモン&ガーファンクルの再結成ツアーを収録した DVD 。
実はこのデラックス・エディションは CD 2枚も付いた3枚組なのだが、 DVD は CD ではカットされた "Keep The Customer Satisfied" や "The 59th Street Bridge Song" とゲスト出演のエヴァリー・ブラザースの2曲も多く収録されたいたため CD はオマケと言ってもよく、 DVD と呼ぶことにした。それでいてアマゾンで2707円なのだから安い!
   DVD はツアーのハイライトとなったニューヨークのマディソン・スクウェア・ガーデンとニュージャージーのステージを中心に構成したもので、剥げ頭に近くなったポール・サイモンと、年をとってバック・トゥ・ザ・フューチャーのドクのような風貌になったアート・ガーファンクルの二人の姿にまず驚かされた。
しかし冒頭が "Old Friends/Bookends" だよ。歌は70歳の旧友を歌っているが、今の二人は62歳、そう、もう歌を書いてから35年も経っていたんだね。いつの間にか、歌の世界と同じになっていた二人。歌は時代を超え、歌を愛する人に囲まれ、こうして二人は万雷の拍手の中で歌ったんだ。なんて素晴らしい旧友なんだろう。もう冒頭だけで泣けてしまった。
彼らが存在していた1970年の時は私は中一だった。ビートルズが好きな私、ローリング・ストーンズが好きなThe Sidewinderこと中原寧君、そしてサイモン&ガーファンクルが好きな坂本君は、よく渋谷の坂本君の家に集まってはレコードを順にかけて聴いていたものだ。
当時は「~派」のような壁があって、なかなかお互いの好きなものをストレートにほめにくかったものだが、私はどれもみな好きでひそかにレコードを買っていた。そんな坂本君は親の跡を継いで医者になったが、若くして病気で亡くなってしまった。23年ぶりにサイモン&ガーファンクルが集まってアルバムも出したよ、そんな事を坂本君に知らせたくて。少し余計な事を書いてしまいました。
アート・ガーファンクルの声は僅かにかすれているが、やはり天使の声だ。ポール・サイモンの歌に最も映える。披露された S&G の26曲はどれも名曲揃いで、曲の力だけでも感動したが、当時のアメリカの理想と希望、矛盾と絶望を描いた歌を聴きながら、今のアメリカをこんな視点で描けるミュージシャンがいるのだろうかと、ふと思ってしまった。
ボーナス映像は70年のTV『Songs Of America』からの6 曲が楽しめる。 "Bridge Over Troubled Water" , "The 59th Street Bridge Song" はリハーサル、ライブでは "Mrs.Robinson" , "The Sound Of Silence" , "For Emily,Whenever I May Find Her" はフル、 "Homeward Bound" , "The Boxer" は一部が見られ、貴重な当時の映像に釘付けになってしまった。
特に "For Emily~" でのポールのギターの上手さとアートの歌の美しさが印象的だし、また歌詞の違う "The Boxer" の一部も必見。
とにかく迷わずこの DVD を買いましょう。(佐野)   

                                 

2004年12月11日土曜日

☆Pete Townshend:『Live Brixton Academy '85』 (eelpie.com/EPRO20)☆http://thumbs.ebaystatic.com/images/g/g7cAAOSwzgRWyQVJ/s-l225.jpg』(eelpie.com/EPRO19) DVD


前者はネット通販オンリーのピート・タウンゼンドのライブ CD の最新版だが、過去の5種より圧倒的に古い85年のライブが登場した。ちょうど『White City』をリリースし、ギターにデイヴ・ギルモアを迎えたDeep Endでのライブなので、バンド形式のパワフルなライブが堪能できる。
CD 2枚組、約140分のライブは圧巻だ。
後者はピートが心酔するインドの導師、ミハー・ババの組織のために制作された DVD 。
箱入りでNTSCとPALが表裏になったマルチな仕様、なるほどいい作りだが、内容はキツイ。スーパーマリオのようなジジイの顔をこれでもかと見せられ、うんざりさせられる。
そんな苦行もすべてはここでしか聴けない72年のピートのインドでの生ギター1本での弾き語りライブのためにある。
フーの "Bargain" とカントリー・タッチの " Time Passes" が初登場。以前パソコン用の画像でしか見られなかった8分を超えるライブの "O Parvardigar" が音声に付いたミハー・ババの映像集も DVD でたっぷりと見られるが、有り難た迷惑といった所だろう。
気になるのはタイトルの "第1集"。これでもう勘弁して欲しいものだ。(佐野)


2004年11月25日木曜日

Radio VANDA 第 56 回選曲リスト(2004/12/02)

Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。

Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 毎月第一木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。


特集Tony Burrows

1. I'll Give You Lovin' ('64) ... One And One

2. In A Moment Of Madness ('69) ... Flower Pot Men

3. Love Grows ('70) ... Edison Lighthouse

4. My Baby Loves Lovin' ('70) ... White Plains

5. Melanie Makes Me Smile ('70) ... Tony Burrows

6. Every Little Move She Makes ('70) ... Tony Burrows

7. The Humming Song ('72) ... Tony Burrows

8. Home Lovin' Man ('71) ... Tony Burrows

9. Take Me In Your Arms ('71) ... Edison Lighthouse

10. I'll Always Come Up Smiling ('71) ... Tony Burrows

11. Beach Baby ('74) ... First Class

12. When My Little Girl Is Smiling ('76) ... Tony Burrows

13. Look At Us ('76) ... Original Cast

14. Never Gonna Fall In Love ('76) ... Magic featuring Tony Burrows

15. In The Bad Bad Old Days ('71) ... Tony Burrows

 

2004年11月18日木曜日

☆Brian Wilson:『Smile』(Nonesuch/7559-79846-1) LP

延期に延期を重ね、ようやく「スマイル」のLPがリリースされた。
大きく3部になっていたアルバムは、2枚組LPの3面に振り分けられ、最後の1面に日本盤CDのボーナストラックに収録された "Heroes And Villains" と "Cabin Essence" のカラオケに加え、 "On A Holiday" と "Wind Chimes" のカラオケが収められていた。
この初登場の2曲のみ紹介するが、 "On A Holiday" のカラオケは、当然ながら我々が「スマイル」のブートでお馴染みのテイクそのものだった。
ほぼつながっている "Wind Chimes" は流れで入ったのだろう。シンプルながら、力強い後半部の音の抜けがいい。ファンなら是非、押さえておくべきアイテムだろう。
日本盤も1月にリリースされるが、こちらには更なるボーナスが付く可能性はないので、輸入盤で十分だろう。
(佐野)




☆Various:『宇野誠一郎作品集II』(ウルトラヴァイヴ/1099)☆Various:『http://ecx.images-amazon.com/images/I/513KQ9FH36L.jpg』(ウルトラヴァイヴ/1097-8


濱田高志さんが監修した宇野誠一郎の作品集の第2弾がリリースされた。
まず前者だが、「ムーミン」「ひょっこりひょうたん島」「ネコジャラ市の11人」「小さなバイキング・ビッケ」「チロリン村とくるみの木」といった有名なアニメ、人形劇のテーマを始め、「ブンとフン」のようなNHKこども番組の挿入歌も多く収められた。あの「アイアイ」も宇野作品だったとは。
個人的に気に入ったのは、企画物の高石ともやのアルバムの3曲。メロディとサウンドがいいし、宇野作品を完全に理解した歌が何よりも素晴らしい。

後者はアニメの「アンデルセン物語」が放送した当時にリリースされたこの CD と同タイトルのアルバムに、劇場版の4曲や EP のみの収録の16曲を追加した2枚組43曲の仕様だった。どちらの CD にも言えることだが、宇野作品はコメディ・タッチのものが多く、リズムが複雑で、パーカッションや擬声が入るものも多い。
しかしそこが宇野、途中でサラリとふくよかなストリングスを入れ、一気に心を奪ってしまう。
暖かく、懐かしく、人の心の琴線に触れるメロディを書けるのが宇野マジックだ。
(佐野)

☆Beatles:『The Capitol Album Vol.1』 (EMI/8-66878-2)

 ビートルズ委員会の約束事はどこへやら、収録曲を少なくしてアルバムも多く出そうとしたキャピトル・レコード独自編集のビートルズのアメリカ盤アルバムが、ボックス・セットでリイシューされた。
今回は『Meet The Beatles』『The Beatles' Second Album』『Something New』『Beatles'65』の4枚。このボックスを買ったのはひとえにステレオとモノがどちらも収められているその仕様だった。 "Thank You Girl" のステレオは、モノのシングルに比べてコーラスの代わりにハーモニカが入っているという顕著な違いがあるため、『The Beatles' Second Album』で聴き比べてみたら、モノにもハーモニカが入っていて、違いがあるのはシングル・ヴァージョンだけと分かった。ただしステレオは全面エコー。
そして『Something New』の "Any Time At All" のモノでは間奏のピアノがほとんど聴こえない、 "And I Love Her" のモノのリード・ヴォーカルは基本的にシングル・トラック、さらに "Komm,Gib Mir Deine Hand" にはステレオ・ヴァージョンが入っていると分かったし、『Beatles'65』の "I Feel Fine" と "She's A Woman" にはやたらにエコーがかけられてると、ビートルズ・フリークには当たり前のことかもしれないが、違いを感じながら楽しく聴かせてもらった。
次も楽しみ。(佐野)
       
beatles                             

☆Various:『Saturday Night Live 25 Years Of Music』(NBC/VM8416D) DVD

NBC ネット・ワークの人気番組「サタデー・ナイト・ライブ」の1975年から2000年までのパフォーマンスを集めた5枚組の DVD 。
この出演したミュージシャンのライブと、コメディのシーンが交互に収められているが、この番組が素晴らしいのは演奏が完全なライブであること。生演奏が見られるのでとても楽しい。
順に紹介すると出演者はサイモン&ガーファンクル、カーリー・サイモン、ミック・ジャガー、バンド、クイーン、ランディ・ニューマン、トーキング・ヘッズ、ニール・ヤング、ロイ・オービソン、バングルス、スティング、エルヴィス・コステロ、マドンナ、エリック・クラプトン、ポール・マッカートニーなど、計57アーティストの57曲。
76年のユニークな組み合わせのミック・ジャガー&ピーター・トッシュの "Don't Look Back" は、トッシュにからむミック独特のステージングが楽しいし、89年のニール・ヤングの "Rockin' In The Free World" は迫力満点のロックンロールでカッコいいことこの上ない。
93年のポール・マッカートニーがビートルズ時代を彷彿とさせるような正当派の歌と演奏を見せれば、92年のマドンナはエロッティックなプロモビデオ(確か放送禁止になった "Justify My Love" )と同じシュチューションにコメディアンを誘ってベッドでなまめかしい姿を見せてくれる。
もちろん爆笑もの。
また生と言うことで、ゴーゴーズの "We Got The Beat" は、イカ天を見ているようなレベルで実に微笑ましかった。その点、88年のバングルスの "Hazy Shade Of Winter" の方が腕が上だったな。おまけにスザンナ・ホフスが可愛いし。
その中でもベストは75年のサイモン&ガーファンクルの "The Boxer" 。伴奏はポールのギター1本だが、美しいハーモニーはシンプルな方が生きてくる。知的な二人が歌う知的な歌詞のこの歌は、まさに感動ものだった。
輸入盤はなんと7000円を切る価格なので、絶対のおすすめ。
(佐野)
  

     
                             

☆Various:『LIVE AID』 (ワーナー/WPBR-90451-4) DVD

 ライブ・エイドとは1985年7月13日に行われた、米英をつなげたチャリティのコンサートである。深刻な飢饉で3000万人が苦しみ、餓死者が続出した西アフリカの窮状を見たブームタウン・ラッツのボブ・ゲドルフが、ミュージシャン達に声をかけ、実現した奇跡のコンサートだった。

ポール・マッカートニー、フー、ミック・ジャガー、ニール・ヤング、クイーン、エリック・クラプトン、エルトン・ジョン、デビッド・ボウイ、U2、ビーチ・ボーイズ、CS&N、マドンナ、ボブ・ディラン、キース・リチャーズ、そしてレッド・ツェッペリンなど、米英のスーパー・スターが、ノー・ギャラで集まり、ウェンブリーとフィラデルフィアで1日をかけてコンサートを行った。
まさに未曾有の規模で、この後に多くのチャリティ・コンサートが行われているが、ライブ・エイドのスケールを越えたものは一つもない。
当時日本でも1日かけて放送され、私もベータの3時間テープ5本で録画したが、CMが曲の間でもバンバン入り放送自体は悪評紛々、未だに見かえした事がなかった。
それが約20年経って、放置されていたテープを集めて DVD として不完全ながらなんとか復活したのである。勢いのあるクイーンの印象的なパフォーマンス、異常に太ったスティルスとクロスビーを見て唖然としたこと、ミック・ジャガーとデビッド・ボウイが頭を突き合わせて踊りながら歌う "Dancing In The Street" を見てすっかり気に入りシングル盤をすぐに買いにいったことなど、昨日の出来事のように思い出された。
そして改めて見ると、だいぶ崩して歌っていたポール・マッカートニーの "Let It Be" では、途中からピート・タウンゼンドらがコーラスで参加し、途中でピートがポールをくすぐる真似をしたり、最後ではポールとピートがボブ・ゲドルフを肩車したりと、実に微笑ましい映像だった。
フーは放送機器の故障で2曲しか残っていなかったが、 "Love Reign O'er Me" でのロジャーの熱唱、 "Won't Get Fooled Again" でのピートのど派手なステージ・アクションなど、やはり20年前は若い!
ビーチ・ボーイズはアルバム「The Beach Boys」で復活したばかりのスリムなブライアンが印象的で、デニスを欠いているものの、フル・メンバーが揃って "Wouldn't It Be Nice" , "Good Vibrations" , "Surfin' USA" の3曲を披露していた。及第点の出来だ。
まったく自然なニール・ヤングの姿はいかにもニールだし、 "State Of Shock" ~ "It's Only Rock'n' Roll" でのミック・ジャガーとティナ・ターナーのくねくねと絡み合うセクシーなステージは、これもいかにもこの2人らしくて最高!
演奏も、歌も、ステージ・アクションも、どのミュージシャンも手を抜いていないのが素晴らしい。なおジョン・ボーナムのいないレッド・ツェッペリンは、本人達の希望で収録されていない。
DVD 4枚組、 110曲で約8000円(日本盤。amazonで)は安い。(佐野)
      

Live Aid [DVD] [Import]
                              

2004年11月13日土曜日

Saigenji:『Innocencia』 (HAPPINESS RECORDS/HRAD-00001) 山上一美インタビュー



デビュー時からその圧倒的なライヴ・パフォーマンスで多くのファンを魅了しているsaigenjiのサード・アルバムが届いた。年一ペースのコンスタントなリリースは、彼の底知れぬ創造力を物語っているかの様で非常に頼もしい。
今回はオリジナリティ溢れる書き下ろしの10曲とカバー曲2曲(S・ワンダー作含む)で構成されており、前2作と同様に聴き応えは抜群に良いのだ。既に彼特有のソングライティング・センスは曲毎に独立した個性を確立しており、アルバムを重ねる毎に各々のタイプが成熟されている事がよく分かる。

ここでは前作のレコーディングやライヴまで彼のサウンドでは欠かせない存在となった、サックス、フルート奏者の山上一美を迎えてレコーディングの様子などを聞きながら本作の魅力を紹介してみたい。
因みに山上はメンバーであるカセットコンロスの活動とは別に、ハナレグミ、アン・サリー、 Dois Mapas等多くのレコーディングで定評のある実力派セッション・プレイヤーとしても知られる。

(山上一美:以下括弧内同じ)「先ずアルバムタイトルになっている「Innocencia」。この曲をはじめて聞かせてもらった時にsaigenjiが「ちょっとラテンぽい曲が出来たんだけど、、」って聞かせてもらったんです。 「えっ!ラテン!?じゃあ他の曲は何ていうの?」という素朴な発言をしちゃったんですが(笑)、曲を聴いて納得でした。私のフルートと島裕介君(RICO、ego-wrappin'等)のフリューゲルホーンが入ってます。島君のアレンジで2管のセクションになっています譜面を見つつ音を相談してっていう作業が凄く楽しかった。録音はホーン2人で一緒に録りました」 

「Innocencia」はこれまでのsaigenjiにしては珍しく、コンテンポラリーなラテンジャズ・テイストの曲だ。 山上が語るホーンアレンジも2管ならではという効果が感じられクールな雰囲気を醸し出し、丁度マーヴィン・ゲイの「Inner City Blues」に抱く感覚に近い。今後彼の新境地的サウンドとなる予感がする。 従来のブラジリアン・テイストな曲ではカーニバルのリズムを取り入れた軽快な「Frevo」、スパニッシュ風味で自らルーツ的サウンドと語る「azul azul verde azul」も美しく印象深い。 

「「Frevo」は2年位前からライヴでやっていましたFrevoっていうのはブラジル音楽のリズムのひとつなんですが2年前はそんな事知らないままに演奏していました。メロディを聴いた時全編ユニゾンしたら面白いだろうなって直感的に思ってピアニカで練習しました。saigenjiの曲の中でも大好きな曲の一つです。「azul azul verde azul」はメロディがとにかく美しくて。私ってサックスはずっとアルトを吹いてきて、他のサックスというのは全然ライヴで使ったことなかったのですが、ふと思い立ってソプラノをライヴで使ってみたら、自分にとっても馴染みがよく、しかも新鮮というちょっと不思議な距離感の楽器だったのですね。録音するにあたってsaigenjiから「ソプラノで」というリクエストがあったのです。鳥とか、雲とか、空に浮いているものをイメージしながら吹きました。 この曲はダイレクトに私の右脳を刺激する感じなので、色んな風景が浮かんでくるのです」

このコメントは本作が、山上をはじめ感性豊かなセッション・プレイヤーの演奏で支えられている事を証明する興味深いエピソードといえよう。saigenjiサウンドに関わる事で各ミュージシャンは強く刺激され、潜在的演奏能力を更に引き出せるという訳だ。 今回の基本メンバーは、これまでの豊富なセッション・ワークを器用にこなしていたメンバーから、彼と同世代や若い世代になったという事もあり、良い意味で一緒に冒険出来たという感じがする。彼の人となりから繋がったミュージシャンの輪がセッションにも色濃く反映されたという事ではないだろうか。

「私は2ndからの参加ですが、彼が1stを作っている頃は知り合いではあったけど、一緒に演奏というのはしてなかったんです。1stをリリースする位のタイミングから徐々に一緒に演奏をする様になりました。それからライヴを重ねてきて、一緒に2ndの録音をさせてもらうという流れになった様な気がしています。 今回のメンバーについても同じ様に2nd以降から彼が一緒に演奏をする様になったメンバーという意味合いが強いのではないかと思います。録音のためにメンバーを集めたというわけではなく、彼の周りの人の輪を録音の場面にもってきたというイメージなのではないでしょうか。 彼が出会ったミュージシャンと曲ごとに写真を撮ったという感じなんでしょうか。正にアルバム!ですよね。 人の輪ということでいえば、素晴らしいミュージシャンは世の中に沢山居ても外国に住んでいたり、既に亡くなっていたり、年代的にあまりに離れていたりいたりと、一緒に演奏をするという機会がもてる人というのは相当限られているのではないかと思います。その意味でsaigenjiという人間と出会うきっかけがあって、彼の演奏から沢山のイマジネーションをかき立てられ、そして一緒に演奏をしている、という事をとても嬉しく思っています」

実に素晴らしいミュージシャンシップではないだろうか。多くを語るよりこの素晴らしさは聴かないと理解出来ないだろう。収録曲の最後を飾るブルース進行ファンクの「テレスコープ」には、そんなセッションの楽しさと創造性が輝いていて、生き生きとしたプレイが聴く者を惹き付けて離さないのだ。この曲で一際活躍するフリーフォームなサックス・プレイをしている山上が、最後にこのアルバムの魅力について付け加えてくれた。

「どの曲も素晴らしいと思うのです。日本語の歌は勿論スキャットの2曲、アカペラのフォルクローレや「Golden lady」等々益々カテゴライズ出来なくなった"saigenjiワールド"を隅々までご堪能あれ!! 今本当に色んな方向から音楽に取り組んでいる彼の姿があらわれていると思います。 saigenjiと周りのミュージシャン、アレンジャー達のセッションの雰囲気が楽しげに響いてくるのが私は大好きです。このアルバムを聴いて頂いたら是非ライヴに来られることをお薦めします! 来年のツアーには私も参加します。この曲達がライヴでどう生まれ変わるのか、ぜひ耳で、目で確かめにいらして下さい!」
(ウチタカヒデ)

2004年10月27日水曜日

クノシンジ:『オレンジジュース・グレープフルーツジュース』 (abcdefg*record/a-g023)














クノシンジは若干21歳という若さながら、豊かなソングライティング・センスを身につけた、ポップス系シンガーソングライターだ。過去の音楽的資産を大きく受け継ぎ、ポップスの持つドリーミーでバブルガムな世界観を現代的に表現した本作でデビューと相成った。 ここでは彼に行ったインタビューを絡めながら本作の魅力を紹介したい。

(クノシンジ:以下括弧内同じ)「僕がなぜ60~70年代のポップス、ロックに填っていったかというと、やはりビートルズとの出会いがきっかけです。その出会いもやはり父がビートルズのベストを持っていて、それを中学生の頃に聴いたからですね。ビートルズに行く前には、邦楽、とくにスピッツに填っていたんですが、並行してビートルズに填っていきました。丁度、ポールが『Flaming Pie』(97年)というアルバムを出したころで、確か発売日に買いに行きました(笑)」 

CDリイシューによる過去音源発掘でカタログ化された作品群を、クノの世代では普通にコンプリートで聴ける好環境で育ったといえる。そこからポップス・マニアへと成長したのは云うまでもない。 きっかけがビートルズだったというのが、結構後々のマニア心に影響していると思える。何故なら彼らはポピュラーミュージックの要素をほぼ網羅したといっても過言ではない程、多用なアイディアをサウンドに取り入れてしまったから。 筆者は収録曲の中でも「恋泥棒」に、ロジャー・ニコルスとのコンビで知られるポール・ウィリアムスの「Mornin' I'll Be Movin' On」(『Someday Man』収録曲)的な匂いを感じ取り、その辺りのシーンへの感心も聞いてみた。

「ここ1、2年前までは周りにも60~70年代のポップス好きは居ませんでしたので、ほぼ自分一人で突き詰めていきました。良くも悪くも、ここまでマニアになったのは多分好きな音楽以外に興味が少なく、さらに良い曲を作るという事に生活の大部分を費やしてきた結果だと思います。 「恋泥棒」はロジャニコを意識して作った曲だったりしますが、『Someday Man』は聴いたことがないです。ただロジャニコ・プロデュースっていうことで何か繋がりがあるのかもしれないですね。 コーラスに関しては、本当に感覚だけで作っているので、まだ何々風にとかいったことは出来ないんです。ただ思いついたコーラスラインを、2、3声でハモってるだけっていう。でも出来る事なら、というか今後はそういった名盤を徹底的に研究して、意識してアレンジ出来る様になりたいとかなり思っていますそれこそ日本で、完全に当時のソフトロックを消化した現代版ソフトロックをやって、且つそれが一般ポピュラリティーを持つ位なものを作りたいって思ってます」

周りに音楽仲間が少なかったのでコアに追求していった結果、シンガーソングライターなってしまったというのが面白い。ただそれだけ現代の若い世代は、音楽に興味を持てなくなってしまったという裏返しでもあるのだが・・・。 「恋泥棒」の他にもクノの曲には様々な音楽資産が見え隠れして面白い。例えば「君のお気に入り」にはクイーンからの影響を強く感じさせる。ギターの重ね方やソロの音色等はブライアン・メイをかなり意識しており、ブリテッシュロック・マニアの心を擽りそうだ。 一回り以上も下の世代であるクノの作品に惹かれるのは、これら嘗てのポップス、ロックへのオマージュが惜しみもなく表れているところなのかも知れない。 勿論、彼ならではの個性とアイディアのフィルターを通しているので、単なるオマージュで終わらせない努力にも注目したい。 何でも彼は、デビュー前からポスト小沢健二と称されている様だが、筆者はそれ以上の可能性を信じており、これを機にさらに大きく成長して欲しいと願っている。ともあれ作品毎の変化が楽しみになる、若く有望なアーティストに出会えた事を心より喜びたい。

 「「君のお気に入り」のギターは完璧にブライアン・メイを意識していますまだまだ甘いですが。いつかは完璧なオマージュを目指しています音色、ボイシング、フレージング。僕自身、誰かが誰かのオマージュをやっているのを聴いたとき、思わずニコってしちゃうのが好きですから聴いてもらった方に気づいてもらうのも、かなりの楽しみではあります(笑)。今回のアルバムを完成させて思ったのは、やっぱりまだ色んな部分が甘いなという事です。演奏や歌も勿論、こういった過去の音楽へのオマージュだったり、研究だったりが。これからは、よりソフトロックやジャズ等の研究をして自分の中に消化したいです。それでしっかりとしたアレンジ、コーラスワークを身につけた上で、更にポップで現代の人にも自然に伝わるモノを作るっていうのが、今後僕が目指すポップ・ミュージックです。今は既に制作意欲が高まってきているので、いろいろ研究しつつ出来るだけ早く新しい曲をリリースしたいとも思っています」
 (ウチタカヒデ)


2004年10月25日月曜日

Radio VANDA 第 55 回選曲リスト(2004/11/04)



Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。

Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 毎月第一木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。


特集the Beach Boys 版で聴く『SMILE

1. Our Prayer (Early Version)
2. Heroes And Villains (Alternate Version)
3. Heroes And Villains (Section)
4. Do You Like Worms
5. Barnyard
6. Barnyard = [Heroes And Villains(Demo)]
7. The Old Master Painter / You Are My Sunshine
8. Cabin Essence (Early Version)
9. Wonderful
10. Holidays = [Look]
11. Child Is Father Of The Man
12. Surf's Up (Early Version)
13. I'm In Great Shape = [Heroes And Villains(Demo)]
14. I Wanna Be Around / Friday Night
15. Vege-Tables
16. Vege-Tables [Smiley Smile]
17. Tones = [Tune X]
18. Wind Chimes
19. Wind Chimes [Smiley Smile]
20. Mrs.O'Leary's Cow = [Fire]
21. Water
22. I Love To Say Da Da
23. Good Vibrations (Early Version)

 

2004年10月7日木曜日

モダーン今夜:『青空とマント』 (MOTEL BLEU/MBR-007) 永山マキインタビュー



 昨年『赤い夜の足音』でデビューしたモダーン今夜から、約一年振りのセカンドアルバムが届いた。
 画家アンリ・ルソー作「眠れるジプシー女」の構図を思わせる印象的なジャケットからして期待が大いに持てるのだが、今回もメイン・ソングライターでヴォーカリストの永山マキの描く独特な詩世界に、複数のホーンプレイヤーとパーカッショニストにヴァイオリン奏者も含めた、濃厚なビッグバンド・アンサンブルが有機的に絡んでいく。
 ここでは前作を超え意欲溢れる作品に仕上がった本作について永山に聞いてみた。

 (永山マキ:以下括弧内同じ)「『赤い夜の足音』は、結成した当初につくった曲もあり、割といろんな要素がつまったアルバムだったんですが、今回の『青空とマント』は自分たちの方向性や世界観がより濃くなったと思います。相変わらずいろいろなリズムなんですが赤い夜~よりも、さらに一本筋が通ったというか。
とにかく歌いたいことが歌えたと思っています。
セカンドアルバムは「七つの歌」で構成されていますが、これは、ひとつひとつ、言葉を大切にしてつくりました。 楽曲の方はファーストの時よりも、タムと一緒につくったり、タムがアレンジしてくれたりと、タムの活躍がめまぐるしかったと思います。それがとてもいい形になってセカンドに表れたなぁと思っています。特に、「海の底」のアレンジはタムならではだと思います。 海にだんだん沈んでいく感じがうまく表れている。さすがです。 このような感じで、今回は一曲一曲、詩とともに情景が浮かぶような、紙芝居になっているのです」

  バンド内アレンジャーたるキーボーディストのタムは、前作以上に曲作りでも大きく貢献をしている。先行シングル「名犬ジョディー」やタイトル曲「青空とマント」ではマキとの共作となっているが、より完成度を高めるソングライティング・コラボレーションを生んでいるのだ。また各メンバーの演奏にも自信溢れる能動的プレイが多く、聴き所が増えたのもポイントだ。新しいレコーディング方法にその辺りの鍵があるのかも知れない。

 「今回のアルバムは、タムがいなかったらできなかったと思います。それと、リズム隊のみんなが、かなりいい感じでリズムを構築してくれたので、それも大きいです。
わたしが書いた詩をみんなでかたちにしたという感じです。もちろん、逆もありますけれど。ファーストのときよりライブ感が増したかもしれません。ファーストはリズム隊やホーンなど、全部わけて録音していったのですが、今回は一発録りのものが結構ありまして。
「もぐら」は完全一発録りです。 他の曲もグルーヴを活かし、ほとんどみんなで一緒に録音しました。」

  今回もマキの詩の世界に興味が尽きない。 彼女自身の心情を赤裸に綴ったとされる「青空とマント」と「名犬ジョディー」。特に「名犬ジョディー」は、その高揚感溢れるサンバ調の曲調とは裏腹に痛烈な歌のサインランゲージを感じずにいられない。 前回の「涙の雨」の続編というべき昭和ロマンを讃えた「あのフレーズ」では、絶妙なダブルミーイングを効果的に配置してストリーテラー振りを発揮している。因みにこの曲ではユニークなセッションもあったとの事だ。

 「「青空とマント」については、自分がね、飛べると信じていたのに飛べなくて、泣きたくても泣けない時期があったんです。そうやって、泣きたくても泣けない人って私だけじゃなくてたくさんいると思うんですよね。仕事場で、学校で、いろいろです。そうやって、つくり笑いしていると、こころがカチコチになってしまうでしょ。そういう固まってしまった心のねじを巻いてあげると青空とマントではうたっているのです。
「名犬ジョディー」は「カオナシ」の歌です。自分がなにがしたいんだか、例えば、歌を歌っている永山マキだって、本当のあたしなのかどうかわからない。自分が何者であるか、なんて、自分が死ぬまでわからない。でもね、ずっと止まり続けていられないんですよね。 進まなくちゃ。何があろうとも、時間は流れているわけですからね。 
そうそう、それと、「あのフレーズ」。これがとっても可愛らしい曲でして。 ストーリー中の「フレーズ」は、音のフレーズと言葉のフレーズでもあるんです。 主人公と男性の間でしかわからない、「あのフレーズ」を奏でる(もしくは囁く)のです。ニクイ人なんですね。 あのフレーズのギターソロを弾いているのは実は私の実の父親なんですよ。なので、私の弟のヤスとギターと私というソロ回しがつづき、ちょっとおもしろいことになっていますね。」

 聴く度にそれぞれの曲に深い世界観が潜んでいるのが理解出来ると思う。即ち本来ポップスが持ち得た高い創造性がここでは感じられるのだ。本作は歌詞カードを手にじっくり聴くべき作品といえるだろう。最後にマキも以下の様なコメントでその魅力を語ってくれた。

 「わたし、みんなに伝えたいことがあって。セカンドアルバム「青空とマント」はそれをぎゅっと詰め込みました。 伊藤ゴローさんから戴いたコメントのなかに「モダーン今夜はバロックの罠、七つの夢のなぞなぞを解こう」とあるのですが、 収録曲、7曲をじっくり聞いてみてください。
キメ細やかなアレンジと素敵なおはなしがかくれています。 ファーストから進化したモダンサウンドを、是非お楽しみください! 」

 (ウチタカヒデ)


2004年9月30日木曜日

☆Paris Sisters:『Everything Under The Sun』 (Eric/11523-2)☆Paris Sisters:『Best Of The Paris Sisters』 (Curb/D2-78861)


 コアなポップス・ファンに人気の高いパリス・シスターズ。彼女達のアルバムは3枚しか残されていないのだが、その内の2枚が期せずして今年リイシューされたので、ここで紹介しよう。
美人3姉妹というルックスの良さに加え、リード・ヴォーカルを取るプリシラ・パリスのはかなげなウィスパー系ヴォイスのなんともいえない魅力、さらにプリシラは作曲も出来る才能も持ち合わせていて、他のガール・グループとは一線を画する存在だった。
前者は67年にRepriseレコードからリリースされた同名のアルバムのリイシューでジャケットも同じ。
中のブックレットには見たことのない彼女達の写真がカラーで多く収められ (近影もあり。プリシラは60歳でまだ縦ロールなのは凄い…)、 LP を持っている人も購入する必要がある。
プロデュースがジャック・ニッチェとマイク・ボーエンなので、フィル・スペクターのようなエコーがかかり、心地よい仕上がりになった好盤である。
特にプリシラが作曲した "My Good Friends" は転調が決まり、解放感のある見事な傑作となった。
バリー・マンの "See That Boy" もプリシラのロリータ・ヴォイスと、ウォール・オブ・サウンドが合体した不思議な魅力がある。
後者はサイドウォークから66年にリリースされた『Golden Hits of The Paris Sisters』なのだが、ジャケットを含め写真がひとつもなく、イラストと文字だけというあまりに味気無いものだった。
この LP のジャケットは彼女らの水着姿なので、ジャケットだけでも売上は倍以上期待できたのに、残念無念。前者の CD のブックレットに小さいながらこの LP ジャケットが載っているので、見たことのない人はそれで我慢しよう。
プロデュースはヒット・メイカーのマイク・カーブだが、前者に比べてサウンドがチープで出来はイマイチ。
ここでもプリシラ作の流麗なメロディの "I Don't Give A Darn" が、爽快なアップ・テンポのサウンドと組合わさって、アルバムのベスト・ナンバーになった。
最後のボーナス・トラックの "Always Waitin'" は、65年のマーキュリーでのシングルである。(初 CD 化ではない)
なお、この CD 、アマゾンで696円と信じられないほど安い。(佐野)
  
シング・エヴリシング・アンダー・ザ・サン! ! !    Best of
                              

2004年9月25日土曜日

Radio VANDA 第 54 回選曲リスト(2004/10/07)

Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。
Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 毎月第一木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。


特集Kinks

1. You Really Got Me ('64)
2. I Believed You ('63) ... Ravens
3. Revenge ('64) ... Long Version
4. Tired Of Waiting For You ('65)
5. David Watts ('67)
6. Waterloo Sunset ('67)
7. Autumn Almanac ('94) ... from 1st Version
To The Bone
8. Scrapheap City ('73) ... Single Version
9. Everybody's A Star ('76) ...
Celluloid HeroesVersion
10. Come Dancing ('82) ... 12 inch Long Version
11. Tokyo ('82) ... Live In Tokyo
12. Do It Again ('85)
13. When You Were A Child ('86)
14.
うな重 ('91) ... 真島昌利

 

 


☆Who:『Live In Boston』(ワーナー/WPBR90359) DVD 

初来日を果たした感動の日本公演から10カ月前、2002年の9月24日にボストンで行われたライブの DVD である。
この年の6月27日にジョン・エントウィッスルが亡くなっており、ピートとロジャーの2人に、ドラムにザック・スターキー、ベースにピノ・パラディーノ、キーボードにジョン・バンドリック、ギターにサイモン・タウンゼンドという日本公演とまったく同じスタッフによる、現在のフーそのままのライブとなった。
基本的にセット・リストは日本とほぼ同じで、全21曲143分披露しているが、日本はここから7曲カットし、その代わりに新曲の "Real Good Looking Boy" と "Old Red Wine" を入れた87分だった。
なんと56分も短かった訳で、単独公演が切望されるところだ。
フーのファンしかいないので、客の乗りが良く、そのためメンバーのテンションも高い。
いい相乗効果が楽しめる。日本公演には無く、この DVD でしか見られない7曲は "Another Tricky Day" 、 "Relay" 、 "Bargain" 、 "Sea And Sand" 、 "Eminence Front" 、 "You Better You Bet" 、 "The Kids Are Alright" 。その中で目立ったことは "The Kids Are Alright" が途中からアレンジが変わって7分もあり、時代に合わせていた工夫。
そしてピートのソロの "Eminence Front" では、ロジャーはずっとギターを弾いていたが、他の曲でもしばしばロジャーはギターを持っているので違和感はなかった。
日本公演に比べて、ピートのギターが大音量なので、ビートが効いていてカッコいい。
パワフルなギター・プレイ、得意の風車弾きも連発し、ピートには年齢を感じさせないパワーが満ちている。また、ロジャーのヴォーカルも良く出て、ロッカーとして面目躍如の感がある。
手数が多いザック・スターキーのドラム、ピノのベースと合わせて、まさにサウンドは「ザ・フー」。全体的には "I Can't Explain" 、 "Substitute" 、 "Baba 0'Riley" "、Love Reign O're Me" そして "Pinball Wizard" から "See Me Feel Me" までのメドレーが個人的なお気に入り。(佐野)
   

The Who - Live in Boston
                                 

2004年9月17日金曜日

☆Brian Wilson:『Smile』 (ワーナー/WPCR11916)

 ついに『Smile』がリリースされた。
私がビーチ・ボーイズに出会った1970年から34年間、何回か『Smile』がリリースされるというインフォメーションを見た。しかしガセネタばかりで、『Smile』の LP のブートがリリースされた時は、我々ファンの間では驚天動地の衝撃が走ったものだ。
ブートの『Smile』は、2枚組の LP になった時、 CD になった時などに、一気に多くの未発表トラックを発表し、その都度、ファンを気持ちを騒がせた。
しかし徐々にネタがなくなり、またインストのみやデモ状態のテイクの多さに辟易してきて、結局こんな程度しか出来ていなかったのかなと、色あせて見えてきたことも事実。
それまで『Smile,Smile』と騒いでいた著名人達が、もう『Smile』はいい、などと言い出し、『Smile』は澱の中に沈殿してしまったかのようだった。
しかし、長くライヴ活動を続けて、音楽にポジティブになったブライアンは、ついに『Smile』に決着を付けようと取り組んだ。
噂は流れ、イギリスで『Smile』のライブが行われたと情報が入り、ほどなくしてブートが手元に届いた。
その感想は先日のこのコーナーでレビューしたとおりである。
そして『Smile』はスタジオ録音で正規に届けられた。
まず最初に言っておくと、このスタジオ録音は、ツアーの模様とほぼ同じである。
そして緻密に計算されて作られた大傑作である。当時、録音されていた多くの『Smile』の断片を組み合わせ、不足している部分は書き足し、時には『Smiley Smile』のヴァージョンのいい部分も取り入れて、パズルを完成させて新しく録音した。
しかし37年もの歳月が経つとサウンドが違ってしまうのが常だ。レコーディングの進歩が、逆にサウンドを変えてしまう。
しかしこの『Smile』には、違和感がまったくない。
当時のブライアンがイメージして作り上げていた独特のサウンドが、見事に再現されていたのだ。深いキーボードの音像を核にしたシンプルでいて深遠なサウンドだ。
このサウンドと、高度なハーモニーを再現できたのは、ブライアンのソロ・ライブを復活させた現在のサポート・チームの力が大きい。特にダリアンの力が大きいとも伝えられる。
しかし、曲を書けるのはブライアンしかいない訳で、ブライアンは忌み嫌っていた『Smile』に向き合い、遂に決着を付けた。
本物の『Smile』ではない、ツアーの営業向けだなどと言う連中もいるだろうが、そんな雑音も簡単に吹き飛ばしてしまう力がこのアルバムにはある。そしてこの『Smile』は、今聴いても、他に例のない、斬新なメロディ、ハーモニー、アイデアが満載されたユニークなアルバムで、古さをまったく感じることがない。
では内容を振り返ってみよう。
まず既に発表されたもの、もしくはブートでお馴染みの当時のテイクをほぼ忠実に再現した曲がある。
"Our Prayer" , "Cabin Essence" , "Wonderful (Smile Version)" , "Surf's Up" , "Good Vibrations" , "Old Master Painter/You Are My Sunshine"
がそれだ。
"Heroes And Villains"
もシングル・ヴァージョンを基本に『Smile』用のヴァージョンなどをうまく散りばめたものだった。かつてのようなファルセットが出ないブライアンを補うべくポイントではハーモニーを付け、またヴォーカルをオン気味にしてサウンドに重量感を持たせていた。
"Cabin Essence"
"Good Vibrations" は緊張感に満ち実に新鮮な仕上がりだ。
次にアレンジの違いで新鮮なイメージになった曲がある。
"Wind Chimes"
は基本は『Smile』ヴァージョンなのだが、『Smiley Smile』のエンディングの美しいコーラスからスタートするという見事な展開で二重丸。
"Mrs.O'Leary's Cow"
はホイッスルのヴァージョンからスタート、すぐに "Fire" ヴァージョンになるが、ハーモニーを加え実にヘヴィでダイナミックなインストに仕上がり、こんなカッコいい曲だったのかと、認識が変わってしまった。そして新たな歌が付けられた曲がある。
"Roll Plymouth Rock" (
"Do You Like Worms" ) は出だしのタムが鳴っているパートに新たなメロディの歌を付け、ウガウガのコーラスには "Bicycle Rider" の歌が被り、ハワイ語の歌の後もフェイドアウトせずに主題へ戻るなど、ぐっと完成された作りになっていた。
"Barnyard"
には、 "Heroes And Villains(Demo)" 後半の歌が被り、これはこの曲のためだったのかとまたビックリ。
"On A Holiday"
は木琴のお馴染みの曲だが、新たな歌が付けられ、 "Do You Like Worms" の歌まで被っていた。
ちょっと無理やりつなげた感があるのは、エフェクトと共に消える短い "I'm In Great Shape" からブライアンのジャジーな歌が入った "I Wanna Be Around" 、大工道具を叩く "Workshop "、『Smile』ヴァージョンの "Vege-Tables" のメドレー。ただ "Vege-Tabels" のエンディングは『Smiley Smile』ヴァージョンのハーモニーできれいにまとめている。
そしてアルバムのハイライトがこれから紹介する2曲だ。
"Song For Children"
" ChildIs Father To The Man" は、雄大なインストパートから "Holiday" のメロディのパートに変わったかと思うと、その都度新たに作られた歌が登場し、その後も今までブートで聴いてきた断片がモザイクのように組合わさり、めまぐるしく変わる曲想はまさに圧巻。
こういう曲が聴きたかったと、嬉しさで背筋がゾクッとした。
そして "In Blue Hawaii" は出だしの "Water" のハーモニーに新たな歌が付けられ、 "I Love To Say Da Da" に移るとさらに新たな歌詞の歌が付く。
これが実に洒落た心地良い歌で、ハーモニーも巧みで、もう最高の気分。
かつてCapitolで作られたバックジャケットに書かれていた "The Elements" は結局作られず、これが2004年の『Smile』だが、スピーカーから流れる音に時の刻みは存在していない。
ブライアン、ありがとう。こんな素敵なアルバムを届けてくれたなんて。聴き終えて私は感謝の気持ちで一杯になった。
なお日本盤は "Heroes And Villains" "Cabin Essence" のインストがボーナス・トラックで付くので、そちらを待とう。
また、 LP もリリースされ、こちらには4曲のインストのボーナス・トラックが付くそうだ。こちらも必要だね。(佐野)


 
 



2004年9月14日火曜日

☆Who:『YOKOHAMA 24・07・04』 (themusic.com)

フーのライブを全て CD 化してファンに届けている www.themusic.com から、7月24日に待望の初来日を果たしたフーの横浜でのライブが届いたので紹介しよう。
フーは『ロック・オデッセイ2004』に参加するために来日、ピート・タウンゼンド、ロジャー・ダルトリーの他はザック・スターキー、ピノ・パラディーノ、サイモン・タウンゼンド他という最近のベスト・メンバーでライブを行った。
長年、夢を見ていたフーのライブは、こういったフェスティヴァルなので、持ち時間が短く、86分と短めで終わってしまったが、とにもかくにも生でピートとロジャーの姿が見えただけで満足してしまった。私の席からは遠すぎて、モニターでしかよく見えなかったけど、その場に居合わせただけでよかった。
音とは関係ないが、ピートは黒いTシャツにサングラスがよく似合い、実にカッコいい。スレンダーだし、精悍な体は、得意の風車弾きなどパワフルなステージ・アクションに不可欠だろう。
曲は "I Can't Explain" からスタート、 "Subsititute" から "Anyway Anyhow Anywhere" と初期のナンバーが続き、 "Baba O'Reiley" のイントロが登場すると大きな歓声が会場を覆う。
"Behind Blue Eyes" の後はピアノで "Can'tHelp Falling In Love" が弾かれすぐに "Real Good Looking Boy" へ変わっていった。
そしてピートの「日本は初めてだ。来ようとは思っていたんだけど。ファンタスティックだ」というコメントが入り、大いに盛り上がる。ただ、このコメント、マイクの状態が悪くて、ステージで聴くよりはるかに聴きにくいのが残念。
そして "Who Are You" , "5:15" と続き、このステージのハイライトのひとつ "Love Reign O've Me" が登場する。ロジャーの声がよく出ていて、感動的だった。
そしてピートがバックのメンバー紹介するが、一番人気はザック・スターキー。 "My Generation" はピノのベースが控えめで残念、さらにすぐにリズムが変わってしまってブルース調になってしまうのもいまひとつ。
新曲の "Old Red Wine" をはさみ、 "Won't Get Fooled Again" が登場し再び大歓声が会場を包むが、ちょっとザックのドラムの入り方がよくない。一瞬なのだががモタモタした印象が残ってしまう。
ここでメンバーはステージを引き上げ、アンコールへ移る。
最後は『Tommy』メドレーだ。 "Pinball Wizard" , "Amazing Journey" , "Sparks" , "See Me Feel Me" の4曲はまさに鳥肌もの。
特に "See Me Feel Me" は、ステージで聴くと霊的な力があるようで、思わず一緒に歌ってしまうパワーがあった。
最後はピートが2年ぶりにギター・スマッシュを行い (横浜のみ)、ギターはネックを残して木っ端みじん、その光景がスローモーションのように思い出された。
やはり実際に行ってよかったと、 CD を聴きながら思った次第。翌日の大阪のものも販売されている。(佐野)


2004年9月4日土曜日

☆Moody Blues:『The Lost Performance Live In Paris '70』 (SRO/D2959) DVD


ムーディーブルースの最高の時期はやはり1969年の『To Our Children's Children's Children』から1971年の『Every Good Boy Deserves Favour』だが、その真っ只中の1970年のライブという、奇跡のような DVD がリリースされた。
ただ、これはフランスの当時のテレビ番組の映像で口パク。だから曲はフェイドアウトしてしまうし、ハモンドオルガンからメロトロンの音が出て来てしまうなど、気になる点があるにはあるが、そんな事よりも黄金時代のムーディーブルースが、黄金時代の曲をリアルタイムで歌ってくれるのだから、もうそれだけで100点満点である。
 しかしフランスの客はムーディーブルースが目の前で歌ってくれているのに後ろを向いて話したり、目の前から荷物を持って途中退席したり、拍手が少なかったりと、態度が悪いことこの上ない。
タバコも吸いながら見ているし、テメエら叩き出すぞって叫びたいところだが、ここはジャティン・ヘイワードの美しい顔を見てガマンガマン。
曲はこの当時『A Question Of Balance』が最新盤だったので、 "Tortoise And Hare" や "Don't You Feel Small" という信じらない曲も登場する。
ライブでお馴染みの "Ride My See-Saw" や "Lovely To See You" 、もちろん "Nights In White Satin" "Tuesday Afternoon" など、お馴染みのナンバーが嬉しいが、ムーディーブルースファンなら感涙の "Candle Of Life" がハイライト。ライブでは演奏しない曲だったので、口パクならではだ。
また "Gypsy" もカッコいいなあ。
そしてもうひとつのハイライトがもちろん "Question" 。ただこのヴァージョン、レコードとは違うシンプルな別ヴァージョンでこれは必聴だ。
この曲以外でも、別ヴァージョンを使っていたり、マイクのヴォーカルがオンだったりと、曲によってオケが違っていた。私は74年のムーディーブルース初来日の時にコンサートへ行っているが、意外にもかなり音がでかく、そんなにレコードのような繊細なサウンドが楽しめなかった記憶があるので、この別テイクも交ざる口パクはけっこう気にいっている。
全13曲、黙って買いましょう。(佐野)
 


2004年8月30日月曜日

☆Sandy Salisbury:『Everything For You』(Rev-Ola/CRREV77)


サンディ・サルスベリーのこの Rev-Ola 盤は、先に紹介した同タイトル(こちらには Vol.1 と付いているが) の Sound City 盤と大幅に内容が違い、全20曲中初登場の曲が9曲もある、ソフト・ロック・ファンにとってのマスト・バイ・アイテムと言えるだろう。
はっきり言って、Sound City盤よりいい曲が多い。Sound CityはVol.2用に内容のいい曲を取っておいてあるのだろうが、Rev-Olaは先にいい曲を選んで入れてしまった。
では、その未発表のハイライト曲のみ紹介しよう。軽快で爽やかな "Let It Rain Let It Pour" , "Do I Miss You" はサビの展開が心地よく、特に後半のハイトーンのハーモニーが素晴らしい。
シンプルな "Invitation Forever" も巧みなハーモニーで十分聴ける曲になっていた。
その中でもジャジーで美しいバラード "Married To The Wind" は、このアルバムの最高傑作だ。シンプルなアレンジながらこれだけゴージャスなムードを湛える名曲が、オクラ入りのままだったとは…。
改めてサンディの曲を聴いて思うが、この人は誰もが心を奪われるキャッチーなメロディを書く才能に恵まれているなという事だ。きれいなメロディを書くことは出来ても、キャッチーなメロディは、天賦の才がなければ書けない。そんな才能に恵まれながら、チャンスがなくてメジャーな存在になれなかったサンディ。
日本で再評価が始まり、こうして30年以上も経って CD が5種類、7枚ものソロのデモ CD がリリースされたのは、まさに日本発の奇跡と言っていいだろう。(佐野) 
Everything for You