2016年4月8日金曜日

☆Brian Wilson:『Brian Wilson And Friends』(Salvo Sounds &Vision)CD+DVD


本作は20141214日にラスベガスのVenetian Theatreで行われたスペシャル・ライブ『Brian Wilson & Friends』で、そのBlu-rayが昨年10月に通販オンリーで発売され既に紹介済み。ただし日本での取り扱いがなくアメリカからの直接の通販なので面倒かつ高額だった。ところが、知らぬ間に全く同じものをDVD化、さらにDVDのボーナス映像2曲を除いた音源をCDで付けるという、最近定番化したローリング・ストーンズのWardレコードのArchiveシリーズのパターンでリリースしてくれた。発売は56日だが内容はまったく同じものなので、ここで内容を再掲しておこう。ちなみにWOWWOWで放送したものよりも4曲も多い完全版である。メンバーにはフル登場のアル・ジャーディンの他、ブロンディ・チャプリン、リッキー・ファターも加わり、19724年のビーチ・ボーイズ・メンバー4人が揃ったのだ!個人的には先日の2012年のオリジナル・メンバー5人が揃ったのと匹敵するほどのインパクトがあった。そしてこのライブは『No Pier Pressure』のライブなので、アルバムに参加したネイト・ルイス、セブ、マーク・アイシャムがライブに、そしてスタジオのレコーディングでシー&ヒムまで登場する。音質も画質も最高。まずはブライアンとアルにスポットが当たる中、ダリアンの指揮で「Our Prayer」の見事なア・カペラからスタートする。完璧なハーモニー。続いて演奏を切らずに「Heroes And Villains」へつながる。「Sloop John B.」は後半のア・カペラのハーモニーがレコードと同じで、このブライアン・バンドのハーモニーの上手さには脱帽だ。そして「Dance Dance Dance」「Good Vibrations」とビーチ・ボーイズ・ナンバーが続いたところで、『No Pier Pressure』に突入する。まずはオープニングの「This Beautiful Day」。ブライアンのファルセットのリード・ヴォーカルがしっとりと美しく、ゴージャスなハーモニーにマーク・アイシャムのトランペットで、最高の導入となる。その後はセブが登場、アルバムで大半のリード・ヴォーカルを取ったダンサブルな「Runaway Dancer」を歌い、「Don't Worry Baby」でもリード・ヴォーカルを取る。さてここからがハイライト。ブロンディ・チャンプリンがギター、リッキー・ファターがドラムで登場、『Carl& The Passions』と『In Concert』『Holland』でのビーチ・ボーイズ4人が揃った訳だ。まずは歓迎の意図でブライアンが「Marcella」を歌う。そしてブロンディ・チャプリンのリード・ヴォーカルでの「Wild Honey」と「Sail On Sailor」が最高だ。ソウルフルなビーチ・ボーイズを堪能できる。「Wild Honey」ではヴォーカルもいいがブロンディのギター・ソロもよく、ソロにサックスがからむとキース・リチャードとボビー・キーズを見ているみたいで最高。そして名曲中の名曲「Sail On Sailor」、ブロンディのリード・ヴォーカルだと曲がさらに引き立ち釘付けになってしまった。最後はブロンディのギター・ソロで締め、続いて『No Pier Pressure』へ戻り、ブライアンとあとブロンディとアルがリードを取った「Sail Away」が登場。キャッチーなメロディとからみあうハーモニーが素晴らしい。この後にブロンディ&リッキーはいったん舞台の袖へ下がる。その後はマーク・アイシャムのトランペットの独壇場になる。「Half Moon Bay」、続く「Don't Talk」(WOWWOWでは放送せず)でのマーク・アイシャムのトランペットの音色にただただ酔いしれるばかり。ここも今回のライブのハイライトのひとつだろう。そして明るいネット・ルイスが登場、アルバムでリード・ヴォーカルを取った「Saturday Night」を歌うが、明快なリード・ヴォーカルがピッタリでいい出来だ。そして引き続きネット・ルイスのリードでなんと『Carl& The Passions』から「Hold On Dear Bother」を歌うが、これも感激だ。バックには曲を書いたブロンディとリッキーが再び登場、演奏とハーモニーを付けるが、最後のネット・ルイスの熱唱が素晴らしく、曲が終わった時にネットとブロンディが抱き合ったのが印象に残る。そのあとネットは「Darlin'」も歌う。カールもそうだったが、この高いキーの曲を裏声を使わず軽くこの曲のキーが出るからプロは凄い。この後はスタジオ録音の映像に変わり、シー&ヒムが登場、ブライアンが隣のブースに入ってカウンターのコーラスを付けるアルバムのボサ・ナンバー「On The Island」も見もの。その後は同じくスタジオで「God Only Knows」を歌う。シー&ヒムの個性に合わせた淡々としたとしたアレンジだ。ここからライブ会場に戻りいよいよアル・ジャーディンの出番だ。アルバムでアルがリード・ヴォーカルを取った軽快でコーラスが素晴らしい「The Right Time」を歌った後は、「Wouldn't It Be Nice」と「Help Me Rhonda」でもリード・ヴォーカルを取って会場は一気に盛り上がる。やっぱりアルはオリジナル・メンバーの中で一番、声が出る。2012年のライブでも、マイクじゃなくアルがリードを取ればいいのにと思った曲が何曲もあったほど。アルの歌う「Help Me Rhonda」は本当に盛り上がる。この後はブライアンはリード・ヴォーカルに戻りWOWWOWではカットされていた「All Summer Long」が登場、ハーモニーが爽やかでいい仕上がりだ。最後はブロンディ&リッキーも戻り、「Fun Fun Fun」で大団円。ここでライブは終わりだが、アルバムの「Guess You Had To Be There」が小さくかかり、アルバム収録時の想い出をケイシー・マスグレイヴスが語っているところでエンド・ロール。このブルーレイを見て、今まで低評価していた『Carl& The Passions』などの良さに気付かされた。ブロンディ&リッキーがいた『In Concert』のライブは、ビーチ・ボーイズの中でも最も充実したライブだったので、マイク&ブルースと別れても、この4人でライブを再びやって欲しいなあと改めて思った次第。ボーナス・トラックには本編に入らなかった『That's Why God Made The Radio』からの「Pacific Coast Highway」「Summer's Gone」の2曲が見られる。現在のブライアンのキーで歌われる曲なので、ブライアンのヴォーカルも無理がなく素晴らしいコーラスに彩られ、しっとりとあじわい深い。このオマケの2曲のみ、CDには収録されていない。なお、4月のブライアン・ウィルソンの来日公演はまったく見に行けない体になってしまったので諦めたが、この映像があったので、「ブロンディ・チャプリンも参加」(※リッキー・ファターは?)というニュースを聞いても切歯扼腕という思いが無い。『Pet Sounds』の全曲披露は2回目の来日でやっているし、セットリストでは2曲を除きビーチ・ボーイズ・ナンバーという今までの集大成のような選曲なので、まっいいかという感じだ。私のような考えの人も多いようで、チケットのはけが良くないと言う噂が心配なところだ。(佐野邦彦)

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