大滝詠一が他アーティストに提供した曲のデモ等を集めたセルフ・カバー集に、オマケとして1997年の再活動開始期にソニーでのリハビリ・セッションを初回限定でプラスしたアルバムだ。ライナーがあるので枝葉末節な細かい情報を入れながら紹介しておこう。やはり男性に書いた曲はキーがドンピシャ、冒頭の1985年に小林旭のために書いた「熱き心に」がまずこの盤のハイライトの1曲。大滝の歌声は本当に魅力的で、日本のナンバー1ヴォーカリストだなと改めて思う。ソフトで癖が無く、誰でもうっとりとさせてしまう魔法の声だ。1994年に渡辺満里奈が歌ったというより、「ちびまる子」のテーマソングの「うれしい予感」は、キーがオリジナルなので非常に低い。よくこんな低音でもきれいに歌えるものだ。ミニアルバムでは2分22秒から35秒に登場する大サビの入っていない、短いシングル・ヴァージョンを使っている。1998年の「怪盗ルビイ」は2002年リリースの『Kyon3』に、小泉今日子と大滝の細かいつなぎ合わせのデュエット・ヴァージョンが収録されていたが、こちらは初登場の大滝のソロ・ヴァージョン。ラッツ&スターに提供した「星空のサーカス」と「Tシャツと口紅」はさすが男性用、キーが合うのでバックコーラスも完璧、自家薬篭中の出来でやはり“提供先”より魅力的に仕上がった。薬師丸ひろ子に提供した1983年の「探偵物語」「すこしだけやさしく」は、大滝が同年7月24日に西武球場で行ったコンサート「オールナイトニッポン・スーパーフェス’83」用に作ったオケで録音したソロで、アレンジから全く違う。前者は、ほぼオーケストラをバックにした薬師丸に比べ大滝はピアノのイントロからオーケストラが入りビートも感じられるアレンジで仕上げている。ただ大滝のソロ作品として見ると歌謡曲っぽさが強い曲想だ。後者の大滝ヴァージョンはカスタネットが加わりより大滝らしいサウンドになっていた。このコンサートでは大滝はなんと嬉しい「オリーブの午后」からスタート、「ハートじかけのオレンジ」「白い港」「雨のウェンズデイ」と続きその後がこの2曲の登場、そして「夏のリビエラ」「恋するカレン」「FUN×4」「Cider’83~君は天然色」で「夢で逢えたら」のインストがラインナップだった。そしてこの本編CDでもこのライブと同じ流れで次は『Snow Time』で既に披露済みの「夏のリビエラ」だったのは偶然か。そして曲の魅力度ではこのアルバムの目玉である「風立ちぬ」の大滝ヴァージョンが登場する。使用したのは松田聖子に提供した1981年の12月3日に渋谷公会堂で行われた観客は与えられたFMWalkmanに各自のヘッドフォンをつないでライブを聴くという「ヘッドフォンコンサート」のライブ音源だった。キーを変えバッキングは新しく作られたが、基本的なアレンジは松田聖子ヴァージョンで、「探偵物語」ほどの違いはない。やはりソロだと歌声にはつらつさが欠け、なにやら照れくさそうな感もある。この音源にはブートで一部に出回っている松田聖子と同じキーで歌うデモヴァージョンがあり、そちらが収録されると思っていたが、よりキーが低く、歌声が地味だったので使われなかったのか。このブートには大滝本人が歌う「冬の妖精」のデモも入っていたがこれも収録されていない。ちなみにこのライブは第1部が「FUN×4」「Pa-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba物語」「Velvet Motel」「スピーチ・バルーン」「外はいい天気だよ」「青空のように」「カナリア諸島にて」「指切り」「雨のウェンズデイ」「恋するカレン」「ナイアガラ・ムーンがまた輝けば」の11曲、第2部が「恋はメレンゲ」「想い出は霧の中」「Confidential」「Blue Velvet」と続き16曲目にこの「風立ちぬ」が登場した。その後は杉真理の「街で見かけた君」、佐野元春の「Someday」となり、Niagara TriangleVol.2の3人による「A面で恋をして」(アンコールも同じ)、「君は天然色」「さらばシベリア鉄道というラインナップだった。最後は『Best Always』『Niagara Song Book2』を買って応募した人300人にもらえたシングルに入っていた「夢で逢えたら(Strings Mix)」が収録された。ハープシコードからスタート、その後はストリングスのバッキングなのでドリーミーな仕上がりでラストに相応しい。そしてオマケのディスク2。1997年に大滝がソロ活動再開をするためにソニーのスタジオで2ヶ月に渡って続いた「リハビリ・セッション」からの音源が続く。1928年のジミー・オースティンのカバー“My Blue Heaven”のカバー「私の天竺」で、中間に“Home On The Range”を入れるセンス、まさにナイアガラだ。楽しいカバーでディスク2では一番好きかも。続く「陽気に行こうぜ~恋にしびれて」(2015松村2世登場!version)は、ご存じエルヴィス・プレスリーのカバー・メドレーで、昨年リリースされた『佐橋佳幸の仕事1983-2015』に収録されたものから冒頭の30秒のスタジオでのやり取りをカットしたものだ。その後はカントリーのロジャー・ミラーとジョージ・ジョーンズのカバーのメドレー「Tall Tall Trees~Nothing Can Stop Me」と軽快なカバーが続いた。このリハビリ・セッションは、その後に大ヒットとなる「幸せな結末」が生み出され、曲のタイトルのとおりとなる。最後はディスク1の「うれしい予感」のB面(扱い)で、植木等が歌った「針切じいさんのロケン・ロール」の大滝によるセルフ・カバー。このディスク2に回されたのは、オリジナルが1958年のノヴェルティ曲でそこにさくらももこが歌詞を付けたものだから。大滝が歌うとまさにナイアガラ。ロンバケ以前の未発表曲と言われればすぐに信じちゃうね。(佐野邦彦)
2016年3月21日月曜日
2016年3月17日木曜日
☆吾妻ひでお:『ワンダーAZUMA HIDEOランド2』(復刊ドットコム)
出版の計画を立ててから約一年、ようやく待望の続編が出版された。この一冊で吾妻ひでおの単行本未収録作品の9割以上がカバーされたことになり、またここに収録された雑誌や同人誌、業界誌などの原本を集めるのはほぼ不可能に近いので、本のコスト・パフォーマンスの高さは比類なきものがある。高校時代の投稿カットまで入れた徹底ぶりだ。本の構成順だとレア度が分かりづらいので、発表年順にポイントを押さえておこう。まず初期作品だが、高校時代の投稿カット、アシスタント自体のカットまで入れた徹底ぶり。デビューの1969年から1973年までのショートショート10本が『デビューの頃』に入っている。ギャグマンガとしては非常に素朴だが、「ベトナム和平」「沖縄問題」(返還こと)「国電」などネームに時代を感じられる。続く作品は『青年マンガ』のコーナーの方が早い。そのコーナーの中では1974年のカラーや2色が入った作品も入れた4編、1975年1本、1977年1本が初期。そして『少年マンガ』のコーナーとも重なり1972年の「おーマイパック第3話」、1974~76年の「ふたりと5人」番外編4編はどれもエロ・グロ・ナンセンスで、初期吾妻ワールドを感じさせてくれる。ちなみに青年マンガコーナーの「ゴタゴタマンション」は他に3編単行本未収録があるが、「アニマル・カンパニー」の1編と含めて吾妻先生の方で余りに下品とNGが出てしまった(笑)さて、ここから紹介する部分が、多くの吾妻ひでおフリークの目玉となる、一番絵柄も内容もいい、「アズマニア発生」の部分である。やはりこれは同人誌作品が核となっていて、主なものは『ワンダー1』などに収録済みのだが、ここでは『無気力プロのころ』と題して77年の「吾妻ひでお伝!」、78年の「無気力日記」、84年の「良いファン悪いファンとんでもないファン」といったコマを割った作品は貴重だし、当時のコミケでスターダムにいた「はーどしゅーる新聞」などへのカットの数々、あの伝説の吾妻先生本人が売り子をやっていた「シベール」の番外編の「プチ・シベール」に描いたイラスト2点、さらに「少年マンガ」コーナーにページ合わせで入れられた77年「吾妻ひでお不滅のキャラクター特集!」(注:奥様のカット付き。黒マクさんのこと)の同人誌17Pは激レアである。さらに巻末の吾妻先生と高橋葉介先生の対談に入っている「葉介先生ご結婚おめでとう」のカットは1983年に高橋葉介先生のファンクラブに描いたものでレア度はさらに上がるのでここにも注目。諸事情で入れられなかったイラストやマンガがあるのが残念だが、これだけ入れられればまずは十分だろう。あと『青年マンガ』に入れられてしまった78年に「高2コース」に連載された「いちヌケくん」計3回12Pは、貴重度はマックスだ。学年誌がまずレア、そして78年という発表年だ。同時期に「パラレル狂室」を描き「やどりぎくん」を連載していた。翌年にはあの「不条理日記」を描くなどSFマインドも爆発を初めていた。この作品はギャグだが、最も単行本収録を望んでいた作品のひとつである。以降は『近作と友人たち』『近作と美少女』と題されたコーナーに収録されているがこのコーナー立てにはあまり意味がなく、古いものでは83年の作品から、90年代、2000年年代の激レア作品が揃う。特に予告編的な、96年にCD-ROM本を出した時の予告マンガや、青年誌での「うつうつひでお日記」の予告編4コマ3編とか「コスプレ奥様」を出した時の雑誌の予告4コマなんて、まあ普通の人は気づくこともないディープなものだ。そして2005年にあの名作「失踪日記」を出した時に、新宿の「まんがの森」で配った内容予告の宣伝マンガ「失踪日記のこと」など、知ることすらなかった非売品。(当初、先生は掲載NGにしていましたが…。特に問題ない内容でしたから。)その2回目の失踪時代はガス工事屋になっていた事は有名だが、その業界誌に1Pマンガ「ガス屋のガス公」を書き、本名・写真付で掲載されていたものがあるのだが、さすがに作業着姿の写真をカットして掲載している。93年のことだった。そしてこの「ガス屋のガス公」は2011年に8Pマンガとなって。吾妻ひでおマニアックス展」の展示として公開され、この本に収録された。先生は定期的に「癒しとしての自己表現展」「心のアート展」に描き下ろしマンガを展示しているが、こういうアート展の収録はまさに超マニアック。その中でも「ガス屋のガス公」は「失踪日記」のエネルギーを内包する、この本のハイライトの作品だった。その他、親交があり共作本も出している新井素子との単行本未収録3編(ひとつは抜粋版)や、コミケの創始者で親交があった故・米沢嘉博への追悼同人誌3冊への3編も貴重だ。自分自身の想い出だが、80年代に「漫画の手帖」という同人誌をコミケに出していた時に、米沢さんは毎回必ず挨拶に来られていて、律義でとても好印象を与える方だった事を思い出す。本書は本当に落ち穂ひろい。そのため非常にバラエティに富んだ内容になったが、コンプリートを目指す人にはマスト・バイ・アイテムだ。この本はセレクションだけ済ませたところで諸事情から離れて完成したものだが、各扉のカットなど気が効いていて良い出来である。まだこの『ワンダー2』だけでは単行本1冊分の抜け原稿があるので、いつか最終版『ワンダーAZUMA HIDEOランド3』が出ることを待つことにしよう。(佐野邦彦)
2016年3月15日火曜日
新Web VANDAのホームページを公開しました。1996年からの20年分が一気に見られます。
Web VANDAは1996年にテストサイトをスタート、1998年より本格公開しましたが、2008年にサーバの大クラッシュで一時期全データが消えてしまいました。後で2005年以前のバックアップを見つけたのでその分は「旧サイト」としてHPのコーナーの隅に置き、クラッシュの2008年以降のものが、今まで公開していたWeb VANDAでした。そこで今回のリニューアルに合わせて、バックアップもない消えた2005~2008年のデータは、私のパソコンの送信履歴から復元し、初めて1996年のスタートから20年分の更新データが一気に見られるようになりました。
ジャンル別の「ラベル」を作りましたので、音楽は更新日別とは別に、ご興味のあるジャンル別にも見らえます。例えばアーティスト別の細かい別テイクやアルバム未収録曲等を調べたければ「コレクティング・ガイド」で常に最新版を見ることができます。更新日は当初日のままですが、リストはリリースの度に更新しているので常に最新版、Beach Boys、Beatles、Kinks、Who、Rolling Stones、Four Seasons、Small Facesを始め、洋楽で38アーティスト、邦楽では山下達郎、大滝詠一、ヒロト&マーシー関係など14アーティストで計52アーティストを追っています。一瞬でも声が聴こえる参加作品までリストに入れていますので、是非ご参考に。
その他、年代順で見る方法、ラベルでUKとUSのロック、ポップやソフトロックA to Z掲載のアーティストなどのカテゴライズ別、さらにBlu-rayやDVDなどは「映像」で、インタビューものは「インタビュー」でまとめています。音楽にご興味の無い方は、「旅行記」に過去15回の沖縄の八重山&宮古諸島・有人全19島の来島記などを中心に、南大東島や与論島、対馬などなかなか行かない島や、一般公開したばかりの軍艦島などを紹介しています。その他の読み物はサブカルで。さらに私どものVANDAで出した出版物の全てを掲載しました。
Web VANDAをはじめた頃はダイアルアップ回線の時代で、文字はメールで送れるものの、画像は1枚送るだけで10分以上かかりさらに途中でフリーズしてしまうことが多かったので、管理人の岩井さんにジャケットのカラーコピーを郵送、HPはhtmlで更新していました。非常に手間がかかるため、セレクトして掲載していた記憶があります。今から考えるとウソのような話ですが。
そして今回の移行ではhtmlでのバックアップの件もあって全てコピペでしか移行できず、画像もとても小さいものばかりだったので、多くを新しく探し出して貼り付けました。ところが前のHPの画像を残したものもあったのですが、ドメインを移したら前のHPからの画像は全て消えてしまい、さらに画像を探し出す手間が一気に増え、ここ一か月半はこの作業に忙殺されました。
文字のフォントや、行間の調整など、うまく出来ていないものも多いですが、後に見やすく修正をかければいいやと諦め、まずは公開を優先します。
までアクセスよろしくお願いいたします。(佐野邦彦)
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