2009年4月17日金曜日

Radio VANDA 第109回放送リスト(2009/5/7)

Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。

Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。

 

特集:2000年以降のPaul McCartney

 
1.Summer Of 59'('05)...Jenny Wren」のUKアナログSingleB

2.Driving Rain('01)

3.I Do('01)

4.Freedom(Live)('01)...The Concert For New York City』収録

5.Fine Line('05)

6.A Certain Softness('05)

7.Comfort Of Love('05)...Fine Line」のCDSingleB

8.This Loving Game('05)...Jenny Wren」のCDSingleB

9.She Is So Beautiful('05)...日本盤『Chaos And Creation In The Backyard』ボーナストラック

10.Dance Tonight(Live)('07) ...Ever Present Past」のCDSingleB

11.House Of Wax(Live)('07)...Ever Present Past」のUKアナログSingleB

12.That Was Me(Live)('0)...Amoeba's Secret」収録

13.Only Mama Knows(Live)('07)...Ever Present Past」のCDSingleB

14.Vintage Clothes('07)

 

 

2009年4月12日日曜日

Who:『The Who Sell Out(Deluxe Edition)』(ユニヴァーサル/UICD94048/9)

 数あるフー(The Who)のアルバムの中でも個人的に最も思い入れがあるのがこの『Sell Out』。『Tommy』『Who's Next』は評価されても、このアルバムについては長い間、語られることもなかった。
私は『Sell Out』を初めて聴いたのはリイシューのLPだったが、一度聴いただけでそのクオリティの高いポップな曲の数々に打ちのめされ、曲間のジングルのセンスにも脱帽で、あまりに気に入ったので近所に住む友人と2人でアルバムのほぼ全曲のカバーを録音したほどだった。今から30年前のことだが、録音したカセットテープは残念ながら行方不明になってしまった。当時はそのカセットを二人で聴きながら、このアルバムのカバーなんてやる奴は他にいない、俺たちだけだね、なんて密かに幼稚な優越感に浸ったものだった。その後、1992年のVANDAのフー特集や1998年の『All That Mods』(シンコーミュージック)でフーについて書く時には必ず『Sell Out』を名盤とプッシュし、このアルバムを聴いてもらおうと努めていたが、最近になってようやく一般的にもこのアルバムが高い評価を受けるようになり喜んでいたところに、この「デラックス・エディション」でのリリースという朗報が舞い込んできた。先日、このサイトでも紹介した多くの別テイクを含むモノラルと、ステレオの両ヴァージョンを完璧に収録し、さらに未発表テイクも含む27曲(シークレットトラックを入れると29曲)ものボーナストラックが追加され、まさに決定版となった。では初登場の音源のみ、紹介しよう。まずディスク1では「Summertime Blues」だ。スタジオ録音は『Odds & Sods12』に収録されていたヴァージョンがあったが、これはまったくの別テイク。アップテンポでハンドクラップがなく、ソリッドなテイクだ。ジョンの低音のヴォーカルが2番でもちゃんと入っているなど、こちらの方がいい。『Sodding  About』は、ブートではお馴染みのインストで、ジョンのホーンをフィーチャーしたヘヴィなロックンロール・ナンバーである。『Premier Drums』は、アルバムでのつなぎのジングルだが、なんと完奏していて最後は拍手で終わる。『Real 1 & 2(Remake Version)』はアルバム・ヴァージョンと同じ67年に再録音されていたテイクで、音はいいし、アレンジは練られているし、演奏もいいと、いいことづくめ。「Undertureの前身である「Real 2」はティンパニーが入り、変な擬音もなく、そのまま『Tommy』で使えるクオリティがある。なぜ採用されなかったのは不思議でならないが、このデラックス・エディションのハイライトと言えよう。ディスク2の『Relax(Early Demo)』はまさにデモで、サビの部分がほとんどできていないので盛り上がらない。でも曲が作られる過程が見えて興味深い。「Glittering Girl(Unreleased Version)」は1995年版の『Sell Out』のヴァージョンとはまったく違う完成度の高いテイク。演奏に厚みがあり、歌もダブル・トラックと、よく練られている。Tattoo(Early Mono Mix)」「Our Love Was(Unused Mono Mix」と続く2曲だが、まず「Tattooは大きく印象が異なることがないテイク。一方「Our Love Was」はギターが少なく、ヴォーカルもシングルトラックで新鮮な感覚がある。もちろんモノなので間奏はハワイアン風のギターだが、和音にならないのでちょっと驚いた。「Rotosound Strings(With Final Note)」はアルバム内のジングルだが最後にベース音が入る。それだけ。「I Can See For MilesEarly Mono Mix)」は初めて聴くヴォーカルがシングル・トラックのテイク。ベースは小さくてよく聴こえないし、オーバーダビングのギターも聴こえない。これは「The Smothers Brothers Comedy Hour」やBBCライブのベーシック・トラックで、これにオーバーダブして演奏していたのでは?それだとBBCライブでなぜ異常にベースが大きかったのか納得がいく。最後は「Real(Early Mono Mix)」だ。ここではアルバム・ヴァージョンでの頭の方で、歌が不自然につなっがっている部分があったが、それがなく自然に歌が推移している。ライナーではオリジナル・マスターが毀損していたためにこう編集されたとあるが、原型が分かってよかった。このテイクでは、「Underture」部分の「パーン」という擬音は既に入っていた。なおディスク2ではシークレット・トラックとして「Armenia City In The Sky」の頭の逆回転のギターのみ、延々入っていた。これも初登場。日本盤の曲の解説はこの手のブリティッシュ・ビートものの音源比較では他の追従を許さない犬伏功氏であり、これは嬉しい限り。さらに日本盤はディスク1をUK盤の紙ジャケに入れ当時、封入されていたポスターのミニチュアを同封、ディスク1は既に復刻された日本盤の帯び付紙ジャケに入れてあった。さらにジャケットが違うドイツ盤、オランダ盤の紙ジャケも入っていて至れり尽くせり。これは絶対、日本盤CDを買わないと後悔する。(佐野)
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2009年4月3日金曜日

Cowsills:『Captain Sad And His Ship Of Fools』(New Sounds/crnow7)

カウシル一家によるファミリー・バンドのカウシルズ(The Cowsills)は、一見、企画ものに見えるが、地元のクラブでのライブ活動を見初められてデビューしているので決してポッと出のバンドではない。
ただし兄弟4人に加え母親、妹が順に加入するなど、当初のプロデューサーのアーティー・コーンフェルドの意向が透けて見え、シングル曲はプロ・ライターが書くなど、プロの手によって演出されたバンドでもあった。その中でカウシル兄弟のオリジナルも多く、言いなりではなく、アーティスト志向は当初から強かったといえよう。このカウシルズで価値あるアルバムはデビュー作の『The Cowsills(67)、セカンドの『We Can Fly』(68年)、そしてサードの本作(68年)の3枚で、その中でも最高傑作は文句なしにこの『Captain Sad And His Ship Of Fools』だった。アーティー・コーンフェルドの書いた全米2位の大ヒット「The Rain,The Park And Other Things」を核にしたファーストはコーンフェルドのプロデュースのもと、12曲中、純粋なオリジナル1曲、プロ・ライターとの共作が6曲で全米31位だったが、コーンフェルドのソフトロックを代表する超名曲「We Can Fly」をメインにしたセカンドではアルバムのプロデュースはカウシル兄弟が担当、純粋なオリジナル3曲、プロ・ライターとの共作6曲と、オリジナル色を強めたがチャートは89位と下がってしまった。そこでこの『Captain Sad And His Ship Of Fools』ではプロデュースをウェス・ファーレルに依頼、純粋なオリジナル3曲、プロとの共作1曲のみと、残りの2/3を外部ライターに発注して、トータル・アルバムとして仕上げた。残念ながらチャートはさらに下がってしまったものの、ポップで価値ある曲が並んだ、ソフトロックを代表するアルバムの1枚になった。飛びぬけた曲はないものの全ての曲のレベルが高い。これらの3枚は当時、MGMからリリースされているので、現ユニヴァーサル系のレコード会社が直接出せばいいものの全て切り売りしていて、ファーストが1994年にRazor&Tieから、セカンドが2005年にCollector's Choiceから、そして本作が2009年にNow Soundsからと、15年もかけてようやくCD化が実現した。なぜこの傑作がCD化されないのか、切歯扼腕していたのでこれは朗報、やっと胸のつかえがおりた。
なお、43日現在で日本のamazonでは在庫切れになっているが、海外では在庫がある。特にamazon.co.ukでは約9ポンド弱と安く、送料を入れても日本より遥かに安い。購入日のレートの日本円で買えるようになったし、数日で届くので海外での購入がオススメだ。(佐野)
Captain Sad & His Ship of Fools



2009年4月1日水曜日

ROUND TABLE:『FRIDAY I'M IN LOVE』(HAPPINESS RECORDS/HRAD-00037) 長谷泰宏インタビュー


 ROUND TABLE(ラウンドテーブル)の約8年振りの4thフルアルバム『FRIDAY I'M IN LOVE』が4月1日にリリースされる。
 97年にインディーズよりデビュー。98年にはメジャーデビューし、2002年からはゲストボーカルのNinoを加え、ROUND TABLE featuring Nino名義での活動もしている。ソウルやジャズ、ギターポップ等をルーツに持ち、独自のポップスをクリエイトしている、北川勝利と伊藤利恵子から成る男女2人のユニットだ。
 ここでは今回のアルバム中2曲のストリングス・アレンジを担当し、ポップスやソフトロックに造詣が深く、筆者とも交流がある、ソランジュ エ デルフィーヌ(solange et delphine)のリーダー兼キーボーディストでクリエイターの長谷泰宏氏を迎えて本作について聞いてみた。

ウチタカヒデ(以下U):よろしくお願いします。
まずは長谷君が今回このアルバムに参加した経緯というか、ROUND TABLE とのご関係をお聞かせ下さい。 また彼らの魅力を率直にいいますと、どんなところでしょうか?


長谷泰宏(以下H):2004年、ソランジュのライヴの際、ゲストDJとしてROUND TABLEのおふたりをお招きしたのがお付き合いの始まりです。その後、2007年に主催したイベント「ユメトコスメ」では、北川さんのソロ名義でライヴ出演して頂き、その時のステージでサポート・プレイヤーとしてピアノを弾いたのがきっかけとなり、翌年から、制作をご一緒する様になりました。2008年、featuring Nino名義での8th Single「恋をしてる」のストリングス・アレンジを担当させて頂き、また本作で再び、という感じです。 ROUND TABLEの最たる魅力はやはり、この12年間、全くブランク無しに作品を発表し続けている、確かな音楽的基礎体力というのか、現代の職業作家と呼ぶに相応しい、非常に高い作曲能力を保持している点が、まず挙げられます。
97年のデビュー当時から、僕自身、一リスナーとして、ずっと彼等のファンだったのですが、ふと考えると、その頃から今に至る迄、絶え間無く活動しているミュージシャンは、他に余り居ないのではとも想いますし。
いつだったか、制作機材環境の話になった時に「今、iTunesに3万7千曲入っている」と仰っていたのが凄く印象的ですね。やっぱり北川さんも、ヘヴィー・リスナー/コレクターなんだなぁ、と。蔵書の内容も、80年代の邦楽ロックからソウル~ジャズ・ファンク迄・・・その"振り幅"がモノ凄い事になっていのでは、と想像するばかりで、気になっています。

U:今回の『FRIDAY I'M IN LOVE』では「Under The Moonlight」と「Faraway」の2曲でストリングス・アレンジを担当されている訳ですが、「Under The Moonlight」はフィリー~サルソウルのヴィンセント・モンタナ・Jrあたりを彷彿させます。

H:3曲目「Under The Moonlight」のストリングス編曲に関しては、当初から「ビター・スウィート、夜、男、刑事、スモーキー」という、到達すべきサウンド像に関する幾つかのキーワードが与えられていました。同時に、リファレンスとしては、田島貴男時代のPIZZICATO FIVEの銘作「ベリッシマ」を研究しておいて下さい、という宿題も。非常に簡潔で明確なディレクションのお陰で、制作行程はとてもスムースに進みましたね。
最初に僕が提示した第一案は、弦のフレージングがメロディアスで、ちょっと"ポップス"に成り過ぎている、という要望があり、より水彩画っぽい雰囲気へと修正しました。「此処は短く刻んで」「此処は8小節間ずっと白玉のトレモロで」等、要所々々で指示を受けつつ、基本的には「歌メロに対してのオブリガード」「進行~展開に於ける弦の位置付け」という、楽曲構造の全体像に配慮して、在るべき姿へと接近して行くという姿勢でした。
改めて「ベリッシマ」を究明するというプロセスも、とても意義深いモノでした。果たして何の要素が、何処の部位が、あの音世界を構築している由縁なのかという疑問に対峙して、僕なりのひとつの答えを掴んだのですが、それは結局「ストリングスとグロッケンのユニゾン」「マイナー9th~11thの多用」という2点のみを強く意識する事で体現し得るモノだ、と。
この曲、アレンジの段階では仮歌トラックだったのですが、制作終盤、イントロ~間奏部にマイケル・ジャクソン風のスキャットが入った瞬間、新たな楽曲に命が吹き込まれたと感じましたね。昂奮した勢いで北川さんに「アレ最高!」ってメールしたくらいで(笑)


U:成る程、PIZZICATO FIVEの『ベリッシマ』がアレンジにおける参考のサウンドだったのですね。 当時小西康陽氏はフィリーの他、ニューソウルやノーザンからスライやJBのサウンドを念頭に置いていたらしいのですが、やはりフィリーの弦の色は濃いですね。
個人的には、大サビというか「降り注ぐ光・・・」のパートからの進行は圧巻だと思いました。
最終形に至るまでの状況も興味深いお話です。 アレンジャーの立場として、アーティストさんからの要望を具現化するという作業は結構大変だと思いますが、その辺りで長谷君が大事にしている点はなんでしょうか?

H:そうそう、Dメロ部(大サビ)の展開で更に世界が拡がる感じ、北川さんからも「Dメロにベリッシマを感じたよ」とOKを貰えました。音楽制作に於ける定説として「正解というモノは無い」とよくいわれますが、僕は在ると思うんですよ。音符の組み合わせは無限ですが、その1小節間での"有りよう"という小さい視点で見ると、自ずと目標地点が浮かび上がってくる、というのか。
漠然とした音楽像を具現化していく行程では、やはり「最終形のイメージを共有する事」を意識しています。生まれてくるフレーズや表現する技術には限りが有りますし、その中で出来得る限りを尽くす事を心掛けています。同時に、結局コレは自身の作品では無い、という客観的な距離感も意識していて、その上で、何が効果的で、何が不必要なのか、を判断する様にしています。「コレはどうですか?」という提案も勿論有りますが、それよりも「つまり、こうしたかったんですよね?」という、"察する"姿勢が何より大切なのかなぁ、と。


U:「Faraway」はWebVANDA読者にはお馴染みの、ジミー・ウェッブの仕事を彷彿させますが、長谷君ならではの拘りはありましたか?

H:5曲目「Faraway」はリエコさんのペンに依る楽曲で、往年のROUDN TABLEのパブリック・イメージを彷彿させる、ソフトロック調の曲です。イントロは管で、オブリガードにヴィブラフォンとフルートを、ピアノでライヴ感を、全体には薄く弦を、という設計図を提示され、僕はそのまま青写真をトレースして行った感じです。イントロの管のフレーズ関しては様々なヴァリエーションを試して、5ヴァージョン制作したのですが、結局、いちばんシンプルなモノが採用されました。弦のパートに関しては、特別な事は何もしていません・・・。

U:イントロのホーンのパターンを5ヴァージョンというのは凄い(笑)。
結構ネタとしてはポピュラーなのですが、そこの拘りが長谷君らしいです。基本は「Up Up And Away」なんだけど、ウェッブがアレンジで参加したSwing Out Sisterの『Kaleidoscope World』のサウンドも彷彿させます。
またヴァイブに渡辺雅美さん、フルートにヤマカミヒットミーと名手の演奏も完璧ですね。特に島裕介さんのトランペット・ソロはいいですね。このラインはスコアですか?

H:イントロに関して、初期段階では「爽やかなソフトロック路線ではなく、此処でもビター・テイストを踏襲したい」という指示に基づいて、"泣きメロ"を幾つか提案したのですが、最終的には、それは正解では無かった、と。お蔵入りしたフレーズ、勿体無いので(笑)いつか、ソランジュの曲として使えたらと想っています。
フルートのリフレインに関しては、予め譜面を用意しておきました。あくまでガイドラインという役割のモノですが。ヴィブラフォンに関しては、スコアに添って貰うか、自由に演奏して貰うか迷う処だったのですが、「此処はユニゾンで~」「8小節目で駈け上がる」等、構造のフォームを指定した上で、基本はフリースタイルでの演奏になりました。トランペットのソロ・パートのフレーズは、リエコさんのアレンジに依るもので、書き譜通りに演奏して貰いました。


U:今回、長谷君が参加していない曲を含め、アルバム全体的にどのような印象を持っていますか?

H:収録されている他の楽曲群でも顕著な様に、本作の根底に在るコンセプトは「ビター・スウィート」。4曲目「遠い街角」9曲目「愛の行方」で聴ける様な、ソウル・ミュージック~AORへの深い造詣がひとつの主軸になっているかと想います。僕の個人的なベスト・トラックは、ロマンティシズムに溢れた2曲目「My Girl」ですね。"美メロ"と称される彼等ならではの持ち味が惜しげ無く発揮された、"刺さる"楽曲で、何度も繰り返し聴きたくなります。

U:ポップスやソフトロックをはじめ、様々な音楽に造詣が深い長谷君なのですが、最近はまっているアーティストやアルバムはなんでしょうか?

H:ROUND TABLE制作の延長では、Ebony Alleyneの 『Never Look Back』をお薦めしたいです。北川さんのiTunesにも入っているという一枚。2007年にリリースされたUKソウルの新人なのですが、Swing Out Sisterか・・・?と見紛う程のバカラック~モータウン讃歌。最早、オマージュなのか剽窃なのか?という力作です。

U:それ知ってる!今ディオンヌ+バカラックと言うべきサウンドですよね。
僕はまだアルバムは未入手なのですが、プロデューサーがユーロビート系のイアン・レヴィンだったので触手が伸びなかったのね。でも「Second Look」はモロに「You'll Never Get To Heaven」系なんだよね。バカラック・ナンバーの中でも洒落ている部類に入るコンチネンタル系(笑)。 この辺りだと、ウーター・ヘメルのジョー・レンゼッティー風シャッフル曲「As Long As We're In Love」で、デュエットしているジョヴァンカも近いかも知れないね。

H:Swing Out Sisterの2008年の新譜「Beautiful Mess」も良かったです。相変わらずのソフトロック節が此処でも健在で、5曲目「I'd Be Happy」はウェッブ調の名曲でした。ジミー・ウェッブといえば、昨年末「The Revells / The Jimmy Webb Songbook」をようやく入手しました。ちょっと高額なアナログ盤ですが、相応の素晴らしい内容でしたね。

U:The Revells のオリジナル盤はまだまだ高価だよね。僕はE-bayで入手しました。恐らくCDでのリイシューは絶望的でしょうね。オルガン・ボッサ風の「Wichita Lineman」なんか好きです。NOVI SINGERSより10年早かった(笑)。
ウェッブ・モノのコーラス系だとREVELATIONも素晴らしいね。

H:最近手に入れたのは、「Jimmy Vann Band / The Upper Left Hand Corner Of The Sky」と「Hagood Hardy & The Montage / Montage」の2枚。有名なレア盤で、今迄ずっと手が届かなかったのですが、ようやくCD化されました。解説は高浪敬太郎さんが書いています。カナダ産ソフトロック周辺は入手困難なので、これは嬉しかったです。他にも、Eternity's Children系譜の「Starbuck」もCD再発されましたね。

U:どちらも昨年11月にCDリイシューされましたね。1000枚どころか500枚売れるのかと心配になりますが、いまだこういった隠れ名盤がリイシューされ続けている日本のシーンは貴重だとつくづく感じます。『Soft Rock A to Z』で紹介されて、一方ではクラブDJに発掘されたりとアプローチは違うんだけど、各々の音楽へのアティチュードはそう遠くないと思うのですよね。

H: それから、有名過ぎて逆に盲点形ですが「Carpenters / Lovelines」をヘヴィー・ローテーションで聴いています。1989年発表のラスト・アルバム。誰も到達し得ない金字塔、脚を向けて寝られません。
リアルタイムの邦楽界にも、気になる楽曲が幾つか在りました。「Every Little Thing / あたらしい日々」「Mr.Children / エソラ」「いきものがかり / 気まぐれロマンティック」の3曲。別段、意識していなくても、街中やテレビから聴こえてくる類いのモノの中にも良い作品が在って、決して侮れないと改めて驚愕しています。ハイエンドなソフトロック・リスナーも納得の楽曲ではないかと。騙されたと思って(笑)一度聴いてみて貰いたいですね。侮れないといえば、秋葉原界隈や、韓国界隈にも、ソフトロック的な作品が多々在って、もう嬉しい悲鳴というか、追い付けません・・・。
蛇足ですが、「Mr. Children / 花の匂い」という曲の、Aメロ2~3小節目の旋律は「Carpenters / I Won't Last A Day Without You」を踏襲していて、思わず振り返って、夢か?と眼を擦って仕舞う程でしたよ(笑)


U:そうそう、「I Won't Last A Day Without You」の(笑)。確かに耳を疑います。僕はこれのオリジナルは断然ポール・ウィリアムスのヴァージョン派なのですが、これは確信犯的オマージュでしょうね。 そんなギャップでは、氣志團「結婚闘魂行進曲「マブダチ」」(04年)のサビで、ジョン・カーターとトニー・バロウズのユニットTHE FIRST CLASSの「Beach Baby」が引用されたエピソードに通じますよ(笑)。まあ、こういう引用はあっても可笑しくないけど。

H:それは凄いですね・・・!
DJ OZMAもABE-Bも、やはり皆さん、根っからのポップミュージック・フリークなんですね。


U:リアルタイムの邦楽界じゃないんだけど、長谷君といえば松田聖子でしょう? 唐突ですけど(笑)。 僕も今更ながら「小麦色のマーメイド」のブルーアイドソウル感覚にやられていますよ。そんな文脈からだと、今回の『FRIDAY I'M IN LOVE』も日本におけるブルーアイドソウル~AOR、シティポップの流れの賜じゃないかなと感じてきましたね。

H:いやはや、松田聖子モードが僕の音楽脳の大半を占めていますからね・・・(笑)。
そういえば、ROUND TABLE featuring Nino名義での1stアルバムが出た頃、全篇に及ぶ黄金率ポップスたる様式美に、モノ凄い感銘を受けまして、北川さんにお会いした時に、「根底に聖子ちゃんを感じました!」と、その興奮と感動を伝えた記憶があります。まぁそれは、僕の一方的な解釈だったのですが・・・。
その数年後、北川さんのソロ・ライヴで演奏をご一緒した際、「瞳はダイヤモンド」のカヴァーを演りました。小麦色のマーメイドに次ぐAOR路線の名作ですよね。 


U:「瞳はダイヤモンド」もいいね。曲自体の構成力はこちらの方が完成度は高いんじゃない。
アレンジ的には「小麦色のマーメイド」のサウンドの手本がアリフ・マーディンで、「瞳はダイヤモンド」はデヴィッド・フォスターって感じかな。当時の聖子サウンドの一つはユーミン・サウンドでもあるから、松任谷正隆氏の引き出しですね。「雨に消えたジョガー」(大好き)がAIRPLAYの「It Will Be Alright」だったり、フォスターしているのね(笑)。なんか脱線しましたが。
最後に、ソランジュ エ デルフィーヌとしての最近の活動ですがリリースなどはありますか?

H:ソランジュ エ デルフィーヌの活動は、今年で8年目に突入するのですが、今迄ずっと作品の発表の場が、ライヴ会場での物販(&HP上での通販)CDR音源のみでしたので、今年こそ、CDを正式にリリースしなければと考えています。また、現時点で発売日は未定ですが、企画コンピレーション盤CDへの参加収録音源が、今後2作リリースを控えています。

U:ソランジュ エ デルフィーヌの自主音源はどちらで購入可能ですか?
是非ご紹介下さい。 確か『YUME TO COSME』が最新作ですよね?


H:ソランジュ音源の入手方法は現在、ライヴ会場での物販、及びHP上での通販のみです。『YUME TO COSME』と、HOUSE RMX盤の『DREAM ON HYPE』の2枚が、現行での最新作です。myspaceで楽曲の試聴も出来ます。ご注文は下記へご一報くださいませ。
solange-et-delphine@hotmail.com


U:ライヴやイベントの活動はいかがでしょうか?
またミュージシャンやアレンジャーとしての長谷君個人のお仕事も知りたいですね。

H:もう長く、フル・バンドでの生音ジャズ編成での演奏活動を展開して来たのですが、過去5回のライヴ出演中4回が打ち込みスタイルでのステージ、と変遷しておりまして、今後も暫く、会場の設備等に応じて臨機応変、生演奏スタイルと打ち込みライヴを平行して続ける予定です。
昨年、大阪(日本橋)でのライヴに召還され、その後、都内で開催された、それぞれ"渋谷系"、"秋葉系"と銘打ったイベントへ呼ばれる様な状況を鑑み、視野を広く据えた活動をして行きたいと考えています。ソランジュの楽曲が果たして、ジャズなのか、渋谷系なのか、ソフトロックなのか、秋葉系なのか、J-POPなのか、サブカルなのか・・・.聴く人にそれぞれ判断して貰えれば良い、と思う様になり、かつての制作上の枠組み/自ら定めた狭いルールが決壊しつつあります。今後、具現化して行きたいサウンドは、ハウス、ディスコ、スィング、ユーロビート、モータウン・・・と様々なのですが、音楽史を俯瞰して、結局"ポップス/ポピュラー"で在るならば、後は何でも良い、と想う様になりました。
然しやはり、根底に在る美観が「ジャズ・スタンダード」「ミュージカルや映画のサントラ盤」「オーケストラ伴奏のポップス」「アイドル歌謡」ですので、コード・チェンジやヴォイシングの側面で最大限に冒険しつつも、普遍的なポップスを創り続けて行けたら、と日々、楽曲制作に対峙しています。
プレイヤー、アレンジャーとしては、エイプリルズ、ROUND TABLEのライヴ/楽曲制作関連へ継続的に参加協力している他、「fragrance」「ALL THAT JAZZ」等のJ-POPカヴァー企画アルバム、「asianTrinity」の様なクラシック曲のアレンジ等、編曲~トラック制作も手掛けています。ストリングス・アレンジのご用命が有りましたら、是非ご一報を。
今後のいちばん大きな目標は(編曲ではなく、作曲の)楽曲提供ですね。或いは、鍵盤の演奏サポートやアレンジ制作の仕事を総べて断るくらい、ソランジュ エ デルフィーヌ自体の活動が軌道に乗ると良いのですが。なにぶん器用貧乏なので、DJしたり、文章を執筆する等、アレコレ演ってます。
ソランジュ エ デルフィーヌ(solange et delphine)

・HP : http://www10.ocn.ne.jp/~delphine
・myspace : http://www.myspace.com/solangeetdelphine
・blog : http://ameblo.jp/solange-et-delphine


(インタビュー設問作成、本編テキスト:ウチタカヒデ