BG-1はオーティス・レディングの<Try A Little Tenderness>を白人として初めてカヴァー・ヒットさせたThree Dog Nightの1969年サード・シングル(U.S.29位)。この曲のヒデキ・ヴァージョンは1975.11.3.ソロ歌手史上初日本武道館第1回リサイタル『MEMORY - 西城秀樹20歳の日記』収録。演奏は永尾公弘とザ・ダーツ, 芳野藤丸とU.F.O.。「日本語詞」で歌われ後半の盛り上がりはヒデキらしい仕上がり。そしてシャンソンのスーパースター、ジャック・ブレルのスタンダード・ナンバー<If You Go Away>日本語訳詞<泣かないで>。
私はここでのフランキー・ヴァリの全米1位曲<瞳の面影(My Eyes Adored You)>を歌唱するヒデキを見て彼のライブに注目。この曲はTBSで放映された『セブン・スター・ショー』でも披露、またヒデキのシングル50枚目発売記念の1985年武道館コンサートではゲストの藤丸さん登場時、ヒデキが″もおいちど~”と鼻歌交じりに呟いている。そしてエロスミス1974年セカンド・アルバム『Get Your Wings』からのサード・シングル<S.O.S.(TOO BAD)>。スティーヴン・タイラーを意識したヒデキ、ジョー・ベリー然とした藤丸さんのギター・プレイは特に聴きもの。さらにグランド・ファンク・レイルロードの定番で<Heartbreaker>。
BG-3はフランク・シナトラが1966年に全米1位に送り込んだ大ヒット<Strangers In The Night(夜のストレンジャー)>。この曲をベット・ミドラーが1976年サード・アルバム『Songs for the New Depression(ベット・ミドラーⅢ)』に収録されたカヴァーテイクから。
続いては第8作新日本フィルハーモニー交響楽団共演Live『バレンタインコンサート・スペシャル』から。まず「阿久悠=三木たかし」コンビによる情緒溢れるメロディの<ラストシーン>、続いてイントロにビゼーの<カルメン>を合体させた<君よ抱かれて熱くなれ>という服部氏の指揮によるクラシックとドッキングさせた粋な構成。そしてベット・ミドラー風アレンジによる<Strangers In The Night(夜のストレンジャー)>。さらにポール・マッカートニー&ウィングス1975年の世界的大ヒット<Silly Love Song(心のラブ・ソング)>、ラストは<You Keep Me Hangin' On>。これは1966年に全米1位に輝いたシュープリームスのオリジナルというよりも、翌年のヴァニラ・ファッジのカヴァー印象が強い。
BG-4は前パートのラスト<You Keep Me Hangin' On>のロッド・スチュワートのカヴァー。これは1977年リリース第8作ソロ『Foot Loose & Fancy Free(明日へのキック・オフ)』に収録されたもの。時期的にヒデキはここでのロッド・ヴァージョンを意識して服部克久氏にアレンジを依頼したかも。氏もそれに応えクラシック・ベースの気品溢れるものに。
ここでは翌年のコンサートを連想させる<若き獅子たち>や、洋楽カヴァーの<What a Diffrence a Day Makes(恋は異なもの)>を披露。後者はエスター・フィリップスのカヴァー(1975年全米.20位 R&B. 10位)のダンサブル・ベース(オリジナルはダイナ・ワシントン1959年全米8位 R&B. 1位)、さらにメンバー紹介をはさみコンサートのハイライトになっています。
BG-5は<What a Diffrence a Day Makes(恋は異なもの)>のエスター・フィリップスのヴァージョン。続いては1976年の武道館第2回コンサートを収録した『HIDEKI LIVE '76』から。今やブラス・バンドによる応援ソング定番<African Symphony>。この曲は<The Hustle>のヴァン・マッコイが1974年にSoul City Symphony を率いた『Love Is The Answer』の収録曲。そして、ドゥービー・ブラザースのライヴでオープニングに演奏される定番1972年のヒット曲<Jesus is Just Alright(希望の炎)>。
BG-6は桑名正博さんのソロ・デビュー曲<哀愁トゥナイト>。ヒデキもお気に入りナンバーだったようで、第 9作目ライヴ・アルバム『永遠(とわ)の愛7章/西城秀樹』と1981年の『HIDEKI SONG BOOK』にも収録。
BG-7はザ・ピーナッツの<Epitaph>。この曲はプログレッシヴ・ロックの最高峰キング・クリムゾンが1969年にリリースした金字塔『In the Court of the Crimson King (subtitled An Observation by King Crimson)(クリムゾン・キングの宮殿)』の収録曲。このヴァージョンは1972.8.19.の文教公会堂での山本とおる氏の奏でるギターに乗せたピーナッツの名唱。
次のパートはヒデキ・ライヴの中でも“伝説”として語り継がれている1979.8.24.後楽園球場の第2回コンサート<「BIG GAME '79 HIDEKI」から。このコンサートは雷鳴とどろく激しい雨の中で敢行されたものです。その悪天候の中でもヒデキのパフォーマンスはゆるぎなく、ビリー・ジョエルの<HONESTY>、続いて雨を吹き飛ばす勢いでクィーンの<DON'T STOP ME NOW>、ヴィレッジ・ピープルの<Go West>。
BG-8はアメリカのブギ・バンド、フォガット1975年のヒット<Fool For The City>です。この音源は1978年の第一回後楽園球場でのもので、このライヴは藤丸さんが「One Line Band」結成により、サポート参加した最後のライヴ。
このライヴではアラン・パーソンズ・プロジェクトの<Some Other Time(哀しい愛の別離)>、1977年リリースのセカンド・アルバム『I Robot』の収録曲。そしてバリー・マニロウの大ヒット<Copacabana (At The Copa)>。
BG-9は後楽園球場1980年7月18日第3回コンサート「BIG GAME '80 HIDEKI」からユーライア・ヒープ<July Morning>。収録曲はジェファーソン・エアプレインから発展したジェファーソン・スターシップの1979年リリース第5作『Freedom at Point』から<Rock Music>。そして、山下達郎さんのブレイクきっかけとなった<BOMBER>。
BG-10は『J・U・S・T・R・U・N'84/HIDEKI』のオープニング<パシフイック>(1984.7.5. 48th Single <背中からI Love You>カップリング曲)。このアルバムのセット・リストはかなりユニーク、まずは女性ヴォーカルWakazukuriを大きくフューチャーした<Once Love Touch's Your Life>。この曲はスティービー・ワンダーの元伴侶Syreeta 1983年リリースの第9作『The Spell』から。続いて<My Male Curiosity>、米米CLUBがお手本としたバンドKid Creole & The Coconutsの映画『Against All Odds(カリブの熱い夜)』への提供曲。オーラスは、ヒデキの第17作『GENTLE・A MAN』に収録の角松敏生さん書下ろしによる名ファンク・ナンバー<Through The Night>。
そして本作であるが、バンドの歴史で初となる全収録曲をオリジナルで構成しており、平川以外にも弊サイトでお馴染みのベーシストの西岡利恵、アコースティック・ギター兼コーラスのリカが曲を提供しているのは注目に値する。作風的にも先行配信されたリード・トラック「The Sun Is Up」(作曲:西岡)を聴いた音楽ファンなら理解出来ると思うが、バンドとして新たなフェーズに移行したと言っていい。
続く「The Sun Is Up」は前文通り先行配信されたリード・トラックで、本作全体を象徴している。曲作りの詳しい経緯はインタビューを読んで欲しいが、昨年8月にラフ・ミックスを聴かせてもらった時点から、この本格的なサイケデリック・ロック・サウンドには驚いた。Megumiの陰りのあるヴォーカルもマッチしていてペンフレンドクラブ(以降ペンクラ)の新たなサウンドとして注目している。エレクトリック・シタールとラーガ・スケールのリード・ギターは平川のプレイだ。西岡の作曲で作詞は彼女とYamada、Megumiの共作となっている。
「Floating To You」は平川が主導して西岡が作曲でサポートし、廣田幸太郎が作詞を担当したトーチソングだ。『Today!』から『Pet Sounds』へ移行する時期のビーチボーイズに通じるサウンドやコーラスが夏の終わりを想起させている。中川ユミによるグロッケンやパーカッションも効果的である。
西岡が作曲した「At Least For Me Tonight」は、リカ作の「Mind Connection」にも近い曲調だが、コード進行やアレンジ、転調するパートなどでサイケ度はこちらの方が高い。サウンド的にはジャン&ディーンの『Save For A Rainy Day』の影響下にあり、夢想的な歌詞はYamadaによるものだ。
本作中比較的ストレートで親しみやすい「My New Melodies」は平川の作曲で、夏を終えて秋の始まりを讃えたラブソングといえる。溌剌としたMegumiのヴォーカルには平川、リカ、そいのコーラスが絡んでいる。こういったサウンドの中にも間奏のギター・ソロの音色や多重録音したマンドリンといった10cc趣味は平川のアイディアだろう。作詞は平川とYamadaの共作である。
本作でリカが提供したもう一曲が「Jump Over Time」で、無垢な世界を表現した英語歌詞まで一人で書いており感心してしまう。しっとりとしたカントリー・ロック調のこの曲でもMegumiのヴォーカルに絡む3人のコーラスが美しい。平川が弾くバリトン・ギター、そいによるウーリッツァー系エレピが効果的だ。
フォーク・ロック調の「People In The Distance」は、コード進行やベース・ラインからUKのネオアコースティック・ロックのファンも魅了しそうだ。本作でサイケ・ソングの名曲を手掛けた西岡の作曲で、弊サイトで連載コラムを担当している程、幅広い音楽趣味を持つ彼女らしいセンスである。コロナ禍の生き方を反映した歌詞はYamadaによるものだ。大谷はこの曲ではテナー・サックスのソロを披露している。
続く「You Know You've Heard That Before?」は複数のアコースティック・ギターのアルペジオが美しく、前曲からの流れが非常にマッチしている。平川の作曲でYamadaの作詞だが、フィフス・アヴェニュー・バンドやアメリカにも通じるフォーキーで転調が多いサウンドは筆者も好みである。アコギのリフと呼応する中川のグロッケンや変拍子となる間奏などアレンジ的にも完成度が高い。その間奏の幻想的なフルート・ソロはヴォーカルのMegumiが自ら演奏している。
The Pen Friend Club / Beyond The Railroad
(Official Music Video)
70年代初期の西海岸ロック風の「Beyond The Railroad」は、西岡作の「The Sun Is Up」に続いて8月17日に配信された平川の作曲、Yamadaの作詞で、曲作りの経緯はインタビューを読んで欲しい。やはりこの曲の醍醐味は、Megumiのヴォーカルに絡む3人のイーグルス・スタイルのコーラスではないだろうか。巧みなギター・ソロの他バンジョーも平川のプレイだ。
モチーフはザ・ローリング・ストーンズの「Gimmie Shelter」(『Let It Bleed』収録)です。
西岡と共作したM5「Floating To You」は全体のコード進行とAメロを僕が作りました。Bメロの歌メロをどうしても作れず、西岡にその部分を作ってもらいました。西岡が提出してきたそのメロディを聴いたときは本当に驚きました。個人的には一番自分らしい曲が出来た気がしています。その曲が西岡、廣田との共作である点も感慨深いです。
モチーフはグレン・キャンベルの「Guess I’m Dumb」(同名シングル)です。
M11「Beyond The Railroad」は僕が在籍していたザ・ヤング・フォークスというバンドの為に作った1970年代初頭の西海岸ロック的な曲で約10年前には構成とメロディは出来ていました。その時点での発表はなく、ペンクラを結成してからずっと発表の機会を探っていましたが、本アルバム収録曲のジャンルの多様さの中なら成立すると判断し、改めてYouth Yamadaに英詞を依頼し完成させました。
モチーフはPoco「A Good Feelin' To Know」(同名アルバム収録)、イーグルス「Take It Easy」(同名デビュー・シングル)です。
M12「Dawn」はザ・ビートルズ「Happiness Is a Warm Gun」(『The Beatles』収録)、ポール・マッカートニー「Band On The Run」(同名アルバム収録)のような組曲形式の曲を作りたいと思い、作りました。
「Our Overture」の怪しくクールな感触はコード進行も重要ですが、リズム隊のコンビネーションもあってのサウンドですね。また西岡さんと共作した「Floating To You」や以前のバンド用に作っていた「Beyond The Railroad」の経緯も興味深いです。
個人的には「Dawn」の構成力に惹かれました。先ほど触れた「Our Overture」のヴァースのパートが挿入されていて、モチーフで挙げていた曲以外にもサンダークラップ・ニューマンの「Something in the Air」、ビートルズだとポールが主導した『Abbey Road』後半のメドレーの匂いもしました。
これら本作全体を聴いて感じたのは、前作からの間にリリースしたアソシエイションのカバー・シングル『Along Comes Mary』(PPRD-0005)や『Chinese Soup』(SZDW1092)のカップリング「Mind Connection」(本作にも収録でリカ作)から兆候はあったので、ソフトランディングと捉えてもいいかも知れませんが、ポップス然としたストレートなMOR系の曲が減って、60年代~70年代初期の英国ロックや米国西海岸ロックをルーツとした曲の比重が増えてきましたね。
◎西岡利恵(以下西岡):M2「The Sun Is Up」は2年くらい前、藤本有華がヴォーカルだった第5期の頃に作りました。Pentangleの「Let No Man Steal Your Thyme」を聴いていて思いついたフレーズから作り始めましたが、途中からはBuffalo Springfieldの影響が大きかった気がします。平川にアレンジしてもらう段階でもBuffalo Springfieldがイメージ共有のキーワードになっていました。
◎西岡:第5期の終わりに「The Sun Is Up」を作った後、バンド的にも世の中的にも大きな変化があり、第6期になってからはまもなく自粛生活に入りました。その期間にその他の曲を作ったり自宅での録音を進めたりしていましたが、メンバーとも自由に会えず先の見えない中での制作だったので無事に完成して本当に嬉しいです。