2019年4月25日木曜日

POPS IN JAPAN VOL.4 ~ 西岡利恵出演ライヴイベントのご紹介 


弊誌でコラム『ガレージバンドの探索』を連載している、 The Pen Friend Club (ザ・ペンフレンドクラブ)の西岡利恵が臨時編成で組んでいるバンドSchultz(シュルツ)が、4月29日に下記のライヴ・イベントに出演する。


POPS IN JAPAN VOL.4  

4/29(月)
東高円寺U.F.O. CLUB

open 18:30
start 19:00
前売¥2500(+D)
当日¥2800(+D)

◾︎LIVE:
鈴木やすしエクスペリエンス
モンド・ダイアモンド(高松)
フランク小林とジ・エックス
Schültz
girl age

◾︎DJ:鈴木やすし
zuma(ザ・ゲッコウズ)

Schültz
 
ペンフレンドクラブではベーシストだが、自ら率いるこのシュルツではボーカルとギターを担当して拘りの60年代ガレージロックやブリティシュ・ビートに影響されたサウンドを展開している。
ここのコラムで興味を持った読者は是非、シュルツのサウンドを生で体験して欲しい。


Schültz
西岡利恵による臨時編成バンドとしてライブ活動を行う。
ガレージロックやブリティッシュビートなどの影響の強い楽曲を、60年代前半の米国ティーンガレージを思わせるチープな質感のサウンドで表現する。
(テキスト:ウチタカヒデ)

2019年4月21日日曜日

RYUTist 『センシティブサイン』(PENGUIN DISC / PGDC-0010)


4人組アルドル・ヴォーカル・グループのRYUTist(リューティスト)が、4月23日に通算7作目となるニュー・シングル『センシティブサイン』をリリースする。
メンバーは五十嵐夢羽、宇野友恵、佐藤乃々子、横山実郁のハイティーンから20代前半の4名から構成され、所謂アイドルとは一線を画すヴォーカル・ワークを誇り、提供される楽曲も音楽通を唸らせるソングライティングとサウンドを持った、拘り抜かれたプロダクションで活動しているのだ。
筆者も昨年5月にリリースされた『青空シグナル』(PGDC-0007)収録「無重力ファンタジア」を、昨年の年間ベストソングに選出したほど彼女達の作品には注目している。


さて本作のタイトル曲「センシティブサイン」は、若干21歳のシンガー・ソングライターのシンリズムの提供曲である。
またカップリングには、サード・アルバム『柳都芸妓(りゅうとげいぎ)』(PGDC-0005)のリード・トラック「夢見る花小路」を提供した佐藤望による「素敵にあこがれて」と、microstar(マイクロスターWack Wack Rhythm Bandのメンバーがタッグを組んだ「バ・バ・バカンス!」の2曲が収録されている。
今月頭に音源を入手してから聴き込んでいるが、このシングル収録曲について解説していこう。


センシティブサイン / RYUTist

タイトル曲の「センシティブサイン」は、イントロのエレキギター・アルペジオから始まるホーン・セクション入りの溌剌としたポップスで、アレンジ的にはファンキーなベースとコンガのポリリズムが利いている。シンリズムならではの個性は薄いが、ブリッジからサビのメロディの美しさなど、RYUTistのハーモニーを活かした楽曲の良さは光っている。

続くカップリングの「素敵にあこがれて」は、先月レビューしたコントラリーパレードの『CONTRARY』収録「ユートピア」のアレンジで手腕を発揮していた佐藤望(Orangeade他)のソングライティングとアレンジによる楽曲だ。前出の「夢見る花小路」を一聴した時からその才能には注目していたが、この曲でも極めて独創的なサウンドを展開していて裏切らない。
右チャンネルのラウドなエレキ・ギター(Orangeade黒澤鷹輔のプレイ)のフレーズと、センター及び左チャンネルで展開するピッコロ、フルート、ファゴット等木管楽器のコントラストがとにかく素晴らしく、縦横無尽に発されるアックの強いシンセのオブリガートもいいアクセントになっている。
アルドル・ヴォーカル・グループへの提供曲としては異端ではあるが、80年代初頭にテクノ少年だった筆者にとっては全く違和感がなく、むしろ歓迎すべきで、早くも本年度ベストソング候補に入る。

カップリングのもう1曲は、 microstar(飯泉裕子・佐藤清喜)のソングライティングに、Wack Wack Rhythm Band(以降ワック)のホーン・セクションとパーカッションがコラボレーションしたハウス系ダンス・ナンバーで、Beats Internationalの「For Spacious Lies」(『Beats International』収録90年)を彷彿とさせる。ホーン・アレンジは佐藤清喜とワックの三橋俊哉が担当し、サルソウル・フレイバーを醸し出している。
このシングル収録3曲は、アイドル・ファン層を超えた音楽通にもお勧めする出来る内容であるので興味をもった是非入手して聴くべきだ。
(ウチタカヒデ)


2019年4月14日日曜日

Iron Finger Of Crew ~ Joe Osborn


The Wrecking Crew(レッキングクルー)の中核としてハル・ブレインと共に黄金のリズムセクションを担った偉大なベーシストのジョー・オズボーン氏が昨年12月14日に亡くなった。81歳だった。
1937年8月28日ルイジアナ州北部にあるマディソン教区の村マウンドに生まれた彼は、地元クラブで演奏するミュージシャン人生をギタリストとしてスタートさせたという。その後デイル・ホーキンズのバックでプレイするなどプロとしての道を進む中でベーシストに転向し、60年には旧知の仲だった一流ギタリストのジェーム・ズバートンの紹介で、リッキー・ネルソン(後にリック・ネルソンに改名)のバンドに参加しキャリアを開花させた。また64年にはジョニー・リヴァースのセッションに参加したことで、ロサンゼルスでのコネクションを築いたのだろう。The Wrecking Crewには欠かせないファーストコール・ベーシストとして数多くのレコーディング・セッションに参加し、その名を知らしめた。
やはりママ&パパスやThe 5th Dimensionから、彼が見出したともいえるカーペンターズ等の数多くのヒット曲群でのプレイに注目が集まるだろ。
ここでは前回のハル・ブレイン氏に続き、ジョー・オズボーン氏を心より敬愛するミュージシャン達と、知名度は低いが知られざる彼のベストプレイを挙げてその偉業を振り返りたいと思う。

【ジョー・オズボーンのベストプレイ5】
●曲目 / ミュージシャン名
(収録アルバムまたはシングル / リリース年度)
◎選出曲についてのコメント




【角谷博栄(ウワノソラ)】
https://uwanosora-official.themedia.jp/

●Mexican Drummer Man / Herb Alpert & The Tijuana Brass
 (7”『 Mexican Drummer Man』Single/ 64年)
◎ハル・ブレインの強烈なドラムもスゴいですが、
曲終わりへ向かう際のオズボーンとのリズム隊の畳み掛けがカッコいいです。

●Look To Your Soul / Johnny Rivers
(『Realization 』/ 68年)
◎レッキングクルーの演奏。
細かくシンコペーションしてミュートをしたような枯れた音。
4弦をあまりにも使用しない奏法。リード楽器のようにメロディを作ってしまうプレイ。イントロからオズボーン節全開です。

●It Might as Well Rain Until September / Peggy Lipton
(『Peggy Lipton』/ 68年)
◎Lou Adlerのプロデュース。作曲はGerry Goffin & Carole King。メロディの合間に入れるギターの低音のオブリの様なベース。ピック弾き?特有のアタック感もオズボーンのベースの持ち味だと思います。

●Poor Side Of Town / Al Wilson
(『Searching For The Dolphins』/ 69年)
◎プロデュースはJohnny Rivers。編曲はGene Page。
こういう編曲ががっつりしてる曲では長い音譜が中心で、動き回るというよりかはボトムを
シッカリと支えるようなプレイをしてます。

●People In Love / Jim Grady
(『Jim Grady』/ 73年)
◎本当に73年?と疑ってしまうような進みすぎてるサウンド。西海岸ロック。
後のAORとも言えるようなサウンドを70年代初期のオズボーンはプレイをしてます。
ギターはLarry Carlton。


People In Love / Jim Grady



【平川雄一(The Pen Friend Club)】
https://the-pen-friend-club.wixsite.com/the-penfriendclub

●Establishment Blues / Rejoice
 (『Rejoice』/ 68年)
◎いやー、最高ですね。カッコいい。ハル・ブレインとの絡みも。

●Sour Grapes / Cass Elliot
(『Bubblegum, Lemonade, and... Something for Mama』/ 69年)
◎まさに、ジョー・オズボーンの輪郭の音ですね。引っ掛けベースいいなあ。

●Both Sides Now / Neil Diamond
 (『Touching You, Touching Me』/ 69年)
◎いい音するベースだなあ。あと本当にいい曲。

●Mr,Goder / Carpenters
 (『Close to You』/ 70年)
◎曲も好きなんですがベースもいいですよね。いい動きしてます。

●Flashback / The Fifth Dimension
 (7"『Flashback』/ 73年)
◎この曲、大好きなんですよね。やっぱりドラム&ベースがかっこいい。
前回ハル・ブレイン特集のときに挙げようと思ったんですが、今回紹介できて嬉しいです。


Flashback / The Fifth Dimension



【平田 徳(shinowa)】
http://www.shinowaweb.com

●TANYET(Album) / The Ceyleib People 
(『TANYET』/68年)
ライ・クーダー や ベン・ベネイ も名を連ねる企画物的サイケインストスタジオプロジェクト。
サイケものでは非常に有名な一枚だが、Joe Osborn がエンジニアとしてもクレジットされている。一流プレイヤーのサイケセッションという前提ゆえ、誇張しすぎたビヨーンビヨーンやりすぎなシタールやコラージュ的な手法は、良くも悪くも数多のサイケバンドとは一線を画す内容です。ちょっと例外ではありますが、曲推しではなく箱推しです。

●Standing In The Shadow Of Love / Boyce & Hart
(『It's All Happening On The Inside』/ 69年)
冒頭より唸ってウネるベースが炸裂!68~69年あたりのサイケバンドがたまにやる Vanilla Fudge の Supremes “You Keep Me Hangin' On” 以降の Motown 有名曲のややプログレ風味サイケカバーの秀逸作。いわゆるサイケカテゴリーで括られるバンドよりも全然すごい。

●Horses On A Stick / Judy Henske & Jerry Yester
(『Farewell Aldebaran』/ 69年)
大好きな Judy Henske のこのアルバムでも Joe Osborn が2曲弾いていたことに驚いた。ちょっとチープなガレージサイケフォーク調のこの曲でも、弾力感溢れる芯のあるベース音は本当に良く合いますね。総じてサイケサイドの Joe Osborn は、クセのあるアンサンブルをベースでまとめ上げながら曲を引っ張り展開していく、サイケマナーな観点でのベーシストとしてもほぼNo.1でしょう。

●Hands Off The Man (Flim Flam Man) / Peggy Lipton
(『Peggy Lipton』/ 69年)
ローラ・ニーロの原曲よりもベースのキレが良いので、比べてみると Joe Osborn のベースのあの弾力感あふれた音のかっこよさが本当に実感できます。もうベースの美味しい音を確実に知っている人という感じです。総じて音の芯も倍音もしっかりしているため帯域が広く感じられるので、よってオケの中でフレーズが際立ち、そしてしっかりボトムも支えられるという、理想的なベースサウンドであるといえましょう。

●Mixed-Up Girl / THELMA HOUSTON 
(『SUNSHOWER』 / 70年)
若き日のテルマ・ヒューストンの1stアルバムは ジミー・ウェッブ プロデュースの、ソウルというよりも、イギリスで成功したマデリン・ベルをもっと叙情的にしたようなソウルポップなサウンド。ソウルファンからはあまり芳しくないみたいです。でもでも、めっちゃドラマチックな込み上げ系のこの曲は、同年に発売された ポール・ウィリアムズのサムデイマンを彷彿とさせる感動的なベースライン!この時期のジョーは曲を次第に盛っていく感じが本当に神懸かってます。アルバム全体通じてジョーのベースが本当に堪能できる一枚で、隠れた名盤です。


Standing In The Shadow Of Love / Boyce & Hart



【松木MAKKIN俊郎(Makkin & the new music stuff / 流線形 etc)】
http://blog.livedoor.jp/soulbass77/

●Someday Man / Paul Williams 
(『Someday Man』/70年)
◎やっぱりこの曲は外せない。ど頭から目が覚めるようなグルーヴと歌心。
めまぐるしい展開に馴染む、素晴らしく艶のある音色が最高。

●Brothers And Sisters / Jack Daugherty
(『Jack Daugherty And The Class Of Nineteen Seventy One』/71年) 
◎Aメロの伸びやかなプレイはジョーの真骨頂。
カーペンターズのバラード諸作に聴けるような、シンプルな中に息づく歌心。

●Rock Me On The Water / Johnny Rivers
(『Home Grown』/71年)
◎ジムケルトナーとのシンプルなコンビネーション。
組み合わせとしては貴重だが、SSW〜SWAMPにおける理想のリズムセクションの一つに数えたい!

●Light Sings / 5th Dimension
(『Love's Lines,Angels And Rhymes』/71年)
◎ジョー史上ソウル度が頂点に達した演奏か。唸るようにグルーヴして歌を煽りながら、自らも歌うようなメロディを紡ぐ。名フレーズの宝庫!

●I Cry Mercy  / Larry Carlton
(『Singing/Playing』/73年)
◎ジムゴードンのドラムとぴったりくっついて、ストリングスセクションの一員のようにアレンジとシンクロしてカウンターメロディを繰り出す。個人的に一番好きな演奏。


Someday Man / Paul Williams





【TOMMY (VIVIAN BOYS) 】
https://twitter.com/VIVIAN_BOYS

●Save For A Rainy Day Theme / Jan & Dean
(『Save For A Rainy Day』/ 66年)
◎作者であるレッキング・クルーの各種鍵盤奏者ラリー・ネクテルは、ベーシストとしてもザ・バーズ「ミスター・タンブリン・マン」イントロのグリスや、BB「青空のブルーバード」等、印象的な演奏を残す。このアルバムの基礎トラックはジョーのガレージ・スタジオで録音された。

●Shapes In My Mind / Keith Relf
(7”『Shapes In My Mind』/ 66年)
◎ヤードバーズとジョーのイメージしにくい繋がり。この曲のエンジニア、ボーンズ・ハウの仲介か。ラヴ『フォーエヴァー・チェンジズ』(67年11月)にも参加のハル・ブレインのドラムとのリズセクで、敢えて雑に暴れるベースラインが醸し出すサイケ感。

●All I Can Do / Carpenters
(『Offering』/ 69年)
◎全スタジオアルバム参加のジョーは謂わば「カーペンターズのベーシスト」。1stでのカレンのドラマーとしての矜持、とりわけこの先鋭的なハーモニー・ジャズ・サイケ曲での鬼気迫るプレイにもジョーは的確に応える。「ワンダフル・パレード」と共に本作のハイライト。

●Slip On Through / The Beach Boys
(『Sunflower』/ 70年)
◎訃報記事で初めて『サンフラワー』参加を知る。が、69年2月13日のサンセットスタジオでの録音(「ガット・トゥ・ノウ・ザ・ウーマン」)に参加、しかもカールが後で差し替えたかも、程度のことしか分からず。むしろ、正式クレジットが怪しいこの曲こそ、よりジョーっぽい。

●Merry Christmas Darling / Carpenters
(『Merry Christmas Darling』/ 70年)
◎「サンタが街にやってくる」カヴァーと双璧たるオリジナル曲。BB関連ではカーニー・ウィルソンのソロ・クリスマス・アルバム(07年)に名カヴァー有。クリスマス・パロディスト、ボブ・リヴァース版(02年)のイスラム風カヴァーも、的を射た歌詞含め高い完成度。


All I Can Do / Carpenters


【Masked Flopper(BB5数寄者)】

●Hey Sue / Johnny & Dorsey Burnette 
(7”『It Don't Take Much』B面 / 63年)
◎It Don't Take MuchのB面。Burnette兄弟との共作でJoeのエレキベースによるJoe節が所々楽しめる一曲。Ricky Nelsonのバックバンドを経たのちDunhillへと転身する。

●Is Happy This Way / The Thomas Group
(7”『Is Happy This Way』/ 67年)
◎Sunshine pop時代まっただ中に制作されたDunhill王道路線。
他に数枚Sloan-Barri作品をリリースしており、どれも佳曲揃い。

●Vegetables / Laghing Gravy
(7”『Vegetables』/ 67年)
◎覆面バンドで、当時名称使用が禁止されていたJan&DeanのDeanがリリースした一曲。
録音はJoeの所有するスタジオで行われた。同所ではデビュー前のKaren Carpenterも録音し、Joeのレーベルからデビューしている。

●Blow Me A Kiss  / Mama Cass Elliot
(『Bubblegum, Lemonade, and... Something for Mama』/ 69年)
◎弊誌でもおなじみソフトロック名盤でソロ2作目。
ノスタルジックな曲調にうまくからむベースサウンドが心地いい一曲。

●Take It and Smile / EVE
(『Take It and Smile』/ 70年)
◎参加ミュージシャンは Hal Blaine-James Burton-ペダル・スティールにSneaky Pete KleinowやRy Cooder作家陣はJames Taylorなど後のWest Coast Rockを予感させる作品。


Take It and Smile / EVE



【ウチタカヒデ(WebVANDA管理人)】

●Love Is A Rainy Sunday / Love Generation
(『Montage』/ 68年)
◎今回の選曲はイントロ・プレイのインパクトで5曲に絞っていった傾向があり、この曲の2連のグリスダウンはやはり耳に残った。パート間のアクセントもジョーならではではないだろうか。
パーソナルはノンクレジットだが、後年メンバーのトム・バラーのインタビューでハル・ブレインとジョーのコンビネーションがいかに素晴らしかったかを語っていた。
蛇足だがこの企画に参加するミュージシャンの某バンドが、セカンド・アルバム収録曲でこの曲をオマージュの1つとしている。レビューをリンクしているので是非聴いて欲しい。

●Hope / The Carnival 
(『The Carnival』/ 69年)
◎拘り派ソフトロッカーの中ではロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズより好まれるグループかも知れないが、この曲でもイントロのグリスダウンがとにかくクールで、全体的なアレンジの中でよくベースが機能している。

●Someday Man / Paul Williams
(『Someday Man』/ 70年)
◎この曲を愛する多くのソフトロッカーは理解しているので多くを語りたくないが、この曲にとってジョーによるベースラインのパターンそのものがキーデバイスであることがよく分かる。

●California Revisited / America
(『Homecoming』/ 72年)
◎「Ventura Highway」ほど知名度は高くないが、イントロのピッキング・アクセントが実にクールである。本編のプレイとしてはS&Gの「A Hazy Shade Of Winter」のマークⅡという攻め方だろう。

●Wavin' And Smilin' / Larry Carlton
 (『Singing / Playing』/ 73年)
◎ジャズ・フュージョン・ギタリストとして数々のセッションで名演を残すカールトンのセカンド・ソロアルバムの3曲にジョーは参加している。特にプレ・ブルーアイド・ソウルとして知られるこの曲のプレイは特筆すべきだ。ギターとユニゾンを取るパートと、ビートをキープするパートを交互にチェンジするスリリングなプレイは彼の新たな一面を見させてくれる。


Hope / The Carnival




(企画 / 編集:ウチタカヒデ)






2019年3月31日日曜日

集団行動:『SUPER MUSIC』 (ビクター/VIZL-1553/VICL-65158)


ハイブリッドなロック・バンドとして知られる集団行動(しゅうだんこうどう)が、昨年2月のセカンドアルバム『充分未来』に続き、4月3日にサードアルバム『SUPER MUSIC』をリリースする。
相対性理論(以降理論)の初期メイン・コンポーザーだった真部脩一が17年1月に結成したこのバンドは、某出版社主宰のアイドル・オーディション・ファイナリストの齋藤里菜をヴォーカリストに迎えるという発想からまず興味を惹く。そして真部の盟友で元理論のドラマー、西浦謙助(mezcolanza(メスコランサ)等にも参加)が合流しバンドはスタートした。
セカンドアルバム・リリース後の昨年8月には、サポート・ベーシストで真部とはVampilliaで同僚のミッチーが正式加入し、現在の4人編成となっている。


理論時代から耳の肥えた音楽通に定評があった真部のソングライティングは、このバンドでもアルバムを重ねる毎にブラッシュアップしており、ナンセンスな歌詞に潜むキッチュな感覚は彼ならではで、追随するソングライターを引き離して唯一無二の“真部ワールド”を展開している。
アルバム先行で限定配信された「ティーチャー?」、「クライム・サスペンス」、「ザ・クレーター」の3曲にしても掴み所の無い独自の世界観を描いており、混沌としたこの平成下を締めくくるに相応しいアルバムなのかも知れない。
ここでは筆者が気になった主な収録曲を解説していこう。

冒頭のアルバム・タイトル曲「SUPER MUSIC」は、ライヴ映えする16ビートのファンキーなパワー・ポップで、齋藤の鼻に掛かったハスキーな声でリフレインされるタイトルが耳から離れない。
続くリード曲の「1999(イチキューキューキュー)」は、ギター・ポップ調の爽やかなメロディを持つバースとサビにサンドイッチされたブリッジが、真部ペンタトニック・スケール(「ふしぎデカルト」等)で歌われ、いいアクセントになっている。詩の世界観と共に曲の構成的にも非常に練られている。

「1999」

ハードなギターリフとタイトルの連呼が強烈なインパクトで迫る「皇居ランナー」もユニークな曲だ。歌詞とメロが同時に浮かんだとしか言えないこのラインにはアイディアには脱帽してしまったが、全体的にリズミックな歌詞のライム感も真部ならではというテクニックを見せている。
「クライム・サスペンス」は集団行動としては珍しいブギから始まり三連符で跳ねるモータウン風ビートが曲を駆り立てる。西浦とミッチーのリズム隊のコンビネーションの素晴らしさやハードボイルドな歌詞を齋藤がキュートに歌うギャップなど聴きどころが多い。

「クライム・サスペンス」

「ザ・クレーター」はUKギター・ポップ好きにはたまらないサウンドで、刹那的で映像が浮かぶ歌詞(新海誠監督の『君の名は』へのオマージュか?)と、性急的なギターのカッティングとアルペジオが実にマッチしている。全体のアレンジ構成的にも緩急あるドラマティックな展開で、筆者的にも本アルバム中ベスト・トラックである。

「ザ・クレーター」

ラストの「チグリス・リバー」は、ネイティブなパーカッション(ロータム?)・パターンにメンバー全員の荘厳なユニゾンのコーラスが乗るというもので、収録曲のどのイメージからも裏切られるサウンドが真部をはじめとする彼等らしいアルバムの着地点ではないか。
またこの曲のイメージは、アルバム・ジャケットで見せるフォトジェニックな齋藤のヘアスタイルや衣装に通じるオリエンタルなムードがあって興味は尽きない。
なお初回限定盤は、ファーストとセカンドからセレクトされた6曲と、未発表曲「タイムリミット」のデモ音源を収録した別CDがセットとなった2枚組なので、初めて彼等に触れる音楽ファンには大いにお勧めするのでチェックして欲しい。

初回限定盤(VICL-65158)
(ウチタカヒデ)

2019年3月24日日曜日

Wake The World:The Friends Sessions (2018)

レビューが年越しとなったが、2018年12月リリースの今や毎年恒例になったThe Beach Boysセッション集について紹介させていただく。
本作は1968年リリースのアルバム『Friends』のセッション(1968年1月〜4月)を収めたもので、アウトテイク集である。未公開であるがゆえにEU圏を中心とした地域では著作隣接権(※1)の時効が満了してしまう恐れがあり、これを回避するためにリリースが行われた。

本作は全体に静謐感溢れるリラックスしたムードに満ち溢れており、ステレオ音源もあってか、クリアで聴きやすい内容となっている。
イラストもメンバーが世界に浮遊し見守っているイメージで、描いたのはDavid McMacken、後に『L.A(Light Album)』でも手がけている。他にFrank Zappaの『200 Motels,The Mothers』などのジャケットも有名だ。 LPでは裏側になる日の出または日没の浜辺の写真はGeorge Whiteman。多くのジャケットを手がけておりBarry Mcguireの『Eve Of Destructio』、Righteous Brothersの『You've Got That Lovin Feeling』が弊誌読者にはおなじみである。
また、アートディレクションはGeller and Butler Advertisingが担当し、前作『Wild Honey』から引き続き担当している。弊誌おなじみのジャケットデザインではThe MIlleniumの『Begin』、Sagitariusの『Present Tense』が有名だ。
ちなみに上記のGellerとはArnie Gellerいう人物で当時のBrianの妻側の縁者である。当時The Beach Boysのロードマネージャーでありアルバム『Smile Smie』の収録曲「With Me Tonight」の冒頭でコーラスの合間に入るGood!の声は本人のものである。

1968年のBillboardトップ10は以下のとおり。 

 ご覧の通り半数以上がイージーリスニングやポップス、その一方で弊誌でも取り上げる実験作が着々と製作されるという時代であった。
世代間や文化、そして政治・文化の衝突が社会の中でも顕著となる状況の中でThe Beach Boysも影響を受けざるをえなかったが、特に国内セールス面での不調、バンドの財務状況の悪化、という悪い影響ばかりである中での立ち位置の確保はかなり大変だったであろう。
本作の方向性について言えば、当時(現在でも)深く関わっているTranscendental Meditation techniqueに基づく心理風景を元に構成されている。Transcendental Meditation(以下TM)は、Maharishi Mahesh Yogiが開発した瞑想法の普及活動の為の団体であり、宗教とビジネス又はサイエンスの間に位置している。
Maharishiは一時The Beatlesのスピリチュアルアドバイザーとも言われ人気を博した結果、The Beatlesのメンバーも本人のレクチャー等のためインドへ渡航し、同時期にMike Loveも参加したので、本作にはMike不在のレコーディングも行われている。

レコーディングはBrianの自宅を改装したスタジオとI.D Sound studioで行われた。I.D Sound studioはもともとLiberty Recordの関連スタジオであったが、1960年代中頃に会社売却のため売りに出されたのちI.D Sound studioとして発足した。
本作以外にTodd Rundgrenの『Something/Anything?』,『Runt』のレコーディングでも有名である。
レコーディング時期は1968年1月から4月まで、前作『Wild Honey』から引続く制作環境であり、Brian邸の運転手スペースを改装したスタジオで多くのセッションが行われた。
コンソールは放送局を中心に使われていたGates社のDualuxを使用し、上部のハイ/ローパスフィルターと共にPultecやUreiなどのeqやコンプのアウトボートが使われた。
機材のセッティングは前作から引き続きエンジニアのSteven Desperが担当した。
Gates Dualux 
 
本作のあちこちで聴かれるオルガンはBaldwin社のもので、前年行ったハワイ公演でも使われたものと同型HT2Rと考えられている。 
Time To Get Aloneのプロモ・フィルムより  

いよいよ本題の本作収録曲の解説に入らせていただく。 曲順はセッションの時系列順で紹介しよう。
「本作のトラックナンバー/タイトル 画像は米国国会図書館のデータを使用」


「30 untitled 1/25/68」 
ベースラインとキーチェンジが印象的な曲である。
当時のベイエリアのバンドの 曲調らしいラフな雰囲気であるが、3/4にテンポを変えて「Be Here In The Morning」 に流用されている。
1968年1月25日録音 ブライアン邸にて 

 「20 Away」
Dennisの未発表曲で噂のみの存在であったが、今回収録された曲。
Dennisの他に, Desi Arnaz Jr, Billy Hinsche, Dean Martin Jrのクレジットがあり共作となっているが、ご存知の通りDino,Desi & Billyだ。特にBillyの妹AnnieはCarlの妻だったこともありグループ同士のつながりは 深く、1969年リリースのシングル「Lady Love(Reprise 0965)」にBrianが クレジットされている。
曲調はSmileセッションにインスパイアされたと思しきギターアンサンブル の小曲で歌詞もあったらしい。

 1968年1月??日録音 ブライアン邸にて

「11 Little Bird (Back Track)」
「12 Little Bird (A Cappella)」
セッションの記録では「Little Fish In A Brook」となっており「Little Bird」に改題した ミュートトランペットとチェロのからみが印象的な曲。 
後半から「Child Is Father Of The Man」に酷似する部分があるが、Smile セッションからサルベージしたものと推測される。
本作の音源はオリジナルのルームエコーや部屋鳴りだけのナチュラルな音像 であるのに対してプレートまたはエコーチェンバーによるリバーブが軽く かかっている点が異なる。
 


共作者のStephen Kalinichは主に作詞を担当している。 Stephenはポエトリーリーディングなどのパフォーマンスをしていて西海岸に流れ 着きZarasthustra & Thelebiusというフォークデュオで活躍する、中途ソングライター 仲間からBrianを紹介され間もなくBrianと意気投合する。その後Brotherと契約し 各年代を通じて楽曲を提供している。
70年代は未発表だが、「California Feelin'」、シングルリリースはあれど大惨敗 した「Child Of Winter」、 2004年にはBrianのソロ『Gettin' Over My Head』では「You've Touched Me' 'A Friend Like You」(Paul McCartneyとのデュエット)の二曲を 提供している。
60年代はメンバーから重宝されたのかバンドのプレスリリースのスクリプトも 担当する。又、 1969年に彼自身のアルバムが制作され長らく未発表だったが 2014年にLight In The Atticより『A World Of Peace Must Come』がリリースされる。
制作に際してはBrianも関与している。1968年当時に既に下記の通り 登記された曲があるがいくつかは今でも未発表である。
1968年2月29日録音 ブライアン邸にて

「21 I'm Confessin'」
「22 I'm Confessin'/ You're As Cool As Can Be 1 」
「23 You're As Cool As Can Be 2」 
未発表曲のデモである。
初期段階では67年以降お気に入りだった Baldwinのオルガンとタックピアノのコンビネーションが 無機的でありながら時折ユーモラスになる変わった音像である。
1968年2月??日録音 ブライアン邸にて

「24 Be Here In The Morning Darling」 
原曲「Be Here In The Morning」とテンポや様々な面で異なっている。
アレンジもこちらの方が洗練されすぎており、アコーディオンが印象的である。
ブラスはおそらくWesternなどでオーバーダブされている可能性がある。Lawrence Welk Showに流れていても違和感がない一曲。
「Be Here In The Morning」は実父Murry Wilsonの参加もあり、『Freinds』の制作に影響があるようだ、アレンジ面でも何がしかの関与がうかがわれる。
1968年3月6日録音 ブライアン邸にて 

「02 Friends (Backing Track)」
「03 Friends (A Cappella)」
前作『Wild Honey』から三拍子がよく使われるようになり、『Friends』でも多用され ている。
原曲と同様演奏終了まで収録されている。ベースハーモニカが印象的。
Mikeがインドにいた関係なのかそれ以外のメンバー作となっている。
コーラスのブリッジ部分は中央に定位し、主旋律と装飾的なコーラスは左右に定位している、すなわち3chをコーラスに充てている。
Brianのレコーディングはまずバックトラックを作成し2chにダビングした後 ヴォーカルとコーラスを重ねる手法が取られている。今回は歌とコーラスを同時に 録音しているようだ。歌+コーラスをもう一度別トラックに録音し 途中のブリッジのコーラスは別トラックに録音されている。
おそらく8トラックのレコーダーを使用し、ストリングスを最後に録音している ようだ。


1968年3月13日録音 ブライアン邸にて

「06 When A Man Needs A Woman (Early Take Basic Track)」
「07 When A Man Needs A Woman (Alternate Version)」
BrianとDennisにAlという珍しい構成の曲 。
他の共作者は当時のローディーSteve Korthof、John Parks SteveはWilson家の縁者でローディー以外にもアルバムParty以降 タンバリンなどで参加している。
1968年3月18日録音 ブライアン邸にて 

「25 Our New Home」 
作曲者不明だが、Brian節がうかがえる佳曲 。
またまた三拍子の曲となっており特徴的な一曲 この時期定番のあの無機質なBaldwinオルガンと不愛想なタックピアノの 音色がなくすっきりした印象となっている。
後年この曲が改作されアルバム『Sunflower』の「Our Sweet Love」の一部となっている。
1968年3月20日録音 ブライアン邸にて

「08 Passing By (Alternate Version)」
LPA面の最後の曲 。
当初歌詞があったがお蔵入りしたという曰く付きの曲。
マスタリングの効果もあるが、こちらはクリアな音像となっている。
特に12弦ギターエッジの効いた音色がよく聞こえ、ドラムは中央に定位し、 ホームスタジオ特有の部屋鳴りの雰囲気がいい。
原曲とは違いベースハーモニカの入るタイミングや楽器のバランスが異なっている。ヴォーカルパートが原曲と異なり、バッキングトラックの方が先に終了。
なんと1996年に日本のピチカート・ファイブがカバーしている。


1968年3月22日録音 ブライアン邸にて 

「14 Even Steven (Early Version Of Busy Doin' Nothin')」 
関係者で何人もStevenがいるので誰であるかは特定できない 仮歌の段階のため歌詞が少し違い、再生テンポも異なる。
こちらもマスタリング時?にエコー成分が乗せられており 原曲よりややぼやけた印象。BPMを落としたバックトラックの マスターテープを切り貼りして、幾つかのオーバーダブを加え 翌月4月11日に歌入れを行った模様。(於 I.D sound studio)
 1968年3月26日録音 ブライアン邸にて

「04 Wake The World (Alternate Version) vocals」
ヴォーカルトラックが原曲と異なっており、冒頭部のヴォーカルはダブルトラック で、曲中音声が抜けている。
右から聞こえるタックピアノとファズをかけたようなチェロの音が印象的 ストリングスは原曲と違い左から聞こえて、トレモロの演奏がよく分かる 全体にマスタリング時?にエコー成分がかかっており、ベースの音が中央に 定位したため、左側にあった原曲と比べややぼけている。
ドラムもベース同様の処理がされ奥に引っ込んでしまっている。
3月30日に歌入れを行った(於 I.D sound studio) 
1968年3月28日録音 ブライアン邸にて

「05 Be Here In The Morning (Back Track)」
デモ段階のセッションは3月6日に行っており、こちらは最終版 またまた恒例の三拍子の曲である、間奏部が原曲と異なる。
こちらのクレジットはメンバー全員となっている ハワイ風のモチーフは前年のハワイ公演の影響か? こちらもマスタリング時?エコー成分が乗っており、原曲のナチュラルな スネアの音色がWesternで録音した『Pet Sounds』時代のような音になっている。一方で右チャンネルではギターとエレクトリックハープシコードの組み合わせが よく聞き取ることができる。
1:26頃からのブレイクでは原曲がオルガンに対してベールとウクレレに 切り替わっている。
1968年3月29日録音 ブライアン邸にて

「19 My Little Red Book」
Smile時代からよくあるタックピアノとベースのみのデモ。
Burt Bacharch作曲Manfred Manの演奏を遅めにした感じである。
当時のBrianは 何度かBucharch作品のカバーを行っている コードチェンジや変拍子など本作でも影響が少なからずある。
1968年3月??日録音 ブライアン邸にて

「28 Rock And Roll Woman」
Buffalo Springfieldの曲のリフを繰り返している ライブのリハーサル?
意図は不明ではあるが、当時のツアーで Buffalo Springfieldとは共演している。
まだ映画『American Band』でこの曲をライブで演奏するシーンも見ることができる。
Monterey Pop Festival出演辞退後、ライブのオファーが激減し興行マネジメント 会社を自ら設立したり自前で公演のブッキングをするなどするもセールは 惨憺たる結果であり、バンドの財務状況は悪化の一途をたどり、国内の不足分を なんとか海外の売り上げで埋めあわせる状態であった。
1968年3月??日録音 ブライアン邸にて 

「29 Time To Get Alone (Alternate Version Demo)」 
ここまでくると定番となった三拍子! 
The Beach Boysの三拍子好きはどこから始まったかは不明であるが、 Bruce Johnstonが一時期結成したBruce and Terryの人気曲「Don't Run Away」 のシングルA面の「Girl,It's Alright」 (Barry Mannの曲だが)は三拍子だし、 アルバムSurf's Up 収録のDisney Girlsでは三拍子魂が遺憾なく発揮されている。
1968年3月??日録音 ブライアン邸にて 

「16 New Song (Transcendental Meditation) [Back Track With Partial Vocals]」
「26 New Song」 
「17 Transcendental Meditation (Back Track With Session Excerpt)」
LPであればB面ラスト。
静謐な瞑想の世界と異なりビッグバンドのジャムセッションのような曲でタイトル負けしているような意表をつくTM賛歌。
このノスタルジックな趣味はMurryの関与があるのだろうか?
トラック26は曲中の一部をリフとして延々として演奏している。
日本の二時間ドラマの劇伴めいた雰囲気。
以下連日のセッションが集中的に続くことになるが、Mikeの三月下旬の帰米に よってもたらされたインドでのTMの影響が色濃くでた作品が続く。


1968年3月??日録音 ブライアン邸にて

「01 Meant For You (Alternate Version With Session Intro)」
LPであればA面一曲目。
原曲より長く新たなメロディもあり表現豊かなサウンドである。
本作ではコーラス部の広がりが原曲より増えソフトなハーモニーがより深く 聞くことができる。
バックのピアノとオルガンの位置は原曲は右と左だが、本作では逆になっており コーラス+ヴォーカルもほぼ真ん中だが、コーラス部は完全に左右に別れパートが 聞き分けられる。原曲のルームエコー成分をよく生かした処理になっている。
スタジオ内のMurryの声が聴こえ、指示を出していることがわかる 他のトークバック音声はエンジニアのJim Lokert 。
1968年4月1日録音 I.D Sound にて

「09 Anna Lee The Healer (Session Excerpt)」
「10 Anna Lee The Healer (A Cappella)」
LPであればB面一曲目。
楽器のバランスは原曲と同じだが、時折入る装飾的なオルガンやギターは 本作のみでしか聞くことができない。
Mikeのインドで体験した内容の歌でありTM賛歌となっている セッションの過程で様々な楽器の組み合わせを試した様子がうかがうことができる。コーラスに2ch使いダブルトラックであるかに見えてエンディングは左右別々の 歌唱となっている 。


1968年4月2日録音 I.D Sound にて 

「27 Be Still (Alternate Track)」 
「13 Be Still (Alternate Take With Session Excerpt)」
当初はバンド形式の演奏であったが、完成版は聖歌のようなテンポになり トラック13ではテンポを試している様子が分かる。
瞑想状態から覚醒にいたる心理を表現しようとしているものと思われる。原曲ではほぼモノに近い(リバーブを除く)音像であるがこちらは 全体にリバーブと立体感のあるサウンドとなっている。
1968年4月3日録音 I.D Sound にて

「18 Transcendental Meditation (A Cappella)」 
Brianによる多重録音?妙にハイテンションなのが気になる一曲 。
1968年4月4日録音 I.D Sound にて

「15 Diamond Head (Alternate Version With Session Excerpt)」
Brianと当時のセッションミュージシャンが作曲者となっている。
スティールギターが印象的な曲で演奏しているのはAl Vescozo。
ハワイ公演の影響が色濃く出ているエキゾチカである、 録音場所がLiberty Record関連のスタジオであったことが縁なのか? 
Martin Dennyを彷彿とさせる一曲。
Jim AckleyはOregon出身のミュージシャンで、Thirteenth Storyを結成し The Beach Boysともツアーを行い、その関係からか何度もセッションに参加し 1968年Ron Wilsonの「We're together again」で参加している。
原曲の冒頭部分のスプリングリバーブを叩く効果音なしで始まり 同じく波の効果音は入っていない。
パーカッションは原曲では左に定位しているが、こちらでは真ん中 スティールギターは原曲ではやや真ん中だが、右側で ハープシコードは原曲では右だが左に定位する。
1968年4月12日録音 I.D Sound にて

「31 Passing By (Demo)」
70年代にオーバーダブされた様で歌詞付きとなっている 。
A&Mから過去のBrian作品のリメイク企画があったようでそのためのデモ 音楽出版社Sea Of TunesがA&M系列のIrving/Almoへ売却された関係らしい 。
振られた男が未練がましい哀情を歌っており、声の質もしまりがない。



 「32 Child Is Father Of The Man (Original 1966 Track Mix)」
1966と保護期間満了なのではと勘ぐるが、収録の意図不明。
エンディングの数十秒間で聞こえるループが1968年編集?
『Smile』時代の「I'm In Great Shape」の一部らしい。 

『Friendsに関するセッションは以上の通りであるが、オリジナルの自作『20/20』 までは編集盤『Best Of vol.3,Stack O' Tracks』リリースが続く。
本作以降Brianの制作におけるリーダーシップは低下してくことになるが、各メンバーの成長がバンドの 存続を助けることとなる。
マイクと共にインドに渡ったThe Beatlesは帰国後 バンドとしてのまとまりが失われ解散に向かって行ったのとは対照的だ。

 
※1:2013年にEUは著作権保護期間を従来の50年から70年に延長した、これはミュージシャンの老後の生活保障とリンクしており、Cliff RIchardを中心に延長の訴えがあり一部ではCliff法とも言われている。ただし公開音源の保護期間であって未公開音源には適用されない運用となっている。
そのため、1962年以前の公開音源に対しての保護期間が期間満了となってしまう EU圏内の最大の被害者はThe Beatlesで楽曲「Love Me Do」はパブリックドメイン化してしまった。

 (text by Masked Flopper / 編集:ウチタカヒデ)