2019年4月30日火曜日

FMおおつ Music Note 4月号


2019.4.27. 15:30~  再放送 2019.4.28. 8:00~

 今回はアニメーションにまつわる音源の特集です。まず最近のアニメの話題としては、昨年発表された細田守監督の『未来のミライ』が、第19回アカデミー賞の長編アニメーションにノミネートされました。残念ながら受賞はかないませんでしたが、この作品の主題歌<ミライのテーマ>を担当したのは私の長年のファンである山下達郎さんでした。
その達郎さんには日本初のテレビ・アニメ「鉄腕アトム」の作者漫画の神様手塚治虫先生をリスペクトしたのが<アトムの子>です。

この<アトムの子>ですが、手塚先生がお亡くなりになったとき、達郎さんはわずか10日間で完成させたそうです。完璧主義者ゆえ納得いくまでレコーディングに時間をかけることで有名な達郎さんにしては本当に珍しいことでした。それ故、達郎さんの手塚先生への並々ならぬリスペクトの想いが伝わってきます。


私も「鉄腕アトム」をはじめとする手塚作品の大ファンで、その憧れから漫画家を目指したこともありました。とはいえ、その当時は「漫画は悪書時代」で、「私が担任のうちは教え子には絶対漫画話読ません!」とPTAに宣言する教師もいたほどでした。何せ、神様手塚先生でさえ、教育委員会から呼び出しを受けて喚問されたという「漫画暗黒時代」でした。ただ私の学校には「価値ある漫画もある!」と図書室に漫画を蔵書にしてくれる金八先生のような理解者黒田昭八先生がいました。ちなみに彼の推薦本は、白土三平先生の「忍者武芸帳」。

では私が漫画やテレビ・アニメなどに夢中になっていた小中学生のころの、ヒーローものから「エイトマン/ 克美しげる」「スーパージェッター/ 上高田少年合唱団

まず「8マン(アニメは、カタカナ書きで「エイトマン」)」は、少年マガジンに連載されていたSF作家平井和正さん原作のSF漫画です。そのストーリーは殉職した刑事がロボットに生まれ変わって私立探偵として活躍するというものでした。そんな8マンのエネルギー補給はシガレット・タイプの吸引式(まるで「アイコス」か「ブルームテック」?)で、今のような「禁煙」が常識となった現在では信じられない設定でした。なお主人公の名前は東八郎(漫才のトリオスカイライン)、そうあの東MAXさんのお父さんと同姓同名!ついでながら、彼の一番弟子は何と「欽ちゃん(萩本欽一さん)」。

ちなみにこの主題歌の作詞は、大橋巨泉さんと共に昭和を代表する司会者の一人マエタケ(前田武彦)さん。
そして「スーパージェッター」ですが、未来からタイムマシン「流星号」に乗って来たタイムパトロール隊員が大活躍するSFアニメでした。私はジェッターの愛車流星号の大ファンで、プラモデルもスケール違いが発売されるほどでした。

中学のころには「流星号」を連想させるようなデザイン(と私は思っていた)の「HONDAクーペ9」に憧れ思っていました。

では「サイボーグ009の歌 / 東京マイスタージンガー」W3(ワンダー・スリー)/ ボーカル・ショップ, 白石冬美, 近石真介(ちかいししんすけフグ田マスオ), 小島康男」


まず「サイボーグ009」から、この漫画は手塚先生にも迫る早熟の天才/ 石ノ森章太郎(当時は、石森章太郎)先生の作品です。私同様、この作品で「サイボーグ」を知った方も多かったかのではないでしょうか?ストーリーはご存知の方も多いかと思いますが、001から009まで9人(性別年齢・国籍も別)のそれぞれ特殊な能力を持つサイボーグ戦士の戦いを描いたものでした。

とはいえ、その革新的な発想が先を行き過ぎていたためか、当時出版社からは受け入れてもらえず、やっと少年キングでスタートにこぎつけたそうです。ところがここでは未完に終わり、後に少年マガジンに引き継がれて完結しています。

ただここでのエンディングは、任務を果たした009002と宇宙空間から大気圏に突入して燃え尽きるという悲劇的なものでした。この設定は読者から抗議が舞い込み、その後先生は逝去される1998年まで出版社を変えて多くのストーリーを発表されていますが、ほとんどが未完でした。

その後、石ノ森先生は数多くの傑作を発表していますが、その中で最も有名なヒーローといえば、現在もその末裔ドラマが放映される「仮面ライダー」ではないでしょうか。余談になりますが、数年前に会社の旅行で石巻(宮城県)に行きました。そこで石ノ森萬画館に寄る機会を持ち、年甲斐もなく「009」や「仮面ライダー」の前で大はしゃぎ!

冒頭で「私は「漫画家志望」だった」とふれましたが、その頃の私は少年週刊誌を全て(サンデー、マガジン、キング、ジャンプ、チャンピオン)購入していました。また漫画家を目指したころには、石ノ森先生の著書『マンガ家入門』をバイブルに投稿を始めました。この本の読者からは数多くの漫画家が誕生したといわれています。

そして「W3(ワンダー・スリー)」。これは手塚先生の「ジャングル大帝」に続く3つ目のアニメ作品で、アメリカでも「The Amazing 3」として放映されています。この作品は当初少年マガジンでスタートしていますが、手塚先生を激怒させる「W3事件」と呼ばれるトラブルがあり、少年サンデーに移籍して別の設定で発表されています。ただ当時の私は全く知らず大人になってその事実を知り、国会図書館で当時の「少年マガジン」を閲覧し、噂どおりとある号で突然終了しており唖然としました。とはいえSF的な発想によるストーリーに夢中になり、中でもW3の愛車一輪駆動カーは憧れでした。
またこの作品でのもう一つの魅力は手塚先生の描く「動物キャラクター」でした。特にW3のリーダー、ボッコ隊長が姿を変えたウサギはとても愛らしかったです。なお先生の動物キャラといえば、大傑作「ジャングル大帝」で確立されていたので、この程度はおてのものだったと思います。補足ながら、個人的に私の好きな「動物ドラマ」は、月刊誌「少年ブック」に連載されていた三匹の犬が主人公の「フライング・ベン」です。

ここまでSFアニメについてお話しましたが、山下達郎さんも大のSFファンで、SFをモチーフにした曲がいくつかあります。その中から「夏への扉」「メリーゴーランド」

今聴いていただいた2曲、まず「夏への扉」はアメリカの作家ロバートAハインラインの同名小説がベースになっています。この曲は現在のライヴでも彼をバック・アップしているキーボード奏者難波弘之さんの1stアルバムへの提供曲でした。この曲を初めて聴いたのは、私が社会人になった197812月の渋谷公会堂のライヴで、その時に一目(耳?)惚れしました。なお達郎さんのヴァージョンは彼がブレイクした1980年のアルバム『Ride On Time』に収録されています。
そして「メリー・ゴー・ランド」は、彼のお気に入りの作家レイ・ブラドベリィの作風をイメージした曲で、名曲「クリスマス・イヴ」が収録され1983年の『Melodies』に収録されています。

SFに関する話はここまで、ここからは女の子向けアニメに移り、まずは「魔法使いサリー/スリー・グレイセス&薗田憲一」「ひみつのアッコちゃん/岡田恭子」

まず「サリーちゃん」ですが、「鉄人28号」や「伊賀の影丸」で知られる横山光輝先生が19667月から月刊誌「りぼん」に掲載開始した「魔法使いサニー」でした。この作品は後に数多く登場する魔法少女物の元祖で、女の子向けテレビ・アニメ第1号でした。ただアニメ化(NET/テレビ朝日:1966.12.)に際し、「サニー」の商標を持っていた家電メーカーSonyから許諾が取れず、「サリー」になったという話は有名です。

とはいうものの、この名前は19664月にニッサンが発売した小型乗用車(1965.12. 公募/800万の応募から1966.2.「サニー」に決定)の名前になっており、時期的にタイミングが悪かったのでは?と思っています。

タイトルが変更になったとはいえ、このアニメは女の子たちだけでなく、多くのアニメ・ファンに評判となっています。それは山田邦子さんによるアニメ最終回のサリーと親友よし子ちゃんの会話のモノマネ、「よっちゃん、本当は私魔法使いだったの」「え、ちっとも知らなかったわ!」が大うけしたことでもわかります
そのよし子ちゃんのセリフ「おやつあげないわよ!」が飛び出すエンディング・テーマ「いたずらのうた」や、初期のエンディング「魔法のマンボ」も主題歌以上に人気がありました。なおこのアニメに使われていた曲の作者は全て「寺内貫太郎役」で有名な小林亜星さん。
次に「ひみつのアッコちゃん」はギャグ・マンガの大家・赤塚不二夫先生が1962年「りぼん」に連載を始めた作品です。私はこのアッコちゃんを見たとき、「<おそ松くん>の彼女<トト子ちゃん>だ!」と思いました。とはいえ赤塚先生も手塚先生のように作品によってキャラが変わる、ディズニーの<スター・システム>(人気キャラが役を演じる)を採用?とも感じました(実際には違った)。

アニメの放映は、「サリー」が終了した翌月の1969年1月で、「サリー」以上に大評判となり、続編や劇場版さらには綾瀬はるかさんで実写化もされたほどの人気作品です。ちなみにこの主題歌の作曲も「サリー」同様小林亜星さんで、第一作アニメのエンディング・テーマでお馴染み<すきすきソング>(歌:水森亜土さん)も亜星さんです。

なおこのアニメは、何回もリニューアルされていると紹介しましたが、その度にパパとママの職業が変わっています。まず第一作では「船長と専業主婦」、二作目では「ニュースキャスターとイラストレーター」、そして三作になると「カメラマンと芸術家」になっていました。これは当時の女の子たちの憧れだったと言われています。あなたのリアタイ「アッコちゃん」は?

アニメから始まった、変身するときと戻るときの呪文,「テキマクマヤコン○○になぁれ」(テクニカル・マジック・マイ・コンパクト)と「ラミパスラミパス・ルルル」(スーパーミラーの逆さ読み)、これはアニメ化に際して考案されたものです。

では女の子向けアニメをもうひとつ、19674月に始まった「リボンの騎士」。この作品はあの『ベルサイユのばら』にも大きな影響を与えたともいわれたストーリー少女漫画の先駆けといわれる金字塔で、<モーニング娘>のキャストでミュージカル化もされています。なお主人公サファイヤのモデルは元タカラジェンヌの淡島千景さんです。
なおこの作品は4編あり、第一作は1953年「少女クラブ」、1958年にはサファイヤの子供たち(男女の双子)が主人公の続編(双子の騎士)が発表されました。その後1963年には第一作を大幅にリニューアルした物語が「なかよし」に連載され、アニメ化された67年には「少女フレンド」で、先生の原案で別の作家による書下ろし新作が発表されています。私は小学校の頃床屋にあった単行本「双子の騎士」を見たのが最初で、数年後に「手塚治虫大全集シリーズ」で「リニューアル版」が単行本となり、その重厚なストーリーにはまりました。ただ、ラスト作は手塚先生自身が<失敗作>と公言し、未だ単行本化されていません。これも「W3」同様に国会図書館で、発表当時の「少女フレンド」を閲覧し、確かに6話で終わらせてしまったのがわかるような無理な設定でした。

ちなみに主題歌には<インスト>、主語<僕>、主語<私>と3パターンあり、<私>ヴァージョンのみアレンジが違っています。エンディグの「リボンのマーチ」も含め、アニメのサントラはシンセサイザーの大御所冨田勲さんによるものです。彼は手塚先生のアニメ音楽を数多く手掛けており、代表作の一つに「ジャングル大帝」があります。

さて、最後はこの当時にお馴染みだったCMソングを聴いていただきます。まずは、「ジャングル大帝」のスポンサーだった(今は亡き)サンヨー電機のカラー・テレビ「サン・カラーの歌」、歌っているのはエノケンこと榎本健一さん。当時、サンヨー電機はカラー・テレビの販売推進のために、日本初のカラー・アニメーション番組のスポンサーになったと言われています。カラー・テレビの普及率が低かったころ、新聞のテレビ欄に「カラー放送」と印字、カラー放送番組にはブラウン管の隅に「カラー」とテロップが映っていました。

次はNHK連ドラの影響で「チキンラーメン」が発売以来最高の売れ行きとなっている「チキンラーメン」、同時期に発売された「エースコック・ワンタンメン」。この袋麺のCMも「ぶたぶたこぶた~」のフレーズでお馴染みでした。なお1980年頃には関西限定販売で、関西出身の後輩に土産を頼んでいたこともありました。
そして商品よりも「きん、ぎん、パぁ~る」のフレーズが有名だったライオンの洗濯洗剤「ブルーダイヤ」。このプレゼント・フェアは洗剤が発売された1965年から(1973年のオイル・ショックで一次中断)2008年まで、約40年も続いていたというから驚きです。ちなみに、景品は現物直接封印ではなく、「当選引換券」が入れてあったということです。この曲を書いたのはCMの達人、小林亜星さんで稀に彼本人の歌うヴァージョンが流れたこともあったようでした。

そしてCMのトリは「鉄腕アトム」のスポンサーだった明治製菓から、「ブルー・ダイヤ」と同じく亜星さん作のCMで「明治チェルシー」。この曲は「コカ・コーラ」のCM同様にいろいろな人たちが歌っていますが、きわめけつけといえば「こぉ~いびともいなぁ~いのにぃ~♪」のシモンズですね。

本日の「アニメ特集」のラストは、アコースティックギターの名手、押尾コータローさんのセカンド『Love Strings』に収録されていた「リボンの騎士主題歌」です。

ということで、今月から始まりました「Music Note」、来月は昨年516日に亡くなられた西城秀樹さんを一周忌に偲んで追悼特集をお届けする予定です。なおWOWOWではこの命日に秀樹のライブ映像を含む大特集が放映されます。
(鈴木英之)

2019年4月25日木曜日

POPS IN JAPAN VOL.4 ~ 西岡利恵出演ライヴイベントのご紹介 


弊誌でコラム『ガレージバンドの探索』を連載している、 The Pen Friend Club (ザ・ペンフレンドクラブ)の西岡利恵が臨時編成で組んでいるバンドSchultz(シュルツ)が、4月29日に下記のライヴ・イベントに出演する。


POPS IN JAPAN VOL.4  

4/29(月)
東高円寺U.F.O. CLUB

open 18:30
start 19:00
前売¥2500(+D)
当日¥2800(+D)

◾︎LIVE:
鈴木やすしエクスペリエンス
モンド・ダイアモンド(高松)
フランク小林とジ・エックス
Schültz
girl age

◾︎DJ:鈴木やすし
zuma(ザ・ゲッコウズ)

Schültz
 
ペンフレンドクラブではベーシストだが、自ら率いるこのシュルツではボーカルとギターを担当して拘りの60年代ガレージロックやブリティシュ・ビートに影響されたサウンドを展開している。
ここのコラムで興味を持った読者は是非、シュルツのサウンドを生で体験して欲しい。


Schültz
西岡利恵による臨時編成バンドとしてライブ活動を行う。
ガレージロックやブリティッシュビートなどの影響の強い楽曲を、60年代前半の米国ティーンガレージを思わせるチープな質感のサウンドで表現する。
(テキスト:ウチタカヒデ)

2019年4月21日日曜日

RYUTist:『センシティブサイン』(PENGUIN DISC / PGDC-0010)


4人組アルドル・ヴォーカル・グループのRYUTist(リューティスト)が、4月23日に通算7作目となるニュー・シングル『センシティブサイン』をリリースする。
メンバーは五十嵐夢羽、宇野友恵、佐藤乃々子、横山実郁のハイティーンから20代前半の4名から構成され、所謂アイドルとは一線を画すヴォーカル・ワークを誇り、提供される楽曲も音楽通を唸らせるソングライティングとサウンドを持った、拘り抜かれたプロダクションで活動しているのだ。
筆者も昨年5月にリリースされた『青空シグナル』(PGDC-0007)収録「無重力ファンタジア」を、昨年の年間ベストソングに選出したほど彼女達の作品には注目している。


さて本作のタイトル曲「センシティブサイン」は、若干21歳のシンガー・ソングライターのシンリズムの提供曲である。
またカップリングには、サード・アルバム『柳都芸妓(りゅうとげいぎ)』(PGDC-0005)のリード・トラック「夢見る花小路」を提供した佐藤望による「素敵にあこがれて」と、microstar(マイクロスターWack Wack Rhythm Bandのメンバーがタッグを組んだ「バ・バ・バカンス!」の2曲が収録されている。
今月頭に音源を入手してから聴き込んでいるが、このシングル収録曲について解説していこう。


センシティブサイン / RYUTist

タイトル曲の「センシティブサイン」は、イントロのエレキギター・アルペジオから始まるホーン・セクション入りの溌剌としたポップスで、アレンジ的にはファンキーなベースとコンガのポリリズムが利いている。シンリズムならではの個性は薄いが、ブリッジからサビのメロディの美しさなど、RYUTistのハーモニーを活かした楽曲の良さは光っている。

続くカップリングの「素敵にあこがれて」は、先月レビューしたコントラリーパレードの『CONTRARY』収録「ユートピア」のアレンジで手腕を発揮していた佐藤望(Orangeade他)のソングライティングとアレンジによる楽曲だ。前出の「夢見る花小路」を一聴した時からその才能には注目していたが、この曲でも極めて独創的なサウンドを展開していて裏切らない。
右チャンネルのラウドなエレキ・ギター(Orangeade黒澤鷹輔のプレイ)のフレーズと、センター及び左チャンネルで展開するピッコロ、フルート、ファゴット等木管楽器のコントラストがとにかく素晴らしく、縦横無尽に発されるアックの強いシンセのオブリガートもいいアクセントになっている。
アルドル・ヴォーカル・グループへの提供曲としては異端ではあるが、80年代初頭にテクノ少年だった筆者にとっては全く違和感がなく、むしろ歓迎すべきで、早くも本年度ベストソング候補に入る。

カップリングのもう1曲は、 microstar(飯泉裕子・佐藤清喜)のソングライティングに、Wack Wack Rhythm Band(以降ワック)のホーン・セクションとパーカッションがコラボレーションしたハウス系ダンス・ナンバーで、Beats Internationalの「For Spacious Lies」(『Beats International』収録90年)を彷彿とさせる。ホーン・アレンジは佐藤清喜とワックの三橋俊哉が担当し、サルソウル・フレイバーを醸し出している。
このシングル収録3曲は、アイドル・ファン層を超えた音楽通にもお勧めする出来る内容であるので興味をもった是非入手して聴くべきだ。
(ウチタカヒデ)


2019年4月14日日曜日

Iron Finger Of Crew ~ Joe Osborn


The Wrecking Crew(レッキングクルー)の中核としてハル・ブレインと共に黄金のリズムセクションを担った偉大なベーシストのジョー・オズボーン氏が昨年12月14日に亡くなった。81歳だった。
1937年8月28日ルイジアナ州北部にあるマディソン教区の村マウンドに生まれた彼は、地元クラブで演奏するミュージシャン人生をギタリストとしてスタートさせたという。その後デイル・ホーキンズのバックでプレイするなどプロとしての道を進む中でベーシストに転向し、60年には旧知の仲だった一流ギタリストのジェーム・ズバートンの紹介で、リッキー・ネルソン(後にリック・ネルソンに改名)のバンドに参加しキャリアを開花させた。また64年にはジョニー・リヴァースのセッションに参加したことで、ロサンゼルスでのコネクションを築いたのだろう。The Wrecking Crewには欠かせないファーストコール・ベーシストとして数多くのレコーディング・セッションに参加し、その名を知らしめた。
やはりママ&パパスやThe 5th Dimensionから、彼が見出したともいえるカーペンターズ等の数多くのヒット曲群でのプレイに注目が集まるだろ。
ここでは前回のハル・ブレイン氏に続き、ジョー・オズボーン氏を心より敬愛するミュージシャン達と、知名度は低いが知られざる彼のベストプレイを挙げてその偉業を振り返りたいと思う。





【ジョー・オズボーンのベストプレイ5】
●曲目 / ミュージシャン名
(収録アルバムまたはシングル / リリース年度)
◎選出曲についてのコメント



【角谷博栄(ウワノソラ)】
https://uwanosora-official.themedia.jp/

●Mexican Drummer Man / Herb Alpert & The Tijuana Brass
 (7”『 Mexican Drummer Man』Single/ 64年)
◎ハル・ブレインの強烈なドラムもスゴいですが、
曲終わりへ向かう際のオズボーンとのリズム隊の畳み掛けがカッコいいです。

●Look To Your Soul / Johnny Rivers
(『Realization 』/ 68年)
◎レッキングクルーの演奏。
細かくシンコペーションしてミュートをしたような枯れた音。
4弦をあまりにも使用しない奏法。リード楽器のようにメロディを作ってしまうプレイ。イントロからオズボーン節全開です。

●It Might as Well Rain Until September / Peggy Lipton
(『Peggy Lipton』/ 68年)
◎Lou Adlerのプロデュース。作曲はGerry Goffin & Carole King。メロディの合間に入れるギターの低音のオブリの様なベース。ピック弾き?特有のアタック感もオズボーンのベースの持ち味だと思います。

●Poor Side Of Town / Al Wilson
(『Searching For The Dolphins』/ 69年)
◎プロデュースはJohnny Rivers。編曲はGene Page。
こういう編曲ががっつりしてる曲では長い音譜が中心で、動き回るというよりかはボトムを
シッカリと支えるようなプレイをしてます。

●People In Love / Jim Grady
(『Jim Grady』/ 73年)
◎本当に73年?と疑ってしまうような進みすぎてるサウンド。西海岸ロック。
後のAORとも言えるようなサウンドを70年代初期のオズボーンはプレイをしてます。
ギターはLarry Carlton。


People In Love / Jim Grady



【平川雄一(The Pen Friend Club)】
https://the-pen-friend-club.wixsite.com/the-penfriendclub

●Establishment Blues / Rejoice
 (『Rejoice』/ 68年)
◎いやー、最高ですね。カッコいい。ハル・ブレインとの絡みも。

●Sour Grapes / Cass Elliot
(『Bubblegum, Lemonade, and... Something for Mama』/ 69年)
◎まさに、ジョー・オズボーンの輪郭の音ですね。引っ掛けベースいいなあ。

●Both Sides Now / Neil Diamond
 (『Touching You, Touching Me』/ 69年)
◎いい音するベースだなあ。あと本当にいい曲。

●Mr,Goder / Carpenters
 (『Close to You』/ 70年)
◎曲も好きなんですがベースもいいですよね。いい動きしてます。

●Flashback / The Fifth Dimension
 (7"『Flashback』/ 73年)
◎この曲、大好きなんですよね。やっぱりドラム&ベースがかっこいい。
前回ハル・ブレイン特集のときに挙げようと思ったんですが、今回紹介できて嬉しいです。


Flashback / The Fifth Dimension



【平田 徳(shinowa)】
http://www.shinowaweb.com

●TANYET(Album) / The Ceyleib People 
(『TANYET』/68年)
ライ・クーダー や ベン・ベネイ も名を連ねる企画物的サイケインストスタジオプロジェクト。
サイケものでは非常に有名な一枚だが、Joe Osborn がエンジニアとしてもクレジットされている。一流プレイヤーのサイケセッションという前提ゆえ、誇張しすぎたビヨーンビヨーンやりすぎなシタールやコラージュ的な手法は、良くも悪くも数多のサイケバンドとは一線を画す内容です。ちょっと例外ではありますが、曲推しではなく箱推しです。

●Standing In The Shadow Of Love / Boyce & Hart
(『It's All Happening On The Inside』/ 69年)
冒頭より唸ってウネるベースが炸裂!68~69年あたりのサイケバンドがたまにやる Vanilla Fudge の Supremes “You Keep Me Hangin' On” 以降の Motown 有名曲のややプログレ風味サイケカバーの秀逸作。いわゆるサイケカテゴリーで括られるバンドよりも全然すごい。

●Horses On A Stick / Judy Henske & Jerry Yester
(『Farewell Aldebaran』/ 69年)
大好きな Judy Henske のこのアルバムでも Joe Osborn が2曲弾いていたことに驚いた。ちょっとチープなガレージサイケフォーク調のこの曲でも、弾力感溢れる芯のあるベース音は本当に良く合いますね。総じてサイケサイドの Joe Osborn は、クセのあるアンサンブルをベースでまとめ上げながら曲を引っ張り展開していく、サイケマナーな観点でのベーシストとしてもほぼNo.1でしょう。

●Hands Off The Man (Flim Flam Man) / Peggy Lipton
(『Peggy Lipton』/ 69年)
ローラ・ニーロの原曲よりもベースのキレが良いので、比べてみると Joe Osborn のベースのあの弾力感あふれた音のかっこよさが本当に実感できます。もうベースの美味しい音を確実に知っている人という感じです。総じて音の芯も倍音もしっかりしているため帯域が広く感じられるので、よってオケの中でフレーズが際立ち、そしてしっかりボトムも支えられるという、理想的なベースサウンドであるといえましょう。

●Mixed-Up Girl / THELMA HOUSTON 
(『SUNSHOWER』 / 70年)
若き日のテルマ・ヒューストンの1stアルバムは ジミー・ウェッブ プロデュースの、ソウルというよりも、イギリスで成功したマデリン・ベルをもっと叙情的にしたようなソウルポップなサウンド。ソウルファンからはあまり芳しくないみたいです。でもでも、めっちゃドラマチックな込み上げ系のこの曲は、同年に発売された ポール・ウィリアムズのサムデイマンを彷彿とさせる感動的なベースライン!この時期のジョーは曲を次第に盛っていく感じが本当に神懸かってます。アルバム全体通じてジョーのベースが本当に堪能できる一枚で、隠れた名盤です。


Standing In The Shadow Of Love / Boyce & Hart



【松木MAKKIN俊郎(Makkin & the new music stuff / 流線形 etc)】
http://blog.livedoor.jp/soulbass77/

●Someday Man / Paul Williams 
(『Someday Man』/70年)
◎やっぱりこの曲は外せない。ど頭から目が覚めるようなグルーヴと歌心。
めまぐるしい展開に馴染む、素晴らしく艶のある音色が最高。

●Brothers And Sisters / Jack Daugherty
(『Jack Daugherty And The Class Of Nineteen Seventy One』/71年) 
◎Aメロの伸びやかなプレイはジョーの真骨頂。
カーペンターズのバラード諸作に聴けるような、シンプルな中に息づく歌心。

●Rock Me On The Water / Johnny Rivers
(『Home Grown』/71年)
◎ジムケルトナーとのシンプルなコンビネーション。
組み合わせとしては貴重だが、SSW〜SWAMPにおける理想のリズムセクションの一つに数えたい!

●Light Sings / 5th Dimension
(『Love's Lines,Angels And Rhymes』/71年)
◎ジョー史上ソウル度が頂点に達した演奏か。唸るようにグルーヴして歌を煽りながら、自らも歌うようなメロディを紡ぐ。名フレーズの宝庫!

●I Cry Mercy  / Larry Carlton
(『Singing/Playing』/73年)
◎ジムゴードンのドラムとぴったりくっついて、ストリングスセクションの一員のようにアレンジとシンクロしてカウンターメロディを繰り出す。個人的に一番好きな演奏。


Someday Man / Paul Williams





【TOMMY (VIVIAN BOYS) 】
https://twitter.com/VIVIAN_BOYS

●Save For A Rainy Day Theme / Jan & Dean
(『Save For A Rainy Day』/ 66年)
◎作者であるレッキング・クルーの各種鍵盤奏者ラリー・ネクテルは、ベーシストとしてもザ・バーズ「ミスター・タンブリン・マン」イントロのグリスや、BB「青空のブルーバード」等、印象的な演奏を残す。このアルバムの基礎トラックはジョーのガレージ・スタジオで録音された。

●Shapes In My Mind / Keith Relf
(7”『Shapes In My Mind』/ 66年)
◎ヤードバーズとジョーのイメージしにくい繋がり。この曲のエンジニア、ボーンズ・ハウの仲介か。ラヴ『フォーエヴァー・チェンジズ』(67年11月)にも参加のハル・ブレインのドラムとのリズセクで、敢えて雑に暴れるベースラインが醸し出すサイケ感。

●All I Can Do / Carpenters
(『Offering』/ 69年)
◎全スタジオアルバム参加のジョーは謂わば「カーペンターズのベーシスト」。1stでのカレンのドラマーとしての矜持、とりわけこの先鋭的なハーモニー・ジャズ・サイケ曲での鬼気迫るプレイにもジョーは的確に応える。「ワンダフル・パレード」と共に本作のハイライト。

●Slip On Through / The Beach Boys
(『Sunflower』/ 70年)
◎訃報記事で初めて『サンフラワー』参加を知る。が、69年2月13日のサンセットスタジオでの録音(「ガット・トゥ・ノウ・ザ・ウーマン」)に参加、しかもカールが後で差し替えたかも、程度のことしか分からず。むしろ、正式クレジットが怪しいこの曲こそ、よりジョーっぽい。

●Merry Christmas Darling / Carpenters
(『Merry Christmas Darling』/ 70年)
◎「サンタが街にやってくる」カヴァーと双璧たるオリジナル曲。BB関連ではカーニー・ウィルソンのソロ・クリスマス・アルバム(07年)に名カヴァー有。クリスマス・パロディスト、ボブ・リヴァース版(02年)のイスラム風カヴァーも、的を射た歌詞含め高い完成度。


All I Can Do / Carpenters


【Masked Flopper(BB5数寄者)】

●Hey Sue / Johnny & Dorsey Burnette 
(7”『It Don't Take Much』B面 / 63年)
◎It Don't Take MuchのB面。Burnette兄弟との共作でJoeのエレキベースによるJoe節が所々楽しめる一曲。Ricky Nelsonのバックバンドを経たのちDunhillへと転身する。

●Is Happy This Way / The Thomas Group
(7”『Is Happy This Way』/ 67年)
◎Sunshine pop時代まっただ中に制作されたDunhill王道路線。
他に数枚Sloan-Barri作品をリリースしており、どれも佳曲揃い。

●Vegetables / Laghing Gravy
(7”『Vegetables』/ 67年)
◎覆面バンドで、当時名称使用が禁止されていたJan&DeanのDeanがリリースした一曲。
録音はJoeの所有するスタジオで行われた。同所ではデビュー前のKaren Carpenterも録音し、Joeのレーベルからデビューしている。

●Blow Me A Kiss  / Mama Cass Elliot
(『Bubblegum, Lemonade, and... Something for Mama』/ 69年)
◎弊誌でもおなじみソフトロック名盤でソロ2作目。
ノスタルジックな曲調にうまくからむベースサウンドが心地いい一曲。

●Take It and Smile / EVE
(『Take It and Smile』/ 70年)
◎参加ミュージシャンは Hal Blaine-James Burton-ペダル・スティールにSneaky Pete KleinowやRy Cooder作家陣はJames Taylorなど後のWest Coast Rockを予感させる作品。


Take It and Smile / EVE



【ウチタカヒデ(WebVANDA管理人)】

●Love Is A Rainy Sunday / Love Generation
(『Montage』/ 68年)
◎今回の選曲はイントロ・プレイのインパクトで5曲に絞っていった傾向があり、この曲の2連のグリスダウンはやはり耳に残った。パート間のアクセントもジョーならではではないだろうか。
パーソナルはノンクレジットだが、後年メンバーのトム・バラーのインタビューでハル・ブレインとジョーのコンビネーションがいかに素晴らしかったかを語っていた。
蛇足だがこの企画に参加するミュージシャンの某バンドが、セカンド・アルバム収録曲でこの曲をオマージュの1つとしている。レビューをリンクしているので是非聴いて欲しい。

●Hope / The Carnival 
(『The Carnival』/ 69年)
◎拘り派ソフトロッカーの中ではロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズより好まれるグループかも知れないが、この曲でもイントロのグリスダウンがとにかくクールで、全体的なアレンジの中でよくベースが機能している。

●Someday Man / Paul Williams
(『Someday Man』/ 70年)
◎この曲を愛する多くのソフトロッカーは理解しているので多くを語りたくないが、この曲にとってジョーによるベースラインのパターンそのものがキーデバイスであることがよく分かる。

●California Revisited / America
(『Homecoming』/ 72年)
◎「Ventura Highway」ほど知名度は高くないが、イントロのピッキング・アクセントが実にクールである。本編のプレイとしてはS&Gの「A Hazy Shade Of Winter」のマークⅡという攻め方だろう。

●Wavin' And Smilin' / Larry Carlton
 (『Singing / Playing』/ 73年)
◎ジャズ・フュージョン・ギタリストとして数々のセッションで名演を残すカールトンのセカンド・ソロアルバムの3曲にジョーは参加している。特にプレ・ブルーアイド・ソウルとして知られるこの曲のプレイは特筆すべきだ。ギターとユニゾンを取るパートと、ビートをキープするパートを交互にチェンジするスリリングなプレイは彼の新たな一面を見させてくれる。


Hope / The Carnival




(企画 / 編集:ウチタカヒデ)