”大塚兄弟主演、フェリスはある朝突然に”
ロックバンド“生活の設計”が、セカンド・アルバム『長いカーブを曲がるために』を2月11日にアナログLPでリリースする。今月7日には本リリースを記念したワンマンライブを開催するので参加する読者もいるだろう。
本作『長いカーブを曲がるために』は、昨年10月15日に配信で先行リリースしたアルバムなので、既に愛聴している読者も多いと思うが、そんな配信音源より再生周波数の帯域が格段に広く、高音質で聴けるばかりか、所有感を味わえるなどアナログLPのメリットは多々あるので、拘りを持つ音楽ファンは是非入手して頂きたい。
左から大塚薫平、大塚真太朗
彼ら生活の設計のプロフィールは、先月のワンマンライブの記事で触れたばかりだが、リーダーでボーカル兼ギター、ソングライターの大塚真太朗と、実弟でドラム兼コーラスの大塚薫平による2人組のロックバンドである。前身バンド“恋する円盤” や“Bluems (ブルームス)”時代を含め、9年以上の活動経歴を持っており、2023年4月にファースト・フルアルバム『季節のつかまえ方』、同年11月に7インチ・シングル『キャロライン』をリリースしている。なお本作『長いカーブを曲がるために』に収録された内2曲は、GREAT3(1994年~)の片寄明人がプロデュースを手掛けており注目なのだ。
またバンドのデビュー当時から、元ピチカート・ファイヴで著名クリエイターの小西康陽氏から高評価を得ており、ファッション・カルチャー雑誌『POPEYE』では対談記事が掲載され、その存在は音楽マニアから一般層にも広がっている。特筆すべきことに今年1月11日には、テレビ朝日の人気音楽番組『EIGHT-JAM』の【プロが選ぶ年間マイベスト2025】にて、元SUPERCARのギタリストで現在作詞家兼音楽プロデューサーとして活躍する、いしわたり淳治氏に、本作収録曲「小東京(リトル・トーキョー)」を選出されるという快挙もあり、今後彼らの活動もより一層注目されるだろう。
ここでは筆者による収録曲の詳細解説と、メンバー2人が本作の曲作りやレコーディング中、イメージ作りで聴いていたプレイリストをお送りするので聴きながら読んで欲しい。
冒頭の「街とダンサー」は、大塚(真)作らしい青春ブルーアイドソウルと呼べる、ポジティブながら散文詩的歌詞と躍動的なグルーヴが眩しい。サビの「しかめつらでもいいよ 帰り道はでかい音で音楽を聴くよ・・・」というライン、右チャンネルやセンターで聴ける、ゲスト・ギタリストの元Seukolの廣松直人によるブルージーなリフが強く耳に残り、曲の重要なエレメントとなっている。歌詞と曲の完成度が高く、冒頭のリード曲として相応しい。
続く「稀代のホリデイメイカー」は昨年9月17日に先行配信リリースされたシングルで前出の通り、片寄明人がプロデュースをした2曲の内の1曲で、レコーディングにはGREAT3のサポート・キーボディストで数多くのセッションで知られる堀江博久と、セッションマンとしてメジャー・ワークも多い井上真也が参加している。
アップテンポなシェイクビートに、Pico(樋口康雄)の「I LOVE YOU」(1972年)を彷彿とさせる和製ノーザン・ソウル風コード進行とスキャットのイントロでまずは耳を奪われるが、「とにかく外へ出て、旅に出て、さまざまなものを体験しよう」というテーマを持つ歌詞と大塚(真)の溌溂したボーカルが、メロディアスでポップなロック・ミュージックの心地良さを思い起こさせるナンバーに仕上がっている。大塚(薫)のやや前乗りのドラミングに、井上のバックビートにアクセントを持つべース・ラインが独特なグルーヴを形成し、堀江によるオルガンもメインのコード・ワークの他、グリッサンドのアクセント、スタッカートを活かせたオブリガード的リフなど多彩なプレイを繰り広げている。曲が持つべき方向性に的確に導いていくという、片寄のプロデュース力(りょく)を垣間見れる。
3曲目の「いちょう並木の枯れるまで」は、弊サイト読者にも強くアピールする東海岸シャッフルのリズムを持つソフトロックで、アルバム・リリース前のライブでも披露されており、筆者も生で聴いて直ぐに気になった曲である。弊サイト前進のVANDA監修書籍『ソフトロックA to Z』で発掘された、ジェリー・ロス(Jerry Ross)のプロデュースでジョー・レンゼッティ(Joe Renzetti)がアレンジした、Keithの「Ain't Gonna Lie(嘘はつかない)」をオマージュしており、ソフトロック・マニアは唸る筈だ。
A面ラストの「いさかいないせかい」は、片寄がプロデュースしたもう1曲で、フィラデルフィア・ソウル風のギター・リフ、Stax Records~Hi Recordsでドラマー兼プロデューサーとして活躍したアル・ジャクソン(Al Jackson Jr.)が編み出したリズム・パターン、ノーザン・ソウル風のフレーズ(「Am I The Same Girl」(「Soulful Strut」でも知られる))がモザイクでオマージュされたポップスだ。歌詞のテーマがユニークで、日常の情景から反戦イズムに繋がっていくというのが、作者である大塚(真)の世界観なのだろう。サウンド的にも大塚(薫)と井上によるリズム隊のグルーヴ、堀江のアープ系アナログ・シンセの温かみのあるソロなど聴きどころは多い。
B面冒頭の「タイニー・シャイニー」は昨年12月6日にアナログ・7インチでシングルカットされていて、ポール・ウェラーがフロントマンだったThe Jam(1972年~1982年)に通じる、パンキッシュなネオモッズ感覚のサウンドが特徴だ。大塚(真)による退屈な日々から逃避行したクラビングのワンシーンを切り取った歌詞が瑞々しく、彼のボーカルもこのようなアップビート・ナンバーでは一層映える。ゲスト参加したHedigan's(ヘディガンズ)のギタリスト、栗田将治がプレイするリード・ギターの存在感は極めて大きく、双方にとって意義のあるコラボレーションとなった。また大塚(薫)の激しいドラミングとコンビネーションするのは、ゲスト参加したLIGHTERSのべーシスト清水直哉だ。
同曲7インチのカップリングだった「君に起こりますように」は、レギュラー・サポートメンバーであるベーシストの大橋哲朗とキーボーディストの眞﨑康尚が参加し、大塚(真)のジェントルな歌詞とボーカル、眞崎による印象的なピアノが耳に残るラヴソングだ。ミドルテンポでメロディックなソフトロック調のサウンドで、米東海岸シャッフルのブリッジを挟んでいてアレンジ的にも凝っており、弊サイト読者にもアピールした好ナンバーに仕上がっている。
続く「ポモドーロ」は、眞﨑のウーリッツァー系エレピがメインコードを刻む、変拍子パートを持つ2分15秒の小曲だ。大塚(薫)と大橋のリズム隊も特殊なテンポ・チェンジを巧みにプレイしている。タイトルのポモドーロはイタリアンのトマトソース・パスタ名で、歌詞のモチーフの一つで、ガールフレンドとのローマ旅行がテーマになったラヴソングに仕上がっている。
B面ラストの「小東京(リトル・トーキョー)」は、前出の通り、『EIGHT-JAM』の【プロが選ぶ年間マイベスト2025】でいしわたり淳治氏に取上げられたばかりでなく、日本テレビ系ニュース番組の天気コーナーで一時タイアップされていた軽快なポップスだ。レギュラー・サポートメンバーであるパーカッショニストの關街によるコンガに絡むクランチ気味な廣松のエレキギター、大塚(薫)のビートも乗って展開していく。
この曲も歌詞の世界観がユニークで、ラヴソングの要素もあるが、高倍率ズームレンズでその視点が瞬時に移動していくのが興味深く、大塚(真)の高い作詞能力を感じさせる。その他のゲスト・ミュージシャンは、キーボーディストの眞﨑、べーシストの清水が参加している。
生活の設計『長いカーブを曲がるために』
プレイリスト
大塚真太朗
アルバムを聴いてもらった人でソフトロックやソウルミュージックを愛好しているリスナーだったらすぐ分かる、というかこのWebVandaの読者の方々にはすぐわかってしまう曲ばかりを元ネタにしているので、列挙するのも野暮かもしれませんが、、
でも曲名やアーティスト名をこうして書いてみるだけで心がウキウキする大好きな曲ばかりです。
「タイニー・シャイニー」に多大なる影響を与えた「恋はヒートウェーヴ 」はもちろん原曲も大好きですがあえてTHE COLLECTORS版で。ザ・リボンズというバンドの『君に届かない歌を大いに歌う』という作品に興奮した体験も曲に入れています。
何卒『長いカーブを曲がるために』をよろしくお願いいたします。
■A Week Away / Spearmint(『A Week Away』1999年)
■Ain't Gonna Lie / Keith(『98.6 / Ain't Gonna Lie』1967年)
■I’ll Be Around / The Spinners(『Spinners』1973年)
■恋はヒートウェーヴ / THE COLLECTORS(『愛ある世界』1992年)
■Too Young To Be One / The Turtles(『Happy Together』1967年)
大塚薫平
友達のミュージシャンや日頃支えてくれているサポートミュージシャンとの共作を通じて身近なバンドの音楽に触れる機会が増えた。それと同時に、ソリッドでいて勢いのある60、70年代のロックのドラムやそこのリファレンスを受けた音楽を意識して制作にあたっていました。
「稀代の〜」のリハでKey堀江さんに「(そのような)勢いあるドラムは年取ると出来なくなるよ」と言われました。なるべくずっとやれるよう筋トレしてます。
■In The Modern World / Fontaines D.C.(『Romance』2024年)
■マンション / Hedigan‘s(『Chance』2025年)
■It’s Not True / The Who(『My Generation』1965年)
■It’s Ok To Cry / Phoebe Katis(『It’s Ok To Cry』2020年)
■Deadstick / King Gizzard And The Lizard Wizard
(『Phantom Island』2025年)
なお本作はプレス枚数限定のアナログLPで、インナースリーヴの歌詞とクレジットの裏面にメンバーの大塚兄弟とプロデューサーの片寄明人への“ここでしか読めないインタビュー”が掲載された特別仕様となっている。
筆者の収録曲の詳細レビューを読んで興味を持った音楽ファンは、早期にリンク先のショップで予約して入手しよう。
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(テキスト:ウチタカヒデ)






















