1998年12月27日日曜日

☆Beach Boys:Unsurpassed Masters vol 13,14 、「Pet Sounds」に突入&The Live Box

 まずシリーズのVol.13、14は「Pet Sounds」のアウトテイク CD 4枚組2セットで、計 CD 8枚、524分にも及ぶヴォリュームにまず圧倒される。「The Pet Sounds Sessions」のボックスが出たばかりなのに、まだこれだけの音源があるのだから驚きだ。
ただし「The Pet Sounds Sessions」のようなヴォーカリストが既発表テイクとは違っていたり、別のアレンジだったりするテイクはない。バックトラックのテイク1から始まって完成まで、そしてヴォーカルを入れ、重ねて歌ってダブルトラック、さらにバック・コーラスをオーヴァーダブしていく過程がすべて分かる、「メイキング・オブ・オフィシャル・ヴァージョン」集といったところだ。しかし全部聴くのは重労働で、相当なファンでもうんざりしてしまう。ただ、ディスク1には既発表のものとは違ったヴォーカルがオンの完成に近いテイクが収められいて、ここは聴きやすいのでおすすめだ。またディスク8は66年のブライアンのピアノの即興、ラジオ局K.O.M.A.のためのジングルをパート別に練習して合体させる模様、さらにハニーズが "Row Row Row Your Boat" の輪唱をブライアンと共に練習している模様が収められていた。
 さらに番外編というべき3枚組のボックス「The Live Box 1965-1968」も同時にリリースされた。まず中核は66年10月22日のミシガン大学でのライブをファースト・ショウ、セカンド・ショウともに全て収録したもの。合わせて68年のロンドンでのリハーサル2曲、65年のシカゴでのライブ7曲はヴォーカルがオーバー・ダブされていた。そして67年9月のWally Heider'sスタジオでのリハーサルが12テイク入っているが、こちらは気のない演奏のみ練習が多く面白いものではない。(佐野)

1998年12月19日土曜日

☆Kinks : Soap Opera(ビクター/60498)☆Kinks : Schoolboys In Disgrace(ビクター/60499)☆Kinks : Sleepwalker(ビクター/60500)☆Kinks : Misfits(ビクター/60501)

リマスター第4弾はRCAも越えアリスタへ突入。アルバムの内容は常識として省略するとして、ボーナス・トラックについて紹介しよう。
まず「Soap Opera」には "Everybody's A Star" の貴重なラジオ局用のモノ・ミックス。アップテンポで、シャキシャキ聴こえるのがグッド。それと75年6月14日のロンドンのニュー・ヴィクトリア・シアターでのライブが "Ordinary People"  "You Make It All Worthwhile"  "Underneath The Neon Sign" の3曲。この時代のライブはまさに「劇」で、こんなきちんとした録音があるのなら3曲だけなのはもったいない、願わくば是非ビデオも出して欲しい。「Schoolboys In Disgrace」にはどういう訳かボーナス・トラックはない。「Sleepwalker」にはUK盤の "Rock'n'Roll Fantasy" のB面のみ収録されていた貴重なブルース・ナンバー "Artificial Light" 、オリジナルアルバムではアルバム未収録のシングル "Father Christmas" (後述の「Misfits」にボーナス収録)のB面のインチキ・パンク野郎を歌ったロック・ナンバー "Prince Of The Punks" が入り、この2曲は初の CD 化。アルバムのアウトテイクが「The Poseur」と「On The Outside」。風刺の聴いたクールな前者と美しいメロディを持つ後者は、没にしたのがもったいない高いクオリティの佳曲だ。 "Waterloo Sunset" の CD シングルに収められていたギターなどを加えた(ミックスで戻した?)94年の後者のリミックスも収録されている。最後の「Misfits」では "Black Messiah" をアップテンポにして若干演奏をオンにしたUS盤のシングル用テイクと、ギターをオンにしたミックスを施したLive Life" のUS盤シングル・テイクが個人的にも初の発見。あと「A Rock'n'Roll Fantasy」を短く編集したUSシングルのみエディットが収められていた。(佐野)
Soap OperaSchoolboys in Disgraceスリープウォーカー+5Misfits (Hybr)



1998年12月15日火曜日

☆Dave Davies : Anthology Unfinished Business (Castle/584)




キンクスのデイヴ・デイヴィスのキンクスでの作曲及びリード・ヴォーカルを取った主要なナンバーに加え、3枚のソロ・アルバムからの抜粋が合わさった CD 2枚組に及ぶ46曲のコンピレーションだ。
レーベルがPye,RCA,Arista,Polydor、Warner Bros.と5つも又にかけているのが見事で、日本ではまず考えられない企画だ。偉大な兄レイ・デイヴィスの蔭で注目されないデイヴだが、こうしてまとめて聴くと個々にはいい曲がある。特に「Think Visual」に収録されていた "When You Were A Child" は、ELOのようなサウンド・アプローチで新境地を開いた名曲だと思う。そして "Climb Your Mountain"  "Eternity"  "Unfinished Business" の3曲の未発表曲に "Gallon Of Gas Blues~You're Lookin' Fine" のライブが加わっているので、キンクス・フリークは要チェックだ。(佐野)
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1998年12月10日木曜日

「ALL THAT MODS!」(VANDA編/シンコーミュージック刊)


オリジナルモッズの愛したいわゆる「モッズミュージック」を徹底紹介。
UK
のモッズビートグループをシングル 1 枚のグループまで取り上げ、ディスコグラフィーを完備しました。加えてモッズが好んだソウル、スカなどの音楽も記述し、ファッションなどの生態は別に詳細にまとめています。さらにネオモッズ、日本のモッズも特集。巻末にはフー、スモールフェイセス、キンクスの 3 大グループをモッズを超えた全キャリアでまとめ、別テイクまで徹底的に調べあげました。これらのグループの全日本盤 PS などはカラーページにも掲載されています。モッズはこの 1 冊で OK[3版出来](佐野)






1998年12月5日土曜日

☆Billy Nicholls : Would You Believe(South West/001)☆Billy Nicholls : Love Songs(South West/002)

 ビリー・ニコルスの幻の「Would You Believe」が世界初でテイチクから発売され、大好評だが、なんとイギリスからも同じ「Would You Believe」がリリースされ、続いてセカンド・アルバムがリイシューされた。
このアルバムは74年にGMレコードというレーベルからリリースされたもので、 "Kew" ではロン・ウッド、イアン・マクレガンがバックに入り、 "Hopeless Helpless" ではピート・タウンゼンドがエンジニアを務めおり、交流関係に変わりがないことが分かる。サウンドは「Would You Believe」のような装飾されたきらびやかなものではなく、かなりヘヴィなロックやからピアノやアコースティック・ギターのバッキングによる美しいバラードまで、ロック、フォーク、カントリーをミックスした軽快な曲が並ぶ。名盤ではないが、聴きやすいアルバムと言えよう。曲は全曲オリジナル。
  South Westの「Would You Believe」には "Would You Believe" のアンドリュー・オールダムの手が加わる前のヴァージョンが最後に収められている。ニコルス本人はこちらの方が気に入っていたと伝えられていたオリジナル「Small Faces」ヴァージョンだ。 CD には本人の解説があり、ニコルス本人のサインとどちらも500枚中何番という通算ナンバーが手書きされていた。後から出たSequel盤にはこのトラックは入っていない。なお、ニコルス作品ではフィフス・アベニュー・バンドのジョン・リンド、ケニー・アルトマンと3人で組んで77年にキャピトルからリリースした「White Horse」が日本のみでVivid Soundよりリリースされている。(VSCD530)ニコルスらしい作風の繊細なバラードが5曲あり、出来はいい。(佐野)

1998年12月1日火曜日

「SOFT ROCK A to Z:NEW EDITION」(VANDA編/音楽之友社刊)

ソフト・ロック・ファンのバイブル「ソフト・ロックA to Z」の増補改訂版。
この第5版は全面的な改定と、新たに15アーティスト、3組のワークス、2人のインタビューを加え、一層の充実を図っている。
さらに新たにカラーページに120枚の貴重な日本盤シングル・ジャケットを掲載している。
(佐野)



1998年11月27日金曜日

☆Various : Sunshine Girl Polydor Soft Rock Collection (ポリドール/1683)

A&M,MGM,Deccaの音源からソフト・ロック・ナンバーを拾ったこのコンピレーション、カウシルズから "The Rain,The Parks And Other Things"  "We Can Fly" 、ホワイト・プレインズから "My Baby Loves Lovin'"  "In The Moment Of Madness" 、サンドパイパーズの "Beyond The Valley Of Dolls" など、いつものように VANDA のおさらいだけの内容であり、確かに内容はいいのだが、新発見がなく個人的にはまったく新鮮味のないコンピレーションだった。
他で既に CD 化されている曲がメインなので、ソフト・ロック・ファンなら触手を伸ばしづらいのが当然だが、この CD には「ソフト・ロックA To Z」でも散々書いたように、今回初のリイシューとなるルビー&ザ・ロマンティックスの "Hurting Each Other" という数あるソフト・ロック・ナンバーの中でも10指に入る大傑作が入っているので、この1曲のためだけに入手すべき。ヴァースがボサノヴァで、サビがドラマティックに展開するニック・デカロのアレンジが最高で、カーペンターズのヴァージョンよりはるかに出来がいい。(佐野)
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1998年11月21日土曜日

☆Billy Nicholls : Would You Believe (テイチク/20800)

ついにロックの残された数少ない幻の名盤が遂に初リリースされた。このアルバムは公式にはリリースされず、100枚だけのテスト盤のみが残され、現在の「Record Collector」のプライス・ガイドでは800ポンドという高額のプレミアが付けられたまさに「幻の名盤」なのである。日本のみの発売でまさに快挙。
ビリー・ニコルスは作曲家としてアンドリュー・オールダムに見いだされイミディエイトに採用、始めデル・シャノンの曲を書き、それはデル・シャノンの「A Complete Career Anthology(Raven/52)で現在もその3曲を聴くことが出来るが、「Would You Believe」と同じサウンドが既にここで作られていた。そしてニコルスはオールダムのプロデュースで、自らのソロ・アルバムの録音に取りかかった。オールダムはビーチ・ボーイズの「Pet Sounds」に打ちのめされていて、このアルバムを「Pet Sounds」のイギリスからの回答と位置付けた。まずニコルズは数多い埋もれたイミディエイトのデモの中から "Would You Believe" を見つけ、スモール・フェイセスのスティーブ・マリオットとロニー・レーンが、プロデュースだけでなくバックにも全面的に参加して曲が完成した。キャッチーなメロディとメリハリのついたサウンド、そこにオールダムのアレンジしたストリングスなどが加わり、最後には迫力満点のマリオットのシャウト・ヴォーカルが被ってくる傑作である。その他の曲はニコルズが書き、ハープシコードとアコースティック・ギターを中心に、ストリングスや様々なパーカッションなどの装飾音で、ニコルスの美しいメロディの歌、ファルセットを駆使した厚いコーラスを包んだ。バッキングにはニッキー・ホプキンスやジョン・ポール・ジョーンズの凄腕が加わり、数千ポンドもの費用をかけたのに結局アルバムはリリースされなかった。その理由はいまだ不明のままだ。しかし「Pet Sounds」への回答という言葉を裏切らない素晴らしい出来だったのは、聴けばお分かりいただけるはずだ。この機会に絶対に入手すべきアルバムである。(佐野)



1998年11月16日月曜日

☆Foundations : 「Baby Now That I've Found You」 (Sequel/300)

トニー・マコウレイの作品の中でも優れた曲が多いのがファウンデーションズ。
しかしPyeでの2枚のアルバムはだいぶ前にRepertoireから CD 化されており、それぞれ多くのボーナス・トラックが含まれていたので未聴の音源は未発表曲だけかと思っていたが、この CD では未発表は1曲だけながら、存在すら分からなかった EP のみに収録されていた1曲に、Marble Archからリリースされていたアルバムのみに収録されていた4曲、さらに76年になってNew Foundationsの名前で1枚だけ出したシングルの2曲も入り、まさにコンプリートな作りになった。 CD 2枚組ながら値段が CD 1枚分のこの CD 、是非入手しておきたい1枚だ。New FoundationsのB面曲 "Something For My Baby" が、作家はUnknownとあるが、いかにもマコウレイが書きそうな爽快感のあるポップ・ナンバーで、お薦めはこれ。(佐野)

1998年11月6日金曜日

☆John Lennon : Anthology (東芝EMI/65002~5)


  この4枚組のアルバムは、ジョンとヨーコが暮らしたアスコットの邸宅、ニューヨークでの権力と抑圧との闘いの時代、ヨーコと別居し毎晩飲んだくれていた「失われた週末」、そしてヨーコと再開しダコタ・ハウスで主夫として暮らした平和な最後の時の4期に分けて、数多いジョンのデモを集約してある
なんとその数、93トラック!一番多いのはアルバム収録曲のデモや完成前の別テイクだが、シンプルな演奏でも曲は十分に魅力的だ。それにしてもジョンのヴォーカルはなんて存在感があるのだろう!どんなバッキングで「壁」を作っても、ジョンの声はいとも簡単にそれを壊して耳元へ生々しく現れる。こんなヴォーカリストはジョンしかいない。「Lost Lennon」のシリーズで馴染みのテイクが多いが、その中でもジョンとしての未発表曲が収録されたのは嬉しい。リンゴに書いた "I'm The Greatest"  "Goodnight Vienna" 、ニルソンに書いた "Mucho Mungo" のジョンのデモなど聴くとなにか旧友に久しぶりに会ったようで、嬉しくなってしまう。レア・トラックだったElastic Oz Bandの "Do The Oz" や「Roots」収録の "Be My Baby" も初めて CD 化された。ジョンの死後、ジョンのデモにポール、ジョージ、リンゴがオーバー・ダビングした "Real Love" の元のヴァージョンもある。そして個人的に私が最も気に入ったのが、ジョージ・マーティン・プロデュースの "Grow Old With Me" だ。ジョンのナンバーの中でも私にとって最も好きな一曲だが、カセットのみのホーム・レコーディングで録音状態が悪いのがずっと大きな問題だった。ジョージ・マーティンはこれにストリングスを加えて素晴らしいバラードに蘇らせた。異論はあるのは分かるが、私はビートルズ・ファン、この二人の組み合わせはそれだけで嬉しいし、それよりも曲の完成度という点で実に良く出来ていた。ジョンはこの曲を結婚式のスタンダードにと望んでいたという。そしてこのジョージ・マーティンのプロデュースのヴァージョンは、結婚式の場に相応しいものに仕上がったと思う。(佐野)


1998年11月1日日曜日

☆Free Design : Kites Are Fun(テイチク/TECW20796)☆ : You Could Be Born Again(テイチク/TECW20797)☆ : Heaven/Earth(テイチク/TECW20745)☆: Stars/Time/Bubbles/Love(テイチク/TECW20798)☆ : Sing For Very Important People(テイチク/TECW20746)☆ : One By One(テイチク/TECW20799)

 テイチクはフリー・デザインのプロジェクト3での6枚のアルバムをすべて CD でリリースすることになった。廃盤になったポリスターでは発売されなかった3枚目のアルバム「Heaven/Earth」と5枚目の「Sing For Very Important People」は7月に発売、残りの4枚は9月にアルバム未収録のシングル "Close Your Mouth/Christamas Is The Day" と "Kites Are Fun" のシングル・ヴァージョンも漏れ無く収録し、コレクターなら歓喜する仕様でリリースする予定。
数あるソフト・ロック・グループの中でも最も高度な音楽性を持ち、ロック、フォーク、クラシック、ジャズを融合したフリー・デザインのサウンドは時代を超越している。この CD 化で現在輸入盤店に出回っている音質の悪いスペイン盤のコンピレーション CD やクリスマス EP に手を出す必要はもうないので、楽しみに待とう。(佐野)
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1998年10月27日火曜日

☆Rockin' Berries : They're In Town (Sequel/299)

ゴフィン=キングの "He's In Town" のヒットで知れれるバーミンガムのバンド、ロッキン・ベリーズ。このグループはリード・ヴォーカルのクリス・レア、そしてファルセット・ヴォーカルで時にリードを取るゲオフ・タートン(後にソロに転向。あのジェファーソンだ)の2人のダブル・リードが特徴だ。
サウンド的には当時のマージー・ビートのような軽いR&B色を帯びたビート・ナンバーもあるが、コーラスを生かしたものやストリングスの入ったバラード、コミカルなナンバーが多く、全体的にポップ色が強いグループだった。出来がいいのはゲオフが主にリードを取った、ゴフィン=キングやカーター=ルイスのナンバーの "He's In Town"  "You Are My Girl"  "Take A Giant Step" "Funny How Love Can Be" など、またジャック・スコットの "What In Thr World's Come Over You" の爽やかなカバー、バカラックが書いたような洒落たボブ・クリュー=チャーリー・カレロ作の "Across The Street" 、健闘賞をあげたいフォー・シーズンズの名曲 "Dawn" のカバー、この CD で発見したトニー・マコウレイ作 "When I Reach The Top" (佐野)
Pye Anthology, The (They're In Town)


☆Long John Baldry : Let The Heartaches Begin (Sequel/298)

 ブルース・インコーポレッドのヴォーカリストとしてデビューして以来、R&B歌手として評価の高かったロング・ジョン・ボードレーだが、あまり商業的な成功を収められず、パイに移籍してソロ・シンガーとして新たなスタートを切ることになった。
ここで出会ったのはパイに採用されたばかりのトニー・マコウレイ。マコウレイは得意なキャッチーなフックを持つ "Let The Heartaches Begin" を書き、いきなり全英1位を獲得した。マコウレイはこの後に "Mexico"  "It's Too Late" のヒット曲や "Long And Lonely Night"  "Better By Far"  "Wise To The Ways Of The World"  "Since I Lost You Baby"  "Hold Back The Daybreak"  "When Brigadier McKenzie Comes To Town"  "Lights Of Cincinnatti" という10曲を提供、バラード・タイプの歌い上がるものが多いが、いずれも心引かれるメロディが潜んでいて、才気溢れる若きマコウレイの素晴らしい曲作りが堪能できる。そのすべてがこの CD に( "Mexico" はSpanish Versionも収録)収録された。同じく本 CD にはトニー・ハッチの書いた曲も4曲含まれこれにも注目。ロング・ジョン・ボートレーのコクのあるヴォーカルで、彼らポップスの職人の優れたナンバーはさらに輝きを増した。
(佐野)

The Pye Anthology: Let the Heartaches Begin

1998年10月17日土曜日

☆Beach Boys:Megamix(EMI/Beach 100)

これはラジオ局用のプロモのみで作られたビーチ・ボーイズの既発表曲のいわゆる「ビーチ・ボーイズ・メドレー」。ただし 1981 年に編集されてヒットした "The Beach Boys Medley" などとはまったく違う、Brian Butler による新編集のメガミックスである。全 10 曲のメドレーで、曲順は "Do It Again" "Sloop John B." "I Can Hear Music" "Help Me Rhonda" "I Get Around" "When I Grow Up" "Dance,Dance,Dance" "Surfin' USA" "Barbara Ann" "Good Vibrations" 。それぞれのつなぎは巧みで、ドラムとベースのリズム隊をそのまま次へとずっと忍び込ませた "Do It Again" から "I Can Hear Music" のつながりは特に抜群。 "I Get Around" の出だしの "around round get around" のフレーズを "Surfin' USA" のカウンター・コーラスに被せたのも面白い。そして "Barbara Ann" から "Good Vibrationsは、前者の "バーバーバー" のコーラスを、後者の "グー・バッバッ" のバック・コーラスに対応させていて、このあたりが非常に上手いはっきり言って 81 年のメドレーより出来はよく、プロモのみなのが残念な CD シングルだ。(佐野/Special thanks to 東芝EMI)

☆Beach Boys : Endless Harmony (東芝EMI/50720)

アメリカのTVで放映されたビーチ・ボーイズのドキュメンタリー映画のサントラ盤がついにリリースされた。
まずはいきなりブライアンとサンレイズのリック・ヘンの共作 "Soulful Old Man Sunshine" のデモからスタート、続いて素晴らしいゴスペル調のアカペラからジャズ調のアレンジに乗ってソウルフルにスウィングするブライアンとリック・ヘンによる素晴らしいスタジオ・ヴァージョンが登場する。いきなり本 CD のハイライトからのスタートだ。ブートではお馴染みの66年のミシガン大学でのライブ・メドレー、明らかに不要なファルセットのコーラスを加えていた "Help Me Rhonda" の没ヴァージョン、 "Kiss Me Baby" などのステレオ・ミックスなどを挟み、次のハイライトである "Heroes And Villains" の初登場のデモが現れる。ここには今までどのブートでも聴くことが出来なかった幻の "I'm In Great Shape" の一部が含まれていた。 "Good Vibrations" "God Only Knows" のライブ・リハーサルの後はFlameの2人のメンバーが加入した72年のライブだ。その "Wonderful" は「Smile」のヴァージョンで歌われ感激、続いてFlameのナンバーのファンキーな "Don't Worry,Bill" へメドレーで移行していく。中間部のアレンジが違う "Do It Again" の初期ヴァージョン、そして嬉しい "Break Away" のブライアンのソロ・ヴォーカルによるデモ・ヴァージョン、 "Loop De Loop" のシンプルなデモ "Sail Plane Song" 、そしてブートでお馴染みの "Loop De Loop" にアルが新たにリード・ヴォーカルを入れた1998年版ヴァージョン、デニスの重厚で感動的な71年のソロ "Barbara" が次々と登場する。その後は70年の "Til I Die" の初期ヴァージョン、デニスの未発表のセカンド・ソロ「Bamboo」から "All Alone" 、マイクの未発表ソロ・アルバム「First Love」用の "Brian's Back" というブートでよく聴くナンバーになる。この中で "Brian's Back" はマイクの隠れた傑作ナンバーであり、今まではディック・クラークのプロモLPの中でしか公式にリリースされていなかった貴重な音源だ。なおこの CD のファースト・プレスのチャプター3のラジオ・スポット "Radio Concert Promo1" では、デニスとブライアンとの掛け合いではなく、別に録られたデニスのコメントが間違って収められたため、セカンド・プレスからは正しいものに改められた。日本盤はセカンド・プレスの内容で、USのファースト・プレスもその内、貴重になるかも。(佐野)
 



1998年9月28日月曜日

☆Ballroom : Preparing For The Millennium (Rev-Ola/058)


  遂に待ち望んでいた CD がリリースされた。ボールルームは、カート・ベッチャー、ミシェル・オマリー、リー・マロリー、ジム・ベルの4人のグループで、アルバム1枚分の録音はあったと伝えられながら、結局はワーナーからのシングルが1枚リリースされただけで、終わってしまった幻のグループなのだ。
ボールルームの録音にゲイリー・アッシャーが手を加えてサジタリアスの「Present Tense」に使ったのは有名な話。サジタリアス、ミレニウムもカート・ベッチャーが中心になって作った一連のスタジオ・ワークスなので、ボールルームからミレニウムまではひとつのものとして考えた方が分かりやすい。この CD のタイトルもそういう意図から来ている。さてまずボールルームの録音11曲だが、ミレニウムのメンバーでもあったサンディ・サルスベリーの2曲が持ち前のポップ・センスが発揮されて心地よい。浮遊感漂う "Magic Touch" の気持ち良さは格別。 "I'll Go Stronger" も実に爽やかだ。カートのペンによるボサのリズムの "Forever" はコーラス・ワークがいかにもカートらしく巧みでハッとさせられる。カートの美しいリード・ヴォーカルが聴きもののサイケデリックな "It's A Sad World" 、この頃の流行とも言ってもいいノスタルジックな "Crazy Dreams" 、カートがプロデュースした初期のアソシエイションそのものの "You Turn Me Around" と、同じアプローチのカートの "Love Fatal Away" 、サジタリアスのヴァージョンの原型 "Would You Like To Go" "Musty Dusty" 、さらにシングル・カットされたフォーク・ロック・タッチの "Spinning~" と最もサイケデリックな "Baby,Please Don't Go" (シングルと違ってエンディングのガラスの割れる音が3回多い)と、どれも完成度は高く、ボールルームの実力を十分に味わうことが出来る。続いてボールルームからミレニウムへ続くデモの8曲へ移るが、サジアリアス、ミレニウム名義で何度も録音されていた "Another Time" のカートのギターの弾き語りによる美しいデモ・ヴァージョンにまず聴きほれてしまう。サンシャイン・カンパニーにカートが提供した "If You Only Knew" のデモは、サンシャイン・カンパニーのヴァージョンなど足元にも及ばない素晴らしさで、こんないい曲だったっけと驚かされた。 "Keeper Of The Games"  "The Island" のデモはサジタリアス、ミレニウムの原型で印象が同じだが、弾むようなバックトラックに乗った "I'm Not Living Here" はサジタリアスと印象が異なっている。 "Believe You" は陰鬱なメロディ・ラインを持ちいかにもカートのナンバーだが、 "Sunshine Today" はカートの曲とは思えない、まるでサンディが書いたような流麗なポップ・チューンで、それぞれ違うカートの顔を見せてくれた。シンプルなデモ "It's A Sad World" はきれいなチューンだが、カートのピアノの弾き語りというのは珍しく、新鮮な印象があった。全22曲、こんな凄い音源発掘の CD にはそうそう出会えるものではない。Rev-Olaレーベルから VANDA で紹介して欲しいと直接アプローチがあったが、こちらこそRev-Olaの労力に感謝したい。(佐野)


 



☆Rotary Connection : Songs/Hey Love (BGP/115)


  ミニー・リパートンが在籍していたことで知られるロータリー・コネクションのアルバムが2イン1でリリースされた。
69年の4枚目のアルバム「Song」と、メンバー・チェンジ後にニュー・ロータリー・コネクションと名前を変えてリリースされた71年の6枚目のアルバム「Hey Love」の2枚のカップリングだが、基本的にこの黒白混成のグループのサウンドはかなりサイケデリックで、ソウルフルなヴォーカルに芹川有吾演出のような大時代がかったコーラスコーラスが被ってきたり、かなり異色の存在だ。この中で私は「Hey Love」の冒頭の "If I Sing My Song" 1曲でいい。巧みな転調を繰り返し、ドラマティックに展開していく、これぞソフト・ロックという大名曲だ。こんな曲が他にあればもっといいのだが、残念ながらこの1曲だけ。しかしこのためだけに CD を買う価値は十分だ。
(佐野)
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1998年9月24日木曜日

☆Beach Boys : Ultimate Christmas (東芝EMI/65006)

 その名のとおり、究極のクリスマス・アルバムがリリースされた。というのも、64年のクリスマス・アルバムに加えて、幻の77年の未発表クリスマス・アルバム「Merry Christmas From The Beach Boys」が遂に収録されたからだ。
この 77 年のアルバムだけに話を絞ろう。収録されたのは "Child Of Winter"  "Santa's Got An Airplane"  "Chirismas Time Is Here Again"  "Winter Symphony"  "Rockin' Around The Christmas Tree" (= "I Saw Mammy Kissing Santa Claus" 。ただしカーニー&ウェンディの「Hey Santa」収録のものとはまったく別の曲の方) 、 "Melekalikimaka" (= "Kona Christmas" )、 "Bells Of Christmas"  "Morning Christmas" (= "Holy Evening" )の8曲。 "Child Of Winter" のみ既発表曲だが、シングルよりバックの鈴の音がやや大きくミックスし直された。驚いたのは "Santa's ?" で、ここに収められたものは "Loop De Loop" のクリスマス・ヴァージョンで、今まで数多く出回ったブートレグでも初登場だった。 "Peggy Sue" の替え歌が "Christmas Time ?" で、パワフルで楽しめる。 "Melekalikimaka" と "Bells Of Christmas" も同様に歌詞を変えて「MIU Album」に収められるが、この両曲はもとのメロディがいいので、当然出来は良かった。なお "Bells ?" はブートと違って冒頭のコーラス・パートが入っていないので、カルトなファンは要チェック。そして予定されていたアルバム曲の中から削られたのが "Michael Row The Boat Asore"  "Seasons In The Sun"  "Santa's Got An Airplaine"  "H.E.L.P Is On My Way" の別歌詞) "Chiristmas Is The Day"  "Go And Get That Girl" の5曲。アル・ジャーディン主導で進められたこのアルバム、当時のワーナーに発売を拒否されてしまったため、「MIU Album」として上記の3曲がリメイクされ使われた。このアルバムはメロディアスなナンバーが多く、軽快で、隠れた傑作となった。その他では "Little Saint Nick" の歌詞を変えた、オモチャのCMの "Toy Drive Public Service Announcement" が初めて聴く音源。デニスとブライアンの当時のメッセージとインタビューも初。残念なのは "The Lord's Prayer" が外されていたことだが、これ以外は文句なし。(佐野)
Ultimate Christmas

1998年9月23日水曜日

☆森山良子 : イン・ロンドン (テイチク/18405)


 日本フィリップスのテイチクへの移籍に伴い、スパイダースなどのGS勢などだけではなく、森山良子のアルバムもごっそりとリイシューされる。
この中でも VANDA の読者なら興味があるのが本作。1973年にロンドンで録音されたこのアルバムにはロジャー・ニコルス、バリー・マン、バタースコッチのアーノルド=マーティン=モローなどが曲を提供しているからだ。ロジャー・ニコルスはしっとりとしたバラードの "Some Things Never Change" と、 "Have You Heard The News" を書き、バリー・マンは力強く骨太な "Come Easy" と。まさに両者の持ち味が出た快作を残している。(佐野)

1998年9月22日火曜日

☆Buckinghams : Kind Of A Drag(Sundazed/6126)

バッキンガムスのデビュー・アルバムの初 CD 化で、これはマイナー・レーベルのUSAからリリースされていたものだ。
 "Don't You Care" などのソフト・ロック・ナンバーや、ガルシオがプロデュースしたブラス・ロック・サウンド、その後のマーティ・グレッブが中心となったポップ・サウンドを想像すると、このアルバムはまったく違う。大半は粗削りなガレージ・サウンドで、R&B色の強い曲も多い。その中で毛色が違うのが、モブのソングライター、ジム・ホルヴェイが書いた3曲で、その中でもいきなりキャッチーなフックが飛び出す "Kind Of A Drag" は素晴らしいポップ・ナンバーに仕上がり全米1位の大ヒットになった。バッキンガムスはシカゴの売れないガレージ・バンドで、その前のシングル4枚はすべて不発だったが、 "Kind Of A Drag" が成功したため、ホーン・セクションのアレンジを担当していたガルシオが、USAからメジャーのコロンビアへグループを移籍させ、さらにマーティ・グレッブを加入させてバッキンガムスはさらに大きな成功を収めることになる。アルバムの目玉はボーナス・トラックに収められた "I'm A Man" 。荒々しくヘヴィでパンキッシュなこのテイクは実に魅力的だ。そして "I'm A Man" はモノの「Kind Of A Drag」のごく初期のプレスのみに収録されていた曲で、プライス・ガイドでも600ドルもの値段がつけられていたウルトラ・レア盤だったため、このボーナス・トラックは個人的にもとても嬉しい収録だ。(佐野)
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1998年9月20日日曜日

☆Tony Rivers & The Castaways : Birth Of Harmony (EM/1002)

ハーモニー・グラスの前身であるトニー・リヴァース&ザ・キャスタウェイズの全音源が一挙にこの CD でまとめられた。キャスタウェイズは1963年から68年の間に8枚のシングルが残されているが6年間の間にたった8枚のシングルなので、そのサウンドは大きく変わっていく。
典型的なブリティッシュ・ビート・グループからスタート、ホワイト・ドゥ・ワップ調、ゲイリー・アッシャーあたりが絡んでいそうなサーフ・ビートもの、ホリーズ風、ゾンビーズ風と次々ステイルを変え、ようやく66年のビーチ・ボーイズのカバー、 "Girl Don't Tell Me/Salt Lake City" からハーモニーを最大限生かした自分らのスタイルらを発見したようだ。68年のラスト・シングル "I Can Guarantee Your Love" は爽やかで歯切れのいいアコースティックなサウンドとコーラスのからみが映える傑作で、まさにハーモニー・グラスのサウンドが実現されていた。そして嬉しいのは11曲にも及ぶ未発表ボーラス・トラックで、特に後にグレープフルーツを結成するジョン・ペリーとスウッテナム兄弟が在籍していた時の音源の素晴らしさは感動的だ。アソシエイションのハーモニーが乗り移ったような "The Grass Will Sing For You" 、パーティー風のエンディングを見せる "Summer Dreaming" の軽快なデモなどだ。驚異的なコーラス・ワークに驚かされる "Eine Kleiner" も素晴らしいし、これらのボーナス・トラックの方がよりハーモニー・グラスを彷彿とさせるだろう。(佐野
TONY RIVERS & THE CASTAWAYS / BIRTH OF HARMONY [CD]