2020年11月8日日曜日

流線形/一十三十一:『Talio』(ビクターエンタテインメント/ VICL-65441)

 
 今年7月にファースト・アルバム『シティミュージック』(2003年)をリマスタリングで、アナログ盤とCDをリイシューしたのも記憶に新しい流線形。その主宰者であるクニモンド瀧口とのコラボレーションで知られる女性シンガー・ソングライターの一十三十一(ヒトミトイ)とタッグを組んだ、ドラマ・オリジナル・サウンドトラック『Talio(タリオ)』を11月11日にリリースする。
 ドラマの方は、NHK総合の毎週金曜のドラマ10枠にて10月9日から放映している『タリオ 復讐代行の2人』で、俳優の浜辺美波と岡田将生がW主演している。ストーリーとしては、元弁護士の女性(浜辺)とイケメン詐欺師(岡田)による一話完結の復讐代行劇で、所謂バディ系の社会派コメディ・ドラマだ。

 流線形としては、2006年の名作セカンド『TOKYO SNIPER』、2009年11月の比屋定篤子とのコラボレーション作『ナチュラル・ウーマン』以来のアルバム・リリースということで、ファンにとっては待望のという言葉が相応しいだろう。近年瀧口はシティポップ・レゲエシンガーのナツ・サマー(Natsu Summer)のプロデューサーとしても知られている。
 また一十三十一も2002年のデビュー以来、その艶のあるコケティッシュな声質とアーバン・メロウなサウンドで、2000年代のシティポップ・シンドロームを代表するシンガー・ソングライターとして知られる存在である。今年8月にはNegiccoのシングル曲「午前0時のシンパシー」を提供するなど作家活動も開始している。
 そんな二組がこのサントラに携わる切っ掛けは、ドラマの音楽プロデューサーから一十三に声が掛かり、彼女が瀧口を誘ったという。またアートワークには、大滝詠一『A LONG VACATION』などで高名なイラストレーター界の巨匠、永井博氏の描き下ろしイラストをジャケットにするなど、今回の制作チームは鉄壁な布陣となっている。
 更にこのサントラのオープニング・テーマ曲と挿入歌には、キリンジからソロのシンガー・ソングライターに転身し、THE LAKE MATTHEWSの活動でも知られる、堀込泰行をフィーチャリング・ボーカルに迎えているなど話題にも事欠かないのだ。

一十三十一

流線形

 ここでは筆者が気になった主な収録曲の解説をお送りする。
 オープニング・テーマ曲「金曜日のヴィーナスfeat. 堀込泰行」は、堀込をリード・ヴォーカルにフィーチャリングしたテンポ感のある16ビートのシティポップで、シンコペーションの効いたリフが特徴的だ。作詞は一十三、作曲は瀧口、リズム・アレンジは流線形だが、ホーンとストリングス・アレンジは若手シンガー・ソングライターのシンリズムが担当している。
 バンドとしての流線形の編成は、瀧口本人はソリーナ(アープ製ストリング・シンセサイザー)をプレイし、ギタリストは名手の山之内俊夫(ROUND TABLEなど)、ベーシストは弊サイトベストプレイ・シリーズでもお馴染みの松木俊郎、キーボーディストの平畑徹也、ドラマーとしてTHE LAKE MATTHEWSの他多くのセッションで知られる北山ゆう子という『ナチュラル・ウーマン』以降のライヴではお馴染みのメンバーだ。
 また曲によってキーボーディストのシーナアキコ、本アルバムのエンジニアとミックスを担当している平野栄二(元LOVE TAMBOURINES)がパーカッションで参加している。
 続く「タリオのテーマ」は瀧口によるインスト曲で、リード楽器のサックスは多くのセッションで知られるヤマカミヒトミがプレイしている。彼女のクールなソロと共にオーケストレーションを担当しているシンリズムのセンスが光っている。またこの曲はブラックスプロイテーション系サントラのスコアがルーツであり、日本では大野克夫や大野雄二等が手掛けた刑事ドラマ劇伴から踏襲されたスタイルだ。

 挿入歌の「蜃・気・楼」は一十三のソングライティングで、KASHIF(カシーフ)のアレンジと演奏(プログラミング含む)によるシステマティックなメロウ・ポップソウルだ。近年彼女の典型的サウンド・スタイルであり、生のリズム隊では出せないグルーヴが気持ちよく、コケティッシュでハスキーな声質にもマッチしている。
 「哀愁のタリオ」は「タリオのテーマ」の変奏曲で、平畑のハモンド系オルガンがブルージーに迫るインスト・ソウルだ。大野克夫にも通じるそのサウンドは劇伴の定番と言える。続く「恋愛小説」は洒脱なシャッフル・ビートに乗せた一十三と瀧口のスキャットが、山下毅雄スタイルのソフトロック・サウンドで筆者的には溜まらない小曲だ。音楽通の瀧口らしい引き出しの豊富さに脱帽してしまった。
 「真実のテーマ ~Focus~」は「蜃・気・楼」同様一十三とKASHIFによる組み合わせによるインスト曲で、アタックの強いシンセのフレーズやパッドに一十三のスキャットが乗る軽快なサウンドが印象的だ。一転してブラックスプロイテーション系サウンドが濃い「真夜中の訪問者」では、松木のベース・リフとシーナのフェンダー・ローズ、山之内のワウワウをかましたギターに、ヤマカミのモーダルなフルート・ソロが場面展開をよく表現している。
 「嘘つき手品feat. 堀込泰行」は瀧口のソングライティングで、一十三と堀込のデュエットというレアな組み合わせのAORサウンドで、ネッド・ドヒニーの「A Love of Your Own」(『Hard Candy』収録/76年)にも通じるムードと二人の声のブレンドが素晴らしい。「曇り時々雨」は平畑作のピアノ・ソロのインスト・バラードで、彼が本作中提供している2曲の内の1曲で歌物に発展しても良さそうな美しい曲である。

悲しいくらいダイヤモンド by 流線形/一十三十一

 エンディング・テーマ曲の「悲しいくらいダイヤモンド」は一十三の作詞と歌唱、瀧口の作曲によるドラマティックなシティポップで、アルバムに先行して10月14日に配信リリースされている。この曲では松木と北山のリズム隊のパターンが松任谷由実の「DESTINY」(『悲しいほどお天気』収録/79年)のそれを彷彿とさせ、悲恋の切迫感が上手く表現されているのだ。またバンド全体の演奏力や絶妙なヴォイシングを持つシンリズムのホーン・アレンジなど完成度が高く、一十三のヴォーカルも完璧で、筆者はこのアルバムのベストトラックに挙げたい。
 ラストの「黒岩のテーマ」は前出の「嘘つき手品」のインスト・ヴァージョンで、ヤマカミのサックスがリードを取る。このヴァージョンでより理解出来るのだが、北山のドラミングがバーナード・パーディばりにスイングしているのは聴き応えがある。
 最後にアルバム全体の総評として、歌物を4曲も収録していることもあり、サウンドトラックを超えた内容ということで十分楽しめた。興味を持った音楽ファンは入手して聴いて欲しい。
(ウチタカヒデ)

 

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