2019年9月22日日曜日

George Falkner:『Murry Christmas!/ George Faulkner sings Murry Wilson』(Bolt Records)


2018年1月24日付けの記事で紹介させていただいたThe Bachelorsによる「Happy, Happy Holiday」(Wilson兄弟の実父Murryの作)をなんと60年以上の時を超えてカバーした強者がいた! 
当方も制作にささやかながら協力させていただいた関係でリリース前のプロモキットの送付が先日あった。
当の本人George Faulknerは過去にもThe Beach Boys関連のカバー作(と、言っても知名度の低い楽曲ばかり)のリリースを行っている。 

◎Mike Loveの「Wrinkles」
 (1970年代に未発表となったアルバム『Country Love』より)
◎Dennis Wilsonによる「Under The Moonlight」
 (ソロ作『Pacific 年Ocean Blue』(77年)に続く『Bambu』(77年~83年録音、2017年リリース)収録曲) 

そしてMurry Wilson作の「Two Step,Side Step」(それぞれ、2015,2016リリース) 本作は今年の6月にGeorgeからカバー曲制作に基づく形で、当方へ原盤の音源提供の依頼があり、それに応じて音源の提供を行った。
提供した音源から「Happy, Happy Holiday」とそしてもう一曲同じくThe Bachelorsによる「Te-e-e-e-ex-as」の二曲が本作に収められている。 しかしながら、本作の「Happy,Happy Holiday」の演奏は原曲の100%再現というわけではなく、原曲がポルカ風なのに対して、sunshine-pop風の曲想を基本に1970年代中葉の『Christmas Album』 や『M.I.U』あたりのトラックにシンセがからむポップな曲調に生まれ変わっている。
二曲目の「Te-e-e-e-ex-as」についてはペダルスティールやマンドリンにギターを重ねた丁寧な演奏になっており、中西部出自であるWilson一族への敬愛が演奏にうかがわれる。

本作の制作にあたっては主にNew YorkのAlternative関連の人脈が関わっている。一曲目のプロデュースはTony Maimone、Pere UbuやThey Might Be Giantsのメンバーであり、Hüsker DüメンバーBob Mouldのアルバムなどを手がけている。アレンジはJoe Mcginity、Psychedelic FursのキーボーディストにしてThe Ramones、Ronnie Spectorとの共演も行っている。
演奏で参加しているのはJoe率いるLosers Lounge、カバー曲主体のプロジェクトでABBAからThe Zomebiesまで幅広くカバーし、しかも大ヒットもあればほとんど知られていない曲まで演奏し長年好評を博している。
参加メンバーは豪華で、Paul Williams、Foetus、They Might Be Giants、Debbie Harryと多彩だ。
また、ジャケットのイラストは米国の漫画の賞で有名なHarvey Award  1991年受賞者であるPeter Bagge。短期間とはいえ、手間暇がかなりかかっている良作である。

George自信も長年Murry Wilson作品の探求に勤しみ、これまで五十曲以上の存在を確認しており、新たな楽曲発見を夢見ている。
公式サイトBOLT RECORDS(https://boltrecords.net/)では試聴できないが、正式リリースは11月8日を予定しており、CDとアナログ・7インチ(45rpm)、 配信(Apple Music, Spotify, Google Play)の形態で入手可能とのこと。



【text by MaskedFlopper/編集:ウチタカヒデ】


2019年9月12日木曜日

FMおおつ 音楽の館/Music Note 2019年8月号「Waterboys特集」

私の番組「音楽の館/Music Note 8月号」の「Waterboysサントラ特集」について、遅ればせにはなってしまったが報告さていただく。この『ウォーターボーイズ』は2001年に映画化されて話題になった“男のシンクロ”で、映画のヒットを受けて2003~2005年にかけてテレビ・ドラマ化され、計4シリーズが制作されている。

今回の特集では、この4作品のシンクロ演技で使用されたナンバーで構成している。さらに「衝撃のアノ人!その後を追跡」(NTV)なる番組で、「ウォーターボーイズのモデル、知らざれる苦労、高校生の今」というタイトルで放映された2004年9月に川越高校でシンクロ・チームのダンスの振付を担当した柴田周平君の選曲も加えた。

 
彼は、当日押し掛けた1万人以上の観客から大喝采を浴びるも「やりきり症候群」となり、大学受験に失敗。その後二浪して大学進学した彼は、映画研究会に入部する。そこで「エコーズ」なる作品で役者デビュー。その作品は「東京学生映画祭」で準グランプリを受賞し、演技に開眼する。現在は映画で知り合った女性と結婚し、サラリーマン兼舞台俳優として活動しているという概要だった。


  その2004年文化祭でシンクロ演技に使われた曲解説する。Bill Haley & The Comets<ロック・アラウンド・ザ・クロック(We're Gonna Rock Around The Clock)>、発表されたのは1954年で、翌1955年にMGM映画『暴力教室』のオープニングに採用され8週連続全米1位を記録したロックンロール創世記を代表する1曲。

 
次は大塚愛さんの<さくらんぼ>。この曲は2003年12月リリースの2曲目で代表曲、翌2004年の第55回紅白歌合戦に初選出されている。なお彼女の近況は2019.2.1.のミュージック・ステーション3時間スペシャルLIVE・テレ朝開局60周年や、Rock In Japan 2019.8.12.のステージでもこの曲を披露している。

 
そしてユーミン<真夏の夜の夢>、この曲は1993年に発表された佐野史郎さんの怪演が評判となった『誰にも言えない』の主題歌。この番組は1992年に大ヒットした『ずっとあなたが好きだった』の続編的なドラマで、共演者は野際陽子さん・賀来千香子さん。この曲は彼女にとって<あの日に帰りたい>に続く2曲目のNo.1ヒットだった。


 
ここで、「男のシンクロ」について簡単に紹介する。モデルは男子高校の埼玉県立/川越高校の水泳部が1988年から実施の文化祭用の演目だった。その後、1999年に『ニュースステーション』で放送され、その特集を見た矢口史靖監督によって2001年に映画化に至る。


 その第一作となったのが『ウォーターボーイズ』(カタカナ表記)、この言葉自体は映画プロデューサーが作った造語で、正式名称ではない。この作品は少数館の上映だったが、評判をよび上映館が100館まで増え、上映期間は半年を越える大ヒット作となっている。この現象はシネマコンプレックス(シネコン)普及と重なり、2000年以降の邦画復活の起爆剤になったとも言われる。この映画の大ヒットで、モデルとなった川越高校の2002年文化祭には約3万人の入場者を記録した。



 なおこの作品で主役の鈴木智役を務めた妻夫木聡さんと、準主役の佐藤役の玉木宏さんは、当時はまだ無名の若手俳優だった。彼らの起用は映画を制作に一か月以上前からシンクロの練習をする必要があり、二か月以上スケジュールの空いていた著名俳優がいなかったという事情による。なおストーリーは廃部寸前の唯野高校水泳部の顧問に真鍋かおりさん扮する美人教師が顧問に着任し、シンクロナイズドスイミングを教え、紆余曲折を経て公演を成功させるといったもの。



  
ではこの映画の演技シーンで使用された曲を紹介する。まずSylvie Vartanの<あなたのとりこ(Irresistiblement)>、彼女はフレンチ・ポップスのスーパー・スターで、本国で1968年に発表した代表曲のひとつ。おりしも1968.4.11.(23歳)自動車事故からの復帰作だった。日本では1969.1.に 16作として発表されるも不発で、1970.11.5.に21作で再発され大ヒット(Jp.18位  11.8万枚)。なお余談ながら、ウルトラマンに登場するバルタン星人は彼女から付けられたというのはかなり有名なエピソードだ。

 日本の夏の風物詩のひとつとなったThe Venturesの<Diamond Head>。全米でのリリースは1965年で70位程度だったが、日本では最も人気のあるナンバー。作曲者のDanny Hamiltonは、1971年にHamilton, Joe Frank & Reynoldsを結成して<恋のかけひき(Don’t Pull Your Love)>を大ヒットさせ、1975年にはPlayboyに移籍し<Fall in Love>で全米1位を獲得している。

 3曲目はPuffy<愛のしるし>、1998.3.14.に発表された 6枚目のシングル。この曲の作者はスピッツの草野正宗さん、アレンジは奥田民生さんだった。エンディングにBay City Rollers<Satuday Night>のフレーズを拝借するという民生風隠し味が付いている。そのスピッツの最新シングル<優しいあの子>は現在放映中のNHK連ドラ『なつぞら』の主題歌になっている。

 
4曲目は青江三奈さん<伊勢佐木町ブルース>、1968.1.5に発表された彼女の代表曲で、1960年代の演歌を代表する1曲。彼女はこの曲で『第19回NHK紅白歌合戦』に出場するも、イントロの“吐息”に「Stop」がかかり、カズーに差替えられてる。なお彼女がこの曲を歌ったのは27歳で、先日元AKBの大島優子が30歳になったと聞き、その貫禄には驚きだ。
 そして最後のフィンガー・ファイブの<学園天国>、全盛期1974年の第5作シングル。この曲は後にキョンキョンのカヴァーで1989年にも大ヒット、ちなみに彼女版のバックは野村義男率いる「三喜屋・野村モーター’s BAND」。



 続いては2003年7.1.から始まったテレビ版『WATER BOYS』(CX系)。この作品は映画版から2年後の同じ唯野高校水泳部が舞台で、二代目主人公新藤勘九郎役には山田孝之さん、そしてその相棒立松憲男役には森山未來さん。山田さんは「ちゅらさん」出演後のひ弱な感じで、その後の『闇金ウシジマくん』(2012年~)の強面雰囲気は微塵の欠片も感じられない。そして森山さんも『世界の中心で、愛を叫ぶ』(2004年)で大ブレイクする直前だった。


 このテレビ版のシンクロ演技シーンに使われた曲から、Dick Dale & His Deltones<MISIRLOU>。この曲は1962年のヒットだが、有名にしたのは1994年に公開されたクエンティン・タランティーノ監督の『パルプ・フィクション』への起用。なおこの作品はジョン・トラボルタがダークな役を演じた作品としても有名だ。

 2曲目は山本リンダさんで<狙いうち>、1973.2.25.に発表された 23th Singleで 14位止まりだが、リンダさんの大胆な振り付けで子供たちにもオオウケ、さくらももこさんは「ちびまるこちゃん」に度々登場させている。なお今では「応援ソング」の定番で、甲子園でも頻繁に演奏され続けている。
 3曲目のThe Rubettes<Sugar Baby Love>、1974.1. に発表された彼らのデビュー曲で全英4週1位、欧州各国でも1位という大ヒット、全世界で800万枚以上セール。この曲はスタジオ・ミュージシャンによる製作からグループが結成されているも、発売前にヴォーカリストが脱退し、ヒットした時点では別のメンバーだった。
 
 4曲目は松浦亜弥さん<♡桃色片想い♡>、2002.2.6.にリリースした第5作で2位を記録、この時期はあややの全盛期で曲が選ばれたのは当然の成行きだった。
 そして5曲目のMichel Polnareffで<シェリーに口づけ(Tout, Tout Pour Ma Cherie)>、この曲は本国フランスで1969.5.に<追わないで(後に、「渚の想い出」と改題)>のB面曲でリリース。日本では1969.9. にCBS/Sonyからフランス同様B面扱いで<可愛いシェリーのために>のタイトルで発売された。その後1971年にCBS/Sony がEpicレーベルをスタートした際に <シェリーに口づけ>として発売し大ヒット。当時のPolnareff人気は青森で「来日要請署名」活動が起こったほどだった。




 次は2004.7.6.から始まった『WATER BOYS 2』(CX系)、名目上前作の続編だが、前作と直接的なかかわりはほとんどなかった。舞台は3年前まで女子高で、9割以上が女子生徒の姫乃高校。そこには男子の運動部がなく、「シンクロ部」創設しようという活動が始まり。三代目主人公水嶋泳吉役には市原隼人さん、そしてその相棒山本洋介役には中尾明慶さん。市原さんは2009年の『ROOKIES』『猿ロック』でブレイク、中尾さんと言えば奥様が仲里依紗さんで、タレント以外に2016年には小説家としても活動している。なおヒロイン矢沢栞役には石原さとみさんが起用された。



 ではこの作品のシンクロ演技シーンに使われた曲から、まず布袋寅泰さんで<バンビーナ>、彼は元BOOWYのギタリストで、吉川晃司と組んだCOMPLEXでもお馴染み。彼が1999.4.16.にリリースした 18作で 2位を記録した大ヒット曲。
 続いて<Mickey>、番組ではB*Witchedのヴァージョンだったが、一般には全米1位のTony Bazil版が有名。彼女は振付師で、その振り付けしたこの曲は“世界で最も有名なチアリーディング曲”になっている。また日本では『ワンナイR&R』(CX系)でゴリ(ガレッジセール)扮する松浦ゴリエのパフォーマンスでも大ブレイク。

 
3曲目は松谷祐子さんの<ラムのラブソング>、アニメ「うる星やつら」の主題歌だが、もはやアニソンの域を超えた名曲。なおアニメ放映期間は4年半にもおよび、劇場版も6本という大ヒット作で、関連商品の売り上げも100億円を超え。原作は「犬夜叉」でも有名な高橋留美子先生で、故佐野へさん同様に私も彼女の生みだす“想像を超えたナンセンス”の大ファンだ。
 ラストはDuran Duranで<The Reflex>1、980年代に一世を風靡したニューロマンティックの代表的グループ。この曲は世界中で1位を獲得した彼らの代表曲。そんな彼らの人気は日本でも絶大で、1982年から2017年まで10回を数える。


 そして最後に『WATER BOYS 2005夏』(CX系)、この作品は二夜連続作で、シリーズの完結作にもなっていた。



 このドラマの舞台は架空の島で、東京の大学生になった元・唯野高校シンクロ部員の田中晶俊が、島の夏祭りイベントで「シンクロ公演」を成功させるもの。四代目主人公田中晶俊役には瑛太さん、そしてその相棒上原賢作役には小出恵介さん。なおヒロイン垣原玲奈には2007年にL’Arc~en~Cielのベーシストtetsuyaさんと結婚した酒井彩名さんを起用。

 
ではこの作品のシンクロ演技シーンに使われた曲から、まず野際陽子さん<非情のライセンス>。この曲は人気TV.ドラマ『キーハンター』のテーマ。当時の彼女はハイセンスな大人の女性の代表的存在。現在は1992年の『ずっとあなたが好きだった』の冬彦さんの母親、桂田悦子、1994年『ガラスの仮面』の月影先生役のほうが馴染み深いかと。
 Starship<シスコはロック・シティ(We Built This City)>、1960年代にデビューしたサンフランシスコを代表するバンドJefferson Starship初の全米1位曲。バンドは結成以来、数々のメンバー・チェンジを経て1985年にバンド名をStarshipに変更、その後の大ヒット。また翌年には、映画『マネキン』の主題歌<愛は止まらない(Nothing’s Gonna Stop Us Now)>も全米1位を記録。

 またまた登場、あややの<ね~え?>。この曲は2003.3.12.発表の第 9作で最高位3位、不思議なことに彼女には1位曲が無く、“シルバー・ホールダー”のアイドルといえる。なおこのタイトルは他にもドリカム(2010.6.30.46th)やPerfume(201011/10.12th)のヒット曲にもあり、人気タイトルだった。
  “ゴッドねぇちゃん”和田アキ子さんで<古い日記>、この曲は1974.2.25.リリースの第 18作で最高位44位止まり。ただ曲中の印象的なシャウト「はぁ!」は彼女のトレードマークになっている。今回は2013.6.12にリリースされた『AKIKO WADA 45TH ANNIVERSARY ESSENTIAL COLLECTION』に収録された(Dynamite Soul Mix)。
 そしてOlivia Newton-John と ELOの夢の共演で<Xanadu>、これはOlivia主演の同名ミュージカル映画の主題歌。映画はコケたものの、曲は全米8位全英をはじめ世界5か国で1位に輝いた大ヒット曲。

<オンエア曲>
1. ロック・アラウンド・ザ・クロック(We're Gonna Rock Around The Clock)
  /Bill Haley & The Comets
2.さくらんぼ /大塚愛
3.真夏の夜の夢 /松任谷由実
 ~20190年「ウォーターボーイズのモデル、知らざれる苦労、高校生の今」

4.あなたのとりこ /Sylvie Vartan
5. Diamond Head  /The Ventures
6.愛のしるし /Puffy
7.伊勢佐木町ブルース /青江三奈
8.学園天国 /フィンガーファイブ
  ~映画『ウォーターボーイズ』

9. MISIRLOU /Dick Dale & His Deltones
10.狙いうち/山本リンダ
11.Sugar Baby Love /The Rubettes
12.♡桃色片想い♡/松浦亜弥
13.シェリーに口づけ/ Michel Polnareff
  ~2003年テレビ『WATER BOYS』

14.バンビーナ/布袋寅泰
15.Mickey/Tony Bazil
16.ラムのラブソング/松谷祐子
17.The Reflex/ Duran Duran
  ~2004年テレビ『WATER BOYS 2』

18.非情のライセンス/野際陽子
19.シスコはロック・シティ(We Built This City)/ Starship
20.ね~え?/松浦亜弥
21.古い日記(Dynamite Soul Mix)/和田アキ子
22.Xanadu/ Olivia Newton-John & ELO
  ~2005年テレビ『WATER BOYS 2005夏』

次回9月号は「9月&秋ソング特集」をお届けする予定です。

本放送:第四土曜日9/28(土)15:30~18:00
再放送:第四日曜日9/29(日)8:00~10:30

【FMおおつ公式アプリ】https://fmplapla.com/fmotsu/


                          (鈴木英之)

2019年9月7日土曜日

【ガレージバンドの探索・第六回】 We The People

前回、サザンロックバンドCowboyについての記事を書く為にメンバーのTommy Taltonの経歴を調べていたら、Cowboy結成前にはガレージバンドをやっていたと知って少し驚いた。
1965年から1968年まで、We The Peopleという、フロリダ州オーランドのガレージバンドに所属していた。
地元紙Orlando Sentinel のライターRon Dillmanが最強のガレージバンドを作ろうと、人気のあったローカルグループThe TrademarksのメンバーとThe Offbeets(以前はThe Nonchalantsとして知られていた)のメンバーを集めて構成したのがWe The Peopleだったそうだ。彼らの楽曲はNuggetsやPebblesなど数多くのガレージコンピにも収録されている。 



【メンバー】
Randy Boyte - Organ (1966–1970)
David Duff - Bass (1966–1970) 
Tommy Talton - Guitar (1966–1968)
Wayne Proctor - Lead guitar (1966–1967) 
Tom Wynn - Drums (1966)
Lee Ferguson - Drums (1966–1967) 
Terry Cox - Drums (1967–1970) 
Carl Chambers - Guitar (1968–1969)
Skip Skinner - Guitar (1969–1970)  

We The People の最初のリリースは1966年初頭。
Ron Dillmanがバンドのマネージャーとなって地元のレコードレーベルHotlineから、「My Brother, the Man」(B面「Proceed With Caution」)【 Hotline Records-3680】をリリースした。
地元でトップ10ヒットとなり、それはChallenge Recordsとのレコーディング契約につながった。 そして1966年6月、Tony Moonプロデュースでセカンドシングル「Mirror of Your Mind」(B面「The Color of Love」)【Challenge-59333】をリリース。全国チャートには到達しなかったものの、全米の多くの地域、特にナッシュビルとオーランドで地域的な大ヒットとなった。この曲は後に多くのコンピに収録された。



Mirror of Your Mind / We The People 

1966年9月には「He Doesn't Go About It Right」(B面「You Burn Me Up And Down」)【Challenge-59340】をリリース。B面曲だった「You Burn Me Up And Down」は、「Mirror Of Your Mind」と同様多くのコンピに収録された為、バンドの代表曲のひとつになっている。
最初は、この2曲のように荒々しいサウンドのバンドイメージが強かったようだけれど、We The Peopleが制作した楽曲はとても多彩。
Wayne Proctor とTommy Taltonの2人は特にバンドにとって重要なソングライターだったようだ。
「Mirror of Your Mind」のB面「The Color of Love」はバラード曲で、これはボサノヴァ曲「The Girl From Ipanema」の影響を受けて書かれたらしい。 4番目のシングル「In the Past」(B面「St. John's Shop」)【Challenge-59351】は、1966年後半にリリースされた。サイケデリックな曲で、シタールの代わりに使用したのが、友人の祖父によって作られた"octachord"という大きなマンドリンのような、8弦の楽器だった。
「In the Past」をA面としてリリースするも、地元のラジオ局はサイケデリックなサウンドよりソフトなB面の「St. John's Shop」を好んだらしく、「St. John's Shop」がオーランドチャートで2位になった。
「In the Past」は、1968年にThe Chocolate Watchbandのセカンドアルバム『The Inner Mystique』【Tower ‎– ST 5106】でカバーされている。


In the Past / We The People  

1967年初頭、ソングライター兼リードギタリストのWayne Proctorがベトナム戦争の徴兵を避けるためにバンドを辞め大学に戻った。
それはバンドにとって大きなダメージとなったけれど、その後も1967年、1968年を通じてRCAレコードから3枚のシングルをリリースしている。 「Follow Me Back To Louisville」(B面「Flourescent Hearts」)【RCA Victor ‎– 47-9292】 「Love Is A Beautiful Thing」(B面「The Day She Dies」)【RCA Victor ‎– 47-9393】 「Ain't Gonna Find Nobody (Better Than You)」(B面「When I Arrive」)【RCA Victor ‎– 47-9498】 1968年半ばにTommy Taltonが脱退。RCAとの契約満了も相まって、バンドのレコーディングキャリアは事実上終了し、1969年10月31日のハロウィンコンサートの後、Ron Dillmanがグループを解散することを決定した。
Wayne Proctor はバンドを去った後、The Lemonade Charadeに「Follow the Yellow Brick Road」を書きマイナーヒットした。現在はサウスカロライナ州のローカルバンドで演奏している。
Tommy Taltonは、冒頭にも書いた通りサザンロックバンドのCowboyとして活動した。

We The Peopleの楽曲は多くのガレージコンピで聴けるけれど、1998年にSundazedから出ている2枚組CDの『Mirror of Our Minds』(Sundazed SC 11056)では、未発表のトラック、デモ、代替テイクや、The Trademarks、The Offbeetsなどの関連音源も含む、We The Peopleの歴史全体の音源がまとめられている。



【文:西岡利恵(The Pen Friend Club)/編集:ウチタカヒデ】 

参考・参照サイト: http://therockasteria.blogspot.com/2017/04/we-people-mirror-of-our-minds-1964-67.html 

2019年9月1日日曜日

connie:『VOICES』(Fall Wait Records/FAWA-0001)


新潟在住のアイドル・ユニットNegicco(ネギッコ)のプロデュースの他、他アイドルへの楽曲提供などをしているクリエイターのconnie(コニー)が初のソロ・ミニアルバム『VOICES』を8月21日にリリースした。
全5曲に各ゲスト・ヴォーカルを迎えて制作されており、6月に『夜霧』をリリースしたばかりのウワノソラのいえもとめぐみをはじめ、女優兼歌手の遠藤瑠香、CRCK/LCKやceroのサポート・メンバーとして知られる小田朋美、謎の音楽ユニット“さよならポニーテール”のみぃな、KIRINJIのメンバーやギタリストとしても多くのセッションに参加している弓木英梨乃を迎えている。
実にバラエティに飛んだ人選なのだが、曲毎にマッチするヴォーカリストを適切にアサインしているプロデュース力には敬服してしまった。

筆者が2016年5月に弊サイトでNegiccoのサード・アルバム『ティー・フォー・スリー』(TPRC-0159)を取り上げた際も感じたのだが、楽曲提供とプロデューサーも務めこのユニットを支えているのが、畑違いの業界でサラリーマンをしている彼ということで非常に驚いた。
これまでにNegiccoには、小西康陽やORIGINAL LOVEの田島貴男といったポップス・マエストロ達が楽曲提供をしてきたが、その楽曲にも引けを取らないクオリティーが彼の才能を証明している。

ここではWebVANDA読者をはじめとする音楽マニアにもお勧め出来る、このアルバム収録曲から筆者が気になった主要曲を解説していこう。

   connie「グリッター」feat.小田朋美

冒頭の「グリッター」はアタックの強いシンセ・パッドのリフと目映い変拍子が特徴的なダンス・ミュージックで、歌入れが非常に難しいトラックではないかと思うが、確かなスキルを備えた小田朋美の類い希なヴォーカル・テクニックでそれをクリアしている。
続く「月夜の森で」はニュージャックスイング期のR&Bを彷彿とさせるトラックと弓木英梨乃の無垢な歌声のコントラストがやみつきになり、KIRINJIの「Mr.BOOGIEMAN」(『ネオ』収録 16年)にも通じるセンスに脱帽してしまった。

そして筆者がこのアルバムで最もリピートして聴いたのは「赤い涙」だ。リズム・セクションの中でアコースティック・ピアノとウーリッツァーがブレンドして主リズムを刻んでいて、テンションで鳴っているハモンド・オルガンやコーラス・アレンジの構造から東海岸のソウル・ミュージックに影響されたシンガー・ソングライター系の曲調とアレンジである。 更にいえもとめぐみの表現力あるヴォーカルはこの曲に普遍的な存在感を与えており、直ぐに風化することはないと保証するので、良識ある音楽ファンは聴くことを強くお勧めする。
筆者の本年度のベストソング10曲に確実に入る名曲であり、こういう曲との出会いは人生においても大切であると感じるばかりだ。
(ウチタカヒデ)


2019年8月24日土曜日

名手達のベストプレイ第5回~ジェフ・ポーカロ


多くのミュージシャン達に愛されたドラムの神童ことジェフ・ポーカロは、1954年4月1日にコネチカット州ハートフォードで生まれた。
父親がジャズ・ドラマーでパーカッション奏者としても著名なジョー・ポーカロということもあり、7歳から本格的にドラムを習い始める。
17歳になった71年にはジャズ作編曲のジャック・ドーハティの『The Class Of Nineteen Hundred And Seventy One』にレコーディングに参加し、プロドラマーとしてデビューする。翌72年にはソニー&シェールのツアー専属ドラマーとなり、更にシールズ&クロフツの『Diamond Girl』(73年)からシングル・カットされたタイトル曲に参加するなど、プロドラマーとしての活動基盤を築いていくのだ。

また後のプレイ・スタイルに大きな影響を与えたとされるスティーリー・ダンの準メンバーとして参加するのもこの時期で、当時同バンドのギタリストだったデニー・ダイアスの紹介でスタジオに招かれた時、まだ19歳だったというから驚かされる。スティーリーのツアーとレコーディングでのプレイは評判となり、多くのセッションにオファーされるようになる。 
76年には幼馴染みのデビッド・ペイチ(ジェフと同様に父親はジャズ・ミュージシャンで、ピアニスト兼アレンジャーのマーティー・ペイチ)、スティーヴ・ルカサー、それに弟のスティーヴ等とTOTOを結成し、82年の4thアルバム『TOTO IV』はグラミー賞で6冠に輝き成功を得たのは読者もご存じだろう。
その後もTOTOのリーダーとして、また一流のセッション・ドラマーとして活動を続けたが、92年8月5日に悲劇は起こる。ロサンゼルスの自宅のバラ園に農薬を散布後アレルギーで心臓発作を起こし、38歳という若さで急死してしまう。
彼の葬儀にはその人望の厚さを証明するかのように多くのミュージシャンが参列し、棺側葬送者はスティーリーのプロデューサーだったゲイリー・カッツが務め、ドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーからの弔電も読み上げたという。

ここではそんなジェフ・ポーカロ氏を心より敬愛するミュージシャン達と、彼のベストプレイを挙げてその偉業を振り返ってみたい。今回は参加者の内5名がドラマー(経験者含め)であり、その巧みなプレイを詳しく解説してくれた。特にこのシリーズでは初の女性ミュージシャンでドラマーの北山ゆう子氏は、掲載前の最終編集中に急遽ベストプレイを提出してくれた。
全9名分のサブスクリプションの試聴プレイリスト(2時間45分!)を聴きながら読んで欲しい。 
 

   

【ジェフ・ポーカロのベストプレイ5】
●曲目 / ミュージシャン名
(収録アルバムまたはシングル / リリース年度)
◎選出曲についてのコメント


足立浩(アダチ ヒロシ)】
 Drums & Percussion 奏者/じゃむずKOBO 代表/S.A.D.ドラムスクール 講師
◆HP URL:https://adhiroshi.amebaownd.com
 

●Better Make It Through Today / 大村憲司 
(『Kenji Shock』/ 1978年)
◎アルバム唯一ボーカル曲の幕開けはジェフのビートから。
このテンポでこの強固なグルーヴにまずは驚嘆。
そしてキメへ向かう”タカタドン”(0:51)。最高に気持ち良い。
その後、ギターソロに呼応するように入るタム回し(2:07)と手足コンビネーション(2:14)も聴き所である。
ソロ後には、1拍目にスネア(3:15)を入れることでより場面転換を印象付け、さらにクローズリムショットとスネアの交互打ちで新鮮な空気を呼び込む。
前出のベースのフレーズに乗っかりに行ったような、引っ掛けたスネアに魅力を感じる。(3:29) 

●Sweetest Music / 竹内まりや
(『Miss M』/ 1980年)
◎アルバムの1曲目。カウントが全てと改めて実感させられる。ダンサブルな曲調の中、重心が低くメリハリの効いたドラムでバンドサウンドを鼓舞し牽引する。随所に散りばめられたフィルイン”タカドン”のスピード感。これこそが楽曲の推進力をさらに高めている。シンプルなフレーズだが、ドラムを知れば知るほどジェフの凄さには感嘆するばかり。
唐突なエンディングからのM2「Every Night」への導入がまた何とも心地良い。

●If You Want Me / 河合奈保子
(『Daydream Coast』/ 1984年)
◎イントロの6連フィルから痛快!そのままこれぞ!というサウンドへなだれ込む。シモンズのタムとの融合がもたらす楽曲への影響は絶大。
フィルインはもちろん、リズムパターンへも組み込み、自身のプレイへと昇華させている。マイケル・ランドウの饒舌なギターも必聴だ。

●Love Everlasting / オフ・コース
(『As Close As Possible』/ 1988年)
◎打ち込みのビートと生ドラムの対比が楽しめる1曲。
サビの1小節前から華々しく入り、素晴らしいサウンドで曲にエネルギーを生み出す。打ち込みとの共存にとどまらず相乗効果をもたらしている。素晴らしいアレンジだ。
ジェフは全体を通して大きなグルーヴを作り、1音の大切さをこれでもかと教えてくれるプレイ。説得力しかない! 
エンディングに登場する4拍目のスネア(4:05) 、これには思わず背筋がピンとなる。

●Tema Purissima / 大貫妙子
(『PURISSIMA』/ 1988年)
◎オーケストラアレンジの華やかで壮大な世界観の中、絶妙に溶け込みながら心地良いビートを刻む。 パワフルでタイトに全体を牽引するプレイも素晴らしいが、音楽に寄り添うリラックスした温かいビートもジェフの魅力。改めてドラムアプローチの深さを感じさせてくれる名演だ。
 実父ジョー・ポーカロがパーカッションを担当しており、親子共演も聴き所の一つである。

Sweetest Music / 竹内まりや


【北山ゆう子(lake、キセル、王舟、流線形THE LAKE MATTHEWS etc)】
 

●Keepinʼ It To Myself / Jaye P. Morgan
(『Jaye P. Morgan』/ 76年)
◎元曲AWB版よりもテンポアップして軽快なディスコナンバーに。
でもハイパー過ぎなくって好みのタイプです。

●Hard Times / Boz Scaggs
(『Down Two Then Left』/ 77年) 
◎バックはほぼTOTO。前作よりリズムがたっている印象。 重心が低いのに軽やかなビートは名人芸。

●Come As You Are / Laura Allan
(『Laura Allan』/ 78年)
◎うたに寄り添うコントロールされた演奏。

●All Right / Christopher Cross 
(『Another Page』/ 83年)
◎アルバム中シングル・カットされたこの曲だけ(ジェフ)ポーカロの演奏でした。 シンプルでムダがないですね。
わたしが語ることなんて何もないや。

●The Girl Is Mine / Michael Jackson
 (『Thriller』/ 83年)
◎もう、曲が好き。自然と歌に耳がいってしまう演奏って理想だ。
 

The Girl Is Mine / Michael Jackson 


【小園兼一郎(small garden)】
サックス吹きでもありベーシストでもあります。 https://twitter.com/sgs_kozonohttps://smallgardenstudio.jimdo.com/ 
 

●Black Friday / Steely Dan
 (『Katy Lied』 / 75年)
◎6/8系の小気味良いシャッフルビートが心地良い楽曲だ。開き過ぎない品のあるハイハットがシャープな印象を与えている。ジェフの細かいロールの正確さ、乱れのない打点は非常に気持ちのよい音で、ドラムセットを「叩いている」というよりも「奏でている」と言った方がしっくりくるだろう。当時は20歳くらいだろうか、この若さでの才能の開花はまさに天性のものだ。

●Point it up / Larry Carlton 
(『Larry Carlton』 / 78年) 
◎カールトンのサードアルバムからアップテンポでスリリングな楽曲。 ある意味で音色に特徴のない「耳障りでない」完璧すぎるドラミングこそがジェフ・ポーカロ、その人を指すといっても過言ではないと思う。これほどスリリングな曲でも自分の存在をアピールせずにメインアーティストのサポートに徹するプレイが業界において高評価を得ていることは間違いない。まさに職人ワザの極みではないだろうか。

●Breakin’ Away / Al Jarreau 
(『Breakin’ Away』 / 81年) 
◎要所で細かいアウフタクトが多い曲だがソツなくこなしてしまうジェフには脱帽だ。 ミドルテンポの16thシャッフルビートでの一糸乱れぬ演奏にはドラムロボットのような質感が伴いやすいがその背景には非常に細かい揺らぎが隠れており、それが機械たらし めない「ジェフ・ポーカロのヒューマニズム」が常に存在しているのである。

●蒼夜曲 セレナーデ / 尾崎亜美
(『Hot Baby』 / 81年)
◎尾崎亜美のアルバムよりダイナミックなバラード風楽曲。 恐らく数テイクもかからずに録音を終えているのではないだろうか。楽曲を身につけているという解釈より譜面を初見で間違いなくこなすようなプレイが目立つジェフの演奏は注目さえしなければメインアーティストを引き立てる最良のプレイだとも言える。 しかし、そのソツのない演奏は「絶対で間違いのない演奏」として重宝がられていたことはその圧倒的レコーディング数からも証明出来るのではないだろうか。

●Dear John / Elton John
(『Jump Up!』 / 82年)
◎ストレート8ビートの正統派ロックポップス、そんな副題にピッタリのジェフのプレイは泥臭さが無いところが、エルトン・ジョンのロックテイストをいわゆるアメリカの「ビッグビートロック」ではなく「ブリティッシュロック」に落とし込めている要因の一つになっているはずである。
 
  Breakin’ Away / Al Jarreau 


 【ショック太郎(無果汁団)】
アレンジャー。只今ファースト・アルバムを製作中。学生の頃はドラムもやっていました。
https://twitter.com/shocktarou 
 

●Doctor Wu / Steely Dan
(『Katy Lied』/ 75年)
◎フィル・ウッズのサックスソロの素晴らしさはもちろん、フェードアウト間近の歌心溢れるジェフのドラムソロも印象的。この曲のサックスとドラムの関係性は、後の「Aja」のウェイン・ショーターとスティーヴ・ガッドを彷彿させます。

●Livin’s Easy / Sanford & Townsend 
(『Duo Glide』/ 77年)
◎Aメロのスネアのパラディドル部分が、なんとなくポール・サイモンの「恋人と別れる50の方法」のガッドのプレイに影響された感も。その曲の8分裏のタンバリンはフット・ハイハットで対応し、これがまた絶妙なカントリーテイストに。

●Goodbye Elenore / TOTO 
(『Turn Back』/ 81年)
◎10代の頃に買った「ジェフ・ポーカロ/ドラム奏法」にも載っていた超難曲。バーナード・パーディーのハーフタイム・シャッフルをストレートなロックサウンドに見事に応用。
コピーは無理でも譜面だけは見て繰り返し聴いていた筆者の思い出の1曲。

●One Step Ahead Of The Bad News / Randy Goodrum
(『Fool’s Paradise』/ 82年)
◎ランディ・グッドラムの名盤ですがジェフのプレイも名演ぞろい。
この曲はソウルフルなミディアム16ビートのノリを残しながらも32ビートの細かい刻みをひたすらキープしていて圧巻。
それでいて、この大らかなグルーヴ感。さすがです。

●Send Love To Me ~愛をとどけて~ / 飯島真理 
(『My Heart In Red』/ 89年)
◎ジェフ得意の「ロザーナ」系ビートで、時代が時代だけにスネアの音がデカいですが、この強弱を使い分けながら絶妙にグルーヴするハイハットワークに耳を傾けるべし。デュエットしている男性ボーカルは、何とジョセフ・ウィリアムス本人!
 
Send Love To Me ~愛をとどけて~ / 飯島真理 
 


【西浦謙助(集団行動 / mezcolanza etc)】
集団行動HP https://www.syudan.com/ 
ツイッターアカウント @tikanakangana 
 

●Brother Love's Traveling Salvation Show / Sonny & Cher
(『Mama Was A Rock And Roll Singer Papa Used To Write All Her Songs』/ 73年)
◎発売年からするとレコーディング時はまだ10代ですか。恐ろしい。こんな一面もあったのね…という感じで荒々しく叩きまくっている若き日のジェフを楽しめます。

●Lowdown / Boz Scaggs
 (『Silk Degrees』/ 76年) 
◎この曲のリズム隊の息を呑むクールさよ!2つのドラムトラックが効果的なこちら、イントロのフィル、流れるような16のハットとキック、陶然でございます。

●Thank You For Being A Friend / Andrew Gold
(『All This And Heaven Too』/ 78年) 
◎ピアノポップの名曲。ドラム的には手数も多くなく地味かも知れませんが、歌モノのドラムかくあるべし!という教科書のようなジェフのドラムが流石です。サビのハイハットのオープンクローズとキックのダブルの入れ方が素晴らしいです。

●Lost In Love With You / Leon Ware
(『Leon Ware』/ 82年) 
◎匂い立つ80年代AOR臭のアダルト具合に赤面してしまいそうになるこの曲ですが、恥ずかしがりながら聴き耐えていると02:10〜からの怒涛のキメフレーズでヤッホーイ!とテンションが上がり楽しいです。
「キメフレーズでも過剰なエモさがなく小気味良い」これぞジェフの真骨頂。

●Rosanna / TOTO 
(『TOTO IV』/ 82年) 
◎臆面もなくこちらをチョイス。「簡単そうで実は超えげつない」ドラムでおなじみのこちら、語り尽くされているハーフタイム・シャッフルについてはググって頂くとして、個人的にはサビ前のキメのフィルが超かっこよくて最高です。

Rosanna / TOTO


【洞澤徹(The Bookmarcs)】
https://silentvillage.wixsite.com/horasawa 
 

●Look Who's Lonely / Bill LaBounty 
(『Bill LaBounty』82年)
◎イントロのスネアのフィルから心掴まれます。Bill LaBountyとの相性の良いハネ具 合も気持ちよい。

●That’s Why / Michael McDonald
(『If That’s What It Takes』82年)
◎ポーカロらしい躍動するドラミング。
ハットとバスドラのタイミングが最高に好み。

●Jamaica / Bobby Caldwell 
(『Carry On』82年)
◎TOTOでも聴いたことあるアフロっぽいリズムパターンがとってもポーカロっぽい。

●Stay The Night / Chicago
(『17』84年)
◎加工された、まさに80’のドラムサウンドだけどその迫力がかっこいい。中学生の頃 リピートしまくっていた。

●Running With The Night / Lionel Richie
 (『Can’t Slow Down』84年)
◎ポーカロのドラムの音色と16ビートがライオネル・リッチーの声ととっても相性が良い と思える1曲。
 

Jamaica / Bobby Caldwell


増村和彦(GONNO × MASUMURA etc)】
http://www.ele-king.net/writters/masumura_kazuhiko/
 

●Keepin' It To Myself / Jaye P.Morgan
(『Jaye P.Morgan』 / 76年)
◎デイヴィッド・フォスター初期プロデュースの自主盤中のキラーチューン。
サビで飛び出すスネアと同時に叩くフロアからやって来る推進力が渋い。

●The Devil In You / Ned Doheny 
(『Prone』 / 79年) 
◎何故か当時日本だけでリリースされたらしい3rd。このポーカロのプレイは全部の音に配慮が行き届きすぎていてちょっとこわい…。

●Nice Girl / Eye To Eye
(『Eye To Eye』 / 82年)
◎Julian MarshallとDeborah Bergのユニット。プレイヤーはスティーリー・ダンでお馴染みのメンバー。タイト!

●Take A Good Look Around You / Timothy B.Schmit
(『Timothy B.Schmit』/ 87年)
◎ポコ、イーグルスと渡り歩いたティモシー・シュミットのソロ2枚目。イントロの2拍目のバスドラム、ハイハット、リムショットが、シンプルながら一人三役やっているような印象を与えて気持ちよい。

●Krougnegne / Mory Kanté
(『Touma』/ 90年)
◎ギニアのシンガー。ジェフ自らプログラミングしたというビートは、やはりジェフらしく端正で、クラブ・ミュージックにも通じそうだ。1:38〜間奏のコラはフランスのfolamourみたいだ。
 

Keepin' It To Myself / Jaye P.Morgan


【松木MAKKIN俊郎(Makkin & the new music stuff / 流線形 etc)】 http://blog.livedoor.jp/soulbass77/ 
 

 ●Directions And Connections / Tom Jans 
(『The Eyes of an Only Child』/ 1975年)
いくつか残されているジム・ケルトナーとのツインドラム。圧倒的な個性のケルトナー、その影響下にあるポーカロも個性が確立され、素晴らしいアンサンブルに。

●It's So Real / Originals
(『Communique』/ 1976年) 
◎御大ジェイムス・ジェマーソンとの貴重なコンビネーションでシンプルなソウルミュージックを。ハイハットの引っ掻け方、後半のキメに対するアプローチなど、しっかりと斬新で最高。

●Slowdown / Paul Anka
(『The Music Man』/ 1977年) 
◎クロスオーバー~フュージョン風にウネるパターンを、1音の淀みも無く太い音色で。マシーンのようにジャストなビートは、ハードロックまでカバーするポーカロの面目躍如。

●Whatcha Gonna Tell Your Man / Boz Scaggs
(『Down Two Then Left』/ 1977年) 
◎歌い出し直前のサァァァというスネアだけでもう痺れる。フィリーソウルの黄金パターンをポーカロ流に仕上げた1曲。その熱量故に珍しく荒いが、それも含めて完璧なソウルミュージック。

●What I My Doing Wrong / Waters
 (『The Waters』/ 1977年)
◎個人的に思うポーカロの最高傑作がこれ。BPM84、沈むようなフロアに、軽く舞うようなスネア。スロウでも強靭なグルーヴと深い音色は変わらない。マイケル・オマーティアンも流石のセンス。
 
Slowdown / Paul Anka 


 【ウチタカヒデ(WebVANDA管理人)】 
●Your Gold Teeth II / Steely Dan
(『Katy Lied』/ 75年)
◎前作『Pretzel Logic』(74年)から更にスタジオ・ラボ化が進んだ4作目の収録曲。ジェフの神童振りが発揮されたハチロクのビパップ・ビートを基調に3/8、9/8の変拍子パートを加えたジャズ・ロック。
2000年のリユニオン以前の中期スティーリー・ダンのイメージはこの曲に代表される独自性が大きいと思う。

●Let's Get Together / Jaye P Morgan
(『Jaye P. Morgan』/ 76年)
◎Dフォスター最初期プロデュースの自主製作盤だがレアグルーヴ・ブームによって後年リイシューされたことでも知られる。DハンゲイトとSルカサーも参加したこの曲でのプレイはTOTO結成前夜の名演の一つに数えられるだろう。
繊細な16分のハイハットとタイトなスネアのコントラスト、ロータムのバックビートのタメの利いたグルーヴも最高だ。

●Zorro Rides Again / Les Dudek
(『Say No More』/ 77年)
◎ジェフといえばボズ・スキャッグス作品での名演が多いが、バンド・ギタリストだったレス・デューデックのセカンドからこのインスト大作を。新主流派以降のジャズ界きっての名ドラマー、トニー・ウィリアムスとのツインドラムは同時録音らしく、刺激を受けて徐々に白熱していくジェフのプレイは聴き応えがある。
トニーは右ch、ジェフは左chなので各名手のプレイを聴き比べることをお勧めする。

●Room To Grow / Brian Elliot
『Brian Elliot』/ 78年)
◎知る人ぞ知るシンガーソングライターの隠れた名盤より。素早いタムのフィルから始まるジェフのプレイはDハンゲイトのベースとのコンビネーションで良質なミッドテンポ・グルーヴを醸し出している。ハンゲイトのスラップとダブル・ストップ、ギターのJグレイドンの例のチョーキングなどが乱舞するアクセントに呼応するジェフの多彩なプレイも聴きものだ。

●Arthur's Theme (Best That You Can Do) / Christopher Cross
(7”『Arthur's Theme (Best That You Can Do)』/ 81年)
◎アカデミー歌曲賞を受賞した映画『Arthur(ミスター・アーサー)』のタイトル・テーマ曲。シンガーソングライターのクリストファー・クロスの他BバカラックとCBセイガー、Pアレンの共作でマイケル・オマーティアンのアレンジによるミディアム・テンポのバラード。
ドラムキットでピアニシモからフォルテシモを演出する歌伴の理想型がここにある。
 
Arthur's Theme (Best That You Can Do) / Christopher Cross 


(企画 / 編集:ウチタカヒデ)

2019年8月9日金曜日

Minuano:『蝶になる夢を見た』(Botanical House / BHRD-012)☆尾方伯郎インタビュー


パーカッショニスト尾方伯郎のソロ・ユニットMinuano(ミヌアノ)が、2010年のセカンド・アルバム『ある春の恋人』以来9年振りに、サード・アルバム『蝶になる夢を見た』を8月11日にリリースする。
ファーストの『Love logic』(09年)と『ある春の恋人』の2枚のアルバムでは、70~80年代のブラジリアン・ミュージックやジャズのエッセンスをちりばめつつポップスとして昇華していたが、本作では尾方のパーソナリティとイマジネーションをより活かした、一種コンセプチュアルなトータル感に耳を奪われた。
昨年8thアルバム『彼女の時計』をリリースしたLampのヴォーカリスト、榊原香保里をフューチャーしていることで彼等の熱心なファンも本作を待ちわびていたことだろう。
ブラジリアン・ミュージックをはじめジャンルレスなスタンスでポップ・ミュージックをクリエイトしていく姿勢は、 先月全国流通されたがレビューのタイミングを逃してしまったGUIROの 『A MEZZANINE』にも通じており、そのサウンドを構成する数々の音楽的エレメントに興味が尽きないのだ。
ここでは前作から実に9年振りにおこなった、尾方氏へのインタビューをお送りしよう。

●先ずはサード・アルバム『蝶になる夢を見た』のリリースおめでとうございます。 前作『ある春の恋人』から9年が経ちましたが、この期間はどのような活動をされていましたか?
また本作の曲作りやプリプロはいつ頃から始めましたか?

尾方伯郎(以下尾方):ありがとうございます。プリプロですが、セカンド発表後の2011年頃から始めています。ただ、思うように作れなかったり、作っても納得できなかったりで半分ほどボツにしたので、一部を除いたほとんどの収録曲は2015年以降に作ったものかと思います。
この間、Lampのライブやツアーがあったり、別の企画に没頭していたりした時期もありましたが、実感としては9年間、寝ても覚めても本作のことを考えていたという歪んだ記憶しかありません。とにかく時間の流れが早過ぎました。

●ご自分で納得がいかない曲をボツにされるのは理解出来ますが、それが半分ほどになるというとのころに尾方さんの強い拘りを感じました。
収録中11年のプリプロ時に作った曲はどの曲でしょうか?ソフトロック系の「流星綺譚」は前作までのテイストが残っていますよね。
またアルバムの軸となるリード・トラックの「終わりのない季節」はいつ頃作られた曲ですか?

尾方:2011年当時、曲として基本的な形ができていたのは「蜃気楼」、「真夜中のラウンジ」、「夏の幻影」の3曲。また、「機械仕掛けのハートのための不完全な戯曲」は、原型となる曲を2013年頃に作っているので、これら数曲が比較的早い時期の楽曲ということになります。
「終わりのない季節」が出来たのは確か2016〜17年頃、「流星綺譚」はその少し前くらいだったかと思います。

【アルバム・ダイジェスト】  

●音源を聴いたファースト・インプレッションは、前二作に比べて非常にコンセプチュアルで、複雑な展開とアレンジが施されているなと感じました。組曲のように構成されていて、アルバム全体で一つの作品になっていうような印象を受けました。
この様なアルバム・コンセプトは当初からプランしていて、曲作りをしていったのでしょうか?  

尾方:つまらない返しで申し訳ないのですが、一曲一曲を完成させるだけで精一杯でした。その繰り返しと積み重ねの結果としてこの形になったというのが実情で、何らかのコンセプトを狙うような余裕はなかったです。狙って作ってこれだったらもう少し格好もついたのですが、壁に向かって無作為にペンキをぶちまけたら偶然にも自画像になりましたと、それくらい強烈な意外性を私自身も感じています。

強いていえば、曲の並びには工夫を凝らしたと言っていいのかもしれませんが、この曲はこの配置しかありえないという場所に収まるべくして収まった感も強いので、あれこれ腐心した末の成果だと自分の口で言うのもちょっと違う気がします。この辺の感覚は言葉にするのが難しいです。

●成る程、アクション・ペインティング的な偶然性から生まれたトータル感なんでしょうね。でもそれは後で考えると必然だったのかも知れませんよ。曲順に関してはジグソーパズルのピースの当てはめていくような作業だったように感じますが、実はそれもアルバム作りでは非常で大事でもあり、悩みながら楽しめる作業ではないかと思うのですがいかがですか?  

尾方:悩みながら楽しんだという言い方も出来ますし、時間をかけて自然にそうなっていったという意味では、逆にほとんど悩んでいないとも言えます。ただ、普通に考えればこの曲がオープナーだろう、といったような定石からは外れたオーダーになったので、果たしてこれがベストか?という迷いは最後の最後までありました。それでも最終的には、常識的な判断より事の成り行きを優先して現状の配置に落ち着いた次第です。

●このユニットは尾方さんがサポート・メンバーとして参加されているLampの榊原香保里さんをヴォーカリストとしてフューチャーリングして、レコーディングにもサポート・ミュージシャンの方がこれまで同様に参加しています。
ソングライターとアレンジャーが異なるとはいえ、Lampサウンドと区別をつけるためのポイントはなんでしょうか?

尾方:違いを打ちだそう、区別をつけよう、そういった感覚はまったくなくて、彼らのスピリッツに少しでも肉薄したいという思いがむしろ強かったくらいです。録音物を聴くだけでは掴めなかったLampの真髄を、ライブやツアーで実際に演奏する度に体感しているわけですから。
しかし、そういった一種の精神論は脇に置いて純粋に技術的な部分で言えば、誰が何を作ったとしても、その人自身のフィルターを通した独自の作品にしかなり得ないので、そこは人為的にコントロールのできない部分ではないかと思います。

いずれにしても、Lampのサポートで演奏機会のある人間は現時点で世界に数人しかいないので、たまたまその一人として刺激を享受できる立場にいるのは、とても恵まれたことです。双方の共通点も相違点も呑み込んで今回やっと実った果実、それが甘いか渋いかは聴く人それぞれでしょうけれど、その実りの萌芽は、やはり自分の置かれている立場、つまりごく当たり前のようにインスピレーションを得られるこの稀有なポジションに、深く根差していると思っています。

『Love logic』     『ある春の恋人』

●『ある春の恋人』から本作『蝶になる夢を見た』までの間にLampは、『八月の詩情』(10年)、『東京ユウトピア通信』(11年)、『ゆめ』(14年)、『彼女の時計』(18年)と4作品をリリースしていますが、尾方さんが受けたインスピレーションのポイントを強いて挙げたらなんでしょうか?

尾方:挙げて頂いたアルバム個別の影響というよりも、あくまでも全体的な傾向の話になりますが、どの作品も当たり前に「ポップス」なわけです。
聴き手をときめかせるポップさを兼ね備えながら自由で複雑な表現を存分に盛り込んで、でも難解とは感じさせない。そういった印象は、時系列でみれば一定の変遷を辿りつつも、巨視的には初期から現在に至るまで一貫しています。表現の濃密さとポップさをいかに両立させるかというこのテーマは、この9年間に限らず終始、私の中で通奏低音のように鳴り続けていた。そういう言い方が一番しっくり来るように思います。

●尾方さんは90年初頭のクラブ・シーンでSpiritual Vibes(スピリチュアル・バイブス)のメンバーとして、近未来を見据えたかのようにラテン・ジャズやブラジリアン・ミュージックとポップスの融合をされていた訳ですが、昨今のネオ・シティポップ・ムーブメントからジャンルレスで多様な音楽性を持ったバンドが活動している昨今のミュージック・シーンをどう見られていますか?  

尾方:Spiritual Vibesは演奏面での参加のみで、制作プロセスの核心に直接タッチしたわけではないのですが、クラブ文脈で多少デフォルメされているとはいえ、ジャズやブラジル音楽がある種のポリュラリティを得た。そういう時代や現場に立ち会えたのは貴重な体験でしたし、この時に得られた感覚が今の自分の出発点にもなっています。ただ、その流れが後のシーンにどう繋がったかという大局的な視点は持ち合わせておらず、あくまでも私的な経験として非常に重要だったと、そういう話でしかありません。

それくらいの個人的なスタンスで音楽に接しているので、現在のシーンについても、自分が直に体験すること以外はまったく把握できていないのが実状です。勉強不足とは思いますが、世間の動きやシーンの動向よりも、置かれた環境で自分がいま何を感じているかという、そこにしか関心がないのかもしれません。
その対象は、昨日観た映画でも今日の車窓風景でも、あるいは過去への悔恨でも未来への不安でも何でもいいのであって、つまり必ずしも音楽でなくても構わないわけです。

そういう意味では、ミュージックシーンも含めた社会全般と一定の心理的距離があり、自分の中で勝手に作られた並行宇宙でただ一人暮らしているようなものです。一般的にはあまり好ましい状況として映らないかもしれませんが、そういうプライベートな架空世界から今回の作品が生まれてきているという側面は、少なからずあると思います。



●レコーディング中のエピソードをお聞かせ下さい。 

尾方:優等生っぽい答になりますが、参加ミュージシャンやエンジニアの方々との触れ合いは楽しかったです。とはいっても、レコーディング当日は時間の縛りもあって何かと慌ただしく、ゆっくり話をするような余裕はないのですが、そこは音楽関係者同士ですから、こちらの問いかけに音で答えてもらう非言語コミュニケーション中心で。

奏者さんの中にはちょくちょく顔をあわせる人もいれば、お久しぶりの人もいる。昔から知っているのにこれまでお願いする機会のなかった人もいれば、紹介を受けて初めてご一緒した方もいる。皆さん例外なく優秀なので、放っておいても勝手に良いパフォーマンスをして曲を膨らませてくれるし、こちらの至らないところはこっそり補ってくれたりもします。いやミュージシャンやエンジニアって本当にすごいなと、他人事のように実感しました。

特にクラシック系の楽器奏者さんは、いわゆるバンドマンとは異なる文脈で音を出す機会も多いはずで毎回軽く緊張するのですが、皆さん申し合わせたかのように親身で解釈も的確、もちろん演奏も全力投球です。こういった異ジャンル間の接近遭遇は、私の場合レコーディング以外では滅多に起こらないので、振り返ってみれば豊かな時間だったと、懐かしむというと大袈裟ですが、そんな気持ちが今も残っています。

●本作制作中に聴いていた楽曲を10曲挙げて下さい。

尾方:なにしろ長期に渡ったので、聴く音楽も次々に入れ替わりました。取りあえず、この9年間のある時期に繰り返し聴いていた曲、印象に残っている曲を挙げてみます。 ポップス以外のジャンルが多く、今回の新作に直接の影響は見出せないかもしれません。尚、制作期間以前から継続的に親しんでいる定番曲は外しました。

1. Fred Hersch 「At The Close Of The Day」
  『In Amsterdam: Live At The Bimhuis』 (2006) より
 (spotify試聴プレイリストでは別ver)

2. Dani Gurgel 「Depois」
  『Agora - Dani Gurgel E Novos Compositores』 (2009) より

3. Fabian Almazan & Rhizome 「Alcanza Suite: I. Vida Absurda y Bella」
 『Alcanza』 (2017) より

4. Jon Hopkins 「Candles」
 『Monsters (Original Motion Picture Soundtrack)』 (2010) より

5. Michael Franks 「When The Cookie Jar Is Empty」
 『Burchfield Nines』 (1978) より

6. Francis Hime 「Atrás Da Porta」
 『Francis Hime』 (1973) より
 (spotify試聴プレイリストでは別ver)

7. Kurt Rosenwinkel 「Gamma Band」
 『Star of Jupiter』 (2012) より

8. Brian Eno & Harold Budd 「First Light」
 『Ambient 2 The Plateaux Of Mirror』 (1980) より

9. Allan Holdsworth 「Tokyo Dream」 
 『Road Games』 (1983) より 

10. Jóhann Jóhannsson 「Heptapod B」
 『Arrival (Original Motion Picture Soundtrack)』(2016) より





●最後に本作『蝶になる夢を見た』の魅力を挙げてアピールして下さい。  

尾方:アルバム全体にコンセプチュアルな印象があるというお話を頂きました。それは偶然の産物という話もしましたが、成り行きはどうあれ、アルバムトータルで聴いた時にこそ何かが伝わる作品になったという思いは確かにあります。

アルバム単位で聴く習慣が薄れている昨今の時代性とは相反しますが、今回のアルバムをまるまる通して聴いて頂ければ、一周回って逆に新しい体験になるのではないか。
そういうところに、この音楽の持ち味があるのではないか。そんな気がします。本作は化学反応の主体ではなくあくまでも触媒であり、聴いてくださる方それぞれが主人公になって、無自覚に胸に秘めた何かを感じ取る。そんな風景や物語を、私は漠然と思い描いています。 

(インタビュー設問作成/文:ウチタカヒデ)