2020年10月25日日曜日

一色萌:『Hammer & Bikkle / TAXI』(なりすレコード / NRSP-789)

 

 女性プログレ・アイドルグループXOXO EXTREME(キス・アンド・ハグ エクストリーム)のメンバー、一色萌(ひいろもえ)がソロ・デビュー作となる7インチ・シングル『Hammer & Bikkle / TAXI』を11月3日(レコードの日)にリリースする。 
 カップリング曲を見て気付いた人は、なかなかの英国ロック・マニアだ。70年代に活動した伝説のパブロック/パワーポップ・バンド、デフ・スクール(Deaf School)の代表曲「TAXI」(77年)の日本語カバーである。  

 まずは一色と彼女が所属するXOXO EXTREMEについて紹介するが、2015年5月結成のxoxo(Kiss & Hug)(キス・アンド・ハグ)を母体に、翌年12月に一色萌らが参加してXOXO EXTREMEとなり、現在4名のメンバーで都内のライブ・イベントを中心に活動している。プログレッシヴ・ロックでパフォーマンスするという斬新さで注目されており、現メンバー中一色が最も活動歴が長いのでリーダー格といえる。

 ここでは筆者による収録曲の解説と、一色が本作のレコーディング中に聴いていた曲を選んだプレイリスト(プラス 筆者選デフ・スクール・ベスト)を紹介しょう。 
 「Hammer & Bikkle」は、佐藤望と共にカメラ=万年筆の活動で知られるキーボーディストの佐藤優介のソングライティングとアレンジによる書き下ろしのオリジナル曲だ。筆者は8月半ばに入手した音源を聴いて気付いたのだが、この曲のイントロはニック・ロウの「Half a Boy and Half a Man」(『Nick Lowe and His Cowboy Outfit』収録 / 84年)のそれをオマージュしている。
 このモッドでパブロック色の強いサウンドと、一色の正確なピッチで艶のあるキャンディ・ボイスとのギャップは新鮮でいたく感動した。パンキッシュなコンボ・オルガンを中心に殆どの楽器は佐藤がプレイ(及びプログラミング)しており、ギターのみbjonsの渡瀬が参加している。その渡瀬はいつものギター・スタイルとは異なるクランチ・サウンドでプレイしており、この曲に大きく貢献している。 


 カップリングの「TAXI」は、熱心な英国ロック・マニアには説明不要だが、リバプールで結成された70年代英国のパブロック/パワーポップ・バンド、デフ・スクールの77年のシングル曲の日本語カバーである。しかも今回そのデフ・スクールのメンバー本人達が、本カバー・プロジェクトのためにリレコーディングを敢行してくれたというのから信じられないニュースなのだ。

Deaf School

 因みにこの曲は彼らのセカンド・アルバム『Don't Stop the World』(77年)にも収録され、バンド史でも代表曲の筆頭に挙げられるが、チャート的には振るわなかった。このバンドには強烈な個性と才能のあるメンバー達が多く在籍し、元アップル・レコード重役のデレク・テイラーがA&Rマンだったのにも関わらず大きな成功には至らず、3枚のオリジナル・アルバムを残して78年にバンドは解散してしまう


 その後ギタリストでメイン・ソングライターだったクライヴ・ランガーは、エンジニアのアラン・ウィンスタンリーと組んでプロデューサー・チームとして、マッドネスの『One Step Beyond...』(79年)やデキシーズ・ミッドナイト・ランナーズの『Too-Rye-Ay』(82年)、エルヴィス・コステロの『Punch The Clock』(83年)等々名作を数多く制作している。筆者は特にコステロの2枚やゼイ・マイト・ビー・ジャイアンツの『Flood』(90年)、モリッシーの『Kill Uncle』(91年)を愛聴していたので、クライヴのことは一流プロデューサーとして認識していたのだ。
 またベースのスティーブ・リンジーは、79年にニューウェイヴ・バンドのThe Planets(ザ・プラネッツ)を結成し2枚のアルバムをリリースしており、レゲエのビートをロック的解釈で取り入れて注目される。そのサウンドは日本のムーンライダーズや一風堂(リーダーは土屋昌巳)にも大きな影響を与えた。  

 今回の一色のカバー・ヴァージョンの話題に戻すが、実に43年の歳月を経てデフ・スクールのメンバー達にリレコーディングさせてしまった、彼女とレーベル代表やスタッフの情熱には敬服するばかりだ。激しいパート転回を持つ3分半のソナタというべきこの曲は、それ相当の演奏力を伴うがここでも色褪せることはなく、オリジナル・ヴァージョンより円熟感を増したプレイを聴くことが出来る。
 ここでも一色のキャンディ・ボイスとのギャップは成功していて、不毛の愛をテーマにした歌詞の世界観を引き出している。
 日本語の訳詞とナレーションは、伝説のバンド“シネマ”(日本のデフ・スクールといえる。リード・ヴォーカルは松尾清憲)のベーシストで、現在“ジャック達”を率いる一色進(いっしき すすむ)氏が担当しているのも見逃せない。

【一色萌がレコーディング中に聴いていたプレイリスト・プラス】

●TAXI / Deaf school(『Don't Stop The World』/ 1977年)

●The Celtic Soul Brothers / Kevin Rowland & Dexys Midnight Runners (『Too-Rye-Ay』/ 1982年)

●So It Goes / Nick Lowe(シングル『So It Goes』/ 1976年)

●Believe me / Madness(『One Step Beyond...』/ 1979年)

●The Invisible Man / Elvis Costello & The Attractions (『Punch The Clock』/ 1983年)

●あ!世界は広いすごい / ゆるめるモ!(『Talking Hits』/ 2017年)

●恋のすゝめ / 僕とジョルジュ(『僕とジョルジュ』 / 2015年 )


 数量が限られた7インチ・シングルなだけに、興味を持った音楽ファンは大手レコード・ショップで早急に予約して入手しよう。
 
JETSET  

(ウチタカヒデ)

2020年10月21日水曜日

【ガレージバンドの探索・第十回】The Pirates

 昨年末、関西に帰省するバンドメンバーに頼んで大阪のレコード屋さんで買ってきてもらったThe Piratesの7インチ (Back Stage Records – 5001)。バンドのことを少し調べてみたのだけれど、数ある一発屋のガレージバンドと同じように情報はあまり見つからなかった。僅かに出てくる情報も、Jonny Kidd & The Piratesと間違えられていたり、カリフォルニア出身だ、ニューオーリンズ出身だ、とかだいぶ錯綜しているけれど、おそらく正しくはルイジアナのバンドと思われる。オリジナル盤のリリースは65年か66年のようだ。

Cuttin'Out  /  The Pirates

 コンピレーション『VA - Don't Be Bad! 60s Punk Recorded In Texas』(CDSOL-8345 Solid Records/Big Beat)に収録されていて分かったのだけれど、プロデューサーは、Sir Douglas QuintetやBarbara Lynnのプロデュースで知られる Huey P. Meaux(The Crazy Cajun)だった。このコンピはHuey P. Meauxが60年代に手掛けたガレージパンク作品を集めたものだそう。

 ガレージのコンピは地域で括られているものをよく見る。音楽性によってジャンル分けされたりするのは、自分好みの音楽に出会える道しるべとして便利なものだと思うのだけれど、ガレージは地域性が色濃いことや、バンド自体よりも曲単位で知られることが多い特性もあって、どこの地域のバンドかを知るのがジャンル分けと同じように特に役立つのかもしれない。

 The Piratesについて、レコードコレクターの間でこれはガレージじゃない、R&Bだという人もいて意見が分かれるらしい。そういえば、ガレージが好きだという話をすると、ガレージって何?と聞かれることがあるのだけれど、いつも上手に説明できない。

 よく成り立ちとして説明されているのは、60年代半ばにブリティッシュ・インベイジョンの影響を受けたアメリカの若者がガレージ(車庫)で演奏していたことが始まり、というもので、そういう形式なのでもともとは本当に音が悪かったのだろう。そんな環境の中で生まれた味わいを含む音、音楽が今はガレージという1ジャンルとして確立した、ということかもしれない。

 激しいのもあれば、大人しそうなのもあったり、傾向として演奏が下手な場合も多いけれど、下手ならガレージになるわけでもなく、どういうものかと考えると難しい。ただガレージが好きな人は、聴いた時にそれがガレージだと分かる、というような音楽なんじゃないかと思う。

【文:西岡利恵




2020年10月17日土曜日

bjons:『抱きしめられたい』(なりすレコード / NRSP-775)



 
ポップスバンド、bjons(ビョーンズ)が7インチ・シングル『抱きしめられたい』を10月24日にリリースする。なおこのシングルはカップリング曲を含め既に配信リリースされていたが、7インチ・アナログという温かみのあるメディアで聴くことを勧めるので紹介したい。
 
 彼らbjonsは、2017年にヴォーカル兼ギターの今泉雄貴、ギターの渡瀬賢吾とベースの橋本大輔の3人で結成された。サポートメンバーにドラムの岡田梨沙(元D.W.ニコルズ)、キーボードの谷口雄(元森は生きている、現1983)を加えて都内を中心にライヴ活動をしている。2018年5月にはファーストアルバム『SILLY POPS』をリリースして、ポップス・マニアからの評価も高い。同年7月には同アルバアムから7インチで『ハンバーガー / そろりっそわ』をシングル・カットしており、ジャケット写真が熱心なソフトロック・ファンには知られるThe Paradeの日本編集盤のそれをオマージュしていて楽しい。
 2018年12月にはアルバムの大瀧詠一作品カバー集『GO! GO! ARAGAIN』にも参加しており、「雨のウェンズデイ」をカバーしている。またメンバーの渡瀬は、Spoonful of Lovin'とroppen(橋本も参加)のメンバーで、今年6月に紹介したポニーのヒサミツの『Pのミューザック』でもプレイしており、セッション・ギタリストとして様々なレコーディングやライヴで活躍している。弊サイト企画の『名手達のベストプレイ第8回~デイヴィッド・T・ウォーカー』に参加してくれたのも記憶に新しいと思う。 


 ここでは筆者による収録曲の解説と、bjonsの3人が本作のレコーディング中に聴いていた曲を選んだプレイリストを紹介しょう。
 タイトル曲の「抱きしめられたい」は、カーティス・メイフィールドによる「We've Only Just Begun」のカバー(『Curtis/Live!』収録/ 71年)よろしく、ナチュラルトーンの繊細なギターのフレーズに導かれて静かに始まるスローナンバーだ。
 ソングライティングを担当した今泉の気怠そうな鼻腔から響く声質は一度聴いたら忘れられず、スタイルのみを踏襲したネオ・シティポップ系とは明らかに異なるメロウネスなサウンドと共にこのバンドの個性となっている。渡瀬のデイヴィッドT系の巧みなギター・プレイと、チャック・レイニーを彷彿とさせる橋本の職人的ベースラインにも聴き惚れてしまうのだ。

 
抱きしめられたい / bjons  

 カップリングの「フォロー・ユー」は、谷口の小気味良いウーリッツァーのコード・ワークがリードするリズミックな曲調で、ドラムの岡田を含めた手練達によるリズム・セクションのコンビネーションがとにかく素晴らしい。70年代のジェームス・テイラーとセクションの関係性にも通じる歌と演奏である。

 【bjonsがレコーディング中に聴いていたプレイリスト】
 

●Running Away / Joey Dosik(『Game Winner』/ 2018年) 
◎David T. WalkerとJames Gadsonが参加したVulfPeckバージョンも素晴らしいですが、本人名義の録音では柔らかいアレンジで楽曲の強さが際立っています。「抱きしめられたい」のアレンジの取っ掛かりになった楽曲です。(今泉)

●So in Love / Curtis Mayfield
 (『There's No Place Like America Today』/ 1975年)  
◎楽曲制作〜アレンジ期間中、何年かに一度くる”カーティスにぞっこん”期が来ていました。シンプルなグルーヴに緩めのホーン、カーティスのヴォーカルも最高。飽きの来ない楽曲です。(今泉) 

●Honest Man / Fat Night(『Honest Man』/ 2017年) 
◎アレンジ期間中にプレイリストで知ったシカゴの4人組バンド。素性はほとんど知りませんが、絶妙な湯加減の演奏が気持ち良く展開も鮮やかです。(今泉)  

●Voce E Linda / Caetano Veloso(『Uns』/ 1983年)
◎とにかく美しい楽曲。シンセの音に80年代っぽさを感じますが、それがまた妙な郷愁感を醸し出していて、なんだか儚い。レコーディング期間に繰り返し聴いていました。(今泉)


●Dupree / Kirk Fletcher(『Hold On』/ 2018年) 
◎個人的にブルース回帰している近年、最も影響された人。洗練されたコード感、歌うようなソロ、リズムギターの躍動感などどれも素晴らしく、REC期間中もヘビロテ。来日公演も最高でした。(渡瀬)

●Rosalee / The Chris Robinson Brotherhood 
 (『Big Moon Ritual』/ 2012年)
◎夏は毎年グレイトフル・デッドの季節ですが、去年のREC期間はその影響下にあるCRBもよく聴きました。ニール・カサールの空間系とファズの使い方は「フォロー・ユー」などで参考にしています。早すぎる逝去がなんとも残念。(渡瀬) 

●Love is the Key / Isaiah Sharkey
 (『Love is the Key』/ 2019年)
◎いわゆるネオ・ソウル文脈の中で最初に気に入った人。まるでカーティス!なこの曲は言うまでもなく、他の曲もヒップホップを通過したビートにワウを絡めたメロウなギターがよく合います。(渡瀬) 


●Dear Abby / Clarence Carter
 (『Lonelines & Temptation』/ 1975年) 
◎御大C.Cが、プライベートスタジオで制作したアルバムから。3分程の曲中、半分は語っていますが、得意の高笑いはないので安心して身を委ねられます。
George Jacksonとの共作、南部産スウィートソウルの佳作。(橋本) 

●This Is Your Night / Johnnie Taylor
 (『This Is Your Night』/ 1984年) 
◎同年亡くなった、Z.Z.Hillの魂を引き継ぐかのようなMalacoからの1枚目。作曲にGeorge Jackson、御大J.Tが歌えば、極上のスローバラードに仕上がるのは当然なのです。(橋本) 

●I Touched A Dream / The Dells
 (『I Touched A Dream』/ 1980年)
◎Dells史上、最高のバラードと言っても差し支えのない曲。クレジットを眺めるだけで、胸高なるシカゴサウンドが聞こえてきます。50年代から活動し、とにかく素晴らしい作品だらけ。愛しています。
(橋本)
 

 数量が限られた7インチ・シングルなだけに、興味を持った音楽ファンは大手レコード・ショップで早めに予約して入手しよう。 

(ウチタカヒデ)

 

2020年10月12日月曜日

Argyle:『DOWN TOWN / ぼーい・みーつ・がーる』(unchantable recoerds/UCT-32)

 

 大阪を拠点に活動する大所帯パーティー・バンドのArgyle(アーガイル)が、13年振りの新作として7インチ・シングル『DOWN TOWN / ぼーい・みーつ・がーる』を10月14日にリリースする。

昨年紹介した宮田ロウの『ブラザー、シスター』の先行シングル『悲しみはさざ波のように』と同様、弊サイト企画”ベストプレイ・シリーズ”の常連であるグルーヴあんちゃんが主宰するUNCHANTABLE RECORDSからのリリースだ。

 彼らは大阪のクラブシーンで人気のバンド、hot hip trampoline schoolやa million bamboo、pug27等で活躍中のキーボード兼ヴォーカリストのキャイこと甲斐鉄郎を中心に、1995年に結成されたホーン隊とフルートを含む総勢10人名のバンドだ。これまでに『HARMOLODIC』(2003年)と『Go Spread Argyle tune』(2005年)のオリジナル・アルバムをリリースしており、本作は2007年の7インチ・シングル『WALK OUT TO WINTER』(アズテック・カメラのカバー)以来のリリースとなる。 

 本作『DOWN TOWN』のオリジナルは、弊サイト読者にはお馴染みの山下達郎と大貫妙子が参加した伝説のバンド、シュガー・ベイブ(1973年~1976年)の唯一のアルバム『Songs』(75年)と同時リリースされたシングルとして世に出た。この曲はリリース時より後の80年にシンガー・ソングライターのEPOが、デビュー・シングルとしてカバーしたヴァージョンが一般的に知られるようになった。これは当時フジテレビ系の人気バラエティ番組『オレたちひょうきん族』のエンディング・テーマ曲に採用されたことも大きく影響している。

 伊藤銀次の作詞で山下達郎の作曲のクレジットになっているが、サビのリフレインは伊藤のソングライティングであったことがマニアには知られている。またよく言われるアイズレー・ブラザーズ「If You Were There」(『3 + 3』収録/73年)へのオマージュではなく、ザ・フォー・トップス「I Just Can't Get You Out Of My Mind」(73年)を意識していたということだ。筆者作成のプレイリストを聴いてみて欲しい。)

  今回アーガイルのカバーではヴォーカルには、元クリームチーズオブサン(原田茶飯事がフロントマンだった)のメンバーで、現在は前川サチコとグッドルッキングガイ(甲斐も参加)を率いる前川サチコを迎えて、彼女のチャーミングな歌声をフューチャリングしている。

 アレンジ的にはアーチー・ベル&ザ・ドレルズの「Tighten up」(68年)に、弊誌監修の『ソフトロックAtoZ』(初版96年)の巻頭カラーページでお馴染みのアルゾ&ユーディーンの「Hey Hey Hey, She's O.K.」(『C'mon And Join Us!』収録/68年)をミックスしてオマージュしたイントロに先ずはやられてしまう。「Tighten up」のグルーヴは、本編サビのリズム・セクションでも引用されており、ホーン・アレンジにはバーバラ・アクリンの「Am I The Same Girl」(68年)のそれを意識しているから更にたまらない。長年クラブシーンで活動していた彼らならではのサウンド・メイクは成功している。

 カップリングの「ぼーい・みーつ・がーる」は甲斐のオリジナルで、flex life (フレックス・ライフ)の青木里枝がフューチャリングされており、彼女のハスキーでソウルフルな歌声が聴きものだ。

 独特のシンコペーションのリフが効いたR&Bパートと、ブリッジのボサノヴァ・パートのコントラストが効果的で、アーガイルにしか出来ない折衷感覚のシティポップ・センスはさすがである。元メンバーで現在NEIGHBORS COMPLAIN(ネイバーズ コンプレイン)で活動するギタリストのGottiのプレイも全編でデイヴィットTを彷彿とさせて、筆者も初見で気に入ってしまった。 

 数量に限りのある7インチ・シングルなので、筆者の解説を読んで興味を持った音楽ファンは早めに入手して聴くべきだ。 

(ウチタカヒデ)

 

2020年10月7日水曜日

sugar me:『Wild Flowers』(WILD FLOWER RECORDS / WFRSM-10002)



 女性シンガー・ソングライター寺岡歩美のソロ・プロジェクトsugar me(シュガー・ミー)が、5年振りのオリジナル・アルバムを10月7日にリリースした。
 弊サイトでは昨年11月に紹介したクリスマス・コンピレーション・アルバム、『Natale ai mirtilli』に参加したことも記憶に新しいsugar meは、寺岡のトライリンガルな歌詞世界をポップ且つアコースティックなサウンドをバックに、ナチュラルで個性的なヴォーカルで表現する希有なソロ・ユニットである。
 これまでに2枚のオリジナルと1枚のカバーアルバムをリリースしているほか、FUJI ROCK FESTIVALやRISING SUN ROCK FESTIVALなど大型野外音楽フェスへの参加やフランスでのソロ・ツアーを成功させている。またソロ活動以外にもCMや映画、アニメーションへの楽曲提供をはじめ、その容姿を活かしてモデル業や映画出演、FM番組のDJとその活動フィールドは多岐に渡っているのだ。

 サード・フルアルバムとなる本作『Wild Flowers』は、昨年彼女が移住した長野県松本市で立ち上げた、自主レーベルWILD FLOWER RECORDSからのリリースで、これまでに交流のあった著名ミュージシャン達の参加も見逃せない。NEIL & IRAIZAのメンバーでコーネリアスでの活動で知られるキーボーディストの堀江博久、赤い靴のメンバーで大橋トリオにも参加するドラマーの神谷洵平がプレイしているのをはじめ、アレンジャーとしてはハヤシベ・トモノリ(Plus-Tech Squeeze Box)、フランスのミュージシャンのORWELLことジェローム・ディドロが参加している。 
 なお本作には、現在HTB北海道テレビで放送中の情報番組、『イチオシ‼』のコーナー、『ジブンイロ』のテーマソングとして使用され、5月に先行配信された「Follow The Rainbow」も収録されているなど話題も多い。


 ここでは筆者が気になった主な収録曲の解説と、寺岡が選曲したプレイリスト【sugar meのルーツとなる楽曲】を紹介しょう。

 冒頭の「Gift From The Sea」は、全編に打ち込みトラックを導入した点でsugar meとしては新境地だろう。リヴァーブ・エコーと音の隙間を活かしたサウンドに漂う寺岡のヴォーカルがひたすら気持ちいい。3人組ユニットlittle moaの5MBSが、バックトラックのアレンジとプログラミングを担当している。 
 続く「Land Of Tomorrow」は、生楽器とプログラミング・サウンドが有機的に融合された心地よい音像が80年代後期のギター・ポップにも通じて耳に残る。アレンジとプログラミングはORWELLのジェローム・ディドロが担当しており、神谷の生ドラムの他、ベースの近藤零、ピアノのプログラミングでかしわさおりが参加して、寺岡のアコースティック・ギターと美しいヴォーカルをサポートしている。

Flower In Anger / sugar me 

 神谷と近藤のリズム隊が終始ファンキーなプレイをする「Flower In Anger」は、緊張感のあるバースとそれを解放するサビの展開のコントラストが素晴らしく、非常にクールなナンバーである。
 ジェロームがアレンジとプログラミングを担当したもう一曲の「Nancy」も独創的で、筆者のファースト・インプレッションでは本作中のベスト・トラックだ。フランス北東部の芸術薫る同名の街に捧げたというその曲は、アメリカン・ルーツ・ミュージックを原石とするオールド・タイミーな曲調を巧みに掬い上げ、同地の風景が目に浮かぶ繊細でドリーミングなサウンドに仕上げている。メロトロン系のキーボードで奏でた木管アンサンブルのオブリガート、ジェロームとはORWELLやVariety Labの仲間である、ティエリー・ベリア(Thierry Bellia)がプレイする小型電子鍵盤楽器“オプティガン”がいいアクセントになっている。


Follow The Rainbow / sugar me
 
 番組タイアップ曲で先行配信された「Follow The Rainbow」は、WebVANDA読者には特にお勧めできるサンシャイン・ポップであり、魅力的なソフトロック・サウンドだ。現代的によくアレンジされており、寺岡の声質を活かしているのは、リミキサーとしても高名なハヤシベ・トモノリの職人的センスならではだろう。 
 後期ビートルズのジョン・レノン的ソングライティング・センスが光る「Black Sheep」は、シンプルなアレンジながらフレンチ・ポップに通じるのは、寺岡の歌唱法と堀江博久の巧みなピアノ・プレイによるものだろう。手数の多い神谷のドラムも効果的である。
 続くバラードの「About Love」でも堀江のピアノをフィーチャーしており、自身のアコースティック・ギターとのシンプルな編成の一発録りで、表現力豊かに歌われる。曲そのものの素晴らしさが滲み出た名演といえる。 

 自身の結婚を機に書き上げたという「Table For Two」は6/8拍子でシンプルな編成ながら、好きにならずにいられないソングライティングである。特に2コーラス目から入るエンドウシンゴによるストリング・アレンジがこの曲を格調高く豊かなサウンドにしている。筆者は86年にドリーム・アカデミーがカバーしたザ・スミスの「Please Please Please Let Me Get What I Want」を想起して、たまらない気持ちになってしまった。 
 ラストの「夜はやさし」は、故郷である北海道の震災時に家族への思いを綴った小曲で、普遍的な曲調は時代を超えた懐かしさを強く感じさせる。かしわさおりのピアノと自身のアコースティック・ギターで歌われるハート・ウォームな歌声は多くの人を魅了するだろう。  

 本作全体の総評として、sugar me=寺岡の巧みなソングライティングと個性あるヴォーカルを各アレンジャーやミュージシャン達がより良く活かしており、そんな面々をアサインした彼女自身のプロデュース力も強く評価したい。収録曲のトータル感もあり、これからの季節に自宅で長く聴ける、丁寧でジェントリーな音作りは聴く者を選ばないだろう。

   
 【sugar meのルーツとなる楽曲のプレイリスト】 

●In My Life / The Beatles(『Rubber Soul』/ 1965年) 
◎オールタイムベスト 

●Company / Rickie Lee Jones(『Rickie Lee Jones』/ 1979年) 
◎SSWを始めるきっかけの人 

●Sugar me / Lynsey De Paul (『Surprise』/ 1973年)
◎毒っ気のある甘さ、名前の由来になっている1曲

●Je ne sais pas mourir / Orwell (『Exposition Universelle』/ 2015年)
◎今作アレンジ参加もしているフランスの友人

●L'aquoiboniste / Jane Birkin (『Ex Fan Des Sixties』/ 1978年) 
◎フレンチ・ポップを好きになるきっかけの曲 

●You go to my head / Billie Holiday (『Billie Holiday Sings』/ 1952年)
◎一番好きな歌い手

●Son of Sam / Elliott Smith (『Figure 8』/ 2000年) 
◎SSWの理想像

●Foolish Love /Rufus Wainwright (『Rufus Wainwright』/ 1998年) 
◎印象に残っているライブ

●Paper Bag / Fiona Apple (『真実』/ 1999年)
◎衝撃を受けた人

●Jesus Was A Cross Maker / Judee Sill
  (『Live In London The BBC Recordings 1972-1973』/ 2007年) 
◎一度でいいからライブを聴いてみたかった


 (ウチタカヒデ)


2020年9月27日日曜日

Stay Home(California 完結編 part 2)


(地図  "a")
(地図  " b")



 【Stay Home (California編 part 1より

 本稿出稿の9月は日本においては本来行楽シーズンではあるが、米国も同様に9月の初旬は祝日Labor Dayにあたる時期はバカンスに向けられる。
 Wilson家も世間に合わせて父Murryの取引先の夫婦同士Mexico旅行に出かけることとなった、Brianをはじめとする子供たちはお留守番。食費として受け取ったなけなしの小遣い数十ドルが彼らに火をつけた!Alが開口一番

「これで楽器を借りてみんなでBrianの作った曲を歌おうよ」
「バンドとしてモノになるならレコード出そうぜ!」

 そこでプロ仕様のレンタルを行っていたHogan's Music(地図中16)へ車を走らせ楽器を借りてくることを計画した。計画は直ちに行き詰まる、食べ盛りのお年頃故に軍資金の大半が飲み食いに消え万事休す! 
 そこで金策に走るためAl Jardineの実家に急遽白羽の矢が立ったのだった。
 実家(地図中19)にはAlの母がおり、AlがBrian宅でした話を伝え、投資を懇願した。内容次第なら対応するとの事だったのでAl宅で臨時オーディションが行われた、披露したのはFour Freshmenのカバー「Their Hearts Were Full Of Spring」。
 当然一撃で了承をもらい数百ドルを手に入れ見事計画実行となる。
 Brianの部屋に楽器を運び込みセッションは始まり、近所の友人も呼び込んで自作「Surfin'」は何度も演奏されたのだった。
 バカンス後帰宅した父Murryの目に映った息子たちの姿は、父親としては不行跡に激怒したものの、音楽家のはしくれとしては息子たちの音楽の魅力に合格点を与えざるを得なかった。この日以降The Beach Boysの歩みが始まるのはその後の歴史が示す通りである。 そう、Alの母の投資が何万倍にもなって帰ってきたのだ!
 1972年発表Carl and The Passions『So Tough』のジャケット裏側にはこう書かれている

 『 Thanks to Allan's mom for renting the bass fiddle on the first session.』 


 バンド演奏を決行する前から、小規模ながら何人かで近所の友人とBrianがセッションを重ねてきたことが判明している。地図中1には初期メンバーDavid Marksが住んでおり、Carlと一緒にギター教室に通っていた。そこで教えていたのが伝聞によるとJohn Mausという少年で、後にJohn Walkerと名乗りWalker Brothersを結成する。
 Carlはこの件についてノーコメントではあるが、Davidの方はどうかといえば2015年発表の『 LIVE ON SUNSET 2010』ではゲストにJohnを迎え師弟共演?を果たしている。 


 Brianの近所の地図中10に住むGil Linderの実家は雑貨屋兼テレビの販売/修理業を営んでいた。店舗や倉庫の空きスペースを借りてDavidやCarlなどの兄弟や隣人とセッションしていたようだ、時折来るBrianの同級生にZekeと呼ばれるものが居た、Ezekiel Montantez、後の弊誌でお馴染みのChris Montez
 セッション後よく出かけたのは地図中15にあるPizza Show読んで字のごとくピザ店で開店以来父Murryの代から通っていた店で、デビュー後の小規模なライブの後も、メンバーがよく立ち寄り胃袋を支えてきたそうで、正に青春の味。

Gilの家でオルガンを弾く後ろ姿のDennis。
左側のテレビはBrianが自身のギターと交換し自身の部屋へ運ばれた。

 デビュー以降快進撃を続けたThe Beach Boysの売りはなんと言ってもCalifornia南部のライフスタイルとサウンドだ、車にサーフィン永遠のパーティーを楽しもう! 
 これらのイメージは初期のコラボレーター、Gary Usher, Bob Norgerg, Roger Christianの手による部分も多いのだが、多くはBrian達の高校時代からのHawthorne町内での暮らしそのものが反映されている。
 大ヒット「Surfin' U.S.A」の歌詞1番中 ”All over Manhattan” とあるのは東海岸の同所ではなく地図中12の先の浜辺である。Hawthorne市内からサーフィンの季節になると地図中12にある26番通りに多くのサーファーがたむろした。Wilson家、主にDennisは少し南のHermosa 海岸がお気に入りで、Mikeと魚釣りにサーフィン、そして喧嘩に明け暮れた。
 1977年発表のDennsiのソロ作品『Pacific Ocean Blue』のLPではジャケットの見開き右に当たる右上の写真はManhattan Beach の桟橋の下で撮られたものだ。


 当時現地にあったサーフショップThe Outrigger(地図中14)のボードをDennisは好んで使い、1962年発表の『Surfin' Safari』にもしっかり愛用のボードが登場している。
 撮影は図中13のParadise coveの海岸で行われ、浜辺での写真は同年発表シングル「Ten Little Indian」のピクチャー・スリーブ及び1963年発表の『Surfer Girl』に使用されている。



 初期The Beach Boysのもう1つのテーマ、車族いわゆるHot Roddersの生態を見てみよう。生態と言っても極めてシンプルで、車に乗ってHawthorne市内をぐるぐる回るだけである。現地のスラングで『Cruise』と呼んでいた。『Cruise』の主な行動範囲は地図中11にあるA&Wというドライブインから地図中9にあるWICH STANDというこれまたドライブインレストランを貫く大通りHawthorne Boulevardを行ったり来たりしながらボウリングや映画やハンバーガー、アイスクリームや意味のないおしゃべりに興じた。
 1964年発表の『All Summer Long』に収録の「Drive-In」は、その辺りの情景が描かれている。またcruiseの中で立ち寄る店も取り上げられている、1962年発表の『Surfin' Safari 』収録の「Chug-A-Lug」はいわゆるノンアルコールビールであるルートビアの歌であって、先程紹介した地図中11の場所にあるA&Wはルートビア・メーカー兼レストランチェーンである。A&Wを目指す時当時のスラングではCruisin' the Aと呼んでいた。ちなみにA&Wルートビアは沖縄では長年愛飲されレストランも県下で展開している。
 一説によると、デビュー曲「Surfin'」がラジオから流れるのを聴いた場所がここであるという話もあるそうだ。
 地図中8にあるFrostiesはユニークな存在で、サーファーとHot Rodderの溜まり場でサーファーは必ずアイスクリームスタンドに駐車し、Hot Rodderはハンバーガースタンドに駐車した、正にデビューから『 All Summer Long』までの光景だ。


 地図中9にあるWICH STANDはHot Rodderの溜まり場で週末は常に満員、Hawthorne市中から離れてやや落ちついた雰囲気で人気があった。The Beach Boysファンの間でリリースが期待されている1963年の未発表曲に同名の「WICH STAND」がある、同時期に「A Joyride Cruise」もあり正にHot Rodderの世界だ。
 ちなみに「WICH STAND」はシングル盤「Pamela Jean」で長らくThe Beach Boysの覆面グループと噂されたThe Survivorsのセッションによる録音。
 The Survivorsは当時実家から出たばかりのBrianのルームメイトで共作もしているBob Norgergが中心のグループで、住まいは地図中6にあった。当時付き合っていた後に妻となるMarilynの実家が地図中7にあり、WICH STANDは2人のデートにうってつけだったであろう。 


 再び市内へのcruiseへ戻ろう、実家近くの地図中12にあるハンバーガースタンドFostersは、1964年の大ヒット曲「Fun,Fun,Fun」の歌詞の舞台と言われている。 歌詞の内容は、ある女の子が図書館へ勉強に行くので父の車T-Birdを借りたものの、実際はcruise三昧!といったもの。確かに歌詞で言うところの図書館は地図中17にあり高校は地図中18にあるので舞台としての要件は揃っているようだ。ただしあの疾走感のあるサウンドで、and she cruised through the hamburger stand nowの感じだとあっという間ハンバーガースタンドに着いてしまう感じだ? 
 またこの歌詞の主人公には諸説あり、Hawthorne市内では都市伝説となっているようだ、Dennisの彼女、はたまたBrianがナンパした女性などなど。
 そして地図中18はBrianとAlの母校Hawthorne High School!高校時代の部活を題材にした1963年発表の「Be True To Your School」はヒット曲として有名だ。間奏のフルートのメロディーは本校の応援歌からそのまま使われている。

Mt VernonにあるMikeの元実家 

 The Beach Boysの結成前夜のマイクといえば、進路は安定せず家業の手伝いもしていたが、ガールフレンドを妊娠させ所帯を持つ身となっていた。地図中4にある高台の瀟洒な豪邸から追い出されガソリンスタンドで働く毎日がMikeの全てであった。豪邸の退去からMikeのキャリア快進撃が始まる。
 本年の春先MikeはRancho Santa Feにある1200平米の豪邸の売却を発表した、日本でもある『終活』なのだろうか?
 豪邸からの退去は新たなThe Beach Boys再結成のサインなのだろうか? 
 来年2021年はデビュー60周年、第2の『Still Cruisin'』を奏でる日は近づいているあとはアクセルを踏むだけだ。

(text by MaskedFlopper / 編集:ウチタカヒデ)

2020年9月21日月曜日

名手達のベストプレイ第9回~バーナード・パーディ



 “プリティー”の愛称で知られる一流ドラマーのバーナード・パーディ(Bernard Lee Purdie)は、1939年6月11日にメリーランド州セシル郡のエルクトンで15人兄弟の11人目の男子と生まれた。幼少の頃から空き缶など手作りのドラムを叩いて遊んでいたという。
 14歳になると人生初のドラム・セットを買ってもらい、本格的なレッスンを受け、地元のカントリー・バンドやカーニバル・バンド等様々なスタイルでプレイするようになった。この頃の経験が後の多様なジャンルのレコーディング・セッションで活かされる礎となっていく。
 ハイスクール卒業後の1960年にはニューヨークに移り、ミッキー&シルビアやバディ・ルーカス、ジェームス・ブラウンのレコーディングに参加するなど頭角を現し、1970年にはアトランティック・レコードでアレサ・フランクリンの一連のセッションでその名は知られる。特に名盤の誉れ高い『Live At Fillmore West』(1971年)でのプレイは評判になった。
 その他にもニーナ・シモン、ギル・スコット・ヘロン、マイルス・デイヴィス、ハービー・マン、ホール&オーツ、トッド・ラングレン、スティーリー・ダン、キャット・スティーブンス等々ソウル、ジャズ、ロックの垣根を越えて多くのアルバムに参加し、彼ならではのプレイでミュージシャンズ・ミュージシャンとしての地位を確立してくのだった。
 自身のリーダー作品では1968年のファーストアルバム『Soul Drums』から27枚ほどリリースしており、セッションに参加したアルバム総数は3000枚を超えるとされている。 
 さてここではそんなバーナード・パーディ氏を心より敬愛するミュージシャン達と、彼のベストプレイを挙げてその偉業を振り返ってみたい。今回は参加者10名中4名のジャンルの異なるドラマーが参加しており、各人が独自の視点で解説してくれた。サブスクリプションの試聴プレイリスト(3時間28分!)を聴きながら読んで欲しい。


 

【バーナード・パーディのベストプレイ5】
●曲目 / ミュージシャン名
 (収録アルバムまたはシングル / リリース年度)
◎選出曲についてのコメント ※管理人以外は投稿順により掲載。



Drums & Percussion 奏者/じゃむずKOBO 代表
/S.A.D.ドラムスクール 講師 


●Memphis Soul Stew / King Curtis(『Live At Fillmore West』/ 1971年) ◎紹介を受けてリズムインの爆発力に驚いてからのダチーチーチー! キックでリズムを作る格好良さを感じた1曲です。

●Day Dream/ Aretha Franklin(『Young,Gifted and Black 』/ 1972年)
◎ダイナミクスが幅広く録音されており、実際のプレイに近い印象を受けます。 潜るところは潜り突如現れたりしながら楽曲の主導権を握る様子は ドラムの役割、リズムの大切さを教えてくれます。

●DEACON BLUES / Steely Dan(『Aja』/ 1977年)
◎HOME AT LASTに注目が集まりがちですが、シンプルな8ビートでミュートの効いたスネアをこのポケットに入れ続ける凄さ。 そしてイントロでリズムパターンとしてやりがちなシンバルワークを4小節で一つの歌として歌ってしまう発想に惚れてしまいます。

●Superstition / Bernard Purdie(『Soul to Jazz』/ 1997年)
◎録音の音質が個人的に興味深く新鮮に感じられた作品です。 パーディ節が所々で顔を出しますが、表情が違って聴こえます。 ドラムの録音についてもヒントが色々と転がっています。

●Elevate / Bernard Purdie & Friends(『Cool Down』/ 2018年)
◎冒頭からノックアウト。 Oneの位置、シンコペーションからの拾い方が本当に魅力的でバンドインへ誘うフィルインの見事な一筆書き。 この14秒でドラムとしての本質を突きつけられます。


 
DEACON BLUES / Steely Dan



オフィシャルサイト:https://groove-unchant.jimdo.com/ 


●Lady Day And John Coltrane / Gil Scott-Heron 
 (『Pieces Of A Man』/ 1971年) 
◎この曲に関しては、タイトめにリズムキープしています。 全体の演奏にドラミングが溶け込んでいて抑制されたグルーヴなんですが、時折フィルなどでみせるスネアやバスドラにパーディここにあり!と存在感をみせています。 様々なアーティストがこの曲をカバーしていて、どれもかっこいいのですが改めてオリジナルを聴くと一番かっこいいですね。

●Seeds Of Life / Harlem River Drive
 (『Harlem River Drive』/ 1971年)
◎N.Y.ラテンのピアニスト Eddie Palmieri が率いた Harlem River Drive。 この曲はまさにレアグルーヴ。暴れまわるパーディのドラムにあおるブラスセクション、歌ものとしても聴きやすく、何度聴いてもテンションがあがります。 DJプレイでもかけまくりました。

●It's All Over But The Shoutin' / Joe Cocker
 (『Jamaica Say You Will』/ 1975年)
◎1曲の中でパーディ節炸裂しまくりのファンキーロック。 イントロのフィルでバーナード・パーディ節がほとばしり、一気に曲の世界観へ引き込みます ちなみにぼくはイントロドンできます(笑)。どこをとっても聴きどころ満載のドラムパターンに、聴けば聴くほどはまる1曲です。

●Home at Last / Steely Dan (『Aja』/ 1977年)
◎もうこの曲を選んだ理由は一つだけです。 これぞ「ハーフタイムシャッフル」というドラムの手法を代表する曲なのです。 どっしりしたボトムなのに軽やかに駆け抜けるグルーヴ感が最強で、ブラックミュージックのという枠組みを超えた、ロック、ポップスの新境地に至っています。
そこはスティーリー・ダンの意図的なアレンジと言えますがその後にこのハーフタイムシャッフルは誰もが知る80sヒット、TOTOの「ROSSANA」に受けつがれていくことによって孤高のドラミングとなりました。

●Just A Little Bit Of Your Soul feat. Bernard Purdie, Pancho Morales
 / Tokyo Ska Paradise Orchestra
 (12”『Happening / Just A Little Bit Of Your Soul』/ 1993年)
◎90年代に日本で空前のアシッドジャズ、レアグルーヴのムーヴメントが巻き起こりました。その際、パーディが参加したジャズファンクのアルバムもたくさんリイシューされその流れで来日公演などもあり、なんとバーナード・パーディとパンチョ・モラレスがスカパラのアルバムに参加しました。
この曲はChuck Jackson Orchestraのカバーでスカパラのデビューアルバムにも収録されているのですが特にこのアルバムのバージョンは青木達之、パーディの左右のチャンネルにわかれたツインドラムの迫力たるや、東西レアグルーヴの宝と認定します。 ここまで5曲選んできてバーナード・パーディとレアグルーヴは切っても切り離せぬというのも改めて実感しました。


 
Seeds Of Life / Harlem River Drive





●Respect / The Vagrants
 (7"『I Love, Love You (Yes I Do)』B面/ 1967年)
◎レスリー・ウエスト在籍。代表曲はトレイド・マーティンら作。NY同期のThe Fugs参加が縁か。データにあるA面以上のパーディ感。同じく同期のVU「僕は待ち人」や前年の「96粒の涙」(アレサ版有)との近似。総じてアトランティクR&Bの匂い。

●You Hit Me(Right Where It Hurt Me) / Alice Clark
  (7"『You Hit Me(Right Where It Hurt Me)』/ 1969年) 
◎より豊穣な楽曲、よりパーディ節全開の、代表曲「Never Did I Stop Loving You」収録の唯一のアルバム(72年)との共通クレジットは、パーディのみ。急速かつ美しい展開の屈指のノーザン。編曲者リチャード・ティーの良い仕事。

●Wholy Holy / Aretha Franklin ‎(『Amazing Grace』/ 1972年) 
◎追加演奏や歌の差替えあれど、2分45秒~のコール&レスポンスの極まる神々しさはオリジナル版のハイライト。40名ものコーラス隊を包む大きなタイム感、歌うバスドラ。若きパーディら出演の同名映画(2018年、日本公開未定)はソフト化済にて必見。

●Time And Space / Roy Ayers Ubiquity
 (『A Tear To A Smile』/ 1975年)
◎デニス・デイヴィスとクレジット併記だが、この粒立ちはパーディだろう。10歳下のデニスのノリやフィルの癖はパーディにも酷似。同時期のボウイの「Fame」参加から、『Low』の「あの」スネア音への道筋は、パーディが拓いたとも言えるのではないか。

●Oh Yeah Maybe Baby (The Heebie Jeebies) / Laura Nyro
  (『Walk The Dog & Light The Light』/ 1993年)
◎ゲイリー・カッツ制作。生前最終作冒頭、フィレス処女作のカバー。「スパニッシュ・ハーレム」「スタンド・バイ・ミー」と「ビー・マイ・ベイビー」を繋ぐ雛形曲。アレサ版「スパニッシュ~」参加直後、パーディはベン・E・キングの両曲をリーダー作でも。


 
Respect / The Vagrants 



サックス吹きでもありベーシストでもあります。


●You'll Never Get to Heaven / Aretha Franklin 
 (『With Everything I Feel in Me』/ 1974年)
◎前半はリムショット中心で楽曲を抑え、半ばから一気に盛り上げる。 バーナードの歌う様なドラムは歌手に勝るとも劣らないメロディを放っている。 音が音楽として躍動するというのはこういうことをいうのだと、それが耳に、心にはっきりと届く、 そんな好演ではないかと思う。

●Tell Me How You Feel / Michael Bolotin
 (『Michael Bolotin』/ 1975年)
◎小気味良いシャッフルテイストの爽快なセッション的ナンバー。 白人シンガーというと語弊があるかもしれないが、ストレートな8ビート感とシャッフルのスイング感を両方持ち合わせた良グルーヴな曲だと思う。 バーナードがそのグルーヴ演出に多大な貢献をしていることは言うまでもない。

●Fire and Brimstone / Hummingbird
 (『We Can't Go On Meeting Like This』/ 1976年)
◎タワーオブパワーを思わせる一曲。そういうとバンドメンバーに怒られてしまいそうだが、ここでもバーナードならではの軽快かつブラックなビートがその節を効かせている。

●Come In From The Rain / Cheryl Lynn(『Cheryl Lynn』/ 1978年)
◎レゲエ風ビートが心地よい楽曲はグルーヴにベースのチャック・レイニーも一役買っている。 終始2拍4拍をアタックするバスドラムがとても気持ちよく、多彩なビートを操るバーナードの一面を垣間見られた気がします。

●You Send Me / Hank Crawford(『Mr. Chips』/ 1986年)
◎典型的な6/8ビートのブルース調のバラード。 インスト主体のアルバムの中に一曲だけゲストボーカルを迎えてのこの楽曲は、レコーディングによる作り込みを楽しむよりも一期一会的なセッションをライブで楽しむ感じ。
バーナードのドラムは淡々としているが彼の笑顔が浮かんでくる一曲。


 
Fire and Brimstone / Hummingbird 





●Mercy Mercy / Don Covay (『See Saw』/ 1966年)  
◎時代っぽいローチューニングのドラムに、タイトなビートがかっこいいし、ドン・コヴェイやっぱりかっこいい。

●Together / Ray Barretto (『Together』/ 1969年)
◎コンガの巨匠に任せて、あまり叩かない様が渋い。

●Eastern Market / Yusef Lateef
 (『Yusef Lateef's Detroit Latitude 42° 30' Longitude 83°』 / 1969年) 
◎1曲でパーディの魅力がたくさん聴ける曲。

●The Revolution Will Not Be Televised / Gil Scott-Heron
  (『Pieces Of A Man』/ 1971年) 
◎ナイス16ビート。ロン・カーターのベースも効いている。いま聴くべき曲かもしれません。

●There Is No End / Eric Kaz (『Cul-De-Sac』/ 1974年) 
◎イントロのフィルインからリムショットも渋いのだが、サビ入りのキックの位置が絶妙で、独特なタメみたいなものができていて気持ちいい。


 
The Revolution Will Not Be Televised / Gil Scott-Heron 



オフィシャルブログ:http://philiarecords.com/


●Sure 'Nuff, Sure 'Nuff / Sonny Phillips (feat. Virgil Jones, Houston Person, Joe Jones, Bob Bushnell & Bernard Purdie)
 (『Sure 'Nuff』/ 1970年)
◎インスト曲です。C#ワンコードで進んでいく曲でサックスやオルガンがソロを取る合間に入るシンプルで力強いフィルがスピード感を加えています。曲の後半にドラムがメインになるところで、裏にアクセントを入れながら盛り上がっていく高揚感はバーナード・パーディならではだと思います。

●Sweetheart / Charles Kynard(『Afro-Disiac』/ 1970年)
◎こちらもインスト曲です。ハネ系の16ビートなんですが、ハネ具合が絶妙です。重くて硬いバスドラとしなるようなスネア、そして揺れながら細かく刻まれるハイハット、全てが組み合わさってこのグルーヴが生まれているのでしょうか。手数の多いテクニカル系ドラマーというわけではないですが、真似しようと思ってもできるプレイではありません。

●Where Is The Love / Roberta Flack & Donny Hathaway
  (『Roberta Flack & Donny Hathaway』/ 1972年)
◎ロバータフラックとダニーハザウェイのヴォーカルによるスイートな一曲のバックで、全編にわたってリムショットでリズムを刻みます。タムを交えながらのフィルイン、キレのあるハイハット、丁寧なライドシンバルのプレイが印象に残る大人な一曲です。

●Purdie Good / Bernard Purdie(『Purdie Good!』/ 1971年)
◎JBをはじめとするファンクや渋谷系の音楽をよく聞いていた高校~大学時代にバーナード・パーディという存在を知り、初めて買った彼のアルバムです。セッション系ミュージシャンが自分名義のアルバムを出すと、意外なほどに面白くないというのは“あるある”だと思うんですが、バーナード・パーディは面白い作品が多いように思います。気負いすぎず参加ミュージシャンに自由にプレイしてもらう度量があるからでしょうか。

●Lady Rain / Daryl Hall & John Oates
 (『Abandoned Luncheonette』/ 1977年)
◎こちらは歌ものでアコースティックギターもリズムを刻んでいるので、比較的正確なプレイをしている様子が伺えます。間奏部分でのハイハット・ソロのような部分を含め、ハイハットのプレイがたくさん楽しめる一曲です。この突然大きめのハイハットオープンを入れて曲に心地よいブレーキをかけるようなプレイは自分も大好きで、影響されている部分があるかもしれません。


 
Purdie Good / Bernard Purdie 



【西浦謙助(集団行動 / mezcolanza etc)】 
集団行動HP:https://www.syudan.com/ 
ツイッターアカウント@tikanakangana:https://twitter.com/tikanakangana


●Soul Drums / Bernard Purdie(『Soul Drums』/ 1967年)
◎BeckのDevils Haircutでもサンプリングされたこちら、シンプル&鬼のグルーヴでダンスなんぞまるで踊れない私ですらカラダが自然と動き出します。そのリズム、呪術的。

●Love The One You're With / Aretha Franklin
 (『Live At Fillmore West』/ 1971年)
◎原曲の爽やかなエモさをこってり特濃エモに調理した一品。アレンジがかっこよすぎます。楽曲に立体感を与える御大のドラミング、お馴染みダチーチもこれでもかというくらいかましてらっしゃいます。

●Changes / Bernard Purdie(『Shaft』/ 1973年)
◎またまたサンプリング関係ですが、The Chemical Brothersの名曲Block Rockin' Beatsでも使われているこちらをチョイスしました。後世の名曲に自分のドラムが使われるって、つまりは子や孫にまで自慢できるってことです。誇らしいとはこういうことです。

●The Caves Of Altamira / Steely Dan
 (『The Royal Scam』/ 1976年)
◎御大の絶妙のタメ感やらグルーヴを堪能するには別の曲の方が良いかもですが、単純にSteely Danの中でもこの曲が大好きなので選びました。 ほんと惚れ惚れするような完成度。サビのハットオープンのタイミングやら小節またぎのフィルやらもう全部完璧です。

●Let's Go Down To Lucy's / Leon Thomas
 (『Blues and the Soulful Truth』/ 1973年)
◎ドラムは言わずもがな、まずアルバムのジャケが最高です。LEON THOMASのキャラの濃さがジャケからもビシビシと伝わってきます。御大のグルーヴ全開のドラミングにLEONさんもノリノリでございます。ハットスネアキックの3点だけでずーっと聴いていたくなります。あなたになりたい。


 
Changes / Bernard Purdie 



【松木MAKKIN俊郎(Makkin & the new music stuff / 流線形 etc)】 
オフィシャルブログ:http://blog.livedoor.jp/soulbass77/ 


●Song For Aretha / Bernard Purdie(『Soul Is...』/1972年) 
◎全盛期を共にしたアレサ・フランクリンに捧げた1曲。まるでヒップホップのようなビートから、次第にウネリと激しさが増して行きつつ、しなやかで抑制の効いたスティックさばきと輝くような音色は変わらない。

●Rock Steady / Frank Owens(『Brown'n Serve』/1973年) 
◎パーディ自ら代表作に挙げる楽曲を、自身のプロデュース作でカバー。テンポを上げて、ダチーチーチーの切れ味も3割増し。ウィルバーバスコム(b)は最良のパートナーの一人だろう。

●Blue Nocturne / Cornell Dupree(『Teasin'』/1974年) 
◎ゴーストノート、ダチーチーチー、パーディーズシャッフル…いやいや、それ以前に、一定の圧を保ちながら定位置にひたすら振り下ろすスネアのバシン!という音色。これだけで聴く者すべてを黙らせる。

●Together (You And Me) / Reuben Wilson And The Cost Of Living 
 ‎(『Got To Get Your Own』/1975年) 
◎パーディ自身お気に入りだというアルバムから。さすがに名演揃いで1曲を選ぶのが難しいが、個人的に好きな曲を。シンプルを極めたゴードンエドワーズ(b)と共に繰り返す、たゆたうようなグルーヴ。

●Sunshine Of Your Love / Felix Pappalardi
 (『Don't Worry,Ma』/1979年) 
◎ロック界から敢えてこの1曲。クリームが原曲のカバー曲のプロデューサーを、なぜかパーディがプロデュースしてしまった。いつもの面子で、マイアミ録音。それ以上に何も語る必要が無い安定のサウンド。クリアでツヤのある録音が最高。


 
Sunshine Of Your Love / Felix Pappalardi



オフィシャルサイト:http://www.shinowaweb.com 


●Krishna / Gabor Szabo(『Jazz Raga』 / 1966年) 
◎ハンガリー出身で米国に渡ったジャズギタリストのガボール・ザボは、コンテンポラリーなポップスのカバーも多く、サイケっぽくアプローチしたものも多いです。1966年にバーズがRAGAロックと称したサウンドを披露したムーヴメントと軌を一にしてか、ガボール・ザボはインド音楽をぶっ込んだあまり類を見ないサウンドを展開。当曲は自身がシタールも弾く、一大サイケムーブメント前夜の、時代を先取りしたサウンド。今で言うモンド的な味わいもあります。ドコドコしたブーミーなフロアタムがアクセントとなる、小気味よい、まさにサイケドラムの先駆的プレイ。

●Cherish / Nina Simone(『Silk & Soul』/ 1967年) 
◎Nina Simon の アソシエイションの名カバー。ハイハットのみで曲が進んでいくのですけど、これがニーナ・シモンの低音倍音ボイスにほどよい緊張感を与え続け、そして途中一瞬だけスネアフィルが入る瞬間がたまらないという、ハイセンスな超名演。

●Carpe Diem / Fugs 
(『The Fugs』(1994年再発CDにボーナストラックとして収録) / 1967年録音)
◎ESPレーベルから再リリースされる前のマイナー・レーベルからのFugsのファーストに収録されていた ”Carpe Diem” は1967年に再録され、この際にパーディが叩いています。結果リリースされず、セカンドの1994年CD再発の際にボーナストラックとして収録。素朴ながらもなかなかパーディらしく、きっちりとしたビートを出している良い仕事、パーディのこんなこともやっていました編です。なお、言わずと知れたNYビートニク詩人によって結成されたFugsは、ダニー・コーチマーなどのセッション・ミュージシャンをメンバー加えツアーを行っているので、パーディがセッションに呼ばれるのも不思議ではない感じ。

●Let’s Stay Together / Margie Joseph (『Margie Joseph』/ 1973年) 
◎パーディは、ハイハット・ワークがいつも気持ち良いのですけど、このハイハット・ワークにおいては、スネアのフィルに入る寸前の一瞬に、何かエネルギーがグッと溜められる感じがするんです。この感じが本当に堪能できる一曲。このアルバムも大変フェイヴァリットな一枚です。

●Back Back / Archie Shepp (『Kwanza』/ 1974年) 
DJやるときは結構な頻度でかける一曲。難解にも感じられるアーチー・シェップの作品中では、批判を恐れずに言うならジャズファンク、レアグルーヴに寄った聴きやすいアルバム。アルバム冒頭のこの曲は、一度聴いたら忘れられない印象的なリフをモチーフに、それが妥協無く繰り返されてゆく曲なんですが、ドラムが緩急つけながら見事にアンサンブルを盛りあげ、支えているんですよね。これも名演として知られるべき一曲。


 
Krishna / Gabor Szabo




●Caravan / Bernard Purdie(『Soul Drums』/ 1968年)
◎記念すべきファーストアルバムからデューク・エリントン作スタンダードの猛烈なカバーを。パーディのドラムソロが長過ぎてサビまで辿り着かないという。この頃から既にラテン・フィールのタム回しを披露しているのが分かる。90年初頭テレ東の深夜音楽番組にゲスト出演した際もこのアルバムのテイストでのプレイを披露したのが懐かしい。

●She's Gone / Daryl Hall & John Oates
 (『Abandoned Luncheonette』/ 1973年)
◎名門アトランティック・レコードと縁深いパーディだが、後にスターとなるブルーアイド・ソウルの新鋭デュオのセカンドでも全面的に叩いている。イントロのハイハット・ワークから本編のミディアム・グルーヴのドラミングまで曲を演出してしまう彼ならではのプレイが聴ける。

●Love Will Bring Us Back Together / Roy Ayers
 (『Fever』/ 1979年) 
◎ジャズファンクのリバイバルでも注目されたヴィブラフォン奏者の79年のアルバムから。 パーディはエアーズのバンドUbiquityの準メンバーといった具合にこの時期のレコーディングでは常連だった。特にこの曲では彼のシグネチャー・プレイが多く堪能出来るダンス・チューンでグルーヴ・メーカーとして欠かせないドラマーだった。

●Babylon Sisters / Steely Dan(『Gaucho』/ 1980年)
◎復活前のスティーリー・ダン黄金期を締めくくった墓碑銘的代表曲。所謂パーディ・シャッフルと呼ばれる彼の代表的なプレイスタイルが全編で聴ける。ロブ・マウンジーのホーン・アレンジでピアニシモからフォルテシモに移行する絶妙な間に呼応するパーディのプレイはこの曲を大きく演出していて替えが効かない。なおポリリズムで効果的に鳴っているスネアロールはチーフ・エンジニアのロジャー・ニコルスが製作した初期サンプリング・ドラムマシンWendelによるものだ。

●37 Hours (In The U.S.A.) / Raw Stylus
 (『Pushing Against The Flow』/ 1995年)
◎90年代多くのスティーリー・ダン・フォロワーの中でも出来がいい英国の3人組による唯一のアルバムのリード・トラック。やはりゲイリー・カッツのプロデュース効果は絶大で彼のテリトリーからパーディも参加して、嘗て『The Royal Scam』(76年)で披露したファンキーなプレイを再現している。 フェイゲンがシンセ、エリオット・ランドールがギターで「Josie」(『aja』収録 / 77年)のリフを生サンプリングのごとくプレイするのも聴きどころだ。


 
37 Hours (In The U.S.A.) / Raw Stylus

  (企画 / 編集:ウチタカヒデ)