2019年7月21日日曜日

名手達のベストプレイ第4回~チャック・レイニー


70年代を中心にジャンルを超えて、その巧みなベース・プレイでミュージシャンズ・ミュージシャンとして知られるチャック・レイニー。 
チャックは40年6月17日オハイオ州のクリーブランドで生まれた。クラシックのヴァイオリン、ピアノ、トランぺットの教育を受けたが、バリトンホーン奏者としてテネシー州のレイン大学に奨学生として入学する。
軍事兵役時代にはギターをマスターし、大学卒業と兵役終了後にはクリーブランドに戻り、地元のバンドでギタリストとしてミュージシャンとしての活動をスタートしたが、後にベーシストへと転向した。
このように様々な楽器奏者として経験が、彼特有のベース・プレイにフィードバックされていったのではないだろうか。

その後ニューヨークでセッション・ベーシストとして活動を始め、キング・カーティス、アレサ・フランクリンなどアトランティック・レコードの主要レコーディングを皮切りに、クインシー・ジョーンズ、サム・クック、エタ・ジェイムズなどの著名ジャズ・クリエイター、ソウル・シンガーのレコーディングに参加する。
評判になったそのベース・プレイはジャンルを超え、アル・クーパー、ローラ・ニーロなど黒人音楽に影響されたシンガーソングライターのレコーディングでもオファーされ、72年のロサンゼルス移住後には、スティーリー・ダンの多くのレコーディング・セッションで重要な役割を果たしたのは読者にはご存じの通りだ。
これまでにチャックが参加したアルバムは数百以上と言われており、81年にはその功績が認められ、オハイオ州芸術評議会から、厳選された数少ないミュージック・サイドマンとして認可を受けている。

ここではそんなチャック・レイニー氏を心より敬愛するミュージシャン達と、彼のベストプレイを挙げてその偉業を振り返ってみたい。
因みに今回の参加者8組中6名がベーシストなので、その選曲も玄人好みになったといえるだろう。
サブスクリプションの試聴プレイリストを聴きながら読んで欲しい。



【チャック・レイニーのベストプレイ5】
●曲目 / ミュージシャン名
(収録アルバムまたはシングル / リリース年度)
◎選出曲についてのコメント 

【invisible manners(平山大介、福山整)】 
平山大介、福山整からなる音楽作家ユニット。 黒人音楽をベースにしながらも独自のアレンジやメロディメイクで様々なアーティストへの楽曲提供を手掛ける。https://invisiblemanners.tumblr.com/


●Get on top / Tim Buckley 
(『Greetings from L.A.』/ 72年)
◎Tim Bucklyがソウルに歩み寄ったアルバム。60’sのロックバンドの残り香も強く感じさせる質感に加えられた独自のファンクネスはDr.Feelgood同様にパンクの出現を予言している感じもするが、Chuck Raineyまでもがそれに応じたフィーリングに溶け込んでいる。
Get on topの遺伝子はGang of fourなどによって受け継がれ現代まで生き続ける。

●Street Walking Woman / Marlena Shaw
(『Who Is This Bitch, Anyway?』/ 74年) 
◎『Who Is This Bitch, Anyway?』を初めて聴く方へ。 冒頭よく分からない会話が続いて曲をスキップしたくなると思うが、3分だけ待とう。
唐突な曲入り、高速ファンクからスウィングビートへのリズム変化、随所に施されたギミックの数々に圧倒される筈。プログレッシブなだけでなくプレイヤーの個性が溢れ出ていて有機的なサウンドに仕上がっているのもこの楽曲の魅力。

●He is the One / Peggy Lee 
(『Let's Love』/ 74年)
◎当時のシンガーソングライター的な叙情性冴える70’sらしいゴスペル曲。 アルバムタイトル曲はThe歌心ベーシスト・ポールマッカートニーだが今回は控え目。代わりとばかりにこの曲でチャックが低音からハイフレットまでベースという楽器を知り尽くした滑らかな歌心を聴かせてくれる。

●PEG / Steely Dan
(『Aja』/ 77年) 
◎スクウェアなボーカルに対し主役級におしゃべりなベース。小節前半のギターとキーボードのユニゾンバッキングに呼応するように小節後半を台詞で埋める。Rick Marottaの裏打ちアクセントハイハット等、隙間なく敷き詰められたリズムの骨子の中で軽快に喋り歌うことが出来るのは正に匠の技。

●I Don't Know / Syreeta
(『One To One』/ 77年)
◎後半に行くにつれボルテージがブチ上がる演奏陣の妙技を堪能出来る楽曲。本アルバムではSyreetaの2番目の夫でベーシストのCurtis Robertson Jr.もベーシストとしてクレジットされているので正確なプレイヤーは定かではないが、Leon WareとSyreeta共作のこの楽曲のソウルマナーはチャックの手によるものと推測。 


I Don't Know / Syreeta 


https://groove-unchant.jimdo.com/


●Woman's Blues / Laura Nyro
(『Eli and the Thirteenth Confessio』/ 68年) 
◎Laura Nyroの高い音楽性を表現するのにChuck Raineyも必要だったと改めて 認識させられた曲。

●A Ray of Hope / The Rascals 
(『Freedom Suite』/ 69年)
◎ベースのグルーヴがこの曲のブルーアイドソウル感を出す一翼を担ってますよね。

●Lansana's Priestess / Donald Byrd
(『Street Lady』/ 73年)
◎Sky High Productionでもいい仕事しています。 ループでず~っと聴いていても飽きません。

●Green Earrings / Steely Dan 
(『The Royal Scam』 / 76年) 
◎Steely Danの曲の中で個人的にベスト5に入る曲。派手な動きは特にないけど、一番影響受けたベースラインかも。

●It's So Obvious That I Love You / Sergio Mendes & Brasil '77
(『Home Cooking』 / 76年)
◎ポップスの中でもChuck Raineyのベースは生き生きしていて、最高のグルーヴを聴かせてくれます。 

It's So Obvious That I Love You / Sergio Mendes & Brasil '77 


小園兼一郎(small garden)
サックス吹きでもありベーシストでもあります。 https://twitter.com/sgs_kozonohttps://smallgardenstudio.jimdo.com/ 



●You've Got a Friend / Roberta Flack 
(『Roberta Flack & Donny Hathaway』 / 72年) 
◎音数の少ないレイドバック気味の前半から後半の16分アプローチの変化が とても自然で心地良く、盛り上げ過ぎない好演です。
チャック参加の全ての曲に言えますが音価の調節に関して右に出るものは いないと思います。

●The Fez / Steely Dan
(『The Royal Scam』 / 76年) 
◎ほぼ固定フレーズの繰り返しであるが「レイドバッカー」としてのチャックの ジャストの演奏が聴けるのはSteely Danだけ(でも絶対に前には出ない)。曲は前半と後半でドラム、ベースの位置がなぜか違うという変わったミックスです。

●Shine Like You Should / Melissa Manchester
(『Don't Cry Out Loud』 / 78年)
◎ジャストビートとシャッフルの中間、絶妙なハネ具合のオブリが満載。 バスドラと合わせる基本形の演奏ながら玄人好みのビート。 チャックのミュート術。

●Green Flower Street / Donald Fagen
(『The Nightfly』/ 82年) 
◎チャックである必要があるのかというビートの曲だが天然のもたり具合を 最大限にソリッドに持っていった曲として有りだと思っています。 オブリやハンマリングは健在なのですがドラムが打ち込みのせいもあって 冷たい印象のチャックということでそれも有りです。

●君がいない / SMAP 
(『SMAP 007 ~ Gold Singer』 / 95年) 
◎バーナード・パーディとJ-popへのアプローチ。音の歯切れ具合は最高です。 要所のフレーズを聴く限り、かなり自由に演奏していると思われるので チャックの魅力が生かされた名演に入れて良いと思います。


Shine Like You Should / Melissa Manchester


【TOMMY (VIVIAN BOYS)】 
オフィシャルサイト: https://twitter.com/VIVIAN_BOYS 



 ●Spanish Twist / The Isley Brothers
 (7”『Twist And Shout』B面/ 62年)
◎Phil Spectorによる「Twist And Shout」初出版を嫌った作者版、のオケ流用。スペクターのスパニッシュ嗜好との因果な曲名。演奏は、後年メロウグルーヴを多産するKing Curtis組やTrade Martinら。

●God Only Knows / Gary McFarland & Co. 
(『Does The Sun Really Shine On The Moon?』/ 68年) 
◎早逝の作・編曲家/ヴィブラフォン奏者のリーダー作、冒頭のThe Beach Boysの屈指曲。自身のSkye Recordsより。収録のチャック作「Three Years Ago」にも注目。

●Most Of All / The Arbors 
(『Featuring: I Can't Quit Her - The Letter』/ 69年) 
◎「Mas Que Nada」で人気だが、チャック参加の本作にもハーモニー・ソフト・サイケの名曲が。1分43秒〜のベースが導く怒涛の昇天ハーモニー。Moonglowsのドゥーワップ曲(55年)が、新たな美しさで再誕。

●Little Girl / Donny Hathaway 
(『Donny Hathaway』/ 71年) 
◎拍最後尾を狙う打点、悠久の白玉、曲想を担うダブルストップ。ダニー絡みならPhil Upchurch『Darkness,Darkness』(Tommy LiPuma、Nick De Caro参加)の「What We Call The Blues」も名演。

●Eloise(First Love)/ The Chuck Rainey Coalition 
(『The Chuck Rainey Coalition』/ 72年) 
◎上述Skye Recordsでのリーダー作より。チャック作曲。69年録音、ニューソウルを遥かに先取る。P-Vine版CDには自ら歌うSteely Dan「Josie」のカヴァー(82年録音)も。 


Most Of All / The Arbors 




【hajimepop】
https://www.hajimepop.com/ 


●Away Away / The Rascals 
(『See』/ 69年)
◎チャックのワン・フィンガー奏法での細かいフレーズは、ラスカルズの作品でも随所で堪能できる。他のセッションより硬質でロック的な音(しかもこの曲はサイケ!)が実に新鮮。

●Until You Come Back to Me /Aretha Franklin
(『Let Me In Your Life』/ 74年)
◎作曲者のスティーヴィー・ワンダー版も素晴らしいけれど、個人的には胸キュンなアレサ版の方が好き。チャックの"語るベース" の不在が大きいのだ。

●I Got Love for You, Ruby / Frankie Valli 
(『Closeup』/ 75年)
◎最近ではあまり聞かれない、美しいメロディをどこまでも展開していくポップスの名曲。歌ものベースのお手本のような素晴らしい演奏だ。

●Wouldn't Matter Where You Are / Minnie Riperton
(『Stay In Love』/ 77年)
◎国内外で盛り上がりを見せる、シティポップの雛形のようなサウンド。チャックをはじめ、各々のパートの圧倒的な演奏で、音楽の魔法が真空パックされたようなトラックだ。

●Bad Weather / Melissa Manchester 
(『Don't Cry Out Loud』78年)
◎大部分のベースをチャックが弾いている、メリサの大傑作から。これはスティーヴィー節全開のシュープリームスのカヴァーだが、管楽器やコーラスなど、本作の特徴であるゴージャスな編曲が堪らない。


Wouldn't Matter Where You Are / Minnie Riperton 


洞澤徹(The Bookmarcs)
https://silentvillage.wixsite.com/horasawa 



●Where is the Love / Roberta Flac & Donny Hathaway 
(『Roberta Flack & Donny Hathaway』 / 72年)
◎軽やかなのに重心がある感じ。2人のソフトな歌い方に寄り添うようなベースのフレー ジングと音色。

●Summer in the City / Quincy Jones
(『You've Got It Bad Girl』 / 73 年)
◎柔らかな音色で朗々と歌い上げるベース。完全に楽曲の中で主役。

●Stick Together / Minnie Riperton
(『Stay in Love』/ 77年)
◎Chuck Rainey の中ではゴリゴリ感が強い。らしい独特なラインがクセになるダンスナ ンバー。

●Dream On / Bill LaBounty
(『Bill LaBounty』/ 82年)
◎このテンポ、切ないコード感とマッチして数あるAORの良曲の中でもすこぶる気持ち良 いタイム感。Jeff PorcaroとChuck Raineyのコンビネーションが、何を上にのっけても 気持ちよくなるくらいに素晴らしいからだろう。

●I Want You / Chuck Rainey/David T. Walker Band
(『Chuck Rainey / David T. Walker Band』/ 94年)
◎Chuck Raineyのベースに呼応するかのようなDavid.Tのギターのオブリガードがいちい ちグッとくる。このベースがなかったら生まれないであろうフレーズの数々。 


I Want You / Chuck Rainey/David T. Walker Band


【松木MAKKIN俊郎(Makkin & the new music stuff / 流線形 etc)】
http://blog.livedoor.jp/soulbass77/


● Len Novy / Think About It 
(『No Explanations』/1969年) 
◎まず自分内ルールでソウル/ジャズ系を選外としたことをお断りしておきます。これは一発目のボン!という重たい響きから、全体をコード弾きで彩った浮遊感ある演奏へ。 60年代フォークシンガーの作品とは思えない先進性に舌を巻く。

●Hirth Martinez / Djinji 
(『Hirth From Earth』/1975年) 
◎ミュートの効いた音色にワンフィンガーピッキングのニュアンス。3度へのアプローチや繊細なヴィブラート。ソウルベースの何たるかを語り尽くす。

●Leo Sayer / You Make Me Feel Like Dancing
(『Endless Flight』/1976年) 
◎ここにチャックを連れてきた人選の妙。シンプルだが、まさに踊るかのような演奏。楽曲を表現した演奏というより、まるでチャック・レイニー讃歌のようにも聴こえる。堂々の全米No.1ヒット。

●Laura Allan / Yes I Do
 (『 Laura Allan 』/1978年) 
◎シンプルな楽曲と編成だからこそ、メロディやビートに対するチャックのアプローチの基本形がしっかりと残されているという、実は貴重なテイク。教科書のように完璧なラインだが、そのサウンドは決して真似できない。

●Marc Jordan / Marina Del Rey
(『Mannequin』/1978年) 
◎ツボを心得た演奏…と言うとありきたり過ぎるが、まさにツボと言うツボをひたすら押してくるような演奏。歌うようなラインに、音の切り方、ゴーストノート。スチールパンの音色と相俟って夢心地に誘う。


Marc Jordan / Marina Del Rey 


ウチタカヒデ(WebVANDA管理人)】 

●See / The Rascals 
(『See』/ 69年)
◎ヤング・ラスカルズ時代からセッションマンとしてレコーディングに参加していたが、この曲はフェリックス・キャヴァリエのワンマン・バンド化した末期アルバムのサイケデリック・ソウルな先行シングルだ。手数が多いながらもハーモニーを邪魔しないチャックらしいプレイが聴ける。

●Now Is The Time / The Free Design
(『Heaven/Earth』/ 69年)
◎高度で複雑なコーラス・ワークでソフトロック・ファンには特別な存在である、クリス率いるデドリック兄弟のグループのサード・アルバムを代表する1曲。東海岸の技巧派ジャズ・プレイヤーが多く参加した中で、チャックの有機的なベース・プレイはサウンドの中で素晴らしく機能している。

●Kid Charlemagne / Steely Dan
(『The Royal Scam』/ 76年)
◎チャックの名を上げた説明不要な名演中の一曲。グルーヴのトリガーはバーナード・パーディのラテンファンク・スタイルのドラミングだが、トニック~5度~トニックを繰り返すチャックのベースラインが、えも言えぬ快感を生んでいる。このアルバムでのパーディとのリズム隊はいずれも国宝級の名演だ。

●Sweet Sadie The Savior / Patti Austin
(『End Of A Rainbow』/ 76年)
◎スティーヴ・ガッド、エリック・ゲイル、リチャード・ティーというスタッフのメンバー達にチャックが加わったリズム・セクションの名演。特に3分08秒の所謂スタッフ・スイングするパートからは、ゴードン・エドワーズには出せない緻密なグルーヴの核となっている。

●Some People Can Do What They Like / Robert Palmer
(『Some People Can Do What They Like』/ 76年)
◎ミーターズやリトル・フィートにバッキングをオファーし独自のファンク・サウンドを追求した英国ブルーアイドソウル・シンガーの3作目のタイトル曲。ハイハット・ワークからジェフ・ポーカロのドラミングだが、それに呼応し激しくシンコペートするチャックのプレイがとにかく白眉である。


Sweet Sadie The Savior / Patti Austin



(企画 / 編集:ウチタカヒデ)

2019年7月13日土曜日

SOLEIL:『LOLLIPOP SIXTEEN』(VICL-65209)リリース ☆フレネシ・インタビュー


60’モッズ・サウンドをベースに若干15歳の美少女ボーカリスト“それいゆ”を擁するバンド、SOLEIL(ソレイユ)がサード・アルバム『LOLLIPOP SIXTEEN』を7月17日にリリースする。
このバンドは元ザ・ファントムギフトのベーシスト、サリー久保田を中心に結成され、それいゆのルックスとコケティッシュなボーカルで、多くのガールポップ・ファンを魅了している。
現正式メンバーは、それいゆとサリー久保田の2名になったが、弊サイトではお馴染みのザ・ペンフレンドクラブを率いる平川雄一がサポート・ギタリストとしてツアーに同行しているのは注目したい。

アルバム毎に参加している作家陣も実に多彩なのだが、本作にも筆者が高く評価しているガール・グループRYUTistの『青空シグナル』(18年5月)や『黄昏のダイアリー』(18年11月)を手掛けたTWEEDEESの沖井礼二と清浦夏実をはじめ、カーネーションの直枝政広、森若香織、高浪慶太郎、マイクロスターの佐藤清喜と飯泉裕子、のん(能年玲奈)、そしてフレネシらが楽曲を提供しており人選も非常に興味深い。全12曲中2曲はカバー曲で、フランス・ギャルの「Zozoi」(70年)、イモ欽トリオの「ハイスクールララバイ」(81年/作詞:松本隆、作曲:細野晴臣)を収録している。

冒頭からTWEEDEES組による「ファズる心」(フランス・ギャルの「ジャズる心」のもじりか?)は、Cymbals時代の沖井の作風が色濃く出たハイブリッドなモッズ・ポップで、SOLEILの魅力を引き出している。

メロトロンガール

7インチ・シングルカットされたリード・トラックで作編曲家の岡田ユミがソングライティングを手掛けた「メロトロンガール」は、サイケデリックな上物にモータウン・ビート(まるでH=D=H風だ)をぶつけて完成度の高いガール・ポップに仕上げている。

アルバム中VANDA的にチェックすべき曲は、マイクロスター組が手掛けた「Red Balloon」ではないだろうか。サウンドやアレンジは中期ビートルズのサイケデリック風味だが、メロディ・センスにはトニー・マコウレイに通じる。
歌詞と共に『microstar album』(08年)収録の「東京の空から」を彷彿とさせて好きにならずにいられない。

さてここでは、このアルバムに楽曲提供し筆者が監修したインディーズ・コンピ『Easy Living Vol.1』(06年)以来交流がある、女性シンガー・ソングライターのフレネシに、本作についてのインタビューをおおくりしよう。


フレネシ

●まずは今回SOLEIL(ソレイユ)のサード・アルバムとなる本作に楽曲提供した経緯を教えて下さい。
やはりボーカルのそれいゆさんがフレネシさんのファンを公言していたことが、大きなきっかけでしょうか?

フレネシ:ありがたいことに、そのようで…。全然存じずインタビュー記事を何気なく読んでいたら、突然「フレネシさんの…」と出てきて、思いっきり茶を噴きました。

それから、これはあんまり関係ないかもしれませんが、それいゆちゃんのお母様が私の母校の先輩と伺って、大変な親近感を覚えました。「学校近くのアイスもなか屋さん、閉店したんですってね」など…音楽と無関係な話をするなど。

●これまでも朝ドラで女優として一躍有名になり現在はミュージシャン活動もして、なんとこのアルバムにも楽曲提供している、のんさんがファンであることを公言されていましたが、こういうリスペクトに対してどう思われますか? 

最近では、ウワノソラの角谷君シンリズム君も学生時代にフレネシさんのアルバムを愛聴していたことが判明しましたね。

フレネシ:「全部夢じゃないだろうか?」と思うくらい、会う方に認知されていて、そういうことがあるたび驚いています。

私のアーティスト性には、ずば抜けてうまかったり、ずば抜けてキャッチーだったり、といった、ずば抜けている要素がこれといってあるわけではないので…数ある好きな音楽の1つに入れてもらえているだけでも、光栄なことですね。

●楽曲提供する以前からSOLEILのアルバムは聴いていましたか? 


フレネシ:PVは見ていました。「魔法を信じる」を聴いたとき、これはTEDDY RANDAZZOの「Trick or Treat」(66年)だ!とすぐにピンときて。サリーさんとお会いした際、真っ先にその話をしました。


●「魔法を信じる」は18年のファースト・アルバムのリード・トラックですね。サリー久保田さんらしいアレンジは、モッズ経由モータウンの所謂ジェームス・ジェマーソンの三連ベースラインで、TEDDY RANDAZZO & ALL 6のオリジナル・サウンドと異なるから気付く人は少ないかもしれませんね。

ではメジャー・デビュー時からご存じだったということですか?

フレネシ:すみません、デビュー当時は存じず…。後追いでMVを視聴しました。

この時代感と世界観がこんなにハマっていて、この若さ?と衝撃でした。


●続いてフレネシさんが今回提供された「アナクロ少女」のソングライティングについて聞かせ下さい。

それいゆさん側からはどのようなリクエストがありましたか?

フレネシ:ファーストの『キュプラ』(09年)の「仮想過去」のような曲が良いと具体的にリクエストをいただいたので、とても作りやすかったです。

「なんでもいい」と言われると逆に困ってしまいますね。アウトのラインが分からなくて。

●「仮想過去」のオリジナルは、古くはConnie Francisの「Lipstick On Your Collar(カラーに口紅)」(59年)に通じる50年代ロックンロール・ベースのポップスで、『キュプラ』の収録曲の中では、比較的ストレートなアレンジのサウンドですが、この曲に注目した、それいゆさんの趣向が垣間見られて面白いですね。


フレネシ:そうですね。MVがあるわけでもない、ちょっと異端なこの曲をあえて選んでくださったのは、私としては意外でした。


●デモ制作中のエピソードがあればお聞かせ下さい。  


フレネシ:育児・復職中でとにかく時間がなくて…詞が思い浮かんだ時点で作曲も並行して行い、およそ1日で完成させました。

ちょっと前に種村季弘の「アナクロニズム」を再読していて、引用などはないですが、今作のテーマになっています。

●ストック曲ではなさそうですが、約1日で完成させたのはさすがです。

サビのメロディ・センスが、セルジュ・ゲンスブールが手掛けていた頃のフランス・ギャルを彷彿とさせていい曲です。
サリー久保田さんのアレンジは、デモの時点からどのようにモディファイされていますか?

フレネシ:基本のビートのループにコード、メロディ、歌詞と符割までが私の仕事で、アレンジは全面的にお任せでした。イントロには驚かされました。


 ●ご自分の提供曲以外で気になった楽曲はありますか?


フレネシ:「ハイスクールララバイ」と「Zozoi」のカバー、最高ですね!カバーのチョイスって重要ですよね。アルバムの振れ幅を示す指標の一つだと思っています。


 
ハイスクールララバイ

●ギャルの「zozoi」カバーは、アルバム音源入手後一聴して注目しました。それいゆさんの声質や発声がこの曲とサウンドにかなりハマっていました。本当に素晴らしいカバー・センスだと思います。7インチ・シングルで欲しいですよ(笑)。
フレネシさん提供の「アナクロ少女」のメロディ・センスも含め、60’Sフレンチ・ポップ路線の成果が今後の活動の試金石ともなりそうですね。

フレネシ:そうですね。このラインから大きく逸脱したそれいゆちゃんも見てみたかったりします、個人的には。


●最後にフレンシさんが感じた、本作『LOLLIPOP SIXTEEN』の魅力を語って下さい。

フレネシ:豪華すぎる作家陣に加えていただいて本当に光栄です。これほど多様な楽曲が集まっていながら、アレンジの力か、SOLEILカラーにまとまっているのがすごいですね。 それいゆちゃんの天然なのか計算なのか分からない表現力の素晴らしさにも驚かされました。
(インタビュー設問作成/文:ウチタカヒデ)


2019年7月6日土曜日

The Pen Friend Club新メンバー・ミニインタビュー

中央が新メンバーの”そい”

6月19日にファーストからフォースまでの初期アルバム4枚のリミックス&リマスターを新装リリースしたばかりのThe Pen Friend Club(ザ・ペンフレンドクラブ)に、新しいキーボーディストの”そい”が加入した。正式加入は7月1日付で、オルガンとピアノにコーラスを担当するということだ。
弊サイトでは独占ミニインタビューをおおくりする。

●まずはペンフレンドクラブに新加入したきっかけをお聞かせ下さい。

そい:一昨年の8月にボーカルの藤本さんとソロのライブ・イベントでご一緒し、その時にお客さんでいらしていた平川さんや、ペンフレンドクラブのファンの方々と交流したのが出会いの始まりです。
そのあと昨年11月3日のレコードの日イベントにおじゃましたり、ライブを見に行ったりして遊んでもらっているうちに、ちゃっかり仲間入りしてました!


● ペンフレンドクラブの曲でお好きな曲を挙げて下さい。またその理由を教えて下さい。

そい:聴くほど、あれもこれも良いってなるんですが・・・オリジナルから厳選して2曲。

「微笑んで」『Wonderful World Of The Pen Friend Club』収録 17年)
ペンフレンドクラブの中で初めて聴いた曲で、しばらく脳内のBGMになっていた曲です。ラジオから流れてきそうな良い具合に湿った感じのイントロとか、微笑んでろうそくの火を消しちゃうような歌詞もお気に入りです!

「まばたき」『Garden Of The Pen Friend Club』収録 18年)
RYUTist版(わたしのこみち)も可愛くて好きなんですが、キラキラした情景の中で小さな男の子が走り抜けてるような軽やかなメロディと音の輝きと歌詞が大好きです。自分も走り出したくなります!(笑)


● ペンフレンドクラブ以外で、個人的によく聴くアーティストの曲を挙げて下さい。

そい:90年代ビーイング系アーティストが大好きで、特にZARDさんやGARNETCROWさん、小松未歩さんなどを聴いて育ちました。
最近はペンフレンドクラブの影響で、ずっとビーチボーイズさんを聴いており夏気分真っ盛りです〜♬



●最後にペンフレンドクラブに新加入しての意気込みをお聞かせ下さい。

そい:大好きな人達と、大好きな音楽を、楽しみながら、がんばります!!!!!

※彼女を新メンバーに加えた新生ペンフレンドクラブのお披露目ライブは、下記のライヴイベントになるので、気になった読者は是非足を運んで欲しい。



【Add Some Music To Your Day Vol.23】
日時:8/10(土) Open/Start・18:00
開場:吉祥寺ichibee
Charge:1500円+1d (ご予約不要)

出演
The Pen Friend Club
SMART SOUL CONNECTION
THE MOUSE
Seeek Me Darling
The Arts

DJ
Morrie Morissette

(テキスト:ウチタカヒデ)

2019年6月25日火曜日

ウワノソラ:『夜霧』(UWAN-004)リリース・インタビュー後編


前編に続いて、サード・アルバム『夜霧(よぎり)』を6月26日にリリースする、ウワノソラのメンバーにおこなったインタビューの後編をおおくりする。

●レコーディングの時期と今回参加したミュージシャンの紹介と各自のエピソードを聞かせて下さい。

角谷:レコーディング時期は18年の9月から19年の3月末まででした。 各参加ミュージシャンの方と共にエピソードに触れていきます。
(回答:角谷博栄、いえもとめぐみ) 



深町仰君
ファーストからずっとコーラスや管弦アレンジ面で手伝ってもらっています。共同生活では基本僕が夕飯を作っていまして、いつも割と量を多く作っていたので見事に太らせることに成功しました。
彼が買っていた“うまかっちゃん”というソウルフード的インスタントラーメンを僕が食べてしまった時は、すごく悲しそうにしていました。

熊代崇人君 
ファーストからずっとベースを弾いてもらっています。関西で引っ張りだこのプレイヤーです。
大晦日、一人で作業していまして、年が明けたあとすぐに車で駆けつけてくれまして、年越しそばと称する“ペヤングGIGAマックス”をくれました。一年に3回ぐらいしかスラップはしないというベーシストです。

玉田和平君 
パーカッションとエンジニアをやってもらっております。ボンゴを買って、録音したいから叩いて、と元旦から録音を手伝ってもらったりしておりました。
ミックス作業は2か月間ほぼ毎日電話やメールをしながら遠隔で基本、夜12時から朝6時まで行い、細かい微細なものまですべて対応してもらい感謝しております。”今まで1000バンド以上録音してるけど、キツい仕事ランキングベスト3に『陽だまり』と『夜霧』が見事に入っているよ”と言っておりました。

越智祐介さん
ファーストでドラムを数曲担当して頂いておりまして、今回全ての楽曲でお願いすることになりました。 楠瀬誠志郎さんのバンドをはじめ、いろいろなサポート活動などでご活躍されております。東京在住なので、遥々大阪までレコーディングをしに同伴して下さいました。素晴らしい演奏をして下さいました。

杉山悟史さん
今回ほぼ全てで鍵盤を担当してくださいました。関西若手ではNo1プレイヤーでは、と思っております。
情熱的で、深夜まで続いたレコーディングでも素晴らしい演奏を連発して下さいました。録音させてもらった後に、 “大量の資料や楽譜が送られてきて、これはガチだと思った”と仰っておりました(笑)。

宮脇翔平君
ファーストから鍵盤を担当してもらっております。現在は小坂忠さんのアルバム参加をはじめ、東京にてサポートや自身のプロジェクトで活躍しております。
今回は鍵盤では1曲のみの参加でしたが、曲の相談をしたりとちょいちょい助けられておりました。

難波大介君
大学の後輩のギタリストで現在は講師や演奏中心に活躍しております。 ラインと天才的なタイム感に大学の頃から惚れ込み、何かあるとお願いしております。
「ホテル70」のソロは彼が22歳の時にデモの音源で演奏していたソロをそのまま使っております。

横山貴生さん
67’以降サックスソロやフルートソロは横山さんにお願いしております。 プレイも毎回感動させて頂いております。関西の大御所で、演奏活動や、レコーディング、NHKなどでの演奏など幅広く活躍されております。僕の周りのミュージシャンたちは“GOD”と呼んでおります。
お人柄も全てにおいて尊敬しております。今回、録音の合間に、音楽を辞めようと思った事はないのですか。との僕の問に、 “そんなのはいつだって思っている”と仰られていて、こんな凄いミュージシャンでもそれを考えるんだと、少し親近感といいますか安心したり、演奏において“僕は後ろを向いている人が振り向くような演奏したいといつも思っている”、”全ての音楽から勉強できるし僕はまだまだ勉強途中なんだ”、などすごく考えさせられるような、もちろんそれが普通かもしれませんが、僕にとって沢山の有り難い事を仰ってくれる師匠的な存在です。
それでいて”ビール一杯で僕は何でもやります”的な事を仰られる気さくで腰の低い方で、粋さに毎回惚れ惚れしてしまっています。そうでなければ名もないギャラもちゃんと支払われるかも分からないようなウワノソラ’67からなんて参加してくれていません。
ウワノソラはそういう方の音楽愛に支えられ表現をする事が出来たバンドなのです。和光堂人。僕の中では”実るほど頭を垂れる稲穂かな”ということわざがお似合いすぎる人生の先輩です。



杉野幹起君
関西で活躍中のサックスプレーヤーです。2015年のウワノソラのライブで「ロキシーについて」のソロが杉野の人生のMAXだったとの声が未だに周りからあります(笑)。今回録音ではソロを取ってはいませんが彼のソロが好きなのです。
今年の8月のライブでも彼がサポートしてくれるのでソロを楽しみにしております。

横尾昌二郎さん
関西若手トランペットではNo.1プレイヤーではないでしょうか。演奏活動や自身のプロジェクト、今年なにわJAZZ大賞を受賞していたりと大活躍されております。
録音においても、事前にブラス隊のみで集まり練習して下さるなど、グッときた事がありました。
『陽だまり』の「パールブリッジを渡ったら」では横尾さんのかっこいいソロが聴けます。横尾さん主催のビッグバンド“YOKOO BB”は動画もYOUTUBEで見られますね。今年、250名~500名のビックバンドの指揮をされる予定で、それでギネス記録に挑戦する、という面白い事もやられていて、都合よく関西にいたらそのステージ絶対見たいと思っております。

磯野展輝君
今回最年少のトロンボーンのサポートプレーヤーです。ブラスの合同練習はまさかの彼の自宅スタジオで行いました。
楽曲でもかなりハイノートがありますが見事に演奏して頂けました。「陽だまり」でも参加して頂いております。
まだ彼のライブにはいったことが無いので、いつか行きたいです。


蝶の刺青
福神陽香さん
大学の後輩のホルン奏者で、卒業してから存在を知り『陽だまり』制作に参加して頂いております。
現在和歌山在住で、わざわざ1曲の為に大阪まで来てくれました。ライブよりレコーディングの方が緊張すると、スタジオでストレッチを入念にしていたのが印象的でした。「蝶の刺青」ではトロンボーンとホルンのユニゾンで理想の音像が作ることが出来ました。

松本尚子さん
今回初めて制作に参加して頂きました。数々の賞を受賞されている大阪で活躍されているバイオリニストで、難しい譜面も難なく演奏して頂けました。
容姿端麗にしてバイオリンを弾いている姿と出音の良さが相まって、ずっとソワソワ、クラクラ、ドキドキしておりました。

中塚哲司さん
ファーストからすべてのアルバムでビオラ演奏をサポートして下さっている先輩です。頼り続けています。
生涯現役を胸に掲げ、音楽と猫に果てしない愛情を注ぎながら、ロシア民謡をベースとする自身のバンドや講師などでご活躍されております。
録音の後、セッションに行く際、「隕石のラブソング」のフレーズが気に入ったから今日はこのフレーズをソロでやりまくるわ!と仰られていて、後日お話を聞くと本当にずっとソロで演奏されていたようです(笑)。車の中がめちゃくちゃ汚いことで僕の中で有名です。

玉木俊太君
『陽だまり』からチェリストとして参加して頂いています。現在は関西フィルハーモニー管弦楽団で活躍しております。
普段はフットサルとサッカーの事をほぼ考え、移動中はサッカーゲームとの徹底ぶりで、感心させられました。 ピッチの良さに毎度救われています。

福田直木君
AOR界の愛の伝道師。バンド、ブルーペパーズやラジオDJなどでも活躍中です。
「ロキシーについて」でコーラスとリハモを担当してくれました。録音ではコーラスラインをあっという間に紙にメモし、1時間もかからず終わりました。録音後はいつものお薦め曲の紹介のし合い。楽しかったです。



桶田知道君
元ウワノソラ、現在は“陸の孤島の電子歌謡”を掲げ、アルバムや楽曲制作をし、ソロで活躍しております。
今回は「夜の白鳥」のコンポーズで参加。2015年に彼が『夜霧』の為に作曲してあった曲をやっと今回レコーディングいたしました。独特のメロディラインと歌詞の世界観、本当に桶田だけのものなんだなぁと改めて思いました。

宇都宮泰さん
音楽家として音楽プロデューサーとして1970年代より活動されていて、プロジェクト毎に独自の音楽理論を展開し音楽表現に直結した音響システムを開発・導入されるなど、音響の鬼才と称される方です。
67’からマスタリングアドバイザーとして教えをご教授して頂いております。毎度、新たなる課題を提示して頂き、いつも自分はまだまだ未熟だと感じさせて頂いております。

角谷:ご参加して下さったミュージシャンの方々には毎回本当に感謝させて頂いております。 何十年間も音楽や楽器、演奏に人生をかけ、考えてこられた方の一音には物凄い重みがあります。
そんな方々の音が絡み合い、今作のサウンドになっている事。本当に光栄でなりません。勿論僕は宅禄で作られた音楽も好きで、その音を否定しているつもりは毛頭ありません。いずれやってみたいとも思っておりますし。 “有難うございました。それじゃまた何かありましたら宜しくお願いします”といってミュージシャンの背中を見送りサヨナラをするのですが、内心、もしかすると、これが最後になってしまうんだなぁ、なんてことを毎回思っております。
大資本に支えられているわけでもなく、インディーレーベルでもなく、ウワノソラは自主制作なので、そんな時、一瞬のセンチメンタルに苛まれていたりもしておりました。

●参加ミュージシャンの方、一人一人に対する感謝の気持ちが強く伝わりました。 今後もこの方々とクリエイティヴなサウンドを作り続けて下さい。

角谷:まだまだ表現したい事が沢山あるので、僕もいえもとさんも限りゆくまで頑張りたいと思っています!宜しくお願いします。

●このリリースに関係したレコ発ライブをご紹介下さい。

角谷:7月7日に渋谷のタワーレコードでインストア、トークショウがあります。 8月3日に青山、”月見ル君想フ”にて、初のワンマンライブがあります。

◎Pied Piper House presents ウワノソラ『夜霧』
 発売記念トーク+ミニライヴ+サイン会
開催日時:2019年 7月 7日(日) 15:00
場所:渋谷店 タワーレコード渋谷店6F Pied Piper House https://tower.jp/store/event/2019/07/003033

◎ウワノソラ – 7YEARS LIVE –
開催日時:2019年 8月 3日(土) 開場17:30分 開演 18:30分
場所:青山 月見ル君想フ
http://www.moonromantic.com/?p=40562


●最後に本作『夜霧』の魅力を挙げてアピールして下さい。

角谷:午前二時。田舎に近い郊外。アスファルトの表層1cmから薄っすらと立ち込めた夜霧が一瞬、艶っと光る。
それを密閉した感じのアルバム、でしょうか...。魅力は、完全なリスナーの方の聴いて頂いた主観が全てなので。良いでも悪いでもあると。 やっぱりちゃんと試聴しないと損する方もおられると思います。楽しめる方も。

いえもと:今回はテーマが「夜」に統一されていますが、色気や清らかさなど様々な「夜」を楽しんでいただけるかと思います。
数年前に制作されていた曲もようやく皆さんに聴いていただけることになり嬉しいです。
今までとはまた違った作品になっているので、是非聴いてみてください。

◎ウワノソラ・オンラインストア・リンク 
【オンラインストアでご購入の方で希望者にはサインをお入れします】https://uwanosoraofficial.stores.jp/items/5ce79e9a0b9211098e15afaf

◎アルバム扱い店舗リスト
パイドパイパーハウス(東京)
ペットサウンズレコード(東京)
CD屋(沖縄)
ジャンゴレコード(奈良)
ディスクブルーベリー(東京)
六本松蔦屋書店(福岡)
タワーレコード各店舗
デシネ・ショップ (dessinee shop)
今井書店(鳥取)
他各店舗

(インタビュー設問作成/編集:ウチタカヒデ)


2019年6月23日日曜日

ウワノソラ:『夜霧』(UWAN-004)リリース・インタビュー前編


2017年のセカンド・アルバム『陽だまり』(UWAN-003)と翌年の同アナログ盤(Kissing Fish Records/KMKN13)が記憶に新しい、ウワノソラが待望のサード・アルバム『夜霧(よぎり)』を6月26日にリリースする。 
17年8月以降ギターとソングライティング、プロデューサーでもある角谷博栄と、ヴォーカリストのいえもとめぐみの2人組となって本作で2作目になるが、14年のアルバム・デビュー以来、シティ・ポップからスタートし様々なジャンルのエッセンスを内包しながら成長してきたそのサウンドは、拘り派の音楽ファンにとって、特別な存在になったと言える。
ここでは本作の制作経緯について、メンバー二人におこなったインタビューを前編と後編に分けて掲載する。


●サード・アルバムのリリースおめでとうございます。 当初はセカンド・アルバム『陽だまり』と2枚組で発表する予定だったらしいですが、どういった経緯でそのようなリリースを計画し、また分割することになったのでしょうか? 

角谷:有難うございます。学生時代に作っていた曲が複数ありまして、それをリリース出来たらとずっと考えておりました。
曲数が多いため、それを詞の中の時間軸で分け、分割する事となりました。
2枚組ではなく『陽だまり』と『夜霧』という2部作になった事に関しましては、予算が作れないので全てをレコーディング出来なかった、という理由です。 

●成る程、歌詞の内容で時間軸を分けるという発想はいいアイディアですね。学生時代に作っていた曲のストック数が気になるので教えて下さい。

角谷:ストック数は、ウワノソラ’67、陽だまり、夜霧でほぼほぼ全てです。やっと学生時代の構想の縛りが終わりました。

●前作に比べて、70年代ニューソウルやブルーアイドソウル~AOR色が濃いですね。 アルバムのコンセプトやトータリティーを考えての判断でしょうか?

角谷:「夜霧」という漠然としたコンセプトの元、そのような雰囲気になったように感じております。AOR(特に80年代のAOR)とは別物で、強いて言えばプレAORでしょうか。
ただ、ニューソウルもブルーアイドソウルにもなっていない歪な物(過去にも現在にも属せない良くも悪くもウワノソラのサウンド) がまた出来てしまった、というのが完成した後の僕の印象です。

●「歪な物」って表現は、日本人ならではの解釈でオリジナルとは異なるテイストになってしまったということでしょうか?

角谷:演奏面では勿論そういった事もありますし、70’s、80’sはそれがメインカルチャーとしてあったので、売れるものをやる、というその資本主義的な音楽を作る動機や思想からも逸脱しているという話です。
勿論録音環境も違いますので、サウンド面でも大きく違う。
そして現在のポップスカルチャーともあまり交わっていないという、浮遊している感じで。ポップスっぽいとしか言えないといいますか。
精神構造でも、音響面でも理想としているものと比べた場合、歪ということです。
結局自分が表現したいことしか出来ないし、やる意味も感じないので、しょうがないのですけど。

●ソングライティングの時期について、ファースト・アルバム以前の学生時代に作った曲が含まれているとか。曲作りのエピソードを聞かせ下さい。 

 「Sweet Serenade」
角谷:この曲は僕が大学2年生の春。1か月ぐらい病気で入院することがありました。早稲田の国立国際医療センターの十何階。周りの友人達は大阪で映画とかを楽しそうに制作しているのに、自分は東京に帰り、何もできない。作れないことが悔しくて、ですね。
そしてその病室からの夜景が非日常的に美しくて。そんなものに感化されながら、真夜中に小さな中古のMIDIキーボードを、病院食を置く小さなテーブルに乗せて、点滴を腕からぶら下げたまま、メロを作っていき制作をしていました。デモではスネアは2拍目と4拍目についていましたが、2拍目だけにしたりと他にも諸々変更をしました。 

●昨年7月に某飲み会で仮ミックスを聴かせてもらいましたが、大学2年生の頃作った曲とは思えない完成度でしたよ。一聴してマーヴィン・ゲイがレオン・ウェアのプロデュースで作った「I Want You」へのオマージュと分かりましたが、演奏力、表現力が伴わないとこのグルーヴにならないからレコーディングでは苦労したんではないですか?

角谷:あまり苦労はしていません。9割はプリプロで出来ていましたので。ただ上物が凄く多いので、リズム隊がシンプルになった分、スッキリ具合は出たかな、といった印象です。
この曲は2015年に実はMVを撮ってもらっていまして、一度だけ2016年に韓国の映像祭に招待され上映されているのです。
そのMVを公開できない事が監督へ申し訳ない気持ちです。

「ロキシーについて」
角谷:この曲は2014年、ファーストをリリースする前に作っていた曲です。スティーリーダン(以下SD)が好きで。その感情に任せ作った記憶があります。
僕の中でSDは特に鶴橋の飲み屋街にマッチしていて、飲み歩いた後に聴くと最高でした。2015年のライブでも演奏しています。
それを伊豆在住の頃に家に遊びに来てくれたブルーペパーズの福田君に聴いてもらいまして。彼はDoctor Wu!Doctor Wu !と言って、ニヤニヤと。 彼自身もSDの影響を感じられる楽曲がありまして。それから福田君ならどんなハーモ二―を付けるだろうか、という思いになりました。そして去年リハーモナイズをお願いし、今年コーラスでも参加してもらいました。
SAXソロは2014年のデモ録音をそのまま使用しております。 ドラマーの越智さんはレック後、ボソッと、“俺、パーディ・シャッフルを今年世界一練習した人だと思う”、と仰っておりました。


●今回のマスタリング音源を聴いて、そのスティーリーダン趣味に唸りました。イントロは「Doctor Wu」(『Katy Lied』収録 75年)だけど、本編は「Home At Last」(『Aja』収録 77年)へのオマージュという。
ドラマーの方のコメント通り、この曲ではバーナード・パーディが叩いていて、その貢献度から作曲クレジットまで要求したという。(笑)
アレンジした当初からこの重たいシャッフルのリズムで着想していた訳ですね? 

角谷:アレンジに関してはそうです。当時の想いのままです。こういう事はもうしない気がしています。

「夜霧の恋人たち-Interlude-」
角谷:かなり転調を繰り返し、調がずっと浮遊して定まらないような曲です。 去年18年の冬から19年の2月まで、2か月間。コーラス、弦管共同アレンジの深町君とアレンジ&レコーディング合宿をしておりました。
かなり音楽思考的に寄り添えていたつもりでおりました。しかし、コーラスレックの際“もう二度とこんな曲作ってこられてもコーラスしない”とまで言われてしまった曲です。キーが変動していくので、コーラスの際、譜面があれけど物凄く難しいのです。この和声を含めて表現したかったものだったので、すまなかった、という思いです。
おかげで良い感じになったと思っています。サックスの横山さんも最高なプレイをして下さいました。着想は、Lampの染谷さんが”これね、人生を変えてしまう俺のセレクト曲集(^^♪”と、曲を複数送って下さった事があり、その中に入っていたNivaldo Ornelasという人に感銘を受けまして。早速アルバムを購入したところ他にも沢山グッとくるものがあり、そこから着想を得ました。

●3分少しの曲だけど難解なコード・プログレッションが印象的ですね。キー・チェンジしているのに流れるようにコーラスするのは非常に難しいでしょう。
着想元のNivaldo Ornelas(ニヴァルド・オルネイラス)は、エルメート・パスコアルのバンド・メンバーとして知られ、ミナス派のサックス奏者でもありますね。僕は70年代中期のエドゥ・ロボやエグベルト・ジスモンチ、トニーニョ・オルタのセカンドでそのプレイは耳にしていましたが、ソロ作は聴いていないのでお勧めのアルバムを紹介して下さい。


角谷:『A tarde』(SY 33101/82年) 『Viagem atraves de um sonho』(LPVR 017/80年)です。
僕の持っているものは2イン1でした。

「隕石のラブソング」 
角谷:この曲と、「蝶の刺青」、「マーヴィンかけて」が僕の中で去年制作した新作というような感覚です。
「ピクニックは嵐の中で」(『ウワノソラ』収録 2014年)のようなSFチックなものが好きで、これもそんな雰囲気の物をと制作しておりました。 作詞に関しまして、曲調はハッピーなのに詞は悲しい、という対比が好きで、これは黒沢明さん他、映画における対位法から影響を受けました。
一昨年から東京に戻り、東京で仕事をしていまして、そうするとやっぱりどうしても相いれない人には出会います。そういうのも含め仕事なんだ、と割り切れる一方で、思う事も多々ありまして。
そんな小さなことから、現在のネット社会で、傷つけあう様を多く目にしたり。毎日流れてくる悲惨なニュース。もちろん終わらない戦争も。どうすればいいのか分からないまま受け入れるしかないのですが。
そこで、地球に隕石を落としちゃえ、となりまして。自分の詞の中でだけでも、全人類が隕石を見つめる、一瞬でも平和な空間を作ってみたかったのです。
しかし、MV制作時、監督の菅野君に“隕石が降ってきてジョークをかます感覚は心に余裕がある人のみで、もっと醜い何かが起きるよ”と言われハッとさせられました。確かにそんな甘くもないなぁと。彼は僕なんかよりずっと大人で、ちゃんと世界を観ているんだなぁと感じさせられたりしておりました。

 ●歌詞を創作する上のエピソードが実に深いですね。 初めてラフミックス音源を聴かせてもらった時からこの曲がアルバム中で最も惹かれました。
“予報通り地球に衝突する 生き物はみんな消えてしまうらしい”という冒頭のいきなり衝撃的且つシュールなラインと、甘美な旋律のコントラストがなんとも言えないですよ。嘗ての「ピクニックは嵐の中で」を聴いた時も同じ様なイメージを受けましたが、このスタイルは元々角谷君も好んでいた着想だったんですね?

角谷:友人でこの類の詞が好きな人が何人かいまして。 他の詞の重苦しかったり、詞の中の2人の世界のストーリーテリング系では、ふーん、となってしまうのにSFだけ反応を示す数人の友人の影響が動機の一つかもしれません。 
「ピクニックは嵐の中で」もそうですが、最初インパクトはないものの、後々、よく聴く曲だなと思ったりしたことがありまして。何というか分かりませんがこの詞風の感じは好きです。無欲な感じがしまして。
詞の登場人物も奥のコンポーズの自分自身も。 それが同世代の感じなのかも、とも少し感じでおります。
しかし、「キールのグラスを頬に充てて、ホンキ?と笑ったマーメイド」のバブリーな感じだったりとか、ユーミンや隆(松本 隆)さんもそうですし、CMのキャッチコピーだと、オリンパス OM10「好きだと言うかわりに、シャッターを押した」的なものは相変わらずキュンキュンきてしまい、ずっと大好きです。
その感覚を同世代、上の世代でも分かり合えたことは残念ながらほぼ無いです。友達募集中です。 



隕石のラブソング


●本アルバム制作中に、イメージ作りで聴いていた曲をお二人各5曲選んで下さい。



角谷博栄 
○ I Want You / Marvin Gaye 
○ Do What Comes Natural / Gene Chandler 
○ ジェニーMy Love / 井上陽水 
 これは恋ではない / Pizzicato Five
○ Quiet Storm / Smokey Robinson

いえもとめぐみ
○ Wish Upon A Star / Franne Golde
○ Lord We Believe / Kristle Murden
○ Here We Go / Minnie Riperton
○ Blush / Mr Twin Sister
○ 影になって / 松任谷由実 



◎ウワノソラ・オンラインストア・リンク 
【オンラインストアでご購入の方で希望者にはサインをお入れします】
https://uwanosoraofficial.stores.jp/items/5ce79e9a0b9211098e15afaf

以下後編に続く。
(インタビュー設問作成/編集:ウチタカヒデ)