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2026年7月1日水曜日

イエスハッピー!/吉田哲人『I Saw The Light』吉田哲人インタビュー

”アイドル業界屈指の名士作のエールソング”

 2人組アイドルグループのイエスハッピー!が、デビュー15周年となるアニバーサリー・イヤーの第一弾として、作編曲家でシンガー・ソングライターの吉田哲人の書き下ろしの新曲を短冊CDとして7月7日にリリース(NARISU RECORDS/NRSD-3171)する。

 本作はイエスハッピー!と吉田哲人の連名で両A面でのリリースとなり、それぞれのボーカル・ヴァージョンが収録されている。
 吉田の作編曲にイエスハッピー!の2名が作詞したこの友愛に満ちた曲は、イントロのソフトロック風コーラスから高揚感のあるポップスで、各パートの随所に吉田らしいエッセンスがちりばめられていて完成度が高く聴き飽きない。吉田は全体のプログラミングに各種キーボード、ベース(リッケン4003s)を生演奏している他、ブラス・アレンジも担当している。ゲストとしてアコースティック・ピアノの演奏と多彩なストリングス・アレンジは、吉田の盟友であるユメトコスメの長谷泰宏が参加している。
 また坂村健次によるジャケットの両面のデザインは、嘗て小沢健二とスチャダラパーのコラボレーションでヒットした『今夜はブギー・バック』(1994年)のそれをオマージュしていて、マニア心をくすぐった。


イエスハッピー!
(左からこころ、さやか

 イエスハッピー!のプロフィールに触れるが、彼女達はさやかとこころの女性2名で結成されたアイドルグループである。共に島根県松江市出身で、中学、高校の同級生だったが、ハロー!プロジェクト・ファンという共通の趣味を知ってから親しくなったという。高校卒業後アイドルを目指していたこころは、数々のオーディションを受け、関西最大都市の大阪にも足を運んでおり、大学進学で同地に移住していたさやかの住まいに通って最終的に同居するようになる。2008年頃にはイエスハッピー!の前進となるユニットを2人で組み、ショッピングモールや地域のイベントスペースなどフリーステージを中心に、アイドルソングやアニソンをカバーしてパフォーマンス活動をしていた。
 その後さやかの就活がきっかけで、芸能事務所アップフロント関西支社と接点を得て、同社が経営するハロー!プロジェクトのオフィシャル・ショップ大阪心斎橋店に揃って勤務し、2011年にはイエスハッピー!として同事務所に所属して正式にグループ活動を開始した。
 2016年には同事務所を退社し、フリーを経て独立事務所 ”ミケネコカンパニー” を設立し現在に至る。彼女達はこれまでに4枚のアルバムと2枚のミニアルバム、シングルは6枚リリースしており、関西を拠点に日本全国で精力的にライブ活動を繰り広げてファン達を魅了している。


吉田哲人

 続いて吉田哲人だが、98年にThe Orangersとしてデビュー後、様々なコンピレーションへの楽曲提供やリミキサーとして参加し、2001年には小西康陽氏が主宰するReadymade Entertainment所属のマニピュレーターとして多くのプロダクションに関わっていく。鈴木亜美やきゃりーぱみゅぱみゅといったメジャー・アイドルから、竹達彩奈やNegicco、チームしゃちほこ、私立恵比寿中学、WHY@DOLL(ホワイドール)など新鋭の若手アイドルの楽曲に関わり、彼女達の熱心なファンの間でもよく知られた存在なのだ。2023年11月22日には、シンガー・ソングライターとして記念すべきファースト・ソロアルバム『The Summing Up』と『The World Won’t Listen』をリリースして高い評価を得ていた。翌2024年7月7日には芸大時代の先輩で、サウンドクリエイターとして知られる田中友直とのエレクトロニック・デュオ”BABY JOHNSONZ”として、『BABY JOHNSONZ e.p.』を短冊CDでリリースしてテクノ・ファンに注目されていた。
 弊サイトでは、なりすレコード代表の平澤直孝氏(ムーンライダーズ関係コンピレーションアルバムのコーディネートでも知られる)の紹介により、2023年9月から1年に渡り『わたくしのオフコース』と題した連載コラムを寄稿して読者にも好評だった。

関連記事
★吉田哲人:『The Summing Up』『The World Won’t Listen』リリース・インタビュー前編>記事はこちら
★吉田哲人:『The Summing Up』『The World Won’t Listen』リリース・インタビュー後編>記事はこちら
★わたくしのオフコース -1->記事はこちら

 ここからはそんな吉田へのインタビューと、本作『I Saw The Light』の曲作りやレコーディング中のイメージ作りで聴いていたプレイリストをお送りする。


特別インタビュー★ゲスト~吉田哲人 
”人生いろいろありますが、
それでも前を向いて生きてゆくのだいう
決意の曲(歌詞)になっている”

●今回は久しぶりのリリースでおめでとうございます。
  まずはこれまで2年程の期間の活動状況を聞かせて下さい。
   2023年11月のソロアルバム『The Summing Up』と『The World Won’t Listen』の2枚同時リリースから、翌年7月の田中友直氏とのユニット”BABY JOHNSONZ”のシングル・リリースと多忙な時期を経て、実に2年振りとなりますよね? 


吉田哲人(以下吉田):ありがとうございます。
実は、いくつかを除いて仕事を断っていた状況でした。

BABY JOHNSONZのシングル発売後もアルバム制作を進めていたのですが、その年の暮れ、田中友直さんにしばらく楽曲制作が出来なさそうであることを伝えて以来、作業が止まっている状況です。

『BABY JOHNSONZ e.p.』

というのも、ウチさんや僕のXをフォローしてくださっている方はご存知かもしれませんが、数年前に音楽出版契約のトラブルに見舞われまして、相手の不誠実な対応に我慢の限界に達してしまって半ば引退したような状態になってしまいました。あとで情報は正しく修正されたものの、ショックのあまり、楽曲提供を決めた僕が悪いのか?とまで思い詰めてしまい、その頃のXの投稿はネガティヴになりがちでした。まあ、色々と自分自身のリリースが続いたことで燃え尽き症候群のようになっていたのかもしれませんが、とにかくいろいろと重なってしまって、もう音楽制作はウンザリだ!と。

そうは言っても音楽を捨てることはできずに、アウトプットできないならインプットするいい機会かなと、楽理の勉強を始めたり、新たにベースを買ってみたりと、悲嘆に暮れて過ごすよりもできるだけ前向きにと努力していた日々でした。そんな中、唯一聴いて(聴けて)いたのは幼少期から聞いていたThe Beatles(及びソロ)でした。 


 ●なるほど、本作に至るまで紆余曲折あったのですね。
今回2人組女性アイドルグループ、イエスハッピー!(以降イエハピ)さんとコラボレーションすることになったのは、どういう経緯だったんでしょうか? 
彼女達は今年デビュー15周年ということで、これまでにも楽曲提供など交流などはあったのでしょうか? 


吉田:今回の楽曲は先ほどの「いくつか」にあたるのですが、以前から依頼を受けていたので、自分のメンタルはどうあれ、引き受けていたからには約束をきちんと果たさなければと。ただ、実際作ってみたら楽しくて、いい曲が出来たことで自信も回復したので、イエハピさんには感謝しかないですね。

僕が初めてイエハピを見たのは、2019年に大阪の味園ユニバースで開催された「Mezzo Forte in 味園」だったかな、2回目は横須賀の短冊CDフェス。そこで楽曲依頼をされました。その後も東京でのイエハピのイベントに行ったり、僕のリリース・イベントにも出演してもらったりと交流が続き、今回、デビュー15周年という記念すべきタイミングで改めて声をかけてもらったという流れです。

イエスハッピー!
(左からさやか、こころ

イエハピさんからの熱心なオファーによって、吉田さんの音楽活動再開にも繋がったということで安心しました。
では本作『I Saw The Light』のテーマ、コンセプトを教えて下さい。


吉田:イエハピさんからは「友情。辞めていった仲間にエールを送るような。」というテーマと聞きました。歌詞については何度かやり取りしながら、ほんの少しだけ僕も手伝い、タイトルも僕が決めました。 

僕へのリファレンスとして、WHY@DOLL(ほわどる)に提供した「ケ・セラ・セラ」「ふたりで生きてゆければ」を挙げてくれました。不思議なもので、上記の2曲は発売当時、正直ほわどるファンの方からの反応がちょっと薄いように感じていましたが、その後、別のアイドルの方から上記の2曲が好きだと言っていただけたことも裏付けとなり、それらのエッセンスを含みつつ、イエハピさんやそのファンの方、また、イエハピさんのアイドル仲間の方にも気に入ってもらえるような曲を目指しました。 


●本作のソングライティングやアレンジのアイディア、レコーディング時のエピソードなどはありますか? 


吉田:自身を見つめ直していた時期の依頼だったため、それまでの僕の楽曲制作とは違う考え方で、歌謡曲のフォーマットは守りつつも自分のアイディアに忠実に、転調してもそのまま走り切り(今までは部分転調くらいにとどめ、歌いやすい/作詞し易い曲になるようにしていた)、勢いのまま曲を完成させました。あと、今までは頭の中にある音(アイディア)を全部一曲に入れて音色の多い作品になりがちでしたが、今回はデモからボーカル・レコーディングまで諸事情で9ヶ月ほど空いたことで距離をとって楽曲を見つめ直し、不必要なものを削ぎ落として、必要最低限の音数で仕上げられました。 

今回の僕のヴォーカルは、デモ用のガイド・ヴォーカルそのまま使っています。歌い直した方がいいと思う箇所やタイミングを修正した方がいいと思う箇所もないわけではないのですが、歌詞が完成してすぐ録音した勢いが真空パックされていて、そこがとても気に入ったのでそのまま採用しました。仮に、もう一回歌い直してきっちり完成させればピッチやタイミングの精度は上がるかもしれませんが、結果、平坦な表現になりそうなので避けたのもありますね。 

レコーディング時のエピソードと言えば、4月下旬に行ったボーカル・レコーディングのときに、「この曲、めっちゃ気に入っているからいつか僕もセルフ・カヴァー出していい?」と話したら、「いつでも大丈夫です!何なら先に出していただいても大丈夫です!」と言われたので「いやいや、先に出すのはさすがに仁義に反するよ。どんなに僕が早く出すとしても、その場合は同時リリースだよ。」と話したこともあり、レコーディング終了後、どういうアプローチがあるかをぼんやり考えていたところに短冊CDの日のことを思い出し、イエハピさんとなりすレコードに連絡を取って急いで諸々作業し完成させました。

それと、先ほど話したウンザリしていた時期にRickenbacker 4003s(ベース)を買ったが、今回は音数少ないアレンジに仕上げるため、普段なら入れていたであろうギターを入れない代わりにそのベースを弾きました。ベースのレコーディングは短冊CDを出すと決めてから録音し、それで完成となりました。


●本作のソングライティングやアレンジのイメージ作りで聴いていた楽曲のプレイリストをお願いします。

『I Saw The Light』吉田哲人プレイリスト 

吉田:今回のプレイリストはビートルズ関連が大半な上、明確に影響を受けた/参考にしたという曲が見当たらないのですけれども、これらを昇華して今回の曲ができたのだとざっくり捉えてもらえれば、というリストになってます。別の言い方をすれば、僕は4歳(ジョン・レノンが亡くなる年の夏休み)からビートルズを聴いており、それらが血肉となっているので、今回の曲を自己分析してみたら、この辺りの影響が出ているのだろうと思われる曲が中心のリスト、とも言えます。

オリジナル・ミックスよりも、ここ近年のリ・ミックスの方がアレンジが聴きやすいのでそちらを積極的に選んでいます。下記の発売年はオリジナル発売(シングル曲はオリジナル・シングル発売時)年に準じています。 加えて、ビートルズを解説するなんて大胆なことはさすがにできないので、とりとめのない話を少々。

1.Hello, Goodbye - 2015 Mix / The Beatles 
 (『The Beatles 1967 - 1970』/ 1967年)
ポールの手ぐせみたいなコード進行の曲。音楽的な基礎ができる前の幼少期にビートルズをインストールしてしまったので、自分がつくるコード進行に影響がない訳がない。

2.What Is Life / George Harrison(『All Things Must Pass』/ 1970年)
曲もアレンジもいいし、あと歌詞も。

3.Instant Karma! (We All Shine On) - Ultimate Mix / John Lennon
 (『Gimme Some Truth』/ 1970年(2020年))
レコーディングから発売までの過程/コンセプトを考えるとミスタッチを直す時間はなかったと思うがそれも含めて全てカッコいい。どれを良しとするかの、美意識の問題。

4.Jet / Paul McCartney & Wings(『Band On The Run』/ 1973年)
Rickenbacker 4003sを買って最初に練習した曲。

5.Helter Skelter - 2018 Mix / The Beatles(『The Beatles』/ 1968年)
ジョンのベースってカッコいいですよね。確か使っているのはFender Bass VIなのでちょっとニュアンスは違うけど、僕もこの曲くらいの勢いでリッケンバッカーを弾いてみた。

6.Happiness Is A Warm Gun - 2018 Mix / The Beatles
 (『The Beatles』/ 1968年)
コード(楽曲)デザインというものは結局、作った本人が良しとすればそれで良しな訳で。戻らずに展開しっぱなしのこの曲の構造は素晴らしすぎる、と改めて。

7.One Love In My Lifetime - Single Version / Diana Ross
 (『Diana Ross』/ 1976年)
DJする時によくかける曲。ユメトコスメ長谷くんにストリングス・アレンジをお願いする際に頭の中で鳴ってる(=参考にして欲しい)曲として伝えました。

8.Remember - Ultimate Mix / John Lennon(『Plastic Ono Band 』/ 1970年)
ジョンのピアノってカッコいいですよね(既視感)。アレンジで必要な事は何かを教えてくれる曲。

9.I Am The Walrus - 2023 Mix / The Beatles 
 (『The Beatles 1967 - 1970』/ 1967年)
大人になるまで他人がいう変わったコード進行(この曲のみならずビートルズは多いのですが)の曲と気がつかなかった。

10.Baby You're A Rich Man / The Beatles 
 (『Yellow Submarine Songtrack』/ 1967年(1990年)
今回プレイリストを作って思ったのですが、普段ギターを中心にして聴いていない様子ですね…。

11.Sexy Sadie - 2018 Mix / The Beatles(『The Beatles』/ 1968年)
ポールのピアノってカッコいいですよね(既視感)。遠くで聞こえるオルガンは僕もよくやる手法で今回も当然。

12.Penny Lane - Stereo Mix 2017 / The Beatles
 (『The Beatles 1967 - 1970』/ 1967年)
展開してもしれっと元のキーに戻してみたり、新たに旅立ってみたり。
展開しても何とかキーを戻すのは作曲の醍醐味。

13.For No One - 2022 Mix / The Beatles(『Revolver』/ 1966年)
アレンジをする際、割とハープシコードを使うのですがそれはビートルズの影響が大きいと思います。

14.Gimme Some Truth - Ultimate Mix / John Lennon
 (『Imagine』/ 1971年
この曲、歌詞も重要であるが、ハープシコード、もしくはクラビネットのようなキーボードがうっすら使われており、それがめっちゃ効果的。”真実が欲しい”ですね本当に。

15.I Saw The Light / Todd Rundgren(『Something / Anything?』/ 1972年)
イエハピさんから届いた歌詞を読んだ際、世界観の象徴と思ったものが二つあるのですが、それを表すのにぴったりのタイトルでした。

(収録曲が同一アルバムのジャケットは共通で1枚のみ掲載)


●では最後に本作『I Saw The Light』のピーアールをお願いします。


吉田:イエスハッピー!さんの15周年を記念する楽曲が作れたことを光栄に思っております。人のために曲を作るのは天職であるなと改めて感じることができました。
ストリングス・アレンジをしてくれたユメトコスメ長谷くん曰く「一連の、吉田さんが一筆書きで書いたような曲」であるようですし、イエハピさんからのオファーにあったのもありますが、僕が、僕の曲をリファレンスに今作るとどうなるか、どんな癖があるのか、成長しているのか、否か。それらがよく表れた曲になっていると思います。僕にも金太郎飴ができたのだとすれば、それは喜ばしいことですし、それを分かってもらえるくらい聴いてくれる方がいれば、それは本当に嬉しいことです。

人生いろいろありますが、それでも前を向いて生きてゆくのだという決意の曲(歌詞)になっていると思います。奇しくも、僕は実生活でその決意が必要だったタイミングでこの曲を作りましたので思い入れはひとしおですし、(いつ出るのかは未定ですが)自身の次のアルバムで試してみたかったアイディアのデュエット・ヴァージョン制作もこのCDで実現しています。気に入っていただけたら幸いです。みんなでイエスハッピー!さんの15周年をお祝いしましょうよ! 聴いてね。


イエスハッピー! / 吉田哲人『I Saw The Light』
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吉田哲人プロフィール
作編曲家/SSW。 48歳にして初のアルバム『The Summing Up』アーカイブ集『The World Won’t Listen』を同時発売した遅咲きボーイ。BABY JOHNSONZのメンバーとしても活動。1999年にP-Vineより発売されたコンピ『テクノ歌謡』選曲家チーム8-bitsの1号でもある。作家としての代表作『チームしゃちほこ / いいくらし』『WHY@DOLL / 菫アイオライト』『Sputrip / 光の惑星』『WAY WAVE / SUMMER BREEZE』 等。
INSTAGRAM : @tetsutoyoshida

イエスハッピー!オフィシャルHP:https://yeshappy.jp/
イエスハッピー!X:https://x.com/UFK_YesHappy


(設問作成、本編テキスト:ウチタカヒデ
















2026年3月31日火曜日

MEWCATUNE:『もう物語なんていらない/きっと正解』インタビュー★ゲスト~フレネシ


フレネシ作★令和アイドル・アンセムの傑作!

 新潟を拠点に日本国内で活動するアイドルグループ、MEWCATUNE(ミュキャチュン)が、才女フレネシからのタイトル曲提供によるニューシングル『もう物語なんていらない/きっと正解』を4 月1 日にリリースする。
 

MEWCATUNE
左から早乙女かなめ、泡沫なこ、
世楽みこと、兎咲くるみ、夏萌りんな

 彼女達MEWCATUNEは、2021 年の夏にローカルアイドルの聖地とも言われ、弊サイトでも紹介しているNegiccoRYUTist(2024年12月に無期限活動休止)でも知られる新潟で結成された。「MEW=猫の鳴き声、CAT=猫、TUNE=旋律」をグループ・コンセプトとし、様々なジャンルで活躍するクリエイター陣から提供された楽曲とキュートなパフォーマンスを特徴とする新進気鋭の5 人組アイドルグループである。
 月10 本程のペースで、ホームタウンである新潟だけに留まらず、都内や全国各地で積極的にライブパフォーマンスを披露している。今年2月と3月には東京(西永福JAM)と新潟(新潟LOTS)でワンマンライブを開催し、大盛況のうちに終了させている。
 
 ここでは筆者による詳細解説に加え、本タイトル曲を提供して、Megu(Negicco)に提供した『めしませルルボン』も記憶に新しい、シンガーソングライターのフレネシへのインタビューと、ソングライティングやレコーディング時にイメージ作りで彼女が聴いていたプレイリストをお送りする。

 タイトル曲「もう物語なんていらない」は、アップテンポでビートを強調しながら複雑な構成を持つアイドル・アンセム(賛歌)だ。散文詩的歌詞にはアイドルとその推し活層の機微がちりばめられていて、これまでのアイドル・ソングにはあまりなかったテーマといえよう。
 ソングライティングとアレンジ的にはドラマティックなサビから始まる歌謡曲的転回で、フラットな歌唱がキュートで初期Perfumeの「wonder2」(「エレクトロ・ワールド」CW/2006年)に通じるバース1、それとサビを繋ぐアンニュイなバース2でサビに戻る。2コーラス目頭にはチャイニーズ・スケール風アルペジオを持つブリッジ・パートがあるなど、相対性理論をはじめとするゼロ年代サウンドのカラーが強く、作者であるフレネシのソロ作に通じる一筋縄ではいかぬエッセンスも潜んでいて、まったく聴き飽きない。マニアックながらキャッチーなフックを持ったヒット性のあるシングル曲に仕上がっている。
 全てのトラックのプログラミングはフレネシ自身が担当し、ブランクを感じさせない絶妙な譜割りのキック(バスドラム)やスネアの音色など、そのセンスは相変わらずだ。生のエレキベースはポップユニット“フラッシュバックあの人”を主宰し、フレネシのバックバンドにも参加していた山口洋輔がプレイしている。

 カップリングの「きっと正解」は、京都を拠点とする音楽グループ“EMERALD FOUR”を主宰する足立大輔がソングライティングとアレンジを担当した躍動的なギター・ポップだ。足立がプレイしたと思しき複数のギターを構築して多重録音されており、ティンパニーを入れたり、唐突なマンボのパートが挿入されたりと楽器配置やアレンジにも工夫されていて、この曲も聴き飽きさせない。
 

特別インタビュー★ゲスト~フレネシ

”MEWCATUNEの5人が持つ、物語に頼らない
「個としての輝き」がこの曲には詰まっている”
 
●立て続けの楽曲提供で多忙な中、今回もありがとうございます。
プレス向け資料によると、今回MEWCATUNEさんに楽曲提供することになったきっかけは、フレネシさんが以前参加していたxxx of WONDER(オブ・ワンダー:南波志帆、Dr.Usui、フレネシ、岸田メル、Julie Watai)のレーベルA&Rマンが同じことだったからということで、それはいつ頃決まったんでしょうか?
またMEWCATUNEさんについてはオファーされた当時ご存知でしたか?


 ◎フレネシ:2025年の10月上旬に三宅さんと一度数年ぶりのオンライン会議をして、11月5日に正式オファーをいただきました。その時初めて、MEWCATUNEを知りました。

 オファーを受けてから改めてプロデューサーの坂田さんを含めたMTGをし、年内にアレンジまでのFIXを目指して、制作を始めました。


●アイドルグループへの楽曲提供は今回が初めてでしょうか?
メンバーのソロとしては、これまでに最近のMeguさんをはじめ何回かあったと思いますが、声質の異なる複数のボーカリストによって歌うことを前提にする訳で大変だったかと。
パート毎にソロを取るメンバーを選んでいくとか、サビではユニゾンとハモらせるパートをどこで分けるなど、ソロとは違いますからね。


◎フレネシ:グループへの楽曲提供は初めての機会で、他の作家さんの提供曲をじっくりと聴きこみました。

各メンバーのパート分けはプロデューサーの坂田さんが担当しています。コーラスのラインについては試行錯誤しましたが、最終的にはユニゾンとなりました。


●正式オファーから曲作りとアレンジFIXまでのスケジュールがややタイトですね。本作「もう物語なんていらない」のテーマやコンセプト作りについてですが、MEWCATUNEさん側からはどのようなリクエストがあったでしょうか?
例えば、フレネシさんのこれまでのソロ曲の中から挙げられたとかですね。

MEWCATUNEとフレネシ

◎フレネシ:坂田さん、三宅さんからリファレンスとして挙げていただいたのが、私の楽曲2曲で…「GO ROPEWAY」的な王道ギターポップ・ソング・テイスト、「渚のアンドロメダ」に入るドラム要素があると盛り上がりそう、と具体的にリクエストをいただきました。

 これらの楽曲は、私の作品としてはやや異質なロックテイストで、得意分野ではないだけに「あの感じですね!」と即座に再現できるサウンドではなかったため、作詞作曲までの骨組みを完成させた後、実はアレンジでかなり苦戦しているのです。何をどれだけ足しても何か足りないまま、という。


●成る程、盛り上がるアップテンポな曲でというオーダーだったんですね、確かにフレネシさんの世界観からはやや異質だったかも知れません。
そんな状況下で曲作りやレコーディングの時期と特筆すべきエピソードをお聞かせ下さい。今回のレコーディングは一人多重録音ではなく、以前フレネシのサポート・メンバーでアレンジも手伝っていたベースの山口洋輔(フラッシュバックあの人)さんも参加していますね。このあたりの経緯は?


◎フレネシ:アレンジャーとしては私よりずっと先輩で、メジャー、インディー問わず数多くお仕事をこなしている彼とは、普段から音楽制作の相談に乗ってもらう間柄で…。今作では、ギターのプログラミングが入った時点で音源を聞いてもらったところ弾きたいと申し出てくれて、ベースのトラックを送ってくれました。それがばっちりハマり、さすがだなあと。山口君の音は、もはやフレネシサウンドの要ですね。生ベースの存在がグルーヴの輪郭を明らかにするというか。足しても足しても足りない何かを、ようやく埋めてくれたような。

そして、アレンジ段階でスランプに陥った際、長谷川カオナシさんにも相談しまして…「このラインにはコーラスがハマりそう」だとか「サビのキメはタイミング合わせるといいかも」など、具体的なアドバイスをいただき、ありがたかったです。それらのアイディアを本作のアレンジに取り入れています。

さらには、製作途中で迷いが生じた時、谷山浩子さんにも背中を押していただいて…相談できるミュージシャンが身近にいるありがたみを感じます。


●旧知の山口さんの他、昨年フレネシさんがアレンジャーとしてソロアルバムに参加した長谷川カオナシさん、そのアルバムに同じように参加されたレジェンド・シンガーソングライターの谷山浩子さんなど、音楽活動再開後に知り合った方まで相談できるミュージシャンが多くいることは頼もしく、ありがたいことですよね?


◎フレネシ:それは本当にその通りだと思います。
一人で悩んだ末にお蔵入りした曲は数知れず。悩みを言語化するだけでも、回路がつながって解決の糸口が見えることもあったりしますね。



●本作「もう物語なんていらない」の曲作りやアレンジ、レコーディング中のイメージ作りで聴いていたプレイリストをお願いします。

フレネシ・リファレンスプレイリスト
★MEWCATUNE『もう物語なんていらない』

Ma jeunesse fout le camp…/Françoise Hardy
(アルバム『Ma jeunesse fout le camp...』1967年)

GALZ XYPHER/COCONA from XG
(Single『GALZ XYPHER』2022年)
※アルバム未収録のデジタルリリース作品。

アイドルばかり聴かないで/Negicco
(アルバム『Melody Palette』2013年)

ラッキーカラー/SHY(アルバム『ずっとラプソディ』2007年)

Go Ropeway/フレネシ(アルバム『ドルフィノ』2013年)

渚のアンドロメダ/フレネシ(アルバム『ゲンダイ』2012年)

ミュンヘナーCMソング
(1980年代後半〜90年代初頭の静岡ローカルCMソングとして有名)

◎フレネシ:この内容で補足説明がないと「なぜ…」となりそうなので、一言ずついいでしょうか。?

フランソワーズ・アルディの『Ma jeunesse fout le camp...』が描く、若さが去りゆく際の空虚な美しさに、(音楽シーンに限らず)現代社会全体に蔓延る「物語への過度な依存」を重ね合わせたんです。

Negiccoの「アイドルばかり聴かないで」は、楽曲の主題を三宅さんに相談したところ「そういえばそんな曲ありましたよね、アイドルがアイドルばかり聴かないでって歌う…」とこの曲を挙げていて…無意識のうちに小西さんプロデュースのこの曲に影響を受けていたのだと思います。

ちなみに私の推しを一人挙げるとするならば、それはXGのCOCONAさんですが、今作のプロットを考える上で、最初に出会った衝撃のソロラップMVを振り返るなどしました。

ラッキーカラー/SHYは、プロアクティブのCMソングで00年代の後半によく流れていた曲なんですが、商品と映像とががっちりイメージできるこの曲みたいなポップさを目指したい、と参考にしました。

ミュンヘナーのCMソングも同じですね…これは、子供のころにしか聞ていないハズなのに今も歌える。キャッチーなCMソングには学びが多いです。



●最後に本作「もう物語なんていらない」のアピールをお願いします。

◎フレネシ:音楽の聴き方が2010年辺りから明らかに変わってきてるね、って話をスタッフと最近したところです。私たち(主語が大きいかもしれませんが)の世代を束ねて縛っていたスノビズムはもはや鳴りを潜め、体裁のための言い訳を用意せずとも堂々とオタクを名乗っていい時代。民主化したってことなのかな、とも思いますし、音楽自体は器で、物語を運ぶ装置になったようにも感じます。変化したというより、元来そういうものだったのかも。

本能に訴えかけてくる魅力には抗う必要もないのだけれど、音楽が音楽として教養や物語から独立してただ存在してもいいのではないか…という、私なりの問題提起でもあったりするのですが、そんな理屈は一旦置いておいて。 

MEWCATUNEの5人が持つ、物語に頼らない「個としての輝き」がこの曲には詰まっています。発売日は奇しくもエイプリルフール。究極的には「物語なんていらない(いや、いるだろう)」かもしれないですし、4月1日、彼女たちの新しい一面に、ぜひ驚いてください。


●そう言えば、フレネシさん自身の新曲「Undo-Onchi」も3月13日に配信リリースされたばかりですが、”運動音痴”をテーマにしたということで、そんなユニークなテーマにしたきっかけと、同曲のアピールもお願いします。
脱力しそうなテーマと歌詞ですが、洒脱でコンチネンタルなコンポーズとアレンジは、イタリアン映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネやピエロ・ピッチオーニに通じて、好きにならずにいられません。


◎フレネシ:これは、私の何気ない日常からこぼれ落ちた歌ですね。
乙女社主宰のイタルさんが、私のブログに書いた「運動が苦手」という独白を拾い上げて、「運動音痴」というテーマを閃いたそうです。

最初にデモを聴いたときは、「本気でこれを……? 私は一体どんな顔をして歌えばいいの?」と正直戸惑いました(笑)。ですが、アレンジが進むにつれて思わず唸ってしまうほどの名曲に化けていきました。イタルさんの低音ボイスによる合いの手も、絶妙なアクセントになっています。

実は、イントロと間奏のハーモニカの旋律、そしてジャケットの切り絵イラストは私が手掛けています。特にイラストの「ちょっと不機嫌そうな表情」にはこだわりました。

周りの景色も雨も、世の中は案外暖かくて優しい。それなのに、自分だけが取り残されたように孤独で灰色、少しだけ憂鬱……。そんな私の内面を、イタルさんは恐ろしいほど正確に理解してくれているなと感心します。歌っていて、心の底から楽しいと思える一曲になりました。
インフレイションに続いて、いつか、この曲もカラオケに入ってほしいですね。運動音痴で方向音痴…きっと共感してくださる方も多いのではないかと…そんな気持ちでいます。



フレネシ・プロフィール
8歳で、ささやき声しか出なくなる。20歳で衝動的に音楽活動を開始し、大学卒業までの2年間に50曲余りを作曲。
2009年6月、乙女音楽研究社からリリースした初のフルアルバム『キュプラ』が、HMV インディーズチャート1位、カレッジチャート1位を獲得し注目を集める。
その後、『メルヘン』『ゲンダイ』『ドルフィノ』の3枚のアルバムを発表したのち、2014年12月27日のワンマンライブ「フレネシ学園 伝説の終業式」をもって活動を無期限休止。
2020年にストリーミング配信が開始されたことで海外の音楽ファンを中心に新たな注目を集め、 累計再生回数は数千万回に達し 「渋谷系のビョーク」とも称される。
2025年10月31日に11年ぶりの新作『除霊しないで』を発表し活動再開を宣言、さらには12月22日に『おやすみルナモス』を発表し、大きな話題を呼んでいる。
★フレネシofficial site:こちらをクリック
◎関連記事「MEWCATUNEに楽曲提供しました」:こちらをクリック
◎最新配信シングル「Undo-Onchi」





『もう物語なんていらない/きっと正解』
各種サブスクリンクはこちらをクリック

(設問作成、本編テキスト:ウチタカヒデ



2026年3月15日日曜日

The Pen Friend Club:『Songularity』リリース★インタビュー後編

The Pen Friend Club『Songularity』

リリース★インタビュー後編
(インタビュー前編はこちら

前列左よりリカ(A,Gt,Cho)、そい(Key,Cho)、西岡利恵(Ba,Cho)
後列左より平川雄一(Gt,Cho)、祥雲貴行(Dr)、中川ユミ(Glo)、Niina(Vo)
大谷英紗子(Sax)は現在海外在住で休団中

“「自分一人では辿り着けない場所に行ける」
という面白さのほうが大きいです。“

●本作『Songularity』の曲作りとレコーディング期間を教えて下さい。また各ソングライターの方を含めて、その期間のエピソードをお聞きしたいです。

◎平川:曲作り自体は2023年頃から断続的に始まっていて、本格的に「アルバムとしてまとめよう」と動き出したのは2024年の後半でした。
ソングライターそれぞれが持ち寄った曲を、何度もアレンジし直し、歌詞を書き換えながら、レコーディングも含めてかなり長い期間じっくり向き合うことになりました。
多くの楽曲では、前々作に続いてミュージシャンのYouth Yamadaに作詞を担当してもらっています。一方で、Niinaの単独曲や彼女がメインで手がけた楽曲は彼女自身が作詞し、リカの曲でも作詞で共作しました。そして前述したように今回、そいも初めてペンクラに楽曲を提供しています。
結果的に、合計5名のソングライターを擁するバンドになりました。『Songularity』の制作を始めてからは、まるで曲が溢れるように次々と生まれていった感覚があります。
あるライブの打ち上げで「曲が増えすぎてどうしようもない」と悲鳴を上げていたところ、音楽家のカンケさんから「じゃあ二枚組にしてしまえばいい」と言われて(笑)。あの一言も、今振り返ると印象深い、この作品の転機となった出来事だと思います。
個人的に特筆すべき点としては、僕と西岡利恵との作曲共作が増えたことです。
 「コード進行とAメロ、サビまではあるけど、Bメロだけ思いつかない」といった場面で西岡利恵に助けを求め、そこから一緒に曲を完成させてもらうことが何度もありました。

◎西岡利恵:『Songularity』 の制作がどんな風に始まったのか記憶があいまいになるくらい長かった気がしてますが、作り始めて曲が増えていく中で20曲2枚組にしようって話になって、いいねー!て盛り上がったものの録り始めるとやっぱり多くて、なかなか進まなくて焦りつつもなんとか録り終えたという感じでした。
曲作りに関しては、今回自作曲の他に平川と4曲、Niinaと2曲共作もさせてもらってます。曲の一部だけを作ったり、もともとあるコード進行に合わせて一部メロディを考えたりとかが多いんですが、自分には思いつけないものがまず基準にあって作っていくというパターンだからこそ思いつくものがあって、これが楽しいんです。

●業界では大先輩のカンケさんからのアドバイスは大きいですね。また作曲面で平川さんは西岡さんとの共作曲が増えたとのことで、初期のレノン=マッカートニーのようですが、パート毎に繋げて1曲に仕上げていくコツはどういったことでしょうか?各々にソングライティングのスタイルがあるので、自然に1曲として仕上げていくのは大変だと思いますね。

◎平川雄一:レノン=マッカートニーのように、というのは光栄ですが(笑)、実際はもっと実務的です。
僕の場合はコードや構造の骨組みを先に作ることが多いのですが、展開部分で行き詰まることがある。そういう時に西岡に渡すと、自分では選ばないメロディの跳躍やリズムの処理が返ってくる。それで一気に曲が立体的に跳ねるんです。
大変さよりも、「自分一人では辿り着けない場所に行ける」という面白さのほうが大きいです。
最終的には、どちらがどこを書いたかよりも、“The Pen Friend Clubの曲として自然かどうか”が基準です。そこさえ揃っていれば、スタイルの違いもむしろ「良さ」になると思っています。

◎西岡利恵:平川との共作の場合、平川が作ったコード進行がまずあることが多いんです。そのコードの雰囲気である程度方向性が示されるのと、たぶんもともと聴いてきた音楽のジャンルや年代に重なる部分もあるので、世界観が大きくズレたりは起こりにくかった気がしてます。


後列左より4人目がリカ(A,Gt,Cho)

◎リカ:今回のアルバムの製作期間の中で私が1番心に残っているのが、前作のレコーディングの為にメンバーのお家に集まった時にNiinaとリーダーがセッションしながら曲を作ったことです。(のちに「Grow」になる曲です。)
残念ながらその場に全員が集まっていたわけではないのですが、メンバーの家族も一緒に呑んだり食べたりしながら温かいカジュアルな空気の中で音楽を作る場に居られたことが、自分の中で知らずに抱いていた憧れや夢見ていたことが思いがけず現実となって目の前に現れたような感覚でとても幸せな時間でした。これまでのバンド活動の中でも、自分の人生の中でも忘れられない時間だと思います。
その日の夜にお風呂の中で"Lily's Smile"というサビのフレーズが頭の中に流れ出して、次の日には私も曲作りを始めていたのがボイスメモに残っていました。その日に感じた気持ちや感覚が消えないように、すぐにでも曲に落とし込みたかったのをよく覚えています。


 
Lily’s Smile (Official MV)

●楽しいレコーディング風景が目に浮かびます。またそんな出来事が自身のソングライティングにも影響されたということですね。リカさんはペンクラに加入されたことがきっかけで、シンガー・ソングライターとして成長できたことは何でしょうか?

◎リカ:自身で曲を作ることも、自分の声や演奏が録音され作品として残ることも、ステージに立つことも、このバンドに加入してから初めて経験する事ばかりなので、自分自身がシンガー・ソングライターという自覚はあまり無いんですが全てにおいて成長させてもらっているのではないかなと思います。
ペンフレンドクラブは私にとっての音楽活動のスタート地点であり、今もなお大切な場所です。

Niina(Vo)

◎Niina:一年以上前のある日、何人かで集まって曲の最初のコードを作り始めた時から、こんなにも早く時間が過ぎたなんて、いまだに信じられません。
あの週末、あの集まりこそが、今こうして胸を張って「完成した」と言える、唯一無二のペンクラ・アルバムへと向かう旅の始まりでした。そしてそれは、私たちバンドメンバー一人ひとりが前へ進むための、確かな原動力でもありました。

もちろん、その道のりは決して平坦ではありませんでした。意見がぶつかり、苛立ち、言い合いになったこともあります。確か、何人かは泣いたはずです。(私もその一人です!)

それでも、そんな混沌の中には、いつもたくさんの笑いがありました。頭の中でクリエイティブな火花が散り、互いのアイデアがぶつかり合うことで、次々と新しい発想が生まれていく。解決策を見つけ、笑える瞬間を見つけ、前に進むためのモチベーションを見つけながら、バンドとしての絆を保ち続ける——それは本当に多くの章からなる旅で、私はそのすべてを心から楽しんでいました。

ひとつ、当時とても辛かった出来事をシェアさせてください。

私は自分で掲げた目標と、それを達成することへのメンバーからの期待に、強いプレッシャーを感じていました。気持ちが追い込まれ、ストレスからやる気を失い、作業を先延ばしにしてしまっていた時期がありました。締め切りが迫る中、スケジュールを守ることで精一杯だったバンドリーダーの平川さんを、限界まで追い込んでしまったと思います。彼も、きっと私と同じか、それ以上に大きなストレスを抱えていたはずです。

私は彼を怒らせてしまい、私自身も感情的になってしまいました。それは、メンバーとの間で経験した中で、最も大きな衝突でした。

それでも私は、その日のうちに立ち直ることができました。
メンバーに囲まれ、支えられていたからこそ、その日、私は自分の役割を最後までやり遂げることができたのです。あの瞬間はとても緊張感があり、繊細でしたが、同時にバンドやメンバー、そしてこの音楽を聴いてくれる人たちへの愛を、強く実感しました。
多くのことを学び、そしてあの出来事があったからこそ、私たちは以前よりもさらに強く結ばれたのだと、今ははっきりと感じています。

●Niinaさんは日本に帰国して6年、ペンクラに加入されてから3年になりますが、幼い頃から15年の長い期間イギリスで生活されていたので、日本に生まれ育って暮らしてきた他のメンバー達とは考え方や感覚的なズレはある筈です。お話を聞いて、そんなカルチャーの違いや期待に対するプレッシャーから立ち直ることができたのも、音楽を通して平川さんをはじめメンバー達と理解し合えたからだと考えだと思います。
本作のレコーディングやこれまでのライブ活動を経て、これからもこのバンドで長く活動していける自信がついたのではないですか?

◎Niina:そうですね、正直、バンド活動以外のところからくるストレスで、続けられるのかと不安になった時期は一時的にありました。でも、そこで一度状況や自分の気持ちを落ち着かせてみると、こんな仲間は一生見つからないなと思ったんです。
ただの音楽好き同士が、たまに集まってバンドをやるという関係ではなくて、これはもしかしたら私だけがそう思っているのかもしれませんが、死ぬまでの友達だと思っている人たちです。
これまで頑張ってきたアルバムや、積み重ねてきたライブの経験も含めて、今のところ、私が東京に住んでいる限りは、みんなと楽しく音楽を演奏して、歌って、作り続けていきたいという気持ちが強いです。

前列左がそい(Key,Cho)

◎そい:今回は1曲、「Merry-Go-Around」を作曲させていただきました。実は大元のメロディ自体はかなり前にできていて、数年前に「The Pen Friend Clubにこんな曲があったらいいな」とイメージして作ったものなんです。平川さんにも一度聴いてもらったのですが、当時制作していたアルバムの方向性とは少し合わず、いったんお蔵入りになっていました。
そこから時間を経て、メンバーの意見も取り入れながら構成を再構築し、今回あらためて形にすることができました。平川さんのアレンジによって世界観がより立体的になり、Niinaの歌が入ったことで、想像以上にドラマティックな楽曲になったと感じています。

●そいさんが作曲された「Merry-Go-Around」が、アレンジによってペンクラ・サウンドに生まれ変わったようですね。以前からご自身はソロのシンガー・ソングライターとして活動されていますが、ペンクラに加入して7年近くになります。ソロ作品にフィードバックされて得られたものはなんでしょうか?

◎そい:ペンクラに加入してから、コーラスワークの魅力を強く感じるようになり、自分のソロ楽曲にも積極的に取り入れるようになりました。
そして、これまでしっとりとした楽曲が中心だったソロ活動にも、ペンクラから学んだノリよく盛り上がれる曲など新しい方向性が加わり、表現の幅が広がったと感じています。



“『Songularity』は、
今のThe Pen Friend Clubがどこに立っていて、
どこへ行こうとしているのかを、
そのまま音にしたアルバム”

●では各メンバーの方からお聞きしたエピソードの中で、完成してから振り返って、本作にとって重要だったと感じたものを教えて下さい。

◎平川:『Songularity』は、今のThe Pen Friend Clubがどこに立っていて、どこへ行こうとしているのかを、そのまま音にしたアルバムです。
全20曲、頭から最後まで通して聴いてもらいたいです。今の時代とは逆行してるとは思いますが、それでもアルバムという形を信じたいと思っています。


◎西岡利恵:曲数が多いことそのものも『Songularity』の重要な色になってる気がしてるんですが、さらに今回5人のメンバーが作曲していることもあって、たくさんの曲の中でも色んな世界観に切り替わっていく感じがおもしろいなと思っています。


◎リカ:じっくりと製作に時間をかけたこと、そして今まで以上に楽曲に対する自分たちの考えや意見をみんなで伝え合えたような気がするので、そのことは作品全体の仕上がりにとても大きく影響しているのではないかなと思います。
時間をかける事に私はメリットもデメリットも感じましたが、少しずつ濃さを重ねながら、時間に余白も生まれ、その間に新しい視点やアイデアも多く生まれたような気もします。


◎Niina:アルバム制作の過程で私たち全員が経験した、あの"感情ジェットコースター"のような日々が、いくつかの曲を完成させるまでの道のりを形作っていったのだと、私は強く感じています。

個人的には、「無理に強がらなくてもいい」ということに気づきました。
できるだけ多くの曲を一人で、誰の力も借りずに作り上げたいという自分のプライドよりも、グループとして一つになり、それぞれの強みやアイデアを持ち寄って素晴らしい曲を生み出すことの方が絶対大切だと気づきました。
お互いのベストを引き出すためのチームワーク、つながり、そして支え合い。
それこそが、私にとってこのアルバム制作において欠かせない、とても大切な要素でした。


◎そい:これまでは、どちらかというと平川さんの色が強いバンドという印象があったかもしれません。でも今回は、メンバーそれぞれの個性を活かしながら楽曲を制作し、意見を交わし合ってアルバムを完成させることができました。それはバンドにとって大きな変化だったと思います。
私は作詞には関わっていませんが、メンバーそれぞれが“自分たちが歌う言葉”に真剣に向き合っていたのも印象的でした。時間をかけて丁寧に作ったからこそ、聴くほどに味わいが深まる作品になったのではないかと感じています。


左より平川雄一(Gt,Cho)、祥雲貴行(Dr)、西岡利恵(Ba,Cho)、
リカ(A,Gt,Cho)、大谷英紗子(Sax)、Niina(Vo)、中川ユミ(Glo)

●本作の曲作りやアレンジ、レコーディングのイメージ作りで聴いていた楽曲を
メンバー全員で合計20曲程を選曲下さい。

『Songularity』着想曲プレイリスト

Back In The U.S.S.R./The Beatles(『The Beatles』1968年)

Now And Then/The Beatles(『Now And Then - Single』2023年)

A Day In The Life/The Beatles
(『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』1967年)

Surf’s Up/The Beach Boys(『Surf’s Up』1971年)

That Same Song/The Beach Boys(『15 Big Ones』1976年)

Summer Means New Love/The Beach Boys
(『Summer Days (And Summer Nights!!)』1965年)

Isn’t She Lovely/Stevie Wonder
(『Songs in the Key of Life』1976年)

You Are the Sunshine of My Life - Single Version With Horns
/ Stevie Wonder (『Original Musiquarium』 1982年)

Eden Rock/The Fifth Avenue Band
(『The Fifth Avenue Band』1969年)

Eyes Of The World/Grateful Dead(『Wake of the Flood』1973年)

Paradise/Norah Jones (『Visions』 2024年)

Underdressed at the Symphony
/Faye Webster(『Underdressed at the Symphony』2024年)

Feeling Sad Tonight/Carole King (『Rhymes & Reasons』 1972年)

A Summer Song/Chad & Jeremy(『Yesterday’s Gone』1964年)

Let No Man Steal Your Thyme/Pentangle(『Pentangle』1968年)

Grand Hotel/Procol Harum(『Grand Hotel』1973年)

Lost Stars/Keira Knightley
(『Begin Again (Music From and Inspired
By the Original Motion Picture)』2014年)

SANDY/Ronny & The Daytonas(『SANDY』1964年)

Band On The Run/Paul McCartney & Wings
(『Band On The Run』1973年)

Do It Again/The Beach Boys(『20/20』1969年)



●リリースに合わせたライブの予定が判明していればお知らせ下さい。

◎平川:リリース後は、4月から6月にかけてレコ発ツアーを予定しています。

・4月25日(土)
  東京・渋谷LOFT HEAVEN
・5月2日(土)
  大阪・天満橋RAW TRACKS
・6月20日(土)
  名古屋・鶴舞KDハポン

【詳細・予約】
アルバムの楽曲を中心に、今のバンドの形をそのままライブで伝えられたらと思っています。


●最後にメンバー皆さんから本作『Songularity』のアピールをお願いします。

◎平川:現メンバーのうち5名が作曲を担当しており、演奏面でも以前とは違う一面も覗かせる、メンバーそれぞれの個性がはっきりと表れた、非常にバラエティに富んだ曲が揃っています。初めてThe Pen Friend Clubを聴く方にも、今のバンドの幅や奥行きを自然に感じてもらえる作品だと思います。


◎西岡利恵:メンバーそれぞれの持ち味とか、バンドとしての変化がこれまで以上に感じられるアルバムなってると思います。最後まで聴いてみてもらえたら嬉しいです。


◎リカ:ボリュームたっぷりなので聴き終わると満足感もたっぷりですが、不思議とまた最初からリピートしてみようかなとも思える中毒性もあるアルバムだな、なんて思います。
聴いていると色々な国や星々を旅しているような気持ちに私はなります。
みなさんにも「Songularity」の世界をゆったりと何度でも楽しんでもらえたらいいなと思います。


◎Niina:今までのペンクラとはまったく違う、作曲したメンバーそれぞれの個性がはっきりと表れた、最高にクセになるアルバムだと思います!
一聴して「この曲めっちゃいい!」という曲もあり、何度も聴いて、しっかり聴いて、、気づいたらすごく好きになっている曲もある。
そのどちらも、このアルバムならではの楽しみ方だと思っています!


◎そい:個人的な話になりますが、アルバム制作期間中に第一子を授かりました。お腹に命が芽生えたなかでの制作でしたが、メンバーに支えられながら無事にレコーディングを終えることができました。そんな背景もあって、私にとっては特別な思い入れのある作品になっています。ぜひたくさん聴いて、それぞれの楽しみ方で味わっていただけたら嬉しいです。


◎祥雲貴行:
2枚組のアルバムというと、自分が高校生くらいのときには今よりも聴くことが多かった記憶があります。
まず曲がたくさん入っててうれしい~という無邪気な感想があって、キャッチーな1枚目と渋めな2枚目というのがありがちで、最初は1枚目の方が好きだけど聴き込んでいくと2枚目の方が好きになっていくパターン。
「Songularity」への印象もそれに似ていて、MDプレーヤーでJ-POPをヘビロテしてた当時の、今思うと自分の原点のような気持ちを思い出しました。

「Songularity」はそれぞれの曲に作曲者の個性がよく出ていながら自然な全体の調和もあるので、通しで聴くとより深い満足感があると思います。
メンバーたちの少しずつ異なる好みや生い立ちが互いにインスピレーションを与えていて、そういうところから生まれる意外性がアルバム全体の奥行きにつながっているのかなと思いました。
またそんな意外性から、ドラムのアレンジを考えレコーディングを進める過程では予想外に苦労したり楽しめたりする瞬間が多く得られました。

ときどき思わぬ角度から不意打ちをくらうような新鮮さ、バンドの中心部にある古典へのリスペクト、意欲、未来への期待。
アルバムを聴く時間を通じてそういったもの(あるいはまったく別のもの)を感じてもらえたら幸いです。


◎中川ユミ:今回の新しいアルバムは2枚組で20曲あります。毎回再生する度に(ちょっと多いな…)と思うのですが、いつの間にか2週目3週目といつまでも聴いていたりします。本当に飽きがこないので、ぜひいろいろな方に手に取ってもらいたいと思います。


◎大谷英紗子:メンバーの想いが今まで以上に詰まったアルバムになっているのではと思います。全曲オリジナル、本当にすごいアルバムです。私はレコーディングしながら、いちファンとして楽しんだ感覚でした。是非お気に入りの曲を見つけて色んな場面で聴いていただけたら嬉しいです。


(設問作成編集、本編テキスト:ウチタカヒデ