2015年7月6日月曜日

☆Fifth Dimension:『Earthbound』(Real Gone Music/0248)etc

オリジナル盤のLPは持っているので、CDまで買う必要はないか...と放置していたいくつかのCDを買って持ってみたので。フィフス・ディメンションのオリジナル・メンバー5人で残した1975年の最後のアルバム『Earthbound』は、ジミー・ウェッブのプロデュースで6曲をジミーが書いたアルバムで、同じくジミー・ウェッブが残した1968年の『The Magic Garden』に比べれば50%程度の出来だが、いい曲はあるので買う価値はある。彼らの11枚目のアルバムだ。ジミー・ウェッブはコンポーザーとしてフィフス・ディメンションの「Up Up And Away」の大ヒットで鮮烈なデビュー、そして全曲を作曲・アレンジ(1曲のみカバー)した『The Magic Garden』はヒットしなかったものの、その全ての曲のクオリティの高さ、曲間も極上のメロディでつなぐ驚異的なアレンジで、名盤中の名盤となった。そして同時期にグレン・キャンベルの「By The Time I Get To Phoenix」が大ヒット、先の「Up Up And Away」と合わせてその年のグラミー賞8部門を獲得という最高のデビューと飾った。その後もグレン・キャンベルの「Wichita Lineman」「Galveston」と心の琴線に触れるメロディと歌詞を持つ大ヒットナンバーを書き、リチャード・ハリスに書いた長く複雑な構成の「MacArthur Park」も大ヒット、翌1968年のグラミー賞でも「Wichita Lineman」「MacArthur Park」「By The Time I Get To Phoenix」で賞を獲得と、そのデビュー期はモーツァルトではないが「諸君、脱帽したまえ」というほどの凄さだった。こういう大ヒットだけでなくても1967年のジョニー・リヴァースのアルバム『Rewind』で大半の曲を書き、それが珠玉の曲揃いと、その才能は止まる事を知らないようだったが、徐々にその冴えはなくなっていき、1970年代以降はシンガーソングライターに転身、音楽評論家の評価は高かったが売れ行きは芳しくなく、60年代のような華々しい活躍はなかった。いい曲なのだが、後世に残るようなスタンダードナンバーは書けなくなった。この『Earthbound』は、「Earthbound/Prologue」(ジョージ・ハリスンの「Be Here Now」とメドレー)と「Earthbound/Epilogue」で挟まれるという『The Magic Garden』と同じ構成で、トータル・アルバムの意図はあったようだ。ただビートルズやストーンズ、ジョージ・ハリスンのカバーがあるなどジミーの曲は6曲に止まった。それはもう有名なったフィフス・ディメンションとジミーとの力関係が変わっていて、ソウルフルな曲を歌いたいメンバーの意向が反映されたようだ。ただビートルズの「I've Got A Feeling」が入っているが、『The Magic Garden』に無理やり入れさせられた「Ticket To Ride」と同じく、まったく出来は良くない。オープニングとエンディングはかなり凝っていて不協和音を入れるなどまさに『The Magic Garden』の世界。ジョージの「Be Here Now」は要らなかったが...。他人の作ではジェイムス・ジョンソンの「Magic In My Life」がキャッチーなフックを持つアップのナンバーで出来がいい。肝心なジミーの曲ではビリー・デイヴィスJr.が歌う流麗で美しいバラードの「Speaking With My Heart」が素晴らしい。続いてマリリン・マックがしっとりと歌うバラード「When Did I Lose Your Love」も見事な出来。この2曲が聴けるだけでも十分だ。あと意外とストーンズの「Moonlight Mile」もドラマティックなアレンンで面白い。さてここからはホンのオマケ。同じくボーナストラックのないCDで、思い入れのないものはCDが出ても買っていなかったので、2010年に出たインナー・ダイアログの2枚のCD1stの『Inner Dialogue』(Big Pink/8050)、2ndの『Friends』(Big Pink/8074)を買ってみた。このグループは作曲とアレンジを一手に担うジーン・ディノヴィのセンスに全てがかかっているバンドで、彼がジャズ・ミュージシャンだけあって、1stでは複雑なコーラスワークや転調、リズム・チェンジなどを使ってクールなサウンドを作り出した。「Within You」などはかなりの快作で、その他の曲もちょっとチープなフリー・デザイン。その表現が一番ぴったりくる。しかしセカンドは、日和ったというべきかビートルズ、B.J.トーマス、ジェームス・テイラーの超有名曲のカバーを入れ、複雑なコーラスワークも影をひそめ凡庸なアルバムになってしまった。ただ「Loving」「Where It's At」などのキャッチーなナンバーもあり、そこが救い。やはりアナログがあればCDはいらないね。その他の2006年に謎のリイシューとなったブライアン・ハイランドの「Stay And Love Me All Summer(ユニヴァーサル。古いのでもう番号を書かない)も買ってみた。ブライアン・ハイランドはこの盤より、スナッフ・ギャレットのプロデュース、アル・キャップスのアレンジで作られ1966年にマーキュリーからリリースされた『The Joker Went Wild/Run Run Look And See.』が最盛期のゲイリー・ルイス&ザ・プレイボーイズのキラキラしたサウンドが楽しめるのでオススメ。日本では単独でVivid Soundがリリース、amazonで今でも中古盤が安価で買える。2イン1の輸入盤も出ているがカップリングがいまいちなので安い方で十分。さてこのユニヴァーサルでCD化されたアルバムはそれからずっとあと、3年後の1969年。レイ・ラフをプロデューサーに招いて1年に2枚アルバムが作られ、先に『Tragedy/A Million To One』が出て、その後に出たのが本盤だ。なぜか2枚の内の後の方のみCD化されたが、本盤の方が曲想が明るくポップだったのでそれが原因か。自分の『Soft Rock A to Z』でこっちの方がいいとは書いていたがなぜ1枚だけ...。メロディアスでどの曲も聴きやすいが、ストリングスを含めサウンドが平坦で、1969年では明らかに時代遅れ。フィル・ラモーンのサウンドなどと比べるとその差は歴然だ。タイトル曲が全米82位になっただけでアルバムは2作ともノンチャートに終わる。しかし1970年にはデル・シャノンのプロデュースでクールな「Gypsy Woman」を発表。全米3位の大ヒットとなって再び返り咲いた。もう1枚はラヴ・ジェネレーションの1968年リリースで3枚目のラスト・アルバム『Montage』(ユニヴァーサル)。全3枚のアルバムから抜粋した曲で、1stアルバムのジャケットを使ってのベストCDLove & Sunshine』が出ていたが、この3枚目だけがユニヴァーサルでCD化された。確かに『Soft Rock A to Z』ではこの3枚目が一番いいとは書いていたが、1st2ndをすっ飛ばして突然単独で出るのは違和感がある。だいたい『Love & Sunshine』にこのアルバムの12曲中11曲が入っているので、残る1曲だけのために買うことになる。まあその曲がアンダース=ポンシアの「Sunrise Highway」なので気になる方はいるだろうが、You Tubeで出来を確認してから購入した方がいい。2014年にも2006年に続いてこの盤だけポツンと出たが、中古CDは何故だかかなり高い。それに比べてオリジナルLP7ドル程度。アナログの方がいいのは当然で高額のCDは不要なのは言うまでもない。プロデューサーはHeaven Boundなどで知られるトミー・オリバー、曲は他のメンバーには逃げられてしまったが作曲を担うグループの中心のバーラー兄弟がベストの仕事をした。ただし1曲多いだけじゃなあ...。ボーナストラックがなくてもエイス・デイの『On』とか買う価値があるものはあるけれどね。フォー・キング・カズンズとか1枚ものをそのまま出すのはいい。しかし複数のオリジナル盤があるのなら、レーベルが違うなら仕方がないが同レーベルのものを、間をすっ飛ばして出すのはやめるべき。意味が分からんよ。(佐野邦彦)







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