”新しい出会いが生まれるコンピレーション”
このコンピレーションアルバムには、日本国内にとどまらず、海外を含めた多彩なアーティストが参加しており、ジャンルや国境、そして世代を超えて音楽を通じた新たな出会いとつながりを生み出した内容になっている。弊サイトでデビュー時より高く評価しているSaigenjiをはじめ、以前紹介したdahliaが楽曲を提供しているので紹介したい。
収録曲 / 参加アーティスト
白昼夢 Hakuchumu / Saigenji
Love is gone / kokodsten
I'm allowed to feel / Perfect Circle Project
Golden Harvest / Long Island
Mellow Lofi Morning / Energy Flow
コバルトブルーの夢 / dahlia
remember (2026 Remaster) / ophill
Bubble / Li Li Radio
I already know / Richard John
Endless Talking / Think Different
本作全体のプロデューサーである木村は全曲のマスタリングを手掛け、ソロユニットとしてPerfect Circle Project、Energy Flow、Think Differentの3形態と、ボーカリストAKIKO K.とのプロジェクトLi Li Radioで参加の他、3組で作曲とアレンジ、演奏にも関わっており、実に7割の収録曲のプロダクションに深く関わっている。そのため”木村円ワークス集”としての側面も持っており、ジャンレスで多彩な彼の音楽家としての才能を堪能できる。
ここでは弊サイトのカラーも考慮し、筆者が特に気になった歌物の収録曲を解説する。
冒頭の「白昼夢 Hakuchumu」はSaigenjiのソングライティングによる書き下ろしのボサノヴァで、昨年11月の「NOVA ERA」以来に正式発表された新曲である。Saigenjiのギターの弾き語りと木村のLess is moreイズムなアコースティックピアノの少数編成でそれだけで申し分ないのだが、さらに木村のアレンジによるプログラミングされたストリングスが加わることで、豊かな色彩のサウンドが生まれている。まるでクリード・テイラーが設立したCTIレコード作品における、クラウス・オガーマンのストリングス・アレンジに通じて、正に美しい白昼夢を見ているようである。なおSaigenjiは現在新しいソロアルバムのプリプロに入ったようなのでそちらも期待している。
続くkokodsten(ココディーエステン)の「Love is gone」は、ソングライティングとボーカル兼ギターのYuzi KobayashiとベースのKazumasa Oguriのユニットによる提供曲で、その編成や音像からスコットランドのブルー・ナイル(The Blue Nile)を彷彿とさせていて、筆者も好みのサウンドである。イントロからアナログ・シンセサイザーの名器プロフェット5で作ったようなキック(バスドラム)の音がしているのだが、驚くべきことに彼らは、ギターやベースなどの生楽器以外は、Nintendo DS専用音楽ソフトKORG DS-10のみを使用して曲作りをしているらしい。このようにローバジェットながら楽曲として優れているのは、エンジニアリングを含めて、細部までオリジナリティなサウンドを追求しているからだろう。
木村のソロユニットPerfect Circle Projectは、かつてPerfect Circle名義で活動し、ソフトロックやボサノヴァの楽曲を発表していた。本作では「I'm allowed to feel」を提供しており、作詞とボーカルにはLi Li Radio名義で本作に参加するAKIKO K.が担当している。クロディーヌ・ロンジェに通じるスローバラードのソフトロック調で、サビの着地点にはロジャー・ニコルス作曲の「Let Me Be The One」(ポール・ウィリアムス、カーペンターズ他)に通じる。木村はアコースティックピアノとストリングス・アレンジを施しており、AKIKO K.のアンニュイなボーカルを引き立ている。ストリングスの配置やヴォイシングをよく工夫されていて完成度は高い。
アート系アーティストやセラピストとしても活動し、韓国にもファンを多く持つシンガーソングライターKaoriのソロユニット” dahlia”は、9月11日に配信リリースしたばかりのシングル「コバルトブルーの夢」を本作に提供している。Kaoriの作詞に木村が作編曲したボサノヴァで、ギターにはkokodstenのYuzi Kobayashiが参加している。木村はここではエレピとシンセサイザー、ストリングス・アレンジを担当し、Kaoriのアンニュイなウィスパーボイスをフューチャーしてサウンドをよく演出している。
Dahlia
前出のLi Li Radio名義では「Bubble」を提供しており、AKIKO K.の作詞とボーカル、木村の作編曲及び演奏と分担している。Perfect Circle Projectとのサウンドの違いは、よりスウィートなメロディーラインをはじめ、中国語の歌詞とスペーシーなシンセサイザーを多用したサウンドの構築だろう。AKIKO K.が歌う中国の歌詞とこのサウンドが妙にマッチしていて、よく計算されていると感じた。
英国のシンガーソングライター、Richard Johnは自身のソングライティングによる「I already know」を提供し、ストリングス含めアレンジは木村が担当している。Richardの声質はジェームス・テイラーに通じるバリトンボイスで、曲調やサウンドからもAORの匂いがして本作の中では異色かもしれないが、筆者は非常に好みである。
とにかく特徴あるRichardのボーカルは耳に残り、そのソングライティング・センスはアメリカのシンガーソングライターからの影響を強く受けているが、自身が弾くエレクトリックギター・ソロの音色にはデヴィッド(デイヴ)・ギルモアの匂いもして、英国人としての感覚も残しているようだ。この曲でも木村はアコースティックピアノやアナログ系のモノシンセなどキーボード類の他、ドラム・トラックとストリングスのプログラミングまで担当して活躍している。
最後に本作の総評として、自らも音楽性の高いミュージシャンであるプロデューサー、木村円のセンスにより、各曲の細部にまで拘りを感じされるコンピレーションアルバムに仕上がっていると感じた。筆者の解説を読んで興味をもった読者は、下記の公式サイトから是非予約し入手して聴いてほしい。
◎CD版:12曲 / 300枚限定・シリアル番号入り
CD限定:Saigenji「白昼夢 Hakuchumu(Alt ver.)」、
dahlia「コバルトブルーの夢(Alt ver.)」
◎CDはコンピレーションの購入は公式サイトのこちらから
(テキスト:ウチタカヒデ)









