2011年2月24日木曜日

Orange Colored Sky:『Orange Colored Sky』(PICARD RECORDS/PIC0812014)


 68年にMCAレコード傘下で、ストロベリー・アラーム・クロックなどが所属したサイケデリック・ポップ・レーベルのユニ(Uni)からリリースされた、Orange Colored Skyの唯一のアルバムが世界初CDリイシューされたので紹介したい。

 Orange Colored Skyはペンシルバニア州エリー出身のラリーとヴィニーのヤンガー兄弟が中心となって62年に結成された。その後ニューヨークの名門クラブであるペパーミント・ラウンジのハウス・バンドとして活動し、68年には移住先の南カリフォルニアでユニ・レコード(67~73)と契約に至っている。同年にシングル「Orange Colored Sky/The Shadow Of Summer」と本アルバム、69年には「Happiness Is/Another Sky」「Mr. Peacock/Knowing How I Love You」「Sweet Potato/The Sun And I」と3枚のシングルをリリースした後ユニを離れた。
 今回のリイシューでは上記の全シングルの音源をボーナス・トラックとして収録しており、アルバム重複曲の「Knowing How I Love You」と「The Sun And I」はヴァージョン違いとなっている。
 ユニのサイケデリック・ポップ(ロック)・バンドといえば、ストロベリー・アラーム・クロックが最も有名であるが、他にもゲイリー・ゼクリー・ワークスの一つであるファン&ゲームスなどソフトロックの文脈で語られるバンドが少なくない。このあたりは弊誌佐野編集長監修のディスクガイド書籍、『Soft rock A to Z』最終改訂版の『SOFT ROCK The Ultimate!』を読んで頂きたい。

 プロデューサーのノーマン・グレッグ・H・ラトナーについても少し触れておこう。彼はマーク・エリックの『Midsummer's Day Dream』(69年)を手掛けたことでソフトロック・ファンにも認知されていると思う。74年にはソウル・ヴォーカル・グループのヒューズ・コーポレーションの「Rock The Boat」を手掛け全米1位にするなど活動のフィールドを広げ、後にABC/ダンヒル・ユニバーサル・レコードの副社長に登りつめることになる。
 バンドとしてのOrange Colored Skyは、ほぼ全てのソングライティングとアレンジを手掛けるキーボーディストのワルター・シルヴィンスキーがサウンドのイニシアティヴを取っているのが大きな特徴になっているが、セルフ・コンテインド・バンドのウイークポイントというべき演奏能力の低さがアレンジに追いついてない瞬間も多々耳にする。とはいえ、シルヴィンスキーのソングライティング・センスはそれを補って余りあるほど魅力的な曲が多い。
 冒頭からボナー&ゴードン作品に通じる高揚感溢れる「The Sun And I」で引き込まれる。もたりながら跳ねるドラミング(途中走ったりと突っ込み所が多いw)によって妙なシンコペーションを形成しているのが面白い。ヴァースでのピチカートとトレモロのコントラストが効いたストリングスに比べ、工夫が感じられないコーラス・アレンジはちょっと残念だ。続く「The Shadow Of Summer」はトニー・マコウレイを思わせるハートフルなソングライティングで、シルヴィンスキーのハモンド・オルガンはここでもアレンジの要になっている。
 またレイジーなサイケ・ムード漂う「Just Like Humpty Dumpty」も悪くないが、個人的なアルバムのハイライト曲は「L.A.」だ。ジャケットの色彩を連想させる心情風景をよく現している。7月に来日公演するゾンビーズにも通じるポップスの徒花的ムードはシクスティーズ通にはたまらない。



 オリジナル・アルバム未収録のシングル曲では、69年の映画『The Love God?』のために書き下ろされた「Mr. Peacock」が貴重だろう。映画ヴァージョンではダーレン・ラヴ配するブロッサムズがヴォーカルを担当しているが、ここではOrange Colored Skyのオリジナル・ヴァージョンとなっている。この曲でもギタリストとドラマーの演奏力の稚拙さが露わになっていてもどかしくなる。


 ユニでのラスト・シングルとなった「Sweet Potato」は、プロデューサーであるラトナーのその後の趣向を暗示させるファンキーなノベルティ・ポップで悪くないが、バンドとしてのスタイルは既に崩壊しており契約を切られるのも頷ける。70年にはマイナー・レーベルのピープルへ移籍しシングル1枚をリリースし、その後MGMでマイク・カーブの元、名匠ドン・コスタのアレンジでロックオペラ「Jesus Christ Superstar」をレコーディングしているが、アルバム製作までには至っていない。
 なんでもOrange Colored Skyは現在も活動を続けているらしく、結成時のオリジナル・メンバーは残っていないが、南カリフォルニアのローカル・バンドとしてビーチ・ボーイズのカバーなどを演奏して観客を楽しませているらしい。
(テキスト:ウチタカヒデ



2011年2月22日火曜日

☆宇野誠一郎:『悟空の大冒険』(ウルトラヴァイヴ/CDSOL1397-8)


手塚治虫原作だが、このTVアニメはキャラクター原案のみが手塚治虫というべきであり、若き虫プロダクションのスタッフが自由に作ったので、スラップスティックアニメの快作に仕上がった。

手塚治虫はマンガにおいてはお釈迦様のような存在で、他の漫画家がどれだけ素晴らしい作品を書いても、所詮、お釈迦様の手の内というまさにマンガの「神」なのだが、アニメに関しては制作に関わると演出に疑問符が多くついてしまうのに、好きなことは人語に落ちないという、困った大先生だった。その中でこの「悟空の大冒険」は手塚の原作の「ぼくのそんごくう」はあるものの、ほとんど関係なく作ることができた。これは制作側にとっては、ラッキーだったといえよう。

手塚は「ぼくのそんごくう」の当時、初のアニメーション化(実際は原作と構成のみ)となった東映動画長編アニメ「西遊記」への不満があり、それがもとで自身がやりたいことができるアニメ制作会社を作らねばと虫プロダクションを設立していた。(この「西遊記」は、エンディングを悲劇にしたいと思っていた手塚と、それまでのストーリーを無視して悲劇を作ろうとしていた手塚の方針に反対した東映動画スタッフで対立、結局、退屈な作品で終わってしまう。手塚の考えたエンディングでもダメだったことは明白。冗長な演出が続いていた東映動画が生まれ変わるのは森康二、大塚康生、月岡貞夫らが中心となった「わんぱく王子の大蛇退治」からであり、その後に若き宮崎駿、高畑勲が中核となって「太陽の王子ホルスの大冒険」が作られ、東映動画、日本のアニメの全盛期がやってくる。やはりアニメ制作の中で育った若いスタッフの感覚が、世界を変えていったのであり、それはこの「悟空の大冒険」にも通じている)

この「悟空の大冒険」は、自身の虫プロダクション制作なので、リベンジの場でもあったのだろうが、なにしろ手塚は乗りに乗っていた時期なので、関わっていられなかったのだろう。放送直前の1966年には、私が個人的に日本の漫画史のベスト3に入ると確信している大傑作「W3」を書いており、「バンパイヤ」「フライングベン」を残し、そしてライフワーク「火の鳥」の黎明編を書き始めていた。1966年には手塚の思い入れが深いTVアニメ「ジャングル大帝」が終わり、「悟空の大冒険」の放映と平行して「リボンの騎士」のTVアニメがスタートされており、「悟空の大冒険」は必然的にノータッチとなった。

手塚は、音楽に関しては、実に素晴らしい審美眼を持っていた。富田勲を抜擢し、日本人離れした壮大な音楽を作らせたのは、手塚の最大の功績のひとつだが、もう一人、「悟空の大冒険」の音楽を担当した宇野誠一郎をTVアニメの「W3」(「ウルトラQ」の裏だったのでみなほとんど見ていない)とこの「悟空の大冒険」で使ったのも、手塚の大きな功績だ。宇野誠一郎はリズム主体で、実験的なBGMを作れる天才であり、こういうスラップスティックタイプのアニメにはドンピシャだった。根底に流れるジャズタッチのアレンジも実に洒落ている。また後の「ムーミン」で代表させる叙情的な音楽も得意であり、聴いていてハッとさせられる美しい旋律が出てくるのも大きな魅力。宇野誠一郎の音楽を追うのは、音楽ファンとしても大きな喜びだ。(佐野)
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2011年2月16日水曜日

徳永 憲/『ただ可憐なもの』(SUZAK MUSIC/WaikikiRecord/NGCS-1006)



98年『魂を救うだろう』でデビューした孤高のシンガーソングライター、徳永憲が7枚目となるアルバム『ただ可憐なもの』をリリースした。
独創的なコード進行と歌詞の世界観は誰にも真似できない素晴らしさである。

先月Lampの新作サンプル盤を喜々として聴き続け1週間程経った頃、丁度届いたこのアルバムであるが、一聴しただけで直ぐに虜になってしまった。
彼のプロフィールについてあれこれ書くより、その音楽に触れてこそ理解できる魅了というか魔力というべき理屈抜きのサムシングを持っている。



グルーヴィーなドラムと地を這うウッドベースをお伴に、迷宮へと誘うアルペジオを奏でながら冬の情景を綴った「本屋の少女に」から、ミニマルなフィンガー・ピッキングのフレーズが頭から離れないタイトル曲「ただ可憐なもの」まで、アルバムのどこを切っても彼の世界に浸れる。
アルバム中最もポップな展開を持つ「神に麻酔を」は、サイケデリック期のジョージ・ハリスンに通じるコード進行で一筋縄ではいかないし、「空を切る」はGREAT3~ソロ活動での片寄明人を思わせるひんやりしたロマンティズムがたまらない。
インスト2曲が配置されたバランスや、小編成の木管を中心としたホーン・アレンジなどアルバム全体が実に効果的にまとめられている。
とにかく聴くべきアルバムの一つであることは間違いない。
(ウチタカヒデ)