2020年11月28日土曜日

TheBookmarcs ファースト配信ライブ


 The Bookmarcs(ザ・ブックマークス)が初の配信ライブを12月2日に開催するので紹介しよう。
 改めて彼等を紹介するが、The Bookmarcsは作編曲家兼ギタリストとして活躍する洞澤徹と、ポップスバンドSweet Onionsのヴォーカリスト近藤健太郎が2011年にタッグを組んだ、男性2人組のポップス・ユニットである。 
 
 弊サイトではこれまでにリリースした2枚のオリジナル・アルバム『BOOKMARC MUSIC』(2017年)『BOOKMARC MELODY』(2018年)を紹介しているのでご存じと思うが、ソフトロックとシティポップの良さを融合しながら大人が聴ける良質なポップスをクリエイトしているのだ。 
 このコロナ禍により会場でのライブが極めて困難な時期であり、またライブ回数自体が少ない彼等の演奏がリアルタイムで視聴出来るという貴重な試みなので、是非この機会にThe Bookmarcsのサウンドに触れて欲しい。
 ライブ当日は2人によるアコースティック・ライブとなり、演奏曲は上記2枚のアルバムからセレクトされた全8曲を予定している。 


【TheBookmarcs ファースト配信ライブ】
  ●日  程:2020年12月2日(水)  
●配信時間:19時30分~(約40分) 
 ●視聴料:無料(投げ銭歓迎)   
※ホームスタジオからお送りします。   
●投げ銭はコチラから:https://ofuse.me/bookmarcs 
 ※アーカイブ試聴期間は1週間を予定。       

 なおThe Bookmarcsは、今年4月の『雲の柱 - Spring Jazz Mix -』に続いて、8月末に洞澤の作編曲、近藤の作詞による新曲『When I Was Young』を配信リリースしている。 
 特徴ある洞澤のギター・カッティング(佐橋佳幸氏がプレイした某有名曲を彷彿とさせる)の後、いきなりサビから始まるこの曲は、70年代後半のAORサウンドへの憧憬を匂わせたサウンドで、活動初期からサポートしているドラムの足立浩とベースの北村規夫による巧みなプレイによるグルーヴの効果もあり、デイヴィッド・フォスターが手掛けた諸作が好きな洋楽ファンにも大いに勧められる。 
 ヴォーカルの近藤自身がコーラス・アレンジしたタイトルのパンチラインが耳に残るよう、よく練られた曲作りによって聴き飽きさせないのだ。


● 配信リンク(amazonは下記画像からリンク)

(ウチタカヒデ)

 

2020年11月22日日曜日

追悼・筒美京平を讃えるベストソング


 昭和から平成にかけて日本の音楽界を支えた偉大な作編曲家の筒美京平(つつみ きょうへい、本名:渡辺栄吉(わたなべ えいきち))氏が10月7日に亡くなった。80歳だった。
 
 青山学院大学在学時からジャズを演奏していた音楽通で、卒業後の1963年には日本グラモフォンに入社し洋楽部門のディレクターを担当していた。その頃青学時代の先輩で作詞家だった橋本淳の紹介で、フジテレビ社員ながら作曲家として成功していた、すぎやまこういち(本名:椙山 浩一)に師事して作編曲を学んでいる。筒美の才能を見抜いた、すぎやまの推薦もあり、1966年(昭和41年)に藤浩一と望月浩の競作シングル「黄色いレモン」(作詞:橋本淳)で職業作曲家としてデビューする。
 1968年12月リリースのいしだあゆみの「ブルー・ライト・ヨコハマ」では、累計売上150万枚を超え、自身初のミリオンセラーとなり、翌年の第11回日本レコード大賞作曲賞を受賞するまでになる。3年後の1971年の第13回同賞では、尾崎紀世彦の「また逢う日まで」がレコード大賞を受賞したのをはじめ、朝丘雪路の「雨がやんだら」と平山三紀の「真夏の出来事」の2曲で作曲賞、渚ゆう子の「さいはて慕情」で歌唱賞、堺正章の「さらば恋人」で大衆賞、南沙織の「17才」で新人賞という快挙を成し遂げ、早5年にしてその名は広く知れ渡ったのだった。
 これまで同賞で1968年から89年の間に17年に渡り43曲の受賞歴があり、その中でレコード大賞2回と作曲賞5回7曲を受賞しており、作曲家としてのシングル総売上枚数は7,560万枚を超えていて、歴代一位である。この大記録は今後も更新されることはないだろう。

 文化や価値観が大きく変貌していった日本の音楽界において、これほど長い期間に渡り彼が成功を収め続けられた秘訣は何だろうと考える。
 各時代の洋楽チャートや流行サウンドを常にチェックしたリサーチ力(りょく)と、提供する歌手の個性となる声質や声域を的確に分析して、それぞれにフィットするオーダーメイドのように職人技で仕立てる作曲技術の賜物ではないだろうか。
 そのような技術がなければ、野口五郎や岩崎宏美のような鍛練を積んだプロフェッショナル歌手から、素人同然のアイドル女優やタレントだった浅田美代子や鈴木蘭々にまで平等にヒットソングのギフトを贈れない筈なのだ。
 もし読者の中に作曲家を目指す人がいれば、多くの筒美作品を聴いて研究、分析することを強く勧める。

 なお弊サイトが立ち上がる前の定期誌VANDAの初期には、スタディストの岸野雄一氏や土龍団の方々が筒美作品を含む隠れた歌謡曲を発掘、研究した記事を投稿しており、その後コンピレーションCD『ソフトロック・ドライヴィン』シリーズでリイシュー化した功績は大きいので、改めて紹介しておく。
 さてここでは筆者の知人で、筒美作品の音楽制作現場に多く携わり、実際筒美氏とお会いしている、シンセサイザー・プログラマー兼エンジニアの森達彦氏へのテキスト・インタビューを紹介すると共に、ベストプレイ・シリーズのスタイルで、筒美作品をこよなく愛するミュージシャン達と氏が作曲したベストソングを挙げて、その偉業を振り返ってみたい。是非サブスクリプションのプレイリストを聴きながら読んで頂きたい。

※参考文献:榊ひろと『筒美京平ヒットストーリー 1967-1998』
 白夜書房


【森 達彦氏 インタビュー】

●今回はよろしくお願い致します。
森さんがプログラマーとしてスタジオ・ワークを開始されたのは年何になりますか?
 
◎森達彦(以下森):1980年だったと記憶しています。
 
●80年当時の音楽業界では、シンセサイザー・プログラマーがまだ少ないという状況ではないでしょうか?
また当時メインで使用されていたのはどのような機種でしたか?
やはりプロフェット5などでしょうか?
 
◎森:Mac松武さん、Emu浦田さん、Jan杉原さんという先輩方がいらっしゃいました。
僕はその次の世代になります。当時、メインで使ったシンセはプロフェット5、同10、オーバーハイムのOBX、PPG2.3でした。
 
●当時森さんはレオミュージックに所属されていて、主に多く携わったミュージシャンや歌手の方はどなたでしたか?
 
◎森:編曲家のお名前でしたら、主に武部聡志、鷺巣詩郎、山川恵津子、十川知司、萩田光雄(敬称略)。

●名だたるアレンジャーの方々が並びますが、萩田光雄氏や鷺巣詩郎氏、武部聡志氏は歌謡曲でも大活躍されていましたね。特に筒美京平作品での編曲が忘れられません。
その筒美先生とのお仕事で最初に関わった年と、歌手の方や曲を覚えていますか?
 
◎森:何年という記憶はありませんが、たぶん鷺巣さんのお仕事です。81年から84年にかけて鷺巣さんは多くの筒美作品に関わっています。
 
●その期間の筒美作品で鷲巣氏が編曲された代表曲と言えば、松本伊代のデビュー曲「センチメンタル・ジャーニー」(81年)から「ラブ・ミー・テンダー」(82年)、「TVの国からキラキラ」(82年)とヒットが続きますが、筒美先生が直にシンセのパッドやシーケンスの音色をリクエストされることはあったんですか?
「TVの国から・・」は生のリズム・セクションですが、パートによってはテクノ歌謡ですし、先生も曲作りの時点から意識していたのでは?と期待してしまいます。 

TVの国からキラキラ / 松本伊代

◎森:鷺巣さんに関しては、早くから京平さんからの信任が厚かったと思っています。その頃京平さんはほとんど現場でお見掛けすることはなかったです。
ただ質問の趣旨に添えるかわかりませんが当時の鷺巣さん独特なやり方があって、4リズムの録音後例外なくスネアとキックにシモンズ音源の音を重ねていました。生の音をトリガー※にしてシモンズを鳴らすのが僕の役割だった訳です。 
(※:ドラムに装着し、その振動を信号に換えて音源モジュールを鳴らすシステム)

●成る程、鷲巣氏が筒美先生の秘蔵っ子だった時期のサウンド作りが垣間見られて興味深いです。
また当時のレコーディング期間中は、先生がスタジオに立ち会われる機会は少なかったのですね。因みに初めてスタジオで先生にお会いされた時の印象はどうだったでしょうか?
  
◎森:スタジオに張りつめた緊張感は独特のものでした(笑)。
とてもダンディな方と印象を持ちました。
 
●その時点で既に大御所な存在だった訳ですからね。
筒美先生が立ち会われたレコーディングでのエピソードをいくつかお聞かせ下さい。
 
◎森:まず87年頃に京平さん御自身によるアレンジ仕事が思い浮かびます。セッションの詳細については覚えてはいませんが、当時アレンジまでご自身でやられることはなかったのではと思われるので。
スタジオのスタッフの緊張感も高かったですね。
 
それと同時期ですが、ある歌手の曲のオケを京平さんがチェックしにいらっしゃるというので、4リズムはもちろん、シンセダビング等も終えて万全を期した状態で試聴して頂いたんです。
「いいじゃない」と言われて、皆が胸をなで下ろした後、京平さんがスタジオの調整室から出られる際、「少しテンポは落としてね」と一言。結末については覚えていません(笑)。
 
もうひとつ、小沢健二君とコラボの時(『強い気持ち・強い愛/それはちょっと』/ 95年)、70年代ディスコテイストなシンセサウンドを作れとのことでスタジオを訪れると、レコードが入った大量の段ボール箱に囲まれた京平さんがいらっしゃいました。
始終あのような笑顔の京平さんを拝見するのは初めてで、忘れられないです。  
強い気持ち・強い愛 / 小沢健二

●貴重なエピソードをありがとうございます。
特に小沢氏とのエピソードは、根っから洋楽好きという側面が確認出来ました。
それで、筒美先生のレコードの聴き方が普通ではないというエピソードがあるらしいのですが・・・。1曲の中で針を上げ下げして飛ばして、好きな小節だけを集中的に聴くという(笑)。まるでヒップホップのフレーズ・サンプリングみたいな感じで。そのスタジオでもそうだったのかなと(笑)。

◎森:実は僕が呼ばれた時点では曲は出来ていなかったと思われます。もちろん通常は曲があってその上で僕が持ち込んだシンセをダビングしていく流れなのですが、あの時は大量のレコードと共に複数のシンセが用意されていました。そのシンセ1台につき1音色作るというオファーで。
全く異例中の異例、詞先の曲ならぬ音先(笑)。
レコードもシンセも曲作りのパーツだったのでしょう。
「完パケるまでシンセの電源落としませんから」と、小沢くんも言っていました(笑)。
 
●その後も多くの筒美作品に携われたんですね?
その中でも特に印象に残った曲を教えて下さい。
  
◎森:先の設問に挙げた編曲家の方々はそれぞれ何曲も筒美作品に関わっておられます。かなりお手伝いさせていただいたと思います。
印象に残ったというより、好きで今でも聴いているのは斉藤由貴さんの「初戀」ですね。
 
初戀 / 斉藤由貴

●斉藤由貴の「初戀(はつこい)」は85年8月リリースで、編曲は武部聡志氏ですね。曲調やサウンドは、ストロベリー・スウィッチブレンドの「ふたりのイエスタデイ(Since Yesterday)」(84年)にも通じますが、筒美先生は80年代半ばもリアルタイムの洋楽を意識されていたんでしょうか?
また思い出す限りで、この曲での使用機材を教えて下さい。
 
◎森:たぶんおっしゃる通りだと思います。当時も洋楽を意識していたんでしょうね。
機材はLINN9000、EmulatorⅡ、ProphetT-8、Simmons5,7、ppg2.3 等です。
 
●その頃は森さんもhammerを設立されて、ムーンライダーズ関係からおニャン子クラブなどの多くの歌謡曲も手掛けられていた時期ですよね。
EmulatorⅡやリンドラムなど使用された機材も時代を感じさせます。 
 
◎森:そういえばムーンライダーズのレコーディング時にMC-4(ローランド社製デジタル・シーケンサー)をどのように使っているか興味があるから見学させてくれと京平さんから申し出があったという話しを岡田(徹)さんから聞いたことがあります。たぶん80年代初頭でしょうか。
僭越な憶測ですが、どのような機材や手法で時代の音が産まれるのか、そのような認識も膨大なレコードコレクションと同様『筒美京平の曲』に取り込まれていたのではないでしょうか。

MC-4

 ●それは貴重な話ですね!
ライダーズのレコーディングで岡田氏がMC-4を本格的に導入していたのは、『マニア・マニエラ』(82年)や『青空百景』(82年)の頃ですね。
筒美先生がそれらのアルバムを聴いていたと想像したらライダーズ・ファンとしては嬉しいです。直接的に影響下にある曲は挙げられませんが、その後の現場で感じられたことはありましたか?
 
◎森:それについてはわかりません。ただ90年代の渋谷系、特にR&B色が強いものについては興味をお持ちだった、このことは京平さんをよく知る方から伺っていました。
ラヴ・タンバリンズは聴いていらっしゃったようですよ。

●ラヴタンも聴かれていたんですね!
以前森さんやエリさん(Ellie / 元ラヴ・タンバリンズのヴォーカル、ニュー・ソロアルバムを12月15日リリース予定)と会食した際、筒美先生がラヴタンに曲を提供したがっていたけど、結局実現しなかったと聞きました。実現したらビッグ・ニュースになっていたでしょう。
今回は貴重な話を誠にありがとうございました。

Alive / LOVE TAMBOURINES
森氏はミックスを担当。インディーズとしては異例の
10万枚以上のセールスを記録したラストアルバム

【森 達彦氏 プロフィール】
長崎県出身のシンセサイザー・プログラマー、エンジニア、サウンド・プロデューサー。
1978年にレオミュージック入社。入社後にシンセサイザーのプログラミングを習得する。1984年ムーンライダーズと共同出資で、プログラマーのマネージメントを業種としたhammer(ハンマー)を設立。1987年には社名をHAMに変更するが、1991年に自身が立ち上げたインディペンデント・レーベルをHammer labelとしてその名を復活させている。
シンセサイザー・プログラミングの仕事の傍ら、プライベート・スタジオで後に渋谷系と呼ばれるクルーエル・レコードやエスカレーター・レコードのエンジニアリングをサポートし、現在は郷里の長崎に戻り音楽制作を継続している。
(10月30日テキストにて / 設問作成、文:ウチタカヒデ)


【筒美京平を讃えるベストソング】

●曲目 / 歌手名
(収録アルバムまたはシングル / リリース年度)
◎選出曲についてのコメント
※管理人以外は投稿順により掲載。




●愛の戯れ / 平山みき(7' 『愛の戯れ』 / 1975年)
◎個人的に「昭和歌謡の巨匠の多くはジャズ上がりで、小手先で書いた曲が大ヒット」という先入観があるが、加えて筒美には洋楽リスナーとしての膨大な知識量がある。A&M系ポップスやフィリー・ソウルを彷彿させるこの作品も、当時の同時代性を内包した名曲だ。

●心象風景 / 太田裕美(『こけてぃっしゅ』 / 1977年)
◎西海岸サウンドなどを意識した、極めて洋楽的なアルバムから。松本隆の瑞々しい歌詞、ポピュラリティを一義とする筒美京平と萩田光雄のバランス感覚から、極上の「70年代シティポップ」としても楽しめる。

● あなたを・もっと・知りたくて / 薬師丸ひろ子
(7'『あなたを・もっと・知りたくて』 / 1985年)
◎こちらも松本&筒美の黄金コンビの名曲で、編曲は武部聡志。渋谷系の重鎮、森達彦もシンセ・プログラマーとして参加している。胸キュンのコード進行、歌い易さより美しい響きを優先させたメロディなど、まさに極上のポップ・ソング。

●野生の風 / 今井美樹(『elfin』/ 1987年)
◎僕が中学の頃に書いたお気に入りのバラードが、後にこの曲のサビに酷似していると知る。恐らく何処かで耳にしていたのだ。しかも "原曲" のサビの続きは、さらに美しい怒涛の展開。彼の奥深さを猛烈に実感した、最初の瞬間だった。

●それはちょと / 小沢健二(『刹那』/ 2003年)
◎オザケンのマイ・ベストはこの曲。筒美のお家芸である "洋楽的でありながら日本人の琴線に触れるせつないメロディ&コード進行" が、ヴァースから惜しみなく展開される。それに応える服部隆之の弦アレンジも見事だ。

 
 野生の風 / 今井美樹



オフィシャルサイト: https://www.kouhando.com/


●ダンシング・セブンティーン / オックス
(7”『ダンシング・セブンティーン』/ 1968年)
◎筒美京平といえば橋本淳!GS期のこのコンビを取り上げるならこの曲は外せません。ブチ上がるイントロ、普段は座して音楽を楽しむタイプですがこの曲は踊ってしまいます。ちなみに、映画「GSワンダーランド」(08年)の主題歌『海岸線のホテル』もこのコンビによるもの。40年経てのセルフパロディ的仕上がりなので合わせて聴いてみると面白いです。

●ア・リ・ス / 遠藤京子(『Operette』/ 1981年)
◎このアルバムを知ったのは約半年前と最近のことなのですが、びっくりでした。ぶっち切りで忙しかったであろう1981年、LPでいえばB面中盤にひっそりと収められているこの曲に、僕はあらためて京平先生の凄さを思い知りました。これ以前も、そしてこれ以降も全日本国民分と言っても過言ではない数の思い出の1曲を生み出すわけです。本当に凄い。鈴木茂さんの編曲も最高です。

●夏色のナンシー / 早見優(7”『夏色のナンシー』/ 1983年)
◎言わずと知れた超有名曲です。そんな曲が多すぎて選ぶのに苦心しましたが、早見優さんへの提供曲は本当に全部素晴らしく、このシングルのあとすぐにリリースされたアルバム『LANAI』、その2ヶ月後にはナンシーの別verが収録されたアルバム『Dear』が発表され、両方で多数楽曲を提供されています。全部好きです。

●夢色のスプーン / 飯島真理(7”『夢色のスプーン』/ 1983年)
◎B面曲「リンゴの森の子猫たち」とどっちにしようか凄く悩みました。どちらも僕が好きすぎる飯島真理さんの良いトコが詰まっています。そういえば、京平先生はキーを決める際に一緒にカラオケに行って策定するという話を聞いた記憶があります。もしこの曲もそうだとしたら、本当にありがとうございましたと言いたいです。

●風のノー・リプライ / 鮎川麻弥(7”『風のノー・リプライ』/ 1984年)
◎アニメ「重戦機エルガイム」のOPテーマです。アニメは観たことないのですが、この曲はもう10年以上聴き続け、友人とカラオケで熱唱する定番曲です。「サザエさん」然りですが、知らず知らずのうち日常に組み込まれる音楽って本当にいいなと思います。筒美京平先生、本当にありがとうございました。

 
風のノー・リプライ / 鮎川麻弥



2020 New Song - 「When I Was Young」トレーラー:


●セクシー・バス・ストップ / Dr.ドラゴン& オリエンタル・エクスプレス
(『The Birth of Dragon』/ 1976年)
◎有名なバージョンは浅野ゆう子のカバーですが、ここではあえて良演奏が味わえる原曲のインストゥルメンタルで。
クレジットには変名のJack Diamondの表記。とにかくバンドメンバーがすごい。林立夫(ドラム)鈴木茂(ギター)、後藤次利(ベース)、矢野顕子(キーボード)。
筒美京平の遊び心ある覆面ユニット、素敵すぎます。収録アルバム全曲オススメ。ちなみにバス・ストップはダンスのステップ。

●夏のクラクション  / 稲垣潤一(『J.I.』/ 1983年)
◎ジャパニーズAORの歴史的作品と言って良いのではないでしょうか。
弱起から入るサビのはじめの4小節のペンタトニックの降りてくるフレーズが特に日本人の心を鷲掴みにする気がします。
僕の永遠の座右の曲です。

●迷宮のアンドローラ / 小泉今日子(『迷宮のアンドローラ / DUNK』/ 1984年)
◎AメロのF#マイナーのキーからサビのC#マイナーへの5度上への転調のしかたがとても好みです。切なさのオンパレードのようなメロディの行き方ですが、キョンキョンの歌声がポップに昇華させている。アレンジの範疇かもしれないけど追っかけサビ(サビのフレーズを追っかけるようにオーバーダブで重ねる)のフレーズが印象的。

●摩天楼ブルース / 東京JAP(『TOKI色外人倶楽部』 / 1985年)
◎甘いリードボーカルを際立たせる爽やかな色気あるメロディ。この声にこのメロディあり、というくらいはまっている。声質がメロディを呼んだのでしょうか。
サビでは主旋律のカウンターメロディーとして、コーラスが違うフレーズを当ててくる追っかけコーラスサビが印象的。C-C-Bの筒美京平作品でもこの追っかけサビ手法結構多く使われていますね。

●人魚 / NOKKO(『colered』/ 1994年)
◎秀逸なテイ・トイワのアレンジとの相乗効果で出来上がった極上のバラード。
歌謡曲のよくあるA-B-C構成ではなく、シンプルな8小節1ブロックの繰り返しと大サビの構成だが大サビの歌い上げる世界観のあと、少しの変化とともに再度登場する最初のモチーフが今度は息をつまらせるほどの熱を帯びて切ない。

 
 摩天楼ブルース / 東京JAP



作詞/作曲/編曲家。 ボーカル、ギター、サックスを担当。 自身のクループ「鈴木恵TRIO」「EXTENSION58」の他、アイドルグループ「RYUTist」への楽曲提供、作家「大塚いちお」氏との共同楽曲の制作等を行う。
TRIO堂(通販サイト)https://szkststrio.theshop.jp/


●Romanticが止まらない / C-C-B(7"『Romanticが止まらない』/ 1985年)
◎ドラマ「毎度おさわがせします」の主題歌。
サビで「胸が胸が苦しくなる〜」との歌詞に呼応するが如く、強烈に胸を締め付けるようなメロ。先生は、歌詞にマッチする曲をつける天才ですよね。
ピンク色の髪でシモンズを叩く笠さんはテレビでは相当なインパクトでした。が、ユキヒロさんや橿渕さんを知っていた僕にとっては、テクノロジーがお茶の間にも押し寄せてきた、と時代の流れと驚異を肌で感じた高校時代でした。

●ツイてるねノッてるね / 中山美穂(7"『ツイてるねノッてるね』/ 1986年)
◎Romantic〜とはミポリン繋がり、と言うことで続いては中山美穂。資生堂のキャンペーンソングだったのは良く記憶しています。松本隆先生とのタッグ「WAKU WAKU させて」「派手!!!」との三つ巴で、迷った挙句にこちら。当時、中山さんにはそんなに興味がなかったけれど、未だにこの3曲は全部ソラで歌えるほどメロディが記憶に残っています。先生の「心に残るメロディ」を身で実体験したミポリン3部作の中の1曲。

●仮面舞踏会 / 少年隊(7"『仮面舞踏会』/ 1986年)
◎こちらは誰もが認める少年隊のビッグヒットナンバー。編曲家の船山基紀先生をなくしては筒美楽曲を語れませんが、実は当時日本に数台しかなかった「Fairlight CMI」(PSY・S松浦氏のサウンドストリートでお馴染み)を日本ポップス界に持ち込んだコンピュータ音楽の先駆けなんです。と言うことは、イントロのオーケストラヒッツ、もしかしてCMI?って思ったら途端に胸が熱くなりました。そして僕は現在もド頭の拍がとれません。

●強い気持ち・強い愛 / 小沢健二(8cmCDシングル『強い気持ち・強い愛』/ 1995年)
◎「小沢健二=筒美京平ソングブック」と銘打たれた'90年代日本ポップスの最高峰シングル。
先生は常に歌い手を意識して書かれているように思っていまして、とにかくどの曲も音域が歌い手にピタリと来ているんですよね。これ実はとても重要なことなんです。
オケを書いている服部隆之氏はオザケンさんのテレビ出演の際にも後ろで棒を振っている方で、服部良一氏のお孫さんであられることはあまりにも有名ですね。

●AMBITIOUS JAPAN! / TOKIO(CDシングル『AMBITIOUS JAPAN!』/ 2003年)
◎「勇者であれ!」歌詞に沿った作曲をされる先生の'00年代の究極の代表作だと思っています。
「日本人の心に残る筒美サウンド」的な研究は、きっと各所で繰り広げられていて、それは例えばペンタトニックだとか何とかいろんなことがあるのだと思うのですが、僕は「相の手」だと思っているんです。民謡で言えば「それからどうした〜」ってやつ。サビの相の手。これが僕ら日本人の心に浸透させる決め手だったのでは、こんな風に思っているのです。

仮面舞踏会 / 少年隊



オフィシャルブログ:http://blog.livedoor.jp/soulbass77/


●また逢う日まで / 尾崎紀世彦(7"『また逢う日まで』/ 1971年)
◎今更何を語るまでもない代表作の一つ。「話したくない〜」の一節に早くもクライマックスを迎える展開が、カッコイイ。ここでは自ら編曲しピアノを弾いた。つまり、寺川正興による伝説的なベースを「弾かせた」のだとしたら、まさに偉業としか言いようがない。

●さすらいの天使(マジックロード) / いしだあゆみ
(7"『さすらいの天使(マジックロード)』/ 1972年)
◎軽やかでシンプルなメロディ、優しく朗らかな歌声。その中にある確固たる意思というか、何者にも屈しない力強さに、聴く度に勇気が湧く。ただただ、良い曲だなぁと思う。実は多くの歌手が取り上げていて、作者御本人も気に入っていたのではないかなぁ?と想像しています。

●愛の飛行船 / 岩崎宏美(『飛行船』/ 1976年)
◎歌い出しに筒美流AORバラードか?と思わせて、そんなネタ探しを無意味にするようなスケール大きなサビへ。「あ~な~た~が~」という一節に、歌手の実力や持ち味を100%発揮させ、アルバム全体のクライマックスを演出させる手腕はお見事。

●抱きしめてtonight / 田原俊彦(7"『抱きしめてtonight』/ 1988年)
◎ドラマ『教師びんびん物語』主題歌。1988年の『ザ・ベストテン』年間第1位。最後のセクションまでメロディの洪水。メロディラインと、歌声の、その官能的なことと言ったら。トシちゃんは大歌手だと思います。

●なんで なんで ナンデ? / 鈴木蘭々(CDシングル『なんで なんで ナンデ?』/ 1996年)
◎『泣かないぞェ』に続きモータウン・マナーな2ndシングル。平成に生まれた傑作の一つに数えたい。美しすぎるメロディを、完璧に表現した20歳の鈴木蘭々の歌声も素晴らしい。まさにエヴァーグリーン。

 
なんで なんで ナンデ? / 鈴木蘭々



集団行動HP:https://www.syudan.com/
ツイッターアカウント @tikanakangana https://twitter.com/tikanakangana


●さらば恋人 / 堺正章(7" 『さらば恋人』/ 1971年)
◎はい。臆面もなく超有名曲選びました。
しかしながらあれです、幼少期にラジオか何かでこの曲が流れまして、本当にただのガキンチョであった私が「ああなんていい曲なんや」と感じた記憶があるのでございます。特段音楽に興味もなかった子供にそう思わせるって、とんでもないと思います。

●日曜日はストレンジャー / 石野真子
(7" 『日曜日はストレンジャー』/ 1979年)
◎イントロまんまやないかい、的なツッコミもあるそうですが、演奏もキレッキレでメロディも最高、言う事無しの名曲だと思います。「悪魔に〜♪」のギターでご飯何杯でもいけます。ちなみに僕はいしのようこさんがタイプです。

●セクシャルバイオレットNo.1 / 桑名正博
(7" 『セクシャルバイオレットNo.1』/ 1979年)
◎20代中頃、わずかな期間でしたがスーツを着て仕事をしていた時期があり、その頃人生唯一の出張で某所に行きまして、その晩港町の場末のスナックで現地の案内の方がこの曲を熱唱されていまして、そりゃあもう鮮烈な記憶として脳内に残っておるわけです。

●卒業 / 斉藤由貴(7" 『卒業』/ 1985年)
◎イントロからもう掴まれてしまいます。武部聡志さんの編曲がこれまた良すぎて何十年経っても全然古臭くもダサくもないという。メロディ、歌詞、アレンジ、歌声、全部完璧でもうやんなっちゃいます。神曲って言うんですかね。

●元気!元気!元気! / 高橋由美子(シングル『元気!元気!元気! 』/ 1991年)
◎高橋由美子さん、好きだったので。てゆうか今も最高だぜ!実は歌もうまい。
そんでもって秋元康さんの歌詞がまたメロディと声にバッチリ合うのです。タイトル通り、なんだか元気が出る良曲です

 
セクシャルバイオレットNo.1 / 桑名正博



オフィシャルサイト:https://groove-unchant.jimdo.com/


●ベイビー,勇気をだして / 堺正章(『サウンド・ナウ』/ 1972年)
◎「サウンド・ナウ」という全曲筒美京平先生が作・編曲した堺正章のアルバムに収録。
全曲を通してモータウン・サウンドを意識した歌謡曲。
いうならば早すぎた渋谷系!? 特にこの曲が最高すぎ!!!!

真夜中のエンジェル・ベイビー(セルフカバー7インチ)

●真夜中のエンジェル・ベイビー / 平山みき
(7"『真夜中のエンジェル・ベイビー』/ 1975年)
◎平山みきさん×筒美京平先生は昭和歌謡の宝物と思っております。
畏れ多くも2016年ぼくのレーベルで平山みきさんにセルフカバーしていただきました。
平山さんに歌っていただくのも光栄でその上カバーを先生に許可いただけたのは震えるほど感激したのを覚えております。

京平ディスコナイト / Various
  
●セクシー・バス・ストップ / 浅野ゆう子
(7"『セクシー・バス・ストップ』/ 1976年)
◎もともとは筒美京平先生が率いた覆面ユニット“Dr.ドラゴン&オリエンタル・エクスプレス”の1stシングルで、“Jack Diamond”という変名で作曲した作品でインスト曲だったものをボーカルカバーした曲です。実は小西康陽氏監修の『京平ディスコナイト』(2007年)の中でこの曲をわたくしがリミックスしておりまして・・・。
生涯忘れられない曲のうちの1曲でもあります。

●女になって出直せよ / 野口五郎
(7"『女になって出直せよ』/ 1979年)
◎高揚感のあるストリングスとブラスアレンジ、キレのあるギターカッティング。
それもそのはずラリー・カールトン、デヴィッド・サンボーン、トム・スコットといった強力バッキングによるロサンゼルスレコーディング。野口五郎の31枚目のシングル。

●Hey girl / スクーターズ(『女は何度も勝負する』/ 2012年)
◎現在進行形でモータウン・サウンドと歌謡曲の融合、カバーであっても日本語詞のバンドといえば信藤三雄氏率いるスクーターズではないだろか。
スクーターズが筒美京平先生に曲を依頼したのも前述の「サウンド・ナウ」を聴けばしっくりくる。

 
セクシー・バス・ストップ / 浅野ゆう子




●いつか何処かで /平山三紀(7'『希望の旅』/ 1972年)
◎定期誌VANDAで90年代初頭に発掘された筒美作品で、所謂”ビートでジャンプ歌謡”の元祖ではないだろうか。ボサノヴァのリズム・テクスチュアをオーケストレーションに転換した発想を踏襲した優れたコンポーズとアレンジである。プロトタイプとして前年に欧陽菲菲の「あなたは再び帰らない」で試しており、その完成形がこの曲といえる。73年にはつなき&みどり(三原綱木と田代みどりの夫婦デュオ)がカバーしている。作詞:橋本淳 / 編曲:筒美京平

●美しい誤解 / 南沙織(『20才まえ』/ 1973年)
シンシアでは最もヒットした7thアルバムのB面において新録されたシングル・メドレーの後にひっそり収録された隠れソフトロック曲。編曲は元アウト・キャストの穂口雄右が担当しており、ウーリッツァーを中心にしたコンボ編成に弦とホーンが絡む。表向きは当時のA&Mサウンドと感じる人もいるだろうが、旋律の転回やハネ方が極めて複雑で、ミシェル・ルグラン等にも通じるジャズ・テイストで、同時代の歌謡曲とは異次元なのが理解出来る。
作詞:有馬三恵子 / 編曲:穂口雄右

●グッド・ラック / 野口五郎(7'『グッド・ラック』/ 1978年)
◎筒美作品も70年代後半に入るとR&BをベースにしたAORテイストを加味してくる。この曲もその代表で、イントロのクラビネットのリフに絡むギターのアルペジオやファンキーなベースラインなどは典型的サウンドである。山川の洗練された歌詞に対し京平メロディは極めて洋楽的で、当時小学生の筆者は「ブラインド降ろし」のアクセントが気になって仕方がなかった。歌謡曲の巨匠が脱歌謡曲の方法論を提示させた曲の一つではないだろうか。作詞:山川啓介 / 編曲:高田弘

●たそがれマイ・ラブ / 大橋純子(7'『たそがれマイ・ラブ』/ 1978年)
◎フェイザーをかました矢島賢(「グッド・ラック」でもプレイした名手)によるイントロのギターリフが象徴するクールなAOR歌謡で、数多ある筒美作品の中でも極めて完成度が高い。美乃家セントラル・ステイションは参加せず、手練なスタジオ・ミュージシャン達の演奏によって、S・ガッドなどスタッフがバッキングしたC・サイモンの「You Belong To Me」(78年)を想起させるNY派系の緊張感あるサウンドに仕上がっている。この効果もあり阿久悠が描く大人達の不毛の恋愛模様が、大橋の圧倒的な歌唱力でよりドラマチックに演出された。
作詞:阿久悠 / 編曲:筒美京平

●スカーレットの毛布 / 太田裕美(『海が泣いている』/ 1978年)
◎10年程前SNSで音楽家の片寄明人さんに教えてもらった筒美=松本の黄金コンビによるLA録音。一聴してD・フォスターの影響下にある萩田光雄のアレンジで、ドラムのエド・グリーンはC・B・セイガーの「It's The Falling In Love」(78年)と同じかと納得した。LA産AORサウンドをバックに、舌足らずでコケティッシュな太田に「僕の辞書には愛がない」と歌わせる対話形式の松本イズムの歌詞に京平メロディが乗れば何も言うことはない。作詞:松本隆 / 編曲:萩田光雄

 
たそがれマイ・ラブ / 大橋純子

(企画 / 編集:ウチタカヒデ)

 

2020年11月14日土曜日

Diogenes Club:『Count On Me』(*blue-very label* / blvd-013)


 
  ネオ・アコースティック・ユニット、ディオゲネス・クラブ(Diogenes Club)が、ファースト・シングル『Count On Me』を7インチ・アナログ盤で明日11月15日にリリースする。
 今月1日に紹介したフォリン・コレスポンデント(Foreign Correspondent)と同様に*blue-very label*からとなる。
 昨年11月に紹介したクリスマス・コンピレーション・アルバム『Natale ai mirtilli』に彼らが提供した「christmas wish」(NRBQカバー / 86年)を筆者は絶賛したが、この新曲も非常に素晴らしいので紹介したい。
  
 彼らは東京で活動するネオ・アコースティック・バンド、ザ・ランドリーズ(The Laundries )のヴォーカリスト木村孝之と、北海道で活動するアコースティック・ユニット、アルビーシンガー(Alvysinger)の小野剛志によるデュオで、2018年にblue-very labelを主宰する中村慶氏がオーナーを務めるDISQUES BLUE-VERYの20周年記念コンピレーション・アルバム『BLUE-VERY PAVILION』が切っ掛けで結成したという。巧みなヴォーカリストとして定評のある木村と、ソングライティングと全楽器の演奏(及びプログラミング)、コーラスを担当するクリエイターの小野というように役割分担が明確になっている。
 ザ・ランドリーズは92年に木村メンバーを集め、都内のライブハウスで活動を開始する。99年にはビクター・エンタテインメントのコンピレーション・アルバム『Rabid Chords Vol.1』に参加し、トラッシュキャン・シナトラズ(Trashcan Sinatras)の「Who’s He」の日本語カバー「Sinatra’s Joke」を提供し、本家トラキャンとの交流が始まったという。これまでに『THE LAUNDRIES』(03年),『NATALIE』(13年),『Synanthrope』(16年)の3枚のアルバムをリリースしている。実に28年のキャリアを持つバンドなのである。 
 アルビーシンガーは96年から活動していたThe Time Capsulesから改名して、現在は小野によるソロ・プロジェクトである。北海道北見市にてソングライティングとワンマン・レコーディングでの活動が主であり、これまでに2枚のシングルとスプリット・シングル『Let's Split!』をリリースしている。 


  本作は小野によるオリジナルのタイトル曲とカップリングの2曲に、デンマークのネオアコ/エレポップ・バンド、ギャングウェイ(GANGWAY)のカバーからなる全3曲を収録している。
 ここでは筆者による収録曲の解説と、ディオゲネス・クラブのメンバーが本作のレコーディング中に聴いていた曲を選んだプレイリストを紹介する。
 
 diogenes club - count on me 
*blue-very label* blvd-013 トレーラー

 タイトル曲の「Count On Me」は小野の書き下ろしの新曲で、木村の美声が聴けるギターポップとソフトロックの魅力を融合させた良質なナンバーである。バックビートを強調させたシャッフルのリズムやコーラス・アレンジには、élレコードのルイ・フィリップからWondermintsまでを想起させて、嘗てのジェリー・ロス~ジョー・レンゼッティがクリエイトしていたサウンドの匂いもする。とにかくWebVANDA読者には特にお勧めしたいとっておきの曲であり、筆者も年間ベストソングの候補にしているのだ。 


 カップリングのB面1曲目「Look For The Rainbow」は一転して、ベン・ワット~Everything But The Girlに通じる小野のオリジナルである。80年初期ネオ・アコースティック・ムーヴメントの中でもWeekendの『La Varieté』(82年)の流れにあるボサノヴァやラテンのエッセンスを取り入れたそのクールなサウンドは、2000年代以降も色褪せることはない。
 続く2曲目の「Out On The Rebound From Love」はギャングウェイの85年作のシングル曲カバーで、本作でのアレンジはオリジナル(88年にエレポップ・ヴァージョンもリリースしている)と同様にドラムレスの編成で独特の浮遊感を醸し出している。この2曲でも木村の美しい歌声に絡む小野のコーラスの絶妙で聴き応えがあり、完成度が高い。
 とにかく収録曲3曲共にギターポップ・ファンには溜まらないセレクションになっているのだ。

 【ディオゲネス・クラブがRec中に聴いていたプレイリスト】  

●Ridin' In My Car / NRBQ (『All Hopped Up』/ 1977年) 
●Take It Over In The Morning / Edward, Harding And George
 (『Half & Half』/ 1972年) 
●We'll Work It Out / Gary Lewis & The Playboys
 (『Everybody Loves A Clown』/ 1965年) 
 ●Life Must Go On / Wall Of Orchids(7"single / 1993年) 
●All Gone Away / The Style Council(『Our Favourite Shop』/ 1985年) 
●Like Nobody Do / Louis Philippe
 (『Passport To The Pogie Mountains』/ 1987年) 
●Ett & Noll / Bo Kaspers Orkester(『Amerika』/ 1996年) 
●Lovely Day / Bill Withers(『Menagerie』/ 1977年) 
●Blanket Of Calm / Healing Potpourri(『Blanket Of Calm』/ 2020年) 
●Quiet Storm / Smokey Robinson(『A Quiet Storm』/ 1975年)


 数量限定の7インチ・シングルなので、筆者の解説を読んで興味を持ったギターポップやソフトロック・ファンは、リリース元レーベルのオンラインショップから早急に入手すべきだ。 

リンク先:Disques Blue Very 


(ウチタカヒデ)
 

2020年11月8日日曜日

流線形/一十三十一:『Talio』(ビクターエンタテインメント/ VICL-65441)

 
 今年7月にファースト・アルバム『シティミュージック』(2003年)をリマスタリングで、アナログ盤とCDをリイシューしたのも記憶に新しい流線形。その主宰者であるクニモンド瀧口とのコラボレーションで知られる女性シンガー・ソングライターの一十三十一(ヒトミトイ)とタッグを組んだ、ドラマ・オリジナル・サウンドトラック『Talio(タリオ)』を11月11日にリリースする。
 ドラマの方は、NHK総合の毎週金曜のドラマ10枠にて10月9日から放映している『タリオ 復讐代行の2人』で、俳優の浜辺美波と岡田将生がW主演している。ストーリーとしては、元弁護士の女性(浜辺)とイケメン詐欺師(岡田)による一話完結の復讐代行劇で、所謂バディ系の社会派コメディ・ドラマだ。

 流線形としては、2006年の名作セカンド『TOKYO SNIPER』、2009年11月の比屋定篤子とのコラボレーション作『ナチュラル・ウーマン』以来のアルバム・リリースということで、ファンにとっては待望のという言葉が相応しいだろう。近年瀧口はシティポップ・レゲエシンガーのナツ・サマー(Natsu Summer)のプロデューサーとしても知られている。
 また一十三十一も2002年のデビュー以来、その艶のあるコケティッシュな声質とアーバン・メロウなサウンドで、2000年代のシティポップ・シンドロームを代表するシンガー・ソングライターとして知られる存在である。今年8月にはNegiccoのシングル曲「午前0時のシンパシー」を提供するなど作家活動も開始している。
 そんな二組がこのサントラに携わる切っ掛けは、ドラマの音楽プロデューサーから一十三に声が掛かり、彼女が瀧口を誘ったという。またアートワークには、大滝詠一『A LONG VACATION』などで高名なイラストレーター界の巨匠、永井博氏の描き下ろしイラストをジャケットにするなど、今回の制作チームは鉄壁な布陣となっている。
 更にこのサントラのオープニング・テーマ曲と挿入歌には、キリンジからソロのシンガー・ソングライターに転身し、THE LAKE MATTHEWSの活動でも知られる、堀込泰行をフィーチャリング・ボーカルに迎えているなど話題にも事欠かないのだ。

一十三十一

流線形

 ここでは筆者が気になった主な収録曲の解説をお送りする。
 オープニング・テーマ曲「金曜日のヴィーナスfeat. 堀込泰行」は、堀込をリード・ヴォーカルにフィーチャリングしたテンポ感のある16ビートのシティポップで、シンコペーションの効いたリフが特徴的だ。作詞は一十三、作曲は瀧口、リズム・アレンジは流線形だが、ホーンとストリングス・アレンジは若手シンガー・ソングライターのシンリズムが担当している。
 バンドとしての流線形の編成は、瀧口本人はソリーナ(アープ製ストリング・シンセサイザー)をプレイし、ギタリストは名手の山之内俊夫(ROUND TABLEなど)、ベーシストは弊サイトベストプレイ・シリーズでもお馴染みの松木俊郎、キーボーディストの平畑徹也、ドラマーとしてTHE LAKE MATTHEWSの他多くのセッションで知られる北山ゆう子という『ナチュラル・ウーマン』以降のライヴではお馴染みのメンバーだ。
 また曲によってキーボーディストのシーナアキコ、本アルバムのエンジニアとミックスを担当している平野栄二(元LOVE TAMBOURINES)がパーカッションで参加している。
 続く「タリオのテーマ」は瀧口によるインスト曲で、リード楽器のサックスは多くのセッションで知られるヤマカミヒトミがプレイしている。彼女のクールなソロと共にオーケストレーションを担当しているシンリズムのセンスが光っている。またこの曲はブラックスプロイテーション系サントラのスコアがルーツであり、日本では大野克夫や大野雄二等が手掛けた刑事ドラマ劇伴から踏襲されたスタイルだ。

 挿入歌の「蜃・気・楼」は一十三のソングライティングで、KASHIF(カシーフ)のアレンジと演奏(プログラミング含む)によるシステマティックなメロウ・ポップソウルだ。近年彼女の典型的サウンド・スタイルであり、生のリズム隊では出せないグルーヴが気持ちよく、コケティッシュでハスキーな声質にもマッチしている。
 「哀愁のタリオ」は「タリオのテーマ」の変奏曲で、平畑のハモンド系オルガンがブルージーに迫るインスト・ソウルだ。大野克夫にも通じるそのサウンドは劇伴の定番と言える。続く「恋愛小説」は洒脱なシャッフル・ビートに乗せた一十三と瀧口のスキャットが、山下毅雄スタイルのソフトロック・サウンドで筆者的には溜まらない小曲だ。音楽通の瀧口らしい引き出しの豊富さに脱帽してしまった。
 「真実のテーマ ~Focus~」は「蜃・気・楼」同様一十三とKASHIFによる組み合わせによるインスト曲で、アタックの強いシンセのフレーズやパッドに一十三のスキャットが乗る軽快なサウンドが印象的だ。一転してブラックスプロイテーション系サウンドが濃い「真夜中の訪問者」では、松木のベース・リフとシーナのフェンダー・ローズ、山之内のワウワウをかましたギターに、ヤマカミのモーダルなフルート・ソロが場面展開をよく表現している。
 「嘘つき手品feat. 堀込泰行」は瀧口のソングライティングで、一十三と堀込のデュエットというレアな組み合わせのAORサウンドで、ネッド・ドヒニーの「A Love of Your Own」(『Hard Candy』収録/76年)にも通じるムードと二人の声のブレンドが素晴らしい。「曇り時々雨」は平畑作のピアノ・ソロのインスト・バラードで、彼が本作中提供している2曲の内の1曲で歌物に発展しても良さそうな美しい曲である。

悲しいくらいダイヤモンド by 流線形/一十三十一

 エンディング・テーマ曲の「悲しいくらいダイヤモンド」は一十三の作詞と歌唱、瀧口の作曲によるドラマティックなシティポップで、アルバムに先行して10月14日に配信リリースされている。この曲では松木と北山のリズム隊のパターンが松任谷由実の「DESTINY」(『悲しいほどお天気』収録/79年)のそれを彷彿とさせ、悲恋の切迫感が上手く表現されているのだ。またバンド全体の演奏力や絶妙なヴォイシングを持つシンリズムのホーン・アレンジなど完成度が高く、一十三のヴォーカルも完璧で、筆者はこのアルバムのベストトラックに挙げたい。
 ラストの「黒岩のテーマ」は前出の「嘘つき手品」のインスト・ヴァージョンで、ヤマカミのサックスがリードを取る。このヴァージョンでより理解出来るのだが、北山のドラミングがバーナード・パーディばりにスイングしているのは聴き応えがある。
 最後にアルバム全体の総評として、歌物を4曲も収録していることもあり、サウンドトラックを超えた内容ということで十分楽しめた。興味を持った音楽ファンは入手して聴いて欲しい。
(ウチタカヒデ)

 

2020年11月1日日曜日

Foreign Correspondent:『The First One』(*blue-very label* / blvd-015)


 
オーストラリアはメルボルンで活動するネオアコ・バンド、フォリン・コレスポンデント(Foreign Correspondent)が、7インチのセカンド・シングル『The First One』を11月3日(レコードの日)にリリースし、同18日より全国流通させる。
 
 海外特派員なる意味を持つバンド名にまず興味を惹かれるが、彼らは2017年にメイン・ソングライターであるMarcus Campbell(ヴォーカル、ギター)のオンラインでの呼びかけにより5名のメンバーで結成されたという。いかにもSNS社会を象徴するエピソードであるが、Marcu以外のメンバーはリード・ギタリストのChris Haggertyに、キーボーディストのKepler Ryan、ベーシストのSun-Jong Chung、パーカッショニスト(ドラム含む打楽器類)のBruce McIntyreで構成されている。
 2018年にデビュー作となるファースト・シングル『American High School Fashion』を配信のみでリリースし、その後フルアルバムの制作が進行しているが、今回先行として日本の*blue-very label*から『The First One』を7インチでリリースすることになった。  


 本作のジャケットを見てピンとくる(『Andromeda Heights』(97年)している)読者もいるだろうが、彼らはプリファブ・スプラウト (Prefab Sprout)や、スウェーデンのザ・レディオ・デプト(The Radio Dept.)やクリアキン(Kuryakin)、エッグストーン(Eggstone)と、欧州から北欧のバンドに影響を受けているという。また弊サイトではデビュー作からお馴染みのLampをはじめ、Spangle Call Lilli LineやSugar Plantといった日本のバンドもお気に入りらしい。 
 なおジャケット・デザインは、名古屋でグラフィックデザイン事務所”AIRS” を主宰する伊藤敦志が担当している。タイトル曲の音像をよりよく表現した素晴らしいアート・ワークであり、この7インチの所有欲をそそるのだ。

 ここでは筆者による収録曲の解説と、Foreign Correspondent のメンバー5人が本作のレコーディング中に聴いていた曲を選んだプレイリストを紹介する。

 
Foreign Correspondent - the first one ep trailer 

 タイトル曲の「The First One」は、ジーン・ペイジ・スタイルのストリングス・アレンジにヴィブラフォンのオブリが絡むメロウなサウンドに、モジュレーション・ディレイをかました甘い女性コーラスがMarcusのヴォーカルに絡んでいくというものだ。ファースト・シングルの「American High School Fashion」のスタイルを踏襲したロマンティシズムは、プリファブ・スプラウトの『Jordan: The Comeback』(90年)や『Andromeda Heights』を愛する音楽ファンには大いに勧められる。 

 カップリング1曲目の「Crying in Your Sports Car」は、一転してホーンセクションが入ったリズミックなギター・ポップにシフトしている。凝った転調の仕方はプリファブの「I Never Play Basketball Now」(『Swoon』収録/84年)にも通じる、所謂スティーリー・ダン・シンドロームの流れを汲んでいるソングライティング・センスと言える。 
 同じく2曲目の「If I Had a Visa (Anguk)」は、女性コーラスのYunmi Jungがリード・ヴォーカルを取っており、空間系エフェクターでトリートメントしたサウンドは既出2曲とも異なり新鮮である。この曲の様な16ビートのダンスビートになるとドラマーとベーシストの演奏の荒さが気になるが、ヘタウマ的要素もギター・ポップの魅力だろう。 

【フォリン・コレスポンデントのレコーディング中のプレイリスト】 
 

●Les cactus / Jacques Dutronc (7”『Les Cactus』/ 1966) 
●Canto de Ossanha (Let Go) / Astrud Gilberto
 (『September 17, 1969』/ 1970) 
◎Selected by Chris Haggerty:lead guitar 

●Where do the Girls of Summer Go? / Mark Eric 
  (『A Midsummer's Day Dream』/ 1969年)  
●Caroline, No / The Beach Boys (『Pet Sounds』/ 1966年) 
◎Selected by Marcus Campbell:vocals, rhythm guitar 

●The Meaning of Love / Karin Krog (『We Could Be Flying』/ 1975年) 
●Hair / John Sangster (『Ahead of Hair』/ 1969年) 
◎Selected by Bruce McIntryre:percussion

●Stairway to the Stars / Bill Evans Trio (『Moon Beams』/ 1962年) 
●Alison Limerick - Where Love Lives (『Where Love Lives』/ 1990年) 
◎Selected by Kepler Ryan:keys 

●We Will Turn You On / Joey Negro Presents the Sunburst Band
  (『Until The End of Time』/ 2004年) 
●These Words / The Lemon Twigs (『Do Hollywood』/ 2016年) 
◎Selected by Sunjong Chung:bass


 数量が限られた7インチ・シングルなだけに、興味を持った音楽ファンはリリース元のレーベルや大手レコード・ショップから早めに予約して入手しよう。
リンク先:Disques Blue Very
 
(ウチタカヒデ)