2018年11月13日火曜日

『Merry Christmas From The Pen Friend Club』(Penpal Records/PPRD0004)The Pen Friend Clubリリース・インタビュー後編

平川雄一率いるThe Pen Friend Club(ザ・ペンフレンドクラブ)が、本日ニュー・アルバム『Merry Christmas From The Pen Friend Club』をリリースする。 
ここでは平川雄一へのインタビューの前編に続き、後編では、平川以外のペンフレンドクラブ・メンバーへのアンケート形式のインタビューをおおくりする。

 ※写真前列左より→後列左より 
藤本有華(Main Vo,Cho)/ 中川ユミ(Glocken,Per)/ 大谷英紗子(Sax,Cho) 
ヨーコ(Organ.Piano.Flute)/ 西岡利恵(Ba) 
 祥雲貴行(Dr,Bongo)  

●まずは本作『Merry Christmas From The Pen Friend Club』の前提無しに、各自がイメージしていたクリスマス・ソングを1曲挙げて下さい。


藤本有華:「All I Want For Christmas Is You」 とにかく大好きな曲で、車通勤していた頃は毎年車内で熱唱していました。笑  


中川ユミ:ルロイ・アンダーソンの「そりすべり」 厳密にはクリスマスの曲ではないけれどこの曲です。

クリスマスの時期になると街やお店でこの曲が流れていることが多いので、小さい頃におもちゃ屋さんでクリスマスプレゼントをワクワクしながら選んでいたときの事を思い出します。

大谷英紗子:「All I Want For Christmas Is You(恋人たちのクリスマス)」ですね。


ヨーコ:「Saw Mommy Kissing Santa Claus(ママがサンタにキッスした)」 好きなクリスマス・ソングはこの曲で、私のiPodには色んなアレンジ、パターンのこの曲が数曲入っています。なので、クリスマス・アルバムを作るという話を聴いた時はこの曲が入ればいいなぁとぼんやり思っていました。  


西岡利恵: 元々は、クリスマス・ソングをあまり家で聴いたりしてなかったので特にはないんですけど、街中で流れる童謡のクリスマス・ソングは好きでした。題名も分からず聴いていました。


リカ:「All I Want For Christmas Is You(恋人たちのクリスマス)」 やっぱりマライアのこの曲でしょうか。

クリスマスの時期はテレビでもラジオでも街中でもとにかく当たり前のように流れるので、個人的には特別好きとか嫌いとかも感じないくらいなんとなく聴き流していました。
でも去年くらいにシャッフルのリズムを勉強しようと思ってネットをウロウロしていたら例題曲としてこの曲の動画が貼ってあるページがあって。初めてイヤホンを通して丸々一曲聴いたら、「なんていい曲なんだ!!」と衝撃が走って、今まで何を聴いていたんだろうって反省しました。(笑)今ではとても大好きな曲です。 なので、今回のアルバムにこの曲が入ると聞いてとっても嬉しかったです。

祥雲貴行:「We Wish You A Merry Christmas」です。




●クリスマス・アルバムを制作するという案が初めて出た時の率直な感想を。
 


藤本:初めて聞いた時はまだ4thアルバムの製作中だったと思うのですけど・・・。 「All I Want For Christmas Is You」も候補に入っていたので「わー!嬉しい~~!!」とかなり興奮したものの、「いや、まだ目の前のアルバムすら録ってないのよ落ち着け私…」とすぐに我に返っていたと思います。 

その後延期になり、5thを録っている頃に正式に決まったと記憶していますが、そのときは嬉しさ反面、次のレコーディングまで期間も無く、5thのレコーディングが終わっても休む時間はないなと、でも頑張ろうと腹をくくった感じでした。

中川:4年前に私がこのバンドに加入した頃からずっと、リーダーは「次はクリスマス・アルバムにする!」と言い続けていたものの、諸事情でなかなか実現できずにいたので正直あまり覚えていません。(笑) 

でも、絶対に楽しいアルバムになると思いました。

大谷:想像できずにただ頷いていた気がします。ただ私の中でクリスマス・アルバムのイメージはマライア・キャリーのアルバムをずっと聴いていて、そのイメージが強くあったので、完成形など想像できませんでした。


ヨーコ:初めて聞いた時はステキだな!と思いました。それ以降は常々クリスマス・アルバムを作りたいと言っていたので驚きませんでしたが思っていたより早く時期がきたな、とは思いました。

勝手にまだまだ先のことだろうなぁと思い込んでいたので。

西岡:初めて聞いたのは確か第1期の頃で、だいぶ前なのでよく覚えていないです。その頃から平川はいずれクリスマス・アルバムを作りたいという話を時々していて、作ったらどんな感じになるのかなって、まだ実感はなかったけど楽しみでした。


リカ:単純に、素敵だなぁ!と思いました。 初めてその事を聞いたのが、私がペンクラのリハに初めて参加した時でした。

まだ自分がバンドに加入するのかどうかも未確定だと思っていたので、そのアルバムにコーラスで参加して欲しいと言われた時はかなりビックリしました。CDの発売とかレコーディングとか、その時の自分にとっては別次元の話過ぎて…まだ夢の中のような、他人事のような気分だった気がします。
余談ですが…そのリハの時、有華さんがキー確認の為に「Last Christmas」を先生(平川,以下同じ)のアコギ伴奏で歌われていて。
なんて素敵な歌声なんだろう!って、つい目をつぶってウットリ聴き惚れてしまったのを覚えています。

祥雲:またレコーディングするのかよ(笑)と思いました。コンセプトは面白いなと思いましたけど。


 

●レコーディング中で最も印象に残っている曲を挙げ、その時のエピソードを語って下さい。 


藤本:一番は最後の最後に録った、「All I Want For Christmas Is You」の中間部の掛け合いコーラスの「ウ~」かな。

この一言だけ録り忘れてしまって、初めてレコーディングスタジオで後日録りました。いつもは練習スタジオで、メンバーや先生の顔が見えるところで録っているのですけど、レコーディングスタジオだと他の人たちの顔が見えなくて、歌いにくさを感じました。歌詞も無い「ウ~」だけだったのにです…。そしてそれが今回3度目の「レコーディング終了」でした。「4度目もあるかも」と内心思っていましたけどね。笑

中川:ダーレン・ラヴの「Christmas(Baby Please Come Home)」です。リーダーの「パンツまっ茶っ茶な感じで」という謎な要求にも的確に応えられる藤本さんの圧倒的な表現力に、横で聴いていてゾクゾクしました。


大谷:やはり自分の他のフィールドでの仲間をレコーディングに呼んで録った「Silent Night」が印象的です。

レコーディングの難しさと、自分の編曲のもどかしさと、サクソフォーンのよさがうまく伝わるか、ただただ不安の中でのレコーディングでした。でも、気の知れたクラシックでの仲間がペンクラ・メンバーと話していたりスタジオにいることが私にとっては不思議な空間でした。
私に関わってくれている人たちが音楽を通して繋がることに幸せを感じました。

ヨーコ:今回は特に無いな…と思っていましたが、ありました! 「Christmas (Please Baby Come Home)」です。実はこの曲、ラストの一番盛り上がる、一番大事なピアノのフレーズを録り忘れていて、最後の最後にレコーディングしました。

普段ペンクラでやるような曲は全く聴かない私ですが、この曲は毎年クリスマスの時期には必ず聴いています。それなのにこの大事なフレーズを忘れるなんて!改めて聴き込んで弾きましたが、弾いてみて素晴らしさを実感し、より一層好きになりました。弾いていてこんなにも楽しくテンションが上がり、高揚感を感じる曲はなかなかありません。

西岡:オリジナル曲の「Christmas Delights」は最初に聴いた時から徐々に印象が変わっていって、カンケさんに編曲して頂いたり、完成していくのが楽しかったです。

すごく難しかったですけど、弾いていても楽しい曲でした。  

リカ:私は結構みんなのレコーディング風景をたくさん見る事が出来たので、みんなの頑張っている姿全てが感激でした。

自分に関して言えば、今回はコーラスとして参加させてもらいましたが、人生初のレコーディングでかなり緊張してしまって、ライブより緊張してしまって、歌っている時もずっと動悸が止まらなくて…正直プチパニック状態でした(笑)。自分の不甲斐なさとか、上手く出来ない悔しさで、レコーディング終わってから数日はかなり凹んでいましたね。
1番大変だった曲が「Christmas(Baby Please Come Home)」です。最高音部のコーラス・パートがかなり高くて、全身の力を振り絞って息も絶えだえ歌っていました。 でも出来上がりを聴いてみたら、この曲の世界観を盛り立てることが出来たかなぁと自分でも思えたので、頑張ってよかったと1番思えた曲でもあります。

祥雲:「All I Want For Christmas Is You」。

ドラムのレコーディング初日、13曲目ぐらいに録った曲で肩を痛めながら頑張って録りました。


●リスナー目線で本作の収録曲中最も好きな曲を挙げて下さい。 

藤本:どれも好きだから難しい~~~! 強いて言うなら「All I Want For Christmas Is You」! とにかく好きな曲! 

あとは「Rockin' Around The Christmas Tree」。当初可愛らしい感じで準備していたんですが、レコーディング当日「ロックな感じで!」という先生のオーダーで急遽歌い方変えたんです。それが意外と良くて、はまっています♪ 

 中川:「Frosty The Snowman」が一番好きです。「Do I Love You」の印象的なフレーズが散りばめられていて、何度聴いてもニヤリとしてしまいます。


大谷:「Christmas Delights」ですね。

ヨーコ:「Saw Mommy Kissing Santa Claus(ママがサンタにキッスした)」をした、です。もともと大好きなクリスマス・ソングな上に、ペンクラではお気に入り曲の「How Does It Feel」のアレンジで、今後クリスマス・ソングとして欠かせないこと間違いなしだからです!


西岡:今回のアルバムは、この曲があってあの曲がより引き立つみたいな、全体で1つみたいなイメージがあるんですけど、しいて言えば、こういう曲がクリスマス・アルバムに入っているのっていいなあと思うのが「Silent Night」です。


リカ:うーん、1番難しい質問ですね…。 本当にどの曲も魅力的なんです。日によって好きな曲が変わってくるんですよね。

今の気分だと…ライブで演奏する為に最近聴く回数が増えている「Little Saint Nick」がお気に入りです。跳ねたベースラインがとっても可愛いですよね。シンプルな中に所々アクセントが効いているコード進行も凄く好きです。優しいボーカルやグロッケンの音色もピッタリで何度も聴きたくなる曲です。最も好きな曲だから1曲なんでしょうけど、(挙げたらキリがないですが)「Jingle Bell Rock」も捨てがたくて…。 このアレンジ最高ですね。ロックンロールしていて、可愛げもあって、絶妙なバランスだなぁと。だんだんと疾走感がアップしていって伸びやかに駆け抜けていく感じが好きです。間奏のオルガンとギターでテンションが最高に上がります。

祥雲:「Christmas Delights」です。




●最後に本作『Merry Christmas From The Pen Friend Club』の魅力を挙げてアピールして下さい。

藤本:とにかくとにかく力作です!私も相当頑張りました!クリスマス・ソングの魅力がたっぷり詰まっています☆

そして何よりペンフレンドクラブの魅力が満載です☆ぜひぜひ、まずは1度でも聴いてみてください☆☆ 

中川:誰でも知っているクリスマス・ソングばかりが収録されているので、ペンクラを知らない人でも楽しめるアルバムだと思います。是非クリスマスパーティーのお供にどうぞ。


大谷:ただクリスマス曲を並べているだけに見えて、実はそうではないところ、だと思います。 聴いたときに「ペンクラの音だ!」とわかることが本当に魅力的だと思います。

見え隠れする今までのレパートリーとペンクラにしかできないクリスマス・アルバムになったと思います。だからこそ今まで聴いてくださっていた方々以外の皆様の耳にも届くようになるといいなと願っています!

ヨーコ:誰もが知っている、誰もが大好きなクリスマス・ソングを、先生の素晴らしいアイデアで新鮮な気持ちで聴くことができる、一曲一曲全てに魅力が詰まっているアルバムです。

一曲一曲プレゼントを開けるような気持ちで聴くも良し!アドベントカレンダーのようにクリスマスまで毎日1日一曲ずつ聴くも良し(笑)です。

西岡:クリスマス・ソングは日常的には聴かない人も結構いると思うんですけど、私もそうでしたが、今回出来上がったアルバムは、クリスマスらしい空気を楽しめる季節感と、ペンクラらしい音楽表現とが両立された聴きごたえのあるアルバムだと思うので、色々な聴き方をしていただけたらいいなと思います。


リカ:美しい音が沢山詰まったザ・ペンフレンドクラブらしいクリスマス・アルバムなんじゃないかなぁと思います。ペンクラを知って間もない私が言うのもアレですが。(笑)

私はこのアルバムを聴いていると心が温かくなって、キラキラして、つい笑顔になって、幸せを感じられます。 真冬の雪が降りしきる中、地面に積もった雪を踏みしめながら聴いてお散歩したらどんなに素敵だろうと想像して今から楽しみにしています。重厚に積み重なったメンバーそれぞれの一音一音を楽しんで欲しいので、ぜひイヤホンやヘッドホンでもじっくり聴いてみて欲しいです。聴くたびに新しい発見があるのではと思います。
ペンクラの音楽と一緒に楽しいクリスマスを過ごしてもらえたらとっても嬉しいですし、クリスマス以外でも楽しめると思うので末永く愛聴してもらえたら嬉しいです。 名曲揃いの誰が聴いても楽しめる1枚ですので、ぜひ沢山の方に聴いていただきたいです!

祥雲:伝統的なクリスマス曲がベースになっているけど、ペンフレンドクラブのエッセンスもふんだんにあるので、クリスマスが終わった後でも楽しめてお得だと思います。 

(インタビュー設問作成/編集:ウチタカヒデ)


2018年11月11日日曜日

『Merry Christmas From The Pen Friend Club』(Penpal Records/PPRD0004)The Pen Friend Clubリリース・インタビュー前編


平川雄一率いるThe Pen Friend Club(ザ・ペンフレンドクラブ)が、11月14日にニュー・アルバム『Merry Christmas From The Pen Friend Club』をリリースする。 今年3月の5thアルバム『Garden Of The Pen Friend Club』が記憶に新しく、そのリリース・ペースに驚かされるばかりだが、今回はクリスマス・アルバムというコンセプトで制作されているのが大きなポイントだ。古今東西このコンセプトで制作されたアルバムが数多あるが、その筆頭が『A Christmas Gift for You from Phil Spector』(Philles Records/63年)であることに異論はないだろう。ウォール・オブ・サウンドの創始者フィル・スペクターのフィレス・レコードにおける最高傑作アルバムと言っても過言ではなく、後年このサウンドに影響を受けたミュージシャンは多い筈だ。
そしてこのペンフレンドクラブの本作もそのフォロワーに違いないが、彼等独自のアイディアを加味して平成最後のクリスマスに日本で制作してくれたことに音楽ファンとして純粋に感謝したい。
筆者は8月末に平川がほぼ1人で制作したベーシック・トラックに藤本の仮ヴォーカルを入れたラフミックスを初めて聴かせてもらってから、そのアレンジ感覚に唸ってしまった。過去には大滝詠一が『多羅尾伴内楽團 Vol.1』(77年)でおこなった手法だが、昨今の音楽事情で分かり易く言えば「マッシュアップ」ということになるだろう。カバーするスタンダード曲をミュージシャンのセンスや趣向で、全く異なる既存曲のアレンジ・フォーマットでレコーディングするというものだが、当然そのアレンジ・センス次第で原曲を生かしも殺しもするので非常にシビアな手法といえる。全16中15曲がカバー曲で多くがこの手法が施されているので、熱心なポップ・マニアやVANDA読者はオマージュされた曲を探すのも楽しいだろう。
ここでは前編と後編に分けて、ペンフレンドクラブへおこなったインタビューを掲載する。前編はプロデューサーでリーダーの平川へのインタビュー、後編では前作同様に平川以外のメンバーへのアンケート形式のインタビューとなるのでお楽しみに。


●これまでのペンフレンドクラブの活動スタイルからクリスマス・アルバムをリリースするということを想定出来なかった訳では無いですが、このアイディアはいつ頃から温めていましたか?


平川(以下H):ほぼ活動開始くらいから考えていました。クリスマス曲でもないのにスレイベルを延々打ち鳴らすバンドでしたので(笑)。 グロッケンも頻繁に使用していましたし、普通の曲でもクリスマスっぽい雰囲気はありましたね。なので、クリスマス・アルバム制作というのは自然な発想でした。


●カバー曲15曲を選考した意図を教えて下さい。またそこに至った個人的な思い入れを聞かせて下さい。

H:「クリスマス・アルバム制作は一生に一枚」と決めていたので、やりたい曲を全部入れました。今回は「往年のクリスマス曲とペンフレンドクラブがこれまでやってきたオリジナル曲やカバー曲とのマッシュアップ」というコンセプトなので、どの曲と、どの曲を混ぜるかを考えるのが非常に楽しかったですね。「ホワイトクリスマス」のアレンジはなかなかこんなことする人いないと思います。笑

ロックンロール・アプローチの「ジングルベル・ロック」や「ロッキン・アラウンド・ザ・クリスマスツリー」もいい仕上がりです。こういうことやらせるとうまいですね僕ら。「Let It Snow」は子供の時に観た映画「ダイハード」のエンディングテーマで当時からいい曲だなあと思っていました。
今回のマッシュアップで「Do I Love You」等、レコーディング時に現メンバーが参加していなかった曲をある意味「再録」できたのは、僕の中で大きなことです。



●初めてラフミックスを聴かせてもらった時から、この絶妙なマッシュアップ感覚には脱帽しました。確かに「ホワイトクリスマス」が最も意外なマッシュかも知れない。アレンジ側の原曲を作ったブライアン・ウィルソンもきっと驚くね。
「Frosty the Snowman(雪だるまのフロスティ)」もファーストでカバーされたザ・ロネッツの「Do I Love You」で料理されるとは予想だにできなかった。『A Christmas Gift for You from Phil Spector』(以下A Christmas Gift for You)では「Be My Baby」でやっているんだけど、平成下の日本でそのアイディアを実現させるっていのは、ペンクラの平川君と『THE夜もヒッパレ』のビジーフォー・スペシャルくらいだよ。笑

H:笑。ビジー・フォーといえばベースの西岡利恵は彼らの大ファンなんです。特にモト冬樹には熱い視線を送っているようです。
それはともかくマッシュアップではない曲「恋人たちのクリスマス」やダーレン・ラヴの「クリスマス」、「リトル・セイント・ニック」等は僕らのクリスマス・アルバムに必ず入っていなくてはいけない曲、と思っていましたし、ただただ好きな曲だったので取り上げました。
「恋人たちのクリスマス」は90年代に作られた曲の中で一番素晴らしいと思います。ただマライア・キャリーの原曲は60’sガールズポップ風だったのですが、編曲、演奏(打ち込み)面において不十分だと感じていました。なので、ペンフレンドクラブで本来こうあるべきだというアレンジ、演奏で制作した次第です。

●ニューウェイブ少年だった僕には敵だった笑、ワムの「ラストクリスマス」も意外だったけど、マライアの「恋人たちのクリスマス」まで!と。ラフミックスを聴いた時から驚きで、「ペンクラどこへ行くよ?!」って感じだった、本当に。笑

でもドストライクで直球な選曲でやってこそ、クリスマス・アルバムの醍醐味なのかも知れないと感じましたね。

H:ワム!やマライアはこういう機会でないと出来ないカバーですね。

ダーレン・ラヴの「クリスマス」に関してはペンフレンドクラブが制作してきたウォール・オブ・サウンド・アプローチの曲の中で一つの到達点になったのではないかと思っています。
僕の一人多重録音ではなくメンバーによる四声コーラス「オールド・ラング・ザイン」が非常に気に入っています。途中のデニス・ウィルソン...ではなく藤本有華による語りは最高です。藤本の完璧な英語発音力はこのアルバムの説得力になっていると思います。もちろん歌唱力も。
大谷英紗子による編曲で彼女が属するサックス・カルテット演奏の「サイレント・ナイト」で幕を閉じるわけですが、そのようにしてよかったと思っています。

●やはり『A Christmas Gift for you』がその後のクリスマス・アルバムの指標になっていたのは間違いないんだけど、そのハイライトがダーレンの「Christmas (Baby Please Come Home)」な訳ですよ。それに挑むってのはチャレンジだよね。

唯一のオリジナル曲「Christmas Delights」についても聞かせて下さい。実はこのアルバムで最も好きな曲です。スプリームスの「You Can't Hurry Love」(66年)とストロベリー・スウィッチブレイド の「Since Yesterday」(84年)のいいどこ取りというか、本当にいい曲だと思います。ソングライティングの着想を聞かせて下さい。

H:クリスマス・アルバムにオリジナル曲は1曲だけでよいと思っていました。2曲も3曲も聴き覚えの無い曲などクリスマス・アルバムに必要ありません。なので他の収録カバー曲のどれとも被らない感じにするべく「You Can't Hurry Loveパターン」のリズムを採用しました。元来、僕はこのリズムがそんなに好きではないのです。このリズムの曲で「You Can't Hurry Love」以外に優れた曲を聴いたことがないですし、見渡してみるとよく「レトロな感じ」をやるときに安易に採用されるリズムパターンでもあります。そんなマイナスのイメージを勝手に持っていたので今まで敬遠してきました。ただ「クリスマス・アルバム」という特別な機会でもないと、このリズムの曲を一生作らないだろうなと思い、今回限りのつもりで書きました。

この曲に更に自分の中に無いものを付与するために、そして他の収録曲との差別化を図るために編曲を謎の音楽家・カンケさんにお願いしました。仕上がりはお聴きの通り。功を奏したと思っています。


●リリースに合わせたライブ・イベントがあればお知らせ下さい。

H:2018年12月22日に青山・月見ル君想フでRYUTistを迎えクリスマス・ライブ・パーティーを開催します。

2018年12月22日(土)
@青山・月見ル君想フ
[Add Some Music To Your CHRISTMAS]
開場/午前11:00 
出演:The Pen Friend Club, RYUTist
OA:Quartet Ez
DJ:aco
★チケットぴあにて販売中
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=1849306


●最後に本作の魅力を挙げてアピールして下さい。

H:ジャケ、装丁が非常にいいです。まさにクリスマスプレゼントという感じ。実際にお手に取って見て頂きたいですね。あとTOMMYさんによるライナーノーツが凄いです。是非がんばって読んでください。笑
クリスマス・アルバムというのは王道でベタでなければいけないと思っています。
誰が聴いても楽しめる分かり易いもの、ライト級リスナーのBGMであるべきです。そしてヘビー級リスナーにとってはどこまでも聴き応えのある仕掛け、拘りもまた必要です。
クリスマス・アルバムの金字塔をつくりましたので是非、聴いてください。
以下後編(11月14日掲載予定)に続く。
(インタビュー設問作成/文:ウチタカヒデ)


2018年11月7日水曜日

【ガレージバンドの探索・第三回】 『V/A - SIGH CRY DIE』

60年代ガレージを聴いていると、気に入った曲について調べようとしても情報が少なく、バンドの出身地くらいしか分からないこともよくある。
こういう、その時代の一瞬で忘れ去られてしまってもおかしくなかった得体の知れないバンドの音源をコンピレーションに収めたレーベルの功績は偉大だと思う。
この手のコンピに収録されているバンドはシングルのみしか出していない場合が多いのだけれど、アルバムを残していても1、2曲以外は期待外れなことも多く、コンピで聴くのが最適だったりする。但しそんな性質のガレージコンピは大量にあるのでどれを聴こうか迷う。見つけた時にとりあえず買ってみるのも楽しいけれど、せっかくなので好みの内容で手元においておきたい音源が入ったコンピを選んでみようと思い、下調べして購入したのが、Arf! Arf! のサブレーベル Cheep! Cheep!から出ている『Sigh Cry Die』(AACC-098)だった。
2004年にCDのみでリリースされている。


邦題で『ヘタレの花道〜ガレージロック凹編』なんてついているような失恋ソングばかりが集められたコンピだそうだ。
個人的にはたまらなくトワイライトな音傾向の名曲多数のコンピだと思っている。憂鬱さの中に淡い光を漂わせるような魅力がたっぷり味わえる。ただ全体を通して聴くと、このCDの注意書きで「WARNING: THIS PRODUCT MAY BE ADDICTIVE AND LEAD TO MENTAL DETERIORATION」と書かれている理由はよく分かる。全29曲。前回記事で書いたThe GentsもシングルB面曲が収録されている。



特に目当てだったのはThe Nomadsというノースカロライナ州マウント・エアリーのバンドで、収録されているのは「How Many Times」というシングル曲。金属的なギターの音にたどたどしく入るドラム、スカスカな演奏。不完全さが生み出す哀愁には無性に感動を覚える。 The Nomads はシングル音源と未発表デモの編集版『From Zero Down』(CRYPT LP 006)も出ていて、LPでも入手したいと思うバンドのひとつ。


この『V/A - SIGH CRY DIE(邦題:ヘタレの花道〜ガレージロック凹編)』には対になるコンピとして、『V/A - PARTY PARTY PARTY(邦題:バカの花道~ガレージロック凸編)』(AACC-097)も同時リリースされている。

【文:西岡利恵(The Pen Friend Club)】

2018年11月3日土曜日

小林しの:『Havfruen nat』(philia records/PHA014)






















15年にファースト・ソロアルバム『Looking for a key』をリリースした女性シンガー・ソングライターの小林しのが、待望のニューシングル『Havfruen nat』を7インチ・アナログシングルで11月18日にリリースする。
タイトル曲は作曲とアレンジに元melting holidaysで現ポプリのササキアツシが参加し、カップリング曲「雪虫」は06年に筆者が共同プロデュースしたコンピレーション・アルバム『Easy living Vol.1』収録のオリジナルをササキにより新たにリアレンジしたものとなっている。
両面ともWebVANDA読者が好むソフトロック~MOR系サウンドなのでここで紹介したい。

彼女のプロフィールについては前回のレビューでも紹介しているが、ギター・ポップ系バンド”harmony hatch(ハーモニー・ハッチ)”のヴォーカリスト兼ソングライターとして99年にデビューし、coa recordsより2枚のアルバムをリリースして02年に解散する。その後ソロへと転身し、多くのコンピレーション・アルバムに楽曲提供した後、16年の『Looking for a key』へと繋がっていく。
ではこの最新シングル『Havfruen nat』について解説しよう。



A面「人魚の夜」は、ササキがmelting holidays時代に書いた「morning star lily」という曲に小林が日本語詞を提供したものが原曲となっている。ソフトロックというカテゴライズだけでは括れないソフティな美しいバラードで、複数のキーボードとギターを主体にササキによって構築されたサウンドは、70年代の良質なMORの匂いもする。抑制が効いたクリーン・トーンのリード・ギターはmelting holidaysでササキとバンド仲間だったタサカキミアキのプレイによるものだ。
またコーラスには小林自身と、Label Producerでthe Sweet Onions、The Bookmarcsのメンバーである近藤健太郎が加わっている。
カップリングの「雪虫(white night version)」は、原曲のナチュラルなギター・ポップ・アレンジからサイケデリックでドリーミーなサウンドにアダプトしている。間奏のインストルメンツ・パートの展開などStrawberry Switchbladeの「ふたりのイエスタディ (Since Yesterday)」を彷彿とさせる。コーラスには小林の他、ササキとthe Sweet Onionsの高口大輔が参加している。
ファンタジーで印象的なアルバム・ジャケットに触れておくが、イラストレーションはかみたゆうこ、デザインはいなだゆかりが担当している。

なお本シングルは、下記のイベント会場にて先行発売され、翌日以降に一部の店舗でのみ扱う予定で一般流通はないとのこと。プレス数は100枚と少ないため、下記のイベント会場で入手するか取り扱い店舗に早期予約することをお勧めする。



【11月のフィリアパーティ vol.2
the Sweet Onions 20th anniversary&小林しの7″release party】
11月17日
【昼の部】@恵比寿天窓Switch 11:30OPEN 12:00START
【夜の部:after party】@茅場町バッテリーパークカフェ18:00OPEN  18:30START
予約問い合わせ先:philiarecords.com/contact/

◎『Havfruen nat』取扱店舗 
ディスクブルーベリー : http://blue-very.com
RECORD SHOP ANDY : http://recordshop-andy.com
モナレコード : http://www.mona-records.com/

(ウチタカヒデ)

Vacation Three:『One』(TOO YOUNG RECORDS/TYG-VT01)






















男女3人組のアコースティック・トリオ“Vacation Three(ヴァケーション・スリー)”が記念すべきファースト・アルバムを11月7日にリリースする。Vacation Threeは、クルーエル・レコードに所属したギターポップ・バンド“ARCH”のリーダーであったヴォーカル兼ギター、メイン・ソングライターの中村大を中心としたユニットだ。現在彼は海外でも評価が高いニューウェーブ・ファンク・バンド“BANK”と平行してこのユニットで活動しているという。
彼を支えるメンバーには、過去WebVANDAで紹介したELEKIBASSやFULL SWINGのサポートをはじめ、最近新作シングルを紹介したばかりのWack Wack Rhythm Bandのサックス奏者である仲本興一郎と、同バンドに参加する女性パーカショニストおきょんが加わっている。
彼等のデモ音源は以前から、元ピチカート・ファイヴでプロデューサーの高浪慶太郎氏のFM番組で特集されるなど、耳の肥えた音楽通には知られていた。
筆者も昨年初めに十数年来の友人でもある仲本に紹介されて以降、そのサウンドの素晴らしさにいたく共感したのだ。同世代的音楽趣向へのシンパシーなのかも知れないが、ヤング・マーブル・ジャイアンツ~ウィークエンド、エブリシング・バット・ザ・ガール等に通じるネオ・アコースティックと程よい中南米フレイバーがブレンドされたそのサウンドは、聴く者を心地よく包み込むのだ。
本作は全10曲を収録し、レコーディングはメンバー3人の演奏のみでおこなわれ、ミックスは中村自身が担当している。またマスタリングには中村と元レーベル・メイトで、カヒミ・カリィやPort of Notes等のプロデューサーとしても高名な神田朋樹が迎えられているのも注目だ。



では筆者が気になった主な収録曲を紹介していこう。
冒頭の「New Voyage」は、アコースティック・ギター(主にアコースティックなので以下ギター)によるボッサのリズムを基本に、スルドとタンボリムがビートを刻み、ソプラノ・サックスがフリーに絡んでいくという展開で、中村とおきょんの2人によるコーラス、ヴォーカリゼーション、左右のエレキ・ギターとトライアングルやカバサのパターンが実験的だ。
続く「Sweet Magic」はアップテンポなギター・カッティングとカホンのビートをバックに、中村の爽やかなヴォーカルが蒼い歌詞にマッチしていてギターポップ・ファンにもお勧めである。
そして本作中白眉の名曲と推したいのが「欲望」である。デモ・ヴァージョンからダイヤモンドの原石であったこの曲には、中村の才能が集約されていると言って過言ではない。ネッド・ドヒニーの「Get It Up For Love(恋は幻)」(『Hard Candy』収録 76年)に通じる非常にクールなブルーアイド・ソウルで、不毛の愛を綴った歌詞との相性も非の打ち所がない完成度なのだ。
本作のヴァージョンではギターにシンセ・ベース、パンデイロとアゴゴという珍しい組み合わせのリズム・セクションでニュー・アレンジされており、ジャジーなテナーサックス・ソロもこの世界観を更に高めている。筆者的にも今年の個人的ベストソングの1曲に確実に入るだろう。


「Blue Submarine」はボッサ・ギターにシェイカーとトライアングルいうシンプルなリズム・セクションをバックに中村とおきょんが交互にヴォーカルを取る小曲だが、仲本を加えた3人のコーラスではコール・ポーターの「Night And Day」(32年)が引用されており、嘗てエブリシング・バット・ザ・ガールが同曲をカバーしたのを彷彿とさせてリピートしてしまう。中村とおきょんのハーモニーが美しい「あたらしいうた」もシンプルな編成ながら、中村によるリリカルな歌詞とソングライティングが光っており耳に残る。
アカペラから始まる「Mirai」からラストの「海のない街」の流れも興味深い。「Mirai」は1分半の小曲ながら凝った構成で、コーラスとメッセージ性のあるブリッジからテナー・ソロへと繋がる。
全編おきょんがリード・ヴォーカルを取る「海のない街」は、リヴァーブが効いたエレキ・ギターのカッティングとミッドテンポのパーカッション・ループによるバックトラックに前曲からの変奏パート的なコーラスが被さってくる。一夏の思い出を無垢に描いた歌詞が美しく本作のエンディングにピッタリである。
このレビューを読んで興味を持った音楽ファンは本作を入手すると共に、都内を中心に沖縄や鹿児島にまで遠征するという彼等のライヴを是非体験して欲しい。詳しいスケジュールは下記のオフィシャル・サイトでチェックしよう。
younger than yesterday
http://www.tooyoung-records.com/younger/

(ウチタカヒデ)



2018年10月30日火曜日

佐野邦彦氏との回想録17(一周忌を偲ぶ)


 10月も終盤と朝晩の冷え込みが身に染みる時期になり、間もなく佐野さんの命日だと思うと感慨深くなる。前回も彼が逝く数か月前の回想を綴ったが、あの共同作業の前(最中)には、別件で彼とやりとりをしていたことがあった。それが奇遇にも、昨年の私の誕生日に届いた彼からの最後のメッセージに繋がっていくのだから、なんとも不思議な縁を感じている。

それは43日に佐野さんから「知人より1976年の『セブンスターショウ』(TBS)の荒井由実とかまやつひろしのスペシャルで、バックはティン・パン・アレイの音源を入手したのでCD-R送ります」というプレゼントが届いた。この中で、特に気に入ったのは、ユーミンとムッシュによる「あの時君は若かった」と「12月の雨」メドレーだった。ただ残念な事に尻切れとなっており、彼にお礼の連絡をしたが失礼にも「素晴らしい音源でした!でもちょっともったいなかったですね。」と伝えてしまった。これが約半年間途切れなくやりとりが続くやりとりの始まりだった。


そんな中、松生さんから「Paulのドーム公演のアリーナ5列目が取れたので行きませんか?」の誘いに430日の公演で上京することになった。せっかくなので、その際に佐野さんに見舞い訪問の問い合わせをした。ただ、あいにくこの時期はかなり体調不良だった様子で再会は叶わなかった。もし会えていたとしたら、佐野さんが最初の闘病を乗り越え仕事に復帰していた2013713日(注1)以来となったはずで、実に無念な心境だった



その後、前回のCDのお礼に新茶を届けたが、5月の連休明けにその返礼として今度は完全版の映像を収録したDVDをいただいた。それは大感激もので、即お礼の連絡をしたのだが、そこで珍しく彼からお願いをされた。依頼内容は彼の誕生日425日に放送された『あの年この曲』(BSジャパン)の映像だった。「鈴木さん、あの番組録画してないですか?GS特集でヤンガーズの「マイラブ・マイラブ」が出たらしいのでどうしても見たいんです!」というものだった。しかし、その放送は不覚にも見逃しており、出来る限りあたってはみたが、結局私の力が及ばず役に立つことは出来なった。その後彼から「放送はHMさんを通じ無事入手できました!」と聞き、胸をなでおろした。なおこの貴重映像の出元は、偶然にも翌月にJigsawの依頼を受ける中村俊夫氏のようだった。

そして529日の勤務中に、テレビ朝日のAD.Oさんから「61日に漫画をテーマにアーカイヴする番組に出演していただけませんか?」という突然の連絡が入った。あまりに唐突で何のことかわからず、「何を見て私にオファーを出されたのですか?」と返すと、「『よみがえれ!昭和40年代』の著者(注2)様ですよね?実は発行元の小学館に連絡先を問い合わせ、連絡させていただきました。」とのことだった。私自身よく理解できなかったので、「とりあえず、資料を送って下さい。」と返答した。電話を切ると即、小学館の編集担当M氏に連絡を取った。すると「すみません、テレ朝さんからの問い合わせがあった事をお伝えするのを忘れてました。」とのことだった。



そこで、その晩にOさんから送られてきたメールを確認した。連絡で分かった事は、関東ローカルの深夜放送の『ChouChou(シュシュ)』なるアーカイヴ番組で、進行役は夏目三久さんと能町みね子さんということだった。添付されていた構成台本を見ると、私への依頼は1970年代の人気漫画とその作品が流行らせたブームについてVTRを見ながら解説するというものだった。

 その作品とは「恐怖新聞」「サーキットの狼」「空手バカ一代」の3点で、それに付随する形で「ベルサイユのばら」「エースをねらえ!」も加えられていた。これらは中学まで漫画家を夢見ていた自分にとって、毎週熱心に読みふけっていた作品で、懐かしい気分になった。ただこの中で「恐怖新聞」はラストまで完読していなかったので不安になり、佐野さんに相談を持ちかけた。しかしさすがの彼も「申し訳ない。対象外です。」ということだった。しかし「でも鈴木さんなら大丈夫だと思いますよ。頑張ってください。」とエールをおくられてしまった。そこで、この件をOさんに伝えると「Amazonより全8巻を送りますので、是非!」とのことになり、もう断れる状態ではなくなった。


幸いにも連絡を受けたのが月曜日で収録は私の休日をはさんだ木曜ということだった。そこで、その間にある程度の詳細を調べられるだろうとふんで、早速資料作りに取り掛かった。まず「サーキットの狼」については、大学時代の車好きの何人かに連絡をとり、当時の国内事情を確認した。さらに、この作品から派生した遊びについては、前職同僚の後輩がリアルだという話を聞き、即その実体験の話を聞いた。次に「空手バカ一代」は、当時の人気格闘技のブームの変遷表をまとめ、「恐怖新聞」についてもオカルト関連の事象歴を年代順に制作した。また外枠となる「エースをねらえ!」は、アニメの大ファンである佐野さんに「アニメ版」としてではあるが、抑えるべきポイントを伝授いただいた。さらに元テニス・ボーイの弟にも、当時の興味深い話題をいくつか情報提供してもらった。こんな調子で、限られた時間をフル活用して、どうにか「レトロ・カルチャー研究家」としての体裁は整えることが出来た。



そのまとまった資料と関連画像は、収録前日にファイル添付で送り、ミニカー(注3)などの小道具を静岡の実家経由で回収することにした。そのため前日夕刻実家に移動し、当日朝、万全の態勢でスタジオ入りすることにした。ただこのように準備をすすめていく段階で、事実関係を照らし合わせると、いくつか疑問を抱くようになった。そこで、それらについては「収録前に担当者と打ち合わせ」の約束を取り付けた。このように後は収録本番を待つばかりになると先方から、「先生に1点お願いがございます。先生の人となりを事前に出演者に見ていただく必要がございまして、プロフィールを頂けますでしょうか?」という問い合わせを受けた。「先生」という自覚がなく少々照れくさかった。

いよいよ収録本番となった6/1は、収録の1330に間に合わせるべく、静岡を1021のひかりで出発した。テレビ朝日は初めてだったので、指定された際最寄駅「大江戸線・六本木」の出口を間違えてしまい、番組スタッフに出迎えられ、現場に誘導された。到着した局内には私用の控室が昼食付きで準備されていたが、個人的には昼食どころではない心境だった。まずは調査により判明した訂正箇所や疑問項目の確認をするべく、台本作成者を呼んでいただいた。しかし、打ち合わせはあっという間で、スタッフからは「今、修正している時間はないので、収録後オン・エアまでにやりとりしましょう。」とのことになった。そんな訳で何も解消しないまま、またリハーサルも無しに多くのスタッフがスタンバイしたスタジオ入りとなった。現場に入ると、それまでのゲストよりもかなりラフなスタイルだっためか、「お着替えよろしいですか?」と気を遣わせてしまった。そして、レギュラーの夏目さん能町さんがスタンバイされ、私が定位置に座るのを待つばかりになっていた。


 私が席に着くと同時に、スポットがつき即カメラがまわされた。緊張のあまり一瞬固まりそうになったが、開口一番に夏目さんが私を「鈴木ヒロユキさん」と間違えてくれ、これでリラックスできた。そこからはVTRを見ながらの解説という順で、あっという間に熱気のこもった一時間半ほどの収録は完了した。とはいえこの時の収穫は、終了後にお二人とした雑談で、「「エースをねらえ!」のお蝶夫人は高校生」、「Perfumeのライヴでのあ~ちゃんのトークの力は凄い!」といった話題で盛り上がり、光栄にもお二人から「鈴木さんあなどれない!」と賞賛いただいたこと。それにその後も収録を控えた夏目さんに「SNSにあげない」ことを条件でツーショットをお願い出来たことだった。これだけでギャラなしでもいい気分になった。収録後、スタジオを出て帰路の準備をしていると他のスタッフが、「先生こちらへ」と地下に誘導された。そこには東京駅までの送迎車が手配されており、ちょっとしたスター気分を味わせていただいた。翌日、この日の話題を佐野さんに報告すると「鈴木さんらしい武勇伝ですね!」となり、「もしまだ何か協力できることがあれば、いつでも連絡ください。」と、地上波への出演を喜んでくれた。



滋賀に戻ると、放映は最短でも三週間後と伺っていたので、収録で確認したVTRの修正(注4)に作業にとりかかった。それは放送直前ギリギリまで、近隣図書館・博物館巡り、それに関係する知人への証言取りに時間を割いた。その甲斐もあって、視聴者向けに(やり取り中の映像確認は不可だったが)納得できるVに修正できたと実感した。佐野さんにも協力いただいていたので、お礼を兼ねその報告すると、「よく半端なくお金がかかるアニメ映像修正させましたね!その番組はきっと良心的な素晴らしい番組ですよ!」と絶賛された。ほっとしたと同時に、以前から疑問に思っていた「何故、私にオファー出したのか」をOさんに確認した。すると彼から回答は、「テーマは漫画でしたが、その周辺にも詳しそうな方という事で、本を拝見してお願いしました。」とのことだった。その返答にこれまでやってきたことが、公にも認めらたという満足感でいっぱいになった。

なお、このプログラムは「70年代マンガブーム」として、624日(25002530)に無事放映された。ただこの番組は関東ローカルなので、残念ながら私自身はリアルでの聴取は叶わなかった。いち早くダビングして送付してくれた佐野さんからは、「この手の研究家は、「マツコの知らない世界」に呼ばれれば、世界が一変するそうです。そこを目指して頑張ってください。」のエールと共にBDが届き、そのラストのテロップに「歴史検証」として私の名前が紹介されており、局スタッフの配慮に感謝の思いが湧き上がった。佐野さんもそれはチェック済みで、「やはり鈴木さんを選んだのは間違いではなかったみたいですね!」と我がことのように喜んでくれた。ちなみに、この日の放送は現在でも無料サイト(注5)で視聴可能です。


話しは少し戻るが、この番組の編集作業に追われている最中の611日に佐野さんより、「元テイチクの中村俊夫さんからJigsaw40周年リイシューするので、鈴木さんにも協力要請があり、滋賀の住所と携帯を伝えました。」と連絡が入っている。ただ、この頃は「シュシュ』に提出するための新規企画をまとめていたので、そのうち連絡があってからという気分でいた。ところが、その一週間後の19日に中村さんから連絡が入り、「Jigsawの取材で6/25に渡英するので、それまでに質問状をお願いしたい。」との協力依頼が言付けられた。あまりに唐突だったので、佐野さんに確認すると、「この際だから、疑問に思っている事は全てぶつけてみましょう!」「それにJigsawと「ミル・マスカラス」「林哲司」の関連をリアルに伝えることが出来るのは鈴木さんだけなんですから。」とはっぱをかけられ、身がひきしまる気分になった。

その質問状をまとめてからは、また時間に余裕が出来たので、シュシュ』に提出する新規企画をまとめた。まず完成させたものは、音楽物で「発売が難航した名曲」(注6)というものだった。しかしこれについては「ちょっとこれは番組の趣旨に合いません。」ということで却下されてしまった。そこで次にまとめたものは、かなりコアな検証データを揃えた「若大将復活劇の影に怪獣映画あり」「Jrキャンペーンとウルトラマン復活」だった。これについては、7/19にテレ朝へ提出前に佐野さんにも感想を伺っている。その内容については「これは絶対面白いよ!」と、彼から高評価を得られたので、早速提案するつもりでいた。ところが、その翌日にJigsaw発売元となるウルトラヴァイヴのMさんから、今回のプロジェクトについての詳細スケジュール連絡が入り、シフト・チェンジせざるえなくなった。その後のJigsawリイシュー作業の経過は以前の回顧録で触れたとおりだ。

ただこのオファーのおかげで、(佐野さんの体調が良かった7/29に数年ぶりに電話連絡をとることができた。これが彼との最後の会話になってしまったが、久々に聞く「佐野節」は今となっては天からの贈り物だったと感謝している。またJigsawの仕事が一段落した9/28には「ChouChouは最近江戸ネタが続いているので、また昭和ネタをアプローチされたらいかがですか?」と背中を押すメールが届いている。それについての現況を返信すると10/1には、「昨晩のChouChouは予想通り昭和で、レジャーがテーマでした。音楽ネタもかなり盛り込まれていたので、やはり鈴木さんの出番だろうと思ってお知らせしました。」とあり、佐野さんの期待に応えねばと、また企画案を練り直し始めるようになった。そして昨年の誕生日に届いた「精力的な活動で、これからも楽しませてください。どこへでも足を運んで交渉取材する鈴木さんにいつも驚かされています。今T.V.CDの仕事の波がきていますので、その波にのってよりメジャーになってくださいね。」のメッセージは今も大きな励みになっている。

 最後になるが、佐野さんの葬儀は私の勤務先のかき入れ時でもある土日だったが、即座に「有休」を願い出て東京に向かった。それは彼の供養は、私の人生にとって何をおいてもなすべき事という使命感が強かったからだ。今回はそんな彼の一周忌を偲び、彼の亡くなる半年間について、彼から届いたメールのやりとり(過去の投稿とダブる事例も含み)で、在りし日々を振り返ってみた。次回は前回の続きとなる2008年以降を回想していく予定だ。合掌。

 
(注1)佐野さんの難病指定されている持病が悪化し、余命数か月を宣告されたのは2013年だった。その後、二度の大手術が成功し、リハビリ開始後にBeachBoys由来のナンバーの愛車を入手したのがこの年。彼の生前中に「編集人」としての軌跡をまとめようと、三軒茶屋に出向き彼の活動について取材させていただいた日。

(注22017年初頭にから、神田の東京堂書店では著名漫画家U氏とコラボした企画『東京を読む!』というコーナーが設けられていた。そこに、私の著書『よみがえれ!昭和40年代』がチョイスされ、それがテレビ朝日『ChouChou(シュシュ)』の担当者の目に止り、番組出演オファーに繋がっている。

(注3)「サーキットの狼」愛車「ロータス・ヨーロッパ」が、前もって渡された資料には登場せず、スーパーカー・ブームの代表格ランボルギーニ系のスナップがクローズ・アップしていた。そこで、小中学時代に私がコレクションしていたミニカー(Match Box社製)を持参した。


(注4)収録時のVTRに写っていた画像の差し替え、「たばこ屋」の外見、「自転車」は当時人気のあった<セミドロップ>、「カメラ小僧のカメラ」が手にしている一眼レフを<安価な普及品>に、「スーパーカーの道路」を<環状七号>に指定など。当時のリアルを反映させるべく、図書館からネットまで、あらゆるメディアから映像を探索した。ちなみにこの差し替え映像は、現在放映中のオープニング映像でも使用されている。

(注5)初期の『ChouChou(シュシュ)』は「TVer」での視聴は出来ないが、無料サイトの(pandora)(miomio)で視聴できる。

(注6What's Goin' On”“Can't Take My Eyes Off You”など、すんなり発売されなかった名曲のストーリー。

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2018年10月27日土曜日

ツチヤニボンド:『Mellows』(Analog Pants/006)



高野山在住の鬼才ミュージシャン土屋貴雅を中心とするプロジェクト、ツチヤニボンドが10月31日にフォース・アルバム『MELLOWS』をリリースする。
15年11月の『3』から約3年振りとマイペースなリリースながら、その唯一無二で独創的なサウンドは作品毎に深みを増しアップデイトしている。
07年のデビュー時に「はっぴいえんど×トロピカリズモ」と称された彼らだが、本作ではブラジルのミナス・サウンドからウルグアイのカンドンベ、キューバのソンなどアフリカン・ルーツのリズムを基調とする南米音楽を消化し、Urbane=洗練させたサウンドに仕上げている。
アルバム・タイトルのメロウやリード・トラックのアーバンというキーワードは、昨今のAOR~シティポップ・シンドロームへのアンチテーゼと深読みもされそうだが、ツチヤニボンドならではのアーバン・サウンドと解釈すべきだろう。



収録曲は先行で3月にMVが公開された「Urbane」をはじめ全9曲。井手健介と母船の代表曲「青い山賊」のカバーを含んでいる。因みに井手は、14年に惜しくも閉館した吉祥寺バウスシアターのスタッフだった。
レコーディングには土屋貴雅にギターの亀坂英とドラムの波照間将の不動メンバー、新たにベーシストとして土屋の実弟であるツチヤマコトが参加している。ツチヤは先月ソロ・アルバム『amaoto memo』をリリースしたばかりで、ここで紹介しているので記憶に新しいだろう。
また準前作から引き続き元“森は生きている”から増村和彦がドラムとパーカッション、篠原玄がパーカッションも参加し現レギュラーはこの6人から構成されている。
ゲスト・ミュージシャンは、増村と元バンド仲間の岡田拓郎(ギター)と大久保淳也(フルート)が各2曲、“本日休演”から岩出拓十郎(ギター)と樋口拓美(ドラム)が別の2曲で参加しており、他にもパーカション集団“La Señas (ラセーニャス)”の佐藤ドンドコ、TAMTAMのトロンボーン奏者の荒井和弘がそれぞれパーカッションで参加している。
そしてエンジニアにはジャンルを超えて様々なミュージシャンからの信頼も厚い、中村公輔が前作から引き続き迎えられている。




では主な収録曲を解説していこう。
リード・トラックの「Urbane」は、このアルバムのキーワードでもある支柱的曲と言っていいだろう。この曲はギター・リフとフルートのユニゾンによるイントロからブルース進行を基にしたムーディーなヴァースからテンポを上げキューバン・リズムのサビへと展開する。全体的なサウンドは70年代初期のニューソウルやギル・スコット・ヘロンなどのジャズ・ファンクの匂いもする。特徴的なフルート・リフは大久保がプレイによるものだ。
続く「Nevoa」はアコースティック・ギターによるボッサのリズムを基調して、リヴァーブの効いたシンセサイザーとエレキ・ギターがアクセントになっている。音数が少ないサウンドの中で樋口がプレイするスルドは重要なエレメントといえる。
そしてカバー曲の「青い山賊」であるが、井手健介と母船による15年のオリジナル(石橋英子も参加している)の情緒的なサウンドから一転、ここでは新崎純とナイン・シープスの「かじゃでぃ風節」(江村幸紀氏のEM Recordsから今年7インチでリイシューされた)にも通じる、琉球民謡とミナス・サウンドを融合させたアレンジでの解釈が非常に面白い。なにより土屋本人がプレイしている三味線がいつまでも耳に残る。大久保のフルートをフィーチャーした夢想的な甘いサビ(ブリッジ?)を経て、唐突にアフロ・ブラジリアン・ファンクのインスト・パートへと雪崩れ込むのは、ツチヤニボンドらしいと言えばそうかも知れない。





「Diggin' On You」と「五月の嘘」は『3』から踏襲されたサウンドで、前者はナンセンスな歌詞から発展したリズムが面白く、嘗ての「メタル ポジション」(『2』収録 11年)、「ヘッドフォン ディスコ」(『3』収録)に通じるツチヤニボンド・ワールドらしいナンバー。後者はアフロ・ブラジリアンなリズムとスピリチュアルなギター・リフとシンセ・パッドのコントラスが気持ちよく、リズム・チェンジを繰り返しながら展開していく。
アルバム中最もスロー・テンポで始まる「覚えてない」は、土屋得意のモラトリアム・ソングでサイケデリア且つプログレなサウンドがただただ気持ちいい。続く「子供(Para ninos ninos)」は、前出の「Diggin' On You」同様言葉遊びが持つリズムが曲をリードしており、日本語とポルトガル語が共存した歌詞の展開は画期的であり、シタールのような琵琶のリフがドローン効果を生んでいる。
ラストの「Movement」は、「五月の嘘」同様に作詞は土屋で、ドラムの波照間が作曲でタッグを組んでいる。ドラマーが作る曲の特有さというか変拍子とリズムのあり方が非常にユニークだ。その曲調からミステリアスなアルバムの着地点として興味深い。
アルバム毎のレビューで繰り返しになってしまうが、やはり彼等の独創的なサウンドは唯一無二な存在で、拘りを持つ音楽ファンを虜にするのは間違いない。

最後に本作のリリースに合わせて下記の日時と会場でレコ発ライヴを予定しており、対バンにはGUIROが主演する。この個性豊かな2組が同じステージでプレイすることは非常に希であるので興味を持った音楽ファンは是非予約して足を運んで欲しい。

【4thアルバムMellowsレコ発】ツチヤニボンド x GUIRO
2018/12/8(土)渋谷7thフロア
開場18:30 開演19:00
前売3000円/当日3500円(1ドリンク別)
前売受付: tybmellows@gmail.com

(ウチタカヒデ)