2010年9月16日木曜日

Radio VANDA 第123回放送リスト(2010/10/07)

Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。 Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー)の STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 木曜夜 22:00-23:00 の1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。

特集: Monkees Part.1


1. A Little Bit Me,A Little Bit You
 2. Last Train To Clarksville
 3. I'll Be True To You
 4. I Don't Think You Know Me
 5. When Love Comes Knockin'
 6. Look Out
 7. Sometime In The Morning
 8. I'm A Believer
 9. The Girl I Knew Somewhere
10. The Door Into Summer
11. Don't Call On Me
12. Star Collector
13. Of You
14. Dream World
15. We Were Made For Each Other
16. I'll Be Back Up On My Feet
 








2010年9月8日水曜日

フレネシとblue marble対談レビューVol.2

フレネシ:『メルヘン』(乙女音楽研究社/OTMSH-003)
blue marble:『ヴァレリ(乙女音楽研究社/OTMSH-004)



  ウチタカヒデ(以下 U):ではフレネシさんの『メルヘン』に関する質問に移ります。 前作『キュプラ』が広く受け入れられた訳ですが、今作を制作するにあたってスタンス的にどう変化しましたか?


フレネシ(以下 F):山口君(フラッシュバックあの人)にプロデューサーとして立ってもらった前回もアレンジの方向性を決めたり、展開を構成したりするのは、基本的に自分で行っていたのですが今回大きく違ったのは、取り掛かる前と作業をFIXする際に相談する相手・判断する人が自分以外にいなかったという点でしょうか。 私の場合、周りの音楽通のアーティストに比べもともとインプットがそれほど多くない方なので 相談役がいないとなると参考とするものも非常に限定的になるのですが今回に限ってそれはアリなのではないか、という判断で進めました。 つまり、いかに少ない情報量でアウトプットの幅を広げるか、というのが、実は重要な課題のひとつだったのかもしれません。と言う割には、あまり意識していたわけでもないけれど 

U:今作はセルフ・プロデュースということですね。音楽的知識のインプットがあまり多くないとのことですが、アレンジングの拘りは一筋縄ではいきませんよね。後でも触れますが「不良マネキン」と「街」といった一見アンビバレンスな感受性を持つ曲が同じアルバムに収録されているというのは凄いことですよ。そういった感覚を含め、アーティストのフレネシとして大事にしているポイントはなんでしょうか?

F:意図しているわけではないのですが、創作を行う際は、常に冷静さを失っています。 冷静になればなるほど迷いが生じ、次に進めなくなるので、鍵盤に向かっているときは別人格なほどポジティヴで主観主義になりますね。(主観主義は多分デフォルト)そうなることで、結果作業時間が劇的に短くなります。 このやり方、仕事ならば完全にアウトですが、好きなものを作っていいといわれたのなら、そういう正義もあっていいかな、と思います。

U:常に冷静を失ってしまう(笑)というのは面白い表現ですが、なんかイメージ通りですよ。 天性のヒラメキでバランスをとっている。コツコツ地道に曲作りしているシンガーソングライターから見れば、一種アクロバティックですが、それがフレネシさんの個性だと思います。 フレネシさんのサポート・メンバーとして数年に渡ってキーボードを担当されているショックさんから見て、アーティストとしての彼女の魅力とはなんでしょうか?



ショック太郎(以下 S):曲がまともに作れないことを「変なことをやっている」という表現で逃げて個性にしているアーティストが多いなかで、フレネシさんは、ちゃんと最初から曲が書けるアーティストなんです。だから直感のおもむくままに作った作品でも安心できるんですね。奇抜な形をしたある建築物が、実は耐震性に優れていて住みやすい家だった、という感じでしょうか。 あと投げやりのように見えて、実はすごい責任感が強い女性だということを常に思いますね。それと何でも仕事が速い(笑)。いつ寝ているんだろう、と思うくらい。

F:恐れ多いです...。 音大で作曲科を専攻していたというショックさんに曲について触れられると、どきっとします。私のバックグラウンドには確固たるものがなく、地盤が軟らか過ぎて年中揺らぐレベルなので、免震システムを採用して建てるのがベターかもしれません。

U:次にアルバム収録曲について伺います。先ずは「インフレイション II」。この曲は前作の特典楽曲として一部で知られた「インフレイション」の別ヴァージョンですが、前作よりダンサンブルになりましたね。原曲ではスペイン語の歌詞で高速バンプになるブリッジからフックへのパートが、スティーリー・ダンの「緑のイヤリング」(『幻想の摩天楼』収録 76年)を彷彿させて凄く好きでしたが、今回アレンジ的に工夫したポイントは?

F:ピンポイントで言うと、間奏でサブメロディを奏でる、銀河鉄道っぽいレトロ浮遊系ハミングと、Bメロに裏打ちで入れたシモンズのタムの音でしょうか。タムは、ミックスをお願いしたシュガー・スペクターさんのアイデアなのですがこうした遊びを入れることで、クールにまとめたオリジナルとは対照的な、やんわりとおバカさを醸し出す展開になっています。

U:銀河鉄道って999のことですよね。音楽を担当した青木望氏は劇伴オーケストレーションの名匠ですが、恐らく女性ハミング(スキャット)はエンニオ・モリコーネ作品におけるエッダ・デッロルソを意識していると思います。ところで長身コンプレックスを題材としている歌詞も非常にユニークなのですが、そのモチーフとは? 

F:歌詞については乙女社社長が書いていますが、女性シンガーソングライターのシーナアキコさんの「フレネシバンドは背の高い人が多いんだね、不思議」という発言がアイデアの元となっているようです。実際にショックさんを始め、メンバーの多くが長身なのですが、もちろん選り好みしたわけではないですよ。演奏が素晴らしいということで、お声をかけた方々です。 

U:前作以上にエッセンスとしての80'S感覚が濃くなっていますが、タイトルからキュッチュな「不良マネキン」や「コンピューターおばあちゃん」のカバーなど、リアルタイムでは幼児期に当たるこれらの体験は今でも鮮烈に残っているのでしょうか? あるいは後追い的に熱中していたんでしょうか?


 

F:「不良マネキン」に関しては、言うまでもなく大映テレビです。幼い頃、好きで良く見ていましたね。この曲は「ヤヌスの鏡」のOPからヒントを得ています。毎3裏に入るシンセ・タムとゴスペルコーラスを聴いた瞬間に閃き、タムだけの譜面を書くところから曲を作っていきました。 「コンピューターおばあちゃん」は、シーナさん企画のみんなのうたイベントで歌ったのがきっかけで、社長からのリクエストがありまして......。 

U:「不良マネキン」はPVのインパクトがかなり凄いですが(笑)、サウンドは完全にテクノ歌謡ですね。いわれるシンセ・タムのフィルやスラップ・ベースのアクセントは、トニー・マンスフィールド(元NEW MUSIK、80年代英の一流プロデューサー:ネイキッド・アイズ、キャプテン・センシビル、A-ha等々)が元祖だと思うんですが、近年ではPerfumeの「NIGHT FLIGHT」などもその流れですね。ところで80'S感覚といえば前作『キュプラ』の「覆面調査員」の中国語ヴァージョンをボーナス・トラックとして収録していますが、このヴァージョンを制作された経緯とは?




F:「覆面調査員」は、オリジナルができた時点で動画配信用に中国語ヴァージョンも作る予定だったのですが、PCの事故によりバラの音源が消えてしまったため、あきらめていました。が、2ミックスの未精査音源なら手元にあったので、それを生かす方向で歌だけを録り直しました。

U: 「街」は80年代初期、坂本龍一がサウンド・プロデュースを手掛けていた頃の大貫妙子あたりを彷彿させる曲ですが、独特な音像とアレンジでフレネシ・テイストに仕上げています。 これをバンド・アレンジでやると最近の流線形などに通じるシティポップになると思いますが、フレネシさんにとって、大貫妙子やユーミンなど80年代に隆盛を極めたシティポップからの影響はありますか? 

F:お察しの通り、シティポップの影響は少なからずあると思います。大貫妙子さんは、小学生の頃、姉が持っていたアルバムを聴いてファンになりました。収録されていた「カイエII」と「都会」が特に好きで。どうしたら、あんな洗練されたアーバンな曲が書けるんだろうと幼心に憧れつつ、耳コピして電子オルガンで弾いたりしていましたね。わからないコードは大分端折っていましたが。。

 U:PVも印象的なタイトル曲の「メンヘン」ですが、フランシス・レイあたりを彷彿させるアンニュイなメロディーが耳に残ります。当然ヨーロッパ映画やフレンチポップからの影響もありますよね?具体的に影響を受けたアーティストや作品などはありますか?

 

F:ヨーロッパ映画、フレンチポップの影響は大きいと思います。イントロもなく始まって、間奏も繰り返しもなく終わるような、コンパクトで濃密な映画音楽の構成はやはり魅力的。一回聴いただけではおなか一杯にならないようなさじ加減を、構成を考える際のお手本にしています。 ヨーロッパ映画ばかりでもないですが、ジョルジュ・ドルリューの『Theme From The Day Of The Dolphin』、サークルの『The Minx』、ジャネットの「Porque Te Vas」、アレックス・ノースの『Love theme from spartacus』、『ボッカチオ'70』でソフィア・ローレンが歌っていた「soldi soldi soldi」、Los 3 Sudamericanosの「Yeh, Yeh」(これは65年リリースですが、比較的最近の映画に使われていました)などです。

U:なるほど興味深いアーティストやタイトルが出ていますね。ソフトロック・ファンには『The Minx』は馴染みが深いです。映画音楽の作家もジョルジュ・ドルリューやアレックス・ノースなど通好みで感服しました。 今回のレコーディング中の面白いエピソードなどはありませんか? 

F:「コンピューターおばあちゃん」は、当初は全然違うアレンジだったのですが、納得がいかず、ラスト1日で一から作り直しました。ゴール直前で振り出しに戻ったのは、冷静さを取り戻した証拠ですね。他の曲も、冷静さを取り戻していたらどうなったことか。。 あとタイトル曲「メルヘン」なのですが、元々は「勝手にCM」企画用に書いた曲でした。その企画はお蔵入りの気配ですが、どこかで発表できる機会があればと思います。 

U:曲作りからレコーディングなどアルバム制作中、はまっていたアーティストのアルバムや映画など、少なからず影響を与えてくれた作品はありますか?

F:佐々木昭一郎監督の映像作品「夢の島少女」にインスパイアされ、「メルヘン」を制作しました。といっても、書いた当初は作品の全容を知らなくて。。浅はかではありますが、「夢の島」という言葉からイメージを膨らませて詞を書いています。

U:ショックさんが『メルヘン』を聴いたファースト・インプレッションはどうだったですか? 

S:レコーディングに参加しているときは、オケだけ聴いて、よりテクノ化しているかなぁという印象でしたが、それが単純にテクノというより、フレネシさんの脳で考えるイメージと作品との間に、何の仲介も入ってないダイナミックな脳天直撃サウンド、という印象に変わっていきました。その後、マスタリング後のCDを聴いたら、作品全体の「集中力」に、更にただならぬ気配を感じましたね。 前作『キュプラ』は、以前のフレネシさんのイメージと、新しい展開との狭間で揺れているような感じも多少ありましたが、「メルヘン」は、これだけいろんなタイプの曲があるにもかかわらず、方向性がまったく拡散していないんです。それがスゴイ。 「街」やタイトル曲で聴ける切ないノスタルジー感覚もいいですよね。こういう曲にピアノで参加できたのも、素直に嬉しかったです。

U:フレネシさんから『メルヘン』の聴きどころをアピールして頂けますでしょうか。

F:全体的にリバーブが強く、またヴォーカルがとても近いのは前作までと明らかに違う点です。聴きどころは、テクノ歌謡といわれる「不良マネキン」でしょうか。テクノ歌謡が何か、実は良く知らないのですが。 また、打ち込みメインの曲が多い中、「メルヘン」はアコーディオン、アップライトベース、ピアノをゲストの方にお願いしています。特に、ショックさんによる流麗なピアノのクライマックスは必聴。ヴォーカルが消えた後、音量を上げてお楽しみくださいませ。

●フレネシ オフィシャルHP
http://www.otomesha.com/frenesi/
●blue marbleのマテリアル・ワールド(ショック太郎blog)
http://d.hatena.ne.jp/bluemarble/



(インタビュー設問作成、本編テキスト:ウチタカヒデ)







2010年9月2日木曜日

フレネシとblue marble対談レビューVol.1

フレネシ:『メルヘン』(乙女音楽研究社/OTMSH-003)
blue marble:『ヴァレリ(乙女音楽研究社/OTMSH-004)



 9月15日に音楽レーベルの乙女音楽研究社より同時にリリースされる、フレネシの『メルヘン』とblue marble(ブルーマーブル)の『ヴァレリー』。両アーティストが共に参加したコンピレーションアルバム『Easy Living Vol.1』(2006年)を監修、共同プロデュースした筆者だから聞ける、両作の魅力と制作中のエピソードを対談レビューというかたちで2回に渡ってお送りしたい。 参加してくれたのはフレネシ氏とblue marbleを主宰するショック太郎氏。

ウチタカヒデ(以下U):まずは『Easy Living Vol.1』に共に参加されたお二人ですが、ショックさんがフレネシさんのサポート・メンバーとして参加するようになったのはどういった経緯で? また同じレーベルに所属することになったのもその流れからですか?


ショック太郎(以下 S): 確かフレネシさんから、「イベントを企画しているので、ぜひblue marbleで出演してくれませんか?」みたいなメールがいきなりきたような。コンピつながりで、ボクらを知ってくれたんでしょうね。嬉しかったです。まぁ、出演は、お断りしたんですが(笑)。でも、今度はボクがフレネシバンドのピアノに誘われました。その後、一度だけフレネシとblue marbleが一緒にライブをやったことがあったんですよ。で、それを観ていたレーベルの社長さんが、blue marbleも気に入ってくれて。まぁ、そんな流れでしょうか。

U:なるほどフレネシさんからのラヴ・コールが始まりなんですね。スタイルやサウンド的には異質だけど、コンピがきっかけで交流に結びついていたとは、プロデュースに関わった者として非常に嬉しいエピソードです。またそれが今回の『ヴァレリー』リリースにも繋がっていく訳ですし、縁というのは大切なんですね。



フレネシ(以下 F):『Easy Living Vol.1』の中で、最も心を掴まれた楽曲がblue marbleさんの「懐かしのバイアーナ」だったのですがその存在が謎につつまれていたので、何とかお会いして謎を紐解いてみたいという思いでお声をかけたのが最初です。
それで、フレネシ主催イベントへの出演を依頼したのですが、ここでは振られまして。。その時は、ショックさんに紹介された男性シンガーソングライターの方に出演していただくことになったのですが、サポートとして参加していたショックさんの超絶ピアニカテクニックが素晴らしくて、これはただごとではないぞ、と自分の中で確信し、ぜひピアノでサポートして下さいとおねがいしたのが、お手伝いしていただくようになったきっかけです。
レーベルメイトになったきっかけは乙女社主催の「ささやきナイト」に呼ばれた折、「共演したいささやきアーティストはいませんか」と聞かれたのでblue marbleさんをリクエストしたところ、今度こそ共演することができまして...。そのステージに魅了された社長がblue marbleさんをスカウト、という流れだったと思います。

U:「懐かしのバイアーナ」に心を掴まれたというのが素晴らしいエピソードですね。私も『Easy Living Vol.1』の候補曲として、ショックさんから聴かせてもらったデモの中から「バイアーナ」が特に惹かれました。実は初めて聴いた時からコンピのラスト曲に相応しいと考えていて、共同プロデューサーの近藤君(the Sweet Onions)も同じ意見だったんです。フレネシさんの興味を強く引いたのも頷けます。
ではショックさんにお聞きしますが、そもそもblue marbleを結成した経緯を教えて下さい。
また今作『ヴァレリー』へ至るまでの活動についても伺いたいです。

S:ふたりとも同じ音楽大学の作曲科の生徒同士だったんですよ。それで、とんCHANが何気なく書いた曲に、ボクがアレンジと作詞をしたりして、ふたりでデモテープを作ったのが最初かな。
その後、ヴォーカリストを募集して送られてきた数十本のテープの中から、オオノさんを発見したんですよ。あの声でしょ。目立つ目立つ(笑)。とたんに盛り上がって、一気に15曲ぐらい作りましたね。でも発表する機会を見失って、ずっと何年も音源はお蔵入りしたままでした。
だから『スマイル』のように、かつて挫折したアルバム作りを、もう一度トライしたのが今回の『ヴァレリー』なんです。もともとblue marbleって、時代性にまったく関係ない音楽だから、発表するタイミングなんて、正直いつでもよかったんです。10年前でも10年後でも。

U: まさかヴォーカリスト募集に、あのオオノ(大野方栄)さんが応募してくるとは想像もつきませんよね。ムーンライダーズとのセッションやCM音楽で既に実績のある一流ヴォーカリストさんですからね。 当然オオノさんもblue marbleの音楽性に引かれた訳ですね。
少し話が出てきておりますが、blue marbleでは完全分業なのですか?とんCHANさんが作曲、ショックさんがアレンジと作詞というように。

S:いえ、完全分業というわけじゃなく、ボクが曲を書く時もありますし、とんCHANがアレンジを考える時もあります。ふたりで一緒に曲を書く時もありますね。「惑星」なんかはそうです。歌詞に関してはボクですが、「惑星」だけはオオノさんが作詞をしてくれました。
男女のソングライター・コンビってあるじゃないですか。ゴフィン&キング、バリー&グリニッジ、マン&ワイルとか。そういうのに憧れていたというのもあります。バンドというより、ソングライター・チームなんですね。

U:なるほどソングライター・チームとしてお互いを補っているところは、メンバーの資質の高さを感じさせます。
ではアルバム収録曲について伺っていきます。まずはリード・トラックになっている「街を歩くソルジャー」から。この曲は以前聴かせてもらったデモ集には入っていなかったけど、今作のために書き下ろした新曲なのですか?

 
S:古い曲かな、これも。アレンジは新しくやり直しましたけど。リード曲をどれにするかって、完全にレーベル側に任せちゃっています。
この曲は、「イントロなしで、タイトル歌い出し」ってのが、いいかなぁと。ビートルズが、よくやりますよね。「She Loves You」とか。

U:活動自体は長いから曲のストックはアルバム何枚分かありそうですね(笑)。
この曲はアレンジ的に変わったということで興味を引きますが、音像のトータル・コンプレッションが80年代的な音でもあり、一方でトッドの『A Wizard, a True Star』(73年)みたいに凝縮されたポップスで魅力的です。
「スティール・バンド・トリニダード」や「懐かしのバイアーナ」みたいな南米風のエキゾチシズムって、blue marbleサウンドのエレメントの一つだと思うんですけど、その辺りの引き出しのきっかけとは?

S:エキゾチシズムは、ほとんど自然な流れですね。でも、ワールド・ミュージックにはハマらなかったなぁ。あくまでポップス経由のエキゾチシズムが好きなんですよ。
「懐かしのバイアーナ」は、ブラジルというよりルビー&ザ・ロマンティクスの「燃ゆる初恋」みたいな曲を作りたくて。「スティール・バンド・トリニダード」は、ガーデン・クラブの「花のうしろで」を意識していましたし。こんな話、VANDAじゃなきゃ、しませんが(笑)
(注:「懐かしのバイアーナ」のPVはアルバム収録のオリジナルの尺を編集してあります)


U:バイアーナの元ネタは「燃ゆる初恋」(「Our Day Will Come」63年)なんですか!(笑)VANDAというかソフトロック・ファンにはスパイラル・ステアケースやフランキー・ヴァリのカバー・ヴァージョンも知られていますが、アレンジ的にはオリジナルの方が完成されていると思います。そこがヒントにしたポイントなんでしょう。「花のうしろで」(「Little Girl Lost-And-Found」68年)はアレンジ的にはオリジナルのガーデン・クラブのサイケデリックさより、ヤン富田のカバー・ヴァージョンやヴァン・ダイク・パークスの『Discover America』(72年)などに通じるカリプソ・サウンドですね。
フレネシさんにお聞きしますが、以前心を掴まれたといわれる「懐かしのバイアーナ」の魅力とはなんでしょうか?

F:「懐かしのバイアーナ」の魅力は、曲そのものやアレンジが素晴らしいのは勿論ですが、
私が特に心惹かれたのは、サウンドの隙間を満たす空白の潤い感というか...。
その瑞々しい残響に、何ともいえないノスタルジーを感じたのです。オオノさんの声も少女のようにかわいらしくて、でも他のどんなささやきシンガーとも似付かない個性を放っていて、強烈に耳に焼きついて離れませんでした。

U:次はオオノさんのヴォーカル・テイストに最も合っていると思われる、「降り続く雨はいつでも」なんですが、この曲のモチーフは?ラグタイムっぽいフレーズが入るピアノはショックさんのプレイかな?個人的にもアルバム中最も好きな曲です。

S:ありがとうございます。ピアノはボクですね。シチュエーションは「夏のカフェにひとりでいる女性」ですね。白昼夢みたいなボンヤリ感。バラードですが、泣きのバラードには絶対したくなったですね。むしろ、眠くなるような感じです(笑)。もともと映画音楽のようなオーケストラ・アレンジだったのですが、ちょっと大げさかなと思い、最終的にオケを全部カットしました。オオノさんのヴォーカルに的を絞った感じです。シンセの使い方とか、スティービー・ワンダーの「You And I」(『Talking Book』収録72年)に影響受けていますね、かなり。
オオノさんは録音の時、絶対1回か2回ぐらいしか歌わないんです。歌詞とか歌入れの時に初見だったりするのに、よく歌えるなぁ。数多いCM音楽の製作現場で鍛えたワザなんでしょうか。

U:スティービーといえば、「未来都市ドライブ」のシャッフルも白人のそれではなく絶妙な横ノリになっていて、バック・ビートにおけるシンセのアクセントにもモロ影響を感じますね。
オオノさんの歌入れの話も興味深いです。ベテランの職業シンガーさんらしいエピソードです。
ショックさんは自宅にスタジオを構えているらしいですが、今作ではベーシックから歌入れまでそちらで全て録ったんですか?その他にレコーディング中の面白いエピソードはありますか?

S:ベーシック・トラックは自宅ですが、歌入れや生楽器などは近所の公民館の音楽スタジオでした。かなり安い値段でレンタルできるんですよ。「政府の税金の無駄使い」の恩恵を見事に受けていますよね(笑)
「スティール・バンド・トリニダード」では、近所の子供たちにコーラスに参加してもらいました。キッズヴォーカルは、絶対にヘタクソな感じの方が可愛いと思ったので。でも学校の新任の先生みたいになった気分で、現場はとにかく大変だったなぁ。

U:興味深いエピソードありがとうございます。
では曲作りからレコーディングなどアルバム制作中、はまっていたアーティストのアルバムや映画など、少なからず影響を与えてくれた作品はありますか?

S:80年代の邦楽をよく聴き直していましたね。5枚だけ選ぶとしたら、鈴木さえ子の『緑の法則』、Shi-Shonenの『Singing Circuit』、チャクラの『さてこそ』、ポータブル・ロッU:『緑の法則』と『Singing Circuit』は私も80年代のフェイヴァリット・アルバムに入っております。
ではフレネシさんが『ヴァレリー』を聴いたファースト・インプレッションはどうだったですか?

F:私自身、リリースをずっと待ちわびていたファンの一人なので新作を聴けるということが純粋に嬉しかったです。
初めて聴いた時、最初の曲のイントロの音圧が、一瞬にして視界をビビッドカラーに彩色しました。そして次に、何色もの透明水彩絵具で描いたラインが幾重にも交差する絵がふっと浮かんできました。そして最後は、確かにここに存在するのに、数日間の後には跡形もなく消えてしまう移動遊園地の残像をみているような、そんな非現実感に包まれて、終わりました。

U:ショックさんから『ヴァレリー』の聴きどころをアピールして下さい。

S:変にマニアックで敷居の高い音楽ではなく、普通に誰でも楽しめるポップスだと思いますので、家でも、歩いてでも、車でも、いろんなシチュエーションで聴いていただけたらと思ってます。あと、本間藍さんのイラストが本当に素晴らしいので、そういう視覚的な部分でも充分に楽しんでいただけるアルバムではないでしょうか。

●フレネシ オフィシャルHP
http://www.otomesha.com/frenesi/
●blue marbleのマテリアル・ワールド(ショック太郎blog)
http://d.hatena.ne.jp/bluemarble/


(インタビュー設問作成、本編テキスト:ウチタカヒデ)