2020年9月3日木曜日

Kaede:『秋の惑星、ハートはナイトブルー。』(T-Palette Records/TPRC-0256)



 新潟在住のアイドル・ユニットNegicco(ネギッコ)のメンバー、Kaede(カエデ)が、セカンド・ミニアルバム『秋の惑星、ハートはナイトブルー。』を9月8日にリリースする。
 彼女は今年の元旦にファースト・フルアルバム『今の私は変わり続けてあの頃の私でいられてる。』をリリースしており、9ヶ月というペースは異例ではないだろうか。

 弊サイトではこれまでにもNegiccoのサード・アルバム『ティー・フォー・スリー』(2016年)、リーダーであるNao☆のソロ・シングル『菜の花』(2018年)をそれぞれ取り上げているが、本作のプロデューサーとして名を連ねているのは、弊サイトで評価が高く常連であるLampの染谷大陽、先月15日にマキシシングル『くらげ』をリリースしたばりのウワノソラの角谷博栄の二人ということで、取り上げない訳にはいかないのだ。
 そもそもNegiccoと彼らの繋がりは、角谷が『ティー・フォー・スリー』の先行でリリースされた7インチ・シングル「土曜の夜は」を編曲含む楽曲提供をしたのが始まりである。3年後の19年6月にはKaedeのファースト・ミニアルバム『深夜。あなたは今日を振り返り、また新しい朝だね。』に染谷が「あなたは遠く」を提供したのが記憶に新しい。
 その「あなたは遠く」について染谷は、Lamp色を抑えて職業作家的スタンスでガール・ポップをクリエイトしていた。 一方本作では全面的に角谷と共同プロデュースすることで、自分達のカラーを色濃く打ち出しつつ、ヴォーカリストとしてのKaedeの新たな魅力を開眼させることに成功している。 
 本作にはLampとウワノソラの各セッションから選抜されたミュージシャンが主に参加しており、基本のリズム・セクションはウワノソラ側のベーシストの熊代崇人、山中千尋トリオなどジャズ・フィールドで活躍するドラマーの橋本現輝、Lamp側のキーボーディストの鈴木潤、ギターとシンセサイザーは染谷と角谷自身がプレイしている。
 アディショナルではLampセッションではお馴染みで、兄弟ユニットと言えるMinuanoを主宰するパーカッショニストの尾方伯郎をはじめ、両バンドの関係者が多く参加している。またバッキング・ヴォーカル(コーラス)ではLampの榊原香保里と永井祐介、ウワノソラのいえもとめぐみが参加しているのが嬉しい。


 では本作『秋の惑星、ハートはナイトブルー。』の収録曲を解説していこう。
 冒頭の「秋の惑星 -Opening-」は次曲の変奏曲的導入部となる染谷のインスト作品でKaedeは不参加だが、Lampの『ゆめ』(2014年)に通じるサウンドだ。左チャンネルの榊原と右チャンネルのいえもとの高域のコーラスの対比、センターの永井に深町仰と田中ヤコブ(家主)が加わったコーラスのバランスが素晴らしい。榊原はフルート、いえもとはトランペット!も披露していてその多才さをうかがい知れる。パトリース・ラッシェンの「Remind Me」(『Straight From The Heart』収録 / 82年)を彷彿とさせる、シンコペーションが効いた鈴木のフェンダー・ローズのプレイも印象に残った。編曲は染谷と角谷の共同である。
 続く「君が大人になって」は染谷単独の作詞作編曲で、透明感があるKaedeの歌声が映える洗練されたポップスだ。サウンド的には変拍子のドラミングを持つヴァースからセカンドヴァースを経てサビに至るパターンが、2コーラス目からテンポアップした16ビート化して展開するが、3分余りの尺にコンパクトに収められている。鈴木のクラビネットと尾方のコンガのプレイは職人技の粋で聴き応えがあり、『木洩陽通りにて』(05年)辺りが好きな古くからのLampファンにもアピールするだろう。
 なお染谷が手掛けた歌入りの3曲は、Kaedeのヴォーカル定位が右チャンネル側、橋本のドラムが左チャンネル側にミックスされているのが興味を惹く。これはマルチ・レコーダーのチャンネル数が少なかった60年代サウンドに憧憬を抱く染谷らしい実験精神からだろう。

 榊原が作詞した「モーニングコール」も一聴して染谷イズムな技巧的旋律で歌手としては難易度が高いが、Kaedeは自らの個性を活かしつつうまく表現している。この曲ではコーラス・アレンジも素晴らしく、2コーラス目から複雑に展開する榊原と永井のハモリと、ブリッジでテンションの様に鳴っているヤコブの個性的なコーラスなどよく構成されている。 
 作詞:榊原と作編曲:角谷という「さよならはハート仕掛け」は、本作ならではのレアな組み合わせで、ロマンティックな歌詞をメロウ・グルーヴのアレンジで包み込んだエクレアのような甘いナンバーだ。本作中Kaedeの声質的にも最もマッチしているサウンドではないだろうか。デニース・ウィリアムスの「Free」(『This Is Niecy』収録 / 76年)に通じるサビの展開などガール・ポップスとしての完成度が極めて高い。この曲では鈴木はアコピのみに回り、その他のキーボードはウワノソラの諸作で知られる宮脇翔平が担当していて、ハモンド・オルガンのオブリやソロで光るプレイを聴かせてくれる。

 「セピア色の九月」は作詞:榊原、作曲:永井、編曲:染谷というLampの強力なトライアングルによるブラジリアン・テイストの曲で、『東京ユウトピア通信』(11年)に収録されていてもおかしくないサウンドだ。随所でKaedeの魅力的なファルセット・ヴォーカルが聴けるのでファンは必聴だろう。ハチロクのヴァースは永井らしい旋律で、アンニュイなブリッジを挟んで疾走感あるサビへと雪崩れ込む。
 「冷ややかな情景」(『東京ユウトピア通信』収録)にも通じる比類なき多幸感を持ったサビの美しさは本作中随一で、筆者個人的にもベスト・トラックかも知れない。また複雑な展開に対応したリズム・セクションと尾方のパーカッションのプレイは聴きものである。 

ジュピター / Kaede

 角谷単独の作詞作編曲の「ジュピター」は、「セピア色の九月」に対するウワノソラからのブラジリアン・サウンドでの回答で、『陽だまり』(17年)の後半部で展開したサウンドを彷彿とさせる。この曲も目まぐるしく展開するが、パート毎にKaedeの表現力あるヴォーカルが聴けるのだ。リズム隊のプレイに角谷のクラシック・ギター、鈴木のアコピとローズ、尾方のコンガが有機的に絡むグルーヴはよくアレンジされており、ジャズ・フィールドで活躍する荻原亮によるギター・ソロも光っている。 
 ラストの「ハートはナイトブルー」は、既出の「モーニングコール」をモチーフにしたと思しき染谷作のムーディーなインスト曲で、主役のKaedeにNegiccoファンには嬉しい2人が参加したプリティーなコーラスが聴けるので本作を入手してクレジットを確認しよう。ジャズ・テイストのリード・ギターは角谷で、編曲も染谷と角谷によるものだ。 

 総評として、弊サイトで高評価しているLampの染谷とウワノソラの角谷が全面プロデュースしていることで、各バンドのサウンドを想起させることは容易なのだが、今回Kaedeというヴォーカリストとのコラボレーションによって計算を超えた化学変化が起こったことは間違いなく、希なポップス・アルバムがクリエイトされている。 
 興味を持ったKaede及びNegiccoファンは元より、Lampとウワノソラのファンも是非入手して聴いて欲しい。 

(テキスト:ウチタカヒデ









2020年8月23日日曜日

名手達のベストプレイ第8回~デイヴィッド・T・ウォーカー



出典 :http://blues.gr/

 伝説のギタリスト、デイヴィッド・T・ウォーカー(本名:David Tyrone Walker)は、1941年6月25日オクラホマ州東部に位置する第二の都市タルサで生まれた。同州はアメリカ先住民が強制移住させられた歴史を持ち、インディアンの保留地が多いことで知られている。その様な背景から彼の父親はアフリカ・アメリカンだが、母親はチェロキー族の血を引いている。
 家族はデイヴィッドが2歳になった頃にカリフォルニア州ロサンゼルスの海岸地区サンペドロに移住し、5年後に中央カリフォルニアに移り住んだ。更に7年後にロサンゼルスのワッツ地区に戻った頃、教会音楽からギターに興味を持ちそれを手にしたのは彼が15歳になった頃だという。  

 高校在学中にはThe Kinfolksというバンドを結成し、卒業後は早くもニューヨークでプロ・ミュージシャンとしての活動を開始している。その後The Kinfolksはモータウン・レコードと契約し、マーサ&ザ・ヴァンデラスの専属バンドとなる。デイヴィッドはギタリストとして頭角を現し、マーヴィン・ゲイ、ジェリー・バトラー、ジャクソン5のセッションにも参加して、その名は知れ渡るようになる。
 同時期Universal City Records傘下のレーベルRevueから初のソロアルバム『The Sidewalk』(68年)、続いて『Going Up!』(69年)とソウル・ジャズ系の2作、マイナー・レーベルのZea Recordsからの『Plum Happy』(70年)ではスライ&ザ・ファミリー・ストーンの影響下にあるサイケデリック・ファンク色の強いサウンドを打ち出し、ギター・インストゥルメンツという新たなジャンルで自らの表現場所を開拓していく。 

 70年代に入るとスティーヴィー・ワンダー、ダイアナ・ロス、マイケル・ジャクソンのソロといったモータウンの名だたる看板アーティスト達のセッションもこなしていくが、ポップス・ファンにとっては忘れられないのは、キャロル・キングの『Rhymes & Reasons』(72年)、『Fantasy』(73年)への参加だろう。従来の歌伴を超えたデイヴィッドのプレイは、志高いセッション・ミュージシャンのアイデンティティを確立したと言って過言ではない。また当時彼女が所属していたODEレコードではソロ契約もして、『David T. Walker』(73年)、『Press On』(73年)、『On Love』(76年)の3作をリリースし、ニューソウルの匂いを残しつつジーン・ペイジなどのアレンジャーによるオーケストレーションを導入するという新たな試みをしている。
 
彼が参加したアルバムは、1963年の『The 1963 Sound Of Hank Ballard And The Midnighters』から2017年のVulfpeckの『Mr. Finish Line』まで2500作以上とされており、時代を超えてそのギタープレイが愛されている。正にミュージシャンズ・ミュージシャンという肩書きが相応しい存在なのだ。 
 さてここでは、そんなデイヴィッド・T・ウォーカー氏を心より敬愛するミュージシャン達と、彼のベストプレイを挙げてその偉業を振り返ってみたい。今回は参加者9名の内ギタリストが6名もいるのでテクニカル面でも解説してくれた。
 サブスクリプションの試聴プレイリストを聴きながら読んで欲しい。




 【デイヴィッド・T・ウォーカーのベストプレイ5】 
●曲目 / ミュージシャン名
 (収録アルバムまたはシングル / リリース年度)
◎選出曲についてのコメント
※管理人以外は投稿順により掲載。


足立浩(アダチ ヒロシ)
Drums & Percussion 奏者/じゃむずKOBO 代表/S.A.D.ドラムスクール 講師 
◆HP URL:https://adhiroshi.amebaownd.com 



●You’ve Been Around Too Long / Carole King(『Fantasy』/ 1973年)
◎綺麗な曲繋ぎのこのアルバム。 
 ハーヴィー・メイソンのドラムと絡みながらリズムを立体的に仕上げています。
 個人的に好きな2:58のココ(是非聴いてください笑) そして良い曲だったなぁと油断しているとラストでやられます。 

●傘がない-イントロダクション- / 井上陽水(『二色の独楽』/ 1974年)
◎アルバムのイントロダクション。とても美しい響きで一気に世界観を作ってしまうのは流石。
 「流れるように、歌うように」見事に体現されたプレイ。
 その後の「夕立」のギターリフとのコントラストが素晴らしい。

●Come on Back to Me Lover / Margie Joseph
 (『Feeling My Way』/ 1978年)
◎最初から最後までこんなにも色彩豊かに表情をつけていく、、、凄すぎませんか?2:07からギターソロへ移行しますが、何とも流れが綺麗。
 楽器で歌うってこうゆう事なんですね。はぁ素敵。

●In All My Wildest Dreams / Joe Sample
 (『Rainbow Seeker』/ 1978年)
◎ジョー・サンプルとのコンビネーションが素晴らしいこの曲。
 会話が聴こえてくるこの感じが大好きです。
  2:49の抜き具合が何ともセクシー!

●Honest I Do/ JOE SAMPLE - DAVID T.WALKER
 (『SWING STREET CAFE』/ 1981年)
◎全編ご機嫌なブルースサウンドを堪能できるアルバム。
 その中でも終始リラックスしたプレイを楽しめる1曲。
 2:26のデイヴィッドのギターに対してお茶目に返すジョー・サンプルに笑顔が溢れます。



You’ve Been Around Too Long / Carole King 



渡瀬賢吾(ギタリスト)
roppen、bjons、Spoonful of Lovin'、クララズ、ソフテロなど。



●Doo Doo / David T. Walker(『PLUM HAPPY』/ 70年)
◎ソロ3作目。後のOde時代とはまた違う、荒削りなファンクはこの時期ならではの魅力。Afriqueのアルバム同様、ワウやファズで遊んだこの音作りなら、正直デイヴィッド・Tでなくてもいいのでは?とも思いはしますが、芯にあるのはあくまで彼の歌心なので、他の人のギターではダメなのです。

●Directions / Carole King(『Fantasy』/ 1973年) 
◎全編デイヴィッド・Tのギターが素晴らしいアルバム、この曲も例に漏れず個性が爆発しています。ホーンやストリングスを配したアレンジの中にあっても、シグネチャー的なトリルやハンマリング/プリングオフの音がどうしても耳に残ります。 

●Evergreen / BOOKER T(『Evergreen』/ 1974年)
◎イントロから淡々と続くカッティングが、ブッカー・Tのオルガンとともに徐々に熱を帯び、何とも言えない高揚感をもたらす、その様相はさながらミニマルファンク。曲間とアウトロでわずかにフィーチャーされるギターパートだけでハッとさせるのは流石です。

●Street Walkin’ Woman / Marlena Shaw
(『Who Is This Bitch, Anyway?』/ 1975年) 
◎楽曲、リズム、歌とどれも最高のこのアルバム、デヴィット・Tは名手ラリー・カールトンとのツインギター。「Feel Like Makin’ Love」はじめどの曲でもいいのですが、ダイアログのあと突如鳴り響くこの2曲目を。 高速ビートからスイングへと移り変わるリズムを、シンコぺの効いたオブリとバッキングで乗りこなす様は圧巻。

●Do It To My Mind / Johnny Bristol
 (『Bristol's Creme』/ 1976年)
◎フリー・ソウル〜AORの流れを感じるこのアルバム、この1曲目に先導されるようにメロウでファンキーな良い曲ばかり。 ダブルストップを多用したデイヴィッド・Tのギターは洗練の極みで、パーカッションや分厚いコーラスと絡むオブリも気持ち良いです。


Do It To My Mind / Johnny Bristol



 【TOMMY (VIVIAN BOYS) 】
オフィシャルサイト : https://twitter.com/VIVIAN_BOYS



●Long Distance / Garnell Cooper & The Kinfolks 
(7"『Green Monkey』B面/ 63年) 
◎リーバー&ストーラー制作。ホットロッド曲「Mustang」と共に『Las Vegas Grind 6』に収録の猥雑キラー。デイヴィッドT元素全開。ベースの初期相棒トレイシー・ライトらとマーサ&ザ・ヴァンデラス専属バンドに(68年2月初来日)。

●Nuki Suki / Little Richard(『The Second Coming』/ 72年) 
◎黄金期組(バンプス・ブラックウェル、リー・アレン)、レッキング・クルー(マイク・ディージー、ジム・ホーン)、架け橋アール・パーマー、次世代チャック・レイニー。デイヴィッドTのワウは、それらとリチャードの叫び&クラヴィコードを繋ぐグルーヴの核。

●Spanish Harlem / The Crusaders(『Hollywood』/ 72年) 
◎モータウン傘下レーベル作。スペクター作曲関与のベン・E.キング曲。チャック・レイニーと共に客演。デイヴィッドTの対旋律、ワウを絡めたリズムパターンの無限の引き出しを支える、アーサー・アダムスとの二人羽織は『イタリアン・グラフィティ』等でも。 

●On Broadway / David T. Walker(『David T. Walker』/ 73年) 
◎シンガー、キャロル・キングの仕掛人、ルー・アドラーのOdeより。ザ・クリスタルズ版経由でスペクターがギターソロ参加の、ザ・ドリフターズ版が雛形。ウィルトン・フェドラー、ビリー・プレストン、何よりボビー・ホールが生む、マーヴィン・ゲイ諸作感。

●Only With You / Nick DeCaro (『Love Storm』/ 90年) 
◎山下達郎『Big Wave』収録曲。ブルース・ジョンストンと似たデカロの舌足らずな歌と、デイヴィッドTのオブリは、原案のブルース&テリー「Don't Run Away」をより想起。
 「アンダー・ザ・ジャマイカン・ムーン」同様、聴き処はFO前。




Long Distance / Garnell Cooper & The Kinfolks




 【小川タカシ(カンバス)
ソロユニット、カンバスのボーカル、ギター、作詞作曲として活動中。
また、楽曲提供やコーラス、ギターなどのサポート・レコーディングも行う。
オフィシャルサイト : https://canvasweb.net/ 



●Hot Fun In The Summertime / David T.Walker
 (『David T.Walker』/ 1971年)
◎Sly & The Family Stoneが1969年にリリースした曲のカバーです。原曲も最高ですが、このバージョンは最初の1音が最高にソウルフルだなと思いました。珍しくワウペダルを踏んでいるのも好き。

●Our Lives Are Shaped By What We Love / Odyssey
 (『Odyssey』/ 1972年)
◎定番曲「Battened Ships」が有名なOdysseyの1stに収録されている曲。昔から好んで聴いていたのですが、このギターがDavid T.Walkerだということに最近気づきました。ピアノのようであり、ホーンのようであり、フルートのような(もちろん”ハープ”も)、ギター1本でいろんな役割をこなしているのが凄いです。 

●If I Lose This Heaven / Quincy Jones(『Body Heat』/ 1974年)
◎ソウル/ジャズの名盤、Quincy Jonesのアルバムから。振られた女性の悲しい歌らしいのですが、幸せだった頃に思いを馳せるような、サビの多幸感&切なさにグッときます。
 独特なグルーヴのカッティングはデヴィTならではですね。

●Body Heat / Leon Ware(『Musical Massage』/ 1976年)
◎先に挙げた曲の作曲者でもあるLeon Wareの2ndから。これくらいのBPMの曲が、David T.Walkerのギターが一番映えるなと思います。
 サビの、高音部分で弾くダブルストップが気持ちよすぎますね。

●Running Away (feat. Joey Dosik, David T. Walker & James Gadson) / Vulfpeck 
 (『Mr. Finish Line』/ 2018年)
◎最近お気に入りのファンクバンド、VulfpeckがJoey Dosik、David T. Walker、James Gadsonとコラボレーションした曲。70年代との違いは、ギターがGibsonのByrdlandじゃないという点。
 ギターのサウンドは当時とは違いますが、ギターのタッチは紛れもなくデヴィTですね。
 ちなみに、今回選んだ5曲はBPM100以下、自分が一番気持ち良いと感じるテンポの曲ばかり選ばせていただきました。



Our Lives Are Shaped By What We Love / Odyssey 



角谷博栄(ウワノソラ/ウワノソラ'67)
マキシシングル『くらげ』8月15日リリース。
オフィシャルサイト : https://uwanosora-official.themedia.jp/ 



●Angie Girl / Nick DeCaro (『Italian Graffiti』 / 1974年)
◎大学時代、ギターの師匠とデヴィTの話題になった。こんなギタープレイは本当にドエロな人ではないと無理だろうね、という結論に至った。
 今でもそんな気がする。色っぽくて男のロマンと哀愁を背負ったギタリスト。

●I Wish You Love / David T. Walker (『On Love』/ 1976年) 
◎デヴィTのライブを初めて観たのは高三の秋。友人といった東京ブルーノートだった。 目まぐるしい(指が早く動くなど)サーカスのような演奏をすごいと思ってしまうような青年だった僕を更新させてくれた。
 そういったプレイヤーとは対極にある人だと思う。間や味、心地よさ、そういったものが僕にとっては本当に好きな演奏の技術なのだと感じた。 その時に物販で購入したアルバムの中からの一曲。

●Your Love-So Good I Can Taste It / Barry White
 (『Is This Whatcha Wont?』/ 1976年) 
◎Barry White、Love Unlimited Orchestra(ジーン・ペイジ)、デヴィT、僕にとってこの人達のサウンドに共通する物は、男性という生き物の繊細さと弱さ、脆さ。
 それが本当に心地よいアンサンブルとなって夢の世界へ誘ってくれる所。尺は長いが本当に大大大好きな曲。

●You Need A Change / Syreeta & G.C. Cameron
 (『Rich Love, Poor Love』/ 1977年)
◎デヴィTはほぼアンプ直差し。弦を弾いた音がそのまま耳へ。 参加作品は膨大。彼が参加している曲はクレジットを見なくても彼だと分かる。

●What's Going On (Live) / Bernard Purdie, Chuck Rainey, David T. Walker etc
 (『Coolin' 'N Groovin' (A Night At On-Air)』/ 93年)
◎マーヴィン・ゲイのカバーのライブ映像。YOUTUBEでも観られます。ライブではクドい程ソロギターを演奏しますが、それもデヴィT印。  キラキラと小指でのプリングが始まると、絶賛ソロタイムの合図。



What's Going On (Live) / 
Bernard Purdie, Chuck Rainey, David T. Walker 



the Sweet Onions:近藤健太郎(The Bookmarcs)&高口大輔
オフィシャルサイト : http://philiarecords.com 



●Never Can Say Goodbye / Jackson 5
 (『Maybe Tomorrow』/ 1971年)
◎キュートでソウルフル、何度でも聴きたい永遠の名曲。 切ないメロディと真っ直ぐな歌声に寄り添う、David T.Walkerのメロウで小粋なバッキング、随所に散りばめられたさりげないフレーズがとにかく心地よいのです。(近藤)

 ●New York City / Alphonse Mouzon
(『The Man Incognito』/ 1976年)
◎かっこいいドラムのブレイクから始まるファンクナンバーにおける聴きどころは、David T.Walkerによるギターソロ。チョーキングを使いながらのブルージーな前半部、コードチェンジしてからのホーンセクションとの絡み、両方が楽しめます。(高口)

● 心を全部くれるまで / 古内東子(『Hourglass』/ 1996年)
◎コードバッキングや弾きまくりのソロというよりは、主役の横に控えながら、自由に隙間を縫って高音部の軽やかな単音、または2音のフレーズで曲を彩るのが本当に上手いギタリストだなと思います。この曲ではオクターブ奏法も交えながら曲にあたたかみを加えています。(高口)

●Who Will The Next Fool Be? / Diane Schuur
 (『Blues For Schuur』/ 1997年)
◎ジャズピアノ・シンガー、Diane Schuurによるブルースアルバム。 アルバムほぼ全編に渡ってDavid T.Walkerがギターで参加。
 この曲もイントロからブルース全開なソロで始まり、滑らかなフレージング、ライブ感満載の貫禄のプレイが堪りません。(近藤)

●Just A Love Child / Bobbi Humphrey
 (『Black And Blues』/ 1999年)
◎曲中左チャンネルで何度も奏でられる彼定番のオブリが印象に残る一曲です。
 左手小指で弦をはじいて弾くDavid T.Walkerが得意とするこのオブリは、彼の参加したセッションで度々聴くことができます。(高口)



Never Can Say Goodbye / Jackson 5 



洞澤徹(The Bookmarcs)
Official HP: https://silentvillage.wixsite.com/horasawa 
2020 New Song - 「When I Was Young」トレーラー:
https://www.youtube.com/watch?v=g28eznv9a0c&feature=youtu.be


 ●Look of Love / David T. Walker (『The Sidewalk』 / 1968年)
◎バカラックのカバー。少しウェスモンゴメリのビートルズ・カバーを匂わせるジャジーなアプローチがとても好きです。

●No Dough / The Mamas & The Papas
  (『People Like Us』/ 1971年)
◎ソフトロックなテイストに滑らかに溶け込む右チャンネルのDavid Tのギター。 決して派手なプレイでないのに過不足ないプレイは存在感あります。

●With A Little Help From My Friends / David T. Walker
 (『Press On』/ 1973年)
◎名盤からのビートルズ・カバー。
 前半のメロウなフレージングからうってかわっての後半の熱いバッキングがグッときます。

●Gotta Get It On / The Crusaders
 (『The 2nd Crusade』/ 1973年)
◎Davd Tは右チャンネルのカッティング。ソウルのお手本バッキング的パターンプレイ。
 左チャンネルのファンキーなプレイとの絡みも抜群です。

●Midnight call / 飯島真理 (『Miss Lemon』/ 1988年)
◎ソフトな飯島真理の歌に寄り添いながらも、目立つわけではないのにはっきりとDavid T 節を決めてくるあたりはさすがです。
 意外にも彼女の歌との相性はバッチリに感じました。


With A Little Help From My Friends / David T. Walker



 【平田 徳(shinowa)
オフィシャルサイト : http://www.shinowaweb.com 



 ●Sweet Soul Shakin’/ Young Hearts
 (『Sweet Soul Shakin』/1968年) 
◎David T.Walker の持ち味のひとつには、歪まない官能的なクリーントーン・ギターワークがあると思いますが、その黎明期にあたるすばらしいギターワーク。ギタリストとして憧れるプレイ!そもそもこの曲が込み上げ系ノーザンソウルとして最高。 

●B Minor / Clydie King(『Direct Me』/ 1971年) 
◎著名なセッションシンガーClydie Kingのソロアルバムからの一曲。
 このギターソロも官能的すぎる。

●Visions / Stevie Wonder(『Innervisions』/ 1973年)
◎叙情的な曲に官能クリーントーンが最高に絡んでいます。

●Share My Love / Gloria Jones(『Share My Love』/ 1973年)
◎官能クリーントーンソロにワウが加わりました的な最高なやつですけど、曲のVERSEで盛りあがるとこではソロではなく、ワウでチャカポコやりはじめる、もうニクいアレンジ。

●Dondi / Ed Motta(『AOR』/ 2013年)
◎エヂ・モッタの2013年のアルバムにも参加しています。
 まずはしっかりエヂ・モッタをサポートし、油断させた隙に官能シーンをチラ見せする熟練ぶりです。


Sweet Soul Shakin’/ Young Hearts



ウチタカヒデ(WebVANDA管理人)

●Love's So Far Away / Donald Byrd(『Black Byrd』/ 1973年)
◎ジャズ・トランペッターのドナルド・バードがスカイハイ・プロダクションと組んでファンク化する最初期盤から疾走感ある1曲。ハーヴィー・メイソンとチャック・レイニーの鉄壁なリズム隊をバックにデイヴィッドのプレイは左チャンネルで聴ける。
 素早いカッティングからダブルストップのパッセージが次々に繰り出されるからたまらない。

●Feel Like Makin' Love / Marlena Shaw 
 (『Who Is This Bitch, Anyway?』/ 1975年)
◎説明不要の一期一会セッションの名盤から。ここでもハーヴィーとチャックのリズム隊で、右チャンのデイヴィッドに比べ左チャンのラリー・カールトンのプレイはやや控えめだが、2コーラス目のサビから双方のプレイの対比が面白くなる。
 デイヴィッドは独特なアックのオブリからローポジションでダブルストップを連発、トレモロ・ピッキングでのスライドと職人技のオンパレードだ。
(※サブスクでは左右のチェンネルが逆になっているので要注意!)

●雲のゆくえに / 吉田美奈子
 (『愛は思うまま (Let's Do It)』/ 1978年)
◎村井邦彦がビリー及びジーンのペイジ兄弟にプロデュースをオファーした海外録音盤の1曲。山下達郎によるカーティス・メイフィールド風の曲調で後に彼もセルフ・カバーする。デイヴィッドは左チャンネルでこの曲に不可欠なフレーズのリフレインを弾き、吉田のボーカルに呼応する。

●Almost Everything / Melissa Manchester
 (『Don't Cry Out Loud』/ 1978年)
◎リオン・ウェアのプロデュースによるメリッサの出世作からメロウ・バラードを。艶のあるイントロのフレーズからジェームス・ギャドソンとチャックのリズム隊によるグルーヴにデイヴィッドの小気味いいカッティングが乗れば言うことは無い。女性シンガーの歌伴として理想的なプレイが聴ける。

●If You Think You're Lonely Now / Bobby Womack 
 (『The Poet』/ 1981年)
◎盟友ボビー・ウーマックのポエット3部作の1作目から感動的なブルースを。デイヴィッドが左チャンネルで繰り返すリフはジョー・サンプルの「In All My Wildest Dreams」でのプレイを発展させたパターンのようだ。土臭さを残しつつも古くならないのは、このデイヴィッドのプレイによるモダン感覚なのだ。


Feel Like Makin' Love / Marlena Shaw 

(企画 / 編集:ウチタカヒデ) 

2020年8月19日水曜日

Saigenji 『Music Eater』配信開始



 今年5月のライヴ・アルバム『Live “Compass for the Future”』が記憶に新しい、シンガー・ソングライター兼ギタリストのSaigenji(以降サイゲンジ)が、2006年7月に東芝EMIからリリースし、廃盤状態が続いていた5THアルバム『Music Eater』を8月19日にデジタル配信する。 
 ここでは当時筆者が執筆したレビューを加筆して弊サイトで再掲し、今回追加されたボーナス・トラックについても触れておく。 

 『ACALANTO』から1年足らずという短いインターバルで届いた本作は、カエターノ・ヴェローゾの息子モレーノとのユニット"モレーノ+2"のメンバー、カマル・カシンが手掛けた前作での試みが、サイゲンジの創作意欲を刺激したと思わせる、充実した多くのオリジナル曲がアルバムに収録されている。
 リードトラック「SUNRISE」のプリプロから発展した形で共同プロデューサーとして名を連ねているのは、元beret(ベレイ)で現在GIRA MUNDO名義で活動している奥原貢だ。サウンド的には前作の様な音響派的実験性は影を潜めているが、優れたパフォーマーとしての姿を自然にアルバムに溶け込ませたという点で、彼のスタイルを理解して的確なサジェスチョンを与えたとして、奥原は適任者だったと思わせる。

  
 本作のレコーディング・メンバーはサード・アルバム『Innocencia』(04年)からとなる、ドラムの斉藤良、ベースの小泉“P”克人、パーカッションの福和誠司を軸に曲毎にゲストが参加している。 
 では筆者が気になった主要曲を紹介していこう。
 冒頭のリードトラック「SUNRISE」はサイゲンジが得意とするトニーニョ・オルタ・スタイルのギターワークと、サンバとサルソウルを融合させたリズムがダンサンブルに高揚感を高める。
 元々ジャズ・フィールドで活動する斉藤と小泉によるリズム隊のコンビネーションも抜群で、福和がプレイするパンデイロやスルド、タンボリンなど多数のブラジリアン・パーカッションが乱舞するのだ。

  SUNRISE / Saigenji  

 常日頃から様々なジャンルのアルバムを聴き漁って音楽を浴びている、サイゲンジそのものを現した「Music Junkie」は、既にライヴでも演奏されており、サイゲンジのギターとフルート以外のサウンドは奥原が担当している。
 アコースティックなヒップホップというジャンルレスな感覚は非常に新鮮で、なによりサイゲンジのヴォイス・パフォーマンスは圧巻だ。コーラスには奥原の他、彼が主宰するGIRA MUNDO DISCOS所属の日野良一など6名が参加して盛り上げる。

  Music Junkie / Saigenji
(2014.1.2 @ Motion Blue Yokohama)

 「海の刹那」はイントロのサイゲンジ自身によるホーミーのインパクトが強い幻想的な曲で、チェリスト・作編曲家として知られる徳澤青弦がチェロとストリングス・アレンジで参加している。彼とサイゲンジはバスタンチというブラジリアン・バンドを組んでいたこともあり、この曲でもポルタメントの効いたプレイで曲を演出している。
 一転してハートウォームな歌声に惹きつけられる「日溜まりのダンス」は、トラディショナルなサンバに近いテンポで演奏される隠れた名曲で、福和による複数のブラジリアン・パーカッションが活躍する。ジャズ・トロンボーン奏者の中路英明のプレイも秀逸で、このサウンドの雰囲気にぴったりだ。
 ギターリフから発展させたメャー・ブルース進行の「Nature Girl」は、「光が差したら」(『la puerta』収録 / 03年)や「テレスコープ」(『Innocencia』収録 / 04年)の流れを汲む、サイゲンジ流シンガー・ソングライター・サウンドだ。シンプルな3人編成の同時一発録音ながら味わい深さはケニー・ランキンなどに通じ、小泉のウッドベースがサウンドの肝になっている。  

 オリジナル・フォルクローレの「シルビオとハビエル(Silvio y Rabiel)」は、サイゲンジが20歳の時に作ったとは思えない完成度で、沖縄在住のアルゼンチン音楽家シルビオ・モレノ、スペイン人フラメンコ・ギタリストのハビエル・コンデの二人に捧げられている。彼はこの二人に南米音楽の手ほどきを受けたという。恩人への感謝という崇高な思いが創作に繋がったという、実に理想的な音楽のカタチではないだろうか。 
 スタジオ・レコーディング曲ではラストとなる「EL SUR(南へ)」はソロで演奏されるバラードで、詩情溢れる歌詞も相まってアルバム随一の美しさだ。
 アルバムラストにアンコール的に位置する「ECHOES」は、06年6月Motion Blue Yokohamaでの演奏を収録したライヴ・レパートリーとしてお馴染みのブラジリアン・フュージョンだ。サイゲンジのスキャット、ゲストのトランペッター島祐介(RICO、ego-wrappin'他)とキーボーディスト丈青(じょうせい、SOIL & "PIMP" SESSIONS所属)、斉藤と福和の各インタープレイが続く圧巻の演奏は聴きものである。 
 本作は収録曲毎に複数のエンジニアが手掛けたミックスと、マスタリング・エンジニア業界の重鎮である田中三一の仕事も際立つアルバムとなっている。 


 なお今回の配信では過去にコンピレーションにのみ収録されていた3曲が、ボーナス・トラックとして含まれるので補足紹介する。
 アントニオ・カルロス・ジョビン作としてあまりにも有名で、無数のカバーが存在する「Samba de Uma Nota Só」=「One note samba」(『TOKYO BOSSA NOVA~Flores~』収録/06年)はライヴ・ヴァージョンで、サイゲンジ流に換骨奪胎した解釈が新鮮で素晴らしい。
 「砂の町」(『TOKYO BOSSA NOVA~outono~』収録/04年)は、『Innocencia』のレコーディング時期と重なるので同作のアウトテイクかも知れない。サウンド的にはサイゲンジ自身によるギターとフルート、斉藤と小泉によるリズム隊に丈青と思われるエレピの編成である。「テレスコープ」のマイナーキー・ヴァージョンといった感じでブルージーなムードは悪くない。
 ボーナス・トラック中で最も目玉なのが、サイゲンジがFilo Machado(フィロー・マシャード)と共演した「Common Pulse~Welcome To My Home~」(作曲:サイゲンジ『TOKYO BOSSA NOVA ~madeira~』収録/05年)である。
 フィローは1951年サンパウロ生まれ、キャリア50年を超えるシンガー・ソングライター兼ギタリストで、ソロ活動の他ジャヴァンの『Seduzir』(81年)やマーシャ・マリアの『Colo De Rio』(85年)にソングライティングで参加するなど一流ミュージシャンである。筆者も06年に今は無き高田馬場コルコバードでライヴを堪能したが、パフォーマーとしても超一流であった。
 この曲はスタイルが近いミュージシャン同士の丁丁発止の一発録りセッションとして、サイゲンジとフィローによるヴォイス・パフォーマンス、ギター・プレイのバトルが圧巻である。当時コンピレーション限定収録曲としては勿体ないと感じていただけに嬉しいボーナスといえる。
 以上本作に興味を持った音楽ファンは下記リンクから入手して聴いて欲しい。

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(ウチタカヒデ)