2014年1月25日土曜日

☆The Beatles:『The U.S. Albums(Box Set)』(Universal Music/B0019645-02)

やっと、本当にやっと、ビートルズで残された最後の牙城、アメリカ仕様のアルバムが全てCD化された。このボックス13枚の内、8枚は2004年の『The Capitol Albums Vol.1』、2006年の『The Capitol Albums Vol.2』で順調にリリースされたため、残る『Yesterday And Today』とアメリカ仕様の『Revolver』、あとはUnited Artistsからの『A Hard Day's Night(Original Motion Picture Sound Track)』と場合によっては『The Beatles' Story』をくっつけて(あわよくば『The Beatles Live At The Hollywood Bowl』と思ったが、やはり今回も無理だった)、『The Capitol Albums Vol.3』が出ておしまいと誰もが思っていた。しかし待てど暮らせど出る様子はない。EMIの担当者に聞いても気配もないという。そしてそれから8年間、もう諦めていたが、突如このボックスのリリースが知らされ、大いに喜んだ。United ArtistsのアルバムがあるのでCapitolを取って、U.S. Albumsにするとは芸が細かい。ついでに『Hey Jude』まで入れてしまうという。ビートルズを集め出した1970年代前半ではどこのレコード屋にも置いてあった懐かしのコンピ盤。時期が違うので余計な気もするが、まあ付加価値を高めるということだろう。『Yesterday And Today』とアメリカ仕様の『Revolver』、『A Hard Day's Night(Original Motion Picture Sound Track)』は当然というべきか、モノラル&ステレオで収録され、既にリリースされた8枚と合わせ、11枚がモノラルとステレオで聴ける。イギリス盤のモノラル&ステレオとは違うミックス、編集の音源が、アメリカ仕様盤に入っているので、ファンにはたまらない。ただし、間違いとまで言い切れないが、『Yesterday And Today』のステレオの「I'm Only Sleeping」は、3rdエディションのApple以降(他はオレンジキャピトル、パープルキャピトル。『From Liverpool The Beatles Box』にも収録)のみ収録の、USステレオ・ヴァージョンではなく、普通に出回っているイギリス盤『Revolver』のステレオ・ヴァージョンだったのはあまりにも片手落ち。このボックスの価値を大幅に下げてしまった。このボックスの基本コンセプトは疑似ステレオを使わず、トゥルー・ステレオに差し替えるということだが、あおりを食って『The Beatles' Second Album』のステレオがあの深いエコーがかかったUS仕様ではなく、通常のヴァージョンに戻されたのもいただけない。これでは前にリリースされていた『The Capitol Albums Vol.1』と『The Capitol Albums Vol.2』は手放すことはできない。ではこのボックスでしか聴けない音源について紹介しよう。

 まずはなんといっても『Yesterday And Today』である。どっちのジャケットで紙ジャケ化されるのかと話題になっていたが、ケースを開けるとトランク・カバー。ああ、やっぱり回収ものじゃなくて流通した方なのかと思ってビニールからジャケを取り出すと、トランク・カバーはオマケのシールで、紙ジャケ自体はブッチャー・カバーで作られていた。やっぱりこうこなくっちゃ。このアルバムの価値はまず「I'm Only Sleeping」のアメリカ盤のモノラルが聴けること。しかし冒頭に書いたようにUSステレオ・ヴァージョンはただのUKステレオ・ヴァージョンだったので、大変残念な結果に終わった。イギリス盤及びアメリカ盤のモノラル&ステレオは、あの特徴的な逆回転ギターの挿入箇所が4つとも違う。ポイントは3か所でA:running everywhere at such a speed till they find thrers' no need」とB:taking my time,lying there and staring at the ceiling」及び間奏である。イギリス盤のステレオのAは「till they」以外は入っていてBは無し、モノラルは「till they find」以外入ってBは「lying」の後から入る。『Yesterday And Today』のモノラルは、Aは入らずBは「taking my」の後から入り、『Yesterday And Today』のApple以降ステレオは、Aは「they」以外入っていて、Bは入っていない。さらにこのUSステレオのみ間奏のSEが一拍遅れて入る。USステレオ・ヴァージョンが未CD化で終わってしまったのはあまりに残念だ。あとは「Doctor Robert」のモノラルは、曲のエンディングのコードまではっきり聴こえる。イギリス盤『Revolver』のモノラルはもっとフェイドアウトしていくのでここまではっきりとは聴こえない。USモノラルは終わった後ジョンの「Ok Fab」という声が聴こえるとあるが、ここではまったく入っていない。アナログの『Yesterday And Today』では何かノイズのようなものがかすかに入っていたが「OK Fab」なんて言葉はヴォリュームを最大にしても聴こえなかったため、CD化に際してノイズを除去したというべきだろう。「We Can Work It Out」と「Day Tripper」のステレオはミキシングが違い、前者はハーモニウムが真ん中から登場し新鮮、後者は冒頭のギターリフが左から登場するのでこれは価値がある。なお、このキャピトルの節操のなさを凝縮した『Yesterday And Today』は選曲が『Help』『Rubber Soul』『Revolver』からとメチャクチャだが、「What's Goes On」と「Yesterday」のモノラルは、ちゃんとイギリス盤『Help』と同じ仕様になっていた。これを含め、以下のイギリス盤モノラル&ステレオの違いは、Web VANDAの『On Air Live At The BBC Volume2』でThe Beatles Collecting Guideとしてまとめたのでそちらをご覧いただきたい。

A Hard Day's Night(Original Motion Picture Sound Track)』はアメリカ盤『Help!』と同じくサウンド・トラックになっているため、ビートルズではない、ジョージ・マーティン・オーケストラのインストルメンタルが4曲入っているのが、逆に目玉かもしれない。特に映画でも最も印象的なシーンに流れる「Ringo's Theme(This Boy)」は、哀調があっていい。ビートルズの音源的には『Something New』と同じで、「And I Love Her」のモノラルはand I love her以外のヴォーカルがポールのシングル・トラック、「I'll Cry Instead」のモノラルは1コーラス多く20秒長いヴァージョンである。このアルバムのステレオLPはビートルズの演奏した曲が全て疑似ステレオというとんでもない代物だったので、CD化の際になぜか「I'll Cry Instead」だけ前述のモノで残して他はトゥルー・ステレオに差し替えてある

アメリカ盤『Revolver』は曲数が少ないだけで、モノラルとステレオの違いは、イギリス盤と同じ。3曲少ないだけのリイシューする価値が最も乏しい代物だ。
The Beatles' Story』はステレオ(モノラルも存在しているが内容的に2イン1の価値なし)で、音楽的には「The Beatles Look At Life」というコーナーで40秒、64年のハリウッドボウルでの「Twist And Shout」のライブが収録されている。このアルバムのみ単品発売がないため、コンプリートを目指す人はボックスを購入しないといけない。
そして『The Beatles' Second Album』だ。このアルバムのステレオLPは全体的にエコーがかけられていて、後述の「I Feel Fine」や「She's A Woman」のような極端なものではないが、非常に特徴的なものだった。ただしステレオが存在しない「She Loves You」と「I'll Get You」と、「You Can't Do That」は疑似ステレオで、『The Capitol Albums Vol.1』ではそのままCD化されていた。疑似ステレオは使わないという方針だと、この3曲のみエコーが取れてしまうので、本ボックスでは「She Loves You」と「I'll Get You」はモノラル、他は通常のトゥルー・ステレオに差し替えられた。よってこのアルバムにより『The Capitol Albums Vol.1』を手離すことができない。
そして『Beatles '65』は、モノラル盤、ステレオ盤とも「I Feel Fine」と「She's A Woman」に驚くほど深いエコーがかけられていて、言ってみればキワモノだった。しかしこの2曲のステレオは疑似ステレオだったので、今回のCD化では通常のステレオに差し替えられた。私は疑似ステレオを評価しないので、これでいいといえばいいが、『The Capitol Albums Vol.1』ではエコーがメチャクチャかかった疑似ステレオをそのままCD化していたので、歴史的価値として保存しておかないといけないだろう。
Something New』のモノラルは前述の『A Hard Day's Night(Original Motion Picture Sound Track)』で紹介した「I'll Cry Instead」と「And I Love Her」以外に、「When I Get Home」がサビの「till I walk」のwalkを延ばして歌っていて、イギリス盤と違う。また「Anytime At All」が、間奏の130秒から46秒までのピアノが遅く入ってくる。なお最後の「Komm,Gib Mir Deine Hand」は2009年ミックスに変更されている。

Rubber Soul』のステレオのみ「The Word」のジョンのヴォーカルが全てダブル・トラックでイギリス盤と違う。そして驚いたことに「I'm Looking Through You」はイントロのギターを2回間違えるがそのまま入っていた。『Rubber Soul』のモノでは、「Michelle」のこのヴァージョンが、一番フェイドアウトが長い。といってもステレオより2秒弱程度。ちなみに一番短いのはイギリス盤『Rubber Soul』のモノ。『The Capitol Albums Vol.2』は当時のミックスを使っているため曲中の咳やノイズなど残っていたので、細部までこだわる人はこちらも残すべき。なお『Help』の「Help」のモノラルは、ステレオをモノラルにしただけだったが、本ボックスではモノラルであるシングル・ヴァージョンに差し替えられるなど、「偽モノ」も一掃している。(佐野邦彦)
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2014年1月19日日曜日

☆マーク:『マーク・ファースト「六夢」+1』(Clinck/CRCD5079)☆マーク:『マーク・ブライト+1』(Clinck/CRCD5080)

久々に感動の日本アーティストのリイシューだ。そう、マークことGAROの堀内護が、1976年のGARO解散直後の11月に発表した最初のソロ・アルバム『マーク・ファースト「六夢」』と、7711月に続けてリリースしたセカンド・アルバム『マーク・ブライト』の2枚が、それぞれアルバムに合わせてリリースしたシングルのみの貴重な音源をボーナス・トラックに入れて、紙ジャケ、当時の歌詞カード(コード付きなのが泣ける)で完全復刻、さらに全曲に対する堀内さんの当時のスタッフも含めた詳細な証言、そして高木龍太氏とのインタビューで、解散後から、この2枚のアルバムを最後に音楽業界からの長期引退までの話を一気に知ることができる。解散後もトミー(故・日高冨明氏)と、仲よく交流を続けていたエピソードなど長年のGAROファンとして読んでいて嬉しくなる。GAROの全音源(一部初期ライブは別発売中。Web VANDAGARO Collecting Guide参照)が収録された『GARO BOX』は廃盤のため10万円近い高額プレミアムが付いていて、今でもどれだけGAROの音楽が先進的で愛されていたかが分かる。この2枚のソロのあと、17年後に堀内さんは1994年のグッドフレンズ名義のアルバム『ウッドストックの夏』に参加して4曲を提供する。その後に私は2回ほど、堀内さん達と飲みにいく機会があり、色々お話をさせていただいたが、ともかく謙虚な物静かな方で、自分が中学生の頃に憧れていたあのGAROのマークが目の前にいるなんて忘れてしまうほどだったことを思い出す。その堀内さんは2007年頃から音楽活動を本格的に再開し、ついに昨年、豪華ゲストを招いて3枚目のソロ・アルバム『時の魔法』をリリースしたばかり。『GARO BOX』さえあれば、この解散直後の2枚のアルバムとシングル以外の音源は、全て入手可能なので、このリイシューで多くのファンにとって欠けていたミッシング・リンクが見つかったことになる。今はとうに存在していないディスコメイトからのリリースだったので、リイシューの関係者には敬意を表したい。 さてでは『マーク・ファースト「六夢」+1』から紹介しよう。アルバムは頭と終わりが「天の川パート1」「天の川パート2」というマークらしい美しいメロディのインストではさまれているが、マーク自体は演奏に参加していないのだという。後者の方が個人的に好きだが、堀内さんの「皇室アルバム」でこの曲が使われていたのを偶然聴いて驚いたというコメントには思わず笑ってしまった。皇室ご一家の映像に突然、自分の曲が流れたとしたら...それは誰でも驚くはず。2曲目のシングルになった「蒼いハイウェイ」がまず聴きもの。アップテンポの爽やかなポップ・ナンバーで、アコースティック・ギターのストロークの心地よさと、マークのメロディ作りのセンスの良さが光る。続く「甘いお酒」はマークお得意のオールディーズ・タッチのナンバーで微笑ましい。そして「ディープ・ブルー」だ。マークらしい傑作で、耽美な静かな歌いだしが、サビのメロディで解放される実に鮮やかな曲だ。まさにGARO。その後の「風の館」もいい。冒頭にキャッチーなメロディのサビを持ってきた曲で、曲の展開にメリハリが効いていて印象に残る。そして「木の舟」だ。黒鍵を使って書いたという曲は、デビッド・クロスビーを彷彿とさせ、マークらしさを際立たせる。ハーモニーのからみなど、GAROファンなら納得の曲だ。なお、ボーナストラックの「蒼いハイウェイ(シングル・ヴァージョン)」はアルバムだと冒頭に被っている雷鳴が除かれたものだ。他ではアップテンポのポップ・ナンバー「夏色の空」のバック・コーラスがシンガース・スリーということも注目である。続いてセカンド・アルバム『マーク・ブライト+1』に移ろう。このアルバムも冒頭と最後から2曲前(ラストはシングル・ナンバーの「電車がつけば」で、営業上で入れたためこの曲がラストになっている)がインストの「フレデリシアの城」で挟まれ、マークの当時のアルバム作りのこだわりを感じされる。「銀河旅行」は個人的なお気に入り、マークらしい流麗なポップ・ナンバーで、サビの後に大好きなトーネイドーズ(日本ではベンチャーズ。マークもベンチャーズと言っている)の「Telstar」が出てくるのが嬉しい。オールディーズ路線の「エナメル靴のシンデレラ」を挟んで、マークらしさが全開の快作「眠い夜明け」が登場する。GAROのファーストの「水色の世界」のような曲の透明感、こういう曲はマークの独壇場である。日本人の琴線に触れるメロディとサウンドがある。「潮騒」はデビッド・クロスビー・タッチのナンバーだが、青木望のハープと弦が深みを出している。GARO3人なのでCSN&Yではなく、CS&Nだと思っているのだが、マークはクロスビーの色を残したナッシュ、トミーはナッシュだが目指すはスティルスのハードさ、という印象だがどうだろうか。村井邦彦作の「僕は死なないだろう」は唯一のカバーで、GARO時代のリメイク。好きな曲だが、歌い方が気に入らなかったので再録音したのだという。「星くずの浜辺」はシングルを狙ったポップ路線の曲で自分の書くタイプの曲ではないと語っているが、個人的にはこういうアップのポップなチューンは大好き。こういう曲が書けるのがマークの強みだと思うのだが。オリエンタルな「ブラインドをあけると...」の後の「GOOD VIBRATION」はトミーが書いたようなナンバーで、サウンドもトミー風で興味深い。シングル曲の「電車がつけば」は後期GAROを思い起こさせるマイナー調のポップ・チューン。ナッシュの「The Prison Song」を狙ったというが、アレンジャーのセンスが違っていたようだ。ボーナス・トラックはそのシングルB面のみの「僕から」で終わる。この両アルバムはマークにとって満足できる仕上がりだったが、録音状態の良さでセカンドの方が納得していると語っている。しかしレコードはヒットに結びつかず、作曲家を目指した時もあったようだが、親しい人にデモを「昔より良くない」と言われ、あっさりと音楽業界から身を引いてしまうところも繊細なマークらしい。その頃メキメキ上達していたテニスの腕前を生かしてテニス・スクールを立ち上げ、新たな道で成功を収めていくが、その頃はギターに触ることもなかったそうだ。しかしマークは音楽の世界に戻ってきてくれた。ブライアン・ウィルソンというと大げさだが、その音楽から離れた年月はブライアンを彷彿とさせる。これからの活躍をますます期待したい。これで残るはトミーの77年のファースト・アルバム『Tommy』と、79年のセカンド・アルバム『シークレット・ゾーン』、そしてトミーのMamaDoDo!!名義の8081年のシングル2枚である。アルバムは東芝EMIとワーナーで、MamaDoDo!!もワーナー、音源ははっきりしている。是非、Clinckレコードにライセンス生産でもリイシューを実現ざせてもらいたい。(佐野邦彦)
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2014年1月18日土曜日

☆Simon & Garfunkel:『Simon & Garfunkel The Early Years 1957-1962』(Rock Melon/RMMCD107)

著作権50年切れを狙ったRock Melonのビートルズ、ビーチ・ボーイズに続くサイモン&ガーファンクルの音源集がリリースされていた。年代を見て分かるとおり、Tom & Jerry時代の音源集であり、1957年から1962年にリリースされたTom & Jerry(サイモン&ガーファンクル)のシングル611曲、True Taylor(ポール・サイモン)のシングル12曲、Jerry Landis(ポール・サイモン)のシングル611曲、Tico & The TriumphsTico=ポール・サイモン)のシングル48曲、The Mystics(ポール・サイモン参加。「All Through The Night」はPaulの作曲・アレンジ)のシングル12曲、Artie Garr(アート・ガーファンクル)のシングル24曲のほか、Jerry Landis(ポール・サイモン)名義の未発表セッション10曲が収録され、ほぼこの時代のワークスを網羅している。作曲はTom & Jerryはサイモン&ガーファンクルで、ポールとアートの変名はそれぞれほぼ自分で書いていて、ポールがオリジナルは当然として、アートが作曲していたのは少し驚きである

Tom & Jerryは、エヴァリー・ブラザースの路線を狙った曲が多い。オールディーズだが「I'm Lonesome」や「Surrender,Please Surrender」(後者はポールの曲ではない)などは爽やかなバラードだった。True Taylorはエルヴィスを狙ったもの。Jerry Landis名義は数も多く、バラエティに富んでいる。最初のシングルはロックンロール路線だが、同年のデモ「Dreams Can Come True」はフォークタッチのバラード、60年のデモ「Up And Down The Stairs」は陽気なポップ・ナンバーで、その路線を継承したのが60年のシングル「Just A Boy/Shy」だった。片面を入れ替えた「I'd Like To Be」はポールの曲ではないが洒落たオールディーズ・バラード。61年の「Play Me A Sad Song/It Means A Lot Of Them」は女性コーラスを入れ、古いタッチのオールディーズ・バラードに戻る。61年の8曲の未発表デモはロックンロール、ラテン、フォークなど色々試行錯誤しているが個人的には古いタッチのきれいなバラードの「Sleepy Sleepy Baby」がいいと思っている。61年と62年にJerry Landis名義で2枚シングルを出したが、ここでは進歩はなく、「I'm So Lonely」のサウンドが厚い、「Lisa」がきれいなバラードというだけだ。61年から62年にかけてポールがTicoとなって作ったグループTico & The Triumphsのシングル4枚はドゥ・ワップ・スタイルのものが多く、まさに先祖帰り。まったくヒットはしないない。ポールが参加したThe Mysticsのシングル「All Through The Night」はポールが書いた曲で、軽快なポップ・バラードである。さて残るはアート・ガーファンクルの2枚のシングルだ。59年のArtie Garr名義のシングル「Beat Love/Dream Alone」はどちらもアートの曲で、特に「Beat Love」は持ち前の甘いヴォーカルの魅力が発揮された傑作と言えよう。61年には「Private World/Please Forgive Me」を出しA面はアートの曲だったが、ブラザース・フォー調の暗いフォーク・ソングだった。全48曲、今までリリースされたこの時代のCDはみな、時系列はバラバラ、名義も書いていないものが大半で、何が何だか分からなかったが、このCDは全48曲が、時系列に並べられ、名義とレコード番号まで書かれているので今までの中のベストと言える。作曲者の名義がないのが唯一の欠点だ。このCDを基本としてここに収録されなかった曲の入ったCDと、未だCD化されていない音源を紹介しておこう。

 2009 『Early Simon & Garfunkel』(Deejay)※59年のThe CosinesPaul Simon  Carol King)の録音「Ask Me Why」(オールディーズ・スタイルのバラード)収録。ただしこのシングルは1992年になってChanceよりJerry Landis名義で、アナログでリリースされた。

2000 『Two Can Dream Alone』(Burning Airlines)※58年の録音だが66年のPickwickTom & Jerry時代の廉価盤LPSimon & Garfunkel』で発表されたインスト曲「Simon Says」「Tia-Juana Blues」と、59年のArtie GarrGarfunkel)のシングル「I Love You(Oh Yes I Do)」「A Soldier And A Song」(どちらもオールディーズ・スタイルが際立ち出来は良くない)、63年のJerry LandisSimon)の音源「Flame」(ポールの曲ではないが、63年なのでサウンドがあか抜けている)、他にArtie Garrのシングル「Beat Love」の前半からハーモニーが入るヴァージョン収録。

1993 『Tom And Jerry Their Greatest Hits Vol.1』(Domino)※64年のJerry Landisの未発表曲「Forever And After」(もう64年なのでS&Gに通じるサウンドと歌声によるフォーク・ナンバーに仕上がった)「Aeroplane Of Silver Steel」(ラテンのビートを使ったフォーク・ナンバー)収録。-
1993 『Tom And Jerry Their Greatest Hits Vol.2』(Domino)※64年のJerry LandisSimon)の未発表曲「Bingo」(トラディショナルナンバー。まさにフォーク)収録。
 
Tom & Jerry時代の必要なシングル
1962 The Mystics(Paul Simon参加):Don't Tell The Stars/Let Me Steel Your Heart Away」(Laurie)※A面はPaulがリード・ヴォーカルだという。どちらも軽快なドゥワップナンバー。1960年リリースという説もある。You Tubeで聴ける。
1992 Jerry Landis: Just To Be With You」※B面は「Ask Me Why」。1959年に The Cosines(Paul Simon & Carol King)で録音されたもの。こちらの方がポールのソロ・パートがあり出来はいい。You Tubeで聴ける。
※なお、1961年のTom & Jerry:「I'll Drown In My Tears/The French Twist(Mercury)もディスコグラフィーに記載されているが、どちらもソウルフルなインストで、作曲がA面GloverBJ.Kennedy-B.Tubert-B.Bisney-M.Singleton、プロデュースはShelby Singletonとクレジットされていたので、同名異グループと思われる。(佐野邦彦)

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