2018年10月8日月曜日

WACK WACK RHYTHM BAND:『Easy Riding / I’ll Close My Eyes』『Madras Express / Stay-Pressed』(WWRB/WWRB001, WWRB002)

 
WACK WACK RHYTHM BAND(以下ワック)が、2012年のベスト・アルバム『XX CLASSICS』(HIGH CONTRAST/HCCD-9535)から約6年振りとなるリリースを、7インチ・アナログシングルで2ヶ月連続発表する。
彼等は90年代初頭にリーダーの小池久美子を中心に結成され、東京のクラブ・シーンを背景にUK経由のR&Bをベースとしたインスト・グループだ。
弊誌でも03年のオリジナル・セカンド・アルバム『WACK WACK RHYTHM BAND』(FILE / FRCD-116)を皮切りに、続く05年のサード・アルバム『SOUNDS OF FAR EAST』(FILE / FRCD-146)は、当時筆者が連載していたフリーペーパー誌でも取り上げるほど贔屓にしているバンドである。
その後幾度かのメンバー・チェンジはあったが、結成当時からのハイセンスな折衷感覚は健在で、東京の拘り派ミュージシャン達の集合体であるワックならではのスタンスを感じさせる。
彼等にはVANDA読者にもアピールする、ソフトロッキンなナンバーも多く、セカンド・アルバム収録の「Bittersweet In My Bag」や「Dreams Come Through」は特にお勧めだ。
  
  
さてここでは、10月10日と11月11日のぞろ目の日付にリリースされる『Easy Riding / I’ll Close My Eyes』(WWRB/WWRB001)と、『Madras Express / Stay-Pressed』(WWRB/WWRB002)について解説したい。   
「Easy Riding」はハーブ・アルパート&ザ・ティファナ・ブラスに通じるトランペットがリードを取るサウンドで、アレンジにはジミー・ウエッブの匂いがするソフトロック・インスト・ナンバーだ。ライヴでは08年からプレイしており、ソングライティングはキーボードの伊藤寛が担当している。
ブリッジの転調は5th ディメンションの「It's a Great Life」(『Stoned Soul Picnic』収録 68年)をオマージュしていて、初期ORIGINAL LOVEファンもニヤリとするに違いない。因みにこの曲のミックスはマイクロスターの佐藤清喜が担当している。
カップリングの「I’ll Close My Eyes」は、元々英国のコンポーザーであるビリー・リードの作品で、後にアメリカのソングライター、バディ・ケイが歌詞を付け加えてミュージカル映画『Sarge Goes To College』(47年) でフューチャーされヒットした。その後ジャズ・スタンダードとして、トランペッターのブルー・ミッチェルの演奏やヴォーカリストのサラ・ヴォーンの歌唱で知られるようになる。
歌物ではそのロマンティックな歌詞を讃えたバラードとしてアレンジされることが多いが、ここでのカバーは、名匠アーティ・バトラーがアレンジした67年のゲイリー・ウィリアムズのヴァージョンを下敷きにしたミッド・テンポでプレイされている。メンバーによる甘い男女混声ヴォーカルとコーラスやトップで鳴っているグロッケンなどソフトロック・サウンドがVANDA読者にもお勧めである。ミックスはベーシストの大橋伸行(元ブリッジ)が担当している。
蛇足だがこの原曲のメロディ・センスは、山下達郎の「あまく危険な香り」でもオマージュされているのをお気づきだろうか。 
 
「Madras Express」 はアフロ~カリビアン・ファンク調のハイテンポなインスト・ナンバーで、4管のホーン・アンサンブルとソリッドなリズム・セクションのプレイがたまらない。アナログ・シンセのフリーキーなソロやテナー・サックスのインタープレイも楽しめる。80年初頭にカリブ出身の知る人ぞ知る同名バンドがおり、そのサウンドからの影響も感じさせて興味深い。ソングライティングはテナー・サックスの三橋俊哉で、ミックスはトランペットの國見智子が担当している。
カップリングの「Stay-Pressed」も三橋が手掛けた曲であるが、前曲とは打って変わってロンドン経由の洗練されたスタックス・ソウル系のインスト・ナンバーである。ゆるくシェイクする独特なエイトビートとハモンド・オルガンが特徴的で、正しくスティーヴ・クロッパーを意識した山下洋のギターソロも聴きものだ。ミックスは大橋が担当している。

以上の2枚の7インチ・アナログシングルは、大型レコード・チェーンの他、独立系店舗でも扱っているので、彼等のface bookでチェックしてほしい。
https://www.facebook.com/wackwackrhythmband/



そして11月21日には、ワックの記念すべきファーストアルバム『WEEKEND JACK』がボーナス・ディスク1枚をつけてリイシューされる。コーネリアスこと小山田圭吾が主宰していたトラットリア・レーベルから98年にリリースされ、20年後の今でも色褪せないフリーソウル・アンセムの「HIT AND RUN」をはじめとしたオリジナル・アルバム11曲をディスク1に収録。
ファースト・マキシの『TOKYO SESSION』(94年)、トラットリアのコンピレーション・アルバム『Bend It! Japan 98』(98年)と『MENU200』(00年)、またカセットのみでリリースされ今回初デジタル化される『LIVE AT YOYOGI-PARK』(96年)からの計9曲に今回ここで紹介した「Easy Riding」がディスク2に収録されている。
既に廃盤になっている音源も多いので、読者をはじめ音楽ファンはこのリイシュー盤も入手すべきだ。
(ウチタカヒデ)




2018年10月3日水曜日

佐野邦彦氏との回想録16



 今年の異常なまでの猛暑もやっと峠を越え、秋の気配が感じられる季節となった。昨年の今頃は佐野さんと共同での「Jigsaw Complete」復刻作業に全力で取り組んでいたことを思い出す。以前、第2回と3回で紹介したように、8月末に910日の『Song To Soul』放映に併せた第一回発売分の選曲と解説を完成させ、9月初旬には発売前のラフに最終校正を終えていた。そして、中旬からは発売元から送られてくる第二回発売分の音源をチェックするという選曲作業を二人三脚で続けていた。今にして思えば、私はフルタイムでの仕事を終えた夜間と休日、佐野さんに至っては末期の病気療養中の体調を気遣いながらというコンディションの中、お互いよく頑張ったものだと感心する。

 綿密にいうなれば、この仕事は佐野さんと付き合いを始めてから最も濃厚な作業だった。当時、体調の関係で電話のやりとりが出来ない佐野さんとの打ち合わせはメールがメインだった。その頃やりとりしていた長文に渡るメールの内容を振り返ってみると、お互い「これが最後」とばかりに後悔の無いよう、こだわりにこだわって取り組んでいたのがよくわかる。ただ彼は、雑誌VANDAの休刊時期にも、放送やネットなどメディアを通じて多くの情報を発信し、また多くのリイシュー盤のライナーやコミケの復刻作業をこなしていた。それに対し私は、個人的な趣味を反映した程度の活動しかこなしていなかったので、彼のレベルに合わせた作業は大変なものだったが、人生で一番充実した時間だったように感じている。

 余談ながら、佐野さんが逝って間もなく一年となる秋の彼岸をひかえたこの時期、毎回楽しみにしている『激レアさんを連れてきた』(注1)で登場した「軍艦島を世界遺産に導いた人」の回を見て、彼と語り合った「軍艦島」の話がよみがえった。彼と付き合いのあった方ならご存知のように、新婚旅行で「冒険ガボテン島」をイメージした「ボラボラ島」(注2)を訪れたほどの離島マニアで「軍艦島」もお気に入りだったが、生前上陸は叶わなかったと聞いている。私は以前在籍していた会社の福岡勤務時に「管理職以上はスキューバダイビング・ライセンス必携」とのオーナー号令により、ライセンス取得に長崎に通っていた。その海上実習時に休憩ポイントでこの島に上陸したことがあった。その話をした際に彼が羨ましがったことを思い出し、番組をダビングして佐野宅へ送付した。到着と同時に奥様から連絡を頂き、「我が家でもこの放送を拝見しており、家族で永久保存版だねと話していたところでした。」と謝辞をいただいた。私にしてみれば、生前の彼には多くのお願いをしたが、彼の依頼には3回ほどしか役立てていない。これはそんなお返しのつもりだったが、予想以上に喜んでもらえ、うれしいやら気恥ずかしいような気分だった。



 
 さて前置きが長くなってしまったが、これまで続けている佐野さんとの回想録を始めよう。今回は「29」発行後の2003年夏以降について進めていく。まず、この時期で佐野さんにとって最も印象的な出来事といえば、2004年夏のThe Who初来日公演(注3)だった。公演当日は、猛暑で炎天下の野外公演だったらしいが、生で見るPeteRogerのアクションは大感激ものだったと興奮気味に話していた。ただ、その日に訪れていた大半を占めた(トリに控える)Aerosmith目当ての観客からの(The Whoパフォーマンス中)「早く終われ的雰囲気」が漂っていて多少不快な気分も味わったようだった。



 
 そして2006年にはビクターより、Jigsawの紙ジャケによる再復刻のオファーを受けている。そこで佐野さんは初復刻となったテイチク盤では実現できなかった未CD化ナンバーをボーナス・トラック収録に奔走し、さらに最新データも盛り込んだ充実したライナーもまとめている。なおこの発売直前の第70回(200622日)のRadio VANDAでプロモーションを兼ねた特集を放送している。ちなみにこの復刻盤は、2017年にコンプリート版が発売されるまで、かなり高額で取引されるほど人気を博している。


 そんな彼をよそに、この時期の私は本業の仕事が多忙で、ライターらしい活動はほぼ皆無の状態だった。ところが偶然にも、仕事を通じた得意先からスポンサーをしているコミュニティFM局のスタッフにVANDA誌のバックナンバーが渡り、ある日突然出演のオファーを受けた。その初出演は2006217日のレギュラー番組(注4)で、担当が地元出身の同世代ミュージシャンだったこともあり、その後も良い付き合いを継続することになった。また、その翌月にはパーソナリティの都合で2時間番組(注5)のプログラムを依頼され、企画書を制作している。しかし局では全音源が揃わず、自己所有の手持ち持ち込みで327日に初DJを体験した。こんな成り行きで、しばらくこの二つの番組に準レギュラーのような形で参加するようになった。



 
 ちなみに2006年に放送したプログラムは、5512日にロック世代の日本語詞特集。この内容は、佐野さんと知り合った頃に盛り上がりVANDA誌にも掲載したネタで、Web7回目でも紹介していたものだ。ちなみに、担当者がこの企画で一番興味を示したのは、Scorpionsの来日公演『Tokyo Tapes』に収録された「荒城の月」だった。そして、712日に映画(~テレビ)『ウォーター・ボーイズ挿入歌特集』、109日には『Bread特集』をオンエアしている。この中でBreadの特集は、未聴取地区でも評判となったことは以前にもふれたが、自分自身が放送を継続させていく自信を持った企画だった。捕捉になるが、佐野さんはこの年の831日(増刊号 Part 1)にRadio VANDAで、それまであまり触れることのなかった和物の特集を組んでいる。この時に紹介したのは、このWebでもお馴染みのスプリングス「Have A Picnic~心の扉」(注6)や、Lamp「ひろがるなみだ」(注7)で、日本の音楽にも造詣の深いところを見せている。ちなみに、スプリングスはかなりお気に入りだったらしく、放送前にサンプル・カセットが届いている。



 
 また余談になるが、この20061129日には佐野さん待望の『Garo Box(10CD+DVD)』(定価23,100円)が発売になっている。ただこのBoxは発売前に告知された商品と正規流通商品とは一部内容が違っている。その詳細は、DVDに収録される予定だったCSNカヴァー2曲(「Guinnevere」、「青い目のジュディ(Suite:Judy Blue Eye)」)の映像が許諾を得られず、Garoのオリジナル(「姫鏡台」「ビートルズは聴かない」)に差し替えとなっている。とはいえこの回収作業は発売直前だったため、都内大手ショップへの出荷分は徹底回収されていたようだが、中小のショップまでには間に合わなかったようだった。そのため、近所のレコード店に予約していた佐野さんは運よく差し替え前の商品を入手することが出来た。この事実は即彼から連絡を受け、映像をダビングしてもらい、その差し替え前の映像を見る恩恵にあずかっている。そこには当時和製CSN”と称されていた時代のGaroの姿があり、映し出された演奏に大感激した。その後、この商品はヤフオクにも出品されていたが、既に23倍となっており、現在でも10万円前後で取引されているようだ。



 
 話は私に戻すが、ライター活動は開店休養中だったが、翌2007年からはFM局パーソナリティの依頼もあり、休日のハッピー・マンディを利用して、ラジオのDJ活動を活発化させている。そのプログラムは、これまでVANDA誌に掲載したものを中心に組んだ。それは212日の『America』、430日『The Osmonds』といったものになる。とはいえ、この時期に最も集中してまとめたプログラムは、この年の327日に逝去された1960年代を代表するスーパー・スター「植木等」の追悼特集だった。この放送はチューバ奏者S氏の番組60分枠をほぼ提供していただき615日にオン・エアした。当日はサントラやライヴ音源まで網羅し、稀代のエンタティナー植木さんを偲んだ。このVANDAを想定しないで取り組んだプログラムは、それまでの佐野さんを意識したものよりもスタッフ受けが良かったので、以後はこのような独自プログラムも組むようになった。



 
 ちなみに、これ以降に放送したプログラムは、『Hatch Potch Station替え歌特集』(7/7) 、『Dunhill RecordThe Grass Roots』(7/16)『Hatch Potch Station 替え歌特集Part 2』(8/14)などで、年末の1224日には実に18年ぶりの新作『run』をリリースし、当時「再結成は今回限り」(実際は、2018年現在も活動中)とコメントのあったチューリップを全曲ライヴ音源で選曲した特集を企画した。このように、私のプログラムは佐野さんとは方向性が違う、やや大衆的でコアなものになっている。当然ではあるが、彼が「Radio VANDA」の音源を送付してくれたように、私も彼に放送音源を送付していた。そんな彼から「鈴木さんの引き出しの多さに頭が下がります。」と評価していただき、以後もこのスタンスで継続した。

 そんな中、松生さんより「昭和の音楽や映画などをネタにした「脳の活性化」についての企画が通ったので、制作に協力してくれませんか?」という依頼があり、この年の後半はこの企画の資料集めに奔走している。なおこの活動は2012年に発売する私名義の本の出版や、2013年のVANDA30の掲載内容に繋がっていくことになるのだが、話が長くなってしまうので、今回はここで留めておくことにする。

(注1)実際に激レアな体験をした激レアさんをゲストに招き、その体験談をひも解いていくプログラム。テレビ朝日月曜日2315からの60分番組。

(注2)南太平洋フランス領ポリネシアのソシエテ諸島にある1周約30Kmの本島と、その周囲を約40Kmのリーフ(岩礁)に囲まれている。島中央にそびえるオテマヌ山(727m)の姿がアニメ「ガボテン島」を連想させる。

(注3)大塚製薬協賛、ウドー音楽事務所主催で200472425日に渡って横浜国際総合競技場(現:日産スタジアム)と大阪ドーム(現:京セラドーム)で同時開催された「POCARI SWEAT BLUE WAVE The Rock Odyssey 2004」。出演者はAerosmithThe WhoPaul WellerLenny KravitzRed Hot Chili Peppersなどで、両会場を日替わり交代で参加した。

(注4)市内(旧清水市三保)出身の東京芸大卒のチューバ奏者S氏がパーソナリティを務める毎週金曜日19時からの音楽番組「ワープ、ワープ、ワープ“Boss Jun アワー」(メインは吹奏楽)。Boss Junは、彼がサントリー缶コーヒーのイラストに似ている事と本名とを併せた合成語。また彼は吹奏楽振興のために全国行脚し、開催現地の吹奏楽経験者を集めた「自由音楽会」をライフワークにしている。

(注5)毎週月曜日10時(再放送は日曜13時)から放送されていた2時間枠の情報バラエティ番組パステルタイム。私は2006年以降の祭日月曜(ハッピー・マンデー)に自作自演のプログラムを自己所有の音源持ち込み(紙ジャケ展示で7080分)で出演した。

(注61995年にヒロ渡辺を中心に結成された音楽ユニット、19962月『SPRINGS』でデビュー。この曲を収録した199710月リリースの『PICNIC』は和製ソフト・ロックの最高峰と話題をよんだ。

(注72000年結成、20034月『そよ風アパートメント201』でデビューした3人組バンド。この曲は2004年のセカンド・アルバム『恋人へ』の収録曲で、ウチ氏より萩原家健太氏に紹介され読売新聞のコラムでも紹介されている。

20189192200

2018年9月29日土曜日

small garden:『歌曲作品集「小園Ⅱ」』 (small garden studio/SGRK-1801)

















昨年11月に紹介したsmall garden(スモールガーデン)が、3作目で4曲入りEPの『歌曲作品集「小園Ⅱ」』を9月29日にリリースする。
small gardenは小園兼一郎(コゾノ ケンイチロウ)によるソロ・ユニットで、これまでにファースト・アルバムの『歌曲作品集「小園」』(16年10月)と、昨年9月に2作目のEP『Out Of Music』をリリースしている。ソフトロックやネオ・アコースティック、ジャズ・ミュージックのエッセンスを内包したそのサウンドは同業ミュージシャンや音楽マニアに熱く支持されている。
本作も前作、前々作同様、ソングライティングとアレンジ、全ての演奏(ベース&ドラムはプログラミング)はもとより、ミックスダウンからマスタリングまで小園が一人で担当している。
また『歌曲作品集「小園」』に参加した山本ひかり(野沢菜)が4曲中2曲でヴォーカルを取っており、内1曲の作詞を小園と共作している。
小園のプロフィールについては前回のレビューを読んで頂くとして、今月前半に音源を入手してからすっかり聴き込んでしまっている本作の収録曲を解説していこう。



冒頭の「残夏」は、ハイブロウなコード進行に変拍子のドラミング、小園自身によるサックス・ソロからなる1分ほどの長くドラマティックなイントロから幕を開ける。この構築力は北園みなみにも通じるが、筆者は初めてこのイントロを耳にして彼の比類なき才能を改めて感じたのだ。
本編はシャッフル系のリズムでグルーヴするバースからソナタのように展開して、山本のナチュラルでスムーズなリード・ヴォーカルを引き立てる。
山本と小園のヴォーカルの掛け合うパートでは、Lampの榊原香保里と永井祐介のそれを彷彿とさせる瞬間もあり彼等のファンは聴いてみるべきだろう。そしてこの曲のハイライトへと雪崩れ込むコーダでのサックス・ソロで、解き放たれる感情を抑えられなくなってしまう。
正に今年の個人的ベストソングの中の1曲として選びたいほどの曲なのである。
続く「横顔」は小園のヴォーカルをフューチャーしたマイケル・フランクス風のメロウなAORサウンドで、所謂シンガーソングライター・ヴォイスというべき味わい深い歌声がオケに溶け込んでいる。この曲でも彼のサックスのインタープレイが際立っており、単なるソロの域を出て楽しめるのだ。


MORとニューソウルの狭間にあるような「シュールポワール」は、無重力な5拍子のリズムと独特なコード進行が特徴的だ。デジタル・ピアノとアナログ・シンセ系のリフもいいコントラストを生んでいる。キープするのが難しいと思われる絶妙なメロディ・ラインであるが、小園のヴォーカルは飄々とクールに聴かせている。
ラストの「8番目の月」はリード・ヴォーカル山本が作詞も小園と共作している、ジャズ・サウンド寄りの曲である。リズム・セクションのないサックス・アンサンブルのみをバックに歌われるパートから4ビート・ジャズへと展開する心憎い演出もさることながら、これからの季節に似合う歌詞が山本と小園のデュエットで歌われる。曲が進むにつれてアップテンポになるアレンジも素晴らしい。音大のジャズ科出身者ならではのサウンドの構築はさすがである。

さて本作は本日9月29日より高円寺のディスクブルーベリーで初回限定盤として先行で独占販売されるという。
全国流通は12月を予定しているので、このレビューを読んで興味をもった音楽ファンは是非初回限定盤を入手してすぐに聴くべきだ。
ディスクブルーベリー
http://blue-very.com/


 ・初回限定盤(黒、赤のクラフト紙ジャケット仕様)


・通常盤(黄土色の生成りクラフト紙ジャケット仕様)

(ウチタカヒデ)







2018年9月23日日曜日

【ガレージバンドの探索・第二回】 バミューダ諸島のガレージバンド


60年代のバミューダ諸島のガレージバンドがかっこいい。 
Crypt RecordsやArf! Arf! のコンピレーションでもよく登場するThe Savegesは比較的有名かもしれない。
1966年、Eddy De Melloが運営していたDuane Recordsから、首都ハミルトンのPrincess HotelのナイトクラブHubでの演奏を収録したライブ盤フルアルバム 『Live'n Wild』 (Duane ELP 1047)がリリースされている。



収録曲はThe Drifters、The Animals、アイスランドのパンクバンドTHOR'S HAMMERのカヴァーの他、オリジナルが9曲。オリジナル曲の 「The World Ain't Round, It's Square」 を初めて聴いた時は衝撃的だった。

   

同年、ニューヨークのA&Rスタジオでもレコーディングを行っているのだけれど、その滞在中にハーレムを訪れた際、メンバーの誰かが侮辱的な発言をしたことで命に関わるような騒動が起きたらしい。
詳細は明らかにされていないけれど、この出来事が原因でバンドは解散した。

『Live'n Wild』 も前回の記事で取り上げたThe Rising Storm の『Calm before…』 同様、再発が出るまでは入手困難なレアアイテムだったそうだ。1984年にResurrection Recordsから、2017年にTwitchin' Beatから再発があり、オールデイズレコードジミー益子監修 60’s GARAGE ROCKIN’ OLDAYSシリーズの復刻CDも先月発売されている。ニューヨークで録音されたシングル曲の「Roses Are Red My Love」がボーナストラックで収録されていて嬉しい。 The SavegesはThe Gentsというバンドの影響を受けて結成された。The Gentsも1966年にDuane Recordsから7インチをリリースしている。

   
「If You Don't Come Back」/「I'll Cry‎」(DUANE 1048) 

 The SavegesやThe Gentsは、トワイライトガレージのようでもあるけれど、The Rising Storm のメランコリックさとは違う、どこか神秘的な、乾いた激しさを感じる。

同ジャンルで、Duan Recordsから最初にリリースしていたのはThe Weadsというバンドだった。彼らはニューヨーク、ストーニーブルック校の学生バンドなのだけれど、学校にバミューダ出身の生徒がいた。
その生徒が持ち帰ったThe Weadsのデモテープを聴いたEddy De Melloは、すぐにメンバー達にコンタクトをとり、3年10曲の契約を結んだ。約1年後には、レーベル離脱を望むThe Weads とEddy De Melloとの間でトラブルが生じ、契約が達成されることはなかったようだけれど、1965年に7インチ「Today」/「Don’ t Call My Name」(DUANE 1042)がリリースされている。




「Today」はローカルラジオ局ZBMで流され、バミューダで2位になった。 リゾート地のバミューダ諸島で休暇を過ごしていた学生達にも、The Weadsは広く知られることになり、島の周辺やPrincess Hotelでライブを行った際も観客が集まった。
The Weadsの7インチの成功は、後のThe SavegesやThe Gentsのリリースにつながったようだ。

 参考・参照サイト
https://www.garagehangover.com/category/country/bermuda/
(文:西岡利恵 / 編集:ウチタカヒデ)

2018年9月20日木曜日

Promotional film trailer for Monkey's Uncle found.


The Beach Boys自身の映画出演作は極めて少ないが、その中のうち「Monekey's Uncle」(Richard M. Sherman、Robert B. Sherman作)のプロモ16mmフィルムを入手しデジタル化してみた。


内容は本編映画オープニング部分を利用した内容になっているが、こちらはモノクロではあるものの本編では見られない内容となっている。

 
【映画版本編オープニング】

「Monkey's Uncle」のイントロが流れると間も無くDisneyのロゴが登場し歌い出しに入りいいところでAlと Carlが写るポジションに“The Monkeys Uncle”のロゴの一部がかぶさり見えなくなってしまうが、 プロモ版ではロゴの登場がなくイントロから通しで演奏を見ることができるのだ。
本編ではAnnette Funicelloの歌が入るとロゴが消え、しばらくロゴなしの演奏シーンが見ることができるが、"Ape for me!"とハモろうとした瞬間、今度は出演者等のクレジットが出現しBrianの姿が消されてしまう。 プロモ版ではこのようなことがなく、"Ape for me!"とハモり、見得を切っているメンバーの姿が確認できるが、Brianの口があってないのがご愛嬌だ。そしてイントロのメンバーのユニゾンで"Uh, huh, She loves the monkey's uncle"から始まる部分もロゴの壁に阻まれ全体を見ることができないが、プロモ版では容易に見ることができる。
それ以降も出演者等クレジットが流れダンス会場と思しきダンスに興じる映像と間奏の後AnnetteとMikeがモンキーダンスを踊るシーンにと変わるが、プロモ版では宣伝の為なのか劇中シーンの数々がコラージュされ流れる仕様となっているので、 "A bride! A groom! A chimpanzee! " と、映画ではハモっているシーンも出てこない。再び"AnnetteがLove all those monkeyshines,Every day is Valentine's"と歌い出し、"Ape for me!"とハモる瞬間製作者のクレジットがBrianの胸あたりに出現し、画面中央部に映し出される形となっている。

プロモ版の方はロゴの登場はなく終部まで演奏が続くように編集されている。 プロモ版で仕様されている音源はモノ音源だが、シングルとは異なるミックスとなっており全体的にベース音が大きくコンプレッションの効いたやや歪んだ音で、Annetteのヴォーカルにはエコー処理がされていない。おそらく映画館での音響を考慮しての結果と思われるので映画版も同様の処理がされていると思われる。 また本作のラジオのスポット広告用プロモレコードもあり、歌なしの演奏やコーラスのみのパートを断片的に聞くことができる。

【「Monekey's Uncle」プロモ16mmフィルムデジタル化版】


セッションデータによれば、録音は1964年6月16日Sunset Soundで行われており 、メンバーは以下の通りだ。

Hal Blaine (drums)
Gene Estes (percussion)
Bill Pitman (guitar)
Tommy Tedesco (guitar)
Steve Douglas (saxophone)
Jay Migliori (saxophone)

一年後奇しくも『Pet Sounds』〜『Smile』まで長い付き合いとなるメンバーである歌の方は別の日に行われたようだ。
この録音を仕切っていたのはSalvador "Tutti" Camarata、Disneyの音楽部門のトップである。戦前からミュージシャンやビッグバンドのアレンジャーとして活躍し、米Deccaから多くの作品を手がけ、渡英の際米国内へ英国産クラシック音楽の普及の為にLondon Recordの立ち上げにも関与している。後にDisneyに見出され音楽部門で手腕を発揮し独自レーベル設立や今では有名になったDisney映画のヒット曲を手がけ、Annetteのデビューもその中の一つである。
Annetteは「Monkey's Uncle」の前にはサーフィンを主題とした映画にいくつも出演し劇中歌の提供者にBrianやGary Usherも名を連ねている。
当時GaryがDeccaの製作スタッフにコネがあったのもThe Beach Boys起用に影響があったと思われる。

セッションの話に戻るが、録音場所のSunset Soundの設立者はCamarataであり、Disney関連専門の音楽スタジオが当時なかった為自ら設立したものであった。Disneyの経営からCamarataが離れるとスタジオ経営に専念し、多くのミュージシャンから愛されロックの名盤を数々生んでいる。
The Doorsの『Strange Days』からPrinceの『Purple Rain』、Decca/London繋がりの妙縁かThe Rolling Stonesの『Exile on Main St.』が代表作だ。現在も親子二代に渡って経営を続けている。
(text by MaskedFlopper / 編集:ウチタカヒデ)