2020年11月14日土曜日

Diogenes Club:『Count On Me』(*blue-very label* / blvd-013)


 
  ネオ・アコースティック・ユニット、ディオゲネス・クラブ(Diogenes Club)が、ファースト・シングル『Count On Me』を7インチ・アナログ盤で明日11月15日にリリースする。
 今月1日に紹介したフォリン・コレスポンデント(Foreign Correspondent)と同様に*blue-very label*からとなる。
 昨年11月に紹介したクリスマス・コンピレーション・アルバム『Natale ai mirtilli』に彼らが提供した「christmas wish」(NRBQカバー / 86年)を筆者は絶賛したが、この新曲も非常に素晴らしいので紹介したい。
  
 彼らは東京で活動するネオ・アコースティック・バンド、ザ・ランドリーズ(The Laundries )のヴォーカリスト木村孝之と、北海道で活動するアコースティック・ユニット、アルビーシンガー(Alvysinger)の小野剛志によるデュオで、2018年にblue-very labelを主宰する中村慶氏がオーナーを務めるDISQUES BLUE-VERYの20周年記念コンピレーション・アルバム『BLUE-VERY PAVILION』が切っ掛けで結成したという。巧みなヴォーカリストとして定評のある木村と、ソングライティングと全楽器の演奏(及びプログラミング)、コーラスを担当するクリエイターの小野というように役割分担が明確になっている。
 ザ・ランドリーズは92年に木村メンバーを集め、都内のライブハウスで活動を開始する。99年にはビクター・エンタテインメントのコンピレーション・アルバム『Rabid Chords Vol.1』に参加し、トラッシュキャン・シナトラズ(Trashcan Sinatras)の「Who’s He」の日本語カバー「Sinatra’s Joke」を提供し、本家トラキャンとの交流が始まったという。これまでに『THE LAUNDRIES』(03年),『NATALIE』(13年),『Synanthrope』(16年)の3枚のアルバムをリリースしている。実に28年のキャリアを持つバンドなのである。 
 アルビーシンガーは96年から活動していたThe Time Capsulesから改名して、現在は小野によるソロ・プロジェクトである。北海道北見市にてソングライティングとワンマン・レコーディングでの活動が主であり、これまでに2枚のシングルとスプリット・シングル『Let's Split!』をリリースしている。 


  本作は小野によるオリジナルのタイトル曲とカップリングの2曲に、デンマークのネオアコ/エレポップ・バンド、ギャングウェイ(GANGWAY)のカバーからなる全3曲を収録している。
 ここでは筆者による収録曲の解説と、ディオゲネス・クラブのメンバーが本作のレコーディング中に聴いていた曲を選んだプレイリストを紹介する。
 
 diogenes club - count on me 
*blue-very label* blvd-013 トレーラー

 タイトル曲の「Count On Me」は小野の書き下ろしの新曲で、木村の美声が聴けるギターポップとソフトロックの魅力を融合させた良質なナンバーである。バックビートを強調させたシャッフルのリズムやコーラス・アレンジには、élレコードのルイ・フィリップからWondermintsまでを想起させて、嘗てのジェリー・ロス~ジョー・レンゼッティがクリエイトしていたサウンドの匂いもする。とにかくWebVANDA読者には特にお勧めしたいとっておきの曲であり、筆者も年間ベストソングの候補にしているのだ。 


 カップリングのB面1曲目「Look For The Rainbow」は一転して、ベン・ワット~Everything But The Girlに通じる小野のオリジナルである。80年初期ネオ・アコースティック・ムーヴメントの中でもWeekendの『La Varieté』(82年)の流れにあるボサノヴァやラテンのエッセンスを取り入れたそのクールなサウンドは、2000年代以降も色褪せることはない。
 続く2曲目の「Out On The Rebound From Love」はギャングウェイの85年作のシングル曲カバーで、本作でのアレンジはオリジナル(88年にエレポップ・ヴァージョンもリリースしている)と同様にドラムレスの編成で独特の浮遊感を醸し出している。この2曲でも木村の美しい歌声に絡む小野のコーラスの絶妙で聴き応えがあり、完成度が高い。
 とにかく収録曲3曲共にギターポップ・ファンには溜まらないセレクションになっているのだ。

 【ディオゲネス・クラブがRec中に聴いていたプレイリスト】  

●Ridin' In My Car / NRBQ (『All Hopped Up』/ 1977年) 
●Take It Over In The Morning / Edward, Harding And George
 (『Half & Half』/ 1972年) 
●We'll Work It Out / Gary Lewis & The Playboys
 (『Everybody Loves A Clown』/ 1965年) 
 ●Life Must Go On / Wall Of Orchids(7"single / 1993年) 
●All Gone Away / The Style Council(『Our Favourite Shop』/ 1985年) 
●Like Nobody Do / Louis Philippe
 (『Passport To The Pogie Mountains』/ 1987年) 
●Ett & Noll / Bo Kaspers Orkester(『Amerika』/ 1996年) 
●Lovely Day / Bill Withers(『Menagerie』/ 1977年) 
●Blanket Of Calm / Healing Potpourri(『Blanket Of Calm』/ 2020年) 
●Quiet Storm / Smokey Robinson(『A Quiet Storm』/ 1975年)


 数量限定の7インチ・シングルなので、筆者の解説を読んで興味を持ったギターポップやソフトロック・ファンは、リリース元レーベルのオンラインショップから早急に入手すべきだ。 

リンク先:Disques Blue Very 


(ウチタカヒデ)
 

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