2020年7月19日日曜日

名手達のベストプレイ第7回~スティーヴ・ガッド


出典 :www.drummerworld.com

 孤高のドラマーという名が相応しいスティーヴ・ガッド(本名:Stephen Kendall Gadd)は、1945年4月9日にニューヨーク州北西部、オンタリオ湖岸に位置するロチェスターで生まれた。
 彼が初めてドラムに触れたのは7歳で、軍楽隊でドラマーをしていた叔父の勧めでレッスンを受けるようになる。ドラマーとしての才能を開花させたガッドは、ロチェスターにあるイーストマン音楽学校に入学しクラシックの打楽器奏法を身につけ、校内では木管アンサンブル・バンドで演奏し、夜はジャズ・クラブでチック・コリア、チャック・マンジョーネなどプロ・ミュージシャン達とのセッションを早くも始めていたようだ。
 イーストマン音楽学校卒業後、徴兵により陸軍の軍楽隊に3年間所属し除隊後にはロチェスターに戻りビッグ・バンドに参加していた。1972年になるとイーストマン時代にルームメイトだったトニー・レヴィン(ピーター・ガブリエル・バンド、キング・クリムゾンetc)、マイク・ホルムスとトリオを組んでニューヨークに進出するが成功に至らず解散する。その後スタジオ・ミュージシャンとして幅広く活動するようになり、1973年にはチック・コリアのReturn to Foreverに短期間所属した後、アル・ディ・メオラのElectric Rendezvous Bandに参加するなどジャズ~フュージョン・シーンでも頭角を現し、CTIレコードや同系列のKUDUのアルバムなど多くのセッションで常連となっていく。
 同時にバリー・マニロウやジム・クローチ、サイモン&ガーファンクル解散後ソロに転じたポール・サイモンなどシンガー・ソングライター系のセッションからのラヴ・コールにより、彼の技巧的且つ曲を演出する多彩なプレイは評判になっていくのだった。

 1976年にはソウル系プロデューサーのヴァン・マッコイのセッションに参加したニューヨーク派のミュージシャン達(ゴードン・エドワーズ、リチャード・ティー、エリック・ゲイル、コーネル・デュプリー、クリスパーカー)と共にフュージョン・バンド“Stuff”を結成し5枚のアルバムを残した。
 手練のミュージシャン集団として1970年代後半から1980年代前半にかけて様々なレコーディング・セッションに参加し、名盤請負人衆として音楽業界でも認識されていく。その後Stuffは各メンバーの多忙さにより自然消滅するが、1986年にはガッドを中心にリチャード・ティー、コーネル・デュプリーにベーシストのエディ・ゴメス(ビル・エヴァンス・トリオetc)を加えてThe Gadd Gangを結成してフュージョン・シーンを再び盛り上げる。
 近年ではポール・サイモンの他、エリック・クラプトン、ジェームス・テイラーなどレジェンド達のレギュラー・ドラマーとしてレコーディングやツアーに参加して、その唯一無二のプレイを聴かせている。
 
 ここではそんなスティーヴ・ガッド氏を心より敬愛するミュージシャン達と、彼のベストプレイを挙げてその偉業を振り返ってみたい。今回は参加者の内ドラマー(経験者含め)が3名おり、テクニカル面でも解説してくれた。
サブスクリプションの試聴プレイリスト(3時間32分!)を聴きながら読んで欲しい。

 出典 :www.drummerworld.com


【スティーヴ・ガッドのベストプレイ5】
●曲目 / ミュージシャン名
(収録アルバムまたはシングル / リリース年度)
◎選出曲についてのコメント
※管理人以外は投稿順により掲載。



Drums & Percussion 奏者/じゃむずKOBO 代表/S.A.D.ドラムスクール 講師


●Rocks / 深町純 (『Jun Fukamachi & The New York All Stars Live 』/ 1978年)
◎1978年9月の後楽園ホール&郵便貯金小ホールでのライブ盤。
1:03から始まりを告げるリズムにワクワクします。
スタープレイヤーがこんなにも集まっちゃって凄い。。。
個人的にはGaddのハイハットのキレが大好きです。

●September Second / Michel Petrucciani,Steve Gadd,Anthony Jackson
 (『Trio in Tokyo 』/ 1999年)
◎このアルバムで1曲を選ぶのは苦労しました。
ドラムがこんな綺麗にメロディへ絡みハーモニーを作ることができるんだ!と感激した曲です。
3:10からの激アツプレイに心が踊らされたのは僕だけじゃないはず!

●Layla/ Eric Clapton (『One More Car,One More Rider』/ 2002年)
◎人生で一番聴いているライブ盤。
全編に渡りドラムってなんて気持ち良いんだと感じさせてくれます。
その中でも有名な「Layla」は曲中の素晴らしさはもちろんですが、お待ちかねのアウトロでの”ドドパ~~~~~ン”、、、最高です。

●She Curves,She Curves / Michael Blicher,Dan Hemmer,Steve Gadd 
(『Blicher Hemmer Gadd』/ 2014年)
◎小気味の良いリズムから始まりフルートとオルガン、ドラムのご機嫌なサウンド。
後半のドラムソロでは絶妙なハイハットワーク、歌心溢れるフレージングにドラム小僧はニンマリするのでした。

●Somehow It’s Been a Rough Day  / Ai Kuwabara with Steve Gadd & Will Lee 
(『Somehow,Someday,Somewhere 』/ 2017年)
◎アルバムの始まりを告げる1曲。桑原あいの繊細で軽やかなピアノプレイからWill Leeの腰のあるベースが続き、Gaddの軽快なブラシワークがメロディを乗せてゆく。
3人の”生きる音”を楽しめる素晴らしいアルバムです。


Layla / Eric Clapton



サックス吹きでもありベーシストでもあります。


●You Make Me Feel Like Dancing / Leo Sayer
(7”『You Make Me Feel Like Dancing』 / 1976年)
◎軽快なシャッフル系ビートに乗り、軽やかに歌うレオセイヤー1976年の楽曲。
一聴するとガッドらしさを感じさせないのだがサビ前のタム回しなど、要所にガッドらしさの光るグルーヴ感溢れる名曲。

●Feel the Night / Lee Ritenour(『Feel the Night』 / 1979年)
◎キレの良いビート感が特徴の渋い一曲。
ガッドらしく後ろにグルーヴを持ってくる気持ちの良いキックやハイハットワークが堪能できる良曲です。

●Glamour Profession / Steely Dan(『Gaucho』 / 1980年)
◎ガッドにしてはソリッドでジャストな演奏。編集によって発音のタイミングが修正されている可能性があるかもしれないが、それにしてもハイハットワークのグルーヴ感はガッドの後ろ乗り感が出ていて良い感じです。

●Just the Two of Us / Grover Washington Jr.(『Winelight』 / 1980年)
◎様々なアーティストがカバーをする名曲もオリジナルメンバーはかなり強力です。
サックスソロでのガッドのビートが楽曲を力強く押し上げていて、その想いが全体に与えている影響は大きいと思います。

●Distracted / Al Jarreau(『This Time』/ 1980)
◎このシャッフルビートをこのテンポで演奏する難しさはミュージシャンにはよくわかってもらえるかも知れない。ガッドはラフさを感じさせながらも実にしっかりとパターンが構築されている。間違えない、グルーヴの理解、当然ながら好演。
しかしバカテクではなく、人を繋ぎながら音楽にしっかりと寄り添い、自身の主張を小気味良い所にちゃんと入れる。本当に素晴らしいドラマーだと思います。


Distracted / Al Jarreau



作詞/作曲/編曲家。 ボーカル、ギター、サックスを担当。 自身のクループ「鈴木恵TRIO」「EXTENSION58」の他、アイドルグループ「RYUTist」への楽曲提供、作家「大塚いちお」氏との共同楽曲の制作等を行う。
TRIO堂(通販サイト)https://szkststrio.theshop.jp/


●My Sweetness / Stuff(『Stuff』/ 1976年)
◎Stuffといえばファンキーナンバーな印象がありますが、彼らのもう一つの得意技、メロウナンバーに是非耳を傾けてほしいです。ガッドと言えばこの曲もまた然りですが、やはりリムショット。リムの美音色と歌を歌うようなダイナミクスが、実にクールなのです。

●Aja / Steely Dan(『彩(Aja)』/ 1977年)
◎腕利きのジャズメンによって録音された作品。ウェザー・リポートの張本人、ウェイン・ショーターを招いているあたりは当時のジャズ→エレクトリックな流れを受けた彼らなりの逆回答ではないかと考えます。中間部のサックスソロと圧倒的なドラムソロの絡み、圧巻です。

●Ace In The Hole / Paul Simon(『ONE-TRICK PONY』/ 1980年)
◎ガッドと言えば外せません、このお方ポール・サイモン。映画のセッション・シーンで聴ける「跳ねるビートの曲に対して溜めるスネア」を存分に味わえます。ズバリ曲全体がお祭り騒ぎにならないキーポイントは、ポールの歌い癖に合わせている2、4のスネアの溜めです。

●Signal To Noise / Peter Gabriel(『Up』/ 2002年)
◎プログレ系を探しておりましたら、ありました!まるでオーケストラの一員のようなガッドのドラムが堪能いただけます。折角の「ピーガブ(通称)」のRecにもかかわらず(というのも何だが)、この曲ではトニー・レヴィンとの黄金のリズム隊を聴けないのが残念です。

●Spain / Corea,Gadd,McMride
(『Super Trio (Live At The One World Theatre, April 3rd, 2005)』/ 2005年)
◎スペインが好きで音源探していたらこれにたどり着きました。チック・コリアが元来生まれ持っているラテン魂を奮い立たせるようなフィルイン。情熱をひた隠しにおさえつつも、終始アフロビートで押し上げていく少しだけエイトビート寄りな最強のアランフェス協奏曲。



Spain / Corea,Gadd,McMride



オフィシャルブログ:http://philiarecords.com/


●I Broke Down / Joe Cocker(『STINGRAY』/ 1976年)
◎Stuffの一員として参加したこのアルバムの中でもとりわけ歯切れのいいドラムプレイ。
バスドラの入れ方やタムを絡めたフィルが素晴らしく、ブルーアイドソウル、ジャズファンクなどのドラムの礎となったのではないかと思います。粘っこさよりもキレの良さを重視したドラミングといったらいいのでしょうか。憧れます。

●Nite Sprite / Chick Corea (『The Leprechaun』 / 1976年)
◎ジャズロック、ジャズプログレ系の楽曲です。歌ものポップス系では比較的シンプルなドラミングが多いのですが、こういった技巧系の曲でのプレイの正確さ、各キットを鳴らした時の音の粒立ちの綺麗さを満喫できる曲なのではないかと思います。曲中に何度も繰り返されるテーマでのキメ、そしてドラムソロのかっこよさが印象的です。

●I'm Gonna Miss You In The Morning / Quincy Jones ft. Luther Vandross and Patti Austin 
 (『Sounds ... And Stuff Like That!!』/ 1978年)
◎金物がよく聴こえるミックスになっているので、ライドのタメ具合や丁寧かつグルーヴィーなハットさばきが楽しめる一曲です。ドラム専門誌などでよく語られるパラディドルなどのテクニカルな部分だけでなく、この曲のようにシンプルなドラミングで役割に徹しつつ色を出すことができるのも、彼の超一流たるゆえんだと思います。(よく聴くと全然シンプルじゃありませんが…)

●Little Pony / Georgie Fame(『Cool Cat Blues』/ 1990年)
◎ブラシを用いた歌モノ高速ジャズ。曲の後半でスネアのアタックを強め、ピアノとアクセントを合わせながら曲が進んでいくところが高揚します。男性ボーカル二人のスキャットのようなかけあいが楽しいのも、この軽快なドラムがあってこそだと感じます。

●Home / Michel Petrucciani,Steve Gadd,Anthony Jackson
(『Trio In Tokyo』/ 1999年)
◎スティーヴ・ガッドは、やはりジャズ・ライブでのプレイを聴かなければ本当の凄さは分からないのかもしれません。序盤から中盤にかけてピアノを前面に押し出しておきながら、だんだんとリズムの主導権を握りながら牽引していき、最後にクールに戻っていくのが最高にかっこいいです。


I Broke Down / Joe Cocker




オフィシャルサイト: https://www.kouhando.com/


●Samba Song / Chick Corea(『Friends』1978年)
◎チック・コリアの曲で初めて聴いたのがこの曲、ガッドの名もここで知りました。耳も心も奪われるような、とにかく派手なプレイです。

●When The Cookie Jar Is Empty / Michael Franks(『Burchfield Nines』/ 1978年)
◎とても好きな曲です。跳ねる金物が静謐な雰囲気の中にほのかな躍動感を与えています。

●Ludwig / Bob James(『Foxie』/ 1983年)
◎ベートーベンの「第九」をモチーフにした大作。シンセと掛け合うドラムソロのハラハラする展開は聴いていてとても楽しいです。

●一分間 / 矢野顕子(『峠のわが家』/ 1986年)
◎同盤で参加している「そこのアイロンに告ぐ」のほうがガッドらしいので非常に迷いましたが今の気分でこちらを選びました。メロディックなプレイはまるで矢野さんとのデュエットのようです。

●Take the “A” Train / Michel Petrucciani.Steve Gadd & Anthony Jackson
(『Trio in Tokyo』 / 1999年 ※当該曲は2009年再発版のボーナストラックとして収録)
◎言わずと知れた名ナンバーですが、オリジナルが気楽な鈍行ならこっちはまさに行先不明の暴走列車です



一分間 / 矢野顕子



●Complicated Times / Frank Weber(『Continental American』/ 1974年)
◎時折細かく刻むハット(曲ラストのオープンとか)で、一気に加速する感が気持ちよすぎる。
特に歌とドラムだけになる箇所はグルーヴの極み。

●Black Dog / Deodato(『First Cuckoo』1975年)
◎スティーブ・ガットが叩くツェッペリン。このオールマイティさ加減!

●You'd Be So Nice to Come Home To / JIM HALL(『Concierto』/ 1975年)
◎ガッドとロン・カーターのプレイによるプログレッションの加速感がすごく伝わってくる。

●Don't I Know You / Phil Upchurch & Tennyson Stephens (『Upchurch & Tennyson』/ 1975年)
◎うっすら漂うアフロなテイストがたまらなくクール。
途中からの16beatハイハットの加速感が気持ち良い。

●Watching The River Flow / The Gadd Gang(『The Gadd Gang』/ 1986年)
◎コーネル・デュプリーのギターと絡みながら押し出されるスティーヴ・ガッドのドラムの推進力が圧巻。



Watching The River Flow / The Gadd Gang



【松木MAKKIN俊郎(Makkin & the new music stuff / 流線形 etc)】
オフィシャルブログ:http://blog.livedoor.jp/soulbass77/


●Heavy Love / David Ruffin (『Who I Am』/ 1975年)
◎全米No.1ヒットも生んだラフィン=ヴァン・マッコイ=stuffのコラボレーション。バンマスのゴードン・エドワーズ(b)が、終盤に力技でガッドのキメを呼び込む駆け引きは感動的!凡百のディスコ音楽と一線を画す超へヴィなソウルミュージック。

●Just Blue / John Tropea (『Tropea』/ 1975年)
◎ガッドはアンサンブルの達人であるが故に、ツインドラムの名手でもある。最良のパートナーはリック・マロッタ。シンプルに刻むマロッタ、それに対してシャープに切り込むガッド、どちらも気持ち良すぎる。

●The Jealous Kind / Joe Cocker (『Stingray』/ 1976年)
◎もはやドラム単体を云々するのは野暮。阿吽の呼吸で互いを譲り合いながら一つのリズムの塊を作る、stuff全員の「間」の取り方の中で、ガッドもまた非凡なセンスを見せつける。タメてタメて、フェイドアウト直前でスネアを刻むのが心憎い。

●Cracker Jack / 増尾好秋 (『Sailing Wonder』/ 1978年)
◎珍しいT.M.スティーブンス(B)とのコンビネーション。ゴリゴリに揺さぶりまくるTMにビクともしない強靭なタイム感で、一打一打を刺すように繰り返す。シンプルなグルーヴから、後半には「ガッドフレーズ」乱打も有りの嬉しい一曲。

●Woody Creek / Lee Ritenour (『Friendship』/ 1978年)
◎ダイレクトカッティングによる名演。このダイナミクス。一つ一つの太鼓やシンバルの鳴り。ロボットのような正確さと、熱い感情表現が完全な形で融合した究極のドラミング。ストイックなようで、無邪気に音に溺れるような演奏には何度聴いても感動してしまう。




Cracker Jack / 増尾好秋



オフィシャルサイト:https://groove-unchant.jimdo.com/


●A Wilder Alias / Jackie Cain & Roy(『A Wilder Alias』/ 1974年)
◎この曲はラテン、ジャズと複雑なリズムパターンがどんどん切り替わっていく、まさにスティーヴ・ガッド腕の見せ所の曲です。

●I Love Wastin' Time With You / The Brecker Brothers Band (『Back To Back』/ 1976年)
◎ブレッカー・ブラザーズの歌ものなんですが、間奏でのハネまくったリズムパターンがこれまた最高。エンディングにむかってフィルインも多めでテンションは最高潮に。是非ご一聴を!

●Fire Of Love / Dr.John(『City Lights』/ 1978年)
◎軽やかなハイハット裁きと乱れ打つスネアがまさにスティーヴ・ガッド。

●Late in the Evening / Paul Simon(『ONE-TRICK PONY』/ 1980年)
◎小沢健二さんのネタとしても有名な曲、DJとしてプレイするのもイントロのリズムパターンから超気持ちいいです。youtubeにライブの映像あるんですがスティーヴ・ガッドはスティックを2本ずつ計4本でプレイしていました。どうりで音の広がりが違うわけですね。

●Runaround / Rickie Lee Jones(『The Magazine』/ 1984年)
◎リッキー・リー・ジョーンズとも良い演奏たくさんあるんですが、この曲もリッキーのテンションに合わせた緩急あるドラミングが曲の良さをアップさせています。



Late in the Evening / Paul Simon




●The Hustle / Van McCoy & The Soul City Symphony(『Disco Baby』/ 1975年)
◎いきなり掟破りの選曲だが、ヴァン・マッコイと後のStuffの主要メンバー達による”いい仕事”の代表曲。ロールするキックとロータムのアクセントでグルーヴするスリリングなヴァースで胸躍らされ、各サビ前でタムを連打する多彩なフィルでときめきを爆発させられた。幼心にも強く響いたガッド初体験なのでした。

●50 Ways To Leave Your Lover / Paul Simon(『Still Crazy After All These Years』/ 1975年)
◎S&G時代から新たなリズム・アプローチへの探究心が旺盛だったポール・サイモンにとってガッドの存在は大きかった。この曲最大のエレメントとなっているヴァースの唯一無二なドラム・パターンは、ガッドがリハーサルで叩いた軍楽団出身らしいマーチング・スタイルのプレイをポールがそのまま採用したという。

●Tappan Zee / Bob James(『BJ4』/ 1977年)
◎ボブ・ジェームスのアルバムにはファーストから参加しているので名演は多いが、この曲には当時のガッドの典型的プレイが多く聴ける。スイングしまくる絶妙なハイハットワークとミッド・テンポ・グルーヴの気持ちよさ。Stuffからはエリック・ゲイルも参加しているが、2人だけでもStuff印を残している。

●Seven Steps To Heaven / Ben Sidran(『The Cat And The Hat』/ 1979年)
◎ジャズとAORのボーダーに位置するベン・シドランの存在はスティーリー・ダンに近い。帝王マイルスの著名曲に歌詞をつけ、縦横矛盾にリズム・チェンジする構成で楽器のように歌唱するシドランを支えるのは、ガッドの八面六臂のプレイに他ならない。ドラム・フィルの百貨店はここでしかオープンしていませんと言わんばかりに。

●We Belong Together / Rickie Lee Jones(『Pirates』/ 1981年)
◎ドラムの演出力という点では、かの「Aja」に匹敵するかも知れない。アンサンブルの中で自らを発揮するガッドのプレイがなければ、この曲のドラマチックな展開は生まれていなかっただろう。
いきなりファースト・アルバムで大成功したリッキー・リーの真価を問うセカンドの冒頭曲の宿命をガッドも背負い、それを打ち負かしたのだ。


Seven Steps To Heaven / Ben Sidran



(企画 / 編集:ウチタカヒデ)



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