1999年10月25日月曜日

☆スパイダーズ:『コンプリート・シングルス』(テイチク/38587-8)

 GSの王者スパイダースのデビューはクラウンからの「フリフリ」。続いて第2弾はビクターから「越天楽ゴー・ゴー/トワイライト・ゾーン」、3枚目「ノー・ノー・ボーイ」はフィリップス、4枚目は権利の関係で再びクラウンから「青春ア・ゴー・ゴー」を出し混乱したスタートになったが、5枚目の「ヘイ・ボーイ」以降はずっとフィリップスに落ち着き、フィリップスでのシングルは計19枚を数えた。そしてこのCDはレーベルを越え、スパイダースの全シングル22枚が収められた。またボーナス・トラックとして解散時にリリースされた堺正章のシングル2枚、井上順1枚、かまやつひろし1枚、田辺昭知1枚と計5枚のソロ・シングルも合わせて収録された究極のシングル・コレクションである。フィリップスのスパイダース音源は昨年からテイチクよりリリースされた6枚のCDで聴くことが出来、またクラウン、ビクターの音源もそれぞれから出ているオムニバスCDで収められているが、「トワイライト・ゾーン」のみ権利の許諾がでなかったため今までCD化されたことはなく、嬉しい初CD化となった。またヴォーカルがオンでイントロ部分にかまやつのハミングが入った「バン・バン・バン」と、琴がオーバーダブされていない「ガラスの聖女」は、どちらもシングル・ヴァージョンでこの2曲も初の収録である。ビートルズやキンクス、ビーチ・ボーイズなどのエッセンスを巧みに取り込んだスパイダースのサウンドは今でも魅力的だ。特に「あの時君は若かった」のサウンドは、当時の日本のどのアーティストよりも洗練されていて、数あるGSのナンバーでも最高峰に位置する作品だろう。また「恋のドクター」、「バン・バン・バン」などのロック・ナンバーも実にカッコよく、スパイダースの演奏能力の高さにも改めて驚かされる。ボーナス・トラックのソロは歌謡曲調になっていて面白いものではないが、スパイダースの音楽的中核だったかまやつひろしのソロの「どうにかなるさ」だけはC&Wフィーリング溢れるフォーク・ナンバーで、時代を的確にキャッチしていた。(佐野)
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1999年10月18日月曜日

☆Paul McCartney: Run Devil Run (EMI/7243-5-2304-2-3)

2年ぶりのポール・マッカートニーの新譜はロックンロール・アルバムで、新曲3曲以外、みなオールド・ロックロールのカバーで占められた。88年には旧ソ連で発売されたロックンロール・アルバム『CHOBA BCCCP』があったが、同じコンセプトとは言え、この11年後、57歳のポールの歌う本作のロック・ナンバーの方がずっと若々しく魅力的だった。ロックンロールのジョン、バラードのポールという一般的なイメージがあるが、ポールはデビューの頃から最高のロックンローラー、それは今でも変わらなかった。アルバムはロカビリーやロッカ・バラードもあるが、私はこの手は好みではなく、好きなのはあくまでもストレートなロック・ナンバーである。こういう時はカントリーっぽいのや、バラード調は気が抜けてしまってつまらない。特にポールの自作の「Run Devil Run」はもう最高! ヘヴィなギターが、重量感のあるドラムのリズム隊に乗って炸裂する。ポールのエネルギッシュなヴォーカルも、まるでデビュー時のようだ。間奏のギターやドラムのからみなど、ハイロウズのような潔さがあってロックの魅力を理屈抜きで感じさせてくれる。このパワフルなギターはなんとデイブ・ギルモアで、ピンク・フロイドとはまったく違うプレイを披露してくれた。パンクのようなビートの「She Said Yeah」や「All Shook Up」もメチャクチャカッコいいし、これぞロックンロールという「I Got Srung」や「Party」も抜群だ。私はソフト・ロックやハーモニー・ポップも大好きだが、8ビートでひたすら突っ走るストレートなロック・ナンバーも同じく大好き。一見これらは違うジャンルの音楽のように思えるが、どれも聴いた時に胸のすくような解放感がある。この解放感、高揚感が欲しくて、私は音楽を聴いている。なおこのCDはポールの40分のインタビューCDがプラスされた限定盤だ。(佐野)
Run Devil Run