2005年5月21日土曜日

Lamp:『木洩陽通りにて』 (MOTEL BLUE/MBR-009) クノシンジ対談レビュー



前作『恋人へ』から1年3ヶ月振りにLampの新作アルバム『木洩陽通りにて』が届いた。
本作で3枚目になるが、枚数を重ねる毎に深みのあるソングライティングとそれを活かした丁重なアレンジと演奏にはただ耳を奪われるばかりだ。
妥協を許さない音作りが彼らの第一の信条であるのだが、多くの聴き手には良質なポップスとして響いているのみで多くの試行錯誤を知るよしもないだろう。拘り抜いたポップスをこうしてコンスタントに作り続けられるは希有な事だ。
ここでは彼らをリスペクトしてやまない若手アーティストのクノシンジ氏と、本作について対談してみた。 

ウチタカヒデ(以下 U):「先ずは本作について、クノ君のファースト・インプレッションはどんな感じでしたか?」 

クノシンジ(以下 K):「僕のファースト・インプレッションは"ん?"という感じでしたね。
前作の印象からもう少し分かりやすいものを想像していたんだと思います。正直、ピンと来ませんでした。ところがその翌日にもう一度聴いてみようと思って聴いてみた訳です。そしたら「もの凄いアルバムだ!歴史的名盤だ!」って事に気づいて。もうそれからは聴くのが恐ろしい。完全に打ちのめされています」 

U:「一回聴いただけはその深さが直ぐに理解出来ないのかも知れないのは同感です。個人的には最初に永井君の「抱きよせたい」が凄く良いと思ったんだけど、何度も聴いて後から込み上げてくる感じなんだよね。前作の「ひろがるなみだ」に匹敵する位。とにかく作り手の心情が強く伝わるというかね。
それと今までのLampからはイメージ出来なかった染谷君の「紙魚だらけの唄」もアレンジの発想がブライアン・ウィルソンしていて微笑ましかった。とにかく『恋人へ』より更に彼らの真骨頂が見えてきたと思います」 


K:「僕も個人的に「抱きよせたい」が一番好きです。聴く度に鳥肌が立ちます。やっぱりメロディと歌詞がぐっときます。Lampの作品の中で一番好きかも知れません。
永井さんはきっといい恋をしていますよ(笑)。じゃなきゃこんな感情のこもった曲書けませんよ。感情とテクニックのバランスが素晴らしい。この曲聴いて、永井さんは日本の音楽シーンに名を残すであろう作曲家だと思いました。歴史的名曲ですよ、間違いなく。
「紙魚だらけの唄」はたしかにマリンバ、アコーディオンの使い方やフレージングがブライアンですね。染谷さんの曲では「木洩陽の季節」が一番よかったです。イントロの切れ味。というか曲全体に切れ味があって、才能の光をビンビン感じますね。
どんなアーティストの作品でも、いい曲は才能がほとばしっている感じがするんですよ。緊張感というか、なにか越えている感じですね。アルバム全体的が格段に完成度を増していますね。とにかく本当に」 

U:「「抱きよせたい」の素晴らしさはメロディの起伏とコード進行の転回が激しいのにバラードとして自然に聴けるというのがあるよね。完全にポール・マッカートニー派だよ。その点ではクノ君と通じるものがあります。確かにいい恋をしてないとこんな曲は書けないね(笑)。
Lampのリーダーたる染谷君は自分がシンガーでない分、作家的な技巧性で曲を作っている感じですね。今回のアルバムでも同一人物とは思えないタイプを書き分けていると感じます。相変わらず凄い才能ですよ」 

K:「「抱きよせたい」、そうですね。ポール・マッカートニー派。もう一日に何度も口ずさんでしまう。
染谷さんは完全にテクニック派ですよね。それがテクニック派という言葉で片付けられないほどの完成度で。とくにコードワークに関してはため息物です。凝っているだけのテクニックじゃなく、メロディと絡めて美しさが抜群。
これほどの才能を持った作曲家が二人もいるなんて羨ましいです。いずれは世界も見えるんじゃないでしょうか?」 

U:「最後に漠然過ぎるかも知れないけど、クノ君の視点でLampの魅力とは何でしょうか?」 

K:「"高度な楽曲とアレンジなのに聴き易い" "洋楽をベースにしているにも関わらず、あくまで日本的"といったところですか。
僕はこういう高度なサウンドが好きで、でも聴き易いものが好きで。そのバランスが凄く気持ちいいですね。そして日本的情緒が溢れていて自然に入ってくる感じがしますね。
うまく言葉に出来ません。つまりは才能をビンビン感じられるところです」 

U:「クノ君の様に同業のアーティストやミュージシャンに受けがいいのはLampが本物のグループである証拠かな。やはりクノ君もそれを見抜いているし、それでいて一般的にも聴き易く受け入れ易いという。
このシーンが長く停滞していると、もう聴き手側も真に良いものを聴き分ける聴覚を身に付けなくてはならないし、結局音楽に求められるものの真価が問われる時期にきたんだと思う。そんな中でLampやクノ君の若い世代に頑張ってもらいたい訳です(笑)」 

K:「良いものを聴き分ける聴覚を身に付けたリスナーが、逆に停滞したシーンから生まれるっていうのは面白いですね。
"いい音楽がどんな形であれ評価される" それを証明することで音楽シーン自体を変えていきたい、といった様なお話を染谷さんから伺いまして。僕もすごく共感しました。
僕らの世代のポップス・シーン。今の状況をしっかり把握している訳ではないですが、"しっかりとしたポップス"を確実に次世代に残していくには頑張りが必要だと思っています。出来ることならば、それをまたシーンのトップに持っていきたいですね」 

今回の対談で彼らのミュージシャンズ・ミュージシャンとしての位置づけを更に感じさせたと思う。
また対談では触れなかったが、コンピレーション・アルバム『found in fairground』にて発表済みで、染谷の最高傑作だと思う「今夜も君にテレフォンコール」のニュー・ヴァージョンや「木洩陽の季節」、永井の「君を待つ間に」でのLamp特有のシティ・ポップス感覚は健在であるし、話題にした「抱きよせたい」の繊細なバッキングの中にデヴィッド・T・ウォーカーを思わせるギター・ソロやリチャード・ティー的なピアノ・リフ、「紙魚だらけの唄」でのブライアン・ウィルソン的なアレンジとコーラス(ビートルズ的要素も多々ある)を耳に出来る等、彼ら自身のリスナーとしての聴覚力や探求肌に関しても細かく聴いて欲しいと思う。
 本作では2曲の作詞を担当するヴォーカリスト兼フルーティストの榊原の事も触れないといけないだろう。彼女のスウィートなヴォーカルやコーラスこそ彼らのLampたる存在に大きく貢献しているのは間違いない。「木洩陽の季節」や前作の「日曜日のお別れ」の流れにある「夜風」で切なく愛らしい歌声を聴けるのだ。
以上本年度の上半期中最もお薦め出来る新譜ポップス・アルバムである事を感じてもらえたら筆者としても嬉しい限りである。
(ウチタカヒデ)

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