今年2月にその活動の集大成となる6枚組コンプリート・ボックスを発売し話題となった、ザ・スクーターズが新曲『Listen』(VIVID SOUND/HIGH CONTRAST / HCR9727)を7インチ・アナログシングルで10月22日にリリースする。
タイトル曲は先月Wink Music Service(ウインクミュージック・サービス/以降WMS)として、『Night In Soho』を7インチでリリースしたばかりで、本バンドのべーシストであるサリー久保田が作曲し、作詞はメンバーのターバン・チャダJr.こと高橋秀幸とサリーが共同で手掛けている。カップリングにはザ・スクーターズのライブ・レパートリーで、60年代モータウン・レコード黄金期のヒットナンバーをメドレーで収録しており、両面共にDJプレイでも盛り上げてくれるだろう。
それとひと際目を惹くジャケ・フォトグラフは、米ロサンゼルス出身で現在は神奈川県葉山町在住の写真家ブルース・オズボーン(Bruce Osborn)が、来日直後の1984年に撮影した東京モッズ・シーンのショットで、センターのカスタム・ベスパに乗って存在感を放っているのは、他でもない現在ザ・スクーターズでテナー・サックスをプレイする、ルーシーの当時の姿というからファンは驚喜するに違いない。
バンドのプロフィールにも触れるが、説明不要のカリスマ・ジャケット・デザイナーの信藤三雄をリーダーとし、周辺のデザイナー仲間で結成されたガレージ・バンドがその始まりで、東京モータウン・サウンドとして、音楽通に知られることになった。1982年のファースト・アルバム『娘ごころはスクーターズ』でレコード・デビュー後、僅か2年間の活動で解散してしまうが、その後91年と2003年にコンピレーション・アルバムがリリースされ再注目され、30年振りとなる2012年に橋本淳・筒美京平コンビ、宇崎竜童から小西康陽の著名ソングライター陣が楽曲提供したセカンド・アルバム『女は何度も勝負する』をリリースして活動再開に至った。以降は不定期でライヴ活動を続けている。
現在のバンド・メンバーは、ボーカルのロニー・バリー、ボーカルとコーラスを兼務するビューティ、コーラスのココとジャッキーの女性4名がフロント・メンバーで、リズム・セクションにギターの薔薇卍、ベースはサリー久保田、ドラムとタンバリンはオーヤ、キーボードとバンド内アレンジャーの中山ツトム。ホーン・セクションはアルト・サックスのサンデーとビートヒミコ、テナー・サックスのルーシーの3名で、バンドのムードメーカーとして不可欠なMCとVocalのターバン・チャダJr.で構成されている。
New Single “Listen” The Scooters
ここからは収録曲を解説していく。タイトル曲の「Listen」は、嘗てリーダーだった信藤三雄が生前温めていたアイデアを基にサリーが作曲している。この曲は"LOVE & UNIVERSE"というテーマの歌詞を持つダンサンブルなラブソングで、イントロから全般にかけてギター・カッティングは、アーチー・ベル&ザ・ドレルズの「Tighten up」(68年)に通じるハネ方をしており、60年代英国のオリジナル・モッズが好んだノーザンソウルのサウンドである。
キュートなロニーのボーカルを引き立てる3名のコーラスとチャダのレスポンスも見事で、若かりし頃の姿がジャケットに写る、ルーシーのムーディなテナー・サックス・ソロを交えながら曲は進行していく。何より新藤の志を引き継いだサリーのセンスが光る一曲となった。
カップリングの「Motown Medley」は、彼女たちのステージではお馴染みで、60年代モータウン・レコード黄金期のナンバーばかりだ。曲目をオリジナル・アーティストと共に下記に記すが、曲を提供したのはソングライティング・チームの最高峰とされる、ホーランド=ドジャー=ホーランドをはじめ、初期モータウンの柱だったスモーキー・ロビンソン、また歌手兼ソングライターのバレット・ストロングやプロデューサーとしてもモータウンを支えたウィリアム・スティーブンソン、ノーマン・ホイットフィールド、ヘンリー・コスビーなどである。このような名曲群は、現在の音楽にも引き継がれている遺伝子とも言えるので、筆者が作成したサブスク・プレイリストを聴いてみて欲しい。
Reach Out I’ll Be There / Four Tops(1968年)
It’s The Same Old Song / Four Tops(1965年)
I Can't Help Myself(Sugar Pie, Honey Bunch)/ Four Tops(1965年)
Stop! In the Name of Love / The Supremes(1965年)
Come See About Me / The Supremes(1964年)
Jimmy Mack / Martha Reeves & The Vandellas(1967年)
Stubborn Kind of Fellow / Marvin Gaye(1962年)
I Heard It Through the Grapevine / Marvin Gaye(1968年)
Money (That’s What I Want) / Barrett Strong(1959年)
Get Ready / The Temptations(1966年)
Fingertips / Stevie Wonder(1963年)
The Scooters Motown Medley
(テキスト:ウチタカヒデ)
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