2007年12月23日日曜日

☆Glen Campbell:『Good Times Again』(TimeLife/M19526)DVD

久々に素晴らしい音楽DVDに出会った。このDVDはグレン・キャンベルが1969年から1972年にCBSテレビで担当した『Good Times Hour』のハイライトを集めたもので、現在のグレンの回想をはさみながら、ソロで5曲、デュエットで11曲、全て完奏し、その間はナレーションもスーパーも被せないという音楽ファンにとって最良の編集がなされている。時代といい構成といい、『Andy Williams Show』を見ているかのようで、何だかとても嬉しい。もっとも女性とのデュオでは、恋人どうしかのように振舞うアンディのようにはいかないが。「Let It Be Me」を歌うときにボビー・ジェントリーにしっかり抱きつかれるが、なんだかグレンは慣れない様子だった。でもリンダ・ロンシュタットとの「Caroline In My Mind」、シェールとの「All I Really Want To Do」、アン・マレーとの「Don't Think Twice,It's All Right」はグレン・キャンベルのギターの腕が冴え渡り、アコギ一本だけで雰囲気を明るく楽しいものに変え、見事に女性シンガーとのデュオをこなしている。ソロでは名曲連発で、「Wichita Lineman」、「For Once In My Life」、「Galveston」、「By The Time I Get To Phoenix」、「True Grit」はその曲の良さ、グレンの歌の上手さ、そしてそのギター・テクニックの見事さに、耳も目も釘付けになってしまった。さすが元スタジオ・ミュージシャン、元ビーチ・ボーイズだ。男性陣はレイ・チャールズ、リッキー・ネルソン、ロジャー・ミラー、B.J.トーマス、ジョニー・キャッシュ、ウィリー・ネルソン、ジョン・ハートフィールドという面々で、大物が多いせいか、グレンはメインより少し引いた立ち居地でデュオを担当していた。ボーナスマテリアルでは、ジミー・ウェッブとの名曲の数々に対するエピソードや、ビーチ・ボーイズ参加の時のエピソードなど披露され、これも興味深い。全てが最高のDVDだ。Web VANDAでのYou Tubeアクセス・ランキングはアンディ・ウィリアムス、ビーチ・ボーイズ、フォー・シーズンズに次いで堂々4位にグレン・キャンベルがつけており、グレン・キャンベルのファンは多いはず。絶対購入しよう。
(佐野)
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2007年12月22日土曜日

GUIRO:『Album』 (8(eight)/EIT-001)

 

GUIRO(ギロ)は97年に結成され、現在は4人で活動するユニークなポップ・バンドである。
2003年から2005年に掛けて4枚のシングルをリリース、2枚のコンピレーション・アルバムに曲を提供するなどマイペースながら作品を発表し続けてきた。そして本作が初のフルアルバムとなるのだが、これが一筋縄ではいかない拘りが詰まった素晴らしさなのだ。

 

プロモーション資料のキャッチコピーでは「シュガーベイブを初めて聴いた時の衝撃!」とあるのだが、嘗ての彼等ほどポップスというフォーマットに固執している訳ではなく、飄々とジャンルのボーダーを飛び越える身軽さが現代の新鋭アーティストを象徴していて実に興味深い。

1曲目の「あれかしの歌」 はハーモニーにハービー・ハンコック的センス(Third Wave経由か?)が感じられ、アレンジ上異質なはずであるシーケンス音(YMO「Pure Jam」的)も妙にリズム・セクションに溶け込んでいる。また手練なキーボーディストによるインプロ風ソロもいいアクセントになっていて、曲全体が絶妙なバランスの上で構築されている。
続く「墜落という名のジャム」ではアッパーなジャズ・ファンクをベースにしながら、思春期の妄想を紡いだような歌詞の世界観を起伏に富んだメロディ(BLOOD, SWEAT &TEARSの「Spinning Wheel」みたいだ)で歌い上げる。一聴してリリカルな「風邪をひいたら」でもトッド・ラングレンの「The Night The Carousel Burnt Down」を思わせる独特な雰囲気の曲で、妙に耳に残るコード進行とメロディを持っていて、彼等の美学が生きているのだ。
アルバム中最も惹かれた曲は「ハッシャバイ」である。細野晴臣の「薔薇と野獣」からトロピカル3部作と連なる世界観を経由したニューオリンズ・ミュージックや沖縄音楽のエッセンスが、絶え間なく打ち寄せる波のように耳に迫ってきて、嘗て多くのアーティストが挑戦した孤高の峰(細野の世界観)の頂上に唯一近付いたとさえ感じさせる希有な曲といえるのだ。
個人的にも2007年のベストソング候補であり、音源入手後から耳にしない日の方が少ない程もう手放せない1曲なのである。
(ウチタカヒデ)

2007年12月20日木曜日

Radio VANDA増刊 MUSIC FILE新春放談2008(2008/1/1)

MUSIC FILE新春放談2008(2008/1/1

 

(担当:ゲイリー芦屋)

. Minamahal,Sinasamba...The Ambivalent Crowd

2.I'm Waiting For A Bus...Birgit Lystager

(担当:佐野邦彦)

3.I'm Gonna Change...Montanas

4.Sunny...Neil Sedaka

(担当:濱田高志)

. Talk It Over In The Morning...Roger Nichols & The Small Circle Of Friends

6. Love Is A Gamble...Jackie Lee

(担当:宮治淳一)

7. When I Was 15...Mary Sneed

8. A House Is Not A Home...Frank Cunimond Trio

2007年12月15日土曜日

Radio VANDA 第 93 回選曲リスト(2008/1/3)

Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。

Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。


特集:Best Of Groovy Music Part1(洋楽編)


1.Pleasant Valley Sunday...Monkees

2.Telstar...Tornadoes

3.Dawn...Four Seasons

4.Darlin'(Live In London)...Beach Boys

5.Summer In The City...Lovin' Spoonful

6.Little Billy...Who

7.Music To Watch Girls By...Andy Williams

8.Mrs.Robinson...Simon & Garfunkel

9.Jumpin' Jack Flash...Rolling Stones

10Get Back(Let It Be Naked)...Beatles

11Temptation Eyes...Grass Roots

12PrologueTwilight...ELO

13Volare...Gipsy Kings

14Danza Pitual Del Fuegi(火祭りの踊り)...Arthur Rubinstein

 

 


2007年12月8日土曜日

roly poly rag bear :『hana』 (abcdefg*record/a-g042) 五十嵐誠インタビュー

 

WEB VANDAでは新作毎に紹介してきた男女二人のソフトロック・ユニット、roly poly rag bear。筆者は2003年に彼等の「The Melody Goes On」を聴いて以来、その素晴らしさを各所で語ってきたのだが、アップトゥデイトな音作りには目も繰れず、ひたすらポップスのコアな部分を追求しているスタンスは、音楽家として本来あるべき姿ではないだろうか。 そんな彼等が3年振りのオリジナルアルバムをリリースした。今回は14曲を収録した初のフルアルバムということで、その意気込みはこれまで以上に感じられる。

これぞroly polyサウンドというべき、ハートフルなシャッフルナンバーの「brand new day」から、牧歌的なオーケストレーションがしみじみと心に響き渡る「marmalade」まで、無垢なメロディラインとコーラス、ソフティなサウンドが織りなす詩情溢れる世界観は、現代における正統派ソフトロックの申し子といえるのではないだろうか。
当の本人達はいつもながらマイペースで飄々としているようだが、実際の心境はどうなのか、リーダーの五十嵐誠君に聞いてみた。

●オリジナルは3年振りで初のフルアルバムのリリースとなりますが、その間に台湾最大の野外フェスティバルへの出演や別ユニットでのリリースがありました。そういった活動を通じて、作品作りにフィードバック出来たことはありましたか? 

別ユニットのpasteboardの活動に関して言うと、cubase(注:シーケンスソフト)に慣れたというか(笑)。編集の仕方やミックスとかがちょっとずつ分かってきたので若干自信がついた気がします。
台湾ではサポートメンバーに参加してもらって、バンドで演奏するためにバンド用のアレンジを考えたこともあり、そのアレンジが反映されている曲もあります。あとバンドは楽しいなあって、改めて思いました。

●その台湾での"formoz festival"でのエピソードなどはありますか? 

夏フェスは出るのはもちろん見るのも初めてだったのでとても楽しかったです。ステージが高台のところにあって風がいい感じに涼しくて、音響も抜群で、演奏していてとても気持ち良かったです。
それと台湾のお客さんの反応を見て、本当に「音楽は国境を越えるんだ」ってことが実感できたのは凄く大きかったと思います。

●今回の『hana』の曲作りやレコーディングで一番心掛けた点はなんでしょうか?

曲作りに関しては、原点回帰というか。一枚目の「john's running」の曲を録り直すというのがもともとあって。それプラスrprbらしいものというか、バンドを始めた当時にやりたかった感じの音、よりソフトロックで歌謡曲なものでアルバムを作りたいと思っていました。
録音に関しては丁寧に録るように心掛けました。というのも一枚目の録音が雑だったので(笑)。リベンジです。

●自分の中でroly poly rag bearとして最も大事なことは?

うーん(笑)。あまり考えたことがないのですが、「普通」でしょうか。奇をてらわず。普通に良い曲をシンプルに。シンプルにしか出来ないんですけど(笑)。
やはりシンプルでメロディのきれいなものが好きなので。あとは「楽しむ」とかですね。

●今後の活動やライヴの予定を。

12月16日に春日部市の内牧公民館でレコ発ライヴがあります。そして同月19日にアルバムが発売されます。今後もマイペースで活動していきますので、よろしくお願いします。

 (ウチタカヒデ)


2007年12月1日土曜日

☆ザ・コレクターズ:『東京虫BUGS』(コロムビア/COCP51057)

コレクターズの1年半ぶりの最新作。マーシーや奥田民生など豪華ゲストが集まった前作『ロック教室』が実に楽しいアルバムだったので、今度のオリジナルアルバムはどうかなと一抹の不安はあった。アルバムタイトルもなんやら変だし。さて結果は...大傑作!!。サウンドも歌詞もコレクターズ色全開で、大好きな僕らのコレクターズが帰ってきた!と思わず快哉を叫んでしまった。冒頭の「たよれる男」からいきなり打ちのめされる。ソリッドなギターリフに引っ張られたコレクターズ得意の解放感溢れるロックナンバーで、「ほんの少し前にはこんな男が確かにいたんだ」と、クラーク・ケント、ジェームス・ボンド、ジョージ・ベスト、そして甲本ヒロト(!)が順番に出てくる。加藤ひさしが、ヒロトを「魂ゆさぶるシャウト」と歌ってくれるなんて、あまりに嬉しいじゃないか。加藤ひさしとヒロト&マーシー、ロックがずっと大好きで、流行なんかに左右されず、自分達のロックンロールを作り続けたこの両者は、日本のロックの至宝だ。私にとって彼ら以上のヒーローはいない。だから加藤ひさしのこの歌詞はことのほか嬉しかった。「いくつ年を重ねてもこんな男に憧れているんだ いつかなれると 信じていたなら 叶うだろう なれるだろう」という歌詞はもう中高年になった私の心に深く突き刺さる。なりたい人間はいないけど、熱い思いはたぎるほどあるから。続く「東京虫バグス」もヘヴィなギターリフに導かれるロックナンバーだが、歌詞にある19の時にたどり着いた東京は「19のボクとキミだよ 広げた地図を見て笑ってた」だったのに、東京は冬のどまん中になり「今もボクとキミだけ 広げた地図の上 走ってる」と変わってしまった。しかし「サナギのままじゃ死ねない」と決意する「私」は加藤ひさし自身だ。そんな加藤の思いがストレートに表現されるのが「ロックロールバンド人生」。トップギアで入ってこない所が、酸いも甘いも噛み分けた加藤らしくて逆にカッコいい。「ハメをはずしてバカをやるには年をとりすぎた でも死ぬにはちょっと若すぎるんだ」「声が枯れても歌うのさ」なんて歌われるともうたまらない。そしてラストの「ツイスター」で「誰もかれもウソつきでデタラメばかり」の世界を「新しい 頼もしい風になって 吹いてやれ 明日の青空 不自由で不愉快な この世界 吹き飛ばす風になろう ツイスター」と、加藤は力強く歌い、未来への扉を開けていってくれた。この「ツイスター」は『ロック教室』でマーシーが書いた「スタールースター」を彷彿とさせる疾走感溢れるビートナンバーで、歌詞の一部に「どうにもならない事など どうでもいい事さ」と、ヒロトの「少年の詩」の歌詞が織り込まれていて、ファン心をくすぐってくれた。そしてもうひとつの加藤ひさしの魅力がそのシニカルな社会に対する視点だ。まず「ザ モールズ オン ザ ヒル」で「ヒルズ」の最上階に住む「シャレた部屋の無慈悲なモグラ」を、「ヒルズは空に届き 太陽隠し 一面暗闇 宝石の輝き 吸い寄せられた あわれなモグラ」と歌い、心を失った金の亡者達を切って捨てた。こういう「ヒルズ族」なる虚業の世界の連中を、「セレブはゴージャスでアーバン リッチでクリスタル」とわざと意味不明に表現しているのが楽しい。そしてネットカフェ難民を歌った「ミッドナイト ボートピープル」だ。「いつの間にか負け組」にされ、「見知らぬ場所に集められて 小銭渡され 汗まみれ」になり、「眠るには狭すぎるイスの上」で眠るしかない若者達。「犬が服着て歩く街で 人が凍え震えてる 何の夢見て眠ればいい?」「人の数だけ夢があるなら 独り占めしてる奴は誰」と、格差社会を作った連中を厳しく批判する。日本の社会基盤を破壊した小泉=竹中という悪党どもに聴かせてやりたいものだ。最後に壮大なコレクターズ・ワールドも「スペース・パイロット」で復活したことを紹介しておきたい。銀河の果てを越え、妻や子供に声がもう届かないスペース・パイロット。歌詞は比喩なのだろうが、「ボクはたぶん戻れない」「25世紀 30世紀 そのずっと先 キミはいない」なんていう歌詞を聴くと、言葉だけで胸が一杯になってしまう。子供の頃、宇宙が大好きだった。小学校で宇宙の本を読み、その広大で深遠な世界を知ると、宇宙旅行が怖くなった。ウラシマ効果で帰ってきた時に家族がもういなくなっていたら、いや人類自体滅んでいて、宇宙に残ったのは自分だけだったらなど、怖くて眠れなくなった。目を閉じた時に見える、暗闇を流れていく光の粒が、星に見えた。宇宙旅行に出たように思えた。加藤ひさしの書く歌には、かつてこういった少年の時の思いが込められたような壮大な世界観を持つ曲がいくつかあったのだが、このアルバムでようやく出会えることができた。今書いただけでも聴きどころがいくつもあるこの『東京虫BUGS』。2007年の邦楽アルバムで、文句無しの最高傑作だ。(佐野)








2007年11月24日土曜日

Radio VANDA第92回選曲リスト(2007/12/6)

Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。

Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。


特集:Spanky & Our Gang
 

1. Sunday Will Never Be The Same('67)  

2. And Your Bird Can Sing('66)  

3. Lazy Day('6)  

4. It Ain't Necessarily)Byrd Avenue('67)

5. If You Could Only Be Me('67)

6. Makin' Every Minute Count('67) 

7. Sunday Mornin'('68)  

8. Like To Get To Know You('68)

9. Stardust('68)

10. Yesterday's Rain('69)

11. Give A Damn('69)

12. Without Rhyme Or Reason('69)

13. Leopard Skin Phones('69)

14. Crying...Unreleased

15. And She's Mine('69)

2007年11月22日木曜日

IRIS:『雪模様』 (RHYTHM TRACKS/TRACK-011)


IRIS(イリス)は以前、定期誌VANDA29号でも紹介したギターポップ・バンドのJET LAGを母体としたニュー・バンドである。


そもそもこのバンドは、ヴォーカリストの藤井美智代が2004年のJET LAG解散後に始めたソロプロジェクトjoyから発展しスタートさせたという経緯らしい。今回のミニアルバムが彼らのデビュー作となる訳だ。
彼らの基本的なスタイルは、藤井の作る楽曲のポテンシャルを、メンバーの演奏表現力やアレンジから、エンジニアリングやミキシングに至るまで深く追求していることである。

岡本のテクニカルなドラム・ワークが光る「夕凪につつまれて」と「雪模様」は、J・マッケンタイヤが作り出すシカゴ音響系サウンドに通じ、「浮雲のように」は『English Settlement』や『Mummer』の頃のXTCサウンドを彷彿させる、大陸的なアコーステック・サウンドにファンキーなインタープレイが絡むというもの。 ジャズワルツ風の「あいの風」にはジョニ・ミッチェルやスティーリー・ダンの匂いまで感じる。 ともかく筆者のツボをよく突いてくれる楽曲が揃っているのだ。

ラストナンバーは昨年筆者が共同プロデュースしたコンピレーションアルバム『Easy Living Vol.1』に、joy名義で提供した「ゆるやかな午後」のニューヴァージョン。 ゆるいラテン・フレイバー漂うリズムセクションと、内田のワウギターがアクセントになった新たなアレンジで、アルバム中最もストレートなサウンドかも知れないが、普遍的なメロディーはシュガーベイブや大貫妙子のファンに強くアピールしそうだ。
今後の活動も期待出来る面白いバンドの登場を心より喜びたい。
(ウチタカヒデ)

2007年11月10日土曜日

☆Paul McCartney:『The McCartney Years』(ワーナー90670/2)DVD


これは夢だ。こんな凄いDVD集は他に見たことが無い。DVD1枚目は1970年の『McCartney』から「Maybe I’m Amazed」のPVから1983年のマイケル・ジャクソンとの共演の「Say Say Say」まで21曲のPVを収録。加えて「Junior’s Farm」など3曲の別PVも入っていた。、DVD2枚目は1983年の「Pipes Of Peace」から2005年の「Fine Line」までの21曲のPVが入り、やはりリンゴが参加した「So Bad」などのPVもプラスアルファされ、プラスアルファを除いても42曲ものPVを網羅したことは前代未聞、空前絶後だ。ポールのPVは「Pipes Of Peace」や「Say Say Say」など、演奏シーンはないかわりにPVの域を超え、まさに映画であり、見ごたえ十分で、見ていて飽きない。DVD3枚目は『Rock Show』のセレクトからスタート、MTVUnpluggedから4曲、ガストンベリーのコンサートから11曲、スーパーボウルから4曲、1985年のLIVE  AIDから1曲とライブ・コレクションになっていて、ビートルズ・ナンバーも半数近くと実に楽しめるものだった。これだけ集められるのなら、ビートルズのPVはいったいどうなっているんだと悲しいばかり。『The Beatles Anthology』で一部しか見られない。他のバンドも同じだ。このポールのDVDを倣って網羅した映像集を期待したい。(佐野)
ポール・マッカートニー・アンソロジー 1970-2005 [DVD]

2007年11月1日木曜日

☆Brian Wilson,Neil Sedaka etc:『Blue Moo; 17 Jukebox Hits From Way Back Never』(Workman)

このCDは、絵本のような66Pに及ぶオールカラーのソングブックが付いていて、まさに副題の「Deluxe Illustrated Songbook」が云い得ている。作詞・作曲・イラストをみなSandra Boyntonが手がけており、彼女のプロジェクトに有名ミュージシャンが協力した形になっている。まずはブライアン・ウィルソンだが担当した「Speed Turtle」は『Surfin' Safari』か『Surfin' USA』といったごく初期のアルバム用曲といったB級クオリティのナンバー。たいした曲ではないが、何やら懐かしい気がする。ニール・セダカは作曲をニール・セダカ自身が共作していることもあってか、見事なセダカ流60年代のティーン・ポップになっていて、実に爽やかでよい。完全なブルース・ナンバー「One Shoe Blues」はBBキング、バーバーショップスタイルのドゥワップ「Gorilla Song」はシャナナ、ムードたっぷりのロッカバラード「Blue Moo」はスティーブ・ローレンス、ちょっとカントリー・タッチの「With You」はボビー・ヴィー、ドゥワップタッチながら牧歌的なメロディ・サウンドがそれらしいデイビー・ジョーンズの「Your Personal Penguin」、美しく情緒溢れるバラード「Mersey Lullaby」はジェリー&ザ・ペースメイカーズと、まさに適材適所に豪華な面々が配置され、これは聴きものだ。作者であるSandra Boyntonは曲を自在に書き分け、音楽的才能もかなりあると見た。ただ、本という色彩の濃いこのCDは、日本ではここまま知られずに終わってしまいそうで実にもったいない。今のうちに入手しておこう。(佐野)
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☆Roger Nichols & The Small Circle Of Friends:『Full Circle』(ビクター/VICP64023)

何年に一度出会えるかどうかの奇跡のアルバム、そういうアルバムを紹介する時が音楽を紹介する仕事をしていて幸せを感じる時だ。そしてこのロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズのほぼ40年ぶりのセカンド・アルバムが、その奇跡の1枚になった。
 ただ新録と聴いて、ほとんどの方が警戒するだろう。そう、今まで再結成ものでいいアルバムはひとつもなかった。ハーパース・ビザール、ゾンビーズしかり、このロジャー・ニコルズでさえ10年前の新録のソロアルバムは期待を大きく裏切っていた。メロディのクオリティが達していない、アレンジが今風、逆にただレトロなだけ、そしてヴォーカルの声質が変わってしまう、歌い方も違う、そんな要因で新録音ものには常にガッカリさせられてきた。
しかしこのアルバムだけは違う。60年代後半から70年代にかけて作られた、ロジャー・ニコルズの素晴らしい楽曲のセルフカバーから、ポール・ウィリアムスとのコンビで書き下ろされた新曲まであるが、そのメロディのクオリティは同じレベルで保たれている。さらに驚かされたのが、25年ぶりに出会ったというロジャーとマレイ&メリンダのマクレオド兄妹の3人によるソフトで暖かく、ジェントルな歌声だ。1曲目を聴いた瞬間、1968年のファースト・アルバムとまったく変わらない3人のユニゾンのハーモニーに一気に引き込まれてしまった。そして素直でシンプルで計算されつくしたそのアレンジ、「え?これって当時の未発表テイクが見つかったってこと?」と誰もが思うだろう。初めてスモール・サークル・オブ・フレンズのアルバムを聴いた時の心のときめきが、そのまま蘇ってきた。まさにこのアルバムは彼らのセカンド・アルバムなのだ。時空が連続している。さらに楽曲のクオリティはファースト・アルバムをずっと上回っている。まさに奇跡。眩暈がするほどの感動だ。このレビューは決して知り合いだから、ファンだからというおせいじまじりのものではない。このアルバムを聴いてみれば分かる。小西康陽さんの「21世紀に入って最初に好きになったアルバム。」というとてつもない賛辞が実感できるはず。このアルバムを好きにならない人とは私は永遠に音楽の話をしたくない、それほどのアルバムなのだ。
では全曲を紹介しよう。冒頭はシロー・モーニングのテイクで熱心なファンの方の間で人気が高い「Talk It Over In The Morning」だ。イントロのコード感、ユニゾンのコーラスで一撃で打ちのめされてしまう最高のオープニング。ロジャー本人の自信作であり、実にキャッチーな仕上がりだ。続いて名曲中の名曲「The Drifter」。当時のシングルはロジャーとセッション・シンガーで録音していたため、スモール・サークル・オブ・フレンズでのヴァージョンはこれが初めてになる。この曲を聴くと浮き浮きしてしまうような高揚感に包まれるが、この忠実なセルフ・カバーもとてもいい。ロジャー自信のテイクである。カーペンターズのテイクで知られる「Let Me Be The One」が素晴らしい。この曲は当時の録音と言えば誰もが信じるだろう。なぜ、同じ歌声が、なぜ同じ空気感のアレンジができたのだろう。何度聴いても新録とは信じられない。名曲中の名曲「Out In The Country」が続く。スリー・ドッグ・ナイトの歌声よりも、ジェントルで気品があるスモール・サークル・オブ・フレンズの歌声の方がもっと魅力的だ。ポール・ウィリアムスというより私にとってはヘブン・バウンドのヴァージョンが特別に好きな「I Kept On Loving You」もいい。アコースティックでシンプルで、ソフトでジェントルで、実に心地いい。こんなサウンドにずっと包まれていたい。「The Winner's Theme」はロス五輪のために作られたものの未使用で終わったインストだ。金管がリードを取るエキゾチックなナンバーで、ハープ・アルバートのために作った「Treasure Of San Miguel」を彷彿させる。当時に書いて譜面だけ残っていたという初披露の「You're Foolin' Nobody」には本当に驚かされた。メロディ、サウンド、これってパレードそのものだ。あのパレードのサウンドが40年後に再現されるなんて夢のよう。この感激はファンなら誰もが共有できるだろう。本当におすすめ。当時マリアン・ラブというシンガーのカバーがあったという、私にとっては初めて聴く「Watching You」が大好きだ。美しいバラードなんて山ほどあるが、このコード展開、このメロディ、ロジャー・ニコルズしか書けない、気品溢れる極上のナンバーだ。このアルバムの最高の収穫と言っていいだろう。ため息しか出てこない。そして前奏があり、ベースのリフから入る「Always You」の登場だ。アレンジ的にはサンダウナーズのカバーにとても近く、サンダウナーズのカバーが大好きな私としてはとても気に入っているテイクだ。当時のスモール・サークル・オブ・フレンズの楽曲リストにこの曲があり、我々ファンの間ではスモール・サークル・オブ・フレンズの「Always You」を聴くことが夢だった。これで夢が本当にかなった。次はこのアルバムの中ではちょっと意外なキャス・エリオットの「I'm Comin' To The Best Part Of My Life」だ。ママ・キャスの粘っこい歌声に比べ爽やかで、別の魅力を見せてくれた。そしてスティーブ・ローレンスの「I'm Gonna Find Her」。このアルバムを全面的にコーディネイトしたのは濱田高志さんだが、その濱田さんが数年前、このスティーブ・ローレンスのカバーを見つけた時に私の家へ電話をかけてきて、電話越しで聴かせてくれた時のことを今でも思い出す。私はあまりの素晴らしさに絶句してしまったのだが、ゲイリー芦屋さんも電話越しで聴いて「泣いた」と言っていた。まさに隠れた名曲なのだが、こんな曲を歌ってくれるなんて、感動以外ない。エンディングは新曲の「Look Around」だ。実に美しい、気品のあるバラードで、こういったバラードは往々にして朗々としてしまう事が多いのだが、ライトなスモール・サークル・オブ・フレンズの歌声だから曲の良さがさらに引き立った。全12曲、全ての曲が素晴らしく、こんなアルバムに出会えて本当に幸せだ。長くこのアルバムが世に出るよう、ロジャー・ニコルズと連絡を取り合い、プロデュースしてくれた濱田高志さんにも本当に感謝したい。(佐野)
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2007年10月20日土曜日

Radio VANDA第91回選曲リスト(2007/11/1)

Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。

Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。


特集:John Lodge & Ray Thomas(Moody Blues)


1. Candle Of Life('69)  

2. Floating('69)  

3. Eternity Road('69)  

4. Emily's Song('71)

5. One More Time To Live('71)

6. Our Guessing Game('71) 

7. For My Lady('72)  

8. Isn't Life Strange('72) 

9. You('75)...Justine Hayward & John Lodge

10. Saved By The Music('75) ...Justine Hayward & John Lodge

 

 

 

2007年9月24日月曜日

Radio VANDA第90回選曲リスト(2007/10/4)


Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。

Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。


特集:Justin Hayward(Moody Blues)


1. London Is Behind Me('65) ...Solo Single

2. Nights In White Satin('67) 

3. Tuesday Afternoon'67) 

4. Ride My See-Saw('68) 

5. Lovely To See You('69)  

6. I Never Thought I'd Live To Be A Hundred('69)  

7. Gypsy('69)

8. Watching And Waiting('69)

9. Question('70) 

10. It's Up To You('70)  

11. The Story In Your Eyes('71) 

12. New Horizons'72) 

 

 

2007年9月1日土曜日

☆Sundowners:『Captain Nemo』(Rev-Ola/CR-Rev201)


このアルバムに出会ったのは今から10数年前、このどサイケなジャケットで普通は敬遠することろだが、Nichols-Asherのクレジットの「Always You」を見つけてターンテーブルに乗せてみると、オーケストラの美しいリードメロディに導かれ、力強いビートに乗せた深い音像に彩られた実に魅力的な歌が現れ、数あるソフトロック系のロジャーニコルスのカバーの中でも秀逸な出来栄えの傑作カバーを聴くことができた。そしてソリッドなアコースティックギターのカッティングが素晴らしい美しいボサノヴァ「Edge Of Love」と、ジャケットのイメージとはまったく違う華麗なソフトロックナンバーがさらに現れ、本当に驚かされたもの。すぐに『ソフトロックA to Z』の本で紹介したのが1996年、ただ紹介したもののこんなマイナーなアルバムに本当に誰が出会えるのだろうと思っていたが、こうしてCD化されるのだから、紹介してみるものだ。Rev-Olaはこの前にもGordian KnotのアルバムをCD化しており、さらにその前はSandy Salisbury,Curt Boettcher,California,Eternity's Children,Roger Nichols&The Small Circle Of Friendsなどをリイシュー、VANDAフォロワーとして多くの名盤をCD化してくれた。さてこのアルバム、オリジナルでは「Ring Out Wild Bells」がキャッチーなフックを持つポップナンバーでなかなかの出来栄え。さらにブラスが映えるサイケなロックナンバー「Sunny Day People」が彼らの真の実力を示してくれた。バラエティに富んだこのアルバムだが、これだけ無名なミュージシャン達がこれだけのレベルのアルバムを作っていたなんて、さすがはアメリカである。LPを持っていない人は、購入してみよう。(佐野)
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