2007年5月26日土曜日

オオタユキ:『peace』 (Happiness Records /HRAD-00026)

 

 ここ最近80年頃の日本の女性シンガー(ソングライター)の曲が恋しくなって、大貫妙子の「新しいシャツ」やラジの「わたしはすてき」、池田典代の「Dream In The Street」などを思い出した様に聴いている。
 リアルタイムではどれもリリースから2年程してから聴いていたのだが、当時の匂いまでも感じさせてくれる歌声につい聴き惚れてしまう。やはりこの時代のシーンは今でも聴ける、普遍的に素晴らしい曲が多かった様に思うのだ。

 今回紹介するのは、そんな時代のテイストを持つシンガーソングライター、オオタユキのサード・アルバム『peace』だ。2002年のファーストアルバムからマイペースながらリリースしてきたアルバムは、彼女の唯一無比なソングライティング・センスと歌声を際立たせた、洗練さとアーシーさが融合した良質なサウンドで、聴く度に虜にさせられている。 
 特徴的なその声質で真っ先に連想させられるは、リンダ・ルイスやリッキー・リー・ジョーンズなのだが、成る程本作での音数少ない"Less is more"的なサウンド・プロダクションは『Flying Cowboys』(リッキー・リー)辺りを彷彿させる。M3「傘唄」はリンダの『Fathoms Deep』(傑作!)の世界に近いだろうか。
これら挙げてきたアーティストのファンは聴くべきアルバムで、彼女の世界観の虜になること間違いなしと推しておこう。 
 今回も前作同様にプロデューサーの平野栄二(saigenji等を手掛ける)の下、曲毎にhitme&miggyの二人と元ラヴ・タンバリンズの平見文生によるアレンジと、小畑和彦や福和誠司など手練なミュージシャン達が参加して彼女をしっかりとサポートしている。
(ウチタカヒデ)

2007年5月24日木曜日

Radio VANDA第86回選曲リスト(2007/6/7)

Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。

Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。


特集1:Paris Sisters

1. Be My Boy('61)

2. I Love How You Love Me('61)

3. He Knows I Love Him Too Much('62)

4. Let Me Be The One('62)

5. Dream Lover('64)

6. Once Upon A Time('64)

7. The Best Part Of It Is('66)

8. My Good Friend('67)

9. I Don't Give A Darn('67)

10. I Can't Complain('67)...Priscilla Parisのソロ

11. Golden Days('68)

12. Just Friends('74) ...Priscilla Parisのソロ

 

特集2:FromNew Music From An Old Friends

13. God Only Knows('07)...Brian Wilson

14. What Love Can Do('07) ...Brian WilsonBrianBurt Bucharachの共作)

15. New Music From An Old Friends...Jane Monheit,Paul Williams

16. Say Goodbye Today...Carol KingCarol KingPaul Williamsの共作)

 

 





2007年5月1日火曜日

☆Tom Jones:『This Is Tom Jones』(TIMELIFE/M19269slip)DVD


トム・ジョーンズのTVショー『This Is Tom Jones』の1969年から1970年に放送された8回分を集めたものが本DVDだ。かつて同名のDVDが出ていたが、これは正真正銘の『トム・ジョーンズ・ショー』(日本での放送名)で、DVD3枚組みという豪華版である。何よりも素晴らしいのは毎回呼ばれる豪華ゲストの歌と、ゲストとトムとのデュエットである。まずは目玉のフーである。19694月に出演していて、リアルライブで「Pinball Wizard」を披露してくれるのだが、原曲に忠実でかつ緻密な歌と演奏は極めてクオリティが高く、この当時、フー以上のライブバンドはないな、と改めて思い知らされた次第。見た目も最高にカッコいい時代だ。その少し前の2月にはムーディー・ブルースが登場する。「Departure」から「Ride My See-Saw」のメドレーで、こちらはオケを別録した口パクと思われる。メンバーはジェントルな服に身を包み、なかなか格好いいのだが、「Departure」がグレアム・エッジのソロ・ナレーションだったため、グレアムの位置が前列中心、カメラはまずグレアムのアップを映し、その後はマイク・ピンダーとレイ・トーマスのアップ、なんとジャスティン・ヘイワードのアップはたったの1回、ジョン・ロッジもほんの少しという、とんでもないカメラアングルだった。肝心な二人がオマケ程度、「Ride My See-Saw」のソングライターでビジュアルもいい貴公子ジャスティンにカメラを当てないなんて、バカじゃないかとほとほとあきれた。この回ではメリー・ホプキンも「Those Were The Days」を歌っていた。ただしこれらはみな、ソロ・パフォーマンスで、トムとのデュエットはなかった。そのトムとのデュエットは、まず19709月のバート・バカラックのゲストで見られる。ここではまずバカラックのピアノでトムが「What's New Pussycat?」「The Look Of Love」「What The World Needs Now Is Love」を歌い、後半ではJim Sullivanの生ギターをバックにトムとバカラックがデュエットで「Raindrops Keep Fallin' On My Head」で歌うという豪華版。何といってもバカラックの曲は本当に素晴らしい。しかしトム・ジョーンズは、もっとパワフルな、R&B系の曲でないと本領発揮できない。ディスク2以降は、リトル・リチャード、ジャニス・ジョプリン、ジョー・コッカー、スティーヴィー・ワンダー、アレサ・フランクリンという最高のメンツを集め、これ以上ないというエネルギッシュなデュエットを聴かせてくれる。リトル・リチャードのソロの「Lucille」、トムとのデュオの「Jenny Jenny」「Rip It Up」「Send Me Some Lovin'」「Good Golly,Miss Molly」は最高だ。これを聴いて体が動かない奴なんてロックを語る資格なんてない。ロックンロールのカッコよさを十分堪能させてもらった。しかしリトル・リチャード、アイ・メークが物凄く、まつげを上下にカール、マスカラも塗っているようでおメメパッチリ、アップはかなり気持ち悪い(笑)。しかしそれにもまして素晴らしかったのが、ジャニス・ジョプリンとトムとのデュオ「Raise Your Hand」だ。ジャニスのR&Bフィーリング溢れる強烈な魂のシャウト・ヴォーカルに、一歩も引かずにシャウトで答えるトム・ジョーンズ、こんな熱い、カッコいいデュエットは今まで見たことがない。間違いなく本DVDのハイライトだ。絶対に、絶対に見てほしい。(佐野)
 







☆Taylor Mills:『Lullagoodbye』(Aqua Pluse/2232)

ブライアン・バンドの紅一点、テイラー・ミルズのアルバムは、Scott BennettNicholas Markosというライターがほとんどの曲を書いていて彼女のオリジナル曲はないため、彼女はシンガーソングライターではなく、シンガーであることが分かる。曲はギター中心のロックで、シンプルなコンボによるものだ。Amazonでは販売していないことから、ネット販売によるインディーズと言っていいだろう。これだけなら、およそ購入するディスクではなかったのだが、このアルバムの中の「Raven」と「Cradie Me」にブライアン・ウィルソンがバックコーラスで参加していると聞けば購入するしかない。しかしこの2曲ともロックナンバーで、コーラスはあるもの特に芳醇なハーモニーではなく、どこにブライアンがいるのかまったく分からなかったが、ブライアンと彼女の2ショット写真があったので、参加は間違いない。マニアの方のみどうぞ。
(佐野)
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☆Neil Young:『Massey Hall 1971』(Reprise/9362-43327-2)


ニール・ヤングのアーカイブ・シリーズ、昨年の1970年のフィルモアでのライブに引き続き、1971119日にカナダのトロントのMasseyホールで行われたライブが発表された。フィルモアがクレイジーホースとのエレクトリック・セットだったのに比べ、Masseyはギターとピアノだけを使ったソロによるアコースティック・セット、ニールの場合、どちらもたまらない魅力があるので、ベストなリリースと言えるだろう。そして嬉しい事になんと、輸入盤はこのライブの模様をそのまま収めたDVDがカップリングされていた。私がニールで最も好きなのは『Harvest』あたりまでの初期なのだが、この時代のライブは一部しか見ることができなかった。しかし今回、70分近いライブ映像を一気に見ることができ、本当に満足できた。ステージにポツンとスポットライトがあたっただけの、モノトーンに近いような映像だが、才気溢れる当時のニールには神々しいまでに存在感がある。ただ演出なのか、「Helpless」、「Down By The River」、「I Am A Child」といった重要曲でニールの映像がなく、代わりに街並みや景色が映し出され、ニールが映らないということを示す意味か、ステージ上のテープレコーダーが大写しになっていたのは少々残念だった。このライブはアコースティック・セットなので曲数が17曲と多く、上記の曲以外でも「Tell Me Why」、「On The Way Home」、「Ohio」、「Cowgirl In The Sand」、「Don't Let It Bring You Down」に加えアルバム『Harvest』から4曲と、選曲がいいのでより楽しめるだろう。(佐野)
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☆Beach Boys:『The Warmth Of The Sun』(東芝EMI/TOCP-70236)


300万枚近くを売り上げたというメガ・ヒットのベスト盤『Sounds Of Summer』の裏ベストともいえるベスト盤がこの『The Warmth Of The Sun』だ。かつて全米1位に輝いたベスト盤『Endless Summer』の後にリリースされた『Spirit Of America』とイメージ的に被るが、今度はただのベスト盤ではない。初登場のレア・ヴァージョンも多く入った、コアなファンも満足できる仕上がりになっていた。このサイトを見る人に素人さんはいないだろうから、これがポイントという曲のみ紹介しよう。初登場のステレオ・ミックスが入ったのは順に「All Summer Long」、「You're So Good To Me」、「Then I Kissed Her」、「Please Let Me Wonder」、「Let Him Run Wild」だ。音に広がりが出てポジティブなイメージが増した「All Summer Long」、音の分離がよく、よりパワフルになった「You're So Good To Me」、イントロから振り分けがはっきりとして臨場感溢れるステレオになった「Then I Kissed Her」、こもったようなモノラルに比べ解放感があり、コーラスも前面に出た「Please Let Me Wonder」、バックコーラスの重なり、バッキングのひとつひとつがクリアーになった「Let Him Run Wild」と、どれも新鮮で素晴らしいステレオ・ミックスばかり。また既にステレオが存在していた「Wendy」は、ミックスを変え、より自然なステレオになっていた。これだけでも十分だが、コアなファンには嬉しいニュースをひとつ。「Why Do Fools Fall In Love」はイントロにコーラスが被るシングル・ヴァージョンで、これは1993年に東芝EMIのみリリースされたボックス・セット『ビーチ・ボーイズ・シングル・コレクション』に次いで、CD化は全世界で2度目というレア・テイク。もうひとつ「California Dreamin'」はヒットしたアル・ジャーディンがリード・ヴォーカルを取ったヴァージョンだったが、12弦ギターのイントロの前に嵐のSEが加えられていた。加えてイントロの雷鳴もはるかに大きくミックスされていた。(佐野)
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