2019年3月17日日曜日

We Love Hal Blaine ~ 追悼ハル・ブレイン


既に各メディアで報道されている通り、アメリカの偉大なスタジオ・ミュージシャンでドラマーのハル・ブレイン氏が、3月11日にカリフォルニア州のパームデザートで亡くなった。90歳だった。
1929年2月9日にマサチューセッツ州ホルヨークでHarold Simon Belskyとして生まれた彼は、19歳からプロのドラマーとして活動を開始した。
弊誌監修書籍の読者にとっては説明不要だが、61年にロサンゼルスでフィル・スペクターがフィレス・レコード設立後には、レコーディング・セッションの要となるスタジオ・ミュージシャン集団「The Wrecking Crew(レッキングクルー)」のリーダー格としてそのサウンドに大きく貢献した。
その後もファーストコール・ミュージシャンとして、レコード会社を超えて多くのポップス、ロックのレコーディングに参加し、その数は150曲のトップ10ヒット・シングルを含む約35,000曲におよぶと言われているが、実際はそれ以上のレコーディングに関わっていると思われる。

より詳しく知りたい読者は、関係者のインタビューを中心に構成され2015年に公開された映画『The Wrecking Crew』の映像ソフトでチェックして欲しい。
この様に輝かしいキャリアを持ったミュージシャンは古今東西未来永劫現れないだろう。
ここではハル・ブレイン氏を心より敬愛し、筆者と交流のあるミュージシャン達と共に彼のベストプレイを挙げてその偉業を振り返りたい。



 

【ハル・ブレインのベストプレイ5】
●曲目 / ミュージシャン名
(収録アルバムまたはシングル / リリース年度)
◎選出曲についてのコメント


【桶田知道】
オフィシャルサイト: https://www.kouhando.com/
 

●Something Latin / Martin Denny
(『Latin Village』/ 64年)
◎マーティン・デニーを聴く時にハル・ブレインを意識したことがなかったので少し吃驚しました。聴くと確かに初期ビーチ・ボーイズに通ずるプレイがあります。

●I Just Wasn't Made For These Times / The Beach Boys
(『Pet Sounds』/ 66年)
◎本曲の中でのパワーワードとともに刻まれるビートが、ただ悲惨ではなく「悲壮」的な印象を残してくれました。ちなみにティンパニとボンゴもプレイしているそうです。

●Moog Power / Hugo Montenegro
(『Moog Power』/ 69年)
◎終始躍動的なプレイですが、その中でもドラムがかなりフィーチャーされている曲です。月並な表現ですが、まさに60’sサウンドの集大成のような印象です。

●Goodbye, Columbus / The Association
(『Goodbye, Columbus』/ 69年)
◎メロディに沿いながらもよく聴くとかなり激しいドラミング、その一方で流れるようなリムパートもあり、静的、且つ動的という美味しすぎる楽曲です。

●Bridge Over Troubled Water / Simon & Garfunkel
(『Bridge Over Troubled Water』/ 70年)
◎だんだんアグレッシヴになるガーファンクルのヴォーカルと共鳴するように打たれる、というより打ち放されるようなスネアは、本楽曲において最も特筆したいポイントです。



【角谷博栄(ウワノソラ)】
オフィシャルサイト:https://uwanosora-official.themedia.jp/ 
 
 

●Be My Baby / The Ronettes
(『Presenting The Fabulous Ronettes Featuring Veronica』/ 64年)
◎ハル・ブレインですぐに浮かぶものはやっぱりこの曲です。
このリフは、もし自分が影響を受けたとしても、手を出してはいけない聖域的なものだと感じております。

●Wouldn't It Be Nice / Beach Boys
(『Pet Sounds』/ 66年)
◎世界でもおそらく最も有名なロックの一曲。
4小節目のスネアの一発からシャッフルに乗せてトキメキが雪崩れ込みます。

●California Dreamin' / The Mamas & the Papas
(『The Mamas & The Papas』/ 66年)
◎初めて聴いたハルのドラムはカーペンターズかこの曲だったと思います。
小学生の頃、親父と卓球をする為に近くの地区センターへ向かう車中でかかっていた記憶があります。
この曲を聴くと、親父に勝てなくて拗ねていた卓球の事を思い出します。

●MacArthur Park / Richard Harris
(『A Tramp Shining』/ 68年)
◎作曲はJimmy Webb。
Hal Blaine、Larry Knechtel、Joe Osborn、Thomas Tedesco。
沢山の感動をありがとうございました。

●Ventura Highway / America
(『Homecoming』/ 72年)
◎中学生の頃に試験勉強の為に夜なべをしていて、目覚ましの為に聴いていました。
50年がたった後でも彼のビートで少年は日本の片隅から70'sのL.Aのハイウェイへとトリップをしていました。青春の一曲。




【近藤健太郎(The Bookmarcs / the Sweet Onions)】
オフィシャルブログ:https://note.mu/kentarokondo 


 ●The Last Of The Secret Agents / Nancy Sinatra
(7”『How Does That Grab You?』B面 / 66年)
◎ひたすらかっこいい、サスペンス映画風味のロックナンバー。
踊らずにいられない。これぞグルーヴ!

●Wouldn’t It Be Nice / The Beach Boys
(『Pet Sounds』/ 66年)
◎外したくない、外せない曲。ただただ好き。美しいメロディとハーモニー、ドラマティックに魅せるドラミングの究極のアンサンブル。

●Up,Up and Away / The 5th Dimension
(『Up,Up and Away』/ 67年)
◎やっぱり心踊りますね。リム・ショットとクラシックギターの小粋な絡みから一転、爽快なドラムとソフトロックなコーラスワーク。素敵です。

●The Boxer / Simon & Garfunkel
(『Bridge Over Troubled Water』/ 70年)
◎心地よいフィンガーピッキングのギターを軸に、突如現るスネア(オーバーダブ)が印象的。
歌詞と相まって、胸が締め付けられるような曲です。

●Saturday / Carpenters
(『Carpenters』/ 71年)
◎リチャードがリード・ボーカルをとるジャジーで軽快なナンバー。
ハルの小気味よいドラミングがたまりません。


【hajimepop】
オフィシャルサイト:https://www.hajimepop.com/ 


●Santa Claus is Coming to Town / The Crystals
(Various Artists『A Christmas Gift For You From Philles Records』/ 63年)
◎フィル・スペクターの大名盤クリスマス・アルバムから。
深いリヴァーヴと豪快なハルのドラムが、更なる華やかさを加えている。

●I Saw Her Again / The Mamas & The Papas
(『The Mamas & The Papas』/ 66年)
◎彼らは、60年代のアメリカにおける象徴的なグループの一つ。
ハルが「その時代の空気を作った」一人であることを再認識させられる。

●Good Vibrations / The Beach Boys
(『Smiley Smile』/ 67年)
◎映画『Love & Mercy』では、ハルが優しくブライアンに語りかけるシーンに、彼のパーソナリティの一端を垣間見た気がした。

●Wedding Bell Blues / The 5th Dimension
(『The Age of Aquarius』/ 69年)
◎計算し尽くされたカラフルなポップスを奏でる彼ら。これはローラ・ニーロのデビュー曲のカヴァーで、ハルの跳ねたリズムが心地良い。

●(They Long to Be) Close to You / Carpenters
(『Close to You』/ 70年)
◎オールタイム・ベストで、個人的に大きな影響を受けた曲。
ジョー・オズボーンとのコンビは、ポップスにおけるリズム隊の理想形だ。






【平川雄一(The Pen Friend Club)】
オフィシャルサイト:https://the-pen-friend-club.wixsite.com/the-penfriendclub  
  
 

 ●How Does It Feel? / The Ronettes
 (『Presenting The Fabulous Ronettes Featuring Veronica』/ 64年)
◎全てが最高ですね。(祥雲貴行のプレイも一聴の価値アリですぞ)

●Do I Love You / The Ronettes
(『Presenting The Fabulous Ronettes Featuring Veronica』/ 64年)
◎『Be My Baby』よりも、これ。

●Green Grass / Gary Lewis & The Playboys
 (『Hits Again』/ 66年)
◎ハル・ブレインって、こういう普通のエイトの刻みが気持ちいいんですよね。
ドラムが歌って踊っているんです。リズムが体の中にある人が叩くエイトだと思います。
あと「アラヨット」的な小気味いいフィルが上手い。笑
こういうセンスのドラマー、すごい信用できますね。

●Aquarius/Let the Sunshine In / The Fifth Dimension
 (『The Age Of Aquarius』/ 69年)
◎そもそも曲が良すぎるんですが、ドラムも最高ですね。
フロアの音がたまりません。ライドのカップも踊ってていいですね。

●(Last Night) I Didn't Get To Sleep At All / The Fifth Dimension
(7”『(Last Night) I Didn't Get To Sleep At All』/ 72年)
◎本当に上手い。


【松木MAKKIN俊郎(Makkin & the new music stuff / 流線形 etc)】
オフィシャルブログ:http://blog.livedoor.jp/soulbass77/  
   

●It's going to take some time / CARPENTERS
(『A SONG FOR YOU』/ 72年)
◎細かい小技を連発しながら、そよ風のように撫でるように過ぎていく。なによりドラムが歌ってる。こんなドラムはハルにしか叩けない。

●GOODBYE / AMERICA
(『HAT TRICK』/ 73年)
◎グッバイ、グッバイというリフレインのフェイドアウトと共に、素晴らしいフィルインが寄せては帰す。まさに真骨頂。

●WHO 'S FOR COMPLAININ? / JIM GRADY
(『JIM GRADY』/ 73年)
◎キラリというライドシンバルの比類なき美しさ。トトトトトトと六連で降りてくるタム。
そしてステディなビート。100点満点のポップス。

●恋時計 / 高木麻早
(『TAKE A TEN』/ 74年)
◎萩田光雄アレンジでビーマイベイビーのビートを本人再現。
70年代のクリアなサウンドと大きなドラムセットで聴けるのが嬉しい。

●SAD SONGS / ALESSI
(『ALESSI』/ 76年)
◎ハル流ミディアム16ビート。よく聴けば手数王だが喧しさは微塵も無い。彼の音の一つ一つが音楽そのものだからでしょう。



【Masked Flopper(BB5数寄者)】

●Run-Around Lover / Sharon Marie
(7”『Run-Around Lover』/ 63年)
◎1963年6月Brian Wilsonが憧れのGold Star で初のセッションを行った時の一曲。
ドラムは当然Hal!

● Banzai Washout / The Catalinas
(『Fun Fun Fun』/64年)
◎Terry Melcherプロデュースで、Bruce Johnston-Hal Blaine-Steve Douglas-Leon Russell-etc参加

● Topsy '65 / Hal Blaine
(『Drums! Drums! À Go Go』/ 65年)
◎当時の西海岸のいなたいノリとHal自身の演奏が詰まった名曲!65年当時の空気が真空パックされたような気分に浸れる一曲。

●旅立つ朝 / 江利チエミ
(7”『旅立つ朝』/ 71年)
◎東京キューバンボーイズをバックに民謡を歌う見事な歌唱力の持ち主が、この曲でもHalのドラミングにがっぷり四つで東西共演。

● Night Lights (1965 Version) /  Gerry Mulligan Quintet
(『Night Lights』/ 94年再発)
◎師匠のRoy C Knapp門下からはGene Krupa, など多くのJazz ドラマーが巣立っている。
再発CDのボーナストラックのみ演奏はHal!! 


【ウチタカヒデ(WebVANDA管理人)】

●Not Too Young To Get Married / Bob B. Soxx And The Blue Jeans
(7”『Not Too Young To Get Married』/ 63年)
◎初期フィレスの男女ヴォーカル・ユニットのラスト・シングルで、ハルは結構大胆なプレイをしており、コーダではキック(バスドラ)を連打しまくって足跡を残している。とにかくウォール・オブ・サウンドでも決して埋もれないのが彼のプレイなのだ。

●Let Him Run Wild / The Beach Boys
(『Summer Days (And Summer Nights!!)』/ 65年)
◎天才ブライアンの独創的サウンドに応えるべく、ハルはドラム・キットの概念に縛られないダイナミックなプレイを発揮している。その柔軟なスタンスはBB5黄金期に欠かせない存在だった。

●Along Comes Mary / The Association
(『And Then...Along Comes The Association』/ 66年)
◎このソフトロック・バンドの出世曲は比較的ストレートなリズム構造なのだが、もたったクラップとハルの強烈なグルーヴのコントラストが不思議なサイケ感覚を生み耳に残る。フィルのバリエーションも尋常じゃなく見本市状態。

●A Little Less Conversation / Elvis Presley With The Jordanaires
(7”『Almost in Love』B面 / 68年)
◎02年にリミックスVerがリバイバル・ヒットしたのが記憶に新しい、映画『バギー万才』挿入歌として主演のエルヴィスが歌ったナンバー。
躍動感溢れるシェイクのグルーヴで親の仇のようにスネアを連打するハルのプレイがたまらない。

●MacArthur Park / Richard Harris
(『A Tramp Shining』/ 68年)
◎ジミー・ウェッブが手掛けた7分半のこのポップ・ソナタで、ハルは自らの全演奏テクニックを駆使しドラマティックに演出している。彼の膨大なワークスの中でも後世に語り継がれる名演ではないだろうか。




 (企画 / 編集:ウチタカヒデ) 



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