2005年5月16日月曜日

東京ローカル・ホンク:『東京ローカル・ホンク』 (mona records/MONA-008)


94年より"うずまき"というバンド名で活動していた東京ローカル・ホンクが6年振りに新作をリリースした。 プロデュースを手掛けたのは夕焼け楽団~サンディー&ザ・サンセッツを率いた久保田麻琴氏。シンガポールでの録音を含め4年もの期間を注いで完成させたのが納得出来る濃厚なサウンドといえるだろう。 ここではバンドのベーシストである新井健太氏に、東京ローカル・ホンクの歩みやスタンス、今回のレコーディングの様子を聞いてみた。 

(新井健太:以下括弧内同じ)「最初うずまきの母体となるバンドは、バンマスである木下弦二、ドラムの田中邦雄そして『ヒコーキのうた』(うずまき1st)でベースを弾いている迫田敬也で、10年以上前には活動が始められていて、後にギターの井上文貴が加わりうずまきに発展しました。 僕は別でバンドをやっていたんだけど仲は良かったので、一緒に遊ばせてもらったりもしながら外からうずまきを観ていました。とにかく常に先を行っていて凄く実験的な事をやっている集まりだったです。当時ロックをやっているヤツで民族音楽をあんなに沢山聴いているのはあまりいなかったし、それぞれの声をひとつの楽器として最大限に使うというのも新鮮だった。 『ヒコーキのうた』のリリース後に迫田が脱退し、代わりに新しいベーシストとして僕が加入しました。丁度僕のバンドが解散したばかりだったのもあって誘ってくれたんですね。そしていよいよ僕が加入して最初のライブというときに、何と!メンバーがかねてから敬愛していた久保田麻琴氏が見に来て下さったんですね。 ライブを観た久保田さんはその日の内に木下のところに電話をくれて、一緒にCDを作ろうという事になったみたいです」

成る程元々異なるバンドで活動していた彼ならではの視点でバンドの在り方が見えて面白い。 即ちうずまき当時に既に他のバンド連中から一目置かれていた存在だった訳だ。 そんな存在だったからこそ、久保田氏の眼鏡に叶ったのは当然といえるかも知れない。実際彼らのライヴ・レパートリーで本作にも収録されている「遠い願い」を、いち早く久保田氏自身のアルバム『ON THE BORDER』で取り上げている。 また今回のレコーディングでは、お互いの拘りを象徴する異例的な期間が費やされていたらしい。 

「何だって1枚のCDを作るのに4年も掛かったのかというと、あの世界の久保田麻琴がプロデュースしてくれて、しかもシンガポールでレコーディングさせてもらって、普通だったらもうそれだけで十分良いものが出来ると思いますもんね。 よく解らないですけど簡単に言っちゃえば、メンバーの4人だけでも意見をグチャグチャにぶつけあってまとめるのが大変なのに、それに久保田麻琴という強力な人物が加わった訳ですから更に半端じゃなくなっちゃったという事じゃないでしょうか。4人と久保田さんのそれぞれがイメージする音の理想を合致させるというか近づけるのにすごくこだわって時間を掛けた、という事なのだと思います。 そういった紆余曲折を経て出来上がった最終的な久保田さんのミックスの凄まじさにはメンバーもビックリしました。「ウワ~こう来たかぁ~」的な」 

アルバムの中でも特に「ブラック里帰り」のミックスは、白眉の出来といえるボーダーレスなダブ感覚がこの作品のスケールを更に大きなものにしているし、「すんだこと」での得体の知れないテックス・メックス感覚は、ロス・ロボスの『コロッサル・ヘッド』におけるミッチェル・フルームとチャド・ ブレークの仕事にも通じる。
 即ち本作は、ウッドストックやニューオリンズから環太平洋を舞台に活躍する名プロデューサーと、型破りなバンドとの出会いがもたらした傑作というべきだろう。
(ウチタカヒデ)

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