今、なんとレイ・デービスはニュー・オーリンズに住んでいるそうで、そこでの生活をヒントに書き上げたものだそうだ。プレスでは「初のソロアルバム」とのことだが、85年の『Return To Waterloo』はキンクスの曲が含まれ、2005年の『Thanksgiving Day』は全5曲のミニ・アルバムなので外すとしても、98年の『The Storyteller』は語りがあるからソロ・アルバムじゃない訳?まあレイ先生がそう言うんじゃ仕方ないや。7年ぶりのアルバムということは確かで、久々のリリースだったが、レイ・デービスのシニカルな視点は健在で、実に味わい深い1枚だった。「The Tourist」はニュー・オーリンズの事を歌っているのだろう、喧騒と猥雑な空気に包まれた生き生きとしたスラムを、ニヤニヤとしながら観察しているレイの姿が目が浮かぶようだ。マスコミの記事に踊らされて、真実が見えなくなっている我々を歌った「Other People's Lives」、およそ思索とか思慮とかに無縁になっていまった現代社会を痛切に皮肉る「Stand Up Comic」なんて、レイ・デービス以外書けないだろう。特にヘヴィなギターがある訳ではないが、これこそロックだ。レイ・デービス、カッコいいな。いつでも私の一番好きなヒーローだ。(佐野)
2006年8月1日火曜日
☆ガロ:『GARO』(ソニー/MHCL841~851)CD10枚+DVD1枚
待望の、本当に待望のボックス・セットがリリースされた。これはガロのオリジナル・アルバム8枚にアルバム未収録曲に未発表曲をプラスした「ディスク9」、74年と76年の解散コンサートを収録したライブ盤「ディスク10」、それにTVKに出演した時のスタジオライブの5曲が入ったDVDという、これ以上ない究極のボックス・セットである。ガロを初めて聴いたのは1972年、中3の時だった。バリバリの洋楽人間だった私だが、ガロをラジオで聴いた時にそのCSN&Yを彷彿とさせるハーモニーに「日本にもこんなセンスのいい連中がいたんだ!」と驚き、ガロのファーストとセカンド・アルバムを相次いで購入した事を思い出す。初めて買った邦楽のアルバムがガロだった。中学生のこづかいでは月にアルバム1枚を買うのも難しいのに、大好きな洋楽のアルバムを買わずに、ガロのアルバムを買ったのだから、ガロへの思い入れは深い。後に初めてガロの全アルバムがCD化された時に、4枚のライナーと1枚の選曲をさせてもらったが、特にソフトロック系の曲をセレクトした選曲の仕事は楽しくて、今でもそのCDは自分の車の中の愛聴盤のひとつになっている。(担当者のミスで「美しすぎて」がアルバム・ヴァージョンだったことだけが心残り)さて、余談はこのくらいにして、ディスク9から紹介しよう。まず未発表の「時の魔法」だ。ベース、ドラム、フルート、オルガン、ホーン・セクションが加わって、パワフルな仕上がりになっている。非常に新鮮で、こんなものが録音されていたなんて驚かされるばかり。そしてCSN&Y関係の貴重な録音は、デビュー前にライブ「Love The One
You're With」と「Helpless」、73年の「Helplessly Hoping」、74年の「Ohio」はラジオでの収録だ。これらのCSN&Y関係の曲の感想は、DVDの紹介のところで後述させてもらおう。さらに嬉しい、嬉しいNHKで収録した5曲が続く。番組の性格上、オリジナルの曲はない。「あなたのメロディー」用の曲は3曲で、「エプロンドレスの女の子」はアコースティック・ギターのバックだけで得意の3声のハーモニーが心地いい佳曲。「銀色の世界に二人」はストリングスをバックに、堀内のヴォーカル中心にハーモニーをつけたドリーミーなナンバーで、これは出来がいい。「そば屋」はアコースティック・ギターをバックに大野のヴォーカルを中心にしたフォーク・ナンバー。ついで「みんなのうた」の2曲が続く。「そして君は」は日高のヴォーカル中心にハーモニーが加わる佳曲で、そのままガロのアルバムに収録してもいいくらいにサウンドが完成されていた。ラストはマスターがないので音が悪いが、個人的に最も楽しみしていた富田勲作曲の「いつまでも駆けてゆきたい」だ。富田にしては驚くような展開はなく、オーソドックスな作りといえよう。シンプルだが、バックのストリングスの付け方に浮遊感がある。堀内のヴォーカルを中心にハーモニーをつけたスタイルだった。続いて「ディスク10」のライブである。17曲中10曲が74年のツアーでのライブ、7曲が76年3月20日の解散コンサートからのものだ。74年の音源はアコースティック・セットとエレクトリック・セットが並ぶが、やはり個人的にはアコースティック・セットの方に引かれてしまう。特に堀内の「ピクニック」が軽快でポップで素晴らしい。アコギとハーモニーだけで、こんなにポップなのは、ガロならではだ。解散コンサートでは、数あるガロのナンバーの中でも最も好きな「地球はメリー・ゴーランド」のライブが聴けたのが嬉しい。解散コンサートはアコースティック・セットだけなので、当然この曲もアコースティック・ギターのバックのみ。ストリングスがない分、主メロにもハーモニーを付け工夫していた。しかしやはりこの曲は東海林修のストリングスが入ってこないといまひとつグッとこない。「遠い春」のハーモニーなんて聴いていると、こんにきれいに3声でハモれるグループなんて他にいないなとあらためて実感。最後は「Teach Your
Children」と「Find The Cost Of
Freedom」という、ガロの原点とも言えるCSN&Yナンバーで締めくくったのはなんとも印象的だ。なお、このディスク9とディスク10はボックス内で2枚組CDとして紙ジャケで作られたが、デザインはまさにCSN&Yの「4 Way Street」、思わずニヤリとしてしまった。最後に紹介するのは本ボックスの目玉であるDVDだ。ここにはTVKで録画されたスタジオ・ライブ5曲が入っており、選曲がまた泣ける。まずは暗いスタジオで3人にスポットライトを当て浮かび上がらせた「暗い部屋」だ。アコギのリフ、スティルスとクロスビーを合わせたようなメロディ、絶妙なハーモニー、ガロだけがいかにずば抜けた存在だったか分かる。そして次が「個人的メッセージ」だよ。若き山下達郎がコーラス・アレンジを担当したあの名曲のライブが見られるなんて!堀内の優しさ溢れるヴォーカル(ご本人にお会いしたことがあるが、もの静かで控えめで本当に優しい方)に、極上のハーモニーがからみ至福の一瞬を味わえる。ちなみにあごひげを剃り口ひげだけになった大野は野球帽のような帽子を被り、シャツにオーバーオールとまさにマリオなので、ここにも注目?さらに「吟遊詩人」だ。もうまいった。この曲は阿久悠の詩をもらった堀内と日高がどちらも曲を作ってきたため、ミッキー・カーティスの提案で2つの曲をつなぎ合わせというガロ唯一の堀内・日高の共作である。日高のヘヴィなエレクトリック・ギターをフィーチャーし、重量感溢れる演奏を聴かせてくれる。圧巻だ。そして最後は「Guinnevere」と「青い眼のジュディ(Suite:Judy Blue
Eyes)」の2曲。言うまでもないCS&Nの名曲だが、よりによってこの2曲のライブが見られるなんて。興奮。感激。ため息。凄すぎる!オープンチューニングのアコギ、繊細なハーモニー、完璧な、まさに完璧なCS&Nの再現だ。前述したが、このボックスではDVDを含め8曲のCSN&Yナンバーが収録されている。デビュー前から解散までずっと歌い続けているのだ。さらに完コピである。いかに彼らの音楽を愛していたか、リスペクトしていたか、このDVDでも細かい部分まで再現していて、その愛情が伝わってくる。「学生街の喫茶店」以降、プロ作曲歌の曲でヒットを稼いでスターダムにのしあがった彼らだが、こういう「音楽が好き」という根っこの部分がまったくぶれないので、こうして今でもリスナーの魂を揺さぶるのだろう。今年最大の収穫のボックス・セットだ。
(佐野)
☆Beach Boys:『Pet Sounds 40th Anniversary』(東芝EMI/TOCP70077)CD&DVDデジパック ☆『〃』(東芝EMI/TOCP70078)CD&DVDレギュラー盤 ☆『〃』(東芝EMI/TOJP60117・18)LP
待望のペット・サウンズ40周年記念盤がリリースされる。CDは約50分のDVDがセットで、レギュラーの日本盤には字幕が入る。全世界で5万枚限定のデジパック仕様盤には対訳が付く。モノが黄色、ステレオが緑の2枚組LPは、全世界1万枚限定で、ナンバリング入り、ボーナストラックはなし。3種の国内盤のリリースは全て9月27日、以上がリリース情報だ。さて、実際の中身だが、まず『Pet
Sounds』本体について特記事項のみ、2つ書こう。ひとつはステレオの「Wouldn't
It Be Nice」は、サビがマイクに戻った2001年にアメリカ・ヨーロッパでリリースされたHDCD盤のヴァージョンだった。1997年の『The
Pet Sounds Sessions』のヴァージョンではサビがブライアンだったが、HDCD盤の日本盤は出なかったので、多くの方は「マイク・ヴァージョン」を聴くのは初めてでは?次にCDのみ収録の「Hang
On To Your Ego」は『The Pet Sounds Sessions』で登場した1コーラスの後「ブルブルブル」と唇を震わす音が入った方のテイクだった。こちらにはコーラスが入っているので、より完成度が高いと判断されたのかな。音質の向上については、耳のいい、詳しい方におまかせしたい。次に、肝心なDVDについて順に解説しよう。最初のチャプター「ペット・サウンズ・メイキング」は、メンバーとトニー・アッシャーによるアルバムの思い出だ。故人であるカールとデニスのコメントも巧みに使っていた。メンバーは口々にアルバムに対する賛辞を送るが、ヴォーカル・セッションはマイクが「地獄の責め苦」と言っていたようにブライアンが納得するまでエンドレスで繰り返されたようで、スタジオでのブライアンをブルースは「パットン将軍」、マイクは「スターリン」と刺激的な表現をしていた。ブライアンだけに聴こえる音がある、だから「Dog
Ear」と呼んだとマイクが語る。初めてオケを聴いた時の感想で、アルは「チャイコフスキー」かと思ったよと言っているが、クールなアルの言葉だから、その衝撃が伝わってくる。次の「ペット・ストーリーズ」はブライアンとトニー、そしてスタジオ・ミュージシャンによるスタジオ・ワークの思い出だ。スタジオ・ミュージシャンはハル・ブレイン、キャロル・ケイ、ドン・ランディ、フランキー・キャップ、トミー・モーガンが登場するが、これらの名うてのメンバーを使った事についてブライアンは自分がフィル・スペクターに憧れていたこと、そして自分の曲で「新ウォール・オブ・サウンド」を作りたかったと、正直に語っていた。スタジオ・ミュージシャンはこぞってブライアンの才能に驚き、レコーディングに参加できたことを喜んでいたが、キャロル・ケイの「(ブライアンの)不満は大歓迎。だって何が欲しいか分かるから。人当たりなんてどうでもいいの」というプロらしい言葉にはさすがと思ったし、ドン・ランディの「ヴォーカルを重ねるところを見たかった。やっぱり主役はヴォーカル、我々はBGMだった。お蔭様で楽しく仕事が出来た」という一音楽ファンとしての率直な表現にも好感が持てた。最も辛口のハル・ブレインが「ちっともセッションが完成しないと思っていたら、2、3週間前に録音した曲が突然ラジオから流れてきた。驚いたよ。素晴らしかった」と語る部分は、怖い先生からの褒め言葉のようでちょっと嬉しいもの。ブライアンとトニーによる「Caroline
No」のCarol,I Knowを聴き間違えたという下りや、マリーのアドバイスでテープ・スピードを上げたというエピソードは、知ってはいても、実際に本人が語っているのを見ると、重みが違ってくる。そして本DVDの目玉、「リズム・オブ・ライフ」だ。オープニングのジョージ・マーティン自らがハンドルを握ってLAの街を赤いオープンカーで走るシーンは、それだけで興奮してしまった。ジョージ・マーティンはブライアンの家へ行き、まずブライアンがピアノで「God
Only Knows」を弾く。その後、二人はスタジオのミキシング・コンソールの前に座り、ジョージが「God
Only Knows」の完成ヴァージョンのミキシングをいじりながらレコーディングの話を続けていくのだが、話自体はお互いを褒めあっていて発見はない。ただ、ロックの巨人のこの2ショットは、見るだけでも十分だろう。そしてもうひとつの目玉が「Good
Vibarations」のプロモーション・フィルムの完全版だ。消防士の格好をしたメンバーがブライアンに起こされ、消防車を追いかけて走り回るコミカルなものだが、このフィルムはかつて『An
American Band』の中で「Mrs.O'Leary's Cow」のバックで使われていた。その時は消防士のヘルメットをかぶってクルクルと回るブライアンを見て、「これはイッてしまっているな」と思ったものだが、それは演出の意図にすっかり乗せられていたのであり、映像は音楽で大きく作用されるものだと改めて思った次第。他は「Sloop
John B」と『Pet Sounds』の既出のプロモ・フィルム。ただし「Sloop John
B」に水音は入っていなかった。このDVDだけでも買う価値は十分、また同じものか...と思わないで、購入しましょう。(佐野)
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