2001年7月27日金曜日

☆Terry Sylvester:『Complete Works 1969-1982』(Magic 3930048)

グラハム・ナッシュ脱退後にホリーズに参加したテリー・シルベスターの、コンプリート作品集が登場した。その内容は素晴らしいの一語、私にとって今年の CD リイシュー大賞の最右翼の1枚になった。 CD 2枚組の本作、1枚はテリーの74年から78年に発表したソロ作品集で、もう1枚がホリーズでの作品を中心に、82年のジェームス・グリフィンと共同で作ったアルバムなどを収録した2部構成になっている。もちろんどれもいいのだが、何と言ってもテリーのソロ作品が、ホリーズなどのもう1枚の CD の作品を圧倒している。テリーはホリーズではその持てる力を発揮できず、ソロでこそその才能を堪能できる。私はかつてテリーのソロ・アルバム『Terry Sylvester』(74年)をソフト・ロック名盤50に選んだが、この CD を聴いてやはり間違いがなかったと確信した。ハイトーンのヴォーカル、美しく暖かいメロディライン、ロン・リチャーズの手による華麗なストリングス、すべてが見事に溶け合っている。ディスク1の21曲のソロ作品は、1曲たりとも捨て曲がない、最高のナンバーばかりだ。その内10曲はそのソロ・アルバムより。とろけるように甘い "End Of The Line" 、ゴージャスな "It's BetterOff This Way" はまさにソフトロックの理想が結晶したような歌だし、ムーディー・ブルースを彷彿とさせる "Pick Up The Pieces Again" も見事。76年にイギリスでリリースされたソロ『I Believe』にはなんと嬉しいロジャー・ニコルスの "Travellin' Boy" の素晴らしいカバーなどやはり高いクオリティのナンバーが収められる。さらに78年のシングル曲と思われる4曲もお洒落な "Realistic Situation" や爽やかな "Silver And Gold" などまた文句なしのナンバーばかり。そしてその大半がテリーのオリジナルなのだ。ディスク2でも1曲だけ紹介しておきたい。それは76年にアラン・パーソンズとのプロジェクトで発表された "To One In Paradise" だ。ハーモニーと見事な転調で高揚感溢れる傑作である。ともかくWeb VANDAの読者は黙ってこの CD を買うべき。絶対に気にいるはずだ。http://terrysylvester.com/ でも通販しているので是非。制作はフランスのMagicだ。(佐野)
Complete Works 1969

☆Curt Boettcher:『California Music』(Poptones/5037)

久々ポップトーンからのこの CD は、タイトルからも類推されるとおり、要はカリフォルニアの『Passion Fruit』である。カート・ベッチャーが70年代に残した不朽の名作だが、未発表で終わった不遇のアルバムだった。先に日本のTYOから CD 化されており、日本盤の方がイントロが被らないシングルの "Happy In Hollywood" と、 "Music Music Music" , "I Can Hear Music" の12インチ用ディスコミックスが入っていてお徳なのだが、このポップトーン盤には "Will You Ever See Me" が入っていて、これがサジタリアスの『The Blue Mable』のボーナストラックのものより40秒長いヴァージョンだった。なぜこの曲がここに入っているのか謎だが、多く入っているその40秒はイントロから歌が始まったものの途中で止めた没テイク分。こんなものでもファンは見逃す訳にはいかない。この CD 、価格も安い。『Passion Fruit』を聴きたいのなら、TYOより安く、またジャケットデザインもいいのこの CD の方がオススメだ。
(佐野)

California Music



2001年7月25日水曜日

☆Buffalo Springfield:『Buffalo Springfield Box』(Rhino R2 74324)

待望久しいバッファロー・スプリングフィールドの4枚組 CDボックスがリリースされた。全88曲中、37曲もの未発表トラックが収められ、1カ月先の日本盤などとても待てないとすぐに購入した。では、未発表曲のハイライトを順に追っていこう。ディスク1は最も初期の1966年に録音されたシンプルなデモが並ぶ。その中では後に CSN & Y の『Deja VU』で "Country Girl" として姿を現すことになるニール・ヤングの "Down Down Down" が聴きもの。ステファン・スティルスの軽快なロックナンバー "Neighbor Don't You Worry" もいい。ディスク2は "Down Down Down" のバンドヴァージョンからスタート、ハーモニーで彩られているもののスティルスのヴォーカルが中心だと独特の哀愁が無くなってしまっている。トロピカルなインスト "Kahuna Sunset" 、粗削りな "Mr.Soul" の別ヴァージョン、爽快なスティルスのビート・ナンバー "We'll See" など素晴らしいナンバーが並ぶが、同じアップテンポのロック・ナンバーでもハーモニーの華があり、スティルスとは違った個性を見せるリッチー・フューレイの "My Kind Of Love" が最高だ。その後では1967年に録音されたスティルスのきれいなフォーク・チューン "So You've Got A Lover" などのデモが続く。そしてヤングの幻の名作 "Down To The Wire" が登場するが、リードヴォーカルがスティルスだったのには本当に驚かされた。スティルスだと完全なロック・ナンバーになってしまうな。ディスク3では1967年に録音されたヤングのデモが並んでいて個人的には嬉しい。 "I Am A Child" の習作 "The Rent Is Always Due" や、ソロになって登場する "Round And Round And Round" , "Old Laughing Lady" が、やはり引っ掛かる。勝手にストリングスが付けられたという "On The Way Home" のストリングス抜き別ヴァージョンが登場するが、これはストリングスが入ったほうがいい気がしたのは私だけ?ごめんなさい、ヤング先生。ハーモニカが哀愁をさそうヤング作のインスト "Whatever Happened To Saturday Night" 、フューレイ作のポップな "What A Day" も魅力的トラックだ。ディスク4は彼らがオリジナルと認める1、2枚目のアルバムがそっくり入っているだけなので、未発表トラックはなし。しかしこのボックス・セット、単なるコンプリート作品集とは違って、「バッファロー・スプリングフィールド」への誇りが満ちあふれている。スティルスが好きではないからと "Bluebird" の9分ヴァージョンは見送られ、フューレイは実験的な "The Hour Of Not Quite Rain" を外した。おそらく同じような理由でギターの間奏が違う "Mr.Soul" のシングルヴァージョンも入らなかった。3枚目の『Last TimeAround』は解散後に作られたものなので、正規メンバーではないジム・メッシーナの "Carefree Country Day" も削られる。バッファローの音源ではあとヤングの『Decade』に "Down To The Wire" のヤングのヴォーカル・ヴァージョン、同じくヤングの『Journey Through The Past』収録の "For What It's Worth/Mr.Soul" "Rock & Roll Woman" のライブがあるので、コンプリートを目指す人はお忘れなく。(佐野)


2001年7月24日火曜日

☆Orpheus:『The Complete Orpheus』(Akarma/155/2)

オルフェウスやカメレオン・チャーチでポップ・サイケ・ファンのみならずソフト・ロック・ファンにも根強い人気を持つアラン・ローバー。その彼のプロダクションの中でも最も成功し、また最も充実した内容を持つオルフェウスのアルバム4枚の全てが一気にまとめて CD 化された。以前 Big Beat より『The Best Of Orpheus』という2枚組の CD が出ていたが、未発表の別トラックやライブが入っていたものの、4枚からの抜粋で、どのアルバムからも何曲か欠けていた。本作は2枚の CD に彼らの4枚のアルバムがそっくり収められ、実にお徳用でもある。本当に久々に彼らの曲を聴き直したが、特にファースト・アルバムには弾けるようなポップ・フィーリングがあり、アラン・ローバーのストリングスのセンスが冴え渡る快作。2枚目もストリングスが映える曲があるが、バンド・アンサンブルを生かす曲が多くなってくる。3枚目になるともうストリングスは消えるが、その分曲自体のクオリティが上がっていて味わい深い。ポップから離れた感がある4枚目はちょっとつまらないが。やや太くハイトーンではないヴォーカルは、最初ちょっととっつきにくいが、聴いているうちに味が増す。おすすめの CD だ。(佐野)
Complete Orpheus

2001年7月20日金曜日

Radio VANDA 第 16 回選曲リスト (2001/8/4)

Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。
Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 毎月第一木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。

 

Barry Mann Solo 特集

1. Don't Seem Right ('75)
2. Amy ('64)
3. Angelica ('66)
4. She Is Today ('67)
5. The Young Electric Psychedelic Hippie Flippy Folk & Funny Philosophic Turned On Groovy 12 String Band ('68)
6. I Just Can't Help Believin' ('68)
7. Feelings ('70)
8. Carry Me Home ('71)...Single Version
9. The Princess And The Punks ('76)
10. Jennifer ('76)
11. The Best That I Know How ('78)
12. Almost Gone ('79)
13. In My Own Way ('80)
14. We Gotta Get Out Of My Place ('65)
 



2001年7月13日金曜日

☆Beach Boys:『Aloha From Hawaii』(Spank/147)

Vigotone より、初登場の音源満載のブートがリリースされた。これは2部構成で前半は1967年8月25日、ホノルル・インターナショナル・センターでのライブだ。音はライン録音でいいが、バッキングのバランスがやや悪く、聴こえる楽器とそうでない楽器がある。しかしこの時のライブはレコードと同じようなハーモニーの再現が主眼だったようで、パワフルではなくささやくような歌い方でハーモニーは実に繊細に再現されている。この狙いはCD後半収録の同年9月11日にハリウッドの Wally Heider's Studio で録音されたライブ用のリハーサルで裏打ちされる。このリハーサル、以前、Vigotone の『Lei'd In Hawaii Rehearsal』でリリースされたものと同じようだが、本CDのものはライブのあった同じ8月25日のリハーサルで内容が違う。さてなんといっても初登場のこのライブだが、いきなり "The Letter" から始まり、私の好きな "Hawaii" で会場を盛り上げていく。その後完璧なハモリの "You're So Good To Me"、自家薬籠中の "Surfer Girl" へつなげる。そしてなんと"Surfin'" だ。ギターサウンドのバッキングに乗ってなかなかいいのだ。さらに "Gettin' Hungry" のライブというこの時代しか聴かれないものも。レコードと同じ安っぽい仕上がりだ。"California Girls" は最後のリフレインがほとんどアカペラというライブ用のアレンジになっていた。"Wouldn't It Be Nice" はこのライブがキーボード中心のバッキングだったので、特にこの曲は合わない。"Heroes And Villains" はレコードそのものの複雑なコーラスパートが再現され驚異の出来栄え。これは凄い。"God Only Knows","Good Vibrations","Barbara Ann" と続いて全11曲のライブだった。(佐野)


2001年7月11日水曜日

☆Pickettywitch:『That Same Old Feeling』(Castle/265)

私にとって今年のベストリイシューの1枚は、間違いなくこの CD だ。ジョン・マクレオドがプロデュースと作曲で核となりながら、トニー・マコウレイもシングルで曲を提供、マコウレイのワークスの中でも傑作がこのピケティウィッチに残さた。何と言ってもこの CD が凄いのは "The Complete Recordings" の副題。そう、ピケティウィッチの全ての音源がこの1枚でまとめられたのだ。ピケティウィッチのコレクティングには、今までそれぞれ収録曲が違う UK と US のアルバムをそれぞれ揃え、さらにシングルのみの音源を集めていかなければいけなかった。そのシングルの出来が良く、こつこつと集めていったものだが、すべてこれでクリアーになった。まずやはりマコウレイ作品から。ポップなタイトル曲 "That Same Old Feelings" もいいが、ベストは流麗な "(It's Like A) Sad Kinda Old Movie" 、これで決まり。あとシングル・オンリーだった "Bring A Little Light Into My World" もとってもポップでグッド。続いてマコレオド作品。この人はボサ・タッチの作品に抜群のセンスを発揮する。 "There He Goes" もいいが、ベストはシングルのみの "Point Of No Return" 。 "Dreamin'" のボサ風味も心地よい。キャッチーさではシングルの "Summertime Feeling" 。その他の作家ではレス・リード=ゲオフ・ステファンズの"Baby I Won't Let You Down"が爽やかさで群を抜き、大名曲。全ナンバーでも "Sad Old Kinda Movie" とトップを争っている。 CD の最後はポリー・ブラウンが脱退して男性ヴォーカルになった、初めて聴く3曲。ラストの未発表曲 "Fugue" はハーモニー・ポップの傑作で、こんな曲も出来たのかと驚かされた。この CD はソフト・ロック・ファンなら絶対の、そして最高の1枚だ。(佐野)
That Same Old Feeling - The Complete Recordings

2001年7月8日日曜日

☆Wendy & Bonnie:『Genesis』(Sundazed 11089)


CD 化が長く望まれていたソフトロックの傑作が、未発表デモと共にリリースされた。今まで謎に包まれていたこの姉妹のプロフィールや子供の頃からの写真が掲載され、ライナーも興味深い。久々にこのアルバムを聴いたが、やはり1曲目の "Let Yourself Go Another Time"に本盤は止めを差すだろう。中間部のグルーヴィーなオルガンなど最高の出来。後はロック調の曲もあるが基本的にクールなタッチのフォーキーな曲が多く、これがウェンディ&ボニーのスタイルなのだろう。ボーナストラックはボニーのギターに合わせたまさにデモ集だが、アセテートからの "The Night Behind Us"はファズ・ギターがビンビン鳴ってなかなかの出来。(佐野)
covers обложки Wendy & Bonnie - Genesis [Reissue 2008] CD2

☆ワイルド・ワンズ:『コンプリート・ヒストリーBOX』(パレード/10014~24)

大物GSで唯一、CD化が遅れていたワイルド・ワンズだが、なんと66年のデビューから71年までの解散までにリリースした8枚のオリジナル・アルバムに加え、別ヴァージョン、カセットのみの曲、CMソング、未発表ライヴ、未発表テイクなど貴重な音源がさらに3枚のCDにまとめられ、計11枚のCDが36PものLPサイズの豪華カラー・パンフレットと共にボックス・セットとしてリイシューされた。これは凄い!全166曲中初CD化が86曲、未発表曲も27曲入ったまさに究極のボックスである。そしてこれだけ充実した内容ながら価格は税込20000円とこれまた安い!初回限定生産なのですぐに買いに行くべき。解説はVANDA本誌でガロの充実した原稿を書いていただいた高木龍太さんが中心で、これも読みごたえ十分。さて、私は初めてワイルド・ワンズのアルバムをたどっていく事が出来たのだが、GSの中で彼らはロックよりもポップス、フォークに近いスタンスのグループであり、特にライブでは小編成のオーケストラと女性コーラスを従えるなど、バンド・サウンドへのこだわりはあまりないようだ。カンツォーネ、ジャズのスタンダードまで歌い、レターメンの後にクリームが出てくるのがワイルド・ワンズのライブだった。ファースト・アルバム『The Wild OnesAlbum』は全曲加瀬邦彦のオリジナル、12弦ギター中心の軽快なフォーク・ロック・ナンバーが並んだ日本GS史上の傑作アルバムに仕上がった。ここでは日本的な歌謡曲っぽいものは皆無だったが、アルバムを重ねる度にカバーが増え、シングル中心に歌謡化が進んでくる。しかしその中で音楽的なピークが再び訪れる。それが69年リリースのアルバム『The 5』である。このアルバムも全曲オリジナルながら加瀬は2曲のみで、渡辺6曲、植田2曲、鳥塚、島各1曲とメンバー全員が書き、特に新加入の渡辺茂樹の音楽的成長が著しく、ボサノヴァの名曲 "夢は流れても"は日本のポップ史上に残る傑作となった。また植田の "ハロー・ミスター・レイン"は植田得意の英語詞による洒落たナンバーで、これも聴きものだ。加瀬の "やさしい人々"も美しい。後期ワイルド・ワンズはハーモニーが充実しているが、このアルバムではこれらの曲を中心に効果的にハーモニーが付けられていた。10曲の編曲を担当した東海林修の力が大きい。この『The 5』はソフト・ロック・ファンに絶対おすすめの傑作である。なお、新星堂で予約した人には68年の「女学生の友」の付録ソノシートのCDシングルが付いてくるので、こちらがお徳。(佐野)

2001年7月1日日曜日

☆Gary Usher:『Beyond A Shadow Of Doubt』(TYO/0054)

このアルバムは71年にゲイリー・アッシャーが同タイトルのオリジナルの物語を、コンセプト・アルバムにしようと作曲をディック・キャンベルを依頼し、ゲイリーとディック、そしてカート・ベッチャーで73年までの3年間でレコーディングを進めていったものだ。曲はすべてゲイリーとディックの共作で、プロデュースはゲイリー自身が行った。しかし結局、このアルバムの企画はボツになってしまうのだが、こうして30年ぶりに姿を現した。曲はアコースティック・ギターがサウンドの中心で、そこに3人の美しいハーモニーが付けられた。メロディはサンディ・サルスベリーがいたミレニウムとは違いポップでキャッチーな曲というものはなく、ややくすんだ感覚のフォーク・タッチのものが多い。そう、サジタリアスのセカンド・アルバム『The Blue Marble』をシンセサイザー抜きにしたものと思えばよい。そしてこの澄んだ音は70年代のものだ。カートがリード・ヴォーカルを取ったのは3曲で、それはこのアルバム用ではないデモ集に収録されている。その9曲のデモの作曲もすべてゲイリー&ディック。(佐野)
ビヨンド・シャドウ・オブ・ダウト