2018年11月11日日曜日

『Merry Christmas From The Pen Friend Club』(Penpal Records/PPRD0004)The Pen Friend Clubリリース・インタビュー前編


 平川雄一率いるThe Pen Friend Club(ザ・ペンフレンドクラブ)が、11月14日にニュー・アルバム『Merry Christmas From The Pen Friend Club』をリリースする。 
 今年3月の5thアルバム『Garden Of The Pen Friend Club』が記憶に新しく、そのリリース・ペースに驚かされるばかりだが、今回はクリスマス・アルバムというコンセプトで制作されているのが大きなポイントだ。古今東西このコンセプトで制作されたアルバムが数多あるが、その筆頭が『A Christmas Gift for You from Phil Spector』(Philles Records/63年)であることに異論はないだろう。ウォール・オブ・サウンドの創始者フィル・スペクターのフィレス・レコードにおける最高傑作アルバムと言っても過言ではなく、後年このサウンドに影響を受けたミュージシャンは多い筈だ。
 そしてこのペンフレンドクラブの本作もそのフォロワーに違いないが、彼等独自のアイディアを加味して平成最後のクリスマスに日本で制作してくれたことに音楽ファンとして純粋に感謝したい。
 筆者は8月末に平川がほぼ1人で制作したベーシック・トラックに藤本の仮ヴォーカルを入れたラフミックスを初めて聴かせてもらってから、そのアレンジ感覚に唸ってしまった。過去には大滝詠一が『多羅尾伴内楽團 Vol.1』(77年)でおこなった手法だが、昨今の音楽事情で分かり易く言えば「マッシュアップ」ということになるだろう。カバーするスタンダード曲をミュージシャンのセンスや趣向で、全く異なる既存曲のアレンジ・フォーマットでレコーディングするというものだが、当然そのアレンジ・センス次第で原曲を生かしも殺しもするので非常にシビアな手法といえる。全16中15曲がカバー曲で多くがこの手法が施されているので、熱心なポップ・マニアやVANDA読者はオマージュされた曲を探すのも楽しいだろう。

 ここでは前編と後編に分けて、ペンフレンドクラブへおこなったインタビューを掲載する。前編はプロデューサーでリーダーの平川へのインタビュー、後編では前作同様に平川以外のメンバーへのアンケート形式のインタビューとなるのでお楽しみに。



●これまでのペンフレンドクラブの活動スタイルからクリスマス・アルバムをリリースするということを想定出来なかった訳では無いですが、このアイディアはいつ頃から温めていましたか?


平川(以下H):ほぼ活動開始くらいから考えていました。クリスマス曲でもないのにスレイベルを延々打ち鳴らすバンドでしたので(笑)。 グロッケンも頻繁に使用していましたし、普通の曲でもクリスマスっぽい雰囲気はありましたね。なので、クリスマス・アルバム制作というのは自然な発想でした。


●カバー曲15曲を選考した意図を教えて下さい。またそこに至った個人的な思い入れを聞かせて下さい。

H:「クリスマス・アルバム制作は一生に一枚」と決めていたので、やりたい曲を全部入れました。今回は「往年のクリスマス曲とペンフレンドクラブがこれまでやってきたオリジナル曲やカバー曲とのマッシュアップ」というコンセプトなので、どの曲と、どの曲を混ぜるかを考えるのが非常に楽しかったですね。「ホワイトクリスマス」のアレンジはなかなかこんなことする人いないと思います。笑

ロックンロール・アプローチの「ジングルベル・ロック」や「ロッキン・アラウンド・ザ・クリスマスツリー」もいい仕上がりです。こういうことやらせるとうまいですね僕ら。「Let It Snow」は子供の時に観た映画「ダイハード」のエンディングテーマで当時からいい曲だなあと思っていました。
今回のマッシュアップで「Do I Love You」等、レコーディング時に現メンバーが参加していなかった曲をある意味「再録」できたのは、僕の中で大きなことです。




●初めてラフミックスを聴かせてもらった時から、この絶妙なマッシュアップ感覚には脱帽しました。確かに「ホワイトクリスマス」が最も意外なマッシュかも知れない。アレンジ側の原曲を作ったブライアン・ウィルソンもきっと驚くね。
「Frosty the Snowman(雪だるまのフロスティ)」もファーストでカバーされたザ・ロネッツの「Do I Love You」で料理されるとは予想だにできなかった。『A Christmas Gift for You from Phil Spector』(以下A Christmas Gift for You)では「Be My Baby」でやっているんだけど、平成下の日本でそのアイディアを実現させるっていのは、ペンクラの平川君と『THE夜もヒッパレ』のビジーフォー・スペシャルくらいだよ。笑

H:笑。ビジー・フォーといえばベースの西岡利恵は彼らの大ファンなんです。特にモト冬樹には熱い視線を送っているようです。
それはともかくマッシュアップではない曲「恋人たちのクリスマス」やダーレン・ラヴの「クリスマス」、「リトル・セイント・ニック」等は僕らのクリスマス・アルバムに必ず入っていなくてはいけない曲、と思っていましたし、ただただ好きな曲だったので取り上げました。
「恋人たちのクリスマス」は90年代に作られた曲の中で一番素晴らしいと思います。ただマライア・キャリーの原曲は60’sガールズポップ風だったのですが、編曲、演奏(打ち込み)面において不十分だと感じていました。なので、ペンフレンドクラブで本来こうあるべきだというアレンジ、演奏で制作した次第です。


●ニューウェイブ少年だった僕には敵だった笑、ワムの「ラストクリスマス」も意外だったけど、マライアの「恋人たちのクリスマス」まで!と。ラフミックスを聴いた時から驚きで、「ペンクラどこへ行くよ?!」って感じだった、本当に。笑

でもドストライクで直球な選曲でやってこそ、クリスマス・アルバムの醍醐味なのかも知れないと感じましたね。

H:ワム!やマライアはこういう機会でないと出来ないカバーですね。

ダーレン・ラヴの「クリスマス」に関してはペンフレンドクラブが制作してきたウォール・オブ・サウンド・アプローチの曲の中で一つの到達点になったのではないかと思っています。
僕の一人多重録音ではなくメンバーによる四声コーラス「オールド・ラング・ザイン」が非常に気に入っています。途中のデニス・ウィルソン...ではなく藤本有華による語りは最高です。藤本の完璧な英語発音力はこのアルバムの説得力になっていると思います。もちろん歌唱力も。
大谷英紗子による編曲で彼女が属するサックス・カルテット演奏の「サイレント・ナイト」で幕を閉じるわけですが、そのようにしてよかったと思っています。


●やはり『A Christmas Gift for you』がその後のクリスマス・アルバムの指標になっていたのは間違いないんだけど、そのハイライトがダーレンの「Christmas (Baby Please Come Home)」な訳ですよ。それに挑むってのはチャレンジだよね。

唯一のオリジナル曲「Christmas Delights」についても聞かせて下さい。実はこのアルバムで最も好きな曲です。スプリームスの「You Can't Hurry Love」(66年)とストロベリー・スウィッチブレイド の「Since Yesterday」(84年)のいいどこ取りというか、本当にいい曲だと思います。ソングライティングの着想を聞かせて下さい。

H:クリスマス・アルバムにオリジナル曲は1曲だけでよいと思っていました。2曲も3曲も聴き覚えの無い曲などクリスマス・アルバムに必要ありません。なので他の収録カバー曲のどれとも被らない感じにするべく「You Can't Hurry Loveパターン」のリズムを採用しました。元来、僕はこのリズムがそんなに好きではないのです。このリズムの曲で「You Can't Hurry Love」以外に優れた曲を聴いたことがないですし、見渡してみるとよく「レトロな感じ」をやるときに安易に採用されるリズムパターンでもあります。そんなマイナスのイメージを勝手に持っていたので今まで敬遠してきました。ただ「クリスマス・アルバム」という特別な機会でもないと、このリズムの曲を一生作らないだろうなと思い、今回限りのつもりで書きました。

この曲に更に自分の中に無いものを付与するために、そして他の収録曲との差別化を図るために編曲を謎の音楽家・カンケさんにお願いしました。仕上がりはお聴きの通り。功を奏したと思っています。



●リリースに合わせたライブ・イベントがあればお知らせ下さい。

H:2018年12月22日に青山・月見ル君想フでRYUTistを迎えクリスマス・ライブ・パーティーを開催します。

2018年12月22日(土)
@青山・月見ル君想フ
[Add Some Music To Your CHRISTMAS]
開場/午前11:00 
出演:The Pen Friend Club, RYUTist
OA:Quartet Ez
DJ:aco
★チケットぴあにて販売中
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=1849306



●最後に本作の魅力を挙げてアピールして下さい。

H:ジャケ、装丁が非常にいいです。まさにクリスマスプレゼントという感じ。実際にお手に取って見て頂きたいですね。あとTOMMYさんによるライナーノーツが凄いです。是非がんばって読んでください。笑
クリスマス・アルバムというのは王道でベタでなければいけないと思っています。
誰が聴いても楽しめる分かり易いもの、ライト級リスナーのBGMであるべきです。そしてヘビー級リスナーにとってはどこまでも聴き応えのある仕掛け、拘りもまた必要です。
クリスマス・アルバムの金字塔をつくりましたので是非、聴いてください。


以下後編に続く。
(インタビュー設問作成/文:ウチタカヒデ)



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