1.Our Day Will Come...Alan
Haven(濱田高志セレクション) 2.琉神マブヤー...アルベルト・シロマ(佐野邦彦セレクション) 3.I Love Rock & Roll...The
Arrows(宮治淳一セレクション) 4.Changes...Percy Mays(濱田高志セレクション) 5.Band On The Run(from『One Hand Clapping』)...Paul McCartney &
The Wings(佐野邦彦セレクション) 6.I Am The Cosmos...Chris Bell(宮治淳一セレクション) 7.Man's Favorite Sports...Henry
Mancini(濱田高志セレクション)
第2夜
(2011/1/6) PM22:00-23:00 Star Digio
1.Fortunate Son...John Fogerty
& Bruce Springsteen(佐野邦彦セレクション) 2.Am I Forgiven...Rumer(宮治淳一セレクション) 3.Rainy Day And Mondays...Ann
Burton(濱田高志セレクション) 4.Be True To Your Bud...Mike
& Dean(佐野邦彦セレクション) 5.To Know Him Is To Love Him(New Stereo Remix)...The Teddy Bears(宮治淳一セレクション) 6.Bitter Honey(Demo)...Holy
Mackerel(濱田高志セレクション) 7.Young And Carefree...Gary
Lewis(佐野邦彦セレクション) 8.Images(Part1)...Hank Levine(宮治淳一セレクション)
フーの名盤『Live At Leeds』のリニューアルはこれで4回目、4th Editionになる。オリジナルLPは6曲、2ndでは『Tommy』以外の曲が加わり、3rdでその『Tommy』の曲が加わってこれで完全版と思いきや、4thではリーズ大学の収録の前日、ハル・シティ・ホールでのライブもプラスされた。 曲目は『Live At Leeds』で披露された「Magic Bus」が入っていないだけで他は全く同一、もちろん『Tommy』の曲も披露されているのでCDは2枚組、よって『Live At Leeds』と合わせてCD4枚というヴォリュームになり、さらにアナログのオリジナルLP+ピクチャースリーブ付きアナログシングル「Summertime Blues/Heaven And Hell」も入って、昔から持っている人間にとっては思いっきりダブりまくりの内容になった。前にも書いたが『Live At Hull』だけリリースしてくれればいいのに...。さて、ハルの方はリーズと比べてやはり演奏が少し違う。特にアドリブの時に顕著になる。リーズの方が聴きなれているためか完成度が高い気がするが、逆にハルは新鮮に聴こえる。キースのドラムとジョンのベースだけでとてつもない音の壁が作られている上に、ピートのコードカッティングを効かせた縦横無尽のギターが入り、そこにロジャーのヴォーカルと、この頃のフーは史上最高のロックバンドだなと、改めて痛感させられた。なお、ハルのライブは1曲目から6曲目までベースが録音されていなかったため、リーズのライブからベースだけ拾っていれるという信じられない芸当が施されている。また曲間の20秒の欠けた部分もリーズから拾ってつなげたそうで、編集したエンジニアは本当に凄い!(佐野)
彼らスマイルズは2004年、メイン・ソングライターであるヴォーカル兼ギターのジンマとベースのチョン・ジュンヨプを中心に、本作のタイトルでもあるStrawberry TV Show名義で結成された。 本作のレコーディング時には4人の女性コーラス隊(1人はキーボード兼任)を含む8人編成となっている。現在グループは活動休止中で一部のメンバーは脱退しており、中心メンバーのジンマは元メンバーを含む女性3人組のインディーズ・アイドルユニット"プレイガール"を手掛けているらしいので、元々プロデューサー指向が強かったのだろう。 では『EIGHTH DAY』(ロン・ダンテが手掛けた68年作)を彷彿させるジャケットが印象的な、本作の内容について触れていこう。 シンセ・ブラスのフレーズからはじまるサンシャイン・ポップの「South Pole Sunset」は、男女のコーラスの掛け合いがSalt Water Taffyに通じるパーティー・チューンだ。 ラグタイム・ピアノが印象的な「Strawberry Rag」は、愛らしいノベルティーなインストの小曲で演奏時間が短いのが惜しい。続く「The Minx Who Loved Me」は、様々な音楽的エッセンスが3分少々につまった名曲で、山下毅雄風サントラ・サウンドにライブラリー音楽系コーラスやファズ・ギターが絡む、構成的に非常に面白く筆者が真っ先に夢中になった曲でもある。 アストラッド・ジルベルト&ワルター・ワンダレー風オルガン・ボッサの「Long Long Beach」は、爽やかな女性コーラスに絡むオカズの多いドラミング・パターンが面白い。 「Theme from Strawberry TV Show」と「PBA 2000」は、「Strawberry Rag」同様にノベルティーな小曲で、こういったジングルを書くセンスもジンマのカラーなのだろうか。シェイクするリズムにイージーな女性コーラスがリードをとる70年代風TV番組テーマ曲の前者と、ジョー・ミーク風のアナログシンセ・サウンドにエッダ風のコーラスが絡む後者と非常に興味深い。 14分近い組曲の「Monglong Beach」は、バロック風コーラスのパートからボッサ・ギターのソロ・パート、前出の「Long Long Beach」がモチーフとして登場するなどカットアップ感覚が面白い。 曲が持つムードはブラジリアン・ソフトロックのANTONIO ADOLFO & A BRAZUCAのセカンド・アルバム(71年)にも通じる。
本アルバム中最も完成度が高いのは「Love So Fine」だろう。ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズの同タイトル曲とは同名異曲であるが、そのソングライティング・センスは明らかにニコルズやキャロル・キングに通じるのだ。ザ・ロネッツ「Be My Baby」(63年)風のドラム・リフからはじまる60年代ポップのセンスを持つパートに、スウィングル・シンガーズ・スタイルの男女コーラスが美しいブリッジを持つなど構成も素晴らしい。 この曲今回の新装盤では、ボビーズロッキンチェアーの森本和樹君らによるリミックス・ヴァージョンがボーナス・トラックで収録されているのが嬉しい。 その他のボーナス・トラックには未発表曲を含む4曲のデモと、ブラックスプロイテーション系サントラ風のレーベル・テーマ曲「The Grooviest Sound In The World (Theme From Beatball)」が収められている。 蛇足ではあるが、ライヴでは本家ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズの「Love So Fine」もカバーしているようなので動画でチェックして欲しい。 アルバム全体的な印象としては演奏面のテクニカルな弱さを差し引いても、ソフトロックの魅力を21世紀に継承する希有なグループといえる。 なお中心メンバーのジンマは活動が休止中の現在、スマイルズのニューアルバムのプリプロを続けているようなので今後も応援しながら注目していきたい。 (ウチタカヒデ)
Konkなどとは関係なくリリースされたCDで、由来は分からないが、デジパックだし、解説もあるし、オフィシャルであることは間違いないだろう。 最初の10曲は73年1月24日に収録されたテレビ番組でのライブで、残りの11曲は77年12月24日のレインボーシアターでのライブ。ジャケットの写真を見ると、この73年のテレビ番組の方は、You Tubeで見たことがあるものだった。RCA時代なので、長髪のレイが、やる気があまりなさそうに、皮肉っぽい笑顔を浮かべながら歌っていた。You Tubeには多くの流出映像があり、見つけては保存をしているが、こうやって音だけでもリリースされたことは嬉しい。You Tubeの流出映像はいつも楽しみ。(関係ないが、尖閣の映像を流してくれた海上保安官には感謝!悪い中国人は釈放して、正しい情報をおしえてくれた日本人を逮捕するなんて、いったいどこの政府なんだ!)73年の方はRCA時代なのでホーンも女性コーラスも入り、「Waterloo Sunset」なんて女性コーラス付きで聴くとイメージが全然違う。You Tubeに流れていた「The Village Green Preservation Society」が選曲的にも一番、嬉しい。デイブが歌う「Good Golly Miss Molly」は完璧なロックンロールで快調で面白い。なお。10曲中、RCA時代の曲は2曲しか入っていない。77年のほうはもうアリスタで『Sleepwalker』も出していたのにそこからの曲は1曲もなく、11曲中5曲がRCA時代のナンバーだ。ホーン、女性コーラスも入っているが数は減っていて基本がバンド+ピアノ。サウンド的には77年の方が歯切れが良くなっていて、パワフルな感じを受ける。アリスタに突入前夜といったところか。「Lola」のオーディエンスのレスポンスもこちらの方が盛り上がっている。(佐野)
ポール・ウィリアムスの、と言うより、ロジャー・ニコルス作品の中で最も重要なアルバムのひとつである『Someday Man』があのCherry Red傘下のNow Soundsよりリリースされた。もちろん、ボーナストラックが12曲という充実振り。それもモノ・シングル・ヴァージョンでお茶を濁す(このCDでは4曲のみ)のではなく、初めて聴く未発表トラックが8曲分あったので、これは買いなおす価値がある。 オリジナルの10曲についてはもう何度も書いているので改めて書かないが、オリジナル・マスターから音を録っているのでサウンドが非常にクリアであり、冒頭の「Someday Man」から、イントロのベースが目の前で鳴っているような感覚がしてあまりの臨場感に驚かされた。さて、ではその8トラックを紹介しよう。まずはInstrumental、カラオケだ。「Someday Man」「So Many People」「Morning I'll Be Movin' On」「To Put Up With You」は、ちゃんとバック・コーラスも入っていて最高。もちろん一緒に歌ってしまった。名曲はオケだけでも感動しながら聴ける。そしてSessionと名付けられた「Someday Man」と「The Drifter」だ。まず「Someday Man」から紹介したいが、イントロのスティックのカウントからスタート、またストリングス、ホーン、コーラスが入っていないバンド・アンサンブルが楽しめる。フェイド・アウトの曲なので適当な感じで終わったあと、再びスタートするが、今度はドラムのみ入っているが、ストリングスとホーンだけのセッションで、2度楽しめる。そして問題は「The Drifter」。そう、この曲は『Someday Man』には収録されていない曲なのだ。『Someday Man』の1週間後に録音され、このオケはロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズのバックトラックになった。これだけで、もうこのCDは「買い」でしょ?ドラム・スティックのカウントからスタート、ストリングスがまだ入っていない、バンド・アンサンブルでまずこの超名曲のオケを味わうことができる。OKの声できれいにこのオケは終了、再びスタートすると、今度はストリングスが入った完成したテイクが登場する。オケなのに惚れ惚れしながら聴きこんでしまった。ちなみにコーラスは入っていない。この「The Drifter」はニコルスとウィリアムスの二人で売り込みようのデモ・アルバム『We've Only Just Begun』(CDはもちろん持っているでしょ?これは義務!)を作り、この中には収録されていたので、改めてウィリアムス・ヴァージョンを録音する予定だった可能性もあるが、やはりこれはこの当時、同時進行で色々なレコーディングが行われていたと考えるのが正しい気がする。『Someday Man』のマスターになぜ残されていたのか、誰も分からないそうだ。最後はDemoである。まずは「So Many People」だ。ヴォーカルにオーバーダブがなく、オケにストリングスもないので初期のデモだが、『We've Only Just Begun』収録のデモとはまったく違うもの。そして「I Know You」。ピアノの弾き語りだが、なんてニコルス=ウィリアムス作品は繊細で美しいのだろう。デモなのにうっとりと聴いてしまった。Webvandaの読者の方は、マストバイである。(佐野)
先月のジョンに続き、今月はポールのボックス・セットの登場だ。ジョンのボックスがスカな内容だったので、今度は『Band On The Run』の焼き直しかよーと期待をしていなかったのだが、そんな思いは嬉しく裏切られた。
このボックスはCD3枚+DVD1枚で、そのうちのCD2枚は『25th Anniversary Edition』とまったく同じものなのでそれは割愛。先に「Bonus Film」と題されたDVDの方から紹介しよう。目玉は『One Hand Clapping』で、この番組は1974年8月15日に録画されながら未発表で終わったポール・マッカートニー&ウィングスのドキュメンタリーだ。『Band On The Run』の大成功に気を良くしたポールは、ライブツアーを見据えて新生ウィングスのメンバーのオーディションを行い、新たに加入したギターのジミー・マッカロックとドラムのジェフ・ブリットンがここではお披露目とばかりに大きくフィーチャーされている。彼らのモノローグのナレーションまで入り、ポールのバック・ミュージシャンではない扱いをされている。フィルムではポールを中心にこういったメンバーのナレーションが随所で被るが、基本的にスタジオ・ライブ集。演奏はレコード・ヴァージョンではなく、完全なスタジオ・ライブなので聴きごたえ十分だ。「Band On The Run」「Jet」「Bluebird」「1985」が『Band On The Run』の曲だが、レコードの音源よりシンプルなだけに迫力があり実に新鮮だ。それ以外の曲では「Soily」が迫力満点で二重丸。それまで甘すぎて苦手だった「My Love」もライブで聴くとかなりいい。ハーモニーがキチッとついたバンド・サウンドの「Maybe I'm Amazed」はもちろん素晴らしい。その後のポールのピアノ弾き語り3連発「Let's Love」「All Of You」「I'll Give You A Ring」はキャバレー風などとエクスキューズを入れているが、ポールらしさが溢れていて個人的には大好き。オーケストラをフィーチャーした豪華な「Live And Let Die」を入れて、「1985」のあと、最後はポールがピアノを弾き語りしながらちょっと間違える(わざと?)「Baby Face」で終わる。他にも「C Moon」「Little Woman Love」があり、こんなに充実した番組が未発表だったなんて本当に信じられない。そしてこのDVDには、ポールがナイジェリアのラゴスにいた時のプライベートフィルムが入っているのだが、そのバックにポールがBBCで演奏したというドローン効果を使ったインド風に聴こえる斬新な「Band On The Run」を聴くことができる。そしてあの有名なアルバムジャケットの撮影の時のフィルムもたっぷりと見ることができた。ジェームス・コバーンやクリストファー・リーが現れると、日本人の我々も「おお、すげえ!」と興奮してしまう。記念撮影の時のカメラマンのリンダが「ジェームス(コバーン)、顔が見えないわ。右にずれて」なんて指示を出しているのを見ると、やっぱり大物だなあと、改めて思ったしだい。そして「Bonus Audio Tracks」の名づけられたCDも紹介しよう。このCDの中では先の『One Hand Clapping』からの「音」が入っているのだが、まず映像ではナレーションが被っていた「Bluebird」をナレーションなしで聴くことができ、非常に繊細な出来のいいトラックだったのでそれだけで感激だ。「Jet」「Band On The Run」「1985」はもともとナレーションがなかったので映像と同じものだが、迫力が増している上にサウンドがDVDよりクリアーなのですっかり気に入って何度も聴いてしまった。そして「Let Me Roll It」「Country Dreamer」はフィルムにはない選曲なので、収録したものの使用されなかったボツテイクのようだ。このCDだけでも十分に価値がある。(佐野)
Various:『The 25th Anniversary Rock & Roll Hall
Of Fame Concerts』(Time Life/25824X)(Blu-ray) Various:『The 25th Anniversary Rock & Roll
Hall Of Fame Concerts』(Time Life/25805D)(CD)
曲順は違うが内容は同じものなので、映像を見た感想で、私の好きなアーティストのことについてのみ、紹介しておきたい。まずはこの2セットを買った最大の理由は、レイ・デービスがメタリカのゲストで登場していたからだ。先に紹介した『See My Friends』ではメタリカは「You Really Got Me」をカバーしていたが、このライブでは「All Day And All Of The
Night」。『See My Friends』のように基本はメタリカが歌うのかなと思っていたら、ここでは全てレイ先生が歌うという最高のパフォーマンスだった。『See My Friends』のジャケのレイ先生はだいぶジジイになっていたような写真だったが、ライブで見るとコードに片手を突っ込んだまま歌う立ち姿が実にカッコいい。まだまだいけるぜ。同じくゲストで最高にカッコよかったのはミック・ジャガーだ。U2が「Gimme Shelter」のイントロを引き出すと、突然、ミックが現れ、観客は大熱狂。次の「Stuck In A Moment You Can't Get Out Of」でもミックが歌うが、ファーギーやボノとからみながら歌うミックは本当に魅力的で、楽しくて笑顔になってしまう。ミックがいると画面がパッと華やかになる。たったひとりで全員の心をつかんでしまえるのはミックしかいないだろう。もうひとりゲストで素晴らしかったのはジョン・フォガティだ。CCRの「Fortunate Son」をブルース・スプリングスティーンと歌うが、実にソリッドで迫力があり、ロックっていいな!と叫びたいような気持ちになった。ジョン・フォガティはまだまだ見た目も若いし、もっとたくさん見たい気持ちになった。ほかではCS&N。まずは「Woodstock」。スティルスの当時と変わらない力強いヴォーカルとギター、そして3人の完璧なハーモニーは健在で、見た目はナッシュ以外でっぷりと太り(でも「LIVE AID」の時からは少し痩せた?)、とても老けてしまったが、音楽は健在だ。ナッシュはゲストを交えての「Teach Your Children」、クロスビーは「Almost Cut My Hair」と得意の持ち歌を歌い、スティルスはジェームス・テイラーをゲストに交えての「Love The One You're With」等と、楽しめた。そしてS&Gはこれまた当時と変わらない見事なハーモニーで「The
Sounds Of Silence」を歌い、感動的な「The Boxer」、ちょっと2番をサイモンが表情たっぷりに歌うのが気に入らない(なんでサイモンに限らず、大物は当時と同じに歌ってくれないんだろう?感情たっぷりに遅らせて歌ったり、節回しを変えて歌うのがいつも嫌)「Bridge Over Troubled Water」があり、「Mrs.Robinson」は中間に「Not Fade Away」を交えてグルーヴ感たっぷりに歌う。私は前からロックはエレキギターではない、アコースティック・ギターでもグルーヴ感があれば最高のロックになると、この「Mrs.Robinson」を例示して話しているのだが、やはりこの曲はカッコいい。またサイモンはナッシュ&クロスビーをゲストに「Here Comes The Sun」を歌った。ジョージ・ハリスンとサイモンは以前から仲が良く、一緒にテレビに出演したこともあったが、サイモンは未だにジョージのことを思い出してくれているんだなと嬉しくなった。その他でもダーレン・ラブがブルース・スプリングスティーンをバックに「A Fine Fine Boy」、いいオッサンになってしまったリトル・アンソニー&ジ・インペリアルズがア・カペラで「Two People In The World」を歌ったり、聴きどころは十分。ちなみに映像編はDVDがなく、ブルーレイのみ。ブルーレイの画質は圧倒的だから、これからこういうフォーマットになるかもね。(佐野)
レイ先生のファンは本当に多い。これはハード・ロックの原型である「You Really Got Me」などを生み出した先進性、アルバム『The Village Green
Preservation Society』以降の、ロックに付き物の「オシャレ」や「都会的」というものの拒絶した我が道を行く生き方、そしてその路線を10年続けた後のシンプルでソリッドなロックンロールに回帰した時のカッコ良さ、そういうレイ先生にみな男が惚れてしまったからだ。
このアルバムはそんなレイ先生の大ファンである大物ミュージシャンが、レイ先生と一緒にキンクスの歌を歌ったオムニバス。一緒に歌う面々はBruce Springsteen、Metallica、Bon Jovi(Jon & Richie)、Jackson
Browne、Black Francis(from Pixies)、Billy Corgan(from Smashing Pumpkins)、Gary
Lightbody(from Snow Patrol)、Mumford & Sons、Spoon、Paloma
Faith、Mando Diaoという豪華さ。曲はMetallicaの「You Really Got Me」をはじめ60年代のPye時代の代表曲が並ぶが、「Days」とメドレーで『Lola Versus...』収録の「This Time Tomorrow」という小癪な選曲があり、また同じく『Lola Versus...』から「Long Way From Home」、さらにシングルB面の「This Is
Where I Belong」と思わずにやりとしてしまう曲が登場する。RCA時代はBon Joviの「Celluloid Heroes」だけだが、Arista時代はBruce Springsteenと「Better Things」、さらに「All Day And All Of The Night」とチャンポンになる「Destroyer」(最高!)と、キンキーマニアも大満足だ。レイ先生はおおむねバックで歌っているが時々リード・ヴォーカルを担当しているのでそこを聴き分けるのも楽しい。ジャケットにはジジイになったレイの顔が並ぶが、ジジイでもカッコいいぜ!(佐野)
ソフトロック・ファンにはゲイリー・ゼクリーの『The Yellow Balloon』や「シェルブールの雨傘」のカバーを収録した男性デュオ『The New Wave』で知られるカンタベリー・レーベルの三作目で最終リリースとなった、Lisa Miller(リサ・ミラー)の『Within Myself』(68年)が米SUNDAZEDから世界初CDリイシューされたので紹介したい。
リサ・ミラーはミシガン出身のジャズ系白人姉妹デュオ、ルイス・シスターズのケイの娘で、67年のシングル・レコーディング当時は11歳の少女であった。
共に音楽学位を取得していたルイス・シスターズは60年代にモータウンでスタッフ・ライターもしており、グラディス・ナイト&ザ・ピップスの「Just Walk in My Shoes」(『Everybody Needs Love』収録 67年)などを手掛けていた。またスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズやザ・スプリームスに取り上げられた、ソフトロック・グループのシュガーショップの「Baby Baby」(『The Sugar Shoppe』収録 68年)も彼女達の作品である。そんな母親達のパイプとバックアップもあり、リサは65年にモータウン傘下のV.I.P.レーベルからリトル・リサ名義でシングル「Hang On Bill」をリリースする。未リリースだがザ・スプリームスの「Honey boy」なども録音している。
モータウン社長のベリー・ゴーディJrはリサをモータウン版シャーリー・テンプル(戦前の世界的子役スター。『サージェント・ペパーズ・・・』のジャケットにも登場している)として売り出すが、大きな成功を得ることは出来なかった。その後マテル社(バービー人形で知られる)創始者の息子で、カンタベリーを設立したケン・ハンドラーよりA&R担当として雇われたルイス・シスターズは"リサ・ミラー"としてリサを再デビューさせる。彼女達のプロデュースとソングライティング、ジャック・エスキューのアレンジにより67年にシングル「Love Is / The Loneliest Christmas Tree」をリリース、クリスマス・チャートで18位のヒットとなる。翌68年の春から本作『Within Myself』はレコーディングが開始され、引き続きルイス・シスターズのプロデュースの元、新たにアレンジャーとしてジーン・ペイジが参加した。ペイジについては一般的にモータウンや70年代のバリー・ホワイトなどソウル・ミュージック系のアレンジャーとして認識されていると思うが、フィレスからリリースされたライチャス・ブラザーズの「You've Lost That Lovin' Feelin'(ふられた気持ち)」(64年)のアレンジで一躍知られるようになり、カンタベリーでは『The New Wave』も手掛けている。バッキング・ミュージシャンについては今回のリイシュー・ライナーノートに詳しく記載されていないのだが、主なリズム・セクションにはレッキング・クルーが参加しているらしく、確かにハル・ブレインらしきシグネチャー・プレイを聴くことができる。またブレインの『Psychedelic Percussion』(67年)に参加している、ビーヴァー&クラウスのポール・ビーヴァーがモーグ・シンセサイザーで参加しているのが興味深い。
収録曲について少し触れておこう。アルバムのトップは67年のシドニー・ポワチエ主演の名作映画『いつも心に太陽を』の主題歌として、英国人女性シンガーのルル(自身も映画に出演している)がヒットさせた「To Sir With Love」のモータウン・スタイルでのカバー・ナンバー。オリジナルの歌い上げる感動的なヴァージョンは普遍的な名曲だったが、こちらのリズミックなヴァージョンも負けていない。リサのヴォーカルは11歳という年齢的には安定した歌唱法をしており、特段巧い訳ではないが耳の残る声質を持っている。
カバー曲は他にビートルズの「Fool on the Hill」(『Magical Mystery Tour』収録 67年)とジェファーソン・エアプレインの「White Rabbit」(67年)を収録しており、前者はビーヴァーによるモーグをフューチャーしたトルコ行進曲的なマジカルなアレンジ、後者はグレイス・スリックのファンだというリサの意向で取り上げられたらしい。アレンジ的にはハープシコードや木管を配置して、緊張感あるストリングスで煽るなど当時のサイケデリック・シーン影響下にあるスタイルだ。
ルイス・シスターズによるオリジナルは7曲で、マリンバのフレーズがオリエンタルなアレンジの「Be Like a Child」、シタール(マイク・ディージーのプレイか?)のイントロからソナタ風に展開する「Utopia」などアレンジ的に凝った曲が多い。後者のBパートではブレインらしき多彩なドラム・フィルが乱舞し、ペイジによるオーケストレーションもアーニー・フリーマンやジミー・ウエッブを彷彿させる素晴らしさだ。
当時のCMもそのまま入っていて楽しい。キャス・エリオットの人徳もあってゲストも豪華だ。まずは彼女の「Dream A Little Dream Of Me」「The River Of Life」。アルト・ヴォイスの彼女はこういうジャズ・タッチ&ソウル・ミュージック風のポップ・ナンバーがよく似合う。その後に寸劇などがあり、ゲストのジョニ・ミッチェルが「Both Sides Now」を歌う。弾き語りのギターは変則チューニング、スティーブ・スティルスに習ったのかな。そしてPPMのマリー・トラヴァースが「When I Die」を歌う。その後は3人で交互にリード・ヴォーカルを取りながらの「I Shall Be Released」。ブリッジのハーモニーも素晴らしく、実に豪華な組み合わせだ。その後はキャス・エリオットと過去、マグワンプスというグループで一緒のメンバーだったジョン・セバスチャンがソロになってからの「She's A Lady」を披露する。続いてキャス・エリオットは、ジョンがラヴィン・スプーンフル時代にしばしばプレイしていたオートハープを弾きながら、ジョンと一緒にスプーンフルの「Darlin' Companion」を歌う。このシーンが個人的には一番気に入っている。その後は、冒頭でも登場したミニスカートの黒人シンガー3人をバックに従えて「California Dreamin'」「Monday Monday」のママス&パパス時代のナンバーだ。ちょっとソウルフルでなかなかいい出来だ。そして「I Can Dream Can't I」と「Dancing In The Street」。やはり「I Can Dream Can't I」のようなジャズ・タッチのナンバーはいい。クレジットはないがクロージングも「Dream A Little Dream Of Me」でしっとりと終わった。ボーナス・トラックはサミー・デービスJr.と共演した「I Dig Rock & Roll Music」。歌はパワフル、でもやり取りはコミカル、サミーは本当にエンターテナーだなあ。歌も雰囲気もいいこのDVD、おススメである。(佐野)