2024年3月3日日曜日

鈴木祥子:『16 ALL-TIME SYOKOS BEARFOREST SINGLES AND MORE...2009-20XX』


 シンガー・ソングライターとして36年目となる鈴木祥子(すずき しょうこ)が、自身が主宰するレーベルBEARFOREST RECORDS(ベアフォレスト・レコード)より発表した、アナログ・7インチシングルやCDシングル等から16曲を選出したコンピレーション・アルバム『16 ALL-TIME SYOKOS BEARFOREST SINGLES AND MORE...2009-20XX』(BEARFOREST RECORD / BECD-30/31)を3月8日にリリースする。

 昨年12月のなんちゃらアイドルのカバー・アルバム『Sentimental Jukebox』へのスペシャル・ゲスト参加も弊サイト読者には記憶に新しい鈴木だが、2009年6月の『超・強気な女(I’ll Get What I Want)』(BEEP-001)から、2021年3月の『助けて!神様 ~ So Help Me,GOD!』(NRSP-795)までの現在入手困難な音源や初CD化された貴重音源が本作で一挙に聴けるのだ。また付録の8cm ボーナス・シングルでは、カップリングとして収録された洋楽カバーが4曲収録されており、彼女のファンにとってはメモリアルなアルバムとなった。
 なお本作のプロデュースは鈴木本人と、BEARFOREST設立時からレーベルを支えてきた、現なりすレコード主宰の平澤直孝との共同でおこなっており、アナログ・レコーディングに拘った全曲のリマスタリングをビクター・スタジオのチーフ・エンジニアの中山佳敬が手掛け、音質向上の点でも特筆すべきポイントとなっている。
 ジャケット・デザインにも触れるが、パブロック・ファンには一目瞭然の通り、ニック・ロウのベストアルバム『16 All-Time Lowes』(1984年)を彷彿とさせる。アート・ディレクターとして著名な坂村健次がデザインを担当しているが、アルバート・グロスマンが設立しトッド・ラングレンの諸作で知られる、Bearsville RecordsのロゴをBEARFORESTのそれでオマージュした鈴木らしい、実にマニアックでセンスを感じさせる。 


 彼女のプロフィールにも触れよう。1988年9月にEPIC SONYよりシンガー・ソングライターメジャー・デビューし、現在までに13枚のオリジナル・アルバムを発表している。またデビュー前の86年からドラムやパーカッション、キーボード・プレイヤー、コーラスのセッション・ミュージシャンとして、原田真二、ビートニクス(高橋幸宏と鈴木慶一のユニット)から小泉今日子のツアー・メンバーとして活躍するなどマルチプレイヤーであるばかりか、ソングライターとしてもこれまでに、大ヒットした小泉今日子の「優しい雨」(1993年)をはじめ、松田聖子「We Are Love」(1990年)、PUFFY「きれいな涙が足りないよ」(『FEVER*FEVER』収録/1999年)等々メジャー・アイドル歌手への提供も多く、職業作家としても活躍している稀有な存在なのだ。 

 なお本作には23頁におよぶ豪華ブックレットが付き、全収録曲のセルフ・ライナーノーツが掲載されており、そこでの鈴木自身による詳しい解説を読んで頂きたいので、ここでは筆者が気になった収録曲のみ解説していく。 
 冒頭の「超・強気な女(I’ll Get What I Want)」は2009年リリースの7インチ・シングルで、スリーリズムのシンプルな編成でピアノとドラム(リズムボックス含め)が鈴木、ベースをCHAINSのラリー藤本がそれぞれ担当している。当時デビュー20周年を迎えた鈴木のドキュメンタリー映画『無言歌~romances sans paroles~』の主題歌で書き下ろされ、強気というか勝気な女性の一人称の歌詞が、50年代アメリカのリーバー&ストーラー作のコーラス・グループ風の曲調で歌われる。シングル盤ジャケットはトッドの『The Ever Popular Tortured Artist Effect(トッドのモダン・ポップ黄金狂時代)』(1982年)のオマージュだ。
 美しいバラードの「センチメンタル・ラブレター」は2012年のバレンタインデーにリリースされたCDシングルで、平澤の助言もあり初期~中期オフコースのサウンドと小田和正のソングライティングに影響されているという。鈴木による鍵盤類のみの一人多重録音で構成され、コード進行やコーラス・アレンジ、間奏のProphet-600のソロやウインド・チャイムのアクセント等オフコース・サウンドをオマージュしている。筆者的には鈴木の声質からローラ・ニーロを彷彿とさせてしまった。 

『青空のように』 
(BEEP-004/2011年/現在7インチは廃盤)

 弊サイト読者なら巨匠と称する大瀧詠一(大滝詠一)作「青空のように」(オリジナル・同名シングル及び『NIAGARA CALENDAR』収録/77年)のカバーは、2011年1月にリリースされた7インチ・シングルで、ブリッジ・パートに同じく大瀧作の「ニコニコ笑って」(『GO! GO! NIAGARA』収録/76年)を挟んだハイブリッドな構成になっている。基本アレンジはオリジナルを踏襲しており、ボーカルの他、全てのコーラス、ドラム、オルガン、ピアノ(クレジットにはないがウーリッツァーも聴こえる)、スレイベル、カスタネットを鈴木の一人多重録音、ホーン・アレンジとバリトン、テナー、アルトの3管のサキソフォンは山本拓夫がプレイしたという、たった2人のレコーディングで完結させとは思えない仕上がりなのだ。
 何しろフィル・スペクターのフィレス・サウンドを源流とするドラムのリバーブ感やカスタネットのヒスパニック系リズムのパターン、また複雑なコーラス・アレンジのトップで進行するファルセットのライン(オリジナル・ヴァージョンはノンクレジットだが山下達郎らしい)など、細部に渡った研究により再現されていて今更ながら脱帽してしまう。

 続く「You take me,you make me」は同じ2011年の CDシングルで、一転してザ・バンド風のサウンドでピュアな歌詞を持つラヴ・バラードである。鈴木はドラムの他、ピアノ、ハモンドオルガン、ウーリッツァー、チェンバロまで演奏し、ホーン・セクションにはムーンライダーズのヴァイオリニストとして著名な武川雅寛、栗コーダーカルテットの川口義之と関島岳郎が参加し、川口は巧みなテナーサックス・ソロもプレイしている。なにより鈴木の表現力豊かでソウルフルなボーカルは圧巻で感動してしまう。
 2012年に7インチ・シングルとCD2枚組という変則的形態でリリースされた『(To)my Sweetest Fantasy」』のリード・トラック「愛と幻想の旅立ち」は、同年2月18日に渋谷のクラブ、サラヴァ東京にて一人多重で公開レコーディングされ話題となってリリース後即完売していた。本作には2022年の『鈴木祥子私的讃美歌集1』に収録されたニューミックス・ヴァージョンが収録されている。溌溂としたエイトビートのポップスで、サビへの展開などはシルヴィ・ヴァルタンの「Irrésistiblement(あなたのとりこ)」(1968年)に通じており、コーラス・アレンジにはドゥーワップからの影響を感じさせる。曲後半には公開レコーディングに参加した観客達のハンドクラップが挿入され臨場感が加えられている。
 鈴木としては異色コラボであろう2021年の7インチ・シングル「助けて!神様 ~ So Help Me,GOD!」は、アイドル出身ながらエレクトロ・ポップ系シンガー・ソングライターとして注目されている加納エミリが、アレンジとサウンド・プロデューサーで参加している。加納は昨年5月にリリースされたFrancisのシングル『裁かるゝエミリ』でフューチャーされていて、本曲でも彼女が得意とするネオ80’sサウンドをバックに鈴木のキュートさを引き出している。


 アコースティックピアノのみのバックで歌われる「北鎌倉駅」は、夏のひと時の記憶を切り取った短い歌詞を、10ccの「I'm Not in Love」(1975年)に通じる幻想的なマルチトラック・コーラスが演出する曲で、鈴木の繊細なピアノ演奏も含め聴くべき曲だろう。
 本作ラストに収録された「ファーラウェイ・ソング(遠く去るもの)」は、2008年のデビュー20周年アニバーサリー・アルバム『SWEET SERENITY』の10年後にアナログ盤でリイシューされた際、新規録音で追加されたうちの1曲で、アレンジを担当した菅原弘明による、12弦アコースティック・ギターとエレキギターのリフがリードするロック・ナンバーだ。菅原はベースとシンセサイザーのプログラミングも担当し、鈴木はドラムとピアノをプレイしている。ギターリフのアルペジオ・パターンからThe Byrdsを彷彿とさせるので、フォークロックやアメリカ西海岸ロック・ファンも必聴である。

 8cm ボーナス・シングルにも触れておこう。いずれもこれまでのシングルにカップリング収録された洋楽カバー曲で、フィル・コリンズの「Against All Odds(見つめて欲しい)」(1984年)、エイジアの「Heat Of The Moment」(1982年)という、いずれも鈴木が青春時代に聴いていていたUKロックのヒット曲。またリンダ・ロンシュタットの『Heart Like a Wheel(悪いあなた)』(1974年)収録の「Heart Like A Wheel」、そしてSINDEE & FORESTONES名義で発表された、リーバー&ストーラー作でクリフ・リチャードがヒットさせた「Lucky Lips」(1957年)を収録している。いずれも現在CD音源で聴くのは困難な曲ばかりなのでこの機会に入手すべきだ。


 なお本作は取扱店舗が現時点では限られているため、東京都心以外に在住する読者は、鈴木のオフィシャルサイトから入手して欲しい。


●取り扱い店舗:
 パイドパイパーハウス(タワレコ渋谷7F) 
 ディスクユニオンお茶の水駅前店
 武蔵小山ペットサウンズレコード>通販あり

(テキスト:ウチタカヒデ

2024年2月14日水曜日

小林しの:『The Wind Carries Scents Of Flowers』リリース・インタビュー


 ファースト·アルバム『Looking for a key』から8年、女性シンガー・ソングライターの小林しのが、セカンド・アルバム『The Wind Carries Scents Of Flowers』(*blue-very label*/ blvd-043)を2月24日にリリースする。

 昨年3月には彼女とthe Sweet Onionsの近藤健太郎と高口大輔によるギターポップ·バンド、Snow Sheep (スノー·シープ)の結成23年目のファースト·アルバム『WHITE ALBUM』をリリースしたことが記憶に新しいが、本作も同じく*blue-very label* (*ブルーベリー・レーベル*) を主宰するナカムラケイ氏のオファーにより実現したらしい。 
 また今年は小林を中心としたバンドHarmony Hatch(ハーモニー・ハッチ)の結成から25年で音楽活動のメモリアル·イヤーとして区切りの年でもあるので、同バンドからのファンにとっては嬉しいリリースとなっただろう。そのHarmony Hatchは、空気公団やMaybelle(弊誌VANDA読者だった著名劇伴音楽家の橋本由香利が所属)を輩出したCoa Recordsから2000年にデビューした。その後ソロのシンガー·ソングライターとして、前出のファースト『Looking for a key』を2016年2月にリリースしており、2018年11月には初のアナログ7インチ·シングル『Havfruen nat』、2020年12月には配信EP『Cold And Warm Winter』を発表し、都内を中心に定期的なライヴ活動、様々なバンドのコーラス·サポート等精力的に活動している。


 本作はSnow Sheepのメンバーでもある高口と小林の2人でトータル·プロデュースをおこない、各曲にサウンド・プロデューサーとなるアレンジャーを立て、レコーディングには様々なミュージシャン達が参加しているのも注目である。渋谷系を牽引したバンドとして知られるbridgeの元メンバー、イケミズマユミ(Three Berry Icecream)をはじめ、マルチプレーヤーでエンジニア、マスタリング・エンジニア(本作も担当)として活動しているSmall Gardenを主宰する小園兼一郎、Trashcan Sinatrasと共演したジャパニーズ・ネオアコースティック・バンドThe Laundries(ランドリーズ)のギタリストである遠山幸生、 北海道でワンマン·ユニット、alvysinger(アルビーシンガー)を主宰する小野剛志、元melting holidaysで小林が所属するphilia recordsではレーベル・メイトであるポプリのササキアツシ、Snow Sheepのメンバーでphillia recordsを主宰するThe Bookmarcsthe Sweet Onionsのメンバーで弊サイトでもお馴染みの近藤健太郎、更にHarmony hatch時代の盟友である宮腰智子との当時の未発表!も収録しており、小林の幅広いフットワークを象徴した面々が参加した多彩なアルバムに仕上がった。そしてひと際目を惹くフォトグラフとデザインは、Snow Sheepの『White Album』等も手掛けたfumika arasawaが担当している。 

  ここでは筆者による全収録曲の解説と、小林におこなった本作の曲作りやレコーディングについてのテキスト·インタビューと、ソングライティングやレコーディング期間中彼女達がイメージ作りで聴いていたプレイリストをお送りするので聴きながら読んで欲しい。

 
小林しの『The Wind Carries Scents Of Flowers』
2nd Album 【Movie Trailer】

 冒頭の「青い夜を浮かべて」は小林のソングライティングに、高口を中心にライヴのサポート・メンバーでヘッドアレンジされた爽やかでドラマティックなギターポップだ。ここ数年のライヴ・レパートリーにもなっており、小林のピュアなボーカルとコーラスのバックで、練り上げられたコンビネーションの演奏が聴ける。ドラムとキーボードを高口、ベースにはアイドルポップロック・シューゲイザーバンド(カテゴライズが凄い)Mint kit sand(ミント・キット・サンド)の前濱雄介、アコースティックとエレキギターはコルチャックというソロユニットを主宰する木本圭介、ピアノはベーシストでもある女性プレイヤーのtenが参加している。
 続く「金木犀の部屋」はイントロからフォークロック・スタイルのサウンドで、小林の描く素朴な歌詞の世界にもマッチする。インタビューで詳しく説明されるが、The Laundriesの遠山幸生がまず仮のギター・アレンジをして構成が決まったようだ。全体のアレンジは高口が担当し、ドラムとキーボード、ピアノの他ベースもプレイしており、木本はアコースティックギターで参加している。また大サビでは近藤健太郎が印象的なコーラスをさり気なくつけているのが印象的だ。
 フルートがリードするソフトロック風のイントロを持つ「風は花の香りを運ぶ」は、alvysingerの小野剛志がアレンジと全ての楽器をプレイしコーラスまでつけている。コーラス・アレンジは近藤が担当し、小林の作詞によるサビのパンチライン「風は花の香りを運ぶ・・・」の爽やかな空間を演出して効果的である。 
 「星の色に似た海(Snow Sheep Version)」は『Cold And Warm Winter』収録ヴァージョンより空間を広げたサウンドで、近藤の作曲ということもありSnow Sheepのカラーが濃く、ほぼ全編が小林と近藤のデュエットで歌唱されるので、『WHITE ALBUM』収録候補だったかも知れないプリティな曲だ。アコースティックとエレキギターは近藤、ドラムとキーボード、ベース、パーカッションは高口が担当している。 

 Small Gardenの小園兼一郎がアレンジし、生のフルート含め全楽器をプレイした「5メートルの永遠」は、これまでの小林のサウンドには無かった、南欧州の田園風景を感じさせて心地良い。小園の器用さとこのサウンドはSmall Gardenの作品でも聴けるのでチェックして欲しい。
 一転して疾走感と陰鬱のあるネオアコースティック・サウンドの「かすみ草のように」は、再び高口がアレンジを手掛けて、The Laundries遠山のエレキギター以外は高口がプレイしている。この曲でも遠山の特徴あるギター・アルペジオがサウンドの肝であり、小林のシリアスな歌唱をバックアップする。 
 またまたガラッとサウンドが異なる「milky pop.song」は、Three Berry Icecreamのイケミズ゙マユミが作曲し、小林が作詞している。原曲は『Three Berry Icecream』(2021年)に収録されており、そこでは小林が英歌詞を提供していた。ここでのアレンジは高口でキーボードとベース、パーカッションも担当しているが、Three Berry Icecreamヴァージョンを踏襲した牧歌的なワルツの小曲に仕上がっている。同ユニットを主宰するイケミズはピアノとボーカル、コーラスで参加し小林とデュエットして仲の良さを見せている。
 本作中最もキャッチャーな「白い恋人」は小野の作曲、編曲で小林が作詞した完全無欠のガールズ・ポップスで多くの音楽ファンの心を掴むだろう。小林の発声も他の曲とは異なっているのが興味深く、アイドル期の菊池桃子を彷彿とさせて微笑ましい。全ての楽器演奏とプログラミングは小野が担当している。

(philia records PHA014 / 現在廃盤) 

 2018年の7インチ・シングル『Havfruen nat』収録の和訳タイトル曲「人魚の夜」は、ササキアツシがmelting holidays時代に書いた「morning star lily」が原曲で、小林が日本語歌詞をつけて完成させた、ソフトロック~MORとして非常に完成度が高い。元melting holidaysのタサカキミアキがプレイする間奏のクリーン・トーンのギター・ソロを含め、当時筆者はかなり気に入っていたので同年の年間ベストソングにも選出していた。本作収録にあたりCD用にリミックスしているとのことだ。
 イントロのアルト・サックス含め全楽器をプレイした小園のアレンジによる「海の底で」もMORのテイストがあり、前曲からの流れも良い。元々は小林が、chelsea terraceのmayumi、スイスカメラの梶山織江とのユニット”Lilly chilly blue stars”に提供した曲だが、この小園のアレンジでまた生まれ変わっている。ギターポップ・バンドからスタートした小林にとっても、新境地なサウンドとして歓迎したい。
 「forget me not」は「かすみ草のように」同様にThe Laundries遠山のエレキギターをフューチャーした硬質なネオアコースティック・サウンドで、本作中唯一の英歌詞で小林の文才さを計り知れる。全体のアレンジは高口でギター以外の楽器を担当しているが、ピアノのオブリガードやエンディングのソロで光るプレイをしているのでチェックしてほしい。

 「小さな夜」は『Cold And Warm Winter』収録ヴァージョンと基本アレンジは同じだが、ボーカルのリバーブが抑えられて楽器も差し替えられてスッキリした音像になっている。アレンジと全ての楽器を高口が担当しており、イントロやオブリで使用されるピアニカが印象的だ。
 ササキアツシのソングライティングとアレンジによる「うさぎのウシャンカ」は、『Cold And Warm Winter』収録ヴァージョンをCD用にリミックスしたもので、レコーディング・メンバーは「人魚の夜」と同様、タサカのエレキギター以外の全ての楽器とプログラミングをササキが担当している。このウシャンカも詞曲共に小林好みのウインター・メルヘンに溢れた良曲で、ポール・マッカートニーに通じる美しいコード進行とソフトサイケなアレンジがササキらしい。
 ラストの「ライラックブライド」は、Harmony hatch時代にメンバーの宮腰智子が作曲し、小林が作詞して未発表だったアップテンポのハッピーソングで、高口のアレンジによって初レコーディングされた。ここでは小林自身のエレキギターとイケミズのアコーディオン、その他の楽器全てを高口がプレイしている。北海道出身の小林らしい歌詞の世界は雪国における春の訪れの高揚感をよく表している。


アレンジの幅、演奏力も年々深みが増していて、
高口さんがいなければ
自分の音楽活動は停止してしまうかもしれないな・・・ 
というくらいお世話になりました。

●先ずはファースト·アルバム『Looking for a key』から8年を経て、本作『The Wind Carries Scents Of Flowers』のリリースに至った経緯をお聞かせ下さい。 

◎小林:2024年2月18日(日)にphilia records主催のライブイベントを行うことになり、レコード店のディスクブルーベリーさんに出店依頼のやりとりをしていたところ、当日に関連作品をリリースできるといいですねというお話になり、4~5曲入のミニアルバムをリリースすることに決まりました。
制作を進めるうちにあの曲もこの曲も録音したい。。となってしまい、過去にカセットテープや7インチレコード、配信でリリースした曲も収録してセカンド·アルバムとして発売することになりました。昨年の8月頃にお話しをして決まったので、本当に短い製作期間で急遽作ることになりました。

●成る程、とんとん拍子の内にセカンド·アルバム制作に至った訳ですね。では本作の曲作りとレコーディングに入った時期を教えて下さい。
またファーストの『Looking for a key』から向上されたレコーディング方法などあれば教えて下さい。

◎小林:新曲のレコーディングは2023年の9月頃~12月です。 作曲については、一番古い「海の底で」は20年以上前に作った曲、「青い夜を浮かべて」「風は花の香りを運ぶ」や「金木犀の部屋」はここ数年で、「5メートルの永遠」「かすみ草のように」等はアルバム発売が決まってから作りました。
『Looking for a key』はハードディスクのMTR「ROLAND VS-1680」を使用して、演奏してくれたミュージシャンの皆様のもとへ出張レコーディングしていましたが、今回は編曲してくださった方によって自宅、スタジオ、対面、オンライン等、様々な方法でレコーディングできて楽しかったです。

●ROLAND VS-1680!私は90年代後半の発売直後に入手し曲作りしていた時期があったので懐かしいです。同MTRによるモービル方式のファーストから各アレンジャーによって様々な制作環境に変わっていったということで、レコーディング中の特筆すべきエピソードをお聞かせ下さい。各アレンジャーの方々をはじめ、参加したミュージシャンの方々の印象についてもお願いします。

◎小林:今回連名でトータルプロデュースの高口大輔さんはHarmony hatch時代からの友人で、Snow Sheepでも一緒にバンドをやっているので自分にとって家族みたいな感じの方です。今回、制作が急に決まったので最初はスケジュールが合わず、当初2曲の参加予定でしたが高口さんのレコーディング作業が非常に早く、最終的には半分以上の曲の編曲や演奏に関わっていただくことになりました。高口さんのレコーディングが早すぎて、当初のミニアルバムの予定から14曲入りのフルアルバムになった感じなので、本当に感謝しています。
過去にレコーディングした曲もいつの間にかアレンジを変えて更に良くして、私の希望を確認してくれながら色々なアイディアを試してくれて、臨機応変に対応してくださることにいつも驚いています。アレンジの幅、演奏力も年々深みが増していて、高口さんがいなければ自分の音楽活動は停止してしまうかもしれないな・・・というくらいお世話になりました。
 「小さな夜」という曲は2020年に『Cold And Warm Winter』で発表した曲ですが、セカンド·アルバムに収録するにあたり再アレンジしてくれて、素朴で幻想的な美しさがアルバム後半の核になるような曲になりました。高口さんは様々な楽器を演奏できるオールマイティなプレイヤーで飄々としてみえますが、きっと人一倍練習して努力を重ねてる方だと思います。コミュ力が高い高口さんがいるといつも楽しい場になるので安心します。 

●高口君はこのセカンド制作にあたって第一の功労者なんですね。挙げられた「小さな夜」はオリジナル·ヴァージョンに比べ、楽器も差し替えられてスッキリした音像に生まれ変わっていました。この曲を含め7曲を手掛けていて、Snow Sheepとして関わった「星の色に似た海」を含めると実に8曲に参加しているんですね。
中でもフォークロック·スタイルの「金木犀の部屋」、ネオアコースティックでザ·スミスに通じる「かすみ草のように」はサウンド的に完成度が高いです。こういうアイディアはしのさんから高口君に具体的にリクエストするんでしょうか?

◎小林:私は楽器が下手で編曲などはできないので、編曲や演奏のリクエストはいつもふんわりしている事が多いです。自分が信頼する方に編曲や演奏をお任せしているのでほとんどの場合はイメージ以上に素敵になる事が多いです。ただ、作った曲のイメージから大きく離れてしまいそうという時だけは、自分のイメージを守ることを一番大切にして、自分らしさを残せるように依頼しています。


Small Gardenの小園さんは弊サイトでも3作品を取り上げて高評価しているクリエイターですが、これまでのしのさんの楽曲とイメージが結びつかなかったです。Small Gardenの楽曲で気に入った曲があったら具体的に挙げて下さいますか。

◎小林:「5メートルの永遠」「海の底で」を編曲してくださった小園兼一郎(Small Garden)さんは、何度かマスタリングをしていただいたことがあることや、小園さんが携わった曲が好きで編曲を依頼しました。
small gardenでは「8番目の月」がすごく好きです。小園さんの作品の優しい太陽の日差しのようなオーガニックな音作りや、反対に深夜のような暗さがあるところも好きでした。小園さんの携わる音楽の、緻密だけれど自然体で、計算されているような、されていないような、華やかなのに派手ではない不自然ではないところが好きでした。
どこか浮世離れした研究者のようなイメージの方と思っておりましたが、自分と価値観が似ているところがありとても話しやすい方でした。最初に喫茶店で打ち合わせをし、その時に自分の好きなものや苦手なものを音楽/音楽以外にも細かく聞き取りしてくださり、はじめての共作でしたが、おかげで自分の好きなイメージ以上に好きな曲になりました。
フルートやサックスの演奏もすばらしく、曲が完成に近づくたびに感動していました。「海の底で」はLilly Chilly Blue Starsというユニットでも発表した曲ですが、小園さんヴァージョンはサックスで深い海の底に落ちていくような怖さもあります。それぞれの良さがありどちらも良いので是非聞き比べていただきたいです。小園さんに編曲していただいた2曲も私の宝物になりました。自宅のレコーディングスタジオにお邪魔してボーカル録音させていただき、おいしいコーヒーやお茶を飲みながらお話できたのも楽しい思い出です。

●alvysingerの小野さんは、The Laundriesのヴォーカリスト木村孝之さんとのネオ·アコースティック·ユニットDiogenes Clubでも知られていました。ディープなギタポ、ポップス・オタク(笑)とて注目していましたが、彼がクリエイトする楽曲の魅力はなんでしょうか?

◎小林:「風は花の香りを運ぶ」編曲、「白い恋人」作編曲で参加してくれた小野剛志さん(alvysinger)は、北海道に住むネオアコ・シンガーソングライターです。何回か共演経験や、The Laundriesのサポートを一緒にしたことなどで仲良くなり、同郷の同い年ということでお互い動向を気にかけていた感じです。「いつか共作しましょう」と話していたこともあり、「風は花の香りを運ぶ」というずっと温めていた大切な曲を小野さんに託しました。
小野さんがクリエイトする楽曲の魅力は、ネオアコやギターポップや音楽に対する小野さんの愛の深さでしょうか。私は小野さんのその部分をとても尊敬しているので、「自分の曲を歌ってもらいたい」と提供してくださった曲についてはデモを聴かせていただく前からアルバム収録することを決めていました。どんな曲が来ても、絶対に好きな曲だと信じていたからです。
その小野さん作曲の「白い恋人」の歌詞を書かせていただき、「北海道」「遠距離恋愛」というテーマを与えられて作詞したのもはじめての経験で、楽しかったです。LINEビデオや電話で打ち合わせを重ね、時には雑談をし、ボーカルが難しくて試行錯誤し(50回は歌いました)、小野さんのきらめくギター・カッティングが心地よい、いつでも北海道に心を飛ばすことができる大好きな曲になりました。


リハで皆さんと一緒に歌うのが楽しくて、
 ライヴを定期的にやっている感じもあります。 
大人になってからこんな素敵な音楽仲間に出会えたことも
宝物の一つだなと思います。

●その他の参加されたミュージシャンの方々についてもお聞かせ下さい。

 ◎小林:「青い夜を浮かべて」はライヴでもよく演奏する曲で、ライブサポートメンバーの高口大輔さん、tenさん(デカパンチョ)、木本圭介さん(コルチャック)、前濱雄介さん(mint kit sand)に演奏していただきました。
tenさんは普段はベース弾きの優しい可愛らしい女性です。私のライヴではキーボードを担当してくださり、音源に近い音色を音源に可能な限り忠実に演奏してくださるので、本当にいつも感謝でいっぱいです。Tenさんがいてくださるので、音源に近いライヴ演奏ができると思っています。
前濱雄介さんはベース担当で、ムードメーカーのような存在です。最年少ですが演奏も性格も頼りがいがあり、ユニークなところが可愛らしい青年です。
木本圭介さんはアコギとエレキを2つ、担当してくださいました。切れ味のあるアコギカッティングと、エレキギターで曲に青い夜の青さと芯のある強さをもたらしてくれて感動しました。普段は優しい青年で、いてくれると落ち着きます。 
この曲が一番自分自身の心情に近いというか等身大の自分という感じがする曲なので、信頼する皆さんと一緒に今回あらためてアルバムに残しておくことができて心から嬉しいです。皆さん優しくて穏やかな方ばかりで練習も楽しいため、リハで皆さんと一緒に歌うのが楽しくて、ライヴを定期的にやっている感じもあります。大人になってからこんな素敵な音楽仲間に出会えたことも宝物の一つだなと思います。

「人魚の夜」作編曲、「うさぎのウシャンカ」作詞作曲編曲で参加してくれたササキアツシさんについては、もう20年近くの友人になります。「人魚の夜」は2018年に発売した7インチ「Havfruen nat」の収録曲、「うさぎのウシャンカ」は2020年配信でリリースした「Cold And Warm Winter」で発表した曲をリマスタリングして収録しました。どちらの曲も華やかさと切なさをいったりきたりするような素敵な曲で、とくに「人魚の夜」を好きだと言ってくださる方も多いので、今回セカンド·アルバムにも改めて収録できてうれしかったです。佐々木さんは優しくて繊細で研究熱心で、そしてすごく温かな方です。作る音楽のファンも多い方なので、佐々木さんの曲を歌えることが光栄です。

●近藤健太郎君やThree Berry Icecreamのイケミズマユミさんが参加している曲についてはいかがだったでしょうか? 

◎小林:近藤健太郎さんもSnow Sheepのメンバーで、自分にとっては家族のような存在です。近藤さん作曲の「星の色に似た海」は以前「Cold And Warm Winter」という配信アルバムでササキアツシさん(ポプリ)が編曲してくださりそちらもとても素敵ですが、今回はSnow Sheepでアコースティックな感じで編曲しました。原曲が素晴らしいので、また別のヴァージョンでも歌うことが出来て嬉しかったです。
今回の制作はSnow Sheepのグループラインで打ち合わせを進めることが殆どで、近藤さんにはいろんな局面で相談に乗っていただき、各曲のデモの段階から沢山のアドバイスをもらっていましたので、スペシャルアドバイザーとして名前をクレジットしました。
アルバム・タイトルも花の付く曲名が多いことから「風は花の香りを運ぶ」という曲の英詩タイトルにすることなども近藤さんが考えてくれました。近藤さんは一見フロントマンで華やかな感じに見えますが、実際は縁の下の力持ち的なところがあり、そういうことを自分から言わない人間性も含めて尊敬しています。自分を含めて色々な方から頼りにされていると思います。「星の色に似た海」のメロディは本当に美しく、歌詞も自分でも好きなので、自分の曲として歌わせてもらえて嬉しいです。

イケミズマユミさんは「milky pop.song」作曲、ピアノボーカル、「ライラックブライド」アコーディオンで参加してくださいました。昔から憧れの方で、ここ数年は一緒にご飯を食べに行ったり仲良くしていただけてとても嬉しく思っています。
タイトルでもある「milky pop.」はお菓子作家のmilky pop.さんのことで、イケミズさんがmilky pop.さんの誕生日に曲をプレゼントし、私がイケミズさんの誕生日に歌詞をつけてプレゼントしたことで生まれた曲です。今回のアルバムでは日本語ヴァージョンですが、 イケミズさんのソロユニットthree berry ice creamのアルバム「Three Berry Icecream」(miobell-records)には同タイトルの英詩ヴァージョンが収録されています。
レコーディングは高口さんと3人で、ピアノのあるスタジオで行いました。限られた時間の中、さくさく楽しく進むイケミズさんのボーカルやピアノレコーディングに圧倒され、立ち会う事ができて幸せでした。池水さんは夏のヒマワリのような元気いっぱい温かくてパワフルで優しい方です。



●「金木犀の部屋」や「かすみ草のように」のリード·ギターのプレイはひと際印象に残りますが、The Laundriesの遠山幸生さんでしょうか?

◎小林:はい、そうです。「金木犀の部屋」「かすみ草のように」はギターが主役の曲にしたかったので、The Laundriesのギタリスト、遠山幸生さんに弾いていただきたいとデモの段階から考えていました。「金木犀の部屋」は、まずに遠山さんにデモをお渡しして仮ギター・アレンジを入れていただき、全体の構成が決まりました。その後高口さんに遠山さんのギター入りのデモをお渡し、ドラムやベース、ピアノなどを録音していただきました。遠山さんと高口さんと一緒に話し合いながら、録音を重ねて最終的なアレンジにたどり着いた感じです。Cメロは最初ありませんでしたが、遠山さんのアルペジオを聴いてメロディが思い浮かび、付け足すことになりました。
「かすみ草のように」は疾走感のある曲にしたいという希望がありましたが、自分では具体的なイメージがわかず、こういう風にはしてほしくない、という要点だけお伝えしてデモを渡しました。高口さん一人で演奏をされた段階でもタイトで硬質な感じが素敵でしたが遠山さんのギターが入り、スミスのようなネオアコの陰鬱さと輝きが混じった感じが出たと思います。そこは、遠山さんのギターの影響力が大きいと思います。 

 The Laundriesのライヴに何度かゲスト出演させていただき、レコーディングに参加させていただいていましたが、遠山さんのギターが大好きで自分の曲でも弾いてほしいと思い、今回もお願いしました。とくに「金木犀の部屋」は、遠山さんのギターをイメージして作った曲でもあるので、デモにギターを重ねていただいた時は感動でした。 
遠山さんのご友人の青木多果さんのスタジオでレコーディングさせていただき、色々なギターでたくさんのアレンジを考えてくれました。間近で録音風景を見られたのも嬉しかったです。遠山さんは新潟にお住まいなのでなかなか普段は会えないため、貴重な制作時間も楽しい思い出です。ストイックな方なので音楽には厳しい面がありますが、だからこそ遠山さんのOKが出ると安心しますし、根がとても優しく温かい方で信頼しています。

●小林さんのアルバムやシングルのジャケット·デザインは、サウンドに通じるファンシーで幻想的なイメージが強くありますが、本作のデザイン·コンセプトについてお聞かせ下さい。

◎小林:デザインをSnow Sheepのジャケット担当してくださった荒澤文香さんにお願いすることになり、文香さんの写真も好きだったので、撮影もお願いしました。 
最初に打ち合わせをしたときにファースト·アルバムを持ってきてくださり、並べた時に違和感がないように··と色選びから相談にのってくれました。そんなところも信頼しています。アルバムのコンセプトは最初決めていなかったんですが、花の名前がつく曲名が多かったことや、文香さんが撮影時にかすみ草の花束を持ってきてくださったところから「花」に決まっていきました。私の歌詞は花や鳥や動物たちに思いを寄せ、健気に生きる喜びに憧れながら、でも誰もが持っている寂しい暗い部分にどうしようもなく惹かれることで書けている気がします。
そんな自分の陽と陰が混じる部分も、淡い色や枯れかかった花の色、絶妙なくすんだ色を使用して、文香さんが表現してくださった気がします。 フォントや裏ジャケット、盤面など細かな部分まで美しく、私の稚拙なイラストもところどころ陰影をつけて仕上げて配置してくれて、愛犬のむぎちゃんとこめちゃん、愛鳥のコザクラも登場させられましたし、宝物のような一枚になりました。 


●ソングライティングやレコーディング期間中、イメージ作りで聴いていた曲をサウンド・プロデューサーの方々も含めて挙げて下さい。




【小林しの】
 ■Chipped Nails / Noa Mal(『Impostor syndrome』 / 2021年) 
◎大galaxy trainから出ているNoa Malさんアルバム。
ビートルズ好きらしく、 前衛的だけど普遍的なメロディに憧れて
このような曲を作れたらいいなと 思って聴いていました。

■Right Side of My Neck / Faye web steri
(『Atlanta Millionaires club』 / 2019年
◎けだるげな女性ボーカル好きで、
こんな風に歌えないかと参考に聴いていました。 

 ■SMOOTH ESCALATOR / FINAL SPANK HAPPY(『Single』/ 2020年)
◎よく眠れるのでよく聴いていました。裏声の出し方が好きです。

■Alameda / Elliott Smith(『Either/or』/ 1997年)
◎エリオットスミスは心のお守りのため、疲れたら聴いています。

■Yesterday’s Children / The Automatics(『Good Girls Don’t』/ 2003年
◎ハーモニーハッチ時代の曲も収録していたため、
バンドを始めた頃に大好きで、 
たくさん影響を受けたことを思い出して。

■Good Night Song/ Tears For Fears(『Elemental』 / 1993年) 
◎5月にカバーして好きな曲になったため。
自分の中のロックな気持ちが目覚める。 

                 
【小野剛志】
■I Get The Message / IVY(『Apartment Life』/ 1997年)
◎「風は花の香りを運ぶ」レコーディング中によく聞いていました。 
エンディングのアルペジオがそれっぽいフレーズです。

■A Solid Bond in Your Heart / The Style Council
(同名シングル / 1983年)
◎「白い恋人」のサビをどうしようかと悩んでいるときに聴いて参考にしました。

■自転車に乗って、 / モダンチョキチョキズ
(『別冊モダチョキ臨時増刊号』/ 1994年)
◎「白い恋人」の最初のイメージはこの曲。 
結果ぜんぜん違う感じになったけど 
楽しくてちょっと切ない感じは参考にしました。

■ロマンス / 原田知世(『I could be free』/ 1997年)
◎「風は花の香りを運ぶ」はスウェディッシュポップ風にという
オーダーだったので原田知世さんやエッグストーンをよく聞きました。

■LOVE GOES DOWN THE DRAIN / 101 DALMATIANS
(『PERMANENT WAVES 』/ 1998年)
◎下田さんはいつでも私の先生なのです。
ギターサウンドの参考のため聞きました。


【高口大輔】
■This Guy's In Love With You / The Spiral Starecase 
(『More Today Than Yesterday』/ 1969年
◎ソフトロック系で最近好きで聴いていたお気に入りの曲です。
甘いストリングスに透明感のあるボーカル、素敵です。

■Kiss,Kiss,Kiss / オノ·ヨーコ,Peaches(『Yes,I'm A Witch』/ 2007年)
◎オノヨーコのアルバムの中でも異色な、
様々なクリエイターとコラボした作品で、
中でも好きな曲です。

■One Hundred Years / ザ·キュアー(『Pornography』/ 1982年)
◎最近はニューウェーブ系のアーティストの曲を聴くことが多く、
中でもキュアーは昔から好きで、
この曲の切迫したドラムと陰鬱なギターが好きです。


【小園兼一郎】
■ナマで踊ろう / 坂本慎太郎(『ナマで踊ろう』/ 2014年)
◎数年前から坂本さんの音楽は僕の一部と化すようになっているので、
不定期ローテーションで聴いています。
去年の野音も最高でした。

■Magical Mystery Tour / The Beatles(『Magical Mystery Tour』/ 1967年)
◎去年から始めたフルートですが、楽曲の中でどう効果的に用いていくか
ということを沢山のアーティストから学ばせてもらっていますが、
そのうちの一枚のアルバムです。

■Oncle Jazz / Men I Trust(『Oncle Jazz』/ 2019年)
◎このバンドはYouTubeで知りました。
落ち着いた感じのボーカルが気持ちよくて、
僕の中ではしのさんと被るものが あったので制作前に 少し聴いていました。

■kom hem / Anna Jarvinen(『samling』/ 2013年)
◎この方はしのさんに教えていただいて、YouTubeで聴きました。
北欧の方らしいのですが、僕の好きなハニャラニさんと
気質が似ているところがあって気持ちが良かったです。

■Everytime/ boy pablo(『Roy Pablo』/ 2017年)
◎落ち着いていながらもとても熱量のある雰囲気が好きなバンドです。
今回しのさんの楽曲をアレンジしている最中にボーイパブロの音の雰囲気が
僕の中に出てきたので、思い出すように聴いていました。



●リリースに合わせたライヴの予定が判明していればお知らせ下さい。

◎小林:2月18日(土)に渋谷7th floorにてレコ発ライヴを行います。Snow Sheep、three berry icecreamが共演です。
12時開演、是非来ていただけたらうれしいです。アルバムを先行発売します。



●最後に本作『The Wind Carries Scents Of Flowers』のアピールをお願いします。

◎小林:自分の好きな「繊細で可憐で可愛らしい、だけどどこかくすんだ世界観」を、自分1人では不安定なままにしか存在させられませんが、それをしっかりとした演奏やデザインで固めてもらえて、形に残せたのが今回のアルバムだと思っています。
音楽的にはやっぱりキラキラとして陰鬱なギターサウンドが好きなこともあり、ネオアコやギターポップがベースになっている曲が多いです。また、ソフトロックやボサノヴァ、ドリームポップ等の要素も感じられると思います。
一人の時間にそっと聴いてもらえるような作品になれたら嬉しいです。

(インタビュー設問作成、本編テキスト:ウチタカヒデ








2024年2月10日土曜日

2本のリードギターの旋律がきれいにハモる ギターハーモニー、最近、あまり聴かないよね?

2本のリードギターの旋律がきれいにハモる ギターハーモニー、
最近、あまり聴かないよね? 

*上段左から:『J.BOY』浜田省吾, SMR, 1986
/『RAINBOW CHASER』伊藤銀次, BELLWOOD RECORD, 2019
/『ANOTHER NIGHT』Wilson Brothers, Atlantic Records, 1979/『Airplay』Airplay, SME, 1980
/『Hotel California』Eagles, ASYLUM RECORDS, 1976
/『Don’t Look Back』〈EP〉BOSTON, EPICソニー, 1978
/『Destroyer』KISS, Casablanca Records, 1976
/『The Boys Are Back In Town』〈EP〉Thin Lizzy, Vertigo Records, 1976
/『Don’t Tell Me You Love Me』〈EP〉Night Ranger, CBSソニー, 1982
/『愛を止めないで』〈EP〉オフコース, 東芝EMI, 1979
/『THE SNOW GOOSE』CAMEL, GAMA RECORDS, 1975
/『6 kinds 6 sizes』PARACHUTE, Agharta, 1980 


 ツインギターがきれいにハモる演奏を、最近の楽曲ではあまり聴かなくなってしまった気がすると、数年前から思っていた。気のせい?ではなくて、おそらく、ギターがふたりいるバンドが少なくなったこと(ギター、キーボード、ベース、ドラムという編成が増えた?)、あとは流行や軽音楽の全体の流れもあるのかな。

 私はバンド経験があるものの、担当がボーカルやフルートだったので、ギターには詳しくないが、バンドが奏でる音として、やっぱり、ギターは好きだし、このギターハーモニーも大好きで、WebVANDAでいつか書いてみようかと考えていた。
 今月の寄稿で書こう!と思ったきっかけは、今年1月6日の浜田省吾のコンサート「SHOGO HAMADA ON THE ROAD 2023」(さいたまスーパーアリーナ)で聴いた、この曲。


 ■浜田省吾「J.BOY」(1986年)

 町支寛二による小気味よいギターリフがイントロの「愛の世代の前に」で始まったライブは、サブタイトルの「Welcome back to The Rock Show youth in the “JUKUBOX”」の通り、ビートのきいたロックから、胸にしみるロッカバラードまで、懐かしい曲が続いた。そしてコンサート終盤に演奏され、おぉ、そういえば、これもツインギターによるハモりがかっこいい曲だ~と思った「J.BOY」。


 浜田省吾のライブに行ったのは、実は初めてだった。もちろん、ヒット曲やドラマで使われた曲など、昔から知っている曲、好きな曲もあったけれど。
 きっかけは、このWebVANDAとのご縁でもある書籍、『音楽ライター下村誠アンソロジー永遠の無垢』の制作。本に昔の音楽雑誌の記事を転載するにあたり、各ミュージシャンやグループの事務所等にご相談の連絡をしたのだが、その際、あらためて、ミュージシャンの音楽を聴き直していた。 
 転載した記事の多くは80年代。当時、聴いていた感覚と、いまの年齢で聴く感覚とでは、違うものもあったのか、浜田省吾の音楽がすーっと感情に入り込んできて、あぁ、こんなすごい歌い手だったのかと再認識。ちょうど、下村誠の本をつくっている最中の昨年夏に公開された映画「A PLACE IN THE SUN at 渚園 Summer of 1988」も観に行き、誠実で、説得力のある歌声に圧倒されて、すっかりファンになってしまったという、浜省ファン初心者である。 

  実際にライブを観ていたら、浜田省吾の歌声はもちろんのこと、各プレイヤーの音がダイレクトに感じられて、すべてが本当にかっこよかった。さいたまスーパーアリーナでの出演ミュージシャンは、町支寛二(Gt./Vo.)、長田進(Gt.)、美久月千晴(Ba.)、小田原豊(Dr.)、古村敏比古(Sax.)、福田裕彦(Org./Syn.)、河内肇(Pf.)など。 

 「J.BOY」の話からだいぶそれてしまった。でも、この曲に説明は不要ですね。ということで、次の曲にいきます。


 ■伊藤銀次「誰もがきっと~想い出に守られて」(2019年) 

 今回のテーマである【2本のリードギターの旋律がきれいにハモるギターハーモニー、最近、あまり聴かないよね?】を考えるようになったのは、2019年12月に発表された伊藤銀次のアルバム『RAINBOW CHASER』の1曲目、「誰もがきっと~想い出に守られて」がきっかけだった。CDを買って、最初に聴いたとき、わぁ~! ツインギターのハモりだ、こういうの、いいなぁ~、なんか懐かしい~と笑顔になったのを覚えている。

(*「誰もがきっと~想い出に守られて」は2曲目。
4分28秒頃から始まります)
 
  映像はTOKYO MXの番組でのスタジオライブ。
 出演メンバーは、銀次さん12月24日の誕生日の頃に、吉祥寺のスターパインズカフェで毎年開催されているライブ「伊藤銀次のWINTER WONDER MEETING」での出演者とまったく同じメンバー。上原“ユカリ”裕(Dr.)、六川正彦(Ba.)、細井豊(Key.)、田中拡邦(Gt.)。
(*アルバム『RAINBOW CHASER』では、キーボードだけが西本明による演奏で、他はライブメンバーと同じ)

 この映像を見つけたとき、「WINTER WONDER MEETING 2019」で聴いた、伊藤銀次・田中拡邦、ふたりのツインギターによる、ハモりの演奏が観られるか!と、ウキウキしたのだが……銀次さん、リードギター弾いてない……。
 CDでは、イントロや間奏のスライドギターの部分は、ふたりの演奏がきれいにハモる、ツインギターとなっていて、この年のライブでも、ふたりで弾いていて、それがとてもよかったんですよ~。
 ツインリードのハモりも、全体のサウンドもさわやかで、70年代後半~80年代前半のアメリカ西海岸サウンドっぽい雰囲気もあり、とてもいい感じなので、ぜひ公式チャンネルのほうで聴いてみてくださいね。「伊藤銀次 誰もがきっと」で出てきます!

 ちなみに、「伊藤銀次のWINTER WONDER MEETING」でギターを弾いている田中拡邦は、このあと2020年、2021年も出演して、銀次さんとツインギターで、いい音を聴かせてくれていたのだが、2022年は自身のバンド「ママレイドラグ」のレコーディングのために出演されず、2023年はアルバム『OVERTURE』が完成し、発売された時期(12月20日リリース)と重なり、やはりお休みだった。
 銀次さんがギターひとりで、少しさみしそうだし、田中サンのギター、私も好きなので、今年の「伊藤銀次のWINTER WONDER MEETING」には出てほしいなぁ。

 それはともかく。 
 銀次さんの「誰もがきっと~想い出に守られて」をライブで聴いて、鮮やかによみがえってきた曲がある。大学1年生のときに聴いて、「ギターのハモりって、なんてかっこいいんだろう」と思うようになった、最初の曲。


■Wilson Brothers 「Take Me To Your Heaven」(1979年)

 中学の頃、同級生の男の子たちのなかには、ギターを買ってもらって、ディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」なんかを練習している人がいた。うちは、家が厳しかったので、ロック=不良の音楽、みたいな感じで、ギターを買ってもらうなんて、夢のまた夢。 でも、もともと歌うことが好きだったから、レコードやラジオを聴いては、自分の部屋でよく歌っていた。どうして、ギターはダメで、歌うのはいいんだろうね。母の感覚はいまも理解できない(笑)。 

 高校では陸上部に入ってしまって、1~2年は陸上漬けの日々。3年になり部活を引退し、寄り道できる放課後を手に入れた私は、下北沢にかつてあった喫茶店「NOISE」に寄って、お店でかかる音楽を聴いたり、バンドをやっている同級生の男の子たちの話を聞くにつけ、「大学に行ったら、バンドやりたいなぁ」という思いが強くなっていく。

 そして、1981年、大学に入学してすぐに入部した軽音楽部で、たまたま最初に練習風景を見学した先輩バンドが演奏していたのが、この曲、「Take Me To Your Heaven」だった。


 あまりのかっこよさ、フレーズの美しさに、目から……ならぬ、耳からウロコ状態。ウィルソン・ブラザーズの演奏を観たことはないが、この、目の前で演奏を聴いた、観た、という経験は大きかった。先輩バンドが練習するのを何度も観たし、春の定期演奏会では、先輩たちの演奏を、それこそファンの気持ちで聴いていたと思う。

 ウィルソン・ブラザーズは、スティーヴ・ウィルソン(兄/Vo./Gt.)とケリー・ウィルソン(弟/Vo./Gt./Key.)による兄弟ユニット。ふたりの歌声と、兄弟ならではの声質やテンションがぴったり合ったハーモニーもいいんだなぁ。
 そして、この印象的なギターを弾いているのは、スティーヴ・ルカサー。スタジオミュージシャンとして活躍していたスティーヴは、1977年にTOTOを結成、翌78年にデビューしたばかり。生まれ年から計算すると、この頃、22歳。のびやかなギターの音がみずみずしくて、すごくいい。


 さて、そんなわけで、2本のリードギターによるハーモニーがかっこよくて印象的な曲を、時代をさかのぼって探してみることにした。自分が持っているレコードやCDを中心に聴いていき、そこから記憶をたどって思い出して、時にYouTubeで確認するなどして、計11曲+1曲をセレクト。


■Airplay 「It Will Be Alright」(1980年)

 真っ先に、「絶対にツインギターのハモりがあったはず!」と確信を持って聴いたのが、エアプレイのアルバム『ロマンティック』(原題は『Airplay』)。 

 ところが、1曲目の「Stranded」から、あれ? ツインギターのハモりじゃなくて、これ、コードで弾いてる……とか、キーボードの和音のアレンジが超絶かっこよかったり、あるいは、繊細かつ大胆なコーラスワークの多用とか、とにかく、音の巧みな重なり、ハーモニーがアルバムの楽曲全体に施されていたのだった。曲をつくり、アレンジしているのは、デイヴィッド・フォスターとジェイ・グレイドンだものね……。それが、「ツインギターのハモりがあったはず」の印象につながったというわけだ。しくしく。

 が、しつこく何度も聴いて、「これは、リードギター2つの音のハモりのフレーズだよね」と思えた曲が2曲あったので、そのうちの1曲「It Will Be Alright」ご紹介する。


 この曲のほかにも、ギターの音の重なりと流れるようなフレーズが印象的な曲がいくつもあって、「2本のギターによるハモりっぽいけど、違うかも、1本のギターの音かも……」という感じで悩ましかった。なにしろ、レコーディングのギタリストにはジェイ・グレイドンのほかに、スティーヴ・ルカサーがいる。不可能なフレーズ、弾き方なんて、このふたりにはなさそうだもの。 

*リリース以降40年以上にわたって語り継がれる伝説のバンド、名盤だが、一応、簡単に参加メンバーの紹介を。
 エアプレイは、デイヴィッド・フォスター(Key./Background Vocals)、ジェイ・グレイドン(Gt./Vo./B.Vo.)、トミー・ファンダーバーク(Vo./B.Vo.)。レコーディングには、TOTOから、ジェフ・ポーカロ(Dr.)、デイヴィッド・ハンゲイト(Ba.)、スティーヴ・ルカサー(Gt.)、スティーヴ・ポーカロ(key.)。また、このアルバム制作に参加したあとシカゴに加入するビル・チャンプリン(Vo.)もいる。

 さて、1つの曲にこれだけ長く書いていると、10曲紹介するのに、ものすごく長くなってしまうので、サクサクといきます! 


■Eagles 「Hotel California」(1976年)

 アルバムの解説に、タイトル曲の「ホテル・カリフォルニア」について「おそらくロック史に残る名曲として、長く人々に記憶されるだろう」と書かれている。ベタすぎる感じがして、選曲を避けたくなる気持ちもあったが(あまのじゃく……w)、イントロの12弦ギターの音色、ドン・フェルダーとジョー・ウォルシュ、ふたりによるギターソロ、ギター2本の音が重なるときのせつない音色の感じなど、今回の企画ではやはりはずせない1曲。 




■BOSTON 「Don’t Look Back」(1978年)

 レコード棚の奥に、フォリナーのシングル「つめたいお前(原題:Cold As Ice)」(1977)を見つけて、「シングル盤を買うほど好きだったっけ?」と首をかしげつつも、シングルジャケットの写真を見たら、ギタリストがふたり。これは……!と思い、聴いてみたが、ツインハモりギターではなかった。残念。でもフォリナーのシングルをきっかけに、記憶の扉が開いていく。まず思い出したのがBOSTON。

 「BOSTON! More Than Feeling!(1976年) ぜったいギターがハモってる!」と、これはレコードを持っていないので、YouTubeで聴いてみた。ハモってる、ハモってる♬
 ……が、私はこっちの曲のほうが好きだったなぁ~ということで、「Don’t Look Back」を。


 Bメロのバックでギターが弾くフレーズが印象的。ここの部分のメロディラインが妙に胸に残るんだなぁ。そういうフレーズって、ないですか? うちにレコードはないし、この曲のこともすっかり忘れていたので、何十年ぶりかで聴いたけれど、「そうだよ、私、この曲の、このギターのフレーズが好きだった……!」と。 途中まではユニゾンで弾いているが、エンディング部分になると、2本のギターでハモるように弾く。芯のある太い音なんだけど、どこか優しい音色で、大好きでした~。



■KISS 「Detroit Rock City」(1976年)

 そして、KISS。KISSの曲では、「ハード・ラック・ウーマン」(1976年)が一番好きだったかな。まだミュージックビデオは一般的ではなく、あの独特なメイクは『ミュージックライフ』などの音楽雑誌で知ったような気がする。人気ありましたね。この頃、私は中学生だけど、学校の洋楽好きのなかで、クイーン派、キッス派、エアロスミス派とか、分かれていたと思う。 

 KISS・ツインギターといえば、この曲、「Detroit Rock City」。 武道館のライブ映像なんかもあるのですが、スタジオ録音のほうが、ツインギターのハモリの音がきれいなので、こちら(アルバム版)を。



■Thin Lizzy 「The Boys Are Back In Town」(1976年)

 YouTubeの助けも借りながら(笑)、思い出していく。シン・リジィのこの曲に行きついたときは、思わず小さなガッツポーズ。 というのも、ギターのハモりがかっこいい曲を探して、レコードやCD、YouTubeで探してみるも、ソロはひとりで弾いていたり、ユニゾンだったり、シンセサイザーだったり、「あぁ、また違った……。(WebVANDAの管理人の)ウチさんに『10曲セレクトしますよ!』なんて言ってしまったのに、10曲、無理かも……」と、少し気落ちしていたからだ。


 シン・リジィは、1969年、フィル・ライノット(Ba./Vo.)を中心に結成されたアイルランド出身のバンドで、1974年からは、ギターにゲイリー・ムーアが加わった。 
 この「The Boys Are Back In Town」が発表された1976年当時、ゲイリー・ムーアはいったんバンドを離れていたが、1977年、負傷したギタリスト、ブライアン・ロバートソンの代役としてツアーに参加。翌78年には正式に復帰(その後、再び、離脱…)。 
 YouTubeでこの曲の映像をいくつか見たなかで、ゲイリー・ムーアが加わって演奏している、このステージのギターソロ、ギターハーモニーが一番かっこよかったので、この映像をセレクト。


 ■Night Ranger 「Don’t Tell Me You Love Me」(1982年)

 80年代に入ると、映像の時代になってくる。 「ベストヒットUSA」(テレビ朝日系)が始まったのが1981年4月4日。アメリカで、MTVが開局し、24時間ポピュラー音楽のビデオクリップを流し続ける音楽専用番組の放送が始まったのが、 1981年8月1日。 

 「ベストヒットUSA」で、ナイトレンジャーの「Rock Me America」(1983年)を観た記憶がある。いま見ると、ミュージックビデオの構成がまだまだシンプルで、ちょっとほほえましい。ナイトレンジャーはツインギターのバンドだが、この曲でのギターのハモりはなかったので、懐かしい~と思いながらも、ツインギターによるギターハーモニーのある曲を探した。
 それが、「Don’t Tell Me You Love Me」。



 やぁ、かっこいい! かっこいいよ。
 そして、ここまでにあげたバンドに共通していえることなのだが、コーラスワークが多彩で、ていねいで、心地よい。男性による高音域のコーラスのラインはハーモニーに華やかさを添えるし、多くのバンドで、メンバーのほとんどがコーラスに参加していて、みんなで音楽をつくるんだ!とでもいうような精神性がものすごく伝わってきて、本当に楽しかった。

 ナイトレンジャーの記事の最初に、映像の時代に入った、と書いた。 「ベストヒットUSA」以前、中学の頃はAMラジオと『ミュージックライフ』が主な情報源。聴く番組はだいたい決まっていたが、たまにラッキーな特別番組に出くわすこともあって、あわてて、カセットテープレコーダーをラジオの前に置いて、家族に「録音してるから、静かにしてね!」と頼んで、録音したものだった。 

 あ、ラジオ関東の「全米トップ40」も忘れてはいけない! 
 高校になると、FM雑誌も創刊されてきて、情報源がFMラジオにも広がっていく。この頃には、ラジオとカセット、レコードプレイヤーが一体になったものを買ってもらっており、『FMレコパル』を買って、チェックしては、あれこれと録音していた。

 そんな想い出の中から、オフコースを。


■オフコース「愛を止めないで」(1979年)

 ある日、聴いていたAMのラジオ番組で、「今日はオフコースの皆さんをお招きして、スタジオミニライブをお届けします」といったアナウンスがあった。あれは、「5人になる」というタイミングだったか、「5人から1人減る」というタイミングだったか。どっちだったか忘れてしまったのだが、いずれにしても、あわてて録音したのだった。 カセットテープはもうほとんどを処分してしまったものの、何本かは捨てずに取ってあり、このオフコースのテープも捨てていないはずと思ったが……今回、探してみても、見つからなかった。残念。
 だから正確にはわからないが、「5人」がキーワードだったことは間違いがなく、ギターがふたりいた時代。おそらく、1979年か1980年のことだったはずだ。

「愛を止めないで」には、2番のサビが終わったあとにギターソロがある。きれいにハモる、やさしいツインギターの音が心地よい。




■CAMEL 『THE SNOW GOOSE』より「Rhayader Goes To Town」(1975年)

 この『THE SNOW GOOSE』という作品は、CAMELのメンバーが、アメリカの小説家、ポール・ギャリコによる小説『スノーグース(白鴈)』にインスパイアされてつくったというアルバム。物語の構成と同じ流れで、楽曲もすすんでいく。 

 ここに貼ったのは、主人公の画家ラヤダーのことを説明している場面を表現した「Rhayader」と、そこから続くストーリー、ラヤダーが2週間に1度、食料や日用品などの買い出しのために町にでかける場面を音楽にした「Rhayader Goes To Town」。

 CAMELのギタリストはひとりなので、オーバーダビングだと思うが(ライブ映像では単音のソロだった)、とてもきれいな旋律。プログレの曲にはなじみがない方がいるかもしれないが、ぜひ聴いてみてください。 

「Rhayader」(フルートが美しい小曲)


「Rhayader Goes To Town」(2本のギターの音によるハモりあり)


 実は、自分の大学とは別に、某大学のロック研に在籍していたことがある。ブリティッシュ・ロック研究会。そこに、CAMELのコピーバンドがあって、そこでフルートを吹いていた。そういう意味でも、懐かしい曲。 



■番外編:PARACHUTE 「HERCULES」(1980年)

 この曲のギターはハモってない。松原正樹、今剛というふたりのギターの音が同じメロディラインを弾くときには、ユニゾンかオクターブだ。
 歌でもそうなのだが、ユニゾンって、すごく難しい。でも、彼らの演奏は、ライブであっても、本当に微妙で繊細な間合いまで、ぴったり。ギターだけじゃなくて、すべての演奏者の――。それがここまでのレベルでビシっと決まるところ、1つの曲をつくりあげるメンバーのこころも1つになっている感じも伝わってきて(一流のミュージシャンに向かって、私が言うようなことじゃないけど……)、それが痛快で、気持ちいい。

 そんなこともあって、本来なら今回の企画には入ってこない曲なのだが、これだけは入れたいと思った次第。


 あともう1つ理由がある。
 この曲を知ったのは、パラシュートのレコードで聴いたのではなく、大学の音楽サークルの同級生のバンドの演奏で初めて聴いたこと。サークルのたまり場で、ギターの人が練習していたかもしれない。 今回、3曲目に紹介したウィルソン・ブラザーズの「Take Me To The Heaven」が、レコードやラジオではなく、先輩バンドの演奏で知ったのと似ているパターン。 

 大学に入って最初は軽音楽部に入ったが、半年ほどでやめて、他の音楽サークルに移った。カバー曲もやるが、オリジナル曲をつくるのがメインのサークルだった。
 パラシュートのカセットテープを持っていた記憶があるので、この曲が入ったアルバムを誰かから借りて、録音したのかなぁ。そのあたり、記憶があやふやだけど。

 緻密なのに、自由。自由でダイナミック。この曲を実際に聴いたら、リズムがパシっと決まるところなんて、快感だったろうなぁ。松原正樹さんが亡くなってしまったので、もう、聴くことは叶わないけど、一度でいいからライブで聴いてみたかったな――。



 さて、【2本のリードギターの旋律がきれいにハモるギターハーモニー、最近、あまり聴かないよね?】の企画、いかがでしたか。他にもこんな曲があるぞー!ということがあれば、ぜひ、教えてください。何曲か集まれば、第2弾もできますね。 
 さぁ、次はなにを書こう。2か月後にまたお会いしましょう。 


フリーのライター・編集者。OLを経て1991年からフリーランス。
下北沢や世田谷区のタウン誌、雑誌『アニメージュ』のライター、『特命リサーチ200X』『知ってるつもり?!』などテレビ番組のリサーチャーとして活動後、いったん休業し、2014年からライター・編集。ライター業では『よくわかる多肉植物』『美しすぎるネコ科図鑑』など図鑑系を中心に執筆。
主な編集書には『「昭和」のかたりべ 日本再建に励んだ「ものづくり」産業史』『今日、不可能でも 明日可能になる。』、編著書に『音楽ライター下村誠アンソロジー永遠の無垢』(2023)がある。

2024年2月3日土曜日

2023年の収穫

 大谷翔平のLos Angeles Dodgers移籍報道は年末のメディアを席巻し、日米の野球ファンを驚きと興奮に包んでいる。Dodger StadiumはWilson兄弟実家があったHawthorneから車で数十分の距離に位置する、実父Murryも野球観戦にあしげく通ったのだろうか?
 MLBファンなら周知の事実であるが、L.A Dodgersは戦後1950年代中葉に東海岸から移転した事実がある。New YorkはBrooklynに本拠地を置いていたBrooklyn Dodgersは、長い間地元の誇りとして栄光を築いてきたが、1950年代半ばになると、球団の経済的な課題や古くなった球場の問題が表面化する。オーナーのWalter O'Malleyは、これらの課題に立ち向かうため、新天地への移転を決断せざるを得ない状況に直面した。1957年、O'Malleyは球団をLos Angelesに移転させると発表する。1955年に地元New Yorkでワールドシリーズの栄冠に輝いたにもかかわらず、当時のスポーツ界において移転は異例の出来事であり、ファンやメディア、地元ニューヨーカーたちに衝撃を与え、地元のファンは喪失感や悲しみに包まれ、この出来事は「Brooklynの悲劇」として知られている。
移転により、球団は急速にファンを魅了し、地元の支持を集めていく。DodgersはLos  Angelesに本拠地を置いたことで、西海岸の熱狂的な野球ファンとの結びつきを深め、MLBの規模拡大の一翼を担うまでになる。1962年スタジアム開場後、ドジャースは数々の成功を収め、遂に1963年にはワールドシリーズで制覇を果たした。球団はLos Angelesの象徴として、多くの名将や名選手が在籍し、大谷の移籍により栄光ある瞬間をこれからも築くことだろう。

1962年4月10日開場記念バッジ、我らのThe Beach Boysといえば、
Capitolデビューはまだまだ先で
デモテープ鋭意作成中の浪浪の身であった

 Dodgers移転発表時はBrianにとっては10代後半で、野球やフットボールに明け暮れた年頃から次第に音楽へ軸を移しつつあった時期に重なる。The Beach Boysの立身出世物語とDodgersの発展とは奇しくも一致する。実際には発展していくLos Angeles近郊の都市労働者増加と消費の拡大(Wilson家 Love家の家運と一致する)を元にしたO'Malleyの冷徹な計算が背景にある。Dodgersの成功とともにO'Malleyは西海岸の不動産投資で成功する。ならばBrianもDodgersの大ファンでは?と勘ぐってしまうが、ファンを公言しているコメントはない。唯一確認できるのが自伝『I am Brian Wilson』( 2016)でのコメントだ。意外だったのが「ホントはねDodgersファンじゃないんだよね、僕はYankeesファン」とあるではないか、Brianは野球の腕に自信があったようで特にセンターを得意とした。Mickey Mantleら名選手を擁するYankeesに憧れがあったようだ。

本書中第二章で野球話を披露している

 Mikeのコメントも確認できないが、DodgersとThe Beach Boysは西海岸の大きなシンボル同士!
 経営者としてはこのブランディングを利用しない手はない!と考えたのだろう。ソロ作『Looking back with Love』(1981)のジャケットに佇むのはDodgersキャップのMikeがそこにいる。


 さらに2012年とはDodger Stadium開業50周年であった。同時にThe Beach BoysのCapitolデビュー50周年でもある、そこで開業とデビュー記念イベントをジョイントで開催しDodgersの歴史とThe Beach Boysの歴史を結びつけることにちゃっかり成功している。

Brian2008年のイベントでの勇姿

2012年Dodger Stadiumにて

 かと思えば、1980年代にSan Francisco Giantsの試合にも出演しライブを開催している。San Francisco GiantsといえばDodgersとライバル関係にあり、我が邦の巨人阪神の関係に近いものがある。実は球団の東海岸から西海岸への移転はGiantsの方が先鞭をつけている、いくらなんでも節操無さすぎでは.....と思ってしまうが、90年代以降はDodgersに寄せていることが多い。

こちらはGiantsのユニフォームで登場

San Francisco Giantsで活躍した選手で同姓同名のBrian Wilsonがいる、長い黒髭がトレードマークで名前のみならず風貌が70年代のThe Beach Boysにいても全く違和感がなくファンからも親しまれた。ちなみに50周年ツアーの際ゲストで参加しピアノまで披露している。

Giants時代のBrian Wilson


閑話休題

極私的蒐集譚となるが、ついにBrian Wilson関連盤のうち長年探し求めていた盤に巡り会うことができた。
Dino, Desi & Billy 「Lady Love」(Reprise 0965 1970年)

Brian Wilson関連盤は必ず正規盤とプロモ盤両方を蒐集することとしていたが、本盤のみ長年正規盤が入手できずに歳月は流れ三十余年。プロモ盤は容易に入手できたが正規盤にはなかなお目にかかる機会がない、つまりは売れなかったということか?それからというもの遭遇してもプロモ盤のみの歳月が続き、昨年(2023年)にあっけなく発見することができた。流れ流れて何故かデンマークの業者から格安で入手できた、円安と原油高で本体価格より送料の方が遥かに高いのは仕方がない。
往時、音楽愛好者たちは、デジタルの潮流が押し寄せる前に、アナログのレコードに魅了され、その手に入れるために歩んだ道には数々の困難がひそんでいた。今日の利便性とは異なり、当時のレコード収集は真の冒険であったと言ってもいいだろう。デジタルの世界が未だ顕れぬ時代、音楽情報は乏しく、音楽雑誌やラジオ、友人たちの口コミが唯一の手段であった。新しいリリースや稀少なアルバムについての情報を得るには、膨大な時間と労力を費やす必要があった。当時はオンライン購入がなく、レコード店が唯一の頼みの綱だった。しかし、未知のアーティストの作品を見つけることは極めて難しく、しばしば遠方へ足を運ぶ必要があった。当時のコミュニケーション手段は、手紙や電話が主要なものであり、友人や仲間との交流は限られていた。他のレコード収集者と情報を共有し、アイテムのトレードや販売を行うにも、手書きの手紙や電話で行うことが一般的であった。これらの手間と時間をかけたコミュニケーションが、収集者同士の強固な絆を生み出した。情報の遅れや不確実性が潜む中で結ばれる友情は、現代の瞬時のコミュニケーションにはない特別なものであった。
筆者も米国に存在していたサーチサービス業者に依頼するもことごとく梨の礫、さらには米国の雑誌にトレードやウォントリストを数度掲載するも全くお門違いの問い合わせがほとんどであった。中には大コレクターにつながる妙縁もあり収穫がなかった訳でもなかったが。余談だが
ようやくコレクションに加わった正規盤(右)

一番多かったのは
トレードの依頼だった、いわゆる物々交換だ。ゲームソフト数本と貴重な盤と交換することもあった、時代によっては当時出たてのポケモンカード数十枚とトレードしたこともある。アイテムの詳細情報を得ることも極めて難しかった。写真や詳細な説明が容易に手に入らないため、手に入れたアイテムの実物を確認することは難しく、信頼性を確保することは至難の業であった。特に遠方のレコードショップや収集家から購入する場合、自身の判断力や信頼性のある情報の入手が求められる。それが難航することは少なくなかったが、その過程もまた、レコード収集の一環として楽しいといえば楽しい。ネット時代は検索が中心となる、Brian Wilson memorabiliaなどで検索すると幾百のSan Francisco GiantsのBrianの髭面が延々と表示されたのはいい思い出だ。
これらの試練を経て手に入れたレコードは単なる音楽のメディア以上の価値を持ち、30年以上もの歳月をかけて追い求めたレコードが手に入った瞬間、その感慨深さは言葉に尽くし難い。