2021年12月26日日曜日

WebVANDA管理人が選ぶ2021年邦楽ベストソング


 今年もWebVANDA管理人が選ぶ、邦楽の年間ベストソングを発表したい。 選出楽曲は今年リリースされ弊サイトで取り上げた作品を中心にアルバム(シングル)中最もリピートした収録曲で、アルバムを象徴する曲である。以前からだが、いかに個性的なアプローチをしたかが重要なリファレンス・ポイントになっている。
 昨年からのコロナ禍の影響はこの年末まで続いているが、徐々に回復してきているのも確かだ。本サイトで主に紹介するインディーズ・ミュージシャン達の作品を紹介することで、微力ながら彼らを応援し続けていきたいと思う。またこの記事で改めて知った各作品は、これからでも彼等の活動を後押しすることが出来るので是非入手して聴いて欲しい。選出趣旨からコンピレーション、カバー作品、配信のみの単体楽曲は除外とした。
 昨年同様、順位不同のリリース順で紹介する。


※サブスクに登録されたベストソング・プレイリスト


☆おこもりさん / シンリズム(7”『おこもりさん』収録) 
 流線形の『Talio』でオーケストレーションを担い、現在KIRINJI のツアー・メンバーでもある若きマエストロの最新7インチより。配信リリースは昨年で表向きは8分刻みの変哲のないポップスだが、アレンジの引き出し量の豊富さやアッパーストラクチャーのセンス、70年代ジャズロック風ギター・ソロのスケール感覚に至るまで、23歳の若者が一人多重録音で作ったとは思えない完成度だ。今後のソロアルバムも期待大である。


☆小さな手のひら / 吉田哲人(7”『光の惑星』収録) 
 作編曲家としてアイドル系楽曲で活躍している吉田が、シンガーソングライターとして発表したセカンド・7インチのカップリング曲。元々イベント・スペース存続のドネーション・コンピへの提供曲で、無垢なメロディラインと慈愛に満ちた詞の世界に一聴して虜になってしまった。バロック風アレンジの和製ソフトロックとして素晴らしい仕上がりだ。


☆City Nights / 前川サチコとグッドルッキングガイ 
『My Romance』収録)
 関西で活動する女性シンガーソングライターを中心とするバンドのサード・アルバムより。メンバーでArgyleのリーダーでもある甲斐鉄郎によるソングライティングで、多くのソウル・ミュージックの影響下にある良質なシティポップである。前川と甲斐のデュエットで歌われる本曲は、令和時代の「DOWN TOWN」(シュガー・ベイブ)と言えるだろう。 


☆反撥 / Francis (『Bolero』収録) 
 90年代東京を代表するバンドを渡り歩いたベーシストが、欧州ロマンティシズムのソロ・ユニットで唯一無二の才能を開花させた。今月7インチでシングルカットされたばかりのこの曲は、有機的に絡み合ったヒプノティックなグルーヴをバックにダンディな歌声を聴かせている。7インチのジャケはブライアン・フェリーの『In Your Mind』をミリターアート手法で処理したようでインパクト大だ


☆君の気配 / The Bookmarcs 
『BOOKMARC SEASON』収録) 
 2年前に配信されていた和製AOR~シティポップで今年リリースされたサードに収録された。作詞を手掛けた近藤健太郎の高域で響く甘くソフティな歌声に、ゲスト・ボーカルの青野りえによるレンジが広くテクニカルな声質が絶妙にブレンドされている。作編曲の洞澤徹によるデイヴィッド・T風ギター・プレイも聴きどころが多く、スタッカートで跳ねるサビのメロディを引き立てている。 


 ☆デジャヴ / bjons(『CIRCLES』収録)  
 数多のネオ・シティポップ・バンドとは一線を画し独自路線でポップスを追求するバンドのセカンドより。ドラマティックなギターリフのイントロから不安定で緊張感のあるヴァース~ブリッジを経て、開放感あるサビに繋がる構成は見事である。哲学的な歌詞も含め、彼らでないと作れないサウンドをクリエイトしており、引き算的アレンジによって手練なメンバー達のプレイが際立った。 


☆散歩娘 / ポニーのヒサミツ(『Portable Exotica』収録)
 アメリカン・ルーツミュージック系シンガーソングライター、前田卓朗のソロ・ユニットのフォース・アルバムの1曲。名ドラマー増村和彦によるセカンドライン・ファンクと沖縄民謡を融合させた独特なドラミングが肝となっている。前田の素朴で個性的なボーカルは環太平洋のエッセンスが加わっても健在であり、この牧歌的日常こそが美しいのだとしみじみ感じさせてくれる。


☆冬をとめて / RISA COOPER(『RISA LAND』収録)
 元D.W.ニコルズのメンバーでセッション・ドラマーとして活躍している岡田梨沙のソロ・ユニットのファーストより。交流の広さから様々なミュージシャンが参加しており、捨て曲無しのアルバムから一曲選ぶのは困難であるが、特徴的なイントロのギターリフ、リズム隊とコンガのコンビネーション、詩情溢れる歌詞からこのエバーグリーンな曲を選んだ。


☆Another world / Three Berry Icecream 
 元BRIDGEのキーボーディスト、イケミズマユミのソロ・プロジェクトのファーストより。典型的ソフトロックの美しいフォルムを持ったサウンドで、イントロ~ヴァースのボッサのリズムから三声コーラスがリフレインするブリッジを経て甘美なサビで解決する。複数パートと転調を経ても聴き飽きないメロディとアレンジは高評価したい。


☆ただの風邪 / KIRINJI (『crepuscular』
 堀込高樹のソロ・プロジェクトとなって初のアルバムより。弟の泰行との兄弟ユニットからスタートしバンド編成活動を経ても、高樹のソングライティングセンスはぶれることはない。2005年のソロ作『Home Ground』を愛聴していた筆者は、この冒頭曲にもシンパシーを強く感じてしまった。研ぎ澄まされたサウンドにはただため息が出てしまう。 

(選者:WebVANDA管理人 ウチタカヒデ

2021年12月22日水曜日

1974年 WAR 初来日公演(静岡駿府会館)

 今回は今年結成50周年を迎えたファンク・バンドWARの初来日公演体験を紹介する。そ1974年は初ライヴ・アルバム『War Live !』をリリースした翌年だった。当時は全米を制覇(R&B.も1位)した『The World Is Getto』(1972年)、全米6位(R&B.1位)を記録の『Deliver The Word』(1973年)で頂点を極めており、ソウル界代表する存在として全米のトップ・グループに君臨していた。


 この来日公演はそんな彼らのまさに全盛ともいえる黄金期で、絶好のタイミングだったといえる。とはいえ、この時期彼らの人気は(今もそうだが)日本で絶大だとは言い難かたった。その理由は抜群の演奏力を持った本格的なバンドではあったが、初期のEric Burdonのようなグループの顔となるようなメンバーが不在で印象が薄かったからかもしれない。それゆえ当時日本で彼らを支持していた有名人は、元モップスのヴォーカリスト鈴木ヒロミツ(注1)氏程度だった。 

 その初来日公演は、東京・大阪等の大都市に交じって静岡の駿府会館(注2)でも開催されている。ただ昔から静岡で開催される公演は客の入りが悪く、業界では「鬼門」(注3)とされていた。それゆえチケットは入手したが、実際に開催されるかは、当日まで不安交じりだった。 そんな思いで会場に向かったが、今回は開場されており、胸をなでおろした。
 ただ会場の入りは半分程度で、近隣の席にいた熱狂ファンは、「あのWarが静岡まで来てくれているのに、なんだよこの集まり具合は!」と愚痴っていた。とはいえ無事コンサートは開催されたのだからメデタシ・メデタシという思いだった。

  開演時間をわずかに過ぎると、リラックスした雰囲気でメンバーが登場。ステージ上から「Hello」「KONBANWA」とコメントしながら、楽器のチェックが始まった。 
 そして、唐突にB.B.Dickersonのどっしりとしたベースが鳴り響き、そこにLee Oskerのハーモニカが絡み、ずっしりと地響きがするようなHarold Brownのドラムが刻まれ、バンド全体がマグマの噴火を感じさせるように<The World Is Getto>のパフォーマンスがスタートした。オープニングにしては単調なテンポではあったが、その重厚感のあるゴスペル的なサウンドには圧倒された。 
 続いてのナンバーはイントロからPaPa Dee Allenのアクレッシヴなパーッカッションが炸裂する大ヒット<The Cisco Kids>。ここでは、リズム隊以上にCharles MillerのサックスとLee Oskerのハーモニカが見事なアンサンブルで、最高のノリを体感させてくれた。 
 3曲目も大ヒットアルバム『The World Is Getto』から<City, Country, City>。ゆったりとしたリズムの間奏で聴かれるOskerのハーモニカ・ソロはまた格別なものだった。

 そして、4曲目からは彼らの最新スタジオ作『Deliver The Word』からの楽曲が演奏された。まずはリズム隊が大活躍のファンク・ナンバー<Me and Baby Brother>。そこではトップ・グループたる躍動感にあふれていた。 続くは<The Cisco Kids>のメロディー・ラインがフューチャーされた南部風のメキシカンな雰囲気が漂う<Southern Part Of Texas>。この手のチカーノ・サウンドは、後にLos Lobos等メキシコ系バンドに脈々と引き継がれているように感じる。

 6曲目はお持ちかねの大ヒット<Gypsy Man>。アルバムのイントロに挿入されていた風S.E.は、アフリカン・ルーツ・サウンドに通じたリズム隊のどっしりとしたプレイに置き換わってスタートした。この曲の肝は、PaPa DeeのパーカッションとBrownのドラムが刻むリズム隊の踏ん張りだが、間奏以降で聴かせる味わい深いOskerのハーモニカも見事なもので、10分を超す演奏ながら飽きさせる隙を与えなかった。

 そんな迫力満点のファンク・サウンドに続いてはゆったりとした<Four Cornred Room>に移り、ここで一息つく。そしてBrownのドラムをBGにRonnie Jordanからメンバー紹介。そのラストにコールされたOskerは『Deliver The Word』のラストに収録されていた<Blisters>で見事なハーモニカ・ソロを堪能させてくれた。 
 その演奏が終わると同時に、いよいよオーラスといわんばかりに定番の<Sleepin’ into Darkness>の演奏がはじまった。アフリカン・ビートとチカーノ・サウンドが融合したようなお馴染みの彼らの代表曲だ。間奏パートではBob Marley & The Wailersの<Get Up, Stand Upのフレーズも挟み込まれ、ラストはPaPa DeeのパーカッションとBrownのドラム・ソロよる怒涛の応酬合戦で締めくくられた。 

 メンバーが袖にはけると同時に、総立ちの会場来場客による「War~woou~ Ou~ Oooh」という合唱と、割れんばかりの拍手によるアンコール要請が自然発生。しばらくして再登場したメンバーは客席の大合唱を伴奏するように合わせてリズムを刻み、会場内をより一体感を増した。 そして一段落して「Honkey Now !」とコールされ、アンコールに応えた。Warらしいファンク・ナンバーだったが、この曲は未だに不明だ。そして、アンコールのラストは<Get Down>だと記憶しているが、残念ながらこちらも正確には思い出せない。 
 個人的には<All Day Music>が聴けなかったのが残念だったが、絶頂期のバンドの演奏のすさまじさは感動ものだった。そんな高揚する気持ちで、会場内で販売されていた『The World Is Getto』を購入して帰途に就いた。
 補足になるが、それ以降の来日公演で印象に残っているものといえば、1977年に東京で開催された「ミラージュ・ボウル」(注4)のオープニング・セレモニーへのスペシャル・ゲストだった。そこではGodiegoを前座(注5)に迎え、試合会場の後楽園球場に設営された特設ステージで、迫力のパフォーマンスを繰り広げている。この公演はテレビ中継されていたので、ご覧になった方も多いかと思う。 

 ここでは、コール&レスポンスで盛り上がる定番ソング<Why Can't We Be Friends?>
も披露されている。「I Know you're workin' for the」⇒「CIA~♪」 、「They wouldn't have you in the」「MAFAIE~♪」は、今もお馴染みの返しだ。

 なお現在もWarはオリジナル・メンバーでキーボード奏者のRonnie Jordan率いる7人編成で活動を継続しており、2017年に来日公演もおこなっている。また今年10月30日にはカルフォルニア州ベニス・ビーチで、結成50周年のホームタウン・ライヴを敢行し、動画配信もされている。その動画をご覧いただければ、今も本国では根強い人気に支えられている姿が確認できるはずだ。 
 そんな彼らにはオフィシャルでのライヴ・アルバムが3作リリースされている。1作目は文頭でも紹介した全盛期1973年のライヴ、2作目はMCAに移籍後の1980年の『The Music Band Live』、3作目はRonnie Jordanが率いている2007年の『Greatest Hits Live』だ。この中で個人的にお薦めしたいのは、1980年の2作目だ。人気が低迷していた時期のリリースで、セールス的には振るわなかったが、全盛期のラインナップで代表曲が全て聴ける唯一のライヴ作として必聴作だ。 

 (注1)元AnimalsのEric Burdonを崇拝していた彼は、BurdonをメインにしてデビューしたWarの熱心な信奉者だった。当時、自身がホストを務めていた東京12チャンネル(現:テレビ東京)で放送していた「In Concert」(ロック系ライヴ映像番組)でも熱く語っていた。 

 (注2)1964年に完成された東京オリンピック国立屋内競技場(代々木体育館)の設計で名高い丹下健三氏が、1957年に静岡駿府公園(現:静岡駿府城公園内に建造した旧静岡市を代表した多目的ホール。1978年11月に開館した静岡市民文化会館の完成により、老朽化を理由に閉館。

 (注3)1974年春に開催された全盛期Carpenters公演は東京ではプラチナ・チケットだったが、静岡公演は当日券が販売されていた。また夏に開催予定だったCommodors公演は、販売不振で当日中止という憂き目にあっている。 

 (注4)1977~1985年まで三菱自動車がスポンサーとなって東京で開催されていたNCAAカレッジ・フットボール公式戦。 

 (注5)Godiegoの前座公演はこの催しのテーマ・ソング担当していたことからだった。この年は『西遊記』で大ブレイクを遂げる前年だった。

 (文・構成:鈴木英之)

2021年12月18日土曜日

Francis:『反撥 / 可愛い玩具』(Unchantable Records / UCT-042)


 9月にリリースされたセカンド・アルバム『Bolero』が好評中のFrancis(フランシス)が、同アルバムから「反撥(はんぱつ)」を7インチで12月22日にシングル・カットする。約27年振りというアルバムの勢いもあり、このリリースは嬉しいニュースだ。
 
 FrancisはThe Red Curtain時代からのオリジナル・ラブの最初期メンバーで、90年の脱退後翌年から2014年までザ・コレクターズのベーシストだった小里誠(おり まこと)のソロユニットだ。94年にはファースト・ミニアルバム『Burning Bear!』をリリースしている。
 65年生まれの小里はThe Red Curtainと平行して、テクノユニット“Picky Picnic(ピッキー・ピクニック)”を結成し、85年にはドイツのAta Takよりファースト・アルバム『Ha! Ha! Tarachine』をリリースした。後に『シニカル・ヒステリー・アワー』の作者で女性漫画家の玖保キリコもメンバーとなり、当時のサブカル・シーンでは話題になっていた。
 このように幅広い音楽スタイルの趣向と、小里の柔軟なスタンスが、Francisの活動にも大きく影響していると考えられる。

『Bolero』 【Trailer】Francis New Album "Bolero

 『Bolero』にもドイツのポスト・パンクやニューウェイヴ・シーンを牽引したD.A.Fに通じるサウンドをはじめ、ユニット名のインスピレーション元と思われるフレンチポップ、チープでニッチなライブラリー系のモンド・ミュージックなど欧州ロマンティシズムを漂わせた数多のヴァリエーションを誇った曲が収録されており、一筋縄ではいかない強烈な個性を放っているので、アルバムの方も是非チェックして欲しい。 

 ここからはこの7インチ・シングルの収録曲を解説する。
 A面タイトル曲の「反撥」は『Bolero』のリード曲で、D.A.Fに通じるアタックの強いシンセ・リフと分厚く肉感的でファンキーなシンセ・ベース、プログラミングされたチープなドラムトラックが有機的に絡み合い、ヒプノティックなグルーヴを形成している。そこに小里のダンディな歌詞とボーカルが乗るという独自性が非常に新鮮で、9月初頭に送られてきたアルバム音源を一聴して虜になってしまった。
 間奏のエキセントリック且つ奔放なギターソロは、セッションマンとしてYUKIからカーネーションなどをサポートする名手の松江潤のプレイで、このサウンドの中でいいコントラストを醸し出している。因みに彼は、弊サイト企画でもお馴染みのドラマー西浦謙助(元相対性理論集団行動)と、“誰でもエスパー”というユニークなバンドも組んでいるのでチェックして欲しい。
 とにかく令和3年度の問題作と言える『Bolero』を象徴するこの曲を、7インチでシングル・カットしようと提案した、Unchantable Records主宰のグルーヴあんちゃんのセンスにも脱帽してしまった。またジャケット・デザインはアルバム同様に小田島等で、2年前に弊サイトで紹介した鈴木恵TRIOの『come here my dear』でもそのセンスを発揮しており、ここではミリタリーアートの手法でダンディな小里の姿をとらえている。

 
     【MV】Francis “反撥 Repulsion” 

 一方B面の「可愛い玩具」は、セルジュ・ゲンスブールに通じる退廃的でキッチュな歌詞を持ち、ファーストテンポの2ビートで演奏したフレンチ・ロカビリーと言えばいいだろうか。この曲ではGREAT3のメンバーで多くのセッションでも高名な白根賢一が巧みなドラム・プレイを聴かせている。
 小里の非凡なソングライティング・センスには注目で、軽快なヴァースとサビのノベルティ感から間奏を経て、甘美な大サビへと導く流れはポップスを知り尽くした故になせる技である。4分44秒の中で繰り広げられるドラマティックな展開は聴く者を決して聴き飽きさせないだろう。



 Francis=小里誠の唯一無二の魅力を7インチに凝縮したこの作品は、自分へのクリスマス・プレゼントとしても最良かも知れないので、多くの拘り派音楽ファンは是非入手して欲しい。

(テキスト:ウチタカヒデ