2008年12月4日木曜日

☆Neil Young:『Sugar Mountain-Live At Canterbury House 1968』(Reprise/516758-2)

アコースティック・ギター1本で歌うニール・ヤング最古のソロ・ライブがリリースされた。曲目を見たらファンなら泣くだろう。
まずバッファロー・スプリングフィールド時代の曲が「On The Way Home」「Mr.Soul」「Expecting To Fly」「Out Of My Mind」「Nowadays Clancy Can't Even Sing」「Broken Arrow」と6曲も披露された。壮大なジャック・ニッチェのオーケストラがない「Expecting To Fly」がどうかなと思っても、弾き語りになれば何の違和感もないし、「Nowadays Clancy Can't Even Sing」もしかり、特にアレンジが次々変わる「Broken Arrow」なんてどうなるんだろうと若干の危惧があったが、この手の変拍子のナンバーは逆にアコースティック・ギターだけの方が自由にストロークを変えられるので、極めて自然に聴くことができた。そしてファースト・アルバムから「The Last Trip To Tulsa」「The Loner」「If I Could Have Her Tonight」「I've Been Waiting For You」「The Old Laughing Lady」と5曲が入り、特にこの当時以外ライブで聴くことなど不可能であろう「If I Could Have Her Tonight」「I've Been Waiting For You」「The Old Laughing Lady」の3曲が聴けたのは嬉しかった。地味な曲だがキラリと光る部分がある。コードの選び方が美しい。そして残るはシングルB面で使われた「Sugar Mountain」と、『After The Gold Rush』に収められることになる「Birds」の2曲だが、ギター・ヴァージョンの「Birds」はシングルB面で披露されていたので、このアコギヴァージョンも特に違和感がなく聴けた。ニール・ヤングは彼が歌えばオリジナルがどんなアレンジで作られていたとしても、全てニール・ヤングそのものになってしまう。まさにワン・アンド・オンリーの存在だということが痛感させられた。ニール・ヤングは本当に素敵だ。なお、付属のDVDだが、映像はずっと同じ止め絵で曲はCDと同じという理解に苦しむ代物、いったい何のために付けたんだろう...。(佐野)
Sugar Mountain: Live at Canterbury House 1968

☆Brian Wilson:『That Lucky Old Sun(plus 3 bonus tracks)』(BRIMEL/5099923616127)Best Buy Only

先に紹介したブライアンのこのアルバムはビルボードで21位まで上がり、ソロとしては前作の『Smile』の13位に続く好成績、オリジナル曲の新作としてもビーチ・ボーイズ時代の1966年の『Pet Sounds』以降最高のチャートと、ブライアンの復活がファンだけでなく一般へも普及したのは嬉しい限り。その中で、またもBest Buyがやってくれた。
ここはアメリカの大手の家電量販店なのだが、オマケを付けて付加価値を付けたCDをしばしば販売している要チェックの店なのである。以前はフーの『Live At The BBC』にレアトラック満載のボーナス・ディスクを付け度肝を抜いたことがあった。そして今回はボーナストラックを3曲追加している。まずはキャロル・キングをフィーチャーした「Good Kind Of Love」。ただしここではキャロル・キングはTaylor Millsと同じパートしか歌わないのでまったく違いが分からないといってもいい程度。この曲と違って価値があるのは同じくキャロル・キングをフィーチャーした「I'm Into Something Good」だ。キャロル・キング自身が書き、ハーマンズ・ハーミッツでヒットしたナンバーのカバーだが、ブライアンと交互にリード・ヴォーカルを取るなど、彼女の存在がはっきりと分かる。この手のロックンロール・ナンバーを歌うとブライアンは楽しそうだ。最後の1曲は、作曲のクレジットがないので分からないが、おそらくブライアン書下ろしの未発表曲「Just Like Me And You」である。雄大なメロディ・ラインが心地よく、この3曲の中でも最も出来が良い佳曲だ。アルバムに入れても上位の曲になったはずで、ファンなら是非聴いておきたい作品である。なおBest Buyの通販はアメリカ国内のみなので、eBay、もしくはアメリカのamazonで買おう。ちなみに私はアメリカのamazonから買ったが(直販はない)、送料込みでも3000円以下で簡単に買えるので今のうち。(佐野)






2008年12月1日月曜日

石橋英子:『drifting devil』(RHYTHM TRACKS/XQFL-1004)

 
 90年代から活動しているオルタナティヴ・ロックバンドPANICSMILEのドラマーであり、町田康(町田 町蔵)をはじめ様々な個性派アーティストのレコーディング・セッションでも活躍するマルチ・ミュージシャン、石橋英子のセカンドアルバムがリリースされる。 

 2006年のファーストアルバム『Works for Everything』から、元on button downのアチコとのユニット石橋英子×アチコ名義での二作、『ロラ&ソーダ』(2007年)と『サマードレス』(2008年10月)を挟んでリリースされる本作は、全てが書き下ろしの新曲で、長期に渡るレコーディングでは石橋自身によるオーヴァーダビングも多くされ、マルチ・ミュージシャン振りをいかんなく発揮している。
 そのような高度なミュージシャンシップもさることながら、個々の楽曲のクオリティも極めて高く、ポップ・ミュージックのもう一つの在り方を強く感じさせるのだ。

 アルバムは、『Hot Rats』期のフランク・ザッパを彷彿させる変拍子ジャズロックの「Dizzy Dance」でいきなり幕を開け、続く「Fearless【STOP】」では70年代末期ニューウェイヴ・サウンドを意識した雰囲気が懐かしくも新しい。音の重ね方など、その音像にはホルガー・シューカイの影響も感じさせる。
 「Last Sky」やタイトル曲の「drifting devil」でも、アバンギャルドな実験性とポップ感覚が同居し ており、ジャンルではカテゴライズ出来ない、"石橋英子ミュージック"たる唯一無二な個性を強く印象付けてまったく飽きさせない。 
 ポップ・ミュージックが持つ構成美だけに囚われない、広い間口を持ったリスナーは元より、多くの音楽ファンにも聴いて欲しいアルバムといえる。 12月3日リリース。
 (ウチタカヒデ)