2017年7月19日水曜日

☆Favorite Musician 全音源コレクティング第30回:PETE TOWNSHEND(LIVEは原則除く)


フーといえば、原動力はピート・タウンゼンドだ。世界の5大グループ(イギリスのBeatlesRolling StonesWhoKinksとアメリカのBeach Boys)のソングライターは、キース・リチャード以外はリード・ヴォーカリストであり、ローリング・ストーンズは唯一、一度の活動を停止したことがないバンドなので4枚のソロ・アルバムはあるにしろ、キースの思いは常にグループとして叶えられてきた。しかしピートは違う。グループ一の人気者で、世界一のドラマーだったキース・ムーンが1978年に亡くなってからは、それまでのソロ・アルバムが信仰するミハー・ババ、親友のロニー・レーンの為に作ったの違って、グループとは別に、ソロ・アーティストとしてキャリアを作ろうとしたのは確かだと思う。フーが、キースの代わりにケニー・ジョーンズを入れ新しいアルバムを出す前年の1980年にピートはソロのキャリアで最大の成功を収めた『Empty Glass』をリリース、全米5位の大ヒットとなる。そしてキャッチーな「Let My Love Open The Door」はシングル・カットされ、全米9位にランクされる。翌1981年には新生フーの『Face Dances』は全米4位と期待通りの成績だったが、シングルの「You Better You Bet」は全米15位までだった。ただこの曲はフーのナンバーでも名曲で知られている曲で、ピートのせいではまったくない。翌1982年はフーとピートのアルバムが同じ年にリリースされる。成績はフーの『It’s Hard』が全米8位でピートの『All The Best Cowboys Have Chinese Eyes』が全米26位、フーのシングル「Athena」は31位、ピートの「Face Dances,Part 2」は105位とフーの圧勝だった。しかし、アルバム・シングル共に、フーとしてのランキングは下がっており、ここ10年でも悪い成績だった。ヒットはしなかったが、ピートのソロには「Uniform」とかヒット性の高いナンバーなど曲は充実していたため、メンバーはピートが良い曲は自分のソロのためにストックしていると非難した。そしてフーは1984年末のコンサートで解散、以降の本格的再結成までの経緯は、前回のフーの序文をご覧いただきたい。ピートは、この後は自分のやりたかったプロジェクトを実現する場がソロになり、映像を共にリリースした1985年の『White City:A Novel』、ミュージカル仕立てで劇場でも上演した1989年の『The Iron Man:Musical By Pete Townshend』、そして1993年のロック・オペラの 『Psychoderelict』を作り、ヒット性を求めていたとも思えず、全米で26位、58位、118位とランクダウンしたが、その頃からフーのライブ活動から本格的に復帰していったので、ソロからは離れていく。ピートのデモが、歌、ハーモニー、演奏と完成していてクオリティが極めて高いことは有名で、それまで『Scoop3シリーズでリリースしてきたが、その集大成として、ピートの未完成ライフワークである『Lifehouse』を、2000年に『Lifehouse Chronicles』として6枚組のボックスでリリース、内ディスク2枚の24曲のデモは21曲が『Who’s Next』中心にフーでレコーディングされた曲で、改めてそのクオリティに驚かされた。2003年には『TommyDeluxe Edition)』で17曲のデモ、2015年に『QuadropheniaSuper Deluxe Edition)』で25曲のデモと、3大アルバムの原型を作り上げてきたピートの力を全て披露、これでピートのソロ活動は一応の終着を見たような気がする。なお、ライブ盤の数が膨大なのでチャート・インした1985年の『Deep End Live!』のみ掲載(同じスタッフのもう1枚も含む)し、以降は割愛する。

 

PETE TOWNSHEND

☆オリジナル・アルバム

1972  『Who Came First2006 ReissueHip-O)※ボーナス・トラックで1970年の自主製作盤『Happy Birthday』から「The Seeker」「Day Of Silence」「The Love Man」「Mary Jane」「Begin The Beguine」の5曲、1971年の自主製作盤『I Am』からの「O’Parvardigar」はそのままアルバム曲として使用、1976年の自主製作盤『With Love』から「His Hands」「Sleeping Dog」「Lantern Cabin」の3曲全部、初登場の「I Always Say1曲で計9曲を追加した。UK30-US69

1977  Pete Townshend & Ronnie LaneRough Mix2006 ReissueHip-O)※ピートとロニー・レーンでそれぞれ曲を持ち寄った。ボーナスでピートの追加は未発表の「Good Question」。UK44-US45

1980  『Empty Glass2006 ReissueImperial)(日本のみ)※Hip-O収録のアルバム3曲のデモ「I Am An Animal (Demo-Alt Vocal)」「Keep On Working (Demo-Alt Vocal)」「And I Moved (Demo-Alt Vocal)」に加え、倍近く長い1123秒の「Gonna Get Ya(Long Version)」も追加。UK11-US5

1982  『All The Best Cowboys Have Chinese Eyes2006 ReissueHip-O)※「Vivienne」「Man Watching」「Dance It Away3曲追加。US32-US26

1983  Scoop』(Atco)※フー使った曲を中心としたデモ集。25曲。US35

1985  『White City:A Novel2006 ReissueHip-O)※「Night School」「Save It For Later」「Hiding Out(Extended Mix)3曲追加。UK70-US26

1986 『Deep End Live!2004 ReleaseLive:Brixton Academy ‘85』(Eel Pie)に全曲収録。※CD27曲中アルバムには10曲(CD12曲)収録された。1985111日のライブでデイブ・ギルモアも参加。US98

1989  『The Iron Man:Musical By Pete Townshend2006 ReissueHip-O)※「Dig(Simon Townshend Vocal)」「Man Machines(Long Version)」「I Eat Heavy Metal(Demo)3曲追加。US58

1987  Another Scoop』(Atco)※フーで使った曲を中心としたデモ集。27曲。US198

1993  『Psychoderelict2006 ReissuePVC)※アルバムは通常版のナレーション入り「Dialogue Version」とナレーションなしの『Psychoderelict(Music Only)』が別々にリリースされていたが、PVC2枚組にして、アルバムのアウトテイクであるUKのみのCDシングル『English Boy』の1収録の「Psychomontage」、2収録の「Early Morning Dreams」、『Scoop3』のデモの完成形の「There Is No Message In A Broken Heart」、後述の『The Best Of Pete Townshend』に収録された「Uneasy Street」に加え、「English Boy(Long Intro)」の5曲追加。US118

1994  Scoop 3』(Hip-O)※フーやソロで使った曲を含むデモ集。34曲。

2000 『Lifehouse Chronicles(Box Set)(Eel Pie)1970年より始めたピート未完のプロジェクト「Lifehouse」の膨大なデモをCD4枚、1999年のラジオ劇をCD2枚に入れた計6枚のボックス・セット。ディスク1と2が『Lifehouse Demos』にリリースされなかった未完の『Lifehouse』のデモ24曲が聴けるが、9曲が『Who’s Next』収録曲のデモであり、4曲がアルバム未収録シングル用(3A面)、『Odds And Sods4曲、『The Who By Numbers1曲、『Who Are You3曲と21曲もがフーとして使われたデモで、クオリティは限りなく高い。ディスク3は『Themes And Experiments』の11曲中9曲はこのボックスの為に19989年に録音された『Lifehouse』のライブ。(2曲は71年の「Baba ORiley」用の実験)、ディスク4は『Arrangements And Orchestrations』はピート以外のアレンジが大半のオーケストラのオケ。ディスク1と2が華だ。

2003 『Tommy Demos And Outtakes(Geffen)Who:Tommy(Deluxe Edition)』のディスク2に同アルバムのピートのデモやアウトテイク17曲収録。使わなかった「Trying To Get Through」「Cousin Kevin Model Child」「I Was」や、本作以外で使った「Young Man Blues」「Dogs Part Two」も入っていた。2013年の『Tommy(Super Deluxe Edition)』(Box Set)にも収録。

2011 『Classic Quadrophenia』(GeffenWho:Quadrophenia(Super Deluxe Edition)(Box Set)2011 ReissueGeffen)※ディスク3,4に同アルバムのピートのデモが25曲収録された。1979年のサントラ『Quadrophenia』の時に初登場した「Get Out And Stay Out」「Four Faces」「Joker James」の3曲は既にデモがあり、「We Close Tonight」「You Came Back」「Get Inside」「Any More」のデモやインストの「File No.2」「Wizardry」は使われていない。ただ「Wizardry」は1993年のドイツでのソロシングル「English Boy」のカップリングに入り(後述)その時点でも古臭くないインストだったのは凄い。

2016 『Pete Townshend's Deep End Face The Face』(Ward)※1986129日にドイツのTV用にデイブ・ギルモアら『Deep End Live!』と同じメンバーでライブを行った。日本盤のみ「I Put A Spell On You」が入った完全版で15曲収録。

 

☆必要なコンピレーション

1972  VariousGlastonbury Fayre 1971』2007Reissue(Akarma)※デモの「Classified」収録。80年のUKシングルのものとは別テイク。

1972  VariousI Am2000 Reissue Avatar(Box Set)』(Eel Pie)※「Baba O'RileyInstrumental)」のみ同ボックス収録。ちなみに「Parvandigar」は『Who Came First』のアルバム曲として使用されている。

1978   London Symphony OrchestraClassic Rock The Second Movement』(K-Tel)※オーケストラをバックに「Pinball Wizard」を歌う。未CD化。


1982  VariousThe Best Of Music And Rhythm』(PVC)※インストの「Ascension Two」収録。ベースがジョン・エントウィッスル、ドラムがケニー・ジョーンズなので実質、フーの録音。未CD化。

1986 『Playing For Keeps(Soundtrack)』(Atlantic)※「Life To Life」収録。未CD化。

1996 『The Best Of Pete TownshendCoolwalkingsmoothtalkingstraightsmokingfirestoking)』(Virgin)※UKではシングル化もされた「Let My Love Open The Door(E.Cola Mix)」と、前述の「Uneasy Street」収録。

2000  VariousJay Baba』(Eel Pie)※ピートはミハー・ババに捧げた自主製作盤は3枚あり1971年の『Happy Birthday』ではピートの曲は6曲で5曲は『Who Came First』のボーナス・トラックに入ったが、「Poem」のみ未収録で本ディスクのみ。次の1971年の『I Am』のピートの2曲の内1曲は『Who Came First』のアルバム曲として使用され、「Baba O’riley」のインストは本盤のみ。1976年の『With Love』の3曲は全て『Who Came First』のボーナスに収められた。ここまでの3枚については同じEel Pie2000年にリリースした箱入りの『Avatar』と同じだが、本盤には2001年リリースの「「O’Parvardigar」(Eel Pie)のCDシングルのみ収録の19721月のライブ「O’Parvardigar(Live In India)」もプラス収録されていた。なおこのCDシングルには通常の英語版とドイツ語版(『Scoop3にも』収録)も収録。

2000  Lifehouse Elements』(Redline Entertainment)※ボックス・セット未収録の「New Song」収録。

2012 Chimes Of Freedom:Songs Of Bob Dylan(Amnesty International)※「Corrina Corrina」収録。

2015  Various: Pete Townshend's Classic Quadrophenia(Eel Pie)※「The Punk And The Godfather」で一部リード・ヴォーカル。

2015 『Truancy(Universal/4732833)※ベスト盤に新曲の「Guantanamo」と「How Can I Help You」収録。

2016 Who:My Generation(Super Deluxe Edition)』(Polydor)※1964年のデモ「SunriseVersion1)」と1965年の未発表デモ曲「The Girls I Cound’ve Had」「As Children We Grew」「My Own Love」と1982年の『Maximum R&B』封入ソノシート「My GenerationVersion3)」に加えVersion2、「It’s Not True」「Legal Matter」「Much Too Much」収録。

 

☆必要なシングル・EP

1980 「Greyhound Girl」「Classified」※UKのシングル「Let My Love Open The Door」(Atco)に収録。未CD化。

1986 「Hiding OutInstrumental)」(Atco)※ドイツのみの12インチ収録。A面は歌入りExtended Version。未CD化。

1989 「Dig(Pete Vocal Demo)」(Virgin)※UK3インチCDのみ収録のこのデモは、サイモン・タウンゼンドではなくピート・タウンゼンド自身が歌っている。A面は「I Won’t Run Anymore」。「A Fool Says」も収録。

1993 「Flame(Demo)」(Atlantic)※UKのみ5インチシングルEPEnglish Boy」の2に収録。サイモン・タウンゼンドのデモ。カップリングはタイトル曲と「Fake It」「Early Morning Dreams」。

1993 「Electronic Wizardry」(East West)※ドイツのみ5インチシングルEPEnglish Boy」収録のインスト。カップリングは他にタイトル曲と「Early Morning Dreams」。

1993  I Believe My Own Eyes」※『TommyBroadway)』のミュージカル用のブックレットに付けられたピートの書き下ろしデモ。

 

オマケ☆シングルチャート

80 Rough Boys-UK39-US89Let My Love Open The Door-UK46-US9Little Is Enough-US4285 Face The Face-UK89-US2693 English Boy-UK87

 

(作成:佐野邦彦)



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