2020年9月21日月曜日

名手達のベストプレイ第9回~バーナード・パーディ



 “プリティー”の愛称で知られる一流ドラマーのバーナード・パーディ(Bernard Lee Purdie)は、1939年6月11日にメリーランド州セシル郡のエルクトンで15人兄弟の11人目の男子と生まれた。幼少の頃から空き缶など手作りのドラムを叩いて遊んでいたという。
 14歳になると人生初のドラム・セットを買ってもらい、本格的なレッスンを受け、地元のカントリー・バンドやカーニバル・バンド等様々なスタイルでプレイするようになった。この頃の経験が後の多様なジャンルのレコーディング・セッションで活かされる礎となっていく。
 ハイスクール卒業後の1960年にはニューヨークに移り、ミッキー&シルビアやバディ・ルーカス、ジェームス・ブラウンのレコーディングに参加するなど頭角を現し、1970年にはアトランティック・レコードでアレサ・フランクリンの一連のセッションでその名は知られる。特に名盤の誉れ高い『Live At Fillmore West』(1971年)でのプレイは評判になった。
 その他にもニーナ・シモン、ギル・スコット・ヘロン、マイルス・デイヴィス、ハービー・マン、ホール&オーツ、トッド・ラングレン、スティーリー・ダン、キャット・スティーブンス等々ソウル、ジャズ、ロックの垣根を越えて多くのアルバムに参加し、彼ならではのプレイでミュージシャンズ・ミュージシャンとしての地位を確立してくのだった。
 自身のリーダー作品では1968年のファーストアルバム『Soul Drums』から27枚ほどリリースしており、セッションに参加したアルバム総数は3000枚を超えるとされている。 
 さてここではそんなバーナード・パーディ氏を心より敬愛するミュージシャン達と、彼のベストプレイを挙げてその偉業を振り返ってみたい。今回は参加者10名中4名のジャンルの異なるドラマーが参加しており、各人が独自の視点で解説してくれた。サブスクリプションの試聴プレイリスト(3時間28分!)を聴きながら読んで欲しい。


 

【バーナード・パーディのベストプレイ5】
●曲目 / ミュージシャン名
 (収録アルバムまたはシングル / リリース年度)
◎選出曲についてのコメント ※管理人以外は投稿順により掲載。



Drums & Percussion 奏者/じゃむずKOBO 代表
/S.A.D.ドラムスクール 講師 


●Memphis Soul Stew / King Curtis(『Live At Fillmore West』/ 1971年) ◎紹介を受けてリズムインの爆発力に驚いてからのダチーチーチー! キックでリズムを作る格好良さを感じた1曲です。

●Day Dream/ Aretha Franklin(『Young,Gifted and Black 』/ 1972年)
◎ダイナミクスが幅広く録音されており、実際のプレイに近い印象を受けます。 潜るところは潜り突如現れたりしながら楽曲の主導権を握る様子は ドラムの役割、リズムの大切さを教えてくれます。

●DEACON BLUES / Steely Dan(『Aja』/ 1977年)
◎HOME AT LASTに注目が集まりがちですが、シンプルな8ビートでミュートの効いたスネアをこのポケットに入れ続ける凄さ。 そしてイントロでリズムパターンとしてやりがちなシンバルワークを4小節で一つの歌として歌ってしまう発想に惚れてしまいます。

●Superstition / Bernard Purdie(『Soul to Jazz』/ 1997年)
◎録音の音質が個人的に興味深く新鮮に感じられた作品です。 パーディ節が所々で顔を出しますが、表情が違って聴こえます。 ドラムの録音についてもヒントが色々と転がっています。

●Elevate / Bernard Purdie & Friends(『Cool Down』/ 2018年)
◎冒頭からノックアウト。 Oneの位置、シンコペーションからの拾い方が本当に魅力的でバンドインへ誘うフィルインの見事な一筆書き。 この14秒でドラムとしての本質を突きつけられます。


 
DEACON BLUES / Steely Dan



オフィシャルサイト:https://groove-unchant.jimdo.com/ 


●Lady Day And John Coltrane / Gil Scott-Heron 
 (『Pieces Of A Man』/ 1971年) 
◎この曲に関しては、タイトめにリズムキープしています。 全体の演奏にドラミングが溶け込んでいて抑制されたグルーヴなんですが、時折フィルなどでみせるスネアやバスドラにパーディここにあり!と存在感をみせています。 様々なアーティストがこの曲をカバーしていて、どれもかっこいいのですが改めてオリジナルを聴くと一番かっこいいですね。

●Seeds Of Life / Harlem River Drive
 (『Harlem River Drive』/ 1971年)
◎N.Y.ラテンのピアニスト Eddie Palmieri が率いた Harlem River Drive。 この曲はまさにレアグルーヴ。暴れまわるパーディのドラムにあおるブラスセクション、歌ものとしても聴きやすく、何度聴いてもテンションがあがります。 DJプレイでもかけまくりました。

●It's All Over But The Shoutin' / Joe Cocker
 (『Jamaica Say You Will』/ 1975年)
◎1曲の中でパーディ節炸裂しまくりのファンキーロック。 イントロのフィルでバーナード・パーディ節がほとばしり、一気に曲の世界観へ引き込みます ちなみにぼくはイントロドンできます(笑)。どこをとっても聴きどころ満載のドラムパターンに、聴けば聴くほどはまる1曲です。

●Home at Last / Steely Dan (『Aja』/ 1977年)
◎もうこの曲を選んだ理由は一つだけです。 これぞ「ハーフタイムシャッフル」というドラムの手法を代表する曲なのです。 どっしりしたボトムなのに軽やかに駆け抜けるグルーヴ感が最強で、ブラックミュージックのという枠組みを超えた、ロック、ポップスの新境地に至っています。
そこはスティーリー・ダンの意図的なアレンジと言えますがその後にこのハーフタイムシャッフルは誰もが知る80sヒット、TOTOの「ROSSANA」に受けつがれていくことによって孤高のドラミングとなりました。

●Just A Little Bit Of Your Soul feat. Bernard Purdie, Pancho Morales
 / Tokyo Ska Paradise Orchestra
 (12”『Happening / Just A Little Bit Of Your Soul』/ 1993年)
◎90年代に日本で空前のアシッドジャズ、レアグルーヴのムーヴメントが巻き起こりました。その際、パーディが参加したジャズファンクのアルバムもたくさんリイシューされその流れで来日公演などもあり、なんとバーナード・パーディとパンチョ・モラレスがスカパラのアルバムに参加しました。
この曲はChuck Jackson Orchestraのカバーでスカパラのデビューアルバムにも収録されているのですが特にこのアルバムのバージョンは青木達之、パーディの左右のチャンネルにわかれたツインドラムの迫力たるや、東西レアグルーヴの宝と認定します。 ここまで5曲選んできてバーナード・パーディとレアグルーヴは切っても切り離せぬというのも改めて実感しました。


 
Seeds Of Life / Harlem River Drive





●Respect / The Vagrants
 (7"『I Love, Love You (Yes I Do)』B面/ 1967年)
◎レスリー・ウエスト在籍。代表曲はトレイド・マーティンら作。NY同期のThe Fugs参加が縁か。データにあるA面以上のパーディ感。同じく同期のVU「僕は待ち人」や前年の「96粒の涙」(アレサ版有)との近似。総じてアトランティクR&Bの匂い。

●You Hit Me(Right Where It Hurt Me) / Alice Clark
  (7"『You Hit Me(Right Where It Hurt Me)』/ 1969年) 
◎より豊穣な楽曲、よりパーディ節全開の、代表曲「Never Did I Stop Loving You」収録の唯一のアルバム(72年)との共通クレジットは、パーディのみ。急速かつ美しい展開の屈指のノーザン。編曲者リチャード・ティーの良い仕事。

●Wholy Holy / Aretha Franklin ‎(『Amazing Grace』/ 1972年) 
◎追加演奏や歌の差替えあれど、2分45秒~のコール&レスポンスの極まる神々しさはオリジナル版のハイライト。40名ものコーラス隊を包む大きなタイム感、歌うバスドラ。若きパーディら出演の同名映画(2018年、日本公開未定)はソフト化済にて必見。

●Time And Space / Roy Ayers Ubiquity
 (『A Tear To A Smile』/ 1975年)
◎デニス・デイヴィスとクレジット併記だが、この粒立ちはパーディだろう。10歳下のデニスのノリやフィルの癖はパーディにも酷似。同時期のボウイの「Fame」参加から、『Low』の「あの」スネア音への道筋は、パーディが拓いたとも言えるのではないか。

●Oh Yeah Maybe Baby (The Heebie Jeebies) / Laura Nyro
  (『Walk The Dog & Light The Light』/ 1993年)
◎ゲイリー・カッツ制作。生前最終作冒頭、フィレス処女作のカバー。「スパニッシュ・ハーレム」「スタンド・バイ・ミー」と「ビー・マイ・ベイビー」を繋ぐ雛形曲。アレサ版「スパニッシュ~」参加直後、パーディはベン・E・キングの両曲をリーダー作でも。


 
Respect / The Vagrants 



サックス吹きでもありベーシストでもあります。


●You'll Never Get to Heaven / Aretha Franklin 
 (『With Everything I Feel in Me』/ 1974年)
◎前半はリムショット中心で楽曲を抑え、半ばから一気に盛り上げる。 バーナードの歌う様なドラムは歌手に勝るとも劣らないメロディを放っている。 音が音楽として躍動するというのはこういうことをいうのだと、それが耳に、心にはっきりと届く、 そんな好演ではないかと思う。

●Tell Me How You Feel / Michael Bolotin
 (『Michael Bolotin』/ 1975年)
◎小気味良いシャッフルテイストの爽快なセッション的ナンバー。 白人シンガーというと語弊があるかもしれないが、ストレートな8ビート感とシャッフルのスイング感を両方持ち合わせた良グルーヴな曲だと思う。 バーナードがそのグルーヴ演出に多大な貢献をしていることは言うまでもない。

●Fire and Brimstone / Hummingbird
 (『We Can't Go On Meeting Like This』/ 1976年)
◎タワーオブパワーを思わせる一曲。そういうとバンドメンバーに怒られてしまいそうだが、ここでもバーナードならではの軽快かつブラックなビートがその節を効かせている。

●Come In From The Rain / Cheryl Lynn(『Cheryl Lynn』/ 1978年)
◎レゲエ風ビートが心地よい楽曲はグルーヴにベースのチャック・レイニーも一役買っている。 終始2拍4拍をアタックするバスドラムがとても気持ちよく、多彩なビートを操るバーナードの一面を垣間見られた気がします。

●You Send Me / Hank Crawford(『Mr. Chips』/ 1986年)
◎典型的な6/8ビートのブルース調のバラード。 インスト主体のアルバムの中に一曲だけゲストボーカルを迎えてのこの楽曲は、レコーディングによる作り込みを楽しむよりも一期一会的なセッションをライブで楽しむ感じ。
バーナードのドラムは淡々としているが彼の笑顔が浮かんでくる一曲。


 
Fire and Brimstone / Hummingbird 





●Mercy Mercy / Don Covay (『See Saw』/ 1966年)  
◎時代っぽいローチューニングのドラムに、タイトなビートがかっこいいし、ドン・コヴェイやっぱりかっこいい。

●Together / Ray Barretto (『Together』/ 1969年)
◎コンガの巨匠に任せて、あまり叩かない様が渋い。

●Eastern Market / Yusef Lateef
 (『Yusef Lateef's Detroit Latitude 42° 30' Longitude 83°』 / 1969年) 
◎1曲でパーディの魅力がたくさん聴ける曲。

●The Revolution Will Not Be Televised / Gil Scott-Heron
  (『Pieces Of A Man』/ 1971年) 
◎ナイス16ビート。ロン・カーターのベースも効いている。いま聴くべき曲かもしれません。

●There Is No End / Eric Kaz (『Cul-De-Sac』/ 1974年) 
◎イントロのフィルインからリムショットも渋いのだが、サビ入りのキックの位置が絶妙で、独特なタメみたいなものができていて気持ちいい。


 
The Revolution Will Not Be Televised / Gil Scott-Heron 



オフィシャルブログ:http://philiarecords.com/


●Sure 'Nuff, Sure 'Nuff / Sonny Phillips (feat. Virgil Jones, Houston Person, Joe Jones, Bob Bushnell & Bernard Purdie)
 (『Sure 'Nuff』/ 1970年)
◎インスト曲です。C#ワンコードで進んでいく曲でサックスやオルガンがソロを取る合間に入るシンプルで力強いフィルがスピード感を加えています。曲の後半にドラムがメインになるところで、裏にアクセントを入れながら盛り上がっていく高揚感はバーナード・パーディならではだと思います。

●Sweetheart / Charles Kynard(『Afro-Disiac』/ 1970年)
◎こちらもインスト曲です。ハネ系の16ビートなんですが、ハネ具合が絶妙です。重くて硬いバスドラとしなるようなスネア、そして揺れながら細かく刻まれるハイハット、全てが組み合わさってこのグルーヴが生まれているのでしょうか。手数の多いテクニカル系ドラマーというわけではないですが、真似しようと思ってもできるプレイではありません。

●Where Is The Love / Roberta Flack & Donny Hathaway
  (『Roberta Flack & Donny Hathaway』/ 1972年)
◎ロバータフラックとダニーハザウェイのヴォーカルによるスイートな一曲のバックで、全編にわたってリムショットでリズムを刻みます。タムを交えながらのフィルイン、キレのあるハイハット、丁寧なライドシンバルのプレイが印象に残る大人な一曲です。

●Purdie Good / Bernard Purdie(『Purdie Good!』/ 1971年)
◎JBをはじめとするファンクや渋谷系の音楽をよく聞いていた高校~大学時代にバーナード・パーディという存在を知り、初めて買った彼のアルバムです。セッション系ミュージシャンが自分名義のアルバムを出すと、意外なほどに面白くないというのは“あるある”だと思うんですが、バーナード・パーディは面白い作品が多いように思います。気負いすぎず参加ミュージシャンに自由にプレイしてもらう度量があるからでしょうか。

●Lady Rain / Daryl Hall & John Oates
 (『Abandoned Luncheonette』/ 1977年)
◎こちらは歌ものでアコースティックギターもリズムを刻んでいるので、比較的正確なプレイをしている様子が伺えます。間奏部分でのハイハット・ソロのような部分を含め、ハイハットのプレイがたくさん楽しめる一曲です。この突然大きめのハイハットオープンを入れて曲に心地よいブレーキをかけるようなプレイは自分も大好きで、影響されている部分があるかもしれません。


 
Purdie Good / Bernard Purdie 



【西浦謙助(集団行動 / mezcolanza etc)】 
集団行動HP:https://www.syudan.com/ 
ツイッターアカウント@tikanakangana:https://twitter.com/tikanakangana


●Soul Drums / Bernard Purdie(『Soul Drums』/ 1967年)
◎BeckのDevils Haircutでもサンプリングされたこちら、シンプル&鬼のグルーヴでダンスなんぞまるで踊れない私ですらカラダが自然と動き出します。そのリズム、呪術的。

●Love The One You're With / Aretha Franklin
 (『Live At Fillmore West』/ 1971年)
◎原曲の爽やかなエモさをこってり特濃エモに調理した一品。アレンジがかっこよすぎます。楽曲に立体感を与える御大のドラミング、お馴染みダチーチもこれでもかというくらいかましてらっしゃいます。

●Changes / Bernard Purdie(『Shaft』/ 1973年)
◎またまたサンプリング関係ですが、The Chemical Brothersの名曲Block Rockin' Beatsでも使われているこちらをチョイスしました。後世の名曲に自分のドラムが使われるって、つまりは子や孫にまで自慢できるってことです。誇らしいとはこういうことです。

●The Caves Of Altamira / Steely Dan
 (『The Royal Scam』/ 1976年)
◎御大の絶妙のタメ感やらグルーヴを堪能するには別の曲の方が良いかもですが、単純にSteely Danの中でもこの曲が大好きなので選びました。 ほんと惚れ惚れするような完成度。サビのハットオープンのタイミングやら小節またぎのフィルやらもう全部完璧です。

●Let's Go Down To Lucy's / Leon Thomas
 (『Blues and the Soulful Truth』/ 1973年)
◎ドラムは言わずもがな、まずアルバムのジャケが最高です。LEON THOMASのキャラの濃さがジャケからもビシビシと伝わってきます。御大のグルーヴ全開のドラミングにLEONさんもノリノリでございます。ハットスネアキックの3点だけでずーっと聴いていたくなります。あなたになりたい。


 
Changes / Bernard Purdie 



【松木MAKKIN俊郎(Makkin & the new music stuff / 流線形 etc)】 
オフィシャルブログ:http://blog.livedoor.jp/soulbass77/ 


●Song For Aretha / Bernard Purdie(『Soul Is...』/1972年) 
◎全盛期を共にしたアレサ・フランクリンに捧げた1曲。まるでヒップホップのようなビートから、次第にウネリと激しさが増して行きつつ、しなやかで抑制の効いたスティックさばきと輝くような音色は変わらない。

●Rock Steady / Frank Owens(『Brown'n Serve』/1973年) 
◎パーディ自ら代表作に挙げる楽曲を、自身のプロデュース作でカバー。テンポを上げて、ダチーチーチーの切れ味も3割増し。ウィルバーバスコム(b)は最良のパートナーの一人だろう。

●Blue Nocturne / Cornell Dupree(『Teasin'』/1974年) 
◎ゴーストノート、ダチーチーチー、パーディーズシャッフル…いやいや、それ以前に、一定の圧を保ちながら定位置にひたすら振り下ろすスネアのバシン!という音色。これだけで聴く者すべてを黙らせる。

●Together (You And Me) / Reuben Wilson And The Cost Of Living 
 ‎(『Got To Get Your Own』/1975年) 
◎パーディ自身お気に入りだというアルバムから。さすがに名演揃いで1曲を選ぶのが難しいが、個人的に好きな曲を。シンプルを極めたゴードンエドワーズ(b)と共に繰り返す、たゆたうようなグルーヴ。

●Sunshine Of Your Love / Felix Pappalardi
 (『Don't Worry,Ma』/1979年) 
◎ロック界から敢えてこの1曲。クリームが原曲のカバー曲のプロデューサーを、なぜかパーディがプロデュースしてしまった。いつもの面子で、マイアミ録音。それ以上に何も語る必要が無い安定のサウンド。クリアでツヤのある録音が最高。


 
Sunshine Of Your Love / Felix Pappalardi



オフィシャルサイト:http://www.shinowaweb.com 


●Krishna / Gabor Szabo(『Jazz Raga』 / 1966年) 
◎ハンガリー出身で米国に渡ったジャズギタリストのガボール・ザボは、コンテンポラリーなポップスのカバーも多く、サイケっぽくアプローチしたものも多いです。1966年にバーズがRAGAロックと称したサウンドを披露したムーヴメントと軌を一にしてか、ガボール・ザボはインド音楽をぶっ込んだあまり類を見ないサウンドを展開。当曲は自身がシタールも弾く、一大サイケムーブメント前夜の、時代を先取りしたサウンド。今で言うモンド的な味わいもあります。ドコドコしたブーミーなフロアタムがアクセントとなる、小気味よい、まさにサイケドラムの先駆的プレイ。

●Cherish / Nina Simone(『Silk & Soul』/ 1967年) 
◎Nina Simon の アソシエイションの名カバー。ハイハットのみで曲が進んでいくのですけど、これがニーナ・シモンの低音倍音ボイスにほどよい緊張感を与え続け、そして途中一瞬だけスネアフィルが入る瞬間がたまらないという、ハイセンスな超名演。

●Carpe Diem / Fugs 
(『The Fugs』(1994年再発CDにボーナストラックとして収録) / 1967年録音)
◎ESPレーベルから再リリースされる前のマイナー・レーベルからのFugsのファーストに収録されていた ”Carpe Diem” は1967年に再録され、この際にパーディが叩いています。結果リリースされず、セカンドの1994年CD再発の際にボーナストラックとして収録。素朴ながらもなかなかパーディらしく、きっちりとしたビートを出している良い仕事、パーディのこんなこともやっていました編です。なお、言わずと知れたNYビートニク詩人によって結成されたFugsは、ダニー・コーチマーなどのセッション・ミュージシャンをメンバー加えツアーを行っているので、パーディがセッションに呼ばれるのも不思議ではない感じ。

●Let’s Stay Together / Margie Joseph (『Margie Joseph』/ 1973年) 
◎パーディは、ハイハット・ワークがいつも気持ち良いのですけど、このハイハット・ワークにおいては、スネアのフィルに入る寸前の一瞬に、何かエネルギーがグッと溜められる感じがするんです。この感じが本当に堪能できる一曲。このアルバムも大変フェイヴァリットな一枚です。

●Back Back / Archie Shepp (『Kwanza』/ 1974年) 
DJやるときは結構な頻度でかける一曲。難解にも感じられるアーチー・シェップの作品中では、批判を恐れずに言うならジャズファンク、レアグルーヴに寄った聴きやすいアルバム。アルバム冒頭のこの曲は、一度聴いたら忘れられない印象的なリフをモチーフに、それが妥協無く繰り返されてゆく曲なんですが、ドラムが緩急つけながら見事にアンサンブルを盛りあげ、支えているんですよね。これも名演として知られるべき一曲。


 
Krishna / Gabor Szabo




●Caravan / Bernard Purdie(『Soul Drums』/ 1968年)
◎記念すべきファーストアルバムからデューク・エリントン作スタンダードの猛烈なカバーを。パーディのドラムソロが長過ぎてサビまで辿り着かないという。この頃から既にラテン・フィールのタム回しを披露しているのが分かる。90年初頭テレ東の深夜音楽番組にゲスト出演した際もこのアルバムのテイストでのプレイを披露したのが懐かしい。

●She's Gone / Daryl Hall & John Oates
 (『Abandoned Luncheonette』/ 1973年)
◎名門アトランティック・レコードと縁深いパーディだが、後にスターとなるブルーアイド・ソウルの新鋭デュオのセカンドでも全面的に叩いている。イントロのハイハット・ワークから本編のミディアム・グルーヴのドラミングまで曲を演出してしまう彼ならではのプレイが聴ける。

●Love Will Bring Us Back Together / Roy Ayers
 (『Fever』/ 1979年) 
◎ジャズファンクのリバイバルでも注目されたヴィブラフォン奏者の79年のアルバムから。 パーディはエアーズのバンドUbiquityの準メンバーといった具合にこの時期のレコーディングでは常連だった。特にこの曲では彼のシグネチャー・プレイが多く堪能出来るダンス・チューンでグルーヴ・メーカーとして欠かせないドラマーだった。

●Babylon Sisters / Steely Dan(『Gaucho』/ 1980年)
◎復活前のスティーリー・ダン黄金期を締めくくった墓碑銘的代表曲。所謂パーディ・シャッフルと呼ばれる彼の代表的なプレイスタイルが全編で聴ける。ロブ・マウンジーのホーン・アレンジでピアニシモからフォルテシモに移行する絶妙な間に呼応するパーディのプレイはこの曲を大きく演出していて替えが効かない。なおポリリズムで効果的に鳴っているスネアロールはチーフ・エンジニアのロジャー・ニコルスが製作した初期サンプリング・ドラムマシンWendelによるものだ。

●37 Hours (In The U.S.A.) / Raw Stylus
 (『Pushing Against The Flow』/ 1995年)
◎90年代多くのスティーリー・ダン・フォロワーの中でも出来がいい英国の3人組による唯一のアルバムのリード・トラック。やはりゲイリー・カッツのプロデュース効果は絶大で彼のテリトリーからパーディも参加して、嘗て『The Royal Scam』(76年)で披露したファンキーなプレイを再現している。 フェイゲンがシンセ、エリオット・ランドールがギターで「Josie」(『aja』収録 / 77年)のリフを生サンプリングのごとくプレイするのも聴きどころだ。


 
37 Hours (In The U.S.A.) / Raw Stylus

  (企画 / 編集:ウチタカヒデ)

2020年9月17日木曜日

The Pen Friend Club:『IN CONCERT』(サザナミレーベル/ SZDW1088)


 The Pen Friend Club(ザ・ペンフレンドクラブ)が、4代目ボーカリスト藤本有華在籍時のラストステージを含む全17曲を収録した、バンド初のライヴ・アルバム『IN CONCERT』を9月23日にリリースする。
本作は2019年12月28日のヤマハ銀座スタジオから6曲と、ラストステージとなった今年2月22日の吉祥寺スターパインズカフェからの11曲のライヴ音源を収録しており、藤本とバンドとの約4年間の集大成となる姿を余すこと無く伝えた実況録音盤なのだ。

 筆者は7月前半に音源を入手してから聴いているが、ファースト・アルバム『Sound Of The Pen Friend Club』(SZDW1067 / 2014年)収録の「Do I Love You」(The Ronettes / 1964年)や「Darlin'」(The Beach Boys / 1964年)などのステージではお馴染みの代表曲から、今年2月にリリースされたシングル「Along Comes Mary」(The Association / 1966年)まで、藤本の表現力のある巧みなヴォーカルが聴ける。個人的なハイライトは「Love's Lines, Angles And Rhymes」(The 5th Dimension / 1971年)、オリジナル曲の「微笑んで」(『Wonderful World Of The Pen Friend Club』収録 / 2017年)だ。ペンフレンドクラブをワンランク・アップさせた藤本の存在は極めて大きかった。
 ライヴ一発録りによる荒削りなプレイもあるが、ありのままの姿をとらえた記録という点で彼らのファンにはマストだろう。

 さてここでは、本アルバムの解説を担当したTOMMY氏 (VIVIAN BOYS)による番外編の解説をお送りしたい。弊サイトのベストプレイ・シリーズにも参加しているTOMMY氏は、筆者が知る限りペンフレンドクラブを最もよく知る人物であり、60sミュージックに深く精通しているので信頼を持って依頼しており、弊サイト読者も楽しんで読んでもらえると思う。



ザ・ペンフレンドクラブ『イン・コンサート』誕生によせて

 ザ・ペンフレンドクラブの7thアルバム『イン・コンサート』。光栄にも、本作の美麗なブックレットに付属するライナーノーツを書かせてもらった。加えてこの度、こうしてVANDA公式サイトに本記事を寄稿する機会を頂いた。
私事ながら、1992年の刊行時に池袋オン・ステージ・ヤマノで買った、同誌5号、6号2冊の記事から、ザ・ビーチ・ボーイズとフィル・スペクターについてのコアとなる知識の多くを得た身としては(6号の「[地球人に限る] 超人名鑑」記事が、ブライアン・ウィルソンの最初のイメージを、私に決定付けました)、あれから30年近く、VANDA読者の私達にとっても夢の実現である奇跡のグループ、ザ・ペンフレンドクラブとの縁で頂いた、これまた大変光栄な機会に、遍く感謝したい。
なお、この記事は『イン・コンサート』のライナーノーツの内容とはごくごく一部しか重複しないので、ぜひCDを購入のうえ、併せてご覧頂きたい。

 本作『イン・コンサート』は、ザ・ペンフレンドクラブ第4期・5期のリード・ヴォーカリスト、藤本有華の脱退公表後最初のメンバー、オーディエンスともに独特の緊張感をもって当日を迎えたクリスマスライヴ(2019年12月28日/自主企画「After Christmas Party」@ヤマハ銀座スタジオ)と、グループの全ライヴ履歴の半数以上で看板を務めた藤本のザ・ペンフレンドクラブでのラストライヴ(2020年2月22日/自主企画「Add Some Music To Your Day」vol.24、ワンマン@吉祥寺 STAR PINE'S CAFE)、両日のドキュメント作品だ。
 前者クリスマスライヴのPA卓で録音された音源を聴き、自らのバンドの現在の姿に心震わせたリーダーの平川雄一は、藤本在籍時の編成での集大成として、初のライヴ・アルバムの制作を決意。そして後者ラストライヴは、予め作品化を想定しマルチトラックで録音された。

 VANDA読者ならば、本作のタイトルが、ザ・ビーチ・ボーイズの正規ディスコグラフィーの重要なライヴ・アルバム3作品の一つ、『The Beach Boys in Concert』(1973年)のオマージュと考えるだろう。しかし自慢のバンドの最高のライヴ・アルバムを作るため、これまでの全てのスタジオレコーディング作品と同じく、平川が全面プロデュース、編集、ミックス、マスタリング、アートワーク等の作業を行った本作の意義は、同じくブライアン・ウィルソンが唯一自らプロデュースした、ビーチ・ボーイズ初のライヴ・アルバム『Beach Boys Concert』(1964年)に重なる。が、スタジオレコーディング作品の忠実な再現を是とする、ライヴに於けるペンフレンドクラブの一貫した姿勢は、1970年カール・ウィルソンが制作主導した『Live in London(Beach Boys '69)』(実際は1968年のライヴ)の時期のビーチ・ボーイズの在り方に厳密には最も近い。
 同作は『Beach Boys Concert』や『The Beach Boys in Concert』と異なり、リアルタイムでアメリカでは発売されず、イギリスでもチャート入りできず、ライヴバンドとしての後のビーチ・ボーイズのイメージとも異なる印象で、いささか見過ごされがちだが、カール・ウィルソンらメンバー全員が一丸となり、音楽そのものに最も真摯に向き合うライヴを繰り広げた、この時期だけの重要な記録だ。


 ザ・ペンフレンドクラブは、一貫して「ザ・ビーチ・ボーイズ、フィル・スペクター周辺の'60年代中期ウェストコーストロックをベースとした音楽性」を標榜した活動を続けてきた。既にこれまでのスタジオレコーディング作品で「ウォール・オブ・サウンド」、「ペット・サウンズ」どちらの音像も、活動を通じ平川が確立したアレンジ/ミキシング・メソッドを元に、自覚的に構築し得るに至ったことを証明した。そんなペンフレンドクラブの作品群は、個々の楽器演奏能力や場の雰囲気に委ねた虚仮に頼るだけでは、絶対にライヴでの再現は不可能だ。
 ペンフレンドクラブの在り方そのものに影響を与えるビーチ・ボーイズですら、ロックンロール・バンドとして活動する以前から、4声のオープン・ハーモニーを自家薬籠中のものとする能力を培い、予め携えていたにも関わらず、『The Beach Boys in Concert』の時期にスタジアムライヴ対応スタイルを定着させるまで、アルバム『Pet Sounds』からブラザー期に至る名曲群の再現と、エキサイティングなライヴ展開の両立について、(顧みれば最も魅力的なプロセスとも言える)長い模索の過程を要した。
 つまり同様に、ペンフレンドクラブがそのレパートリーをライヴで披露、かつ継続するには、通常のロック型バンドとは全く比べ物にならない多くの段取りと、達成に至るまでのメンバー全員の強靭な意志の力を要するのだ。ペンフレンドクラブのライヴに立ち会ったことがある方々にとって、そのことがいかに奇跡的な機会であったか改めて強調したい。そして約8年に亘り継続されたライヴ活動が、これまでの極めて優れたスタジオレコーディング作品の数々と肩を並べる、7枚目のアルバムという形で昇華された本作、『イン・コンサート』の意義の大きさは計り知れない。

 考えるほどに、ペンフレンドクラブの活動の孤高性、独自性は際立つ。ビーチ・ボーイズやフィル・スペクターからの影響を臆さず示す、愛すべき作品や表現者は、ほぼ半世紀に亘り、常に世界中に数えきれないほど現れ続けた。しかしこの分野に於いて、ペンフレンドクラブ以上にオーセンティック、かつハードコアな集団を私は知らない。
 両者を目標とした音像構築の過程で楽曲構造がどれだけ精緻化しても、ガレージ・バンド側(フィジカルを伴う徹底的な深堀り)に立脚したある種の権威への突き上げ、積み上げの姿勢を維持し続け得るタフネス。指折りのプレイヤーが揃っていながら、演奏技術の全てを、あくまで目的とする楽想そのものに捧げることを是とし続け得るセンス。
これらを備えた彼らであればこそ達成することができた、作品の実演とその継続、そしてアルバム『イン・コンサート』の誕生なのだ。こんなグループは、世界的にも今後も易々とは現れるはずもなく、私にとってもビーチ・ボーイズやフィル・スペクターの作品の意義を現代に投影する、その至上かつ終点のような存在として、ペンフレンドクラブはあり続けることだろう。

 『イン・コンサート』の収録両日のライヴの演目順にほぼ準じた曲目リストの中で、ひときわ目を引くのは、初作品化である「Fun, Fun, Fun」と「Crocodile Rock」だ。「Crocodile Rock」の歌詞は、今の時勢にリリースされた本作を象徴する。4年に亘りグループを牽引した藤本の全編どこを取ってもハイライトと言い切れる、圧倒的な歌唱の記録。加え、未だ心から取り戻すことができない、ライヴ会場の屈託なき賑わい。「Crocodile Rock」 = 「至上のひととき」。そしてその回顧。感傷が先立たざるを得ないが、本作は、それに遥かに勝るポジティブさに満ちる。
 
 「Fun, Fun, Fun」は、映像に残る2012年8月26日のペンフレンドクラブ初ライヴ時から今日まで、ライヴを締め括る曲として演奏され続けてきた。そして、6thアルバム『Merry Christmas From The Pen Friend Club』には、よもや「Fun, Fun, Fun」そのものと言えるクオリティ、かつ極めてハイブリッドなコンセプトを持つ「Jingle Bell Rock」のカバーが収録されたが、多くのファンはこの曲の作品化も待望していたはずだ。
 同じくグループ最初期からのライヴ・レパートリーである、上述の「Crocodile Rock」と共に、平川による極上のミキシングが施された、しかも、これら曲想のドライヴ感を存分に引き出す最高のライヴ・ヴァージョンという形で、本作に於いてその願いが遂に叶った。
 ペンフレンドクラブの「Jingle Bell Rock」のカバーが紐解く、ビーチ・ボーイズ「Fun, Fun, Fun」誕生までの経緯、ホットロッド・ソングとクリスマス・ソングとの繋がりについての考察は、グループのオフィシャル・サイトに掲載されている、私が書いた同アルバム解説の完全版の「9.Christmas Delights」「12.Jingle Bell Rock/13.Little Saint Nick」の項をご覧頂きたいが、ここではさらに別の視点から、当時のブライアン・ウィルソン、ビーチ・ボーイズについて考え、現在のペンフレンドクラブの姿に重ね合わせてみる。


 1964年、クリスマス・イヴの前日、12月23日。ブライアン・ウィルソンはビーチ・ボーイズでのライヴ活動から身を引き、作品制作への専念を決めた。自身の才能への確信と同等に、叩き上げのガレージ・バンドから、全米ナンバーワン・ロックンロールバンドの座を掴んだ、ハーモニー&ヴォーカル・グループとしてのビーチ・ボーイズを誰よりも誇り、『Beach Boys Concert』(同10月19日)『The Beach Boys' Christmas Album』(同11月9日)を自身のプロデュースでリリースした直後。人気絶頂の中で。同年2月7日のザ・ビートルズのアメリカ上陸。その僅か4日前、2月3日にリリースされた「Fun, Fun, Fun」は、ブライアンにとっても、グループにとっても、会心の自信作であったに違いない。
 全米トップ・バンドの自覚を確固とした矢先、「ブリティッシュ・インヴェイジョン」の幕開けのみならず、この動きに連動するかのように、ブライアンを取り巻く環境も大きく変わってゆく。作曲家バート・バカラックからの影響。
 そこから生まれた「She Knows Me Too Well」(1964年8月)に端を発し、ラス・タイトルマンと書いた、グレン・キャンベルの「Guess I'm Dumb」(ペンフレンドクラブ2ndアルバム『Spirit Of The Pen Friend Club』にカバー収録、さらに6thアルバム『Merry Christmas From The Pen Friend Club』に収録の「White Christmas」カバーのマッシュアップ元に)、ザ・ビーチ・ボーイズの「Sherry She Needs Me」(ペンフレンドクラブ4thアルバム『Wonderful World Of The Pen Friend Club』にカバー収録)など、ブライアンは作品の曲想を止まることなく深め続け、導かれるように『Pet Sounds』、『Smile』の音像構築へと向かってゆく。

 このブライアンの歩みと似た方向性(同年11月のライチャス・ブラザーズの「ふられた気持」でのブルー・アイド・ソウル的アプローチなど)で併走し、かつ一歩先駆け成果をあげ続けるプロデューサー、フィル・スペクターの動向や、『The Beach Boys' Christmas Album』(同年6月制作)で起用し、その手腕を目の当たりにした、憧れのザ・フォー・フレッシュメン諸作の編曲家、ディック・レイノルズなどからの様々なインスピレーションが飽和・交錯し、ブライアンの眼前を「使命」が覆いつくした。作品制作への専念の決断は、ひとえにそれら「使命」(前人未到のイメージの具現化)を成すための前向きな思いであったに違いない。
 一方で、同年8月には近隣のハリウッド・ボウルでライヴを行うなど、ハードな日程を消化し続けるライバル、ビートルズのアメリカでの躍進の報が日々届くなか、ブライアンも本当は米国トップ・バンドのクレバーなスター・パフォーマーとしても、在り続けたかったのではなかろうか。決断後、ブライアンが昼夜ひたすら泣き続けた一番の理由は、よく言われる過労のストレスのみならず、一つの大きな可能性をやむなく喪うこととなったからかもしれない。数日前に収録され、決断の日の夜に放映された『Shindig!』(クリスマス編)で演じられた6曲(「Dance, Dance, Dance」、「Little Saint Nick」、「Monster Mash」、「Papa-Oom-Mow-Mow」、「Johnny B. Goode」、「We Three Kings of Orient Are(三人の聖者)」)は、当時のグループの充実ぶりをまざまざと見せつける。 
 特にこの日の「Johnny B. Goode」の映像で確認できるロックンロール・バンドとしての矜持たるや。チャック・ベリーとの「Surfin' U.S.A.」(1963年)に対する「Sweet Little Sixteen」(1958年)に関してのあまりに有名なエピソードへの鮮やかな切り返しとも言える選曲。この曲は1968年末まで、ほぼ一貫してビーチ・ボーイズのライヴの締め括りとして演じられた。このイントロを堂々拝借し、誰も真似できないゴージャスなハーモニーを加え、洗練された全くのオリジナリティを纏い完成したホットロッド・ソングが「Fun, Fun, Fun」だ。


 10月リリースの『Beach Boys Concert』は「Fun, Fun, Fun」が冒頭を飾り、「Johnny B. Goode」で締め括る。なお1968年暮以降は『Live in London(Beach Boys '69)』を締め括る「Barbara Ann」と共に、「All I Want To Do」(『20/20』収録曲、1968年11月録音『Pet Sounds』の「Here Today」のエンジニアでもあるブルース・ボトニックがプロデュースした、同時代のMC5的意匠)、「It's About Time」(『Sunflower』収録曲、1970年7月録音、アイク&ティナ・ターナーの「I'll Never Need More Than This」と似た意匠、ドラムに「River Deep – Mountain High」や、おそらく「I'll Never〜」でも叩いているアール・パーマーを起用)といった、激しいオリジナル曲でライヴを締め括っていた。グループのディスコグラフィー上でも異質な、ある種の暴力性すら醸し出す両曲は、ライヴのクライマックスを想定して書かれたのかもしれない。
 そして『The Beach Boys in Concert』(1973年)の時期にようやく、「Surfin' U.S.A.」、「Good Vibrations」、「Barbara Ann」、「Fun, Fun, Fun」で締める、後年まで続く「定番」の流れが定着する。

 上述『Shindig!』での「Johnny B. Goode」には、彼ららしいハーモニーは一切なく、マイク・ラヴとユニゾンで、マイク以上にロックスターとしての存在感を放つボーカリスト、ブライアンの姿が確認できる。当時17歳にして、パブロックの先駆けのような鋭いプレイを魅力としていたリード・ギタリスト、カール・ウィルソン。声質・演奏とも全メンバーを媒介する柔軟な資質で、演奏全体をまとめ上げるアル・ジャーディン。ユーモアと華のあるエンターテイナー詩人/シンガー、マイク・ラヴ。エルヴィス・コステロやキース・ムーンも惚れ込んだ、エネルギッシュでセクシーなガレージ感を誇るドラマー、デニス・ウィルソン。そしてトップ・シンガーとしてのブライアン自身。結成以来ずっと、この実に魅力的なメンバーと共にステージに立ち続け、1964年当時も、海外公演を含め年間150本以上ものライヴを行っていたブライアンが、「スターバンド」を続けることを、心情的に拒む理由など、全く考えられない。作品制作への専念決断から1年近く経ちながら、唐突に制作されたと思われがちな、1965年11月8日発売の「Beach Boys' Party!」は、そんなブライアンがどうしても捨てきれない葛藤を、ポジティブに作品化した最後のアルバムだと思う。
 しかしその翌月、同じ「スターバンド」としてのライバルであったはずのビートルズが、12月6日に米国リリースした『Rubber Soul』に衝撃を受けたブライアンはこの葛藤の一切を葬り、自身の果てなき内面世界の探求へと旅立つ。同時に残るメンバー全員が力を合わせ「ビーチ・ボーイズの実像」を構築、牽引していくこととなる。とりわけ『Live in London(Beach Boys '69)』『The Beach Boys in Concert』は、「リーダーであったブライアン」を除くビーチ・ボーイズが、ライヴの場を主戦場とし達成した、紛れもない成果だ。

ペンフレンドクラブのライヴ・ステージに於いて、『Beach Boys Concert』(1964年)の時期までパフォーマーとしても活躍していたブライアン・ウィルソンのような、バンドの中心、看板の役割を果たしてきたのは、歴代のボーカリストたちだ。本作『イン・コンサート』に於いては、藤本有華がその役割を担う。藤本のヴォーカルには、ブライアン・ウィルソンやカート・ベッチャーを論じる折に多用される「イノセント」という形容が、これ以上なく当てはまる。楽曲、旋律に身を溶かし、音符と一体化していく歌唱。かつ、それは資質による純粋無垢であるだけではなく、藤本が一音一音紡ぐ、どこか数学的とも言えるミクロの節回しを伴い、初めて成立する。彼らの5thアルバム『Garden Of The Pen Friend Club』に収録されたブライアン・ウィルソンのカバー、「Melt Away」はそのタイトルと共に、藤本の歌唱の特徴を最も示す作品の一つだ。
 6th『Merry Christmas From The Pen Friend Club』での「Amazing Grace」や、今年3月11日にリリースされたシングル「Along Comes Mary」にカップリング収録された「Love Can Go The Distance」(山下達郎のカバー)も、藤本のそんな特徴を大いに裏付ける名唱だ。
 後者「Love Can Go The Distance」は、本作『イン・コンサート』には収録されなかったものの、両日ともに平川・リカ・そいにより制作されたバッキング・トラックに合わせた藤本の独唱により披露された。奇しくもその直後から今なお続く世情を先取りしてしまった、アラン・オデイにより20年以上前に書かれたその歌詞。もちろんそんなことを予見する術もなく、両日のライヴでのこの曲の歌唱が、紛れもないハイライト中のハイライトであったことは、会場に居合わせた誰もが記憶するところだろう。上述のシングル(グループ「第6期」が始まった今、両曲が今後のオリジナル・アルバムに収録される可能性は極めて低い)で、『イン・コンサート』ライヴ当日と全く同じ、このイノセントな名唱は追体験できるので是非手に入れておきたい。


 ペンフレンドクラブというグループ自体の在り方に於いては、もちろんリーダーの平川雄一がビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンの立場に相当、手腕の幅広さという点ではブライアン以上の役割を一手に担う。しかし、ライヴでの平川はギターそのものへの深い愛情と、プレイヤーとしての矜持も相俟って、同じくビーチ・ボーイズのギタリストであるカール・ウィルソン、アル・ジャーディンのポジションを貫く。
 
 何しろ『イン・コンサート』収録の両日のライヴでは、オーダーメイドの白いスーツ姿に、アーム付テレキャスと赤ボディのストラトの組み合わせ、正に1968~1969年頃のカール&アルの出で立ち(1968年8月13日の『エド・サリヴァン・ショー』出演時の「Do It Again」「Good Vibrations」の有名な映像でも確認できる)で登場したほどだ。加えてライヴに於いては、メンバーのうち「最も注目を集めない隠し味」のポジションに徹し続けていると言っても、過言ではないと思う。贔屓目抜きでギタリストとしてのカール&アルの実力を、総合的に大きく凌ぎ、然るべき場所に出れば、一流プレイヤーとしての評価を一身に集めることができるはずの腕前であるにも関わらず、だ。アルバム『イン・コンサート』CDのライナーノーツでは、私の視点から、主に各メンバーの演奏の細部について、とりわけ気付いてほしい重要な「隠し味」にスポットを当て、各曲を解説したが、その中でさえ結果的に、最も触れられなかったのが平川のギターだった。
 言い換えれば『イン・コンサート』は、リーダーの平川にほぼ言及せずとも、バンドの最新の総力が結集され、等しくメンバー全員の力量がはっきりと証明された、初めての作品なのだ。それでもバンド・アンサンブルの深奥のポジションで、重要な役割を担う、『イン・コンサート』でのギタリスト平川について、せっかく頂いたこの機会に、少し触れてみたい。

 『イン・コンサート』の心地よいライヴ感に、頭を空にして身を任せ聴くことは何より最高だ。繰り返しそのライヴ感に浸った後で、次にエレキギターのラインを追うように聴けば、本作のプロデューサー、ミキシングエンジニアでもある平川の意図が見えてくる。しかし、いきなり話の腰を折るがこれがなかなか難儀だ。歌やエレキ以外の楽器演奏があまりに魅力的なため、ついそちらに耳が行ってしまう。同じことは、平川同様にグループのサウンド構成要素の大前提条件となり久しい、西岡利恵、祥雲貴行のリズムセクションについても言えることだが、常に演奏ノートが明確である両者と比べても段違いの頻度で、エレキギターのラインは気付けばいつの間にか、アンサンブルの中に霧散している。「Love's Lines, Angles And Rhymes」でのデイヴィッド・T・ウォーカーばりの粘りと歯切れと対旋律を巧みに織り交ぜたワウ・プレイでの名演や、「Fun, Fun, Fun」の象徴的なイントロやソロ、「Wichita Lineman」でのデヴィッド・ギルモアを彷彿とさせる泣きのソロ、「Crocodile Rock」でのカントリーロッキンなソロ、その他、曲の構造上重要なリフや主・対旋律などの明白な見せ場も多々あるものの。

 繰り返すが、それでも控えめな音量で演奏、ミックスされたエレキギターに注意を払えば、平川の視点からアレンジ全体を見渡すことができる。『イン・コンサート』でのエレキギターについては、吹奏楽オーケストラのホルン奏者のポジションのような演奏、その意図を自ら反映したミキシングとなっている(そもそもビーチ・ボーイズのハーモニー、アレンジ自体が、アンサンブルの内声の魅力に目覚めるきっかけとして、恰好の素材だ)。エレキギターのポジションから全体を俯瞰するならば「Don't Take Your Time」、「My Little Red Book」、「All I Want For Christmas Is You」は至極の例だ。また、当初はエレキで自ら先導していた「Crocodile Rock」の印象的なブリッジのラインを、大谷の加入以降はサックスがアグレッシブに演ずるなど、様々な重要なアレンジをサックスに任せ、さらに最近では構成立てから委譲することも可能になった。心強いメンバーに囲まれ、愛してやまないレパートリー群を演ずる平川の幸福感は、察するに余りある。


 ペンフレンドクラブのライヴに於ける、平川のエレキの最大の特徴は、その流麗かつ様々な表情を自在に創り上げる、アルペジオ・プレイだ。ライヴに於いても「ウォール・オブ・サウンド」の再現の上での最重要要素である、アコースティック・ギターのリカの加入により、平川のアルペジオは完全に解き放たれた感がある。
 「Wichita Lineman」に於いては、同じくペンフレンドクラブの「ウォール・オブ・サウンド」の通奏低音たる荘厳なオルガンの持続音を活かすべく、レコーディング作品での細やかなピアノのアレンジをエレキで代替するが(特にエンディング部でのカッティングにはしびれる)、これも12弦のアコギが築く骨格があるゆえのリードギターの解放と言える。
 全編が美しいアルペジオのリフで構成された「Do I Love You」や、「ふたりの夕日ライン」、「Tell Me」などでのビーチ・ボーイズやフィル・スペクターの楽曲群のセオリー上にもない、無数の組み合わせパターンを誇るアルペジオの名手としての腕前は、ややペンフレンドクラブでの平川のイメージから離れるかもしれないが、さながらザ・スミスのジョニー・マーを彷彿とさせる。なお、大滝詠一、山下達郎両氏にも大きな影響を与えたエヴァリー・ブラザースの「Walk Right Back」でギターの魅力に開眼したジョニー・マーは、その極めてきめ細かい対旋律演奏に徹するスタイルに、カントリーロックからの影響も感じさせるギタリストだ。平川自身、このスタイルをルーツの一つとし、得意とするところである。今のところペンフレンドクラブへのカントリーロックからの影響の反映は少なめながら、本作や4thアルバム『Wonderful World Of The Pen Friend Club』に収録の「微笑んで」や、3rdアルバム『Season Of The Pen Friend Club』に収録の「Where Did You Go」は、同じくカントリーロックを土台とするバッファロー・スプリングフィールド(ビーチ・ボーイズも一時期傾倒、はっぴいえんど結成の原点)からの影響も感じられる、屈指のオリジナル曲だ。
 ともあれ、ギタリスト平川のペンフレンドクラブのライヴに於ける、こうした徹底したスタンスを、私は尊敬、敬愛して止まない。

 多重録音のスタジオレコーディングで、平川がいかに複雑かつ精緻なアレンジを構築しようとも、ライヴ再現の場で同時に奏で、歌うことができるノート数は限られる。どの音を選択したか、選択しなかったノートがどう代替されたか、そして新たに追加されたアレンジに気付けば、改めてまた違う角度から、スタジオレコーディング作品を楽しみ、味わい尽くせることだろう。ペンフレンドクラブ『イン・コンサート』は、隅々にわたり細部に至るまで聴き処ばかりで、付属のライナーノーツで言及しそびれた、聴けばすぐに分かる明白な見せ場も多い。
 例えば1曲目「Darlin'」Aパートでの総がかりコーラスに、サックスが加わり織り成す5声のハーモニーなど、冒頭からそれはそれは無数に。ここで平川のギター同様に、今これを書いている瞬間の思いではあるが、曲全編に亘ってプレイヤーの持ち味がはっきり引き出された、私にとっての各メンバーの「本作でのベストプレイ」を挙げたい。それぞれ魅力は明らかなので詳細は割愛するが、一度該当メンバーのプレイを中心に各曲を聴いてみてほしい。

藤本有華(リードヴォーカル)「Tell Me (Do You Really Love Me?)」
西岡利恵(ベース)「Don't Take Your Time」
祥雲貴行(ドラム)「Do I Love You」
中川ユミ(グロッケン)「土曜日の恋人」
大谷英紗子(テナーサックス)「My Little Red Book」
リカ(アコースティック・ギター)「Along Comes Mary」
そい(ピアノ)「Love's Lines, Angles And Rhymes」


 『イン・コンサート』は、メンバーそれぞれの最も活き活きとした瞬間、活きた音の滾りの結晶だ。同時に、困難なプロセスに挫けず実演にこぎつけ、かつライヴ活動を継続させてきたメンバー間の信頼関係を、これまでのスタジオレコーディング作品以上に、生々しく伝える。本作の誕生の喜びを誰よりも噛み締めているのは、特に今回は、他ならぬメンバーたち自身に違いない。何故ならば本作は、全メンバーが自分たちの力で、もしかしたら初めて掴んだ「ザ・ペンフレンドクラブ」のリアルな実像だからだ。本作発売に至ったメンバー全員の大きな大きな功績を、心から称えたい。
 そもそもの出自が、明確なルーツを持つ、コンセプチュアルなグループである以上、つい色々と語りたくなってしまうのもまた、ペンフレンドクラブの大きな魅力だが、なにしろ本作は、このどれだけ称賛してもしきれないほどの素晴らしきメンバーたちが作った、とことんごきげんな最高のライヴ・アルバムだ。私ももうこれ以上四の五の言わず、本作のコンサート会場に没入し、ただただ楽しみ尽くすことにする。

(解説文:TOMMY (VIVIAN BOYS) / リード文:ウチタカヒデ)


2020年9月3日木曜日

Kaede:『秋の惑星、ハートはナイトブルー。』(T-Palette Records/TPRC-0256)



 新潟在住のアイドル・ユニットNegicco(ネギッコ)のメンバー、Kaede(カエデ)が、セカンド・ミニアルバム『秋の惑星、ハートはナイトブルー。』を9月8日にリリースする。
 彼女は今年の元旦にファースト・フルアルバム『今の私は変わり続けてあの頃の私でいられてる。』をリリースしており、9ヶ月というペースは異例ではないだろうか。

 弊サイトではこれまでにもNegiccoのサード・アルバム『ティー・フォー・スリー』(2016年)、リーダーであるNao☆のソロ・シングル『菜の花』(2018年)をそれぞれ取り上げているが、本作のプロデューサーとして名を連ねているのは、弊サイトで評価が高く常連であるLampの染谷大陽、先月15日にマキシシングル『くらげ』をリリースしたばりのウワノソラの角谷博栄の二人ということで、取り上げない訳にはいかないのだ。
 そもそもNegiccoと彼らの繋がりは、角谷が『ティー・フォー・スリー』の先行でリリースされた7インチ・シングル「土曜の夜は」を編曲含む楽曲提供をしたのが始まりである。3年後の19年6月にはKaedeのファースト・ミニアルバム『深夜。あなたは今日を振り返り、また新しい朝だね。』に染谷が「あなたは遠く」を提供したのが記憶に新しい。
 その「あなたは遠く」について染谷は、Lamp色を抑えて職業作家的スタンスでガール・ポップをクリエイトしていた。 一方本作では全面的に角谷と共同プロデュースすることで、自分達のカラーを色濃く打ち出しつつ、ヴォーカリストとしてのKaedeの新たな魅力を開眼させることに成功している。 
 本作にはLampとウワノソラの各セッションから選抜されたミュージシャンが主に参加しており、基本のリズム・セクションはウワノソラ側のベーシストの熊代崇人、山中千尋トリオなどジャズ・フィールドで活躍するドラマーの橋本現輝、Lamp側のキーボーディストの鈴木潤、ギターとシンセサイザーは染谷と角谷自身がプレイしている。
 アディショナルではLampセッションではお馴染みで、兄弟ユニットと言えるMinuanoを主宰するパーカッショニストの尾方伯郎をはじめ、両バンドの関係者が多く参加している。またバッキング・ヴォーカル(コーラス)ではLampの榊原香保里と永井祐介、ウワノソラのいえもとめぐみが参加しているのが嬉しい。


 では本作『秋の惑星、ハートはナイトブルー。』の収録曲を解説していこう。
 冒頭の「秋の惑星 -Opening-」は次曲の変奏曲的導入部となる染谷のインスト作品でKaedeは不参加だが、Lampの『ゆめ』(2014年)に通じるサウンドだ。左チャンネルの榊原と右チャンネルのいえもとの高域のコーラスの対比、センターの永井に深町仰と田中ヤコブ(家主)が加わったコーラスのバランスが素晴らしい。榊原はフルート、いえもとはトランペット!も披露していてその多才さをうかがい知れる。パトリース・ラッシェンの「Remind Me」(『Straight From The Heart』収録 / 82年)を彷彿とさせる、シンコペーションが効いた鈴木のフェンダー・ローズのプレイも印象に残った。編曲は染谷と角谷の共同である。
 続く「君が大人になって」は染谷単独の作詞作編曲で、透明感があるKaedeの歌声が映える洗練されたポップスだ。サウンド的には変拍子のドラミングを持つヴァースからセカンドヴァースを経てサビに至るパターンが、2コーラス目からテンポアップした16ビート化して展開するが、3分余りの尺にコンパクトに収められている。鈴木のクラビネットと尾方のコンガのプレイは職人技の粋で聴き応えがあり、『木洩陽通りにて』(05年)辺りが好きな古くからのLampファンにもアピールするだろう。
 なお染谷が手掛けた歌入りの3曲は、Kaedeのヴォーカル定位が右チャンネル側、橋本のドラムが左チャンネル側にミックスされているのが興味を惹く。これはマルチ・レコーダーのチャンネル数が少なかった60年代サウンドに憧憬を抱く染谷らしい実験精神からだろう。

 榊原が作詞した「モーニングコール」も一聴して染谷イズムな技巧的旋律で歌手としては難易度が高いが、Kaedeは自らの個性を活かしつつうまく表現している。この曲ではコーラス・アレンジも素晴らしく、2コーラス目から複雑に展開する榊原と永井のハモリと、ブリッジでテンションの様に鳴っているヤコブの個性的なコーラスなどよく構成されている。 
 作詞:榊原と作編曲:角谷という「さよならはハート仕掛け」は、本作ならではのレアな組み合わせで、ロマンティックな歌詞をメロウ・グルーヴのアレンジで包み込んだエクレアのような甘いナンバーだ。本作中Kaedeの声質的にも最もマッチしているサウンドではないだろうか。デニース・ウィリアムスの「Free」(『This Is Niecy』収録 / 76年)に通じるサビの展開などガール・ポップスとしての完成度が極めて高い。この曲では鈴木はアコピのみに回り、その他のキーボードはウワノソラの諸作で知られる宮脇翔平が担当していて、ハモンド・オルガンのオブリやソロで光るプレイを聴かせてくれる。

 「セピア色の九月」は作詞:榊原、作曲:永井、編曲:染谷というLampの強力なトライアングルによるブラジリアン・テイストの曲で、『東京ユウトピア通信』(11年)に収録されていてもおかしくないサウンドだ。随所でKaedeの魅力的なファルセット・ヴォーカルが聴けるのでファンは必聴だろう。ハチロクのヴァースは永井らしい旋律で、アンニュイなブリッジを挟んで疾走感あるサビへと雪崩れ込む。
 「冷ややかな情景」(『東京ユウトピア通信』収録)にも通じる比類なき多幸感を持ったサビの美しさは本作中随一で、筆者個人的にもベスト・トラックかも知れない。また複雑な展開に対応したリズム・セクションと尾方のパーカッションのプレイは聴きものである。 

ジュピター / Kaede

 角谷単独の作詞作編曲の「ジュピター」は、「セピア色の九月」に対するウワノソラからのブラジリアン・サウンドでの回答で、『陽だまり』(17年)の後半部で展開したサウンドを彷彿とさせる。この曲も目まぐるしく展開するが、パート毎にKaedeの表現力あるヴォーカルが聴けるのだ。リズム隊のプレイに角谷のクラシック・ギター、鈴木のアコピとローズ、尾方のコンガが有機的に絡むグルーヴはよくアレンジされており、ジャズ・フィールドで活躍する荻原亮によるギター・ソロも光っている。 
 ラストの「ハートはナイトブルー」は、既出の「モーニングコール」をモチーフにしたと思しき染谷作のムーディーなインスト曲で、主役のKaedeにNegiccoファンには嬉しい2人が参加したプリティーなコーラスが聴けるので本作を入手してクレジットを確認しよう。ジャズ・テイストのリード・ギターは角谷で、編曲も染谷と角谷によるものだ。 

 総評として、弊サイトで高評価しているLampの染谷とウワノソラの角谷が全面プロデュースしていることで、各バンドのサウンドを想起させることは容易なのだが、今回Kaedeというヴォーカリストとのコラボレーションによって計算を超えた化学変化が起こったことは間違いなく、希なポップス・アルバムがクリエイトされている。 
 興味を持ったKaede及びNegiccoファンは元より、Lampとウワノソラのファンも是非入手して聴いて欲しい。 
(ウチタカヒデ)



2020年8月23日日曜日

名手達のベストプレイ第8回~デイヴィッド・T・ウォーカー



出典 :http://blues.gr/

 伝説のギタリスト、デイヴィッド・T・ウォーカー(本名:David Tyrone Walker)は、1941年6月25日オクラホマ州東部に位置する第二の都市タルサで生まれた。同州はアメリカ先住民が強制移住させられた歴史を持ち、インディアンの保留地が多いことで知られている。その様な背景から彼の父親はアフリカ・アメリカンだが、母親はチェロキー族の血を引いている。
 家族はデイヴィッドが2歳になった頃にカリフォルニア州ロサンゼルスの海岸地区サンペドロに移住し、5年後に中央カリフォルニアに移り住んだ。更に7年後にロサンゼルスのワッツ地区に戻った頃、教会音楽からギターに興味を持ちそれを手にしたのは彼が15歳になった頃だという。  

 高校在学中にはThe Kinfolksというバンドを結成し、卒業後は早くもニューヨークでプロ・ミュージシャンとしての活動を開始している。その後The Kinfolksはモータウン・レコードと契約し、マーサ&ザ・ヴァンデラスの専属バンドとなる。デイヴィッドはギタリストとして頭角を現し、マーヴィン・ゲイ、ジェリー・バトラー、ジャクソン5のセッションにも参加して、その名は知れ渡るようになる。
 同時期Universal City Records傘下のレーベルRevueから初のソロアルバム『The Sidewalk』(68年)、続いて『Going Up!』(69年)とソウル・ジャズ系の2作、マイナー・レーベルのZea Recordsからの『Plum Happy』(70年)ではスライ&ザ・ファミリー・ストーンの影響下にあるサイケデリック・ファンク色の強いサウンドを打ち出し、ギター・インストゥルメンツという新たなジャンルで自らの表現場所を開拓していく。 

 70年代に入るとスティーヴィー・ワンダー、ダイアナ・ロス、マイケル・ジャクソンのソロといったモータウンの名だたる看板アーティスト達のセッションもこなしていくが、ポップス・ファンにとっては忘れられないのは、キャロル・キングの『Rhymes & Reasons』(72年)、『Fantasy』(73年)への参加だろう。従来の歌伴を超えたデイヴィッドのプレイは、志高いセッション・ミュージシャンのアイデンティティを確立したと言って過言ではない。また当時彼女が所属していたODEレコードではソロ契約もして、『David T. Walker』(73年)、『Press On』(73年)、『On Love』(76年)の3作をリリースし、ニューソウルの匂いを残しつつジーン・ペイジなどのアレンジャーによるオーケストレーションを導入するという新たな試みをしている。
 
彼が参加したアルバムは、1963年の『The 1963 Sound Of Hank Ballard And The Midnighters』から2017年のVulfpeckの『Mr. Finish Line』まで2500作以上とされており、時代を超えてそのギタープレイが愛されている。正にミュージシャンズ・ミュージシャンという肩書きが相応しい存在なのだ。 
 さてここでは、そんなデイヴィッド・T・ウォーカー氏を心より敬愛するミュージシャン達と、彼のベストプレイを挙げてその偉業を振り返ってみたい。今回は参加者9名の内ギタリストが6名もいるのでテクニカル面でも解説してくれた。
 サブスクリプションの試聴プレイリストを聴きながら読んで欲しい。



 【デイヴィッド・T・ウォーカーのベストプレイ5】 
●曲目 / ミュージシャン名
 (収録アルバムまたはシングル / リリース年度)
◎選出曲についてのコメント
※管理人以外は投稿順により掲載。


足立浩(アダチ ヒロシ)
Drums & Percussion 奏者/じゃむずKOBO 代表/S.A.D.ドラムスクール 講師 
◆HP URL:https://adhiroshi.amebaownd.com 


●You’ve Been Around Too Long / Carole King(『Fantasy』/ 1973年)
◎綺麗な曲繋ぎのこのアルバム。 
 ハーヴィー・メイソンのドラムと絡みながらリズムを立体的に仕上げています。
 個人的に好きな2:58のココ(是非聴いてください笑) そして良い曲だったなぁと油断しているとラストでやられます。 

●傘がない-イントロダクション- / 井上陽水(『二色の独楽』/ 1974年)
◎アルバムのイントロダクション。とても美しい響きで一気に世界観を作ってしまうのは流石。
 「流れるように、歌うように」見事に体現されたプレイ。
 その後の「夕立」のギターリフとのコントラストが素晴らしい。

●Come on Back to Me Lover / Margie Joseph
 (『Feeling My Way』/ 1978年)
◎最初から最後までこんなにも色彩豊かに表情をつけていく、、、凄すぎませんか?2:07からギターソロへ移行しますが、何とも流れが綺麗。
 楽器で歌うってこうゆう事なんですね。はぁ素敵。

●In All My Wildest Dreams / Joe Sample
 (『Rainbow Seeker』/ 1978年)
◎ジョー・サンプルとのコンビネーションが素晴らしいこの曲。
 会話が聴こえてくるこの感じが大好きです。
  2:49の抜き具合が何ともセクシー!

●Honest I Do/ JOE SAMPLE - DAVID T.WALKER
 (『SWING STREET CAFE』/ 1981年)
◎全編ご機嫌なブルースサウンドを堪能できるアルバム。
 その中でも終始リラックスしたプレイを楽しめる1曲。
 2:26のデイヴィッドのギターに対してお茶目に返すジョー・サンプルに笑顔が溢れます。


You’ve Been Around Too Long / Carole King 



渡瀬賢吾(ギタリスト)
roppen、bjons、Spoonful of Lovin'、クララズ、ソフテロなど。


●Doo Doo / David T. Walker(『PLUM HAPPY』/ 70年)
◎ソロ3作目。後のOde時代とはまた違う、荒削りなファンクはこの時期ならではの魅力。Afriqueのアルバム同様、ワウやファズで遊んだこの音作りなら、正直デイヴィッド・Tでなくてもいいのでは?とも思いはしますが、芯にあるのはあくまで彼の歌心なので、他の人のギターではダメなのです。

●Directions / Carole King(『Fantasy』/ 1973年) 
◎全編デイヴィッド・Tのギターが素晴らしいアルバム、この曲も例に漏れず個性が爆発しています。ホーンやストリングスを配したアレンジの中にあっても、シグネチャー的なトリルやハンマリング/プリングオフの音がどうしても耳に残ります。 

●Evergreen / BOOKER T(『Evergreen』/ 1974年)
◎イントロから淡々と続くカッティングが、ブッカー・Tのオルガンとともに徐々に熱を帯び、何とも言えない高揚感をもたらす、その様相はさながらミニマルファンク。曲間とアウトロでわずかにフィーチャーされるギターパートだけでハッとさせるのは流石です。

●Street Walkin’ Woman / Marlena Shaw
(『Who Is This Bitch, Anyway?』/ 1975年) 
◎楽曲、リズム、歌とどれも最高のこのアルバム、デヴィット・Tは名手ラリー・カールトンとのツインギター。「Feel Like Makin’ Love」はじめどの曲でもいいのですが、ダイアログのあと突如鳴り響くこの2曲目を。 高速ビートからスイングへと移り変わるリズムを、シンコぺの効いたオブリとバッキングで乗りこなす様は圧巻。

●Do It To My Mind / Johnny Bristol
 (『Bristol's Creme』/ 1976年)
◎フリー・ソウル〜AORの流れを感じるこのアルバム、この1曲目に先導されるようにメロウでファンキーな良い曲ばかり。 ダブルストップを多用したデイヴィッド・Tのギターは洗練の極みで、パーカッションや分厚いコーラスと絡むオブリも気持ち良いです。


Do It To My Mind / Johnny Bristol



 【TOMMY (VIVIAN BOYS) 】
オフィシャルサイト : https://twitter.com/VIVIAN_BOYS


●Long Distance / Garnell Cooper & The Kinfolks 
(7"『Green Monkey』B面/ 63年) 
◎リーバー&ストーラー制作。ホットロッド曲「Mustang」と共に『Las Vegas Grind 6』に収録の猥雑キラー。デイヴィッドT元素全開。ベースの初期相棒トレイシー・ライトらとマーサ&ザ・ヴァンデラス専属バンドに(68年2月初来日)。

●Nuki Suki / Little Richard(『The Second Coming』/ 72年) 
◎黄金期組(バンプス・ブラックウェル、リー・アレン)、レッキング・クルー(マイク・ディージー、ジム・ホーン)、架け橋アール・パーマー、次世代チャック・レイニー。デイヴィッドTのワウは、それらとリチャードの叫び&クラヴィコードを繋ぐグルーヴの核。

●Spanish Harlem / The Crusaders(『Hollywood』/ 72年) 
◎モータウン傘下レーベル作。スペクター作曲関与のベン・E.キング曲。チャック・レイニーと共に客演。デイヴィッドTの対旋律、ワウを絡めたリズムパターンの無限の引き出しを支える、アーサー・アダムスとの二人羽織は『イタリアン・グラフィティ』等でも。 

●On Broadway / David T. Walker(『David T. Walker』/ 73年) 
◎シンガー、キャロル・キングの仕掛人、ルー・アドラーのOdeより。ザ・クリスタルズ版経由でスペクターがギターソロ参加の、ザ・ドリフターズ版が雛形。ウィルトン・フェドラー、ビリー・プレストン、何よりボビー・ホールが生む、マーヴィン・ゲイ諸作感。

●Only With You / Nick DeCaro (『Love Storm』/ 90年) 
◎山下達郎『Big Wave』収録曲。ブルース・ジョンストンと似たデカロの舌足らずな歌と、デイヴィッドTのオブリは、原案のブルース&テリー「Don't Run Away」をより想起。
 「アンダー・ザ・ジャマイカン・ムーン」同様、聴き処はFO前。



Long Distance / Garnell Cooper & The Kinfolks




 【小川タカシ(カンバス)
ソロユニット、カンバスのボーカル、ギター、作詞作曲として活動中。
また、楽曲提供やコーラス、ギターなどのサポート・レコーディングも行う。
オフィシャルサイト : https://canvasweb.net/ 


●Hot Fun In The Summertime / David T.Walker
 (『David T.Walker』/ 1971年)
◎Sly & The Family Stoneが1969年にリリースした曲のカバーです。原曲も最高ですが、このバージョンは最初の1音が最高にソウルフルだなと思いました。珍しくワウペダルを踏んでいるのも好き。

●Our Lives Are Shaped By What We Love / Odyssey
 (『Odyssey』/ 1972年)
◎定番曲「Battened Ships」が有名なOdysseyの1stに収録されている曲。昔から好んで聴いていたのですが、このギターがDavid T.Walkerだということに最近気づきました。ピアノのようであり、ホーンのようであり、フルートのような(もちろん”ハープ”も)、ギター1本でいろんな役割をこなしているのが凄いです。 

●If I Lose This Heaven / Quincy Jones(『Body Heat』/ 1974年)
◎ソウル/ジャズの名盤、Quincy Jonesのアルバムから。振られた女性の悲しい歌らしいのですが、幸せだった頃に思いを馳せるような、サビの多幸感&切なさにグッときます。
 独特なグルーヴのカッティングはデヴィTならではですね。

●Body Heat / Leon Ware(『Musical Massage』/ 1976年)
◎先に挙げた曲の作曲者でもあるLeon Wareの2ndから。これくらいのBPMの曲が、David T.Walkerのギターが一番映えるなと思います。
 サビの、高音部分で弾くダブルストップが気持ちよすぎますね。

●Running Away (feat. Joey Dosik, David T. Walker & James Gadson) / Vulfpeck 
 (『Mr. Finish Line』/ 2018年)
◎最近お気に入りのファンクバンド、VulfpeckがJoey Dosik、David T. Walker、James Gadsonとコラボレーションした曲。70年代との違いは、ギターがGibsonのByrdlandじゃないという点。
 ギターのサウンドは当時とは違いますが、ギターのタッチは紛れもなくデヴィTですね。
 ちなみに、今回選んだ5曲はBPM100以下、自分が一番気持ち良いと感じるテンポの曲ばかり選ばせていただきました。


Our Lives Are Shaped By What We Love / Odyssey 



角谷博栄(ウワノソラ/ウワノソラ'67)
マキシシングル『くらげ』8月15日リリース。
オフィシャルサイト : https://uwanosora-official.themedia.jp/ 


●Angie Girl / Nick DeCaro (『Italian Graffiti』 / 1974年)
◎大学時代、ギターの師匠とデヴィTの話題になった。こんなギタープレイは本当にドエロな人ではないと無理だろうね、という結論に至った。
 今でもそんな気がする。色っぽくて男のロマンと哀愁を背負ったギタリスト。

●I Wish You Love / David T. Walker (『On Love』/ 1976年) 
◎デヴィTのライブを初めて観たのは高三の秋。友人といった東京ブルーノートだった。 目まぐるしい(指が早く動くなど)サーカスのような演奏をすごいと思ってしまうような青年だった僕を更新させてくれた。
 そういったプレイヤーとは対極にある人だと思う。間や味、心地よさ、そういったものが僕にとっては本当に好きな演奏の技術なのだと感じた。 その時に物販で購入したアルバムの中からの一曲。

●Your Love-So Good I Can Taste It / Barry White
 (『Is This Whatcha Wont?』/ 1976年) 
◎Barry White、Love Unlimited Orchestra(ジーン・ペイジ)、デヴィT、僕にとってこの人達のサウンドに共通する物は、男性という生き物の繊細さと弱さ、脆さ。
 それが本当に心地よいアンサンブルとなって夢の世界へ誘ってくれる所。尺は長いが本当に大大大好きな曲。

●You Need A Change / Syreeta & G.C. Cameron
 (『Rich Love, Poor Love』/ 1977年)
◎デヴィTはほぼアンプ直差し。弦を弾いた音がそのまま耳へ。 参加作品は膨大。彼が参加している曲はクレジットを見なくても彼だと分かる。

●What's Going On (Live) / Bernard Purdie, Chuck Rainey, David T. Walker etc
 (『Coolin' 'N Groovin' (A Night At On-Air)』/ 93年)
◎マーヴィン・ゲイのカバーのライブ映像。YOUTUBEでも観られます。ライブではクドい程ソロギターを演奏しますが、それもデヴィT印。  キラキラと小指でのプリングが始まると、絶賛ソロタイムの合図。


What's Going On (Live) / 
Bernard Purdie, Chuck Rainey, David T. Walker 



the Sweet Onions:近藤健太郎(The Bookmarcs)&高口大輔
オフィシャルサイト : http://philiarecords.com 


●Never Can Say Goodbye / Jackson 5
 (『Maybe Tomorrow』/ 1971年)
◎キュートでソウルフル、何度でも聴きたい永遠の名曲。 切ないメロディと真っ直ぐな歌声に寄り添う、David T.Walkerのメロウで小粋なバッキング、随所に散りばめられたさりげないフレーズがとにかく心地よいのです。(近藤)

 ●New York City / Alphonse Mouzon
(『The Man Incognito』/ 1976年)
◎かっこいいドラムのブレイクから始まるファンクナンバーにおける聴きどころは、David T.Walkerによるギターソロ。チョーキングを使いながらのブルージーな前半部、コードチェンジしてからのホーンセクションとの絡み、両方が楽しめます。(高口)

● 心を全部くれるまで / 古内東子(『Hourglass』/ 1996年)
◎コードバッキングや弾きまくりのソロというよりは、主役の横に控えながら、自由に隙間を縫って高音部の軽やかな単音、または2音のフレーズで曲を彩るのが本当に上手いギタリストだなと思います。この曲ではオクターブ奏法も交えながら曲にあたたかみを加えています。(高口)

●Who Will The Next Fool Be? / Diane Schuur
 (『Blues For Schuur』/ 1997年)
◎ジャズピアノ・シンガー、Diane Schuurによるブルースアルバム。 アルバムほぼ全編に渡ってDavid T.Walkerがギターで参加。
 この曲もイントロからブルース全開なソロで始まり、滑らかなフレージング、ライブ感満載の貫禄のプレイが堪りません。(近藤)

●Just A Love Child / Bobbi Humphrey
 (『Black And Blues』/ 1999年)
◎曲中左チャンネルで何度も奏でられる彼定番のオブリが印象に残る一曲です。
 左手小指で弦をはじいて弾くDavid T.Walkerが得意とするこのオブリは、彼の参加したセッションで度々聴くことができます。(高口)


Never Can Say Goodbye / Jackson 5 



洞澤徹(The Bookmarcs)
Official HP: https://silentvillage.wixsite.com/horasawa 
2020 New Song - 「When I Was Young」トレーラー:
https://www.youtube.com/watch?v=g28eznv9a0c&feature=youtu.be


 ●Look of Love / David T. Walker (『The Sidewalk』 / 1968年)
◎バカラックのカバー。少しウェスモンゴメリのビートルズ・カバーを匂わせるジャジーなアプローチがとても好きです。

●No Dough / The Mamas & The Papas
  (『People Like Us』/ 1971年)
◎ソフトロックなテイストに滑らかに溶け込む右チャンネルのDavid Tのギター。 決して派手なプレイでないのに過不足ないプレイは存在感あります。

●With A Little Help From My Friends / David T. Walker
 (『Press On』/ 1973年)
◎名盤からのビートルズ・カバー。
 前半のメロウなフレージングからうってかわっての後半の熱いバッキングがグッときます。

●Gotta Get It On / The Crusaders
 (『The 2nd Crusade』/ 1973年)
◎Davd Tは右チャンネルのカッティング。ソウルのお手本バッキング的パターンプレイ。
 左チャンネルのファンキーなプレイとの絡みも抜群です。

●Midnight call / 飯島真理 (『Miss Lemon』/ 1988年)
◎ソフトな飯島真理の歌に寄り添いながらも、目立つわけではないのにはっきりとDavid T 節を決めてくるあたりはさすがです。
 意外にも彼女の歌との相性はバッチリに感じました。


With A Little Help From My Friends / David T. Walker



 【平田 徳(shinowa)
オフィシャルサイト : http://www.shinowaweb.com 


 ●Sweet Soul Shakin’/ Young Hearts
 (『Sweet Soul Shakin』/1968年) 
◎David T.Walker の持ち味のひとつには、歪まない官能的なクリーントーン・ギターワークがあると思いますが、その黎明期にあたるすばらしいギターワーク。ギタリストとして憧れるプレイ!そもそもこの曲が込み上げ系ノーザンソウルとして最高。 

●B Minor / Clydie King(『Direct Me』/ 1971年) 
◎著名なセッションシンガーClydie Kingのソロアルバムからの一曲。
 このギターソロも官能的すぎる。

●Visions / Stevie Wonder(『Innervisions』/ 1973年)
◎叙情的な曲に官能クリーントーンが最高に絡んでいます。

●Share My Love / Gloria Jones(『Share My Love』/ 1973年)
◎官能クリーントーンソロにワウが加わりました的な最高なやつですけど、曲のVERSEで盛りあがるとこではソロではなく、ワウでチャカポコやりはじめる、もうニクいアレンジ。

●Dondi / Ed Motta(『AOR』/ 2013年)
◎エヂ・モッタの2013年のアルバムにも参加しています。
 まずはしっかりエヂ・モッタをサポートし、油断させた隙に官能シーンをチラ見せする熟練ぶりです。


Sweet Soul Shakin’/ Young Hearts



ウチタカヒデ(WebVANDA管理人)

●Love's So Far Away / Donald Byrd(『Black Byrd』/ 1973年)
◎ジャズ・トランペッターのドナルド・バードがスカイハイ・プロダクションと組んでファンク化する最初期盤から疾走感ある1曲。ハーヴィー・メイソンとチャック・レイニーの鉄壁なリズム隊をバックにデイヴィッドのプレイは左チャンネルで聴ける。
 素早いカッティングからダブルストップのパッセージが次々に繰り出されるからたまらない。

●Feel Like Makin' Love / Marlena Shaw 
 (『Who Is This Bitch, Anyway?』/ 1975年)
◎説明不要の一期一会セッションの名盤から。ここでもハーヴィーとチャックのリズム隊で、右チャンのデイヴィッドに比べ左チャンのラリー・カールトンのプレイはやや控えめだが、2コーラス目のサビから双方のプレイの対比が面白くなる。
 デイヴィッドは独特なアックのオブリからローポジションでダブルストップを連発、トレモロ・ピッキングでのスライドと職人技のオンパレードだ。
(※サブスクでは左右のチェンネルが逆になっているので要注意!)

●雲のゆくえに / 吉田美奈子
 (『愛は思うまま (Let's Do It)』/ 1978年)
◎村井邦彦がビリー及びジーンのペイジ兄弟にプロデュースをオファーした海外録音盤の1曲。山下達郎によるカーティス・メイフィールド風の曲調で後に彼もセルフ・カバーする。デイヴィッドは左チャンネルでこの曲に不可欠なフレーズのリフレインを弾き、吉田のボーカルに呼応する。

●Almost Everything / Melissa Manchester
 (『Don't Cry Out Loud』/ 1978年)
◎リオン・ウェアのプロデュースによるメリッサの出世作からメロウ・バラードを。艶のあるイントロのフレーズからジェームス・ギャドソンとチャックのリズム隊によるグルーヴにデイヴィッドの小気味いいカッティングが乗れば言うことは無い。女性シンガーの歌伴として理想的なプレイが聴ける。

●If You Think You're Lonely Now / Bobby Womack 
 (『The Poet』/ 1981年)
◎盟友ボビー・ウーマックのポエット3部作の1作目から感動的なブルースを。デイヴィッドが左チャンネルで繰り返すリフはジョー・サンプルの「In All My Wildest Dreams」でのプレイを発展させたパターンのようだ。土臭さを残しつつも古くならないのは、このデイヴィッドのプレイによるモダン感覚なのだ。


Feel Like Makin' Love / Marlena Shaw 

 (企画 / 編集:ウチタカヒデ)