2025年2月5日水曜日

ザ・スクーターズ:『信藤三雄・プレゼンツ・ザ・スクーターズ・コンプリート・ボックス ~東京ディスコナイト~』


 80年代中期から30年以上に渡り、日本の音楽シーンのビジュアル・デザインを一新させたアートディレクターの信藤三雄氏が、その生涯に渡り情熱を注いだ大所帯バンド、ザ・スクーターズがコンプリート・ボックス『信藤三雄・プレゼンツ・ザ・スクーターズ・コンプリート・ボックス~東京ディスコナイト~』(ウルトラ・ヴァイヴ/CDSOL-2037TS/CDSOL-2037TM/CDSOL-2037TL/CDSOL-2037TX)を2月10日にリリースする。
 今回このボックスセットのアートワークを手掛けたのは、信藤の師匠である”テリー・ジョンスン”こと湯村輝彦氏で、ザ・スクーターズが2023年7月にリリースした7インチ・シングル『東京は夜の七時』から続くコラボレーションとなった。正立方体ボックスに描かれた群像画や封入されるポスターには彼等と交流のあった人々や「東京ディスコナイト」で楽しく踊るダンスフロアが描かれていて、ビジュアル面でも非常に個性的且つアーティスティックで、所有欲をくすぐるアート作品作品となっているのだ。

 
商品仕様(限定盤)
正立方体アートボックス化粧箱 
・CD5枚+DVD1枚(合計6ディスク)
・A2サイズ・ポスター・ブックレット5枚
・A3サイズ・ブックレット1枚
・テリー・ジョンスン・デザイン・
スペシャルTシャツ(S~XL)



 先ずこのバンドのプロフィールにも触れよう。日本音楽界でカリスマ・ジャケット・デザイナーと称される信藤三雄をリーダーとし、周辺のデザイナー仲間で結成され、そのガレージ・バンドがプレイする東京モータウン・サウンドは、業界の音楽通に知られることになった。1982年にファースト・アルバム『娘ごころはスクーターズ』でレコード・デビューするが、僅か2年間の活動で解散してしまう。その後91年と2003年にコンピレーション・アルバムがリリースされたことでリバイバルされ、ファーストから30年振りとなる2012年に橋本淳・筒美京平コンビ、宇崎竜童から小西康陽のソング・ライター陣が楽曲提供したセカンド・アルバム『女は何度も勝負する』をリリースし活動を再開した。
 以降は不定期でライヴ活動を続けており、現在のザ・スクーターズはボーカルのロニーバリー、ボーカルとコーラスを兼務するビューティ、コーラスのココとジャッキーの女性4名がフロント・メンバーで、リズム・セクションにギターの薔薇卍、ベースはサリー久保田、ドラムとタンバリンはオーヤ、キーボードとバンド内アレンジャーの中山ツトムだ。ホーン・セクションはアルト・サックスのサンデーとビートヒミコ、テナー・サックスのルーシーの3名で、バンドのムードメーカーとしてMCとボーカルのターバン・チャダJr.から構成されている。
 なおサリーは弊サイトで以前紹介した元ザ・ファントムギフトのメンバーとして、SOLEILや現在は高浪慶太郎とのWink Music Serviceの活動で知られている。また中山はピチカート・ファイヴの『Bellissima!』(88年)や『Soft Landing On The Moon = 月面軟着陸』(90年)、オリジナル・ラヴのセッションにも多く参加している手練ミュージシャンでもある。


 本ボックスセットは全6枚組で構成され内5枚はCDとなっている。2枚のオリジナルアルバムには初CD化を含むボーナストラックが収録され、1982年のファースト・アルバム『娘ごころはスクーターズ』には4曲。2012年のセカンド『女は何度も勝負する』には、2023年2月10日に惜しくも逝去した新藤三雄本人によるアルバム解説の貴重な音声が追加されている。  オリジナルアルバム以外では、2015年~2023年の間にリリースしたシングル音源12曲(内初CD化10曲)を収録した『THE VIVID YEARS』で、目玉は元アイドルでシンガーソングライターの星野みちるとスクーターズ名義の『東京ディスコナイト/恋するフォーチュンクッキー』まで収録している。また2017年11月下北沢BASEMENT BARでのワンマン・ライブTHE SCOOTERS COMES ALIVE!を収録し、翌18年3月にカセットとCDの完全受注生産で発売された『COME ALIVE!/THE BASEMENT TAPE』も含まれて、Motown Medleyを含むライヴ演奏が聴ける。 
 更にアルバム未収録音源、未発表ライヴ音源収録した『RARITIES』には、いずれも現在入手困難なSolid Recordsのコンピレーション『Best Of Solid Vol.3』(1992年)から2曲と、本作のアートワークを手掛けた湯村輝彦氏のトリビュート・ミニアルバム『A Tribute To Terry Johnson Pillow Talks』(2001年)に提供したシルヴィア・ロビンソンの「Pillow Talk」(1973年)のカバーも収録している。またデビュー直後の1982年11月池袋西武スタジオ200での12曲と、デビュー前の81年8月新宿Jamでの5曲の非常に貴重なライヴ音源まで収録している。

THE SCOOTERS - BASEMENT TAPE (Official Teaser)


 disc6のDVDは『WELCOME TO THE SCOOTERS SHOW ~ NOW&THEN ~』のタイトルの通り、THENの章はデビュー直前の1981年から第1期解散の1983年のライヴ映像と1986年のレコーディング風景。NOWの章では「かなしいうわさ」のミュージックヴィデオの他、再結成する2012年を挟んだ1998年から2023年までのライヴ映像が収録されている。
 以上の通り、コンプリートの名に相応しい、ザ・スクーターズの活動を辿って、その全貌が視聴出来るボックスセットとなっているので、このレビューを読んでスクーターズを初めて知った音楽ファンにもお勧めである。
 なおこのリリースを記念した個展も開催されるので、興味を持ったら是非遊びに行って欲しい。

信藤三雄 × テリー・ジョンスン プレゼンツ
ザ・スクーターズ展
THE SCOOTERS IN BOX BY 320 × TJ

■開催期間:2025年2月7日(金)~2025年2月18日(火)
■会場:Bankrobber LABO(バンクロバーラボ)
■所在地:〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町36-2
HMV record shop 渋谷 2F
■営業時間:11:00~21:00
■入場料:無料
▶Bankrobber LABO 公式ページ:https://www.hmv.co.jp/news/article/230421155#scooters
▶Bankrobber LABO 公式Instagram:@bankrobber_lab 

2025年1月26日日曜日

いい湯だな〜『にほんのうた』シリーズ

  先日、しりあがり寿presents 新春!(有)さるハゲロックフェスティバル'25〜あなたとわたしの温泉郷〜にThe Pen Friend Clubで出演し、イベントのテーマ曲だった「いい湯だな」を演奏した。

いい湯だな / The Pen Friend Club / さるフェス25

 これまで子供の頃にテレビで親しんだ "ドリフの曲" という認識だったけれど、この機会に改めて聴いてみると、なんとも他にないような風情がある曲だなと思う。この曲はもともと群馬県のご当地ソングだそう。「上を向いて歩こう」の作詞でも知られる作詞家永六輔と、「手のひらを太陽に」「ゲゲゲの鬼太郎」などの作曲家いずみたくが、日本各地を旅して作りあげた『にほんのうた』シリーズのひとつだそうだ。1965年から1969年にかけて発表されたこのシリーズの題材が46都道府県と本土復帰前の沖縄になっていて、全部で52曲ある。

 シリーズの歌い手に選定されたのはNHKの音楽バラエティ番組『夢であいましょう』のレギュラー出演などで活躍していたコーラスグループ、デューク・エイセスだった。黒人霊歌を得意とし、ジャズや落語、童謡など、幅広い分野をレパートリーに取り入れているグループということもあって適任と考えられた。取材の旅にはデューク・エイセスが同行することもあったらしい。

 1965年に発表された、京都を題材とした「女ひとり」は「いい湯だな」と同様に歌いつがれているヒット曲。〽︎きょうとおおはらさんぜんいん、の歌い出しには聴き覚えがある。この曲のヒットで大原・三千院への観光客は急増したという。

女ひとり / Duke Aces  

 「いい湯だな」は、翌年1966年に発表された。ドリフターズ版では歌詞の舞台となる温泉地の範囲が広がっていたけれど、デュークエイセスの原曲では上州の温泉について歌われている。

いい湯だな / Duke Aces

 『にほんのうた』シリーズの内容は楽しげなものや情緒溢れるものなど様々だけれど、一定層から注目を集める1969年発表の「クンビーラ大権現」などは異彩を放つ。

クンビーラ大権現 / Duke Aces

 この曲の題材になっている香川の金刀比羅宮(ことひらぐう/ 愛称: こんぴらさん)は明治元年の神仏分離令が出される以前は、神道と仏教が融合された神仏習合の神、金毘羅大権現(こんぴらだいごんげん)が祀られ、海上交通の守り神として特に船のりから信仰されていたそう。「金毘羅」の語源がサンスクリット語の「クンビーラ」で、歌詞に出てくるようにこの「クンビーラ」とはガンジス川に棲むワニが神格化された水神のこと。「大権現」は神号で、仏、菩薩が衆生を救うために仮の姿で現れたものを尊んで呼ぶそうだ。

 『にほんのうた』シリーズは、今では私がそうだったように「いい湯だな」や「女ひとり」などの曲単位でしか知らない人も多いようだけれど、シリーズとして聴いてみるとまた味わい深い。


執筆者・西岡利恵
60年代中期ウエストコーストロックバンドThe Pen Friend Clubにてベースを担当。


【リリース】
■ベストアルバム第二弾『Best Of The Pen Friend Club 2018-2024』
■カバーアルバム『Back In The Pen Friend Club』

試聴トレーラー:

CD、配信にて発売中。

【NEWS】
■クラウドファンディング開始!

2枚組NEWアルバム『Songularity - ソンギュラリティ』
制作&レコ発ツアー応援プロジェクト

プロジェクトページ











2025年1月19日日曜日

DAVID PATON:『Communication』


 英国ポップロック最高峰と称されるパイロット(Pilot)のフロントマンでベーシスト、デヴィッド・ペイトン(DAVID PATON)が、約2年振りとなるオリジナル・ニューアルバム『Communication』を1月22日にリリースする。
 2022年5月の日本のポップ・ユニット”SHEEP”とのコラボレーション・アルバム『メロディ・アンド・エコーズ』が記憶に新しいが、ソロ名義のオリジナル・アルバムとしては、2020年11月に個人レーベル“David Paton Songs”からリリースした『2020』以来、約4年振りとなる8作目となった。

 本作では『メロディ・アンド・エコーズ』に続き、SHEEPの堀尾忠司、田中久義との共作の4曲をはじめ、パイロット時代からファンには知られる作風通り、ポール・マッカートニー直系の英国ポップロック然とした本編11曲に、日本独自のボーナストラック2曲の全13曲を収録している。


 改めてデヴィッドのプロフィールに触れるが、1949年10月スコットランドのエジンバラ生まれの彼は、The Beachcombersのメンバーとして1968年にCBSレコードと契約し、同年バンド名をThe Bootsに変え、シングル「The Animal In Me」と「Keep Your Lovelight Burning」をリリースするも70年には解散してしまう。その後初期Bay City Rollersに代理メンバーとして加わるが短期間で脱退し、翌年同様に脱退したビリー・ライオール(キーボーディスト)、更にスチュアート・トッシュ(ドラマー)を加えて73年にパイロットを結成する。 
 彼らはEMIレコードと契約し74年にアラン・パーソンズのプロデュースで、ファースト・アルバム『From the Album of the Same Name』(同年10月)をレコーディングし、2曲目の先行シングル「マジック(Magic)」(同年9月)が全英11位、全米5位を記録し、カナダではゴールドディスクに認定されヒットした。ファーストのレコーディング後サポート・ギタリストのイアン・ベアンソンを正式メンバーに加えて4人組となり、翌75年の『Second Flight』の先行シングルで、デヴィッドが単独でソングライティングした「January」(同年1月)は全英1位となり国内最大のヒットとなった。
 その後オリジナル・メンバーのビリーが76年に脱退したため、サードの『Morin Heights』(76年)では残った3人にサポート・キーボーディストを加え、クイーンの諸作で知られていたロイ・トーマス・ベイカーのプロデュースの元でレコーディングしている。翌77年にはスチュアートも脱退し、デヴィッドとイアンの2人体勢のパイロットは、再びアランのプロデュースで『Two's a Crowd』(77年)をリリースするが同作がラスト・アルバムとなった。デヴィッド、イアン、スチュアートの3名は、アランが75年に結成したアラン・パーソンズ・プロジェクトの準メンバーとして、76年のファースト・アルバムから全盛期の80年前半まで参加し、そちらの活動の方がメインとなったことでパイロットは自然消滅した。

 この様に70年代から80年代を通して、英国ロック界でデヴィッドは大きく貢献してきた。パイロットとしては2002年と2007年にデヴィッドとイアンを中心にリユニオンしており、5thアルバム『Blue Yonder』(2002年)と、企画アルバム『A Pilot Project:A Return to The Alan Parsons Project』(2014年)をリリースしている。2017年以降はデヴィッドのソロ・プロジェクトとして現在も活動を継続している。
 一方イアン・ベアンソンは、長い認知症闘病の末、2023年4月7日に惜しくも69歳で亡くなっている。彼のギター・プレイは、パイロットやアラン・パーソンズ・プロジェクト以外のセッションでも知られており、日本でも有名なケイト・ブッシュの「Wuthering Heights(嵐が丘)」(1978年)のギターソロは、利き腕の右手首を骨折してギブスを付けたままプレイしたという。そんな彼のプレイは、この先も音楽ファンに長く聴き継がれていくだろう。 
 
 左上から時計回りに1stから4thアルバム

 本作『Communication』は既出通り、デヴィッドのソロ名義のオリジナル・アルバムとして、『2020』(2020年11月)以来、約4年振りとなる8作目となった。本国の英国では昨年10月20日にリリースして11曲を収録していたが、今回の邦盤では2曲のボーナストラックを追加して全13曲を収録しているのが嬉しい。
 デヴィッド単独名義のソングライティングは6曲で、SHEEPの田中久義との共作は3曲、同じく堀尾忠司との共作は1曲、また本作に参加したサポート・ドラマーのマーティン・ワイクス(Martin Wykes)、キーボーディストのジョン・ターナー(Jon Turner=John Turner)と各1曲ずつ曲作している。因みにターナーはエンジニアとして、プリファブ・スプラウトのファースト・アルバム『Swoon』(1984年)を手掛けていた。残りの1曲はデヴィッドと同郷のバンドザ・プロクレイマーズ(The Proclaimers)の1988年作「I'm Gonna Be (500 Miles)」のカバーで、選曲的によく練られた構成となっている。
 マルチプレイヤーであるデヴィッドの以外の参加ミュージシャンについては曲ごとに触れていくが、やはり共作者が演奏にも参加するスタイルが多い。ジャケットにも触れるが、セピア色のジャケット両面のショットは、デヴィッドの妻であるメアリー・ペイトンが撮影しているのが微笑ましい。ブックレットにはそんな夫妻の姿も写っている。

'Communication', the new album from David Paton. 
 Available now from pilot-magic.com 

 ここからは収録曲中筆者が気になった主要曲を解説していこう。 
 冒頭に相応しい「Yeah! Yeah! Yeah! Yeah!」は田中久義との共作曲で、原曲は田中がSHEEPの前に結成し、デヴィッドもリードボーカル他で参加した、BEAGLE HATのメジャーデビュー・アルバム『MAGICAL HAT』(2006年)レコーディングの際、デヴィッドが提供した「ON MY WAY」である。アレンジの基本構造は同じだが、ややテンポが早くなって、曲としての完成度も高くなっている。マーティンによるドラムと一部キーボード以外の全楽器をデヴィッドが一人多重録音でプレイしている。年齢を感じさせないデヴィッドのボーカルも健在で、パイロット・ファンも楽しめる。
 続く「All I Need」はデヴィッド単独のソングライティングで、ポール・マッカートニー直系のビートリーな良曲だ。レコーディングにはドラムのマーティンの他、“David Paton Songs”に所属するケニー・ハーバート&ラブ・ホワットの2人が、エレキギターとコーラスで、プロデューサーのデイヴィー・ヴァレンタインがオルガンで参加しており、スコットランドのハートビート・スタジオで撮影された同曲のMVで、参加メンバー達の楽し気な姿を目にすることが出来る。

 
All I Need. david@pilot-magic.com 

「Raindrops」は『メロディ・アンド・エコーズ』から引き続き再収録された堀尾忠司との共作で、尺が僅かに短くなっているが基本アレンジは同じで、ポールの『Ram』(1971年)をこよなく愛するファンは好きになるだろう。デヴィッドはウクレレとベース、キーボードとドラム・プログラミング、堀尾は特徴的なリフを弾くエレキギターとシロフォンの他コーラスも担当している。 
 一転してシリアスな「No Words」はソングライティングとアレンジ、全ての楽器をディッドが一人多重録音すており、コーラスには愛娘のサディが参加している。サウンドのポイントになっているフレットレス・や間奏のギターソロまで巧みにこなす、デヴィッドの器用さには脱帽するばかりだ。
 
 マーティンと共作した「Before I Let Go」は、やはりドラマーということでポリリズムのビートが基調になっていて、サウンド自体もデヴィッドが持つポップス感覚とは異なり、ピーター・ガブリエルなどを彷彿とさせて興味深い。こういった要素をアルバムの中でスパイスにさせているのだろう。
 タイトル曲「Communication」はデヴィッド単独のソングライティングで、所謂英国的なシリアスな曲調で、マーティンのドラム以外はデヴィッドの一人多重録音だ。「Before I Let Go」同様にこういった、80年代を意識したサウンドは、当時聴き込んでいたであろうマーティンがアレンジのアイディアを出しているようだ。
 本編ラストの「I Will Be King」はジョン・ターナーとの共作で、アレンジとキーボード、ドラム・プログラミングはジョンが担当し、デヴィッドは全てのギター、ベースをそれぞれ担当している。シンプルなドラム・トラックのビートと必要最低限の音数で構成されたサウンドをバックにデヴィッドのボーカルが感動的なバラードである。

 日本独自のボーナストラックに触れておこう。 「How can this love survive?」はデヴィッド単独作で、フェイザーが効いたテンポ感のある打ち込み主体サウンドが、本編のカラーが異なるのでオミットされたのかも知れないが、曲としては悪くない。プリファブ・スプラウトの『From Langley Park to Memphis』(1988年)でトーマス・ドルビーがプロデュースした楽曲に通じていて、好きにならずにいられない。 
 続く「I'm gonna be (500 miles)」はThe Proclaimersの1988年作のカバーで、オリジナルはリリースの5年後にジョニー・デップ主演の米映画『ベニー&ジューン(Benny & Joon)』(1993年)で使用されたことで英国外でもリバイバル・ヒットした。 
 ここではデヴィッドの愛娘サディが味わい深いリードボーカルを取り、テンポをかなり落とし、ブルージーなアレンジにモディファイされていて別曲の様な仕上がりになった。ボーナストラックゆえにパーソナル・クレジットがないのだが、ハーモニカのプレイも光っていて素晴らしい。

SADIE PATON

 英国が誇る伝説のロック・ミュージシャンであるデヴィッド・ペイトンの最新作を、パイロットの全盛期から半世紀過ぎた現在もこうして聴けるのは幸運である。筆者のレビューを読んで興味を持った音楽ファンは、是非入手して聴いて欲しい。 



(テキスト:ウチタカヒデ