2015年7月10日金曜日

☆Various: 『Pete Townshend's Classic Quadrophenia』(Eel Pie/4794528)☆Pete Townshend:『Truancy』(Universal/4732833)

Pete Townshend's Classic Quadrophenia』は、あの『Quadrophenia』を、ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラのバッキングでオペラ歌手が歌ったクラシック・アルバムだった。1972年に、『Tommy』をロンドン・フィルハーモニック・オーケストラのバッキングで作ったものは、歌手がみなロック系の有名シンガーだったので、根本的に違う。さてそのオペラ歌手とはイギリスの41歳のアルフィー・ボーでジミー役。つまりロジャー・ダルトリーなのでアルバムのほとんどを歌っている。元々アマ時代はプレスリーを歌ってカラオケ大会で優勝しており、ドラムの腕もプロ級、チャリティー・イベントでは大物ロック・バンドと一緒に出演しているだけあって、ロックへの親和性がある。しかし歌は堂々と張りあげるオペラ調であり、ロック調は微塵もない。ピートはゴッドファーザー役で「The Punk And The Godfather」で一部リードヴォーカルを取った1曲のみ。2曲でギター参加とあるがまったく目立たない。他では今は懐かしのミュージシャンになってしまった感のあるビリー・アイドル(昨年、8年ぶりにアルバムをリリース)だが、フーとの関係は昔から深く、1996年の「Quadropenia」ツアーでゲスト出演していて、DVDQuadrophenia Live』で見ることができるが、これを最後に5年間音楽から離れている。エースとベル・ボーイの役で4曲に登場し渋い声が聴こえる。そして嬉しい事に映画「さらば青春の光」でジミー役を演じたフィル・ダニエルズが父親役で2曲登場。もう今年で59歳だ。歌は上手くないでピートの配慮かな。オーケストレーションはレイチェル・フラーで、もうピート・ファンにはお馴染みの重要人物。ポップ・ミュージシャンでありながらクラシックの勉強をしてきたのでオーケストラーションが書ける。ソロでも、『Endless Wire』でも参加していたが、ここでは大役を任された。通して聞いて、冒頭に書いたようにクラシックのオペラアルバムで、ロックファンには馴染みを持てない人が多いだろうが、ロックに興味がなくクラシックが好きな私の妻は「何聴いてるの?私はこういうの好きだけど」と質問してきたので、改めてピートのコンポーザーとしての才能に驚かされた次第。確かに最後の「Love Reign O're Me」はアルフィー・ボーのヴォーカルで感動的だ。さてもう1枚はピート・タウンゼンドの久々のベスト盤『Truancy』だ。2曲新曲が入ったというのでもちろん購入する。「Guantanamo」はタイトルの通りアメリカが持つキューバ国内にある基地で、治外法権という扱いで主にイスラム過激派の囚人がグアンタナモの収容所に隔離されている。アメリカの法律外なので問題視されているが、その現状をピートは皮肉交じりに歌っていていかにもピートだ。ヘヴィなサウンドにはしていないがシャウトしながら全体のトーンは重い感じで、歌詞に合わせている。もう1曲は「How Can I Help You」でこちらはストリングスも交えた軽快なロック・ナンバー。他の選曲はオフィシャルのソロデビュー盤で1972年の『Who Came First』から3曲。ロニー・レーンとの共同制作の1977年の『Rough Mix』から3曲、ソロ最大のヒットとなった1980年の『Empty Glass』からは2曲、これもヒットした1982年の『All The Best Cowboy Have Chinese Eyes』と1985年の『White City:-A Novel』も2曲ずつ、1989年の『The Iron Man』と1993年の『Psychoderelict』は1曲ずつのみ、あと3集まで出たピートのお蔵出しデモ音源集『Scoop』からは1983年の第1集からだけ1曲入った。初期中心の選曲で、スマッシュヒットした「A Little Is Enough」や「Uniforms」を落としても、ロニーとのコラボアルバムから3曲もチョイスした所にピートの想いが感じられる。基本的にバランスのいい選曲だろう。(佐野邦彦)

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