2010年11月8日月曜日

☆『The 25th Anniversary Rock & Roll Hall Of Fame Concerts』Blu-ray & CD

Various:『The 25th Anniversary Rock & Roll Hall Of Fame Concerts』(Time Life/25824X)(Blu-ray)
Various:『The 25th Anniversary Rock & Roll Hall Of Fame Concerts』(Time Life/25805D)(CD)


 このブルーレイディスク(2枚組)とCD(4枚組)は、2009年10月29日、30日にニューヨークのマディソン・スクウェア・ガーデンで行われた「ロックの殿堂」25周年を記念して開催されたコンサートの模様を収録した映像及び音源集である。
曲順は違うが内容は同じものなので、映像を見た感想で、私の好きなアーティストのことについてのみ、紹介しておきたい。まずはこの2セットを買った最大の理由は、レイ・デービスがメタリカのゲストで登場していたからだ。先に紹介した『See My Friends』ではメタリカは「You Really Got Me」をカバーしていたが、このライブでは「All Day And All Of The Night」。『See My Friends』のように基本はメタリカが歌うのかなと思っていたら、ここでは全てレイ先生が歌うという最高のパフォーマンスだった。『See My Friends』のジャケのレイ先生はだいぶジジイになっていたような写真だったが、ライブで見るとコードに片手を突っ込んだまま歌う立ち姿が実にカッコいい。まだまだいけるぜ。同じくゲストで最高にカッコよかったのはミック・ジャガーだ。U2が「Gimme Shelter」のイントロを引き出すと、突然、ミックが現れ、観客は大熱狂。次の「Stuck In A Moment You Can't Get Out Of」でもミックが歌うが、ファーギーやボノとからみながら歌うミックは本当に魅力的で、楽しくて笑顔になってしまう。ミックがいると画面がパッと華やかになる。たったひとりで全員の心をつかんでしまえるのはミックしかいないだろう。もうひとりゲストで素晴らしかったのはジョン・フォガティだ。CCRの「Fortunate Son」をブルース・スプリングスティーンと歌うが、実にソリッドで迫力があり、ロックっていいな!と叫びたいような気持ちになった。ジョン・フォガティはまだまだ見た目も若いし、もっとたくさん見たい気持ちになった。ほかではCS&N。まずは「Woodstock」。スティルスの当時と変わらない力強いヴォーカルとギター、そして3人の完璧なハーモニーは健在で、見た目はナッシュ以外でっぷりと太り(でも「LIVE AID」の時からは少し痩せた?)、とても老けてしまったが、音楽は健在だ。ナッシュはゲストを交えての「Teach Your Children」、クロスビーは「Almost Cut My Hair」と得意の持ち歌を歌い、スティルスはジェームス・テイラーをゲストに交えての「Love The One You're With」等と、楽しめた。そしてS&Gはこれまた当時と変わらない見事なハーモニーで「The Sounds Of Silence」を歌い、感動的な「The Boxer」、ちょっと2番をサイモンが表情たっぷりに歌うのが気に入らない(なんでサイモンに限らず、大物は当時と同じに歌ってくれないんだろう?感情たっぷりに遅らせて歌ったり、節回しを変えて歌うのがいつも嫌)「Bridge Over Troubled Water」があり、「Mrs.Robinson」は中間に「Not Fade Away」を交えてグルーヴ感たっぷりに歌う。私は前からロックはエレキギターではない、アコースティック・ギターでもグルーヴ感があれば最高のロックになると、この「Mrs.Robinson」を例示して話しているのだが、やはりこの曲はカッコいい。またサイモンはナッシュ&クロスビーをゲストに「Here Comes The Sun」を歌った。ジョージ・ハリスンとサイモンは以前から仲が良く、一緒にテレビに出演したこともあったが、サイモンは未だにジョージのことを思い出してくれているんだなと嬉しくなった。その他でもダーレン・ラブがブルース・スプリングスティーンをバックに「A Fine Fine Boy」、いいオッサンになってしまったリトル・アンソニー&ジ・インペリアルズがア・カペラで「Two People In The World」を歌ったり、聴きどころは十分。ちなみに映像編はDVDがなく、ブルーレイのみ。ブルーレイの画質は圧倒的だから、これからこういうフォーマットになるかもね。(佐野)
The 25th Anniversary Rock & Roll Hall Of Fame Concerts (4CD)







2010年11月7日日曜日

☆Ray Davies:『See My Friends』(Universal/2754817)

レイ先生のファンは本当に多い。これはハード・ロックの原型である「You Really Got Me」などを生み出した先進性、アルバム『The Village Green Preservation Society』以降の、ロックに付き物の「オシャレ」や「都会的」というものの拒絶した我が道を行く生き方、そしてその路線を10年続けた後のシンプルでソリッドなロックンロールに回帰した時のカッコ良さ、そういうレイ先生にみな男が惚れてしまったからだ。
このアルバムはそんなレイ先生の大ファンである大物ミュージシャンが、レイ先生と一緒にキンクスの歌を歌ったオムニバス。一緒に歌う面々はBruce Springsteen、Metallica、Bon Jovi(Jon & Richie)、Jackson Browne、Black Francis(from Pixies)、Billy Corgan(from Smashing Pumpkins)、Gary Lightbody(from Snow Patrol)、Mumford & Sons、Spoon、Paloma Faith、Mando Diaoという豪華さ。曲はMetallicaの「You Really Got Me」をはじめ60年代のPye時代の代表曲が並ぶが、「Days」とメドレーで『Lola Versus...』収録の「This Time Tomorrow」という小癪な選曲があり、また同じく『Lola Versus...』から「Long Way From Home」、さらにシングルB面の「This Is Where I Belong」と思わずにやりとしてしまう曲が登場する。RCA時代はBon Joviの「Celluloid Heroes」だけだが、Arista時代はBruce Springsteenと「Better Things」、さらに「All Day And All Of The Night」とチャンポンになる「Destroyer」(最高!)と、キンキーマニアも大満足だ。レイ先生はおおむねバックで歌っているが時々リード・ヴォーカルを担当しているのでそこを聴き分けるのも楽しい。ジャケットにはジジイになったレイの顔が並ぶが、ジジイでもカッコいいぜ!(佐野)






2010年11月4日木曜日

Lisa Miller:『Within Myself』(SUNDAZED/ SC 6263)



 ソフトロック・ファンにはゲイリー・ゼクリーの『The Yellow Balloon』や「シェルブールの雨傘」のカバーを収録した男性デュオ『The New Wave』で知られるCanterbury(カンタベリー)レーベルの三作目で最終リリースとなった、Lisa Miller(リサ・ミラー)の『Within Myself』(68年)が米SUNDAZEDから世界初CDリイシューされたので紹介したい。

 リサ・ミラーはミシガン出身のジャズ系白人姉妹デュオ、ルイス・シスターズのケイの娘で、67年のシングル・レコーディング当時は11歳の少女であった。
 共に音楽学位を取得していたルイス・シスターズは60年代にモータウンでスタッフ・ライターもしており、グラディス・ナイト&ザ・ピップスの「Just Walk in My Shoes」(『Everybody Needs Love』収録 67年)などを手掛けていた。またスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズやザ・スプリームスに取り上げられた、ソフトロック・グループのシュガーショップの「Baby Baby」(『The Sugar Shoppe』収録 68年)も彼女達の作品である。そんな母親達のパイプとバックアップもあり、リサは65年にモータウン傘下のV.I.P.レーベルからリトル・リサ名義でシングル「Hang On Bill」をリリースする。未リリースだがザ・スプリームスの「Honey boy」なども録音している。

 モータウン社長のベリー・ゴーディJrはリサをモータウン版シャーリー・テンプル(戦前の世界的子役スター。『サージェント・ペパーズ・・・』のジャケットにも登場している)として売り出すが、大きな成功を得ることは出来なかった。その後マテル社(バービー人形で知られる)創始者の息子で、カンタベリーを設立したケン・ハンドラーよりA&R担当として雇われたルイス・シスターズは"リサ・ミラー"としてリサを再デビューさせる。
 彼女達のプロデュースとソングライティング、ジャック・エスキューのアレンジにより67年にシングル「Love Is / The Loneliest Christmas Tree」をリリース、クリスマス・チャートで18位のヒットとなる。翌68年の春から本作『Within Myself』はレコーディングが開始され、引き続きルイス・シスターズのプロデュースの元、新たにアレンジャーとしてジーン・ペイジが参加した。
 ペイジについては一般的にモータウンや70年代のバリー・ホワイトなどソウル・ミュージック系のアレンジャーとして認識されていると思うが、フィレスからリリースされたライチャス・ブラザーズの「You've Lost That Lovin' Feelin'(ふられた気持ち)」(64年)のアレンジで一躍知られるようになり、カンタベリーでは『The New Wave』も手掛けている。
 バッキング・ミュージシャンについては今回のリイシュー・ライナーノートに詳しく記載されていないのだが、主なリズム・セクションにはレッキング・クルーが参加しているらしく、確かにハル・ブレインらしきシグネチャー・プレイを聴くことができる。またブレインの『Psychedelic Percussion』(67年)に参加している、ビーヴァー&クラウスのポール・ビーヴァーがモーグ・シンセサイザーで参加しているのが興味深い。
 
 収録曲について少し触れておこう。アルバムのトップは67年のシドニー・ポワチエ主演の名作映画『いつも心に太陽を』の主題歌として、英国人女性シンガーのルル(自身も映画に出演している)がヒットさせた「To Sir With Love」のモータウン・スタイルでのカバー・ナンバー。オリジナルの歌い上げる感動的なヴァージョンは普遍的な名曲だったが、こちらのリズミックなヴァージョンも負けていない。リサのヴォーカルは11歳という年齢的には安定した歌唱法をしており、特段巧い訳ではないが耳の残る声質を持っている。

 カバー曲は他にビートルズの「Fool on the Hill」(『Magical Mystery Tour』収録 67年)とジェファーソン・エアプレインの「White Rabbit」(67年)を収録しており、前者はビーヴァーによるモーグをフューチャーしたトルコ行進曲的なマジカルなアレンジ、後者はグレイス・スリックのファンだというリサの意向で取り上げられたらしい。アレンジ的にはハープシコードや木管を配置して、緊張感あるストリングスで煽るなど当時のサイケデリック・シーン影響下にあるスタイルだ。
 ルイス・シスターズによるオリジナルは7曲で、マリンバのフレーズがオリエンタルなアレンジの「Be Like a Child」、シタール(マイク・ディージーのプレイか?)のイントロからソナタ風に展開する「Utopia」などアレンジ的に凝った曲が多い。後者のセカンド・ヴァースではブレインらしき多彩なドラム・フィルが乱舞し、ペイジによるオーケストレーションもアーニー・フリーマンやジミー・ウエッブを彷彿させる素晴らしさだ。

   

 オリジナルではタイトル曲の「Within Myself」も挙げるべきだろう。ドラマティックなストリングスに木管とグロッケンのアクセント、木管と一緒に展開する女性コーラスなど、アレンジの完成度ではアルバム随一だ。
 ボーナス・トラックとしてシングル曲の「Love Is」と「The Loneliest Christmas Tree」がモノ・ヴァージョンで収録されているが、筆者的にはノーザンソウル・マナーの「The Loneliest Christmas Tree」を本作のベスト・トラックとして推したい。後のフリーダ・ペインなどにも通じる愛らしいガール・ポップソウルである。
 今回のリイシュー・リマスター音質については、オリジナルがマルチ4チャネルと考慮しても問題なく聴けた。なお全8ページにおよびライナーノートには本人の回想録と貴重なショットが掲載されている。

(テキスト:ウチタカヒデ)