1999年9月3日金曜日

☆Beach Boys;Unsurpassed Masters、遂に『Smile』Sessionsに突入。Vol.15 ~17リリース


全ビーチ・ボーイズ・ファンを狂喜させたSea Of TunesによるUnsurpassed Mastersのシリーズの待ち望んだVol.1517がリリースされた。しかしオランダの税関で止まって放棄したとかで、別ルートで運よく入手できたため簡単に内容を紹介しよう。
 Vol.15Good Vibrations
 タイトルのとおり、「Good Vibrations」のバッキング・トラックの製作過程を9つのセッションに分けた、CD3枚組計205分にも及ぶ重量感満点のボックスである。英Mojo誌が97年に行った139名の一流ミュージシャン、プロデューサーが選んだベスト・シングルでビートルズやストーンズを押さえ、栄えある1位を獲得したこの名曲がどれだけの努力ももとに生み出されたのかを知る格好の素材と言えよう。色々なパートを継ぎ合わせたこの曲は、やはりセッションで各パートごとに録音を行っていることがよく分かる。そしてアレンジが、ブライアンの指示のもと、どんどん良くなっていく様も分かるだろう。しかしこれらのバッキング・トラックの多くは使われなかったアレンジであり、ブライアンの際限のない試行錯誤が伝わってくる。実際に本人も「試行錯誤の繰り返しで、これというものを見極めようと思って試した」と言っているが、実際にはなんと90時間も録音を続け、完成テイクに至るのである。ヴォーカルの入ったものはブライアンの仮り歌の入った僅かなものしかない。このボックスの後に控える膨大なヴォーカル・セッションのマスターは見つからなかったという。ポール・マッカートニーが「今聴いても新鮮で、どうやって考えついたんだろうと思わずにいられない」と絶賛しているが、このバック・トラック・セッションを聴くだけでも、どうしてこれだけのアイデアが出てくるのか、まさに天才の所業と言えよう。
Vol.16Smile
Vol.17Smile Sessions
  さて、待望の『Smile』だが、Vol.16Vol.17からの抜粋とも言えるオリジナル『Smile』予想ラインナップ。当然オフィシャル音源や今までのブートでお馴染みのものも多い。Vol.161枚ものなので、まず『Smile』を聴いてみたいという人におすすめだが、初心者向きかと言えばそうではない。ここでしか聴けない素晴らしいヴァージョンが幾つか含まれている。ドライな雰囲気のコーラスによるまったくはじめて聴くヴァージョンの「Child Is Father Of The Man」、そして「Wonderful」はカールの歌に被る形でマイクの"Rock With Henry"のコーラスが入るという驚きのテイク。エンディングのフレーズが異なる「The Old Master Painter/You Are My Sunshine」や「He Gives Speeches」もVol.17のものとは違う。
  そして肝心なCD3枚組のVol.17Smile Sessions』に移ろう。まずディスク1は「Heroes And Villains」が19トラック続く。ブートで既にだいぶ流出しているが、Sea Of Tunesのものは音質がとにかく素晴らしい。これを聴くと『Smile』用の同曲が制作されている過程がよく分かる。Part.2と書かれているセッションは「Barnyard」として知られていた部分だが、ピチカートのみの最初のテイクは違った曲に聴こえる。「Bicycle Rider」は3回のオーバーダブを収録。続く「Do You Like Worms」だが、初期テイクではあの「ウガガ」のコーラスの歌い方が違う。スティール・ギターの入ったテイクは、真面目にやっているのか分からないほど不気味なぶっ飛んだテイク。「The Old Master Painter/You Are My Sunshine」はデニスの歌入りのテイクはないかわりに、テイク12ではアップテンポで最初からドラムの入ったテイクを聴くことができる。「He Gives Speeches」は後の「She's Goin' Bald」で、いかにもデモといった雰囲気の3テイク。「Wonderful」はインストの制作過程から始まり、そしてマイクの「マママママ」と繰り返すとても「Wonderful」とは思えない摩訶不思議なバック・コーラス・セッションが登場する。ディスク2へ移ると、「Child Is Father Of The Man」はコーラス部分のバッキング作りの模様。「Look」はかつての「Holiday」で、20テイク入っている。そして残りはすべて「Vegetable」。Part.1はお馴染みのピアノのバッキングによるものだが、ピアノのみのバッキングから歌がどんどん重ねられ、SEが入る模様が分かる。そしてマリリンによるヴォーカル・リハーサルまで登場してしまう。Part.2とクレジットされているのは「Mama Says」の部分だが、初めて聴くバックの演奏が別の雰囲気を醸し出し、歌が入っても印象が違う。そしてPart.2は別のアレンジに変わり『Smile』らしいというか、「ウムパー」という気味悪いコーラスをバックに重ねていく模様を聴くことが出来る。Part.3になるとさらにまったく別のアレンジのインストから始まる。これは『Smiley Smile』の「Wonderful」の中間部の原型だ。これらがすべて「Vegetable」ということは、この曲が「Heroes And Villains」に肉薄するような組曲になった可能性があり、今までおふざけソング程度にしか考えていなかったこの印象がまったく変わってしまった。ディスク3はまず「Wind Chimes」のバッキングの初期からの制作過程。使わなかった中間部のホーン・パートなどもある。そして「Mrs.O'leary's Cow」のストリングス・ヴァージョンをテイク1からをずっと綴る。ブライアンの"The Elements Part.1 Fire take 1"の声には、幻の「The Elements」の山の姿が雲の切れ目から僅かに見えたようで、それだけでも嬉しくなってしまったのは私だけではないだろう。「Friday Night」はかつて「Woodshop Song」と呼ばれていたもので、ジャズっぽい「I Wanna Be Around」や大工の音も入っていない。 Water」は「Cool Cool Water」の中間部のコーラスを完成させていく模様。なんとも不気味な雰囲気が漂う、いかにも『Smile』らしい高度で、クールな雰囲気のセッションだ。
(佐野/Special thanks to ライムハウス)
 






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