2022年7月27日水曜日

ウワノソラ'67:『Portrait in Rock'n'Roll 2』(UWAN-006) リリース・インタビュー


 2015年6月にファースト・アルバム『Portrait in Rock'n'Roll』で、ウォール・オブ・サウンドを昇華したオリジナル楽曲をクリエイトしたウワノソラ'67が、セカンド・アルバム『Portrait in Rock'n'Roll 2』(UWAN-006)を7月30日にリリースする。
 ウワノソラとして活動中のギター兼ソングライティング、プロデューサーの角谷博栄、ヴォーカリストのいえもとめぐみによる2人が、60年代、70年代初期の良質なポップスをルーツとするエイト・ビート主体の楽曲を発表するユニットがウワノソラ'67なのだ。
 ウワノソラとして2014年のアルバム・デビュー時から筆者は、彼らのソングライティングとアレンジ・センスにはいち早く注目しており、弊サイトの読者をより虜にするウワノソラ'67でのスタンスも大歓迎であった。ファーストを聴き込んでその完成度に満足した音楽ファンも本作を期待して良いだろう。

 全10曲収録で、いえもとはリード・ヴォーカル、コーラスを担当し、角谷は全てのソングラティングとリズム・アレンジ、各種ギターと一部の曲でリード・ヴォーカルを取り、エンジニアリングまで担当している。バックアップ・ミュージシャンはこれまでのアルバムにも参加していた、越智祐介(ドラム)、熊代崇人(ベース)、宮脇翔平(オルガン、チェンバロ)、深町仰(コーラス、各種アレンジ)に、新たにジャズ・ピアニストの渡辺翔太(父親はジャズ・ギタリストの渡辺のりお)が加わっており、その他にも曲毎にゲスト・ミュージシャンが参加している。エンジニアとミックス、マスタリングは玉田和平で、彼もウワノソラ・サウンドには欠かせない存在だ。 
 またエバーグリーンなジャケットにも触れるが、アートワークはいもえとが自ら手掛け、印象的なショットは本職のカメラマンではなく、角谷の友人という吉川浩平氏が撮影している。 


 次に本作の収録曲を解説していく。冒頭の「雨になる」は乾いたペダルスティール・ギターのリフがリードして、各種サックス4管とトロンボーンが入ったサマー・アンセムだ。ヴァースの曲調やアレンジには、ジョージ・ハリスンがフィル・スペクターと組んだ「Awaiting On You All」(『All Things Must Pass』 / 1970年)の影響を感じるが、複雑なコーラス・アレンジや大サビの展開などには独自性を感じた。いえもとの温かい特徴のあるヴォーカルに加え、大サビでは角谷がヴォーカルを取っている。
 リード曲であるこの曲のMVはファースト収録の「年上ボーイフレンド」、ウワノソラの「夏の客船」(『陽だまり』(UWAN-003/2017年)収録)や「蝶の刺青」(『夜霧』(UWAN-004/2019年)収録)も手掛けた、阿部友紀子が監督と撮影を担当したロードムービー風で素晴らしい出来映えだ。
 続く「ジョルノ」はイントロの宮脇の麗しいチェンバロから始まり、ゲストの田中ヤコブのナチュラルな歪みのリード・ギターが鳴り響き、弦楽カルテットも入るという、正しく70年代初期の英国ロック・サウンドの構造を持っている。デュエット形式でいえもと、角谷がパート毎に交互にヴォーカルを取り、サビはユニゾンというパターンでLampにも通じており、サウンド的には弊サイトで5月に紹介したデヴィッド・ペイトンが率いた、全盛期のパイロットを彷彿とさせるのでファンは是非チェックしよう。 

 一転してカントリー・バラード風の「冷めたカルディア」では、「雨になる」同様に角谷によるペダルスティールをフューチャーしており、いえもとのヴォーカルの表現力により終わった恋の喪失感を見事に演出している。
 「ラストダンスは僕と」はアップテンポで3分程ながら様々な音楽的要素がちりばめられており、越智と熊代のリズム隊、渡辺のピアノ・プレイの巧みさが堪能出来る。リード・ヴォーカルは角谷で、いえもと、深町がコーラスを担当している。 
 アルバム中1曲だけサウンドの毛色が異なる「未来世紀ヨコハマ」は、60年代の良質なポップスを現代的に解釈したという点で、プリファブ・スプラウトのパディ・マクアルーンのセンス、特に『Jordan: The Comeback』(1990年)や『Andromeda Heights』(1997年)の頃に通じて溜まらない。ハープやホーン・セクションの楽器編成からサウンドスケープまで細部にわたり聴き応えがある。リード・ヴォーカルは角谷が取っている。

 
ウワノソラ'67 「真夏のエコー」 

 本作後半は今月16日にフル音源が先行公開された「真夏のエコー」から始まる。リード・ヴォーカルはいえもとが取り、タイトルや歌詞からイメージ出来る通りサマー・ソングで楽器編成はストレートだが、ジャズ・ピープルらしい渡辺のピアノのシグネイチャー・プレイと、角谷と深町による対位法やクローズド・ヴォイシングのコーラス・アレンジなど細部に仕掛けがあって聴き飽きない。
 続く「一週間ダイアリー」は本作中で最もウォール・オブ・サウンド色が強いアレンジで、ファイナル・マスタリング前のアルバム音源を聴いたファースト・インプレッションで筆者のベスト・トラックだった。イントロから宮脇のハモンドオルガンに絡む角谷のエレキ・ギターのリフ、バリトンをはじめ3管のサックスが重なり、渡辺の洒落たピアノのオブリが加わって、もう何も言うことはないあのサウンドである。ファースト収録の「年上ボーイフレンド」にも通じる、甘酸っぱいトーチソングは60年代ガールズ・ポップから続く永遠のテーマであり、ヴォーカルのいえもとの少女的な声質も相まって非常に完成度が高い。

 「めまいの中で」はスロー・ナンバーだが、「ジョルノ」同様に弦楽カルテットが入り、リード・ギターのリフが牽引して英国ロックの匂いがする。ここでのギターは角谷自らプレイしていて、ドラマティックでこの曲の世界観を広げているのだ。ヴォーカルはデュエット形式でいえもと、角谷が取っている。 
 角谷のペダルスティールが再び活躍する美しいバラードの「砂の惑星」は、仮想未来をいえもとのロンリネスな歌声が坦々と綴っていて、いえもと自身と深町によるコーラス、宮脇のチェンバロが効果的だ。 
 ラストの「八月の波」は、ウワノソラの「夏の客船」にも通じる過ぎゆく夏を綴ったバラードで、この曲でもいえもとの表現力は確かである。間奏における渡辺のピアノのインタープレイ、角谷がプレイするグロッケンなど細部に配慮されたアレンジで完成度を高めている。

 ここからはリリース前で最新となる、メンバーの角谷といえもとにおこなったテキスト・インタビュー、そしてイメージ作りで聴いていたプレイリストをお送りするので、聴きながら読んで欲しい。 
 

 ~今まで以上に、
ただやりたいことだけやって制作していった~ 

 ●前作から7年振りということで、その間にはウワノソラ名義で『陽だまり』と『夜霧』の2枚のアルバム、またマキシシングル『くらげ』(UWAN-005/2020年)をコンスタントにリリースしていて、課外活動として、NegiccoのKaedeさんのセカンド・ミニアルバム『秋の惑星、ハートはナイトブルー。』(TPRC-0256/2020年)をLampの染谷大陽君と共同プロデュースしていたので、ブランクは差ほど感じられなかったのだけど、今回ウワノソラ'67名義でリリースしようと考えた動機を聞かせて下さい。

◎角谷博栄(以下角谷):ただウワノソラ’67として表現をして2ndアルバムを作りたかったという想いになった事がきっかけです。僕の中で71、2年以降の音楽とそれ以前の音楽って自分の心を震わせるものがほんの少し違うのです。50’s後半~70’s前半を中心にした音楽に対して震える部分に主軸においた’67流のアウトプットをまたしてみたいと思った事が動機でした。 
そもそもメンバーが同じなのにバンド名が違うなんて意味がわからないですよね。故意ではなく、流れでそうなってしまったんです。すみません。 

●過去にも同じメンバーで名前が異なるバンドはいるから謝る必要はないですよ(笑)。嘗てXTCがThe Dukes of Stratosphearとして60年代後期のサイケデリック・ロックを表現した別バンドをやっていましたから。サウンドは全く異なるけど、そのケースに近いかなと考えますね。 
ファーストと、本作『Portrait in Rock'n'Roll 2』と意識的に変えた点はどういったことでしょうか? 

◎角谷:まず一つ目に、曲単位では例えばデヴィッド・ゲイツであったり、誰それであったり、そういった憧れからのきっかけはあるのですが、それはただのきっかけに過ぎず、今まで以上に、ただやりたいことだけやって制作していったといった感じです。 
二つ目に、使っている楽器こそ全て生演奏ですが、ガチガチに’67という名前に捉われず、面白いと自分自身が思うことはどんどんやっていきたいという姿勢でいました。表現がコンセプトなんかで疎かになることこそ本末転倒ですし。
三つ目に、曲が短いです。短くしたいと考えていました。 
四つ目にあげるとすれば、より雑味、空気感を追求出来た気がしています。1stはそんなものを考える余地もなくとにかく我武者羅だったのでそこはあまり意識できてなかったですし、そんな環境はどこにもありませんでした。
今回は所謂、商売っぽい音といいますか。メジャーっぽい音といいますか。その真逆になっていると思います。そうすると結果的に売れないものがより売れなくなるので困るのですが、やりたかったのでしょうがないです。他には、ベーシックは全曲クリックなしの同録であったり、無理のないリバーブ感であったり、少しモコモコしたMIXであったり、中央によったパンであったり、言い出すとキリがないですが、7年間の音楽体験や制作経験、美意識を詰め込められた作品のように感じています。
最後にあげるとすれば・・・。角谷がたくさん歌っているということです。 

●デヴィッド・ゲイツというキーワードが出てきたので思い出しましたが、かなり前にゲイツのソングブック・アルバム『THE EARLY YEARS 1962-1967』をお聴かせしたことがありましたね。本作を聴いていてその要素がモザイクの様に影響されていると感じました。「ラストダンスは僕と」のイントロやヴァースの一部は、Michael Landonの「Without You」やDorothy Berryの「Cryin' On My Pillow」に通じていて、ゲイツらしさをよく消化して自らのソングライティングとアレンジに活かしているという。
1曲にそれが30曲くらい忍ばせているのが角谷君の探究心の賜物というか、その姿勢に毎回感服しています。 


◎角谷:消化というか、ん〜特に消化は出来てない気はしています。出来ないですし。単純フワッとデビット・ゲイツなり他いろいろがかっこいいと思っていて影響を受けていたといったそれだけの感じなのです。
今作に限らず、作風を映画監督に例えるならばどっちも好きですが、タランティーノ方面で、クリストファー・ノーラン方面ではないとは思っています。 そして、誰々のようにという例えはきっと知っている人には分かりやすい事もあるかも知れませんが、それ以外にそういった面では無い部分もたくさん組み込んでいるつもりです。 

●オマージュ手法は善し悪しあると思うけど、僕が触れたのは露骨に引用してあやかりたいという短絡的発想では無いということなの。そもそもそんな知る人ぞ知る曲まで掘り下げていることに敬意を持っているんです。
70年代~80年代初期の大滝詠一氏や山下達郎氏に通じるというかね。角谷君なりの独自のアプローチについては、曲毎に歌詞の世界観をコーラスや細部に渡るアレンジメントで徹底的に引き出していると感じますよ。 

◎角谷:そうですね、個人的に嬉しかった感想としては、「雨になる」のMV公開後に友人の映画監督から送られてきたメッセージで、「雨という明らかにウェッティーな自然現象に、一番乾いたギターサウンドを乗せる、このポエジーなコントラストがたまらないね!!」というものでした。
映画に例えるなら銃撃戦の時にスローモションになって、深刻な場面なのに軽快な音楽がかかってより残酷さがます、といったような総合的な感覚表現の部分の拡大解釈で、それが表現したい事の一つにありましたので、そこを捉えてもらえていて、それが活字で送られてきた時に結構感動しました。 

 
ウワノソラ'67 「雨になる」MV
監督&撮影:阿部友紀子 

●成る程。62年のイタリア映画でグァルティエロ・ヤコペッティ監督の『世界残酷物語(Mondo Cane)』というのがあって、所謂「モンド」の語源にもなっているんだけど、衝撃的なシーンにリズ・オルトラーニが手掛けた静かで美しいテーマ曲「モア」が流れるんだよね。そんな極端な対比によって強烈なイメージを植え付ける「知覚のコントラスト効果」というのがあってそれですよね。角谷君は芸大出身だから恐らく講義で学んでいると思いますよ。 
アルバムに話を戻しますが使用楽器については、ウワノソラとの区別を意識してないということですが、前作では使用しなかった楽器を多用したものは具体的にありますか? ピアノはアコースティックのみで、エレピはローズやウーリッツァーも使っていないですね。
またメジャー感とは真逆のミックスやマスタリングを心掛けたとのことですが、ハイファイになり過ぎないようにするということかな? 

◎角谷:使用楽器はローズなど使いませんでした。「未来世紀ヨコハマ」でボコーダー・シンセを使用したぐらいで、シンセサイザーもほぼ使っていません。
ミックスはおっしゃる通りです。一般的なポップスのレンジよりは狭めで、最初のインパクトとかは無いので物足りないと感じちゃう方は多いかもしれません。刺激が足りないみたいな。それを捨てたお陰でずっと自分自身が楽しめそうなアルバムになった気はしています。


~10曲の夏物語。
そんなシーンがそれぞれ浮かぶような曲で
構成されています~ 

 ●本作の曲作りとレコーディングに入った時期はいつ頃ですか? 
またコロナ禍によってスケジュール的に影響した点などはあるでしょうか? 

◎角谷:曲書きは2020年の9月のKaedeさんの『秋の惑星、ハートはナイトブルー。』のプロジェクトがひと段落ついてからです。
そこから2021年の8月10日まで毎日やっておりました。レコーディングは去年の11月から入りました。終わったのは今年の6月末で、夏にリリースしたかったので、ミックスは4月の末から並行してやっていました。ミックスとマスタリングだけでも計30日間ぐらいかかりました。 影響は奏者がコロナに罹ってしまい、少し予定が変わったことはありました。強いてあげるとすれば本当にその程度でそれも特に問題はありませんでした。

◎いえもとめぐみ(以下いえもと):わたしも特に影響はありませんでした。ヴォーカルのレコーディングは角谷君と2人なので自由に予定組めますし、幸い2人共1度もコロナに罹らなかったのでよかったです。

 ●ソングライティングにも結構な期間を掛けていますね。パート毎のモチーフのストックはあったと思いますが、完成形としては10曲全て書き下ろしということでしょうか? 
またレコーディングは参加ミュージシャンが多く、感染された方がいればスケジュールのコントロールは大変だったと思いますが、よく調整されていると思います。 ヴォーカルを取るお二人の感染がなかったのが幸いでした。声質にも影響するので心配していましたから。

◎角谷:全て新曲です。15、16曲ぐらい作ってそのなかで大丈夫そうな10曲です。 

●新曲16曲ほどから10曲に絞ったんですね。漏れた曲も機会があれば発表して下さい。 
次にレコーディング中の特質すべきエピソードを聞かせ下さい。 

◎角谷:ペダルスティールを僕が演奏しています。大変でした。ずっと使っていたアコギを売って買いました。教本も何もなかったので独自の奏法が身についてしまいました。是非聴いてみて下さい。

あとは、エレキのレコーディングに何日間も梃子摺っていた「ジョルノ」という曲がありまして。もうダメだ、終わった…、と諦めていたのですが、ふと目覚めた朝に田中ヤコブさん(家主)のことを思い出し、電話したところ”今日空いていますよ〜”とその日に駆けつけてくれまして。
素晴らしいプレイでボツになる曲が救われました。何日か後にヤコブさんが使っていたものと同じOver Driveを買いました。

そしてもう一つあげるなら、ポルトガル語のアナウンスで参加していただいたマルセロ木村さんのレコーディングです。ブラジル音楽の特にギターの名手なのですが今回はアナウンス声のみで参加です。ハイボールを用意していないと本気が出ないらしいから用意しないと絶対ダメだヨ!という謎の前情報があり、しっかり用意しておきました。
録音後、嬉しそうにハイボールを飲んでいらっしゃったので前情報があって助かりました。キャラもブラジル音楽の談義もレックも楽しかったです。

●角谷君がプレイしたペダルスティールが聴けるのは、冒頭の「雨になる」、「冷めたカルディア」、「砂の惑星」と結構ありますね。
特にカルディアのプレイは、昨年のフィル・スペクター追悼対談【フィル・スペクター・ソング・ベスト10】で挙げていた、ジョージ・ハリスンの「Ballad Of Sir Frankie Crisp (Let It Roll)」を少し意識していませんかね。カルディアの歌詞にある喪失感を演出していていいプレイですよ。

◎角谷:ジョージを意識していたり、あとはサビでテンポが遅くなってはまた戻ったりと変な曲です。こんな感じって今もあまりないですが、60’sには全くないのです。
僕は4弦を一気に弾く(普通は1~3弦)&独自のチューニングのペダルスタイルに自己流でなってしまったので、自ずと不思議な重厚感は出ました。 

●自己流が吉と出たんでしょう。
「ジョルノ」のリード・ギターは、ヤコブ氏のプレイだったんですね。Kaedeさんのミニアルバムではバッキング・ヴォーカルだけの参加でしたが、ギタリストとしても一流ですね。

◎角谷:ヤコブさんはギタリストだけじゃなく、全ての楽器演奏まで出来る方なのです。同時に曲書きも本当に素晴らしいので、楽曲をすぐに理解してもらえたんだと感じています。リード・ギターのレコーディングはその楽曲の上でもう一度作曲をしてもらうみたいな作業でした。
そこでこういった音楽にヤコブさんのライン、音色は想像以上にマッチしてかっこいいのです。録音作業では、ここにこれが欲しい、ここにはいらないですよねっていう共通感覚がお互いにあるといいますか。いろんなアイデアを投げて下さって、ほんと助かりました。 

●角谷君が推す田中ヤコブさんには今後も注目したいと思います。
そしてマルセロ木村さんのエピソードには笑いましたが、「未来世紀ヨコハマ」の間奏ですよね。この曲だけ他とは音像が異なっていて気になっていました。そしていえもとのコーラスにはボコーダー処理されていたので驚きました。これは未来世紀というシチュエーションのための演出でしょうか? 

◎角谷:はい。ボコーダーは詞の世界に合っていて面白いなと思いやってみました。僕も試してみたのですが上手くいかないのでこの部分はエンジニアの玉田君にマニュピュレートをお願いしました。
アナウンス部分は運動会で使っているような拡声器を購入し、それを使ってそのまま録音しています。

●1曲の中の短いパートのために拡声器まで購入して使用という拘りには脱帽ですね!実機のエフェクター、ソフトやプラグインで済ませないのが凄いな。
生のブラスが加わった「雨になる」や「一週間ダイアリー」、弦が入った「めまいの中で」や「ジョルノ」もですが、レコーディングのマイキングなど結構大変だと思いますが、各アレンジも含めてレコーディング状況を聞かせ下さい。


◎角谷:ブラス、弦はすべて大阪で録音して、ブラスは僕が、弦はエンジニアの玉田君がそれぞれ担当しています。
コーラス、ブラス、弦のアレンジは僕と深町君で、今回は全てリモートで行いました。
ベーシック・トラックは、ドラムの越智さん、ベースの熊代君、ピアノの渡辺翔太さん、オルガン、チェンバロの宮脇君、Voのいえもとさんと東京で、リハとレコーディングをしています。他は関東での録音などの作業は僕のスタジオでした。
詳しくは今回の制作工程を曲書きの段階から全てのレコーディングを映像にとってありまして、作品にまとめる予定ですので、そちらを観て頂けたら幸いです。
実は今回のアルバムは、プレス枚数が仮に全て捌けてもマイナスなのです。ただ出来ることならまた音楽を作りたいので、その補完を別でしなくてはという考えがあります。ですので、当分サブスクは難しいと感じています。

●曲作りからレコーディング工程を映像化してリリースするとは!20年程前に嘗ての名盤を扱った『メイキング・オブ・***』シリーズがありましたが、それを彷彿とさせて興味が沸きますね。しかしその工程を長時間カメラで録っていて、これから編集するのも大変な作業になりますね?

◎角谷:そんな大したものではないとは思いますが、その時の想いや試行錯誤、苦難が淡々と記録されているのでウワノソラに興味のある方や製作者の方にとっては面白いかなと思っています。
編集は僕がやるわけではないので分かりませんが、めちゃくちゃ大変だとは思います。

●アルバム・バジェットのマイナス分をその映像作品の売り上げで補完出来ることを願って、次作の制作を強く希望していますよ! 

◎角谷:ありがとうございます。僕らのようなバンドがこれまで続けられたというのがかなり奇跡でありまして。もう流石に厳しい感じなのですが、またチャンスがあれば頑張ります。


●いえもとさんは歌入れでの苦労点などはなかったでしょうか? 

◎いえもと:今回のアルバムもクリックを使わずにレコーディングしており、特に土台となるドラム、ベース、ピアノはそれぞれの姿が見えない状態でのレコーディングだったので、「冷めたカルディア」などテンポが変わる曲は息を合わせるのが難しかったと思います。 
「ラストダンスは僕と」という角谷君が歌っている曲のラストに「ワン、ツー!」と掛け声が入っています。リハーサル時から角谷君が合図として言っていて、リズム隊のレコーディングの仮歌はわたしが歌っていたので、掛け声の時の一瞬だけみんなに聞こえるように角谷君にマイクを向けました。その時録音されていた声がそのまま使われています。角谷君がすごく元気に掛け声をしたのでみんな「声が大きくてびっくりした」と言っていたのを覚えています。

●「ラストダンスは僕と」のブレイク後の掛け声はそういった経緯だったんですね。いえもとさんの仮歌ヴァージョンも聴いてみたいです。
『陽だまり』収録の「プールサイドにて」や、ウワノソラ元メンバーの桶田知道君ソロの「歳晩」(『丁酉目録』収録/2017年)はライヴ限定や特典CDRで聴きましたが、声楽を学んだいえもとさんの表現力には感動しました。Kaedeさんの「さよならはハート仕掛け」(超名曲!)をはじめ、『秋の惑星、ハートはナイトブルー。』収録曲の仮歌ヴァージョンがあれば凄く聴きたいです! 

◎いえもと:ありがとうございます。2019年に月見ル君想フで行ったライヴでは、Negiccoさんの「土曜の夜は」をセルフカバーさせていただいたので、またもしライヴをすることがあって、皆さんの前で演奏できれば楽しそうだなと思います。

2019年 『ウワノソラ 7Years Live』
月見ル君想フ

●ソングライティングやレコーディング期間中、イメージ作りで聴いていた曲をお二人で10曲ほど挙げて下さい。 

◎角谷博栄
●Yoko, Oh / Tot Taylor (『Frisbee』/ 2021年) 
●Reflections of My Life / Marmalade
 (『Reflections of the Marmalade 』1970年)
●Hot Rod U.S.A. / The Rip Chords
 (『Three Window Coupe / Hot Rod U.S.A.』7インチ/1964年)
●Little Honda / The Hondells
(『Little Honda / Hot Rod High』7インチ/1964年) 
●Mass #586 / Sagittarius (『Present Tense 』1968年) 

◎いえもとめぐみ
●The Blue Marble / Sagittarius (『The Blue Marble』/ 1969年)
●Baby Love / The Supremes (『Where Did Our Love Go』/ 1964年) 
●Where Did Our Love Go / The Supremes
 (『Where Did Our Love Go』/ 1964年)
●I Do / The Castells (『I Do / Teardrops』/ 7 1964年) 
●Move In a Little Closer, Baby / Mama Cass
 (『Bubblegum, Lemonade &...Something For Mama』/ 1969年) 



●では最後にこの『Portrait in Rock'n'Roll 2』のピーアールをお願いします。

◎角谷:今作は「すべての夏に感謝する。」という帯文になっています。
10曲の夏物語。そんなシーンがそれぞれ浮かぶような曲で構成されています。
ウワノソラ’67 『Portrait in Rock'n'Roll 2』楽しんで頂けたら幸いです。

◎いえもと:ようやく皆さんに聴いていただけるようになり嬉しいです。
可愛らしい曲もバラードも、角谷君の書く詞はとても素敵なので、是非歌詞カードを片手に聴いていただければと思います。

ウワノソラ/ウワノソラ'67-Official Site-:https://uwanosora-official.themedia.jp/

 (企画・設問作成・編集 ・テキスト / ウチタカヒデ)

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